記録装置及びその制御方法
【課題】コストを抑えたまま、記録開始時点から安定したインク吐出量で記録動作を実行できるようにする。
【解決手段】記録装置は、複数の吐出口に対応した電気熱変換素子それぞれに電圧を印加し、該複数の吐出口全てが配置された領域を加熱する第1の温調動作の実行を制御する第1の制御手段と、前記複数の吐出口のうちいずれかの吐出口に対応した電気熱変換素子それぞれに電圧を印加し、前記吐出口の配置方向に沿ってその両端部から所定数の吐出口が配置された所定の領域よりも、該所定の領域以外に配置された吐出口の領域に対する加熱の度合いを弱くして加熱する第2の温調動作の実行を制御する第2の制御手段、前記記録の開始前に、前記第1の制御手段及び前記第2の制御手段を制御して、第1の温調動作と第2の温調動作とを含む複数段階の前記記録ヘッドの温度調整動作の実行を制御する温調制御手段を具備する。
【解決手段】記録装置は、複数の吐出口に対応した電気熱変換素子それぞれに電圧を印加し、該複数の吐出口全てが配置された領域を加熱する第1の温調動作の実行を制御する第1の制御手段と、前記複数の吐出口のうちいずれかの吐出口に対応した電気熱変換素子それぞれに電圧を印加し、前記吐出口の配置方向に沿ってその両端部から所定数の吐出口が配置された所定の領域よりも、該所定の領域以外に配置された吐出口の領域に対する加熱の度合いを弱くして加熱する第2の温調動作の実行を制御する第2の制御手段、前記記録の開始前に、前記第1の制御手段及び前記第2の制御手段を制御して、第1の温調動作と第2の温調動作とを含む複数段階の前記記録ヘッドの温度調整動作の実行を制御する温調制御手段を具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式を採用した記録装置が知られている。このような記録装置では、記録ヘッドを往復移動させながら、当該記録ヘッドに配列された吐出口からインクを吐出することにより、記録媒体に画像を記録する。このような記録装置においては、例えば、インク滴を吐出する手段として発熱素子のような電気熱変換素子(以下、吐出ヒータと呼ぶ)により生成した気泡を用いる方法が利用されている。このような熱を利用した記録方式は、装置の小型化、画像の高密度化が容易であるなどの特徴を有している。
【0003】
熱を利用した記録方式では、記録ヘッドにおいて、電気信号(以下、パルスと呼ぶ)を吐出ヒータに印加することで電気信号を熱エネルギーに変換する。そして、この熱エネルギーを用いてインクに膜沸騰を生じさせ、その沸騰による気泡の発泡圧力を利用してインクを吐出させる。これにより、吐出されたインク滴が記録媒体へ着弾し、記録媒体上にドットが形成される。
【0004】
このような熱を利用した記録方式において、インク吐出量は、インクの粘度に依存して変動することが知られている。ここで、インクの粘度は、温度に依存して大きく変化するため、インク吐出量は、吐出ヒータ近傍のインクの温度に依存して変動することになる。具体的には、吐出ヒータ近傍のインクの温度が上昇した場合、インク吐出量が増加してしまう。これは、インクの粘度が高温であるほど低くなり、それを起因として、インクの流動性が向上するためである。また、膜沸騰で生じる気泡の成長が高温度であるほど促進されるといったことも原因の一つである。
【0005】
そのため、記録等により吐出ヒータを発熱させることから生じる記録ヘッドの昇温によって、インク吐出量は、記録ヘッドの昇温以前に比べ増加することになる。また、熱エネルギーは、吐出ヒータにパルスを印加することにより発生される。そのため、吐出ヒータに対して偏りなく通電した場合、それらの配置方向への温度分布は、例えば、金属棒に一様に発熱量を与えたときと同様に、中心ほど温度が高いものとなる。その結果、高温の箇所と低温の箇所ではインク吐出量に違いが生じてしまう。
【0006】
このような場合、インク滴が記録媒体に着弾することにより形成されるドット径の大きさにばらつきが生じるため、記録される画像に濃度むらが発生し、記録品位の悪化を引き起こしてしまう可能性がある。これは、近年求められている高速記録を実現するために、より高周波数で吐出ヒータを駆動させた場合や、吐出口の数を増やした場合に顕著に表れる。
【0007】
ところで、一定時間使用しなかった吐出口においては、外気との接触面からインクの揮発成分が蒸発することにより吐出口付近のインクの粘度が増加(増粘)し、それが原因となりインクの吐出が満足に行なわれないこともある。この現象が発生した場合、特に、記録初期においてインクの濃度の増大やインクの吐出速度の低下が引き起こされてしまう。最悪の場合には、インクの不吐出が生じてしまう。
【0008】
このような事態に対処するためには、インクの粘度が高温であるほど低いことを考慮すると、インクを加熱することによってインクの粘度を低下させる手段が有効であるといえる。これを踏まえ、インクの増粘による吐出不安定を解決するために、これまで主に2つの方法が知られている。
【0009】
1つ目の方法としては、吐出ヒータを駆動して記録ヘッドを加熱する方法が知られており、2つ目の方法としては、記録ヘッドを加熱するためのヒータ(以下、サブヒータと呼ぶ)を吐出ヒータとは別に設けて記録ヘッドを加熱する方法である。
【0010】
前者の方法では、インクが膜沸騰しない程度のパルス、例えば、短いパルス幅(以下、短パルスと呼ぶ)を吐出ヒータに印加することでインクを吐出させずに、記録ヘッドを加熱する。後者の方法では、サブヒータに任意のパルスを印加することで記録ヘッドを加熱する。
【0011】
ここで、吐出ヒータを用いて加熱する手法に関して、特許文献1〜3に記載された技術が知られている。特許文献1には、記録ヘッドの温度条件に応じた適切なデューティー(記録時の記録ヘッドの駆動周波数と同等の周波数で短パルスを印加する場合をデューティー100%としている)で非記録時に短パルスを印加して加熱する方法が提案されている。特許文献2には、記録時に使用しない吐出ヒータに短パルスを印加することで加熱を行なう方法が提案されている。また、特許文献3には、記録ヘッド走査中における加速域を含む非記録時に加熱を行なう方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平10−16228号公報
【特許文献2】特開平5−24199号公報
【特許文献3】特開平8−336962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ここで、特許文献1においては、上述した通り、デューティーを変化させて加熱を行なうが、このような加熱を行なったとしても、全ての吐出ヒータに対してパルスを印加することになる。そのため、吐出口の配置方向に沿った吐出口列内の温度が均一とならず、吐出口列の中心部付近の温度が吐出口列端部付近よりも高くなってしまう。また、特許文献3においても、特許文献1の場合と同様に吐出口列内の温度が均一とならない。特に、高速記録を行なうため、素早く加熱した場合はこのような温度の偏りが顕著に現れる。
【0014】
また更に、特許文献2においては、記録時に使用しない吐出ヒータに短パルスを印加するが、この処理を実際に行なうためには、記録時に吐出用のパルスと加熱用のパルスとを同時に与える回路を実装する必要がある。そのため、記録ヘッド及び装置のコストアップが生じてしまう。
【0015】
このように吐出ヒータによる加熱方法では、一般に、吐出口の配置方向に沿った吐出口列の温度分布が均一とならない。そのため、吐出口全てを目標温度以上に加熱しようとした場合、目標温度に対しオーバーシュートしてしまう箇所が生じる。つまり、吐出口列端部付近を十分に加熱する場合、吐出口列中心部付近は想定以上に昇温していることになる。言い換えれば、電力を余分に消費しているともいえる。
【0016】
一方で、休止時間をとることで昇温のオーバーシュートを防ぐ方法もあるが、これでは上述した温度分布を均一にするのに余分に時間がかかってしまう。また、温度分布も均一とならず、インクの吐出量にばらつきが生じ、特に、記録開始時において記録される画像に濃度むらが発生する。
【0017】
一方、サブヒータによる加熱方法においては、吐出ヒータによる加熱方法よりも上述した温度分布を比較的均一にすることができるが、サブヒータや配線等を余分に配置しなければならず、コストアップを招いてしまう。
【0018】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、コストを抑えたまま、記録開始時点から安定したインク吐出量で記録動作を実行できるようにした技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、熱エネルギーを利用してインクを吐出するために、インクに与える熱エネルギーを発生する電気熱変換素子を有する吐出口が複数配置される記録ヘッドを有し、該記録ヘッドを用いて記録媒体に画像を記録する記録装置であって、前記複数の吐出口に対応した電気熱変換素子それぞれに電圧を印加し、該複数の吐出口全てが配置された領域を加熱する第1の温調動作の実行を制御する第1の制御手段と、前記複数の吐出口のうちいずれかの吐出口に対応した電気熱変換素子それぞれに電圧を印加し、前記吐出口の配置方向に沿ってその両端部から所定数の吐出口が配置された所定の領域よりも、該所定の領域以外に配置された吐出口の領域に対する加熱の度合いを弱くして加熱する第2の温調動作の実行を制御する第2の制御手段と、前記記録の開始前に、前記第1の制御手段及び前記第2の制御手段を制御して、前記第1の温調動作と前記第2の温調動作とを含む複数段階の前記記録ヘッドの温度調整動作の実行を制御する温調制御手段とを具備する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、コストを抑えたまま、記録開始時点から安定したインク吐出量で記録動作を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係わる記録装置の構成の一例を示す斜視図。
【図2】ヒータの駆動信号(パルス)の一例を示す図。
【図3】図1に示す記録ヘッド2の構成の一例を示す図。
【図4】記録ヘッドの構成の一例を示す図。
【図5】図1に示す記録装置20における制御系の構成の一例を示す図。
【図6】本実施形態に係わる2段階温調法を概要を説明するための図。
【図7】第1の温調動作及び第2の温調動作における温調条件の一例を示す図。
【図8】実施形態1に係わる処理の流れの一例を示すフローチャート。
【図9】実施形態1に係わる吐出口列の温度分布を説明するための図。
【図10】実施形態2の概要を説明するための図。
【図11】実施形態2に係わる吐出口列の温度分布を説明するための図。
【図12】実施形態3に係わる吐出口列の温度分布を説明するための図。
【図13】実施形態4に係わる第1の温調動作及び第2の温調動作における温調条件の一例を示す図。
【図14】実施形態4に係わる吐出口列の温度分布を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、この明細書において、「記録」とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、又は媒体の加工を行なう場合も表す。また、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わない。
【0023】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表す。
【0024】
また、「インク」とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきもので、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成又は記録媒体の加工、或いはインクの処理に供され得る液体を表すものとする。インクの処理としては、例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固又は不溶化させることが挙げられる。
【0025】
また更に、「ノズル」とは、特に断らない限り吐出口乃至これに連通する液路及びインク吐出に利用されるエネルギーを発生する素子を総括して言う。
【0026】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係わるインクジェット記録装置(以下、記録装置)の構成の一例を示す斜視図である。
