説明

記録装置

【課題】記録ヘッドにフレキシブル配線材を介して外部からの信号を入力する記録装置において、フレキシブル配線材に含まれる配線数が増加しても、電気容量を確保しながら、省スペース化を可能とする。
【解決手段】フレキシブル配線材12は、アクチュエータ11に接続され駆動回路12aを有する第1の配線材121と、第1の配線材121を外部信号源に接続する第2の配線材122とを含む。第1の配線材121は、その両面に2n本の導線60を有し、その両面にそれぞれn本の導線と接続された端子群61を有する。第2の配線材121は両面の端子群61にそれぞれ接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に関し、特に記録ヘッドにフレキシブル配線材を用いて外部からの信号を入力するように構成した記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
記録装置としては、例えば、特許文献1に、装置筐体内に、本体側基板を配置するとともに、記録ヘッドを搭載して走査されるキャリッジに、前記本体側基板にフレキシブル配線材で接続されたヘッド側回路基板(特許文献1のヘッド基板に相当)を配置して、さらに記録ヘッドと前記ヘッド側回路基板とを別のフレキシブル配線材で接続し、後者のフレキシブル配線材に、駆動パルス信号を出力する駆動回路を備えた駆動ICチップ(特許文献1のドライバICに相当)を実装する構造が記載されている。そして、駆動パルス信号を記録ヘッドのアクチュエータに入力して、記録ヘッドに設けられた多数のノズルから選択的にインクを吐出するようにしている。
【0003】
前記駆動ICチップを備えたフレキシブル配線材は、ノズルの数に応じた多数の駆動部を有するアクチュエータに駆動パルス信号を入力するために、多数の導線を自由にパターン設計できる所謂フレキシブルプリント配線材(FPC)が使用されてきた。
【特許文献1】特開2004−98465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フレキシブルプリント配線材(FPC)はもともと高価な部品であることから製品コストが嵩むという問題がある。そのため、本発明者は、ヘッド側回路基板とアクチュエータとを、フレキシブルプリント配線材(FPC)だけで接続するのではなく、フレキシブルプリント配線材(FPC)と汎用のフレキシブルフラットケーブル(FFC)とを連結して接続することにより、部品コストを抑制することを検討した。
【0005】
一方、近年の記録装置は、記録の高速化や高解像度化等のために、ノズル数が増加、高密度化する傾向にあり、ノズル数の増加は、フレキシブル配線材における配線数の増加を必要とする。また、ノズル数が増えると、アクチュエータを駆動するための電流量も増加するため、電流量の確保のためにも、フレキシブル配線材における配線数を多くする必要も生じる。
【0006】
ところが、配線数の増加に対応して、フレキシブルプリント配線材(FPC)やフレキシブルフラットケーブル(FFC)を広幅にすると、部品の大型化を招くという不都合も生じ、また、導線を細幅にすると、抵抗値が高くなったりショートを起こしやすくなったりするという恐れがあった。
【0007】
本発明は、前記問題を解決するものであって、記録ヘッドにフレキシブル配線材を介して外部からの信号を入力する記録装置において、フレキシブル配線材に含まれる配線数が増加しても、電気容量を確保しながら、省スペース化を可能とすることができる記録装置を実現することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明における記録装置は、アクチュエータの選択的な駆動により記録動作を行う記録ヘッドと、外部からの信号を前記アクチュエータに入力するためのフレキシブル配線材とを備えた記録装置において、前記フレキシブル配線材は、前記アクチュエータを駆動させる駆動回路を有し且つ前記アクチュエータに接続される第1の配線材と、前記第1の配線材を外部信号源に接続する第2の配線材とを含み、前記第1の配線材には、その片面もしくは両面に複数の導線が配置されていて、前記複数の導線と前記第2の配線材とを接続するための第2の配線材用端子群が、前記第1の配線材の少なくともどちらか一方の面に配置され、前記第2の配線材用端子群は、前記複数の導線を複数のグループに分けたそのグループ毎に対応して設けられ、前記各グループに対応した前記第2の配線材用端子群同士は、互いに離間する位置に配置され、前記第2の配線材は、前記第2の配線材用端子群毎に独立して接続するように、複数設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の記録装置において、複数の前記第2の配線材用端子群は、前記第1の配線材の表面側と裏面側とに分けて配置されていることