説明

記録装置および記録方法

【課題】記録装置において、同じ色の記録を行うことができる複数の記録素子列を利用することにより、記録素子列が本来の位置から傾いていても罫線のずれなどの記録品位の低下を低減する。
【解決手段】閾値以下の細い直線80を記録するときは、同じ色を記録する複数のノズル列のうち、より傾きの少ないノズル列を選択してその直線80を記録する。これにより、罫線ずれが目立つ細線80を記録する場合でも、罫線ずれによる記録品位の低下を改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置および記録方法に関し、詳しくは、記録ヘッドの製造誤差や装着状態に起因して生じる、記録ヘッドにおけるノズルなど記録素子の配列の傾きに対応して、上記傾きの影響による記録品位の低下を防止するための構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製造誤差などによってインクを吐出するノズルなど記録素子が複数配列された記録素子列が傾いた状態で記録ヘッドが製造されたり、記録ヘッドが装着部の装着誤差などによって記録素子列が傾いた状態で記録ヘッドが傾いた状態で装着されたりすることがある。記録素子列が本来あるべき位置から傾いた状態の記録ヘッドを用いて記録媒体を走査して記録を行うと、例えば、記録素子の配列方向と平行な罫線を記録する場合に、上記走査領域の境界で罫線のずれが目立ち記録品位を低下させることがある。
【0003】
従来、このような記録素子列の傾きに起因した記録品位の低下を防止すべく種々の技術が提案されている。特許文献1には、記録ヘッドの1つのノズル列に対応するデータを、ノズル列の傾きを補正するように予め定められた単位に分割し、分割されたデータそれぞれと、記録とは無関係のデータとを組み合わせて、傾きを補正するデータを生成することが記載されている。また、特許文献2には、キャリッジに記録ヘッドを取り付けるときの位置決めに用いられる記録ヘッドの突き当て部が、記録ヘッドの記録素子基板を支持する支持基板であるプレートに設けることが記載されている。
【0004】
このように、従来技術は、記録データを補正して記録される結果に傾きが生じないようにしたり、記録ヘッド装着部に対して記録素子列が正しい位置になるよう記録ヘッドが装着されるようにする構成を設けたりするものである。これにより、記録ヘッドの記録素子列が本来の位置から傾いていても罫線のずれなど記録品位の低下を低減することを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−143026号公報
【特許文献2】特開2010−046853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の記録素子の傾きに対処する構成は、記録データを補正するなどのデータ加工を必要とし、そのための構成が装置におけるデータ処理構成を複雑にするという問題がある。また、記録ヘッドの装着部に対して記録素子列が傾きのない本来の位置となるように記録ヘッドを装着するための構成を別に設ける必要があり、それだけ装置構成が複雑になる。
【0007】
一方、広く普及しているインクジェット方式の記録装置では、同じ色のインクについて複数のノズル列を具えた記録ヘッドないしノズル列がそれぞれ設けられた複数の記録ヘッドで同じ色のインクを吐出するものを用いるものが提供されている。
【0008】
本願発明の目的は、このような同じ色の記録を行うことができる複数の記録素子列を利用することにより、記録素子列が本来の位置から傾いていても罫線のずれなどの記録品位の低下を低減することが可能な記録装置および記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために本発明では、同じ色の記録を行うことができる複数の記録素子列を用いて記録媒体に記録を行う記録装置であって、前記複数の記録素子列それぞれの、当該記録素子列によって記録媒体に当該記録素子列の配列方向に沿った直線画像を記録したとするときの当該直線画像の所定の方向からの傾き情報を取得する取得手段と、記録すべき画像の中に所定の太さ以下の直線画像があるか否かを判断する判断手段と、前記所定の太さ以下の直線画像がある場合、前記傾き情報が示す傾きがより小さい記録素子列を用いて前記所定の太さ以下の直線画像を記録するよう制御する制御手段と、を具えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上の構成によれば、同じ色の記録を行うことができる複数の記録素子列を利用することにより、記録素子列が本来の位置から傾いていても罫線のずれなどの記録品位の低下を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の概略的構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示した記録ヘッドにおける1つの色のインクに対応したヘッドチップの概略構成を示す斜視図である。