【0027】
記録装置20は、インクジェット方式に従ってインクを吐出して記録を行なうインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッドと呼ぶ)2をキャリッジ3に搭載し、キャリッジ3をガイドレール4に沿って矢印A方向(主走査方向)に往復移動させて記録を行なう。記録装置20は、記録媒体を給紙トレイ5を介して給紙し、矢印Aに直交する方向(副走査方向)に搬送する。そして、記録ヘッド2の吐出口面と対峙する記録位置において、記録ヘッド2から記録媒体にインクを吐出することで記録を行なう。ここで、キャリッジ3が記録媒体の一端から他端まで移動すると、記録媒体が搬送ローラ(不図示)によってキャリッジ3の副走査方向に所定量だけ搬送される。この記録動作と記録媒体の搬送動作とが交互に繰り返されることにより記録媒体全体に画像が形成される。
【0028】
記録ヘッド2には、吐出口が形成されている。この吐出口は、所定方向(副走査方向)に沿って複数配置されており、これにより、吐出口列を構成する。なお、吐出口列は、複数設けられている(本実施形態においては、2つ)。
【0029】
各吐出口には、それぞれに対応して電気熱変換素子が備えられている。電気熱変換素子は、熱エネルギーを利用してインクを吐出するために、インクに与える熱エネルギーを発生する。
【0030】
記録装置20のキャリッジ3には、記録ヘッド2の他、例えば、インクタンク1が搭載される。インクタンク1は、記録ヘッド2に供給するインクを貯留する。なお、インクタンク1は、キャリッジ3に対して着脱自在になっている。また、環境温度を測定する環境温度センサ(不図示)が、例えば、キャリッジ3等に備え付けられている。
【0031】
ここで、本実施形態に係わる記録装置20においては、環境温度が所定温度(例えば、25℃)の時に、インク吐出量のばらつきを抑えた上でインクの粘度を低下させるために、記録ヘッド2の温度を調整する温度調整動作(以下、温調動作と呼ぶ)を行なう。具体的には、記録開始前(直前)に、吐出口の配置方向に沿った吐出口列の温度分布を、吐出ヒータ(以下、ヒータと呼ぶ)を用いて目標温度(例えば、約40℃)に均一にする。
【0032】
この温調動作は、インクの吐出に有効でない、すなわち、インクが吐出されない程度の電圧をヒータに印加することにより行なわれる。本実施形態においては、短パルス(短いパルス幅の電気信号)をヒータに印加する手法を用いて記録ヘッド2の温調動作を行なう。短パルスは、図2(a)に示すインクを吐出させるために用いるダブルパルスに比べ、図2(b)に示すように、そのパルス幅が短い。
【0033】
本実施形態においては、温調動作としては、短パルスを印加するヒータの数や位置、短パルスの幅、電圧、駆動周波数、等に対する条件を2種類設ける。そして、当該2種類の条件(以下、温調条件と呼ぶ)により段階的に温調する(以下、2段階温調法と呼ぶ)。また、2段階温調法のうち、第1の温調条件に従って行なう温調動作を第1の温調動作、当該第1の温調条件とは異なる第2の温調条件に従って行なう温調動作を第2の温調動作と呼ぶ。本実施形態においては、第1の温度動作を行なった後、第2の温調動作を実施する。
【0034】
次に、図1に示す記録ヘッド2の構成の一例について説明する。
【0035】
記録ヘッド2には、図3(a)に示すように、ヒータ(不図示)を含む吐出口が複数形成される素子基板6(以下、ヒータボードと呼ぶ)が1又は複数設けられる。なお、図3(a)の場合、ヒータボード6が4つ設けられており、各ヒータボード6には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のインクがそれぞれ充填されている。
【0036】
図3(b)は、図3(a)に示すヒータボード6の構成の概略を示す図である。ヒータボード6上には、複数の吐出口7が形成されている。本実施形態に係わるヒータボード6は、例えば、その長手方向(すなわち、吐出口の配置方向)の長さが約1インチであり、2つの吐出口列が配置されている。また、1つの吐出口列には、吐出口が640個配置されている。
【0037】
また、ヒータボード6の長手方向の両端部には、記録ヘッド2(より詳細には、ヒータボード6)の温度を測定する温度センサ91(91a、91b)が設けられている。なお、図3(b)に示すヒータボード6において、D1は第1の温度センサの位置座標を示し、D2は第2の温度センサの位置座標を示し、N1は吐出口列の第1の端部の位置座標を示し、吐出口列の第2の端部の位置座標を示している。
【0038】
上述した温度センサ91は、例えば、ダイオードで実現される。一般に、熱インクジェット記録方式の場合、吐出口が同一基板上に高密度に形成されるため、温度センサとして使用されるダイオードを吐出口列が形成された領域に配置することが困難である。そこで、本実施形態においては、ヒータボード長手方向の両端近傍に温度センサ91(91a、91b)が配置されている。なお、温度センサ91は、必ずしもこの位置に配置される必要はなく、記録ヘッド2において、吐出口が配置される領域以外のいずれかの位置に配置されていれば良い。例えば、1つのみ配置されていても良いし、また、3つ以上配置されていても良い。温度センサは、配置数を増やせば、吐出口の配置方向に沿った吐出口列の温度分布(単に、吐出口列の温度分布と呼ぶ場合もある)を精度良く把握できることになる。
【0039】
ここで、図4(a)には、ヒータボード6の短手方向の断面(図3(b)におけるB−B’断面)の概略構成が示されている。ヒータボード6においては、インク10が吐出口7から吐出されるようにするため、ヒータ8が吐出口7のほぼ直下に設けられる。なお、インク10の吐出に際しては、ヒータ8に熱エネルギーを与えてインク10を膜沸騰させる。そして、この膜沸騰により気泡12が発生し、その発泡圧力を利用してインク10がインク滴11として吐出される。
【0040】
また、図4(b)には、記録ヘッド2のヒータボード6及びその土台となるベースプレート13の長手方向の断面(図3(b)におけるC−C’断面)の概略構成が示されている。図4(c)は、図4(b)に示すベースプレート13の一部を示す斜視図であり、矢印Lは、ヒータボード6の長手方向に対応する。ヒータボード6及びベースプレート13は、図4(b)に示すように、密着して形成される。これにより、ヒータボード6で生じた熱がベースプレート13に逃げるため、ヒータボード6の温度が極端に高くなることが防止される。
【0041】
次に、図5を用いて、図1に示す記録装置20における制御系の構成の一例について説明する。
【0042】
記録装置20は、主制御部100と、ヘッドドライバ104と、モータドライバ105及び106と、環境温度センサ107と、温度センサ91と、記録ヘッド2と、CRモータ108と、LFモータ109とを具備して構成される。
【0043】
主制御部100は、記録装置20における処理を統括制御する。例えば、記録シーケンス等の実行を制御する。主制御部100は、CPU101と、パルスの幅、電圧、その他の固定データを格納したROM102と、CPU101の作業領域等として使用されるRAM103とを具備して構成される。なお、記録ヘッド2に設けられた温度センサ91により検出された検出値は、主制御部100に入力される。
【0044】
ヘッドドライバ104は、記録データ等に応じて記録ヘッド2のヒータを駆動する。CRモータ108は、キャリッジ3を主走査方向(図1の矢印A方向)に移動させるための駆動源であり、モータドライバ105は、当該CRモータ108のドライバである。LFモータ109は、記録媒体を搬送するための駆動源であり、モータドライバ106は、当該LFモータ109のドライバである。環境温度センサ107は、環境温度を測定する。なお、環境温度センサ107により検出された検出値は、主制御部100に入力される。
【0045】
ここで、図6(a)及び図6(b)を用いて、本実施形態における2段階温調法の概要について説明する。なお、図6(a)及び図6(b)は、吐出口の配置方向に沿った吐出口列の温度分布を示しており、図6(a)は、本実施形態に係わる温度分布を示し、図6(b)は、従来例に係わる温度分布を示している。
【0046】
第1の温調動作においては、吐出口列に含まれる吐出口全てに対して満遍なく発熱量を与えて記録ヘッド2の加熱を行なう。この第1の温調動作を行なった後、その終了時点での温度分布は、吐出口列中心部付近を最大温度とする山型の分布が得られる。特に、吐出口列長が約1インチと長く、且つ当該吐出口列を素早く加熱する場合、このような山型の分布になる傾向が強い。
【0047】
第2の温調動作においては、吐出口列端部付近よりも、吐出口列中心部付近の発熱量を弱くして記録ヘッド2を加熱する。より詳細には、吐出口の配置方向に沿ってその両端部から所定数の吐出口が配置された所定の領域よりも、当該所定の領域以外に配置された吐出口の領域に対する加熱の度合いを弱くして記録ヘッド2を加熱する。すなわち、吐出口列中心部付近よりも相対的に低温となっている吐出口列端部付近を昇温させる。
【0048】
第1の温調動作及び第2の温調動作を実行することにより、これら温調動作の終了時点では、吐出口列の温度分布は、吐出口の配置方向に沿ってその端部から中心部までほぼ均一となる。
【0049】
また、第1の温調動作の終了時点では、吐出口列中心部付近の方が吐出口列端部付近よりも熱エネルギーが蓄えられる。第2の温調動作へ移行後、その吐出口列中心部付近で蓄えられていた熱エネルギーは、吐出口列端部方向へ拡散する。これに加えて、第2の温調動作により吐出口列端部付近が加熱され昇温する。この2つの作用を合わせることで、第2の温調動作の終了時点、つまり、記録開始前(直前)において、吐出口の配置方向に沿った吐出口列の温度を均一にする。
【0050】
また更に、第2の温調動作においては、吐出口列中心部付近に対して第1の温調動作時よりも弱い加熱を行なう。これは、吐出口列中心部付近が周囲への熱エネルギーの拡散によって降温するのを防ぐためである。
【0051】
これに対して、従来手法においては、図6(b)に示すように、所定の温調動作が終わった後、吐出口の配置方向に沿った吐出口列の温度分布は、吐出口列中心部付近を最大温度とする山型の分布となる。そのため、吐出口の配置位置によってインク温度が異なってしまうので、それを起因としてインク吐出量にばらつきが生じてしまう。
【0052】
ここで、図7(a)及び図7(b)を用いて、第1の温調動作及び第2の温調動作における温調条件の一例について説明する。ここでは、第1の温調動作及び第2の温調動作における温調条件として、当該温調動作時に加熱対象(短パルスの印加対象)となるヒータの一例が示される。なお、図7(a)及び図7(b)は、環境温度が25℃の時に、記録ヘッド2を目標温度40℃に加熱する場合の温調条件が示される。
【0053】
図7(a)に示すように、第1の温調動作時においては、全ヒータに短パルスが印加される。これに対して、第2の温調動作時においては、全ヒータに対して短パルスが印加されない。ここでは、第1の温調動作及び第2の温調動作においてヒータに印加される短パルスはともに、その幅を0.24[μsec]とし、印加電圧を24[V]とする。吐出ヒータの発熱抵抗値は250[Ω]とする。なお、第1の温調動作及び第2の温調動作におけるパルスの印加時間(すなわち、パルス幅)や印加電圧は、それぞれ異なっていても良い。
【0054】
ここで、第2の温調動作時には、図7(a)に示すように、ヒータが複数の領域(この場合、3つ)に分割されて、短パルスの印加が行なわれる。具体的には、図7(b)に示すように、吐出口列の一方端から1〜48番及び593〜640番のヒータを領域Eとして短パルスの印加が行なわれる。また、49〜320番までの4n番(nは自然数)のヒータを領域C1−1とし、321〜592番までの4n+1番のヒータを領域C1−2として短パルスの印加が行なわれる。吐出口列の一方端から領域E、領域C1(領域C1−1、領域C1−2)、領域Eとなる。
【0055】