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の記録装置において、前記第2の配線材用端子群は、各導線に設けられた第2の配線材用の端子が集まって形成され、前記端子の幅寸法は前記導線の幅寸法よりも広幅に形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の記録装置において、前記第1の配線材の表面側に形成された第2の配線材用端子群と、裏面側に形成された第2の配線材用端子群とは、前記第1の配線材の平面視において重ならない位置に配置されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の記録装置において、複数の前記第2の配線材用端子群は、前記第1の配線材の同じ面上において、前記導線が延びる方向に互いに離間する位置に配置されていることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の記録装置において、前記第2の配線材用端子群は、各導線に設けられた第2の配線材用の端子が集まって形成され、前記端子の幅寸法は前記導線の幅寸法よりも広幅に形成されていることを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の記録装置において、前記複数の第2の配線材用端子群は、前記第1の配線材の同じ面上における、該第1の配線材が前記アクチュエータから引き出された方向に沿って離間して設けられ、前記複数の第2の配線材用端子群のうち、第2の配線材に近い側に位置する第2の配線材用端子群のグループに接続した導線は、前記第2の配線材から遠い側に位置する第2の配線材用端子群の端子同士の間を通るように配線されていることを特徴とするものである。
【0015】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれかに記載の記録装置において、前記複数の第2の配線材は、少なくとも前記第1の配線材と接続する部分の近傍では、その広幅面を対向させて配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、第2の配線材用端子群が、複数の導線を複数のグループに分けたそのグループ毎に対応して設けられ、且つ各グループに対応した前記第2の配線材用端子群同士は、互いに離間する位置に配置され、第2の配線材が、前記第2の配線材用端子群毎に独立して接続するように複数設けられているから、全ての導線に設けた第2の配線材用端子を一括して第2の配線材用端子群を構成する場合に比べて、第2の配線材用端子群の1群当たりの大きさ(占有スペース)とこれに接続する第2の配線材の大きさ(占有スペース)とを小さくすることができる。
【0017】
従って、フレキシブル配線材に含まれる導線の数が増えたときに、導線を細幅にすることなく全体が大型化することを回避することができるから、電流容量を確保しながら省スペース化を図ることが可能となる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、複数の前記第2の配線材用端子群は、前記第1の配線材の表面側と裏面側とに分けて配置されているから、第1の配線材における表面側と裏面側の両方を活用してそれぞれに第2の配線材を接続でき、フレキシブル配線材の省スペース化を図ることができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、上記のように第2の配線材用端子群が第1の配線材の表面側と裏面側とに分けて配置されることで、第2の配線材用の端子の幅寸法は第1の配線材に含まれている導線と干渉することなく、その導線の幅寸法よりも広幅に形成され、第2の配線材用端子を第2の配線材と接続するときの確実性を向上させることができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、第1の配線材の表面側に形成された第2の配線材用端子群と、裏面側に形成された第2の配線材用端子群とは、第1の配線材の平面視において重ならない位置に配置されているから、第2の配線材用端子群の第2の配線材用の端子を、第1の配線材に含まれている導線と干渉することなく、その導線の幅寸法よりも広幅に形成することができる。さらに、第1の配線材の両面において第2の配線材の接続作業が干渉することがないので、特に導電性ろう材(はんだ)を用いるとき、その作業を独立した位置で容易に行なうことができる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、複数の前記第2の配線材用端子群は、第1の配線材における同じ面上の、前記導線が延びる方向に互いに離間する位置に配置されているから、第2の配線材を互いに広幅面同士が対向するように第1の配線材に接続することで、フレキシブル配線材の省スペース化を図ることができる。