【図3】図1に示した構成を備えた記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示した記録装置の記録制御部とホストPCとで構成される画像処理システムにおける画像データ処理を行う構成を示すブロック図である。
【図5】図4におけるオブジェクト別データ処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】(a)および(b)は、本発明の実施形態のインクジェット記録装置で用いることが可能な記録ヘッドのノズル列が設けられた面を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る記録動作を示し、特に、線画像の太さに応じてノズル列を使い分ける処理を示すフローチャートである。
【図8】上記ノズル列の使い分けを実際の罫線の記録において説明する図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る記録動作を示し、特に、縁部とそれ以外でノズル列を使い分ける処理を示すフローチャートである。
【図10】(a)〜(c)は、本発明の第2の実施形態に係る細線縁部のドット形成過程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の概略的構成を示す斜視図である。図1に示すように、キャリッジ2は記録ヘッド1およびインクタンク(不図示)を着脱自在に搭載する。キャリッジ2は、記録媒体15の搬送方向に対して交差する方向と平行に設けられたメインガイドレール3およびサブガイドレール4に摺動可能に支持されている。タイミングベルト6は、モータ7と連結したモータプーリ8と、モータ7と対向する位置に配置されている従動プーリ9に架張されている。また、このタイミングベルト6はキャリッジ2に固定されており、モータ7の動力はタイミングベルト6を介してキャリッジ2に伝達され、これにより、キャリッジ2は上記ガイドレール3、4に沿って移動することができる。そして、このキャリッジの移動によって、記録ヘッド1の記録媒体15に対する記録走査が可能となる。搬送ローラ10は、搬送モータ(不図示)によって駆動され、これにより記録媒体を搬送することができる。排出ローラ11は、記録された記録媒体を装置外へ排出する。
【0014】
記録ヘッド1は、図6(a)および(b)を参照して後述されるように、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、顔料ブラック(Bk1)および染料ブラック(Bk2)のインクを吐出するそれぞれのヘッドチップによって構成されたものである。
【0015】
図2は、この記録ヘッド1における1つの色のインクに対応したヘッドチップの概略構成を示す斜視図である。図2に示すように、ヘッドチップ30には、所定のピッチで配列された記録素子としての複数の吐出口(ノズル)300が設けられている。各吐出口300は液路302の一方の開口端として形成されるものであり、液路302には吐出に利用される熱エネルギーを発生するための電気熱変換素子303が設けられている。各液路は共通液室301と連通し、これにより、吐出に伴って共通液室から液路にインクが供給される。また、上述の電気熱変換素子、温度センサー(不図示)、サブヒータ(不図示)はシリコン基板に半導体製造プロセスと同様のプロセスで設けられる。これらの素子が形成されたシリコン基板308は放熱用のアルミベースプレート307に接着されている。また、シリコン基板上の回路接続部311とプリント板309とは超極細ワイヤー310により接続され記録装置本体からの信号は信号回路312を通して受け取ることができる。液路302および共通液室301は射出成形により作られたプラスチックカバー306で形成されている。共通液室301は、対応するインクタンクとジョイントパイプ304およびインクフィルター305を介して連結しており、これにより、インクタンクから共通液室301にインクが供給される。
【0016】