領域Eは、第1の温調動作時と同じ加熱度合いで加熱が行なわれる領域である。一方、領域C1−1及び領域C1−2は、第1の温調動作時に比べて、印加されるヒータが間引かれている(4分の1の数のヒータが印加される)領域である。すなわち、領域C1−1及び領域C1−2に対する加熱の量は、領域Eに対する加熱の量より相対的に小さい。分割された領域毎(領域E及び領域C1)に加熱の度合いが変更される。このようにして第2の温調動作時には、吐出口列中心部付近の降温を防ぎつつ、吐出口列端部付近に吐出口列中心部付近よりも相対的に多くの発熱量を与えるように加熱の制御が行なわれる。
【0056】
次に、第1の温調動作及び第2の温調動作の終了タイミングについて説明する。
【0057】
上述した通り、記録ヘッド2においては、ヒータボード6の(吐出口の配置方向に沿って)両端部に温度センサ91がそれぞれ配置されている。吐出口近傍のインクの温度は、インク吐出量に大きな影響を与えるが、このような位置に配置された温度センサ91においては、ヒータや吐出口近傍のインクの温度を直接検出できない。そのため、何らかの方法を用いてこの温度を予測する必要がある。なお、熱の発生源であるヒータから温度センサ91が離れた位置に配されているため、このような位置で検出された温度よりも発熱源であるヒータの近傍のインクの温度は高いと予想できる。
【0058】
そこで、第1の温調動作時の温調条件に従ってヒータに短パルスを印加したときの吐出口列の温度分布(特に、最大温度)と、温度センサ91が検出した温度(以下、センサ温度と呼ぶ)との関係を予め測定しておき、記録装置20に保持させる。そして、記録装置20においては、この保持した関係に基づいて第1の温調動作及び第2の温調動作を行なう。この温度分布とセンサ温度との関係は、例えば、所定の実験(本実施形態においては、サーモグラフィ装置を用いた温度測定実験)等に基づいて求めれば良い。なお、シミュレーション等により解析的に導出されても良い。この関係は、環境温度や目標温度を変化させた複数の条件において求め、吐出口の配置方向に沿った吐出口の位置及び温度の関係(吐出口列の温度分布)と、それに対応するセンサ温度とをデータ化しておく。そして、例えば、そのデータをテーブル(以下、温度分布テーブルと呼ぶ)として保持しておく。温度分布テーブルは、RAM103等に保持しておけば良い。なお、第2の温調動作時の温調条件(例えば、パルスの幅や駆動電圧等)は、この温度分布テーブルに基づいて最適となる条件を実験的に探索し決めれば良い。
【0059】
ここで、第1の温調動作の終了タイミングは、例えば、吐出口列の温度分布における最大温度が目標温度に達した時点とする。より具体的には、温度センサ91により検出された温度が、温度分布テーブルに保持された(目標温度に対応する)センサ温度に達したときが終了のタイミングとなる。つまり、これは吐出口列内の最大温度が目標温度に達したときに相当する。
【0060】
第2の温調動作の終了タイミングは、吐出口列の温度分布がほぼ均一となり、且つその温度が目標温度にほぼ達した時点とする。つまり、これは吐出口列の温度分布がほぼ均一となったタイミングとなる。
【0061】
第2の温調動作の終了タイミングの決定に際しては、第1の温調動作時と同様に、第2の温調動作の温調条件に従ってヒータに短パルスを印加したときの吐出口列の温度分布(特に、最大温度)と、センサ温度との関係を求める。そして、その保持した関係に基づいて第2の温調動作の終了タイミングを決定するための温度分布テーブルを作成し、それを記録装置20に保持させる。すなわち、第2の温調動作の終了タイミングは、この温度分布テーブル(第2の温調動作用の温度分布テーブル)に基づいて決められる。
【0062】
ここで、目標温度は、例えば、記録装置20や記録ヘッド2の特性に基づいて予め決められており、通常、一度決められると、その値は変更されない。目標温度は、記録装置毎に決められる。なお、目標温度、第1の温調動作及び第2の温調動作における温調条件や終了時点のセンサ温度等は、例えば、RAM103等に予め保持しておく。このRAM103等に保持された情報は、例えば、インターネット等(記録媒体であっても良い)から更新データをダウンロードし、書き換えることにより更新されても良い。
【0063】
なお、第2の温調の温調条件の決定方法としては、例えば、RAM103等に第1の温調動作用の温度分布テーブルを保持しておき、第2の温調動作を行なう度に、第1の温調動作用の温度分布テーブルから予想して第2の温調動作時の温調条件を決めても良い。より具体的には、第1の温調動作用の温度分布テーブルから各吐出口の温度の温度上昇率を求め、その情報に基づいて第2の温調動作時の温調条件を決めても良い。
【0064】
次に、図8を用いて、実施形態1に係わる温調制御処理(2段階温調法)の流れの一例について説明する。ここでは、環境温度をTa[℃]とし、目標温度をTt[℃]とし、センサ温度をTs[℃]とする。第1の温調動作用の温度分布テーブルにおけるセンサ温度(吐出口列内の最大温度が目標温度に達したときに対応したセンサ温度)をTs1[℃]とする。また、第2の温調動作用の温度分布テーブルにおけるセンサ温度(吐出口列の温度分布がほぼ均一となったときのセンサ温度)をTs2[℃]とする。
【0065】
この処理が開始すると、記録装置20は、まず、環境温度センサ107において、Ta(環境温度)を測定するとともに(S101)、CPU101において、Tt(目標温度)がTa以上であるか否かの判定を行なう。TTがTa以上であれば(S102でYES)、記録装置20は、2段階温調処理を開始する。一方、TTがTa未満であれば(S102でNO)、この処理は終了する。すなわち、ヒータや吐出口近傍のインクの温度が十分に上がっているため、記録動作が開始される。
【0066】
続いて、記録装置20は、CPU101において、S101の処理で検出したTaに基づいて第1の温調動作時の温調条件をRAM103等から取得する(S103)。例えば、環境温度や目標温度に合致するTs1を取得する。なお、第1の温調動作用の駆動電圧やパルス幅も取得しても良い。そして、記録装置20は、CPU101において、第1の温調動作の実行を制御する(第1の制御処理)。すなわち、S103で取得された温調条件に従って第1の温調動作が開始される(S104)。
【0067】
第1の温調動作が開始されると、記録装置20は、温度センサ91において、Ts(センサ温度)を測定するとともに(S105)、CPU101において、Tsが第1の温調動作の終了を示すTs1に達しているか否かを判定する。TsがTs1に達していなければ(S106でNO)、Tsの測定を引き続き行なうが、TsがTs1に達していれば(S106でYES)、記録装置20は、第1の温調動作を終了する(S107)。
【0068】
次に、記録装置20は、CPU101において、S101の処理で検出したTaに基づいて第2の温調動作時の温調条件をRAM103等から取得する(S108)。例えば、環境温度や目標温度に合致するTs2を取得する。なお、第2の温調動作用の駆動電圧やパルス幅も取得しても良い。そして、記録装置20は、CPU101において、第2の温調動作の実行を制御する(第2の制御処理)。すなわち、S108で取得されたの温調条件に従って第2の温調動作が開始される(S109)。
【0069】
第2の温調動作が開始されると、記録装置20は、温度センサ91において、Tsを測定するとともに(S110)、CPU101において、Tsが第2の温調動作の終了を示すTs2に達しているか否かを判定する。TsがTs2に達していなければ(S111でNO)、Tsの測定を引き続き行なうが、TsがTs1に達していれば(S111でYES)、記録装置20は、第2の温調動作を終了する(S112)。これにより、2段階温調処理が終了する。
【0070】
ここで、図9(a)を用いて、上述した2段階温調処理を実施した後の吐出口列の温度分布(すなわち、吐出口の配置方向に沿った吐出口列の温度分布)について説明する。図9(b)は、本実施形態における効果を説明するために、参考例として従来の温度分布について示している。なお、図9(a)において、N1、N2、D1及びD2は、図3(b)に示す符号にそれぞれ対応している。
【0071】
ここで、本実施形態における吐出口列の温度分布の均一性(平坦性)を表す指標として平坦率を定義する。平坦率は、N1〜N2の間の平均温度を中心値とする±1℃の温度範囲内にある吐出口の数の割合を示す。図9(a)及び図9(b)においては、対象となる範囲を示す破線の枠400を示している。この平坦率は、目標温度を約40℃として2段階温調処理を実施した後、第2の温調動作が終了した時点での吐出口列の温度分布をサーモグラフィ装置により実験的に測定し、その測定結果に基づいて算出したものである。
【0072】
ここで、図9(b)は、本実施形態の効果に対する理解を深める有効な参考例として、従来の手法による吐出口列の温度分布を示している。なお、従来の手法においては、全吐出ヒータに対して、本実施形態と同等の駆動電圧及びパルス幅の短パルスを目標温度に達するまでヒータに印加している。
【0073】
ここで、両者を比較してみると、本実施形態の温度分布においては、平坦率が約89.1%となるが、従来の手法においては、平坦率が約24.5%となった。この結果から本実施形態に係わる温調動作の方が従来の手法の温調動作よりも、温度分布を平坦にできることが分かる。すなわち、同一の目標温度へ加熱する場合、本実施形態に係わる温調動作の方が従来の手法に係わる温調動作よりも、温度のばらつきが少ない。従って、本実施形態に係わる温調動作の方が従来の手法に係わる温調動作よりも、温度分布の平坦性を実現するという点で優れていると言える。
【0074】
以上説明したように本実施形態によれば、全てのヒータを加熱する第1の温調動作を行なった後、吐出口列端部から所定範囲よりも、吐出口列中心部の領域に対する加熱の度合いを弱くする第2の温調動作を行なう。
【0075】
これにより、吐出口の配置方向に沿った吐出口列の温度分布が均一となるので、記録開始時点から安定したインク吐出量で記録動作を実行できる。その結果、吐出されるインク滴の体積を均一にできるため、記録開始時点からインク吐出量の変動に伴う画像むらの発生を防ぐことできる。
【0076】
より詳細には、本実施形態においては、第1の温調動作の後、吐出口列中心部付近を最大とする山型の温度分布が得られる(吐出口列中心部付近に熱エネルギーが多く蓄えられる)。その後、この吐出口列中心部付近に蓄えられた熱エネルギーは、吐出口列端部方向へ拡散する。この熱エネルギーの拡散とともに、第2の温調動作が実行されるため、当該拡散を補うようにしてヒータに対して熱エネルギーを与えられることになる。そのため、吐出口列の温度分布がより均一となる。
【0077】
(実施形態2)
次に、実施形態2について説明する。実施形態2においては、実施形態1と異なるベースプレート13が採用された記録ヘッド2(ヒータボード6)を用いる場合について説明する。それ以外の構成については、実施形態1と同様となるため、その説明については省略する。
【0078】
図10(a)は、実施形態2に係わるベースプレート13の形状の一例を示している。また、図10(b)は、図10(a)に示すベースプレート13の一部を示す斜視図であり、矢印Lは、ヒータボード6の長手方向に対応する。実施形態1を説明した図4(b)のベースプレート13に対して、ヒータボード6の短手方向(吐出口の配置方向と直交する方向)に同じ素材の横梁14を吐出口列中心部付近に2本通している点で異なる。ヒータボード6が長手方向に長い(約1インチ)場合には、吐出口列中心部付近に熱が溜まりやすいことが予想されるため、放熱の効果を狙ってこのような構造となっている。
【0079】
なお、第1の温調動作及び第2の温調動作の温調条件は、実施形態1と同様に、サーモグラフィ装置による温度測定実験等によって作成された温度分布テーブルに基づいて決定される。また、第1の温調動作及び第2の温調動作の終了タイミングは、実施形態1と同様となる。
【0080】
ここで、実施形態2においては、図10(c)に示すように、第2の温調動作時に印加対象となるヒータが実施形態1の場合と異なる。なお、図10(c)は、環境温度が25℃の時に、記録ヘッド2を目標温度40℃に加熱する場合の温調条件が示される。
【0081】