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、上記のように第2の配線材用端子群が第1の配線材において導線が延びる方向に互いに離間して配置されることで、第2の配線材用の端子の幅寸法を、第1の配線材に含まれている導線と干渉することなく、その導線の幅寸法よりも広幅に形成することができ、第2の配線材用端子を第2の配線材と接続を行うときの確実性を向上させることができる。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、複数の第2の配線材用端子群のうち、第2の配線材に近い側に位置する第2の配線材用端子群に接続している導線は、前記第2の配線材から遠い側に位置する第2の配線材用端子群の端子同士の間を通るように配線されており、換言すれば、第2の配線材に遠い側に位置する第2の配線材用端子群では、第1の配線材の幅方向に沿って端子と導線とが交互に並ぶことになるから、第2の配線材用の端子を導線よりも広幅にでき第2の配線材との電気的接続の確実性を高めることができる。
【0024】
請求項8に記載の発明によれば、複数の第2の配線材は、少なくとも前記第1の配線材と接続する部分の近傍では、その広幅面を対向させて配置されているから、複数の第2の配線材が占めるスペースを小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に本発明の基本的な実施形態を説明する。図1は、本発明の記録装置をインクジェット記録装置100に具体化した例を示している。実施形態のインクジェット記録装置100は、例えば、単独のプリンタ装置としてだけでなく、コピー機能、スキャナ機能、ファクシミリ機能等を備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device )のプリンタ機能としても適用することができるものである。インクジェット記録装置100は、本体フレーム2の内部に備えられ、被記録媒体である用紙PAにインクを吐出させて記録する記録ヘッド1がキャリッジ3に搭載されている。
【0026】
キャリッジ3は、本体フレーム2内に主走査方向(Y方向)に沿って平行状に設けられた後ガイド軸6と前ガイド軸7とに摺動自在に載置されており、本体フレーム2の右後側に配置されたキャリッジ駆動モータ17と、無端帯であるタイミングベルト18とにより、主走査方向(Y方向)に沿って往復移動するように構成されている。インクは、本体フレーム2内に静置されたインク供給源(インクタンク)5a〜5dからインク供給管14(14a〜14d)を介してキャリッジ3側へ供給される。この実施形態では、イエローインク(Y)、マゼンタインク(M)、シアンインク(C)、ブラックインク(Bk)の4色のインクが備えられている。
【0027】
用紙PAは、図示しない公知の用紙搬送機構により、主走査方向(Y方向)と直交する副走査方向(X方向)に沿って、記録ヘッド1の下面側を水平状に搬送される(図1の矢印A方向)。この用紙PAに対して、主走査方向(Y方向)に移動する記録ヘッド1の下面に開口するノズル(図示せず)から下向きにインクが吐出されて記録が行われる。なお、説明では、記録ヘッド1のノズルの開口面側を前面もしくは下面、その反対側を背面もしくは上面として記載する。
【0028】
キャリッジ3には、図2及び図3に示すように、略箱状のヘッドホルダ8が備えられ、ヘッドホルダ8の底板8aの下面側に下向きに開口形成された凹部8bに、記録ヘッド1がノズルを下向きに露出させて当該底板8aとほぼ平行になるように固着される。
【0029】
ヘッドホルダ8の背面側には、本体フレーム2内に配置された本体側基板(図示せず)と電気的に接続される電気回路が形成されたヘッド側回路基板22が配置されている。このヘッド側回路基板22は、図示しない別のフレキシブル配線材によって外部信号源に接続されており、ヘッドホルダ8の背面側からの平面視で、記録ヘッド1と重なる位置に配置されている。
【0030】
記録ヘッド1とヘッド側回路基板22との間であって、ヘッドホルダ8の底板8aの上面側には、キャリッジ3側に供給されたインクを貯留するダンパー装置9が搭載されている。ダンパー装置9の内部は、複数のインク室に区画され、インク供給管14から供給されたインクがそのインク室に色毎に貯留される。ダンパー装置9には、インク室中のインクに滞留する気泡を除去するための排気弁手段9bも備えられている。
【0031】
ヘッドホルダ8の底板8aには開口部(図示せず)が貫通形成されており、この開口部の内側では、ダンパー装置9のインク流出口9aと、記録ヘッド1のインク取入口37とが、後述する補強フレーム15の接続穴15bと弾性シール部材9cとを介して接続され、ダンパー装置9から記録ヘッド1にインクが色毎に独立して供給される(図2参照)。
【0032】