図3は、図1、図2に示した構成を備えた記録装置の制御構成を示すブロック図である。同図において、400は記録信号を入力するインターフェ−ス、401はMPUを示す。また、402はMPU401が実行する制御プログラムを格納するプログラムROM、403は各種データ(上記記録信号や記録ヘッド1に供給される記録データ等)を保存しておくダイナミック型のRAM(DRAM)をそれぞれ示す。DRAM403は、記録ドット数や、インクヘッドの交換回数等を記憶することができる。ゲートアレイ404は、記録ヘッド1に対する記録データの供給制御や、インターフェース400、MPU401、DRAM403間のデータの転送制御を行う。405は記録ヘッド1を搬送するためのキャリッジモータ(CRモータ)、406は記録用紙搬送のための搬送モータ(LFモータ)を示す。407、408は夫々搬送モータ405、キャリッジモータ406を駆動するモータドライバを示す。409は記録ヘッド410を駆動するヘッドドライバを示す。記録ヘッド1は、キャリッジ2上に搭載された基板(キャリッジ基板)(不図示)を介して装置本体側の回路基板(制御回路)との電気的に結合されている。
【0017】
図4は、図3に示した記録装置の記録制御部とホストPCとで構成される画像処理システムにおける画像データ処理を行う構成を示すブロック図である。図4において、インクジェット記録装置の記録制御部500は、インターフェース400を介して、プリンタドライバがインストールされたホストPC1200より転送されるデータ処理を行う。
【0018】
ホストPC1200では、アプリケーションから入力画像データ1000を受け取る。この入力画像データ1000は、画像構成要素の種類に関する情報(画像の属性情報)関する情報を含んでいる。先ず、受け取った入力画像データ1000を1200dpiの解像度でレンダリング処理1001を行う。これによって、記録用多値RGBデータ1002が生成される。本実施形態では、記録用多値RGBデータ1002は256値のデータである。一方、入力画像データ1000に基づき、記録すべき画像内に含まれる複数種の画像構成要素である文字、線画および純黒(R,G,B=0,0,0)のオブジェクト判別処理1003を行う。オブジェクト判別処理1003で判別された文字データ1004、線画データ1005及び純黒データ1006について、それぞれに対してレンダリング処理1008、1009、1022を行う。これにより、解像度1200dpiの2値の文字オブジェクトデータ1010、2値の線画オブジェクトデータ1011及び2値の純黒オブジェクトデータ1023が生成される。以上のように生成された記録用多値RGBデータ1002と2値の各オブジェクトデータ1010、1011及び1023は記録制御部500に転送される。
【0019】
記録制御部500では、色変換処理1012を行い、記録用多値RGBデータ1002を多値(256値)のBkCMYデータ1013に変換する。次いで、多値(256値)のBkCMYデータ1013を量子化処理1014(例えば、誤差拡散処理)によって量子化(2値化)する。これにより、解像度1200dpiの2値BkCMYデータ1015が生成される。一方、記録制御部500に転送された2値の文字オブジェクトデータ1010、2値の線画オブジェクトデータ1011及び2値の純黒オブジェクトデータ1023に対しては、それぞれ、非エッジ部検出処理1016、1017、1025を行う。これにより、2値の文字非エッジ部データ1018、2値の文字エッジ部データ1019、2値の線画非エッジ部データ1020、2値の線画エッジ部データ1021、2値の純黒非エッジ部データ1026、2値の純黒エッジ部データ1027、が生成される。
【0020】
最後に、2値のBkデータ1015と、2値の文字非エッジ部データ1018、2値の文字エッジ部データ1019、2値の線画非エッジ部データ1020、2値の線画エッジ部データ1021、2値の純黒非エッジ部データ1026、2値の純黒エッジ部データ1027について、後述するオブジェクト別データ処理1024が行われる。
【0021】
図5は、図4におけるオブジェクト別データ処理1024の手順を示すフローチャートである。
【0022】
図4および図5に示されるように、2値の文字非エッジ部データ1018、2値の文字エッジ部データ1019、2値の線画非エッジ部データ1020、2値の線画エッジ部データ1021、2値のBkデータ1015、2値の純黒非エッジ部データ1026、2値の純黒エッジ部データ1027、が入力されたことに応じて、Bkのオブジェクト別データ処理が開始される。
【0023】
先ず、着目画素のエッジデータであるか否かを判定する(S101)。エッジデータではないと判定された画像データに関して、非エッジ部のデータか否かを判定する(S102)。さらに、非エッジ部と判定された画像に関して、データを間引くための間引きマスクを適用し、非エッジ部の間引きデータを生成する(S103)。
【0024】
一方、ステップS101でエッジ部と判断された画素の集合をBkの文字/線画/純黒のエッジ部データとして合成する(S118)。また、間引きマスクが適用された、文字、線画、純黒データの非エッジデータはS102で判定されたBkの無属性データと合成される。これにより、Bkの合成データ(Bkの記録データ)を生成して(S104)、Bkのオブジェクト別データ処理を終了する。この後、ヘッドドライバ405を通して記録ヘッド201〜204へ各色記録データを転送し、各々の記録ヘッドで記録を行う。