第2の温調動作時には、図10(c)に示すように、ヒータが5つの領域に分割されて、短パルスの印加が行なわれる。具体的には、吐出口列の一方端から1〜48番及び593〜640番の全てのヒータを領域Eとして短パルスの印加が行なわれる。49〜256番及び305〜320番までの4n番(nは自然数)のヒータを領域C1−1とし、321〜336番及び385〜592番までの4n+1番のヒータを領域C1−2として短パルスの印加が行なわれる。また、257〜304番までの2n番のヒータを領域C2−1とし、337〜384番までの2n+1番のヒータを領域C2−2として短パルスの印加が行なわれる。すなわち、吐出口列の一方端から領域E、領域C1、領域C2、領域C1、領域C2、領域C1、領域Eとなる。領域C1(領域C1−1、領域C1−2)は、第1の温調動作時に比べて、印加されるヒータが間引かれている(4分の1の数のヒータが印加される)。領域C2(領域C2−1、領域C2−2)は、第1の温調動作時に比べて、印加されるヒータが間引かれている(2分の1の数のヒータが印加される)領域である。このようにして第2の温調動作時には、吐出口列中心部付近の降温を防ぎつつ、吐出口列端部付近に吐出口列中心部付近よりも多くの発熱量を与えて加熱する。
【0082】
ここで、領域C2は、ベースプレート13の横梁14の直上にあるヒータである。横梁14が配置された位置は、ベースプレート13への放熱の効果があることから、降温防止のため、本実施形態においては領域C1よりも発熱量が多い領域C2のヒータ領域としている。
【0083】
次に、図11(a)を用いて、実施形態2に係わる2段階温調処理を実施した後の吐出口列の温度分布について説明する。図11(b)は、本実施形態における効果を説明するために、参考例として従来の温度分布について示している。なお、図11(a)において、N1、N2、D1及びD2は、図3(b)に示す符号にそれぞれ対応している。
【0084】
ここで、実施形態1と同様に平坦率を算出し、実施形態2に係わる平坦率と、従来の手法に係わる平坦率とを比較してみる。なお、従来の手法においても、実施形態2と同様の構成を有するベースプレート13を採用した記録ヘッドが使用されている。
【0085】
両者を比較してみると、実施形態2の温度分布においては、平坦率が約90.9%となるが、従来の手法においては、平坦率が約54.5%となった。この結果から実施形態2に係わる温調動作の方が従来の手法の温調動作よりも、温度分布を均一にできることが分かる。すなわち、同一の目標温度へ加熱する場合、本実施形態に係わる温調動作の方が従来の手法に係わる温調動作よりも、温度のばらつきが少ない。
【0086】
以上説明したように実施形態2によれば、ベースプレート13の形状によらず、実施形態1同様に、吐出口の配置方向に沿った吐出口列の温度分布を均一にできるので、記録開始時点から安定したインク吐出量で記録動作を実行できる。
【0087】
(実施形態3)
次に、実施形態3について説明する。実施形態3においては、実施形態1及び2で説明した第1の温調動作と第2の温調動作の実行順番を入れ替える場合について説明する。記録装置20の構成や各種設定値等については、実施形態1と同様となるため、その説明については省略し、ここでは、実施形態1との相違点について主に説明する。
【0088】
図12(a)を用いて、実施形態3に係わる2段階温調処理を実施した後の吐出口列の温度分布について説明する。図12(b)は、本実施形態における効果を説明するために、参考例として従来の温度分布について示している。なお、図12(a)において、N1、N2、D1及びD2は、図3(b)に示す符号にそれぞれ対応している。
【0089】
ここで、実施形態1と同様に平坦率を算出し、実施形態3に係わる平坦率と、従来の手法に係わる平坦率とを比較してみる。両者を比較してみると、実施形態3の温度分布においては、平坦率が約88.2%となるが、従来の手法においては、平坦率が約24.5%となった。この結果から実施形態2に係わる温調動作の方が従来の手法の温調動作よりも、温度分布を平坦にできることが分かる。すなわち、同一の目標温度へ加熱する場合、本実施形態に係わる温調動作の方が従来の手法に係わる温調動作よりも、温度のばらつきが少ない。
【0090】
以上説明したように実施形態3によれば、第1の温調動作と第2の温調動作の実行順番を入れ替えた場合であっても、従来の構成よりも、吐出口の配置方向に沿った吐出口列の温度分布を均一にできる。そのため、記録開始時点から安定したインク吐出量で記録動作を実行できる。
【0091】
(実施形態4)
次に、実施形態4について説明する。実施形態4においては、なお、環境温度が15℃の時に、記録ヘッド2を目標温度40℃に加熱する場合の温調条件が示される。記録装置20の構成や各種設定値等については、実施形態1と同様となるため、その説明については省略し、ここでは、実施形態1との相違点について主に説明する。
【0092】
ここで、実施形態4に係わる第2の温調動作時には、図13に示すように、ヒータが複数の領域(この場合、3つ)に分割されて、短パルスの印加が行なわれる。具体的には、吐出口列の一方端から1〜64番及び577〜640番のヒータを領域Eとして短パルスの印加が行なわれる。また、65〜320番までの4n番(nは自然数)のヒータを領域C1−1とし、321〜576番までの4n+1番のヒータを領域C1−2として短パルスの印加が行なわれる。吐出口列の一方端から領域E、領域C1(領域C1−1、領域C1−2)、領域Eとなる。
【0093】
領域Eは、第1の温調動作時と同じ加熱度合いで加熱が行なわれる領域である。領域C1−1及び領域C1−2は、第1の温調動作時に比べて、印加されるヒータが間引かれている(4分の1の数のヒータが印加される)領域である。すなわち、分割された領域毎(領域E及び領域C1)に加熱の度合いが変更される。
【0094】
次に、図14(a)を用いて、実施形態4に係わる2段階温調処理を実施した後の吐出口列の温度分布について説明する。図14(b)は、本実施形態における効果を説明するために、参考例として従来の温度分布について示している。なお、図14(a)において、N1、N2、D1及びD2は、図3(b)に示す符号にそれぞれ対応している。
【0095】
ここで、実施形態1と同様に平坦率を算出し、実施形態2に係わる平坦率と、従来の手法に係わる平坦率とを比較してみる。なお、従来の手法においても、環境温度が15℃の時に、記録ヘッドを目標温度40℃に加熱した場合の測定結果が示されている。
【0096】
両者を比較してみると、実施形態4の温度分布においては、平坦率が約83.6%となるが、従来の手法においては、平坦率が約12.7%となった。この結果から実施形態4に係わる温調動作の方が従来の手法の温調動作よりも、温度分布を均一にできることが分かる。すなわち、同一の目標温度へ加熱する場合、本実施形態に係わる温調動作の方が従来の手法に係わる温調動作よりも、温度のばらつきが少ない。
【0097】
以上説明したように実施形態4によれば、環境温度によらず、実施形態1同様に、吐出口の配置方向に沿った吐出口列の温度分布を均一にできるので、記録開始時点から安定したインク吐出量で記録動作を実行できる。
【0098】
以上が本発明の代表的な実施形態の例であるが、本発明は、上記及び図面に示す実施形態に限定することなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施できるものである。
【0099】
例えば、上述した実施形態においては、2種類の温調条件により記録ヘッド(ヒータボード6)を加熱する2段階温調法について例を挙げて説明したが、これに限られない。すなわち、本発明は、3段階の温調動作、4段階の温調動作のような多段階温調法を提案するものである。すなわち、本発明は、多段階温調法を用いることにより、記録開始時点の吐出口列の温度分布を最終的にほぼ均一にすることを目的としている。例えば、吐出口列端部から所定範囲よりも吐出口列中心部の領域に対する加熱の度合いを弱くする温調動作をその中心部の領域に対する加熱の度合いに応じて複数段階設け、それらを順番に実行し、記録ヘッドの温度調整を行なうように構成しても良い。また、例えば、上述した第1の温調動作と第2の温調動作とを所定時間ずつ複数回繰り返すことにより記録ヘッドの温度調整を行なうように構成しても良い。
【0100】
また、上述した実施形態においては、第2の温調動作時の温調条件の領域Cでの吐出口の間引き率を4分の1(25%)としていたが、これに限られず、目標温度、初期温度、駆動周波数、吐出口の数等によってこの間引き率は当然変化する。すなわち、間引き率は、適宜変更すれば良い。
【0101】
また更に、吐出口の数を間引くのではなく、ヒータへの印加時間(パルス幅)や印加電圧を変化させても良い。例えば、第2の温調動作を、第1の温調動作のパルス幅より短いパルス幅で行なう等しても良い。或いは、第2の温調動作を、第1の温調動作の印加電圧より低い印加電圧で行なう等しても良い。すなわち、局所的な発熱量の分布ではなく、記録ヘッド(ヒータボード)全体を見たときの総発熱量を上述した実施形態と同様にできるのであれば、どのような手法を用いても良い。
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式を採用した記録装置が知られている。このような記録装置では、記録ヘッドを往復移動させながら、当該記録ヘッドに配列された吐出口からインクを吐出することにより、記録媒体に画像を記録する。このような記録装置においては、例えば、インク滴を吐出する手段として発熱素子のような電気熱変換素子(以下、吐出ヒータと呼ぶ)により生成した気泡を用いる方法が利用されている。このような熱を利用した記録方式は、装置の小型化、画像の高密度化が容易であるなどの特徴を有している。
【0003】
熱を利用した記録方式では、記録ヘッドにおいて、電気信号(以下、パルスと呼ぶ)を吐出ヒータに印加することで電気信号を熱エネルギーに変換する。そして、この熱エネルギーを用いてインクに膜沸騰を生じさせ、その沸騰による気泡の発泡圧力を利用してインクを吐出させる。これにより、吐出されたインク滴が記録媒体へ着弾し、記録媒体上にドットが形成される。
【0004】
このような熱を利用した記録方式において、インク吐出量は、インクの粘度に依存して変動することが知られている。ここで、インクの粘度は、温度に依存して大きく変化するため、インク吐出量は、吐出ヒータ近傍のインクの温度に依存して変動することになる。具体的には、吐出ヒータ近傍のインクの温度が上昇した場合、インク吐出量が増加してしまう。これは、インクの粘度が高温であるほど低くなり、それを起因として、インクの流動性が向上するためである。また、膜沸騰で生じる気泡の成長が高温度であるほど促進されるといったことも原因の一つである。
【0005】
そのため、記録等により吐出ヒータを発熱させることから生じる記録ヘッドの昇温によって、インク吐出量は、記録ヘッドの昇温以前に比べ増加することになる。また、熱エネルギーは、吐出ヒータにパルスを印加することにより発生される。そのため、吐出ヒータに対して偏りなく通電した場合、それらの配置方向への温度分布は、例えば、金属棒に一様に発熱量を与えたときと同様に、中心ほど温度が高いものとなる。その結果、高温の箇所と低温の箇所ではインク吐出量に違いが生じてしまう。
【0006】
このような場合、インク滴が記録媒体に着弾することにより形成されるドット径の大きさにばらつきが生じるため、記録される画像に濃度むらが発生し、記録品位の悪化を引き起こしてしまう可能性がある。これは、近年求められている高速記録を実現するために、より高周波数で吐出ヒータを駆動させた場合や、吐出口の数を増やした場合に顕著に表れる。
【0007】
ところで、一定時間使用しなかった吐出口においては、外気との接触面からインクの揮発成分が蒸発することにより吐出口付近のインクの粘度が増加(増粘)し、それが原因となりインクの吐出が満足に行なわれないこともある。この現象が発生した場合、特に、記録初期においてインクの濃度の増大やインクの吐出速度の低下が引き起こされてしまう。最悪の場合には、インクの不吐出が生じてしまう。
【0008】
このような事態に対処するためには、インクの粘度が高温であるほど低いことを考慮すると、インクを加熱することによってインクの粘度を低下させる手段が有効であるといえる。これを踏まえ、インクの増粘による吐出不安定を解決するために、これまで主に2つの方法が知られている。
【0009】
1つ目の方法としては、吐出ヒータを駆動して記録ヘッドを加熱する方法が知られており、2つ目の方法としては、記録ヘッドを加熱するためのヒータ(以下、サブヒータと呼ぶ)を吐出ヒータとは別に設けて記録ヘッドを加熱する方法である。
【0010】