ヘッドホルダ8の底板8aには、図2及び図3に示すように、後述する記録ヘッド1のフレキシブル配線材12を、前面側から背面側に挿通させるスリット孔55と、底板8aの前面側に記録ヘッド1を固着させるための接着剤19を流し込むための貫通孔56も穿設されている。また、底板8aには、後述するフレキシブル配線材12に実装された駆動ICチップ12aの発する熱を外部へ放熱する放熱板57が、底板8aから突設された取り付けボス72で固着されて取り付けられている。スリット孔55からヘッドホルダ8内に挿通されたフレキシブル配線材12は、底板8aに固着されたゴム状弾性部材58によって駆動ICチップ12aが放熱板57と熱伝導可能に接触するように押圧されて、フレキシブル配線材12は、ヘッドホルダ8内の側壁に沿って上方に延びヘッド側基板22に接続される。
【0033】
記録ヘッド1は、複数のノズルを下面に開口させ内部にインク流路を有するキャビティ部10と、このキャビティ部10内のインクに選択的に吐出圧力を与えるアクチュエータ11と、このアクチュエータ11に後述する駆動回路を備えた駆動ICチップ12aからの駆動信号を出力するフレキシブル配線材12とが積層配置される構造のヘッドユニット20を備え、ヘッドユニット20の背面側に熱伝導板13と補強フレーム15とを備え、前面側に外周を囲むフロントフレーム16を備えている。
【0034】
キャビティ部10は、特開2001−246744号公報や、特開2005−313428号公報などで公知のものと同様に、その上面のX方向の一端側に露出する各インク取入口37に個別に供給されたインクが、それぞれマニホールド室を通じて多数の圧力室(いずれも図示せず)に分配される。そして、アクチュエータ11の駆動部が駆動されて選択的に圧力室に吐出圧力が与えられることにより、圧力室に連通したノズルからインクが吐出される。
【0035】
アクチュエータ11は、この実施の形態では特開2005−322850号公報等に開示された公知のものと同様に、扁平な方向と直交する方向に積層された複数のセラミックス層と、セラミックス層間に挟まれた内部電極(図示せず)とを有しており、その内部電極に上下を挟まれたセラミックス層の領域に駆動部すなわち活性部が形成されている。アクチュエータ11の上面には、図4のように、この内部電極のうち圧力室ごとに独立した電極と電気的なスルーホールを介して接続された外部個別電極43と、各圧力室に共通な内部電極と接続された外部共通電極44とが形成され、外部個別電極43に印加された駆動パルス信号により活性部が変位して、多数の圧力室に対して選択的に吐出圧力を与える。外部個別電極43は、フレキシブル配線材12に形成された信号線の端子電極(図示せず)と個別に電気的に接続され、外部共通電極44は、フレキシブル配線材12に形成された共通電位線の端子電極(図示せず)と電気的に接続されている。
【0036】
補強フレーム15は、キャビティ部10を補強するための部材であり、キャビティ部10よりも剛性に優れた素材(例えば、SUSなどの金属板)からなる枠形状で、平面視において外形が、キャビティ部10よりもひと回り大きく形成されている。この補強フレ−ム15を、キャビティ部10の背面に沿って、アクチュエータ11を囲むように積層し、接着固定することで、薄い扁平形状のキャビティ部10の変形や歪みを防止している。補強フレーム15の枠部15aのうちX方向の一端側にはその表裏面を貫通して、キャビティ部10のインク取入口37と対応する接続穴15bが穿設されている。
【0037】
熱伝導板13は、フレキシブル配線材12の背面におけるアクチュエータ11と対応する位置に積層される。熱伝導板13は、アクチュエータ11のほぼ全面にわたる大きさを有する平面視長方形の扁平な板材で、アクチュエータ11及びフレキシブル配線材12よりも熱伝導性に優れ、且つ、フレキシブル配線材12よりも剛性が高い素材からなっており、例えば、アルミニウム、銅、SUSなどの金属板が適用されている。この熱伝導板13は、フレキシブル配線材12を介してアクチュエータ11に密着することで、アクチュエータ11の局所的な発熱を分散化して温度分布のバラツキを抑え、且つ放熱する効果を奏する。さらには、ヘッドユニット20全体の剛性を高める効果も奏する。この熱伝導板13は省略する場合もある。
【0038】
フロントフレーム16は、平面視コの字状の扁平な板材で、キャビティ部10を囲むよう配置され、補強フレーム15の前面に固着される(図2及び図3参照)。フロントフレーム16によって、キャビティ部10のノズル面とヘッドホルダ8の周囲との段差を解消し、払拭部材等でノズル面をクリーニングする際の引っ掛かりを防止している。
【0039】