【0025】
なお、画像データからのエッジデータの抽出及び非エッジデータ生成方法は当該事業者らにおいては周知の事実であるため、ここではそれらの説明を省略する。また、本実施形態ではRGB多値入力データについて説明を行ったが、CMYBk多値、CMYBk2値データ入力においても同様の効果を得ることが出来ることは以上の説明からも明らかである。
【0026】
図6(a)および(b)は、以上説明した本実施形態のインクジェット記録装置で用いることが可能な記録ヘッド1の吐出口列が設けられた面を示す図である。上述したように、記録ヘッドはキャリッジに対して着脱自在に装着されるものであり、記録装置は、交換によって同じ仕様であるが別の記録ヘッドを用いることができる。図6(a)および(b)に示すように、本実施形態の記録ヘッド1は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、顔料ブラック(Bk1)、染料ブラック(Bk2)の5種類のインクを吐出するそれぞれのヘッドチップ30C、30M、30Y、30Bk1、30Bk2によって構成されている。なお、図6(a)および(b)では、各ヘッドチップにおける複数の吐出口の配列の図示は省略されているが、その配列方向は図において各ヘッドチップを区画する縦方向の直線と同じ方向である。
【0027】
図6(a)に示す記録ヘッドは、それぞれのヘッドチップのノズル列(記録素子列)に傾きがない状態で製造されたものである。これに対し、図6(b)は、製造過程において、ヘッドチップ30Bk1のノズル列が角度Hだけ傾いた状態となり、同じブラックインクに係るヘッドチップBk2のノズル列は実質的に傾きの無い状態であることを示している。このようなノズル列の傾きは、記録ヘッドの製造過程において、例えば、ヘッドチップを基体に対する貼付け誤差などの誤差が生じたことに起因している。このようなヘッドチップの貼付け誤差は、冶工具による調整貼り付けが可能であるため、樹脂成形などの製造寸法と比較して小さい誤差であるが、おおよそ数十ミクロン程度となる。このため、例えば、記録ヘッドの1回の走査(パス)で罫線を記録する場合、ノズル列の傾きがそのまま罫線ズレとなって現われることになる。ノズル列の傾きのその他の原因として、キャリッジに対する装着誤差も挙げることができる。すなわち、例えば、インクの種類ごとのノズル列が個別の記録ヘッドとして用いられる構成において、キャリッジに装着されるときに記録ヘッドが傾いて装着されることもある。このような場合もノズル列は正規の所定方向から傾いた状態で用いられることになる。
【0028】
本実施形態の記録装置は、以上のように、ノズル列が正規の方向から傾いた状態である可能性があるため、先ず、記録ヘッドが新たに装着されたことを検知すると、新しい記録ヘッドについてノズル列の傾きを検出する処理を行う。例えば、ノズル列における最上端のノズルと最下端のノズルから吐出されたインクのドットをセンサーによって検出し、2つのドット位置に対して最小二乗法を用いて、2つのドットを通る一次関数を求め、一次関数の傾きを判断する。インクドットの読取りは、スキャナーなどの外部検出装置を用いてもよい。以上のようにして求めた各ノズル列によって記録されるドットの直線の傾きをメモリに格納する。
【0029】
以上のように求めたノズル列の傾き情報に基づき同じ色のインクを吐出する複数のノズル列を利用することによって、ノズル列が傾いていても罫線のずれなどの記録品位の低下を低減する、記録動作の実施形態を以下に説明する。
【0030】
(第1実施形態)
本発明の第1の実施形態は、罫線などの線画像の細さのレベルに応じてノズル列を使い分ける形態に関するものである。
【0031】
一般に、CAD画像などを記録するユーザは速さを求める場合が多く、1パスなどの低パスモードを選択する場合が多い。その際、副走査方向(搬送方向)に延びる罫線はノズル列における個々のノズルから吐出するインクのドットを連ねて形成する。このため、ノズル列の傾きがパス間のつなぎにおける罫線ずれとして直接現れる。罫線の太さが大きい場合は、数十ミクロン程度のノズル傾きから生じる罫線ずれはそれほど目立たない。しかし、1〜数ドットからなる線の太さの場合は、傾きによる罫線ずれが顕著に目立つ。
【0032】
そこで、図6(b)に示すような、インクBk1のノズル列(ヘッドチップ30Bk1)に傾きがある場合に、記録する線の細さのレベルに応じて、このノズル列と、傾きの無いインクBk2のノズル列(ヘッドチップ30Bk)とを選択的に用いる。
【0033】