前者の方法では、インクが膜沸騰しない程度のパルス、例えば、短いパルス幅(以下、短パルスと呼ぶ)を吐出ヒータに印加することでインクを吐出させずに、記録ヘッドを加熱する。後者の方法では、サブヒータに任意のパルスを印加することで記録ヘッドを加熱する。
【0011】
ここで、吐出ヒータを用いて加熱する手法に関して、特許文献1〜3に記載された技術が知られている。特許文献1には、記録ヘッドの温度条件に応じた適切なデューティー(記録時の記録ヘッドの駆動周波数と同等の周波数で短パルスを印加する場合をデューティー100%としている)で非記録時に短パルスを印加して加熱する方法が提案されている。特許文献2には、記録時に使用しない吐出ヒータに短パルスを印加することで加熱を行なう方法が提案されている。また、特許文献3には、記録ヘッド走査中における加速域を含む非記録時に加熱を行なう方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平10−16228号公報
【特許文献2】特開平5−24199号公報
【特許文献3】特開平8−336962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ここで、特許文献1においては、上述した通り、デューティーを変化させて加熱を行なうが、このような加熱を行なったとしても、全ての吐出ヒータに対してパルスを印加することになる。そのため、吐出口の配置方向に沿った吐出口列内の温度が均一とならず、吐出口列の中心部付近の温度が吐出口列端部付近よりも高くなってしまう。また、特許文献3においても、特許文献1の場合と同様に吐出口列内の温度が均一とならない。特に、高速記録を行なうため、素早く加熱した場合はこのような温度の偏りが顕著に現れる。
【0014】
また更に、特許文献2においては、記録時に使用しない吐出ヒータに短パルスを印加するが、この処理を実際に行なうためには、記録時に吐出用のパルスと加熱用のパルスとを同時に与える回路を実装する必要がある。そのため、記録ヘッド及び装置のコストアップが生じてしまう。
【0015】
このように吐出ヒータによる加熱方法では、一般に、吐出口の配置方向に沿った吐出口列の温度分布が均一とならない。そのため、吐出口全てを目標温度以上に加熱しようとした場合、目標温度に対しオーバーシュートしてしまう箇所が生じる。つまり、吐出口列端部付近を十分に加熱する場合、吐出口列中心部付近は想定以上に昇温していることになる。言い換えれば、電力を余分に消費しているともいえる。
【0016】
一方で、休止時間をとることで昇温のオーバーシュートを防ぐ方法もあるが、これでは上述した温度分布を均一にするのに余分に時間がかかってしまう。また、温度分布も均一とならず、インクの吐出量にばらつきが生じ、特に、記録開始時において記録される画像に濃度むらが発生する。
【0017】
一方、サブヒータによる加熱方法においては、吐出ヒータによる加熱方法よりも上述した温度分布を比較的均一にすることができるが、サブヒータや配線等を余分に配置しなければならず、コストアップを招いてしまう。
【0018】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、コストを抑えたまま、記録開始時点から安定したインク吐出量で記録動作を実行できるようにした技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、熱エネルギーを利用してインクを吐出するために、インクに与える熱エネルギーを発生する電気熱変換素子を有する吐出口が複数配置される記録ヘッドを有し、該記録ヘッドを用いて記録媒体に画像を記録する記録装置であって、前記複数の吐出口に対応した電気熱変換素子それぞれに電圧を印加し、該複数の吐出口全てが配置された領域を加熱する第1の温調動作の実行を制御する第1の制御手段と、前記複数の吐出口のうちいずれかの吐出口に対応した電気熱変換素子それぞれに電圧を印加し、前記吐出口の配置方向に沿ってその両端部から所定数の吐出口が配置された所定の領域よりも、該所定の領域以外に配置された吐出口の領域に対する加熱の度合いを弱くして加熱する第2の温調動作の実行を制御する第2の制御手段と、前記記録の開始前に、前記第1の制御手段及び前記第2の制御手段を制御して、前記第1の温調動作と前記第2の温調動作とを含む複数段階の前記記録ヘッドの温度調整動作の実行を制御する温調制御手段とを具備する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、コストを抑えたまま、記録開始時点から安定したインク吐出量で記録動作を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係わる記録装置の構成の一例を示す斜視図。
【図2】ヒータの駆動信号(パルス)の一例を示す図。
【図3】図1に示す記録ヘッド2の構成の一例を示す図。
【図4】記録ヘッドの構成の一例を示す図。
【図5】図1に示す記録装置20における制御系の構成の一例を示す図。
【図6】本実施形態に係わる2段階温調法を概要を説明するための図。
【図7】第1の温調動作及び第2の温調動作における温調条件の一例を示す図。
【図8】実施形態1に係わる処理の流れの一例を示すフローチャート。
【図9】実施形態1に係わる吐出口列の温度分布を説明するための図。
【図10】実施形態2の概要を説明するための図。
【図11】実施形態2に係わる吐出口列の温度分布を説明するための図。
【図12】実施形態3に係わる吐出口列の温度分布を説明するための図。
【図13】実施形態4に係わる第1の温調動作及び第2の温調動作における温調条件の一例を示す図。
【図14】実施形態4に係わる吐出口列の温度分布を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、この明細書において、「記録」とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、又は媒体の加工を行なう場合も表す。また、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わない。
【0023】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表す。
【0024】
また、「インク」とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきもので、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成又は記録媒体の加工、或いはインクの処理に供され得る液体を表すものとする。インクの処理としては、例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固又は不溶化させることが挙げられる。
【0025】
また更に、「ノズル」とは、特に断らない限り吐出口乃至これに連通する液路及びインク吐出に利用されるエネルギーを発生する素子を総括して言う。
【0026】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係わるインクジェット記録装置(以下、記録装置)の構成の一例を示す斜視図である。
【0027】
記録装置20は、インクジェット方式に従ってインクを吐出して記録を行なうインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッドと呼ぶ)2をキャリッジ3に搭載し、キャリッジ3をガイドレール4に沿って矢印A方向(主走査方向)に往復移動させて記録を行なう。記録装置20は、記録媒体を給紙トレイ5を介して給紙し、矢印Aに直交する方向(副走査方向)に搬送する。そして、記録ヘッド2の吐出口面と対峙する記録位置において、記録ヘッド2から記録媒体にインクを吐出することで記録を行なう。ここで、キャリッジ3が記録媒体の一端から他端まで移動すると、記録媒体が搬送ローラ(不図示)によってキャリッジ3の副走査方向に所定量だけ搬送される。この記録動作と記録媒体の搬送動作とが交互に繰り返されることにより記録媒体全体に画像が形成される。
【0028】
記録ヘッド2には、吐出口が形成されている。この吐出口は、所定方向(副走査方向)に沿って複数配置されており、これにより、吐出口列を構成する。なお、吐出口列は、複数設けられている(本実施形態においては、2つ)。
【0029】
各吐出口には、それぞれに対応して電気熱変換素子が備えられている。電気熱変換素子は、熱エネルギーを利用してインクを吐出するために、インクに与える熱エネルギーを発生する。
【0030】
記録装置20のキャリッジ3には、記録ヘッド2の他、例えば、インクタンク1が搭載される。インクタンク1は、記録ヘッド2に供給するインクを貯留する。なお、インクタンク1は、キャリッジ3に対して着脱自在になっている。また、環境温度を測定する環境温度センサ(不図示)が、例えば、キャリッジ3等に備え付けられている。
【0031】
ここで、本実施形態に係わる記録装置20においては、環境温度が所定温度(例えば、25℃)の時に、インク吐出量のばらつきを抑えた上でインクの粘度を低下させるために、記録ヘッド2の温度を調整する温度調整動作(以下、温調動作と呼ぶ)を行なう。具体的には、記録開始前(直前)に、吐出口の配置方向に沿った吐出口列の温度分布を、吐出ヒータ(以下、ヒータと呼ぶ)を用いて目標温度(例えば、約40℃)に均一にする。
【0032】
この温調動作は、インクの吐出に有効でない、すなわち、インクが吐出されない程度の電圧をヒータに印加することにより行なわれる。本実施形態においては、短パルス(短いパルス幅の電気信号)をヒータに印加する手法を用いて記録ヘッド2の温調動作を行なう。短パルスは、図2(a)に示すインクを吐出させるために用いるダブルパルスに比べ、図2(b)に示すように、そのパルス幅が短い。
【0033】
本実施形態においては、温調動作としては、短パルスを印加するヒータの数や位置、短パルスの幅、電圧、駆動周波数、等に対する条件を2種類設ける。そして、当該2種類の条件(以下、温調条件と呼ぶ)により段階的に温調する(以下、2段階温調法と呼ぶ)。また、2段階温調法のうち、第1の温調条件に従って行なう温調動作を第1の温調動作、当該第1の温調条件とは異なる第2の温調条件に従って行なう温調動作を第2の温調動作と呼ぶ。本実施形態においては、第1の温度動作を行なった後、第2の温調動作を実施する。
【0034】
次に、図1に示す記録ヘッド2の構成の一例について説明する。
【0035】
記録ヘッド2には、図3(a)に示すように、ヒータ(不図示)を含む吐出口が複数形成される素子基板6(以下、ヒータボードと呼ぶ)が1又は複数設けられる。なお、図3(a)の場合、ヒータボード6が4つ設けられており、各ヒータボード6には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のインクがそれぞれ充填されている。
【0036】
図3(b)は、図3(a)に示すヒータボード6の構成の概略を示す図である。ヒータボード6上には、複数の吐出口7が形成されている。本実施形態に係わるヒータボード6は、例えば、その長手方向(すなわち、吐出口の配置方向)の長さが約1インチであり、2つの吐出口列が配置されている。また、1つの吐出口列には、吐出口が640個配置されている。
【0037】
また、ヒータボード6の長手方向の両端部には、記録ヘッド2(より詳細には、ヒータボード6)の温度を測定する温度センサ91(91a、91b)が設けられている。なお、図3(b)に示すヒータボード6において、D1は第1の温度センサの位置座標を示し、D2は第2の温度センサの位置座標を示し、N1は吐出口列の第1の端部の位置座標を示し、吐出口列の第2の端部の位置座標を示している。
【0038】
上述した温度センサ91は、例えば、ダイオードで実現される。一般に、熱インクジェット記録方式の場合、吐出口が同一基板上に高密度に形成されるため、温度センサとして使用されるダイオードを吐出口列が形成された領域に配置することが困難である。そこで、本実施形態においては、ヒータボード長手方向の両端近傍に温度センサ91(91a、91b)が配置されている。なお、温度センサ91は、必ずしもこの位置に配置される必要はなく、記録ヘッド2において、吐出口が配置される領域以外のいずれかの位置に配置されていれば良い。例えば、1つのみ配置されていても良いし、また、3つ以上配置されていても良い。温度センサは、配置数を増やせば、吐出口の配置方向に沿った吐出口列の温度分布(単に、吐出口列の温度分布と呼ぶ場合もある)を精度良く把握できることになる。