フレキシブル配線材12は、前述したヘッド側回路基板22からの印字信号をアクチュエータ11に入力するケーブルであって、この実施形態では、図3、4のようにアクチュエータ11と電気的に接続され且つアクチュエータ11を駆動するための駆動回路を備えた駆動ICチップ12a(請求項の駆動回路に相当)が実装されている第1の配線材121と、第1の配線材121とヘッド側回路基板22とを接続する2つの第2の配線材122、122とで構成している。第1の配線材121には、アクチュエータ11との接合に対応して導線のパターンを自由に設計可能な所謂フレキシブルプリント配線板(FPC)を適用し、第2の配線材122には、ヘッド側回路基板22と接続する導線63を平行に有する汎用のケーブル(FFC)が適用されている。第1の配線材121と第2の配線材122とはともに帯状を呈している。
【0040】
本発明のフレキシブル配線材12について、図4〜図9を用いて説明する。
【0041】
第1の実施形態では、図4で示すように第1の配線材121は、その長手方向(Y方向)の一方の端部におけるアクチュエータ11と対向する面(以下、この面側を裏面側と記載する)に、アクチュエータ11の外部個別電極43及び外部共通電極44と電気的に接合される端子電極(図示せず)を備えている。第1の配線材121は、アクチュエータ11から引き出される方向(長手方向と同じY方向)の中途部の表面側に駆動ICチップ12aを実装し、その駆動ICチップ12aと前記端子電極(図示せず)とを接続する複数の導線(図示せず)を含んでいる。駆動ICチップ12aから第1の配線材の他方の端部までの間では、導線60は第1の配線材121の表面側、裏面側に沿ってそれぞれ延び、端部寄りの位置に、導線60を第2の配線材122と接続するための第2の配線材用端子群61が表面側と裏面側とにそれぞれ設けられている。2つの第2の配線材用端子群61のうち、第1の配線材121の表面側に形成された方を第2の配線材用端子群61a、裏面側に形成された方を第2の配線材用端子群61bとする。
【0042】
第2の配線材用端子群61は、各導線60の端部にそれぞれ形成した第2の配線材用の端子(以下、単に端子と記載する)62が集まって形成されたもので、端子62は第1の配線材121の幅方向(X方向)に沿って間隔を開けて並設されている。この端子62については後述する。
【0043】
表面側に形成された第2の配線材用端子群61aの配置位置と、裏面側に形成された第2の配線材用端子群61bの配置位置とは、第1の配線材121の平面視において重ならないように、第1の配線材121の長手方向にずらされている。第2の配線材用端子群61a、61bへ第2の配線材122、122を導電性ろう材(はんだ)によって接続する作業は、各端子群と第2の配線材を一括して治具に挟んで加熱するが、前述したように第2の配線材用端子群61a、61bの配置位置をずらすことにより、それぞれの端子群ごとに作業をすることができ、挟持力や熱を良好に接続部に作用させることができる。また導電性接着剤等を用いる場合も同様に端子群ごとに行なうことができる。
【0044】
第2の配線材122は、図6のようにその長手方向(Y方向)の一方側の端部に、第1の配線材121と接続するために第1の配線材用端子群64が設けられ、他方側の端部は、図3のようにヘッド側回路基板22と接続するため、ヘッド側回路基板22に設けられたコネクタ23に着脱可能に接続される。
【0045】
この実施形態では、2枚の第2の配線材122、122に対応して設けられた2つのコネクタ23、23は、その長辺同士が平行状となるように、ヘッド側回路基板22の表面(上面)における第2の配線材122に近い部位に配置され、2つの第2の配線材122はその広幅面を平行状に対向させて接続することで、第1の配線材121とヘッド側回路基板22とを接続している。なお、コネクタ23の配置位置は、上述の形態に限定するものではなく、ヘッド側回路基板22の表裏面に分けて配置してもよい。
【0046】
第1実施形態の第1の配線材121と第2の配線材122について詳細に説明する。第1の配線材121は、図5に示すように、電気絶縁性樹脂からなるベースフィルム70の少なくとも駆動ICチップ12bと端子62との間の表裏面にそれぞれ導線60が配線され、この導線60は、電気絶縁性樹脂からなるカバーフィルム71に被覆されており、断面視では、ベースフィルム70を挟んで導線60が電気的に独立した2層に配線されている。すなわち、第1の配線材121の表裏面に配置された導線60同士は、ベースフィルム70で絶縁されているから、表面と裏面とでそれぞれ自由に配線パターンを設計することができるのである。なお、アクチュエータ11を接続する端子電極(図示せず)と駆動ICチップ12bとの間の導線も、第1の配線材121の両面に形成しても良い。この導線の端部すなわち端子電極(図示せず)は、導線を裏面側にのみ露出させて形成されている。
【0047】
第1の配線材121には、アクチュエータ11の駆動に必要な2n本の導線60のうち、n本を表面側にn本を裏面側にそれぞれ配線しており、少なくとも第2の配線材用端子群61の近傍部分(アクチュエータ11と対向する部分を除いた部分)では、表裏面の導線60同士は平面視で重なる位置に配線されている。これにより、第1の配線材121は、導線2n本を含みながら、導線n本分の細い幅寸法に構成することができるのである。なお、表裏面の導線60は、必ずしも同数でなくてもよく、また平面視で完全に重ならなくてもよい。