図7は、本実施形態に係る記録動作を示すフローチャートであり、特に、線画像の太さに応じてノズル列(30Bk1)とノズル列(30Bk2)を使い分ける処理を示している。また、図8は、このノズル列の使い分けを実際の罫線の記録において説明する図である。
【0034】
図7において、先ず、ステップS1でホストから記録データの入力がされると、ステップS2で、画像データを展開する。この展開されたデータには図4に示した線画データ1005が含まれている。
【0035】
次に、ステップS201で、所定の閾値以下の細い直線画像があるか否かを判断する。この閾値は、例えば、画像形成のためのパス数(走査数)や記録ヘッドからのインク吐出で実現できる最大線幅などに応じて定めることができる。また、上述したように、罫線ずれが目立つか否かに応じて閾値を定めることができる。記録ヘッドは、製造上のばらつきによって吐出状態がばらつき最大線幅が変動する。なお、この判断は、図6(a)、(b)にて説明したように、同じ色のインクについて複数のノズル列があるインクの色の直線画像についてのみ行う。図6(a)、(b)に示す例では、このインク色はブラックになる。
【0036】
ステップS201で閾値以下の細い直線画像があると判断されたときは、ステップS3で、複数のノズル列のうち、上述した、メモリに格納された傾き情報を取得する。そして、この傾き情報に基づき、より傾きの少ないノズル列を選択し、閾値以下の細い直線画像をそのノズル列で記録し、より傾きの大きいノズル列では上記細い直線画像を記録しないように、記録データの設定を行う。図6(b)に示した記録ヘッドを用いている場合、ステップS3では、ノズル列(Bk2)が上記細い直線画像を記録するノズル列として、また、ノズル列(Bk1)では記録しないように、記録データが設定される。この結果、図8において、細線80はノズル列(Bk2)にのみによって記録されることになる。
【0037】
一方、ステップS201で、閾値より太い細線と判断された直線画像については、本実施形態では、ノズル列(Bk1)とノズル列(Bk2)とで分担してその直線画像を記録する。この設定は、ステップS4で併せて行う。この分担の仕方としては、例えば、直線画像を構成する画素の一つおきのカラムを一方のノズル列で記録し、残りのカラムを他方のノズル列で記録するものがある。この結果、図8において、直線81は、2つのノズル列(Bk1、Bk2)によって分担して記録される。
【0038】
以上の記録データの設定の後、ステップS4で、キャリッジ2の駆動パラメータを設定し、ステップS5でキャリッジ2を駆動して記録ヘッドを走査させ記録動作を行う。
【0039】
以上のように、本実施形態によれば、罫線ずれが目立つ細線を、同じ色を記録する2つのノズル列のうちより傾きの少ないノズル列で記録するようにするので、罫線ずれによる記録品位の低下を改善することができる。
【0040】
(第2実施形態)
本発明の第2の実施形態は、罫線ずれを低減するとともに、細線や文字の輪郭の明瞭な細線などを記録する形態に関するものである。
【0041】
縁部の輪郭が明瞭なほど、線品位が高い印象を与える。記録媒体に対して走査しながら吐出を行う記録ヘッドからは、主滴と呼ばれるインク滴以外にサテライトと呼ばれる小さなインク滴が吐出される場合がある。サテライトによるドットは、主滴の位置よりも時間的に遅れた場所に形成される。そのため、線の外にサテライトが形成された場合、線の明瞭性が損なわれる。本実施形態は、このサテライトによる影響を排して縁部の輪郭が明瞭な記録を行うともに、上述した罫線ずれを低減するものである。
【0042】
図9は、本実施形態に係る記録動作を示すフローチャートであり、特に、縁部とそれ以外でノズル列を使い分ける処理を示している。また、図10(a)〜(c)は、本実施形態の細線縁部のドット形成過程を説明する図である。
【0043】
図10(a)は、傾きの無い複数のノズル列で理想的な直線画像を記録した結果を示している。この図に示す細線の縁部は、ドットが規則的に並んでおり、複数のノズル列間で形成するドットのばらつきが無い状態を示している(便宜上、ドットはすべて白丸で表現しているが、それぞれが異なるヘッドからの吐出である。)。これに対し、図10(b)は、複数のノズル列総てに同じ傾きがある状態での記録結果を示している。この場合、上述したように、罫線ずれがある直線となる。
【0044】
図10(c)は、本実施形態による記録結果を説明する図であり、細線の縁部をより傾きの少ないノズル列(例えば、ノズル列(30Bk2))を用いて記録することを示している。なお、ここで、「縁部」とは、細線画像のうち、細線に直交する方向の両端の領域で所定の数のドット列(図10(c)に示す例では、それぞれ2列)からなる領域である。図10(c)において、より傾きの小さいノズル列によるドットは黒丸で表されている。この縁部以外は、上記ノズル列以外のノズル列または同じ色を記録する総てのノズル列で記録する。それらのノズル列によるドットは白丸で表されている。この結果、細線の罫線ずれが低減される。