【0039】
ここで、図4(a)には、ヒータボード6の短手方向の断面(図3(b)におけるB−B’断面)の概略構成が示されている。ヒータボード6においては、インク10が吐出口7から吐出されるようにするため、ヒータ8が吐出口7のほぼ直下に設けられる。なお、インク10の吐出に際しては、ヒータ8に熱エネルギーを与えてインク10を膜沸騰させる。そして、この膜沸騰により気泡12が発生し、その発泡圧力を利用してインク10がインク滴11として吐出される。
【0040】
また、図4(b)には、記録ヘッド2のヒータボード6及びその土台となるベースプレート13の長手方向の断面(図3(b)におけるC−C’断面)の概略構成が示されている。図4(c)は、図4(b)に示すベースプレート13の一部を示す斜視図であり、矢印Lは、ヒータボード6の長手方向に対応する。ヒータボード6及びベースプレート13は、図4(b)に示すように、密着して形成される。これにより、ヒータボード6で生じた熱がベースプレート13に逃げるため、ヒータボード6の温度が極端に高くなることが防止される。
【0041】
次に、図5を用いて、図1に示す記録装置20における制御系の構成の一例について説明する。
【0042】
記録装置20は、主制御部100と、ヘッドドライバ104と、モータドライバ105及び106と、環境温度センサ107と、温度センサ91と、記録ヘッド2と、CRモータ108と、LFモータ109とを具備して構成される。
【0043】
主制御部100は、記録装置20における処理を統括制御する。例えば、記録シーケンス等の実行を制御する。主制御部100は、CPU101と、パルスの幅、電圧、その他の固定データを格納したROM102と、CPU101の作業領域等として使用されるRAM103とを具備して構成される。なお、記録ヘッド2に設けられた温度センサ91により検出された検出値は、主制御部100に入力される。
【0044】
ヘッドドライバ104は、記録データ等に応じて記録ヘッド2のヒータを駆動する。CRモータ108は、キャリッジ3を主走査方向(図1の矢印A方向)に移動させるための駆動源であり、モータドライバ105は、当該CRモータ108のドライバである。LFモータ109は、記録媒体を搬送するための駆動源であり、モータドライバ106は、当該LFモータ109のドライバである。環境温度センサ107は、環境温度を測定する。なお、環境温度センサ107により検出された検出値は、主制御部100に入力される。
【0045】
ここで、図6(a)及び図6(b)を用いて、本実施形態における2段階温調法の概要について説明する。なお、図6(a)及び図6(b)は、吐出口の配置方向に沿った吐出口列の温度分布を示しており、図6(a)は、本実施形態に係わる温度分布を示し、図6(b)は、従来例に係わる温度分布を示している。
【0046】
第1の温調動作においては、吐出口列に含まれる吐出口全てに対して満遍なく発熱量を与えて記録ヘッド2の加熱を行なう。この第1の温調動作を行なった後、その終了時点での温度分布は、吐出口列中心部付近を最大温度とする山型の分布が得られる。特に、吐出口列長が約1インチと長く、且つ当該吐出口列を素早く加熱する場合、このような山型の分布になる傾向が強い。
【0047】
第2の温調動作においては、吐出口列端部付近よりも、吐出口列中心部付近の発熱量を弱くして記録ヘッド2を加熱する。より詳細には、吐出口の配置方向に沿ってその両端部から所定数の吐出口が配置された所定の領域よりも、当該所定の領域以外に配置された吐出口の領域に対する加熱の度合いを弱くして記録ヘッド2を加熱する。すなわち、吐出口列中心部付近よりも相対的に低温となっている吐出口列端部付近を昇温させる。
【0048】
第1の温調動作及び第2の温調動作を実行することにより、これら温調動作の終了時点では、吐出口列の温度分布は、吐出口の配置方向に沿ってその端部から中心部までほぼ均一となる。
【0049】
また、第1の温調動作の終了時点では、吐出口列中心部付近の方が吐出口列端部付近よりも熱エネルギーが蓄えられる。第2の温調動作へ移行後、その吐出口列中心部付近で蓄えられていた熱エネルギーは、吐出口列端部方向へ拡散する。これに加えて、第2の温調動作により吐出口列端部付近が加熱され昇温する。この2つの作用を合わせることで、第2の温調動作の終了時点、つまり、記録開始前(直前)において、吐出口の配置方向に沿った吐出口列の温度を均一にする。
【0050】
また更に、第2の温調動作においては、吐出口列中心部付近に対して第1の温調動作時よりも弱い加熱を行なう。これは、吐出口列中心部付近が周囲への熱エネルギーの拡散によって降温するのを防ぐためである。
【0051】
これに対して、従来手法においては、図6(b)に示すように、所定の温調動作が終わった後、吐出口の配置方向に沿った吐出口列の温度分布は、吐出口列中心部付近を最大温度とする山型の分布となる。そのため、吐出口の配置位置によってインク温度が異なってしまうので、それを起因としてインク吐出量にばらつきが生じてしまう。
【0052】
ここで、図7(a)及び図7(b)を用いて、第1の温調動作及び第2の温調動作における温調条件の一例について説明する。ここでは、第1の温調動作及び第2の温調動作における温調条件として、当該温調動作時に加熱対象(短パルスの印加対象)となるヒータの一例が示される。なお、図7(a)及び図7(b)は、環境温度が25℃の時に、記録ヘッド2を目標温度40℃に加熱する場合の温調条件が示される。
【0053】
図7(a)に示すように、第1の温調動作時においては、全ヒータに短パルスが印加される。これに対して、第2の温調動作時においては、全ヒータに対して短パルスが印加されない。ここでは、第1の温調動作及び第2の温調動作においてヒータに印加される短パルスはともに、その幅を0.24[μsec]とし、印加電圧を24[V]とする。吐出ヒータの発熱抵抗値は250[Ω]とする。なお、第1の温調動作及び第2の温調動作におけるパルスの印加時間(すなわち、パルス幅)や印加電圧は、それぞれ異なっていても良い。
【0054】
ここで、第2の温調動作時には、図7(a)に示すように、ヒータが複数の領域(この場合、3つ)に分割されて、短パルスの印加が行なわれる。具体的には、図7(b)に示すように、吐出口列の一方端から1〜48番及び593〜640番のヒータを領域Eとして短パルスの印加が行なわれる。また、49〜320番までの4n番(nは自然数)のヒータを領域C1−1とし、321〜592番までの4n+1番のヒータを領域C1−2として短パルスの印加が行なわれる。吐出口列の一方端から領域E、領域C1(領域C1−1、領域C1−2)、領域Eとなる。
【0055】
領域Eは、第1の温調動作時と同じ加熱度合いで加熱が行なわれる領域である。一方、領域C1−1及び領域C1−2は、第1の温調動作時に比べて、印加されるヒータが間引かれている(4分の1の数のヒータが印加される)領域である。すなわち、領域C1−1及び領域C1−2に対する加熱の量は、領域Eに対する加熱の量より相対的に小さい。分割された領域毎(領域E及び領域C1)に加熱の度合いが変更される。このようにして第2の温調動作時には、吐出口列中心部付近の降温を防ぎつつ、吐出口列端部付近に吐出口列中心部付近よりも相対的に多くの発熱量を与えるように加熱の制御が行なわれる。
【0056】
次に、第1の温調動作及び第2の温調動作の終了タイミングについて説明する。
【0057】
上述した通り、記録ヘッド2においては、ヒータボード6の(吐出口の配置方向に沿って)両端部に温度センサ91がそれぞれ配置されている。吐出口近傍のインクの温度は、インク吐出量に大きな影響を与えるが、このような位置に配置された温度センサ91においては、ヒータや吐出口近傍のインクの温度を直接検出できない。そのため、何らかの方法を用いてこの温度を予測する必要がある。なお、熱の発生源であるヒータから温度センサ91が離れた位置に配されているため、このような位置で検出された温度よりも発熱源であるヒータの近傍のインクの温度は高いと予想できる。
【0058】
そこで、第1の温調動作時の温調条件に従ってヒータに短パルスを印加したときの吐出口列の温度分布(特に、最大温度)と、温度センサ91が検出した温度(以下、センサ温度と呼ぶ)との関係を予め測定しておき、記録装置20に保持させる。そして、記録装置20においては、この保持した関係に基づいて第1の温調動作及び第2の温調動作を行なう。この温度分布とセンサ温度との関係は、例えば、所定の実験(本実施形態においては、サーモグラフィ装置を用いた温度測定実験)等に基づいて求めれば良い。なお、シミュレーション等により解析的に導出されても良い。この関係は、環境温度や目標温度を変化させた複数の条件において求め、吐出口の配置方向に沿った吐出口の位置及び温度の関係(吐出口列の温度分布)と、それに対応するセンサ温度とをデータ化しておく。そして、例えば、そのデータをテーブル(以下、温度分布テーブルと呼ぶ)として保持しておく。温度分布テーブルは、RAM103等に保持しておけば良い。なお、第2の温調動作時の温調条件(例えば、パルスの幅や駆動電圧等)は、この温度分布テーブルに基づいて最適となる条件を実験的に探索し決めれば良い。
【0059】
ここで、第1の温調動作の終了タイミングは、例えば、吐出口列の温度分布における最大温度が目標温度に達した時点とする。より具体的には、温度センサ91により検出された温度が、温度分布テーブルに保持された(目標温度に対応する)センサ温度に達したときが終了のタイミングとなる。つまり、これは吐出口列内の最大温度が目標温度に達したときに相当する。
【0060】
第2の温調動作の終了タイミングは、吐出口列の温度分布がほぼ均一となり、且つその温度が目標温度にほぼ達した時点とする。つまり、これは吐出口列の温度分布がほぼ均一となったタイミングとなる。
【0061】
第2の温調動作の終了タイミングの決定に際しては、第1の温調動作時と同様に、第2の温調動作の温調条件に従ってヒータに短パルスを印加したときの吐出口列の温度分布(特に、最大温度)と、センサ温度との関係を求める。そして、その保持した関係に基づいて第2の温調動作の終了タイミングを決定するための温度分布テーブルを作成し、それを記録装置20に保持させる。すなわち、第2の温調動作の終了タイミングは、この温度分布テーブル(第2の温調動作用の温度分布テーブル)に基づいて決められる。
【0062】
ここで、目標温度は、例えば、記録装置20や記録ヘッド2の特性に基づいて予め決められており、通常、一度決められると、その値は変更されない。目標温度は、記録装置毎に決められる。なお、目標温度、第1の温調動作及び第2の温調動作における温調条件や終了時点のセンサ温度等は、例えば、RAM103等に予め保持しておく。このRAM103等に保持された情報は、例えば、インターネット等(記録媒体であっても良い)から更新データをダウンロードし、書き換えることにより更新されても良い。
【0063】
なお、第2の温調の温調条件の決定方法としては、例えば、RAM103等に第1の温調動作用の温度分布テーブルを保持しておき、第2の温調動作を行なう度に、第1の温調動作用の温度分布テーブルから予想して第2の温調動作時の温調条件を決めても良い。より具体的には、第1の温調動作用の温度分布テーブルから各吐出口の温度の温度上昇率を求め、その情報に基づいて第2の温調動作時の温調条件を決めても良い。
【0064】
次に、図8を用いて、実施形態1に係わる温調制御処理(2段階温調法)の流れの一例について説明する。ここでは、環境温度をTa[℃]とし、目標温度をTt[℃]とし、センサ温度をTs[℃]とする。第1の温調動作用の温度分布テーブルにおけるセンサ温度(吐出口列内の最大温度が目標温度に達したときに対応したセンサ温度)をTs1[℃]とする。また、第2の温調動作用の温度分布テーブルにおけるセンサ温度(吐出口列の温度分布がほぼ均一となったときのセンサ温度)をTs2[℃]とする。
【0065】
この処理が開始すると、記録装置20は、まず、環境温度センサ107において、Ta(環境温度)を測定するとともに(S101)、CPU101において、Tt(目標温度)がTa以上であるか否かの判定を行なう。TTがTa以上であれば(S102でYES)、記録装置20は、2段階温調処理を開始する。一方、TTがTa未満であれば(S102でNO)、この処理は終了する。すなわち、ヒータや吐出口近傍のインクの温度が十分に上がっているため、記録動作が開始される。