【0048】
そして、図4〜図6に示すように、表面側に設けられた第2の配線材用端子群61aは、表面側に配線された導線60の第2の配線材122に近い側の端部の表面側を露出させて形成された端子62が集まって構成され、裏面側に設けられた第2の配線材用端子群61bは、裏面側に配線された導線60に第2の配線材122に近い側の端部の裏面側を露出させて形成された端子62が集まって構成されている。
【0049】
端子62は、図6に示すように、導線60の長手方向に直交する幅方向の寸法W1に対して、同方向の寸法W2が広幅に形成されている。導線60が2n本あるにもかかわらず、一方の面にはn本であるから、他方の面の導線を干渉することなく、端子62を広幅にできる。また、端子の幅をできるだけ広幅にすることで、第2の配線材122に含まれる導線63を端子62に導電性ろう材(はんだ)を用いて接続するときに、隣接する端子62間で電気的短絡が生じ難いため、作業性の向上や接続不良の防止を配慮したものである。
【0050】
一方、第2の配線材122は、詳細には図示していないが、電気絶縁性樹脂からなるベースフィルムの一方の面に導線63が複数配線され、この導線63を電気絶縁性樹脂からなるカバーフィルムで被覆したものであり、第1の配線材用端子群64では、その表裏面を覆うカバーフィルムとベースフィルムとが除去されて、導線63の端部全体が露出して、第1の配線材121と接続するための端子65を形成している(図6参照)。第2の配線材122は、n本の導線63を含むものが2枚用意されており、2枚の第2の配線材122(第1の配線材用端子群64)は、第1の配線材121の表面側の第2の配線材用端子群61aと裏面側の第2の配線材用端子群61bとにそれぞれ独立して接続される。
【0051】
第1の配線材121における端子62同士と、第2の配線材122の端子65同士は、同ピッチで配線されており、第2の配線材122の端子65と、第1の配線材121の端子62とを1対1で対応させて重ね合わせ加熱することで、一方の表面に形成された導電性ろう材(はんだ)を溶融させて接続が行われる。接続後には、端子65及び端子62を覆うように電気絶縁テープ(図示せず)が貼着される。
【0052】
上述した構成によると、第1の配線材121では、導線60を2n本含んでいるにも拘わらず、その表裏面に導線60がn本ずつ分けて配置され、それぞれに第2の配線材用端子群61が設けられているから、導線60をn本分並設するだけの幅寸法、すなわち細幅に構成することができる。また、第2の配線材122も、1つの第1の配線材121に対して2つ接続することで、1つ当たりの幅寸法が導線63をn本分並設した幅寸法のもの、すなわち細幅のものを適用することができる。従って、このように構成することで、記録ヘッド1のノズル数が増加して必要な導線の数(配線数)が増加しても、フレキシブル配線材12を大型化させずに対応することができる。さらに、導線60の線幅を細くしたり、配線ピッチを狭くしたりする必要もないので、電気容量の低減を招くことがなく、電気的短絡による不良も抑制できる。
【0053】
また、換言すると、第1の配線材121の幅寸法を変えない場合には、2n本の導線を表裏面に分けてn本ずつ配線することで、導線60の1本当たりの線幅を2倍にすることができる。これにより、導線60の電流容量を大きくすることが可能となる。もちろん、導線60は全て同じ線幅である必要はないので、一部の導線60(例えば共通電位導線)の線幅を他の導線60よりも太くして、第1の配線材121及び第2の配線材122を適切な幅寸法に短縮してもよい。
【0054】
次に、本発明の第2の実施形態について、図7〜図9を用いて説明する。第2の実施形態では、導線60と2つの第2の配線材用端子群61とが、第1の配線材121の表面側のみに設けられている。
【0055】
導線60は第1の配線材121の表面側に2n本配線されており、この2n本の導線は、n本ずつ2つのグループに分けられて、図9に示すように、グループ毎に対応して第2の配線材用端子群61(個別に、61c、61dと付す)が設けられている。そして、2つの第2の配線材用端子群61c、61dは、互いに第1の配線材121の長手方向(導線60の延びる方向)に離間して配置され、第2の配線材用端子群61毎に独立して、第2の配線材122、122が接続される。
【0056】
第2の実施形態の第1の配線材121は、電気絶縁性樹脂からなるベースフィルムの一方の面のみに多数の導線60が配線され、この導線60の端子電極(図示せず)及び端子62を除く部分が電気絶縁性樹脂からなるカバーフィルムで覆われており、第1の実施形態とは異なり、導線60は単層に形成されている。
【0057】