【0045】
図9に示す記録動作において、本実施形態では、特に、ステップS301で、縁部と非縁部の判別を行う。これは、図4にて説明した非エッジ部検出処理1016、1017による。そして、ステップ302で、縁部に用いるノズル列の選択を行う。具体的には、図6(b)に示す記録ヘッドを用いる場合、縁部をより傾きの小さいノズル列(30Bk2)で記録し、縁部以外をノズル列(30Bk1)で記録する。
【0046】
次に、ステップ4で、キャリッジ2の各駆動方法を決める場合、往復走査の両方で記録を行う双方向記録を行うか、往路走査時のみもしくは復路走査時のみ記録を行う片方向記録を選択することが出来る。上記発明を効果的に実施するには、双方向記録時には細線の内部にサテライトが形成されるように、記録制御を行う。
【0047】
以上のように、本実施形態によれば、細線の縁部とそれ以外で用いるノズル列を使い分けることにより、罫線ずれを提言できるとともに、細線の縁部の輪郭をより明瞭にすることができる。
【0048】
(他の実施形態)
なお、本例は、ブラックの線図についての品位の向上をするものであるが、これに限られないことはもちろんである。例えば、文字、あるいは所定のカラーを有した文字、線画、図形などを記録する場合に、本発明を適用することもできる。この場合、そのカラーを構成するシアン、マゼンタ、イエローなどの色についても、上記と同様にそれらの色のノズル列の傾きを検出しそれに基づく処理を行う。
【0049】
また、本発明の適用は、インクジェット方式の記録装置に限られないことはもちろんであり、記録素子列を備えた記録ヘッドを用いて記録を行う記録装置であれば、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 記録ヘッド
30Bk1、30Bk2 ヘッドチップ(ノズル列)
300 吐出口(ノズル)
500 記録制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じ色の記録を行うことができる複数の記録素子列を用いて記録媒体に記録を行う記録装置であって、
前記複数の記録素子列それぞれの、当該記録素子列によって記録媒体に当該記録素子列の配列方向に沿った直線画像を記録したとするときの当該直線画像の所定の方向からの傾き情報を取得する取得手段と、
記録すべき画像の中に所定の太さ以下の直線画像があるか否かを判断する判断手段と、
前記所定の太さ以下の直線画像がある場合、前記傾き情報が示す傾きがより小さい記録素子列を用いて前記所定の太さ以下の直線画像を記録するよう制御する制御手段と、
を具えたことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
同じ色の記録を行うことができる複数の記録素子列を用いて記録媒体に記録を行う記録装置であって、
前記複数の記録素子列それぞれの、当該記録素子列によって記録媒体に当該記録素子列の配列方向に沿った直線画像を記録したとするときの当該直線画像の所定の方向からの傾き情報を取得する取得手段と、
直線画像の、当該直線に直交する方向の縁部を、前記傾き情報が示す傾きがより小さい記録素子列を用いて記録するよう制御する制御手段と、
を具えたことを特徴とする記録装置。
【請求項3】
同じ色の記録を行うことができる複数の記録素子列を用いて記録媒体に記録を行うための記録方法であって、
前記複数の記録素子列それぞれの、当該記録素子列によって記録媒体に当該記録素子列の配列方向に沿った直線画像を記録したとするときの当該直線画像の所定の方向からの傾き情報を取得する取得工程、
記録すべき画像の中に所定の太さ以下の直線画像があるか否かを判断する判断工程と、
前記所定の太さ以下の直線画像がある場合、前記傾き情報が示す傾きがより小さい記録素子列を用いて前記所定の太さ以下の直線画像を記録するよう制御する制御工程と、
を有したことを特徴とする記録方法。
【請求項4】
同じ色の記録を行うことができる複数の記録素子列を用いて記録媒体に記録を行うための記録方法であって、
前記複数の記録素子列それぞれの、当該記録素子列によって記録媒体に当該記録素子列の配列方向に沿った直線画像を記録したとするときの当該直線画像の所定の方向からの傾き情報を取得する取得工程と、
直線画像の、当該直線に直交する方向の縁部を、前記傾き情報が示す傾きがより小さい記録素子列を用いて記録するよう制御する制御工程と、
を有したことを特徴とする記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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