【0066】
続いて、記録装置20は、CPU101において、S101の処理で検出したTaに基づいて第1の温調動作時の温調条件をRAM103等から取得する(S103)。例えば、環境温度や目標温度に合致するTs1を取得する。なお、第1の温調動作用の駆動電圧やパルス幅も取得しても良い。そして、記録装置20は、CPU101において、第1の温調動作の実行を制御する(第1の制御処理)。すなわち、S103で取得された温調条件に従って第1の温調動作が開始される(S104)。
【0067】
第1の温調動作が開始されると、記録装置20は、温度センサ91において、Ts(センサ温度)を測定するとともに(S105)、CPU101において、Tsが第1の温調動作の終了を示すTs1に達しているか否かを判定する。TsがTs1に達していなければ(S106でNO)、Tsの測定を引き続き行なうが、TsがTs1に達していれば(S106でYES)、記録装置20は、第1の温調動作を終了する(S107)。
【0068】
次に、記録装置20は、CPU101において、S101の処理で検出したTaに基づいて第2の温調動作時の温調条件をRAM103等から取得する(S108)。例えば、環境温度や目標温度に合致するTs2を取得する。なお、第2の温調動作用の駆動電圧やパルス幅も取得しても良い。そして、記録装置20は、CPU101において、第2の温調動作の実行を制御する(第2の制御処理)。すなわち、S108で取得されたの温調条件に従って第2の温調動作が開始される(S109)。
【0069】
第2の温調動作が開始されると、記録装置20は、温度センサ91において、Tsを測定するとともに(S110)、CPU101において、Tsが第2の温調動作の終了を示すTs2に達しているか否かを判定する。TsがTs2に達していなければ(S111でNO)、Tsの測定を引き続き行なうが、TsがTs1に達していれば(S111でYES)、記録装置20は、第2の温調動作を終了する(S112)。これにより、2段階温調処理が終了する。
【0070】
ここで、図9(a)を用いて、上述した2段階温調処理を実施した後の吐出口列の温度分布(すなわち、吐出口の配置方向に沿った吐出口列の温度分布)について説明する。図9(b)は、本実施形態における効果を説明するために、参考例として従来の温度分布について示している。なお、図9(a)において、N1、N2、D1及びD2は、図3(b)に示す符号にそれぞれ対応している。
【0071】
ここで、本実施形態における吐出口列の温度分布の均一性(平坦性)を表す指標として平坦率を定義する。平坦率は、N1〜N2の間の平均温度を中心値とする±1℃の温度範囲内にある吐出口の数の割合を示す。図9(a)及び図9(b)においては、対象となる範囲を示す破線の枠400を示している。この平坦率は、目標温度を約40℃として2段階温調処理を実施した後、第2の温調動作が終了した時点での吐出口列の温度分布をサーモグラフィ装置により実験的に測定し、その測定結果に基づいて算出したものである。
【0072】
ここで、図9(b)は、本実施形態の効果に対する理解を深める有効な参考例として、従来の手法による吐出口列の温度分布を示している。なお、従来の手法においては、全吐出ヒータに対して、本実施形態と同等の駆動電圧及びパルス幅の短パルスを目標温度に達するまでヒータに印加している。
【0073】
ここで、両者を比較してみると、本実施形態の温度分布においては、平坦率が約89.1%となるが、従来の手法においては、平坦率が約24.5%となった。この結果から本実施形態に係わる温調動作の方が従来の手法の温調動作よりも、温度分布を平坦にできることが分かる。すなわち、同一の目標温度へ加熱する場合、本実施形態に係わる温調動作の方が従来の手法に係わる温調動作よりも、温度のばらつきが少ない。従って、本実施形態に係わる温調動作の方が従来の手法に係わる温調動作よりも、温度分布の平坦性を実現するという点で優れていると言える。
【0074】
以上説明したように本実施形態によれば、全てのヒータを加熱する第1の温調動作を行なった後、吐出口列端部から所定範囲よりも、吐出口列中心部の領域に対する加熱の度合いを弱くする第2の温調動作を行なう。
【0075】
これにより、吐出口の配置方向に沿った吐出口列の温度分布が均一となるので、記録開始時点から安定したインク吐出量で記録動作を実行できる。その結果、吐出されるインク滴の体積を均一にできるため、記録開始時点からインク吐出量の変動に伴う画像むらの発生を防ぐことできる。
【0076】
より詳細には、本実施形態においては、第1の温調動作の後、吐出口列中心部付近を最大とする山型の温度分布が得られる(吐出口列中心部付近に熱エネルギーが多く蓄えられる)。その後、この吐出口列中心部付近に蓄えられた熱エネルギーは、吐出口列端部方向へ拡散する。この熱エネルギーの拡散とともに、第2の温調動作が実行されるため、当該拡散を補うようにしてヒータに対して熱エネルギーを与えられることになる。そのため、吐出口列の温度分布がより均一となる。
【0077】
(実施形態2)
次に、実施形態2について説明する。実施形態2においては、実施形態1と異なるベースプレート13が採用された記録ヘッド2(ヒータボード6)を用いる場合について説明する。それ以外の構成については、実施形態1と同様となるため、その説明については省略する。
【0078】
図10(a)は、実施形態2に係わるベースプレート13の形状の一例を示している。また、図10(b)は、図10(a)に示すベースプレート13の一部を示す斜視図であり、矢印Lは、ヒータボード6の長手方向に対応する。実施形態1を説明した図4(b)のベースプレート13に対して、ヒータボード6の短手方向(吐出口の配置方向と直交する方向)に同じ素材の横梁14を吐出口列中心部付近に2本通している点で異なる。ヒータボード6が長手方向に長い(約1インチ)場合には、吐出口列中心部付近に熱が溜まりやすいことが予想されるため、放熱の効果を狙ってこのような構造となっている。
【0079】
なお、第1の温調動作及び第2の温調動作の温調条件は、実施形態1と同様に、サーモグラフィ装置による温度測定実験等によって作成された温度分布テーブルに基づいて決定される。また、第1の温調動作及び第2の温調動作の終了タイミングは、実施形態1と同様となる。
【0080】
ここで、実施形態2においては、図10(c)に示すように、第2の温調動作時に印加対象となるヒータが実施形態1の場合と異なる。なお、図10(c)は、環境温度が25℃の時に、記録ヘッド2を目標温度40℃に加熱する場合の温調条件が示される。
【0081】
第2の温調動作時には、図10(c)に示すように、ヒータが5つの領域に分割されて、短パルスの印加が行なわれる。具体的には、吐出口列の一方端から1〜48番及び593〜640番の全てのヒータを領域Eとして短パルスの印加が行なわれる。49〜256番及び305〜320番までの4n番(nは自然数)のヒータを領域C1−1とし、321〜336番及び385〜592番までの4n+1番のヒータを領域C1−2として短パルスの印加が行なわれる。また、257〜304番までの2n番のヒータを領域C2−1とし、337〜384番までの2n+1番のヒータを領域C2−2として短パルスの印加が行なわれる。すなわち、吐出口列の一方端から領域E、領域C1、領域C2、領域C1、領域C2、領域C1、領域Eとなる。領域C1(領域C1−1、領域C1−2)は、第1の温調動作時に比べて、印加されるヒータが間引かれている(4分の1の数のヒータが印加される)。領域C2(領域C2−1、領域C2−2)は、第1の温調動作時に比べて、印加されるヒータが間引かれている(2分の1の数のヒータが印加される)領域である。このようにして第2の温調動作時には、吐出口列中心部付近の降温を防ぎつつ、吐出口列端部付近に吐出口列中心部付近よりも多くの発熱量を与えて加熱する。
【0082】
ここで、領域C2は、ベースプレート13の横梁14の直上にあるヒータである。横梁14が配置された位置は、ベースプレート13への放熱の効果があることから、降温防止のため、本実施形態においては領域C1よりも発熱量が多い領域C2のヒータ領域としている。
【0083】
次に、図11(a)を用いて、実施形態2に係わる2段階温調処理を実施した後の吐出口列の温度分布について説明する。図11(b)は、本実施形態における効果を説明するために、参考例として従来の温度分布について示している。なお、図11(a)において、N1、N2、D1及びD2は、図3(b)に示す符号にそれぞれ対応している。
【0084】
ここで、実施形態1と同様に平坦率を算出し、実施形態2に係わる平坦率と、従来の手法に係わる平坦率とを比較してみる。なお、従来の手法においても、実施形態2と同様の構成を有するベースプレート13を採用した記録ヘッドが使用されている。
【0085】
両者を比較してみると、実施形態2の温度分布においては、平坦率が約90.9%となるが、従来の手法においては、平坦率が約54.5%となった。この結果から実施形態2に係わる温調動作の方が従来の手法の温調動作よりも、温度分布を均一にできることが分かる。すなわち、同一の目標温度へ加熱する場合、本実施形態に係わる温調動作の方が従来の手法に係わる温調動作よりも、温度のばらつきが少ない。
【0086】
以上説明したように実施形態2によれば、ベースプレート13の形状によらず、実施形態1同様に、吐出口の配置方向に沿った吐出口列の温度分布を均一にできるので、記録開始時点から安定したインク吐出量で記録動作を実行できる。
【0087】
(実施形態3)
次に、実施形態3について説明する。実施形態3においては、実施形態1及び2で説明した第1の温調動作と第2の温調動作の実行順番を入れ替える場合について説明する。記録装置20の構成や各種設定値等については、実施形態1と同様となるため、その説明については省略し、ここでは、実施形態1との相違点について主に説明する。
【0088】
図12(a)を用いて、実施形態3に係わる2段階温調処理を実施した後の吐出口列の温度分布について説明する。図12(b)は、本実施形態における効果を説明するために、参考例として従来の温度分布について示している。なお、図12(a)において、N1、N2、D1及びD2は、図3(b)に示す符号にそれぞれ対応している。
【0089】
ここで、実施形態1と同様に平坦率を算出し、実施形態3に係わる平坦率と、従来の手法に係わる平坦率とを比較してみる。両者を比較してみると、実施形態3の温度分布においては、平坦率が約88.2%となるが、従来の手法においては、平坦率が約24.5%となった。この結果から実施形態2に係わる温調動作の方が従来の手法の温調動作よりも、温度分布を平坦にできることが分かる。すなわち、同一の目標温度へ加熱する場合、本実施形態に係わる温調動作の方が従来の手法に係わる温調動作よりも、温度のばらつきが少ない。
【0090】
以上説明したように実施形態3によれば、第1の温調動作と第2の温調動作の実行順番を入れ替えた場合であっても、従来の構成よりも、吐出口の配置方向に沿った吐出口列の温度分布を均一にできる。そのため、記録開始時点から安定したインク吐出量で記録動作を実行できる。
【0091】
(実施形態4)
次に、実施形態4について説明する。実施形態4においては、なお、環境温度が15℃の時に、記録ヘッド2を目標温度40℃に加熱する場合の温調条件が示される。記録装置20の構成や各種設定値等については、実施形態1と同様となるため、その説明については省略し、ここでは、実施形態1との相違点について主に説明する。
【0092】
ここで、実施形態4に係わる第2の温調動作時には、図13に示すように、ヒータが複数の領域(この場合、3つ)に分割されて、短パルスの印加が行なわれる。具体的には、吐出口列の一方端から1〜64番及び577〜640番のヒータを領域Eとして短パルスの印加が行なわれる。また、65〜320番までの4n番(nは自然数)のヒータを領域C1−1とし、321〜576番までの4n+1番のヒータを領域C1−2として短パルスの印加が行なわれる。吐出口列の一方端から領域E、領域C1(領域C1−1、領域C1−2)、領域Eとなる。
【0093】
領域Eは、第1の温調動作時と同じ加熱度合いで加熱が行なわれる領域である。領域C1−1及び領域C1−2は、第1の温調動作時に比べて、印加されるヒータが間引かれている(4分の1の数のヒータが印加される)領域である。すなわち、分割された領域毎(領域E及び領域C1)に加熱の度合いが変更される。