第2の配線材用端子群61のうち、第2の配線材122に近い側(第1の配線材121におけるアクチュエータ11に接続した側と反対の先端側)に位置する第2の配線材用端子群61cに接続されている導線60は、第2の配線材122から遠い側(第2の配線材用端子群61cよりも内方側)に位置する第2の配線材用端子群61dに含まれる端子62同士の間を通るように配線されている(図9参照)。つまり、第2の配線材122において隣接する導線60は、互いに異なるグループに分けられ、隣接する導線60の端子62は、別々の第2の配線材用端子群61に属している。
【0058】
そのため、第1の配線材121の幅方向に沿って、第2の配線材用端子群61dの箇所では、n個の端子62とn個の導線60(幅寸法が端子62よりも小さい)とが1つずつ交互に並び、第2の配線材用端子群61cの箇所では、n個の端子62だけが並んでいる。なお、複数個ずつ交互に並ぶようにすることもできる。従って、端子62の幅寸法は、他の群の端子と干渉することがなく、導線60の幅よりも広くでき、第2の配線材122との接続が容易になる。さらに第1の配線材121の幅方向の寸法を細幅にすることができるのである。また、第2の配線材122も、1つの第1の配線材121に対して2つ接続することで、1つ当たりの幅寸法が導線63をn本分並設した幅寸法のもの、すなわち細幅のものを適用することができる。
【0059】
これにより、記録ヘッド1のノズル数が増加して必要な導線(配線の数)が増加しても、フレキシブル配線材12を大型化せずに対応することができる。さらに、導線60の線幅を細くしたり、配線ピッチを狭くしたりする必要もないので、電気容量の低減を招くことがなく、電気的短絡による不良も抑制できる。
【0060】
また、第1及び第2の実施形態はいずれも、高価な配線材(FPC)が適用される第1の配線材121だけでフレキシブル配線材12を構成するのではなく、安価な配線材(FFC)が適用される第2の配線材122を組み合わせているので、フレキシブル配線材12全体のコストダウン効果も有している。
【0061】
なお、第2の実施形態では、導線60を2つのグループに分けた形態について説明したが、導線60を3つ以上のグループに分けて、各グループに第2の配線材用端子群61を設け、3つ以上の第2の配線材用端子群61を第1の配線材121の長手方向に互いに離間して設けてもよい。
【0062】
さらに、第2の実施形態のように、一方の面のみ導線60が配されている第1の配線材121を用いる場合でも、第1の実施形態のように第2の配線材用端子群61c、61dを表裏面に離間して設けることもできる。例えば、1つの第2の配線材用端子群61cを表面に設け、第2の配線材の端子群61dを裏面に設け、端子群61dの配置位置において導線60と端子群61dを導通させるようなスルーホールを貫通形成させ、裏面に設置された端子群61dと導線60とを導電性材料によって電気的に導通させるようにする。このような構成では、前述した実施形態のように表裏面に導線60が配された2層の第1の配線材を用いる場合よりも単層の第1の配線材を用いることができるのでコストダウン効果を有することができる。
【0063】
また、上述した第1の実施形態と第2の実施形態とを組み合わせて、第1の配線材121の表裏面の両方に導線60を配線し、且つ表裏面のいずれか一方、または両方において、複数の第2の配線材用端子群61を長手方向に離間して配置するようにして、より一層フレキシブル配線材12の省スペース化を図ってもよい。
【0064】
次に、図10に第3の実施形態を示す。前述した第1及び第2の実施形態では、2つの第2の配線材用端子群61をY方向に離間して配置する形態について説明したが、この第3の実施形態では第2の配線材用端子群61e、61fを、Y方向に直交するX方向に互いに離間して配置し、導線60を第2の配線材用端子群61e、61fの配置位置に合わせて屈曲して配線している。図10では、第2の配線材用端子群61e、61fの両方を、第2の実施形態のように第1の配線材121の一方の面(表面)における幅方向(X方向)の両側縁に配置し、2枚の第2の配線材122を第1の配線材121の両側縁から離反して引き出すようにしているが、第1の実施形態のように第2の配線材用端子群61e、61fを表裏面に分散して配置しても良い。
【0065】
この他に、第2の配線材用端子群61e、61fを、第1の配線材121の一方の面における一方の側縁に並べて配置し、2枚の第2の配線材122を並べて引き出すようにしても良い。また、第2の配線材用端子群61、61の配置は、ヘッドホルダ8の構成及びその内部の各部品配置に対応して適宜選択でき、X方向やY方向に平行な配置だけでなく、斜めに配置したり、これらを組み合わせて配置したりしても良い。
【0066】
さらに、上記実施形態では、インクジェット式の記録装置に本発明を適用した場合を説明したが、複数の記録素子とそれに対応する駆動部を備えるものであれば、インクパクト式等各種の記録装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明を適用したインクジェット記録装置の平面図である。
【図2】キャリッジの分解斜視図である。
【図3】第1実施形態のキャリッジをY方向に沿って切断した断面図である。
【図4】第1実施形態の記録ヘッドの分解斜視図である。
【図5】図4のV−V線矢視断面図である。
【図6】第1実施形態の第1の配線材と第2の配線材との接続を説明する斜視図である。
【図7】第2実施形態のキャリッジをY方向に沿って切断した断面図である。
【図8】第2実施形態の記録ヘッドの分解斜視図である。
【図9】第2実施形態の第1の配線材と第2の配線材との接続を説明する斜視図である。
【図10】第3実施形態の記録ヘッドの分解斜視図である。
【符号の説明】
【0068】
1 記録ヘッド
3 キャリッジ
8 ヘッドホルダ
10 キャビティ部
11 アクチュエータ
12 フレキシブル配線材
12a 駆動ICチップ
12b 回路基板用端子群
20 ヘッドユニット
22 ヘッド側回路基板
60 導線
61 第2の配線材用端子群
62 第2の配線材用端子
63 導線
64 第1の配線材用端子群
100 インクジェット記録装置
121 第1の配線材
122 第2の配線材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータの選択的な駆動により記録動作を行う記録ヘッドと、外部からの信号を前記アクチュエータに入力するためのフレキシブル配線材とを備えた記録装置において、
前記フレキシブル配線材は、前記アクチュエータを駆動させる駆動回路を有し且つ前記アクチュエータに接続される第1の配線材と、前記第1の配線材を外部信号源に接続する第2の配線材とを含み、
前記第1の配線材には、その片面もしくは両面に複数の導線が配置されていて、
前記複数の導線と前記第2の配線材とを接続するための第2の配線材用端子群が、前記第1の配線材の少なくともどちらか一方の面側に配置され、
前記第2の配線材用端子群は、前記複数の導線を複数のグループに分けたそのグループ毎に対応して設けられ、
前記各グループに対応した前記第2の配線材用端子群同士は、互いに離間する位置に配置され、
前記第2の配線材は、前記第2の配線材用端子群毎に独立して接続するように、複数設けられていることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
複数の前記第2の配線材用端子群は、前記第1の配線材の表面側と裏面側とに分けて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記第2の配線材用端子群は、各導線に設けられた第2の配線材用の端子が集まって形成され、前記端子の幅寸法は前記導線の幅寸法よりも広幅に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記第1の配線材の表面側に形成された第2の配線材用端子群と、裏面側に形成された第2の配線材用端子群とは、前記第1の配線材の平面視において重ならない位置に配置されていることを特徴とする請求項2または3に記載の記録装置。
【請求項5】
複数の前記第2の配線材用端子群は、前記第1の配線材の同じ面上において、前記導線が延びる方向に互いに離間する位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項6】
前記第2の配線材用端子群は、各導線に設けられた第2の配線材用の端子が集まって形成され、前記端子の幅寸法は前記導線の幅寸法よりも広幅に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記複数の第2の配線材用端子群は、前記第1の配線材の同じ面上における、該第1の配線材が前記アクチュエータから引き出された方向に沿って離間して設けられ、
前記複数の第2の配線材用端子群のうち、第2の配線材に近い側に位置する第2の配線材用端子群に接続している導線は、前記第2の配線材から遠い側に位置する第2の配線材用端子群の端子同士の間を通るように配線されていることを特徴とする請求項6に記載の記録装置。
【請求項8】
前記複数の第2の配線材は、少なくとも前記第1の配線材と接続する部分の近傍では、その広幅面を対向させて配置されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の記録装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−23915(P2008−23915A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−201147(P2006−201147)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】