【0094】
次に、図14(a)を用いて、実施形態4に係わる2段階温調処理を実施した後の吐出口列の温度分布について説明する。図14(b)は、本実施形態における効果を説明するために、参考例として従来の温度分布について示している。なお、図14(a)において、N1、N2、D1及びD2は、図3(b)に示す符号にそれぞれ対応している。
【0095】
ここで、実施形態1と同様に平坦率を算出し、実施形態2に係わる平坦率と、従来の手法に係わる平坦率とを比較してみる。なお、従来の手法においても、環境温度が15℃の時に、記録ヘッドを目標温度40℃に加熱した場合の測定結果が示されている。
【0096】
両者を比較してみると、実施形態4の温度分布においては、平坦率が約83.6%となるが、従来の手法においては、平坦率が約12.7%となった。この結果から実施形態4に係わる温調動作の方が従来の手法の温調動作よりも、温度分布を均一にできることが分かる。すなわち、同一の目標温度へ加熱する場合、本実施形態に係わる温調動作の方が従来の手法に係わる温調動作よりも、温度のばらつきが少ない。
【0097】
以上説明したように実施形態4によれば、環境温度によらず、実施形態1同様に、吐出口の配置方向に沿った吐出口列の温度分布を均一にできるので、記録開始時点から安定したインク吐出量で記録動作を実行できる。
【0098】
以上が本発明の代表的な実施形態の例であるが、本発明は、上記及び図面に示す実施形態に限定することなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施できるものである。
【0099】
例えば、上述した実施形態においては、2種類の温調条件により記録ヘッド(ヒータボード6)を加熱する2段階温調法について例を挙げて説明したが、これに限られない。すなわち、本発明は、3段階の温調動作、4段階の温調動作のような多段階温調法を提案するものである。すなわち、本発明は、多段階温調法を用いることにより、記録開始時点の吐出口列の温度分布を最終的にほぼ均一にすることを目的としている。例えば、吐出口列端部から所定範囲よりも吐出口列中心部の領域に対する加熱の度合いを弱くする温調動作をその中心部の領域に対する加熱の度合いに応じて複数段階設け、それらを順番に実行し、記録ヘッドの温度調整を行なうように構成しても良い。また、例えば、上述した第1の温調動作と第2の温調動作とを所定時間ずつ複数回繰り返すことにより記録ヘッドの温度調整を行なうように構成しても良い。
【0100】
また、上述した実施形態においては、第2の温調動作時の温調条件の領域Cでの吐出口の間引き率を4分の1(25%)としていたが、これに限られず、目標温度、初期温度、駆動周波数、吐出口の数等によってこの間引き率は当然変化する。すなわち、間引き率は、適宜変更すれば良い。
【0101】
また更に、吐出口の数を間引くのではなく、ヒータへの印加時間(パルス幅)や印加電圧を変化させても良い。例えば、第2の温調動作を、第1の温調動作のパルス幅より短いパルス幅で行なう等しても良い。或いは、第2の温調動作を、第1の温調動作の印加電圧より低い印加電圧で行なう等しても良い。すなわち、局所的な発熱量の分布ではなく、記録ヘッド(ヒータボード)全体を見たときの総発熱量を上述した実施形態と同様にできるのであれば、どのような手法を用いても良い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱エネルギーを利用してインクを吐出するために、インクに与える熱エネルギーを発生する電気熱変換素子を有する吐出口が複数配置される記録ヘッドを有し、該記録ヘッドを用いて記録媒体に画像を記録する記録装置であって、
前記複数の吐出口に対応した電気熱変換素子それぞれに電圧を印加し、該複数の吐出口全てが配置された領域を加熱する第1の温調動作の実行を制御する第1の制御手段と、
前記複数の吐出口のうちいずれかの吐出口に対応した電気熱変換素子それぞれに電圧を印加し、前記吐出口の配置方向に沿ってその両端部から所定数の吐出口が配置された所定の領域よりも、該所定の領域以外に配置された吐出口の領域に対する加熱の度合いを弱くして加熱する第2の温調動作の実行を制御する第2の制御手段と、
前記記録の開始前に、前記第1の制御手段及び前記第2の制御手段を制御して、前記第1の温調動作と前記第2の温調動作とを含む複数段階の前記記録ヘッドの温度調整動作の実行を制御する温調制御手段と
を具備することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記第2の制御手段は、
前記所定の領域以外の領域においては、前記電気熱変換素子に電圧を印加する吐出口の数を減らすことにより加熱の度合いを弱くする
ことを特徴とする請求項1記載の記録装置。
【請求項3】
前記第2の制御手段は、
前記所定の領域よりも、前記所定の領域以外の領域に配置された複数の吐出口に対応する電気熱変換素子それぞれに印加する電圧を低くするか又は電圧の印加時間を短くすることにより加熱の度合いを弱くする
ことを特徴とする請求項1記載の記録装置。
【請求項4】
前記第2の制御手段は、
前記所定の領域に対して第1の温調動作時と同じ加熱度合いで加熱を行なう
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記第2の制御手段は、
前記所定の領域以外の領域を複数の領域に分割し、該分割した領域毎に前記加熱の度合いを変更して加熱する
ことを特徴とする請求項1記載の記録装置。
【請求項6】
前記記録ヘッドにおける前記複数の吐出口が配置された領域以外の位置に配置され、該記録ヘッドの温度を測定する温度センサと、
前記第1の温調動作及び前記第2の温調動作それぞれにより加熱が行なわれた際の前記吐出口の配置位置に沿った前記記録ヘッドの温度分布を示す情報と、その際に温度センサにより測定されたセンサ温度との関係を示す情報を保持する保持手段と
を更に具備し、
前記温調制御手段は、
前記保持手段により保持された情報に基づいて前記第1の温調動作と前記第2の温調動作との終了タイミングをそれぞれ決める
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記温調制御手段は、
前記第1の温調動作を実行させた後、前記第2の温調動作を実行させる
ことを特徴とする請求項1又は2記載の記録装置。
【請求項8】
熱エネルギーを利用してインクを吐出するために、インクに与える熱エネルギーを発生する電気熱変換素子を有する吐出口が複数配置される記録ヘッドを有し、該記録ヘッドを用いて記録媒体に画像を記録する記録装置の制御方法であって、
第1の制御手段が、前記複数の吐出口に対応した電気熱変換素子それぞれに電圧を印加し、該複数の吐出口全てが配置された領域を加熱する第1の温調動作の実行を制御する工程と、
第2の制御手段が、前記複数の吐出口のうちいずれかの吐出口に対応した電気熱変換素子それぞれに電圧を印加し、前記吐出口の配置方向に沿ってその両端部から所定数の吐出口が配置された所定の領域よりも、該所定の領域以外に配置された吐出口の領域に対する加熱の度合いを弱くして加熱する第2の温調動作の実行を制御する工程と、
温調制御手段が、前記記録の開始前に、前記第1の制御手段及び前記第2の制御手段を制御して、前記第1の温調動作と前記第2の温調動作とを含む複数段階の前記記録ヘッドの温度調整動作の実行を制御する工程と
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項1】
熱エネルギーを利用してインクを吐出するために、インクに与える熱エネルギーを発生する電気熱変換素子を有する吐出口が複数配置される記録ヘッドを有し、該記録ヘッドを用いて記録媒体に画像を記録する記録装置であって、
前記複数の吐出口に対応した電気熱変換素子それぞれに電圧を印加し、該複数の吐出口全てが配置された領域を加熱する第1の温調動作の実行を制御する第1の制御手段と、
前記複数の吐出口のうちいずれかの吐出口に対応した電気熱変換素子それぞれに電圧を印加し、前記吐出口の配置方向に沿ってその両端部から所定数の吐出口が配置された所定の領域よりも、該所定の領域以外に配置された吐出口の領域に対する加熱の度合いを弱くして加熱する第2の温調動作の実行を制御する第2の制御手段と、
前記記録の開始前に、前記第1の制御手段及び前記第2の制御手段を制御して、前記第1の温調動作と前記第2の温調動作とを含む複数段階の前記記録ヘッドの温度調整動作の実行を制御する温調制御手段と
を具備することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記第2の制御手段は、
前記所定の領域以外の領域においては、前記電気熱変換素子に電圧を印加する吐出口の数を減らすことにより加熱の度合いを弱くする
ことを特徴とする請求項1記載の記録装置。
【請求項3】
前記第2の制御手段は、
前記所定の領域よりも、前記所定の領域以外の領域に配置された複数の吐出口に対応する電気熱変換素子それぞれに印加する電圧を低くするか又は電圧の印加時間を短くすることにより加熱の度合いを弱くする
ことを特徴とする請求項1記載の記録装置。
【請求項4】
前記第2の制御手段は、
前記所定の領域に対して第1の温調動作時と同じ加熱度合いで加熱を行なう
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記第2の制御手段は、
前記所定の領域以外の領域を複数の領域に分割し、該分割した領域毎に前記加熱の度合いを変更して加熱する
ことを特徴とする請求項1記載の記録装置。
【請求項6】
前記記録ヘッドにおける前記複数の吐出口が配置された領域以外の位置に配置され、該記録ヘッドの温度を測定する温度センサと、
前記第1の温調動作及び前記第2の温調動作それぞれにより加熱が行なわれた際の前記吐出口の配置位置に沿った前記記録ヘッドの温度分布を示す情報と、その際に温度センサにより測定されたセンサ温度との関係を示す情報を保持する保持手段と
を更に具備し、
前記温調制御手段は、
前記保持手段により保持された情報に基づいて前記第1の温調動作と前記第2の温調動作との終了タイミングをそれぞれ決める
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記温調制御手段は、
前記第1の温調動作を実行させた後、前記第2の温調動作を実行させる
ことを特徴とする請求項1又は2記載の記録装置。
【請求項8】
熱エネルギーを利用してインクを吐出するために、インクに与える熱エネルギーを発生する電気熱変換素子を有する吐出口が複数配置される記録ヘッドを有し、該記録ヘッドを用いて記録媒体に画像を記録する記録装置の制御方法であって、
第1の制御手段が、前記複数の吐出口に対応した電気熱変換素子それぞれに電圧を印加し、該複数の吐出口全てが配置された領域を加熱する第1の温調動作の実行を制御する工程と、
第2の制御手段が、前記複数の吐出口のうちいずれかの吐出口に対応した電気熱変換素子それぞれに電圧を印加し、前記吐出口の配置方向に沿ってその両端部から所定数の吐出口が配置された所定の領域よりも、該所定の領域以外に配置された吐出口の領域に対する加熱の度合いを弱くして加熱する第2の温調動作の実行を制御する工程と、
温調制御手段が、前記記録の開始前に、前記第1の制御手段及び前記第2の制御手段を制御して、前記第1の温調動作と前記第2の温調動作とを含む複数段階の前記記録ヘッドの温度調整動作の実行を制御する工程と
を含むことを特徴とする制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−183821(P2012−183821A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−20312(P2012−20312)
【出願日】平成24年2月1日(2012.2.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月1日(2012.2.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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