説明

記録装置

【課題】 搬送ローラの慣性モーメントが大きくなり、停止位置バラつきが大きくなる。
【解決手段】 記録ヘッドを搭載したキャリッジの移動と、搬送部材による記録媒体の搬送と、により記録を行う記録装置において、前記搬送部材を回転させる駆動回転体と、前記駆動回転体に配され前記駆動回転体とともに回転する摩擦付与部材と、装置本体に配され前記摩擦付与部材が押圧されるブレーキドラムと、前記摩擦付与部材をブレーキドラムに押圧させるバネ部材と、を備え、前記駆動回転体が回転しているときの前記摩擦付与部材の前記ブレーキドラムに対する押圧力は、前記駆動回転体が停止しているときの前記押圧力よりも小さくなるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査するキャリッジに搭載した記録ヘッドにて記録を行う毎に、紙搬送機構によって所定量の紙搬送を行う記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は記録装置における紙搬送機構の駆動回転体の速度制御波形であり、(A)は動作開始から停止までの駆動速度制御波形図、(B)は停止前後の駆動速度制御波形拡大図である。従来より、搬送機構の搬送精度を高める工夫として(A)のような速度制御を行っている。つまり、加速B01、高速B02、減速制御B03の後に、微速制御B04を行う。(B)のごとく微速B04状態で目標位置に近づき目標位置B08に到達した瞬間にモータへの印加電圧B06を0にすることで、非常に精度高く目標位置付近に停止することが可能になる。しかし、このような制御方法においても印加電圧B06を0にしてからも、機構の慣性によって幾分かの空走距離B07をもって完全停止となるので、摩擦状態のバラツキなどによって、搬送量のばらつきも完全に0にすることは出来ない。
【0003】
また、A3用紙以上に対応した長尺紙搬送ローラを有した搬送装置やベルト搬送装置など、紙搬送機構の慣性の大きい機構では、駆動回転体が記録媒体を搬送させる量が目標に達して、駆動回転体を回転させるモータへの印加電圧を0にしたときに空走距離が長くなり、長くなると摩擦状態の変化によって空走距離がばらつき、結果として停止位置がばらつき、停止精度が低化する。停止精度を改善するために駆動回転体の負荷トルクを上げ空走距離を短くする方法が考えられるが、単純に、駆動回転体の負荷トルクを上げると、加速時にモータ発生トルクが不足して加速時間短縮が難しくなり、さらに、高速回転をさせることも難しくなるので、短時間での紙搬送動作の妨げになる。高速動作と停止精度を両立させるためには、停止直前のみ駆動回転体に負荷トルクを与えるブレーキ機構が必要である。
【0004】
特許文献1では本発明の紙搬送ローラとは適用箇所に違いがあるものの、紙給送ローラの機構として停止直前にのみ負荷トルクを発生する例が開示されている。図6は従来例に係わる構成図であり、(A)は組立斜視図、(B)は分解斜視図、(C)は用紙搬送状態、(D)は搬送停止状態を示す。(A),(B)において、101が紙搬送ローラ、104がモータ、ブレーキ力の切り換え手段としてソレノイド124を設けている。用紙を搬送する為の回転搬送手段101の回転軸101aを手前112と奥側125の両側板に軸受け105で支持している。そして、軸受け105の外側で回転軸101aに摺動支持部材118を設け、又、摺動支持部材118を跨ぐ形でスプリング119を設けている。スプリング119の両端は側板112に設けた突起121及びアーム123の突起123aに掛けられており、ソレノイド124のオン、オフによりスプリング119のストロークを変化させる。アーム123は側板112のD点を中心に揺動可能に設けられている。又、アーム123はソレノイド124に対しては、突起123bで連結されている。上記構成において(C)にあるようにソレノイド124がオフの状態では、スプリング119が緩み回転軸101aには大きな負荷トルクは働かない。次に(C)のように、ソレノイド124がオンになるとスプリング119が伸ばされ、摺動支持部材118には側圧が働き、回転軸101aと摺動支持部材118、また回転軸101aと軸受け105の間に摩擦力が発生する。この機構によって、加速、高速領域では負荷を掛けず、減速、微速領域でのみブレーキ力を発生させ高速動作と停止精度の両立を図る紙搬送機構が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−274691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記では、メカ的な機構と、電源を必要とするソレノイドを組み合わせた構成でブレーキ力を変化させているため、電気部品がメカ部品に追加で必要となり、さらに、ソレノイドを駆動させるタイミングを制御する制御回路が必要となるため、部品コストが上がってしまい不都合であった。これにより、加速時、高速回転時の負荷トルクを軽減できるブレーキ機構をメカ的な部品のみで構成し、低コストで高速動作と高停止位置精度を両立できる用紙搬送装置を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係わる機構は、紙搬送ローラに取り付けた紙搬送ローラと同心で共に回転する摩擦付与部材と慣性錘及び遠心錘、そして装置本体に固定して取り付けて摩擦付与部材のブレーキパッドが当節するブレーキドラムを備えることにより、摩擦付与部材のブレーキドラムに対する付勢力を、加速時・高速回転時は軽負荷にし、停止・減速・微速回転時は高負荷にするブレーキ機構をメカ部品のみで構成する。
【発明の効果】
【0008】
上記の発明によれば、紙搬送ローラに取り付けた紙搬送ローラと同心で共に回転する摩擦付与部材と慣性錘、遠心錘、装置本体に固定して取り付けて摩擦付与部材のブレーキパッドが押圧するブレーキドラムを備えたことにより、紙搬送ローラが回転している時の摩擦付与部材のブレーキドラムに対する付勢力を、加速時・高速回転時は軽負荷にし、停止・減速・微速回転時は高負荷にするブレーキ機構をメカ部品のみで構成することにより、低コストで高停止位置精度が実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る用紙搬送装置の要部構成図であり、(A)は分解斜視図、(B)、(C)は分解斜視図の拡大図である。
【図2】(A)は図3の用紙搬送装置の平面分解図、(B)は組立状態平面図である。
【図3】図3の用紙搬送装置の組立状態斜視図であり、(A)は摩擦付与部材を紙搬送ローラに組み立てた時の図、(B)は(A)に、慣性錘を追加した図である。
【図4】図5の摩擦付与部材の要部構成図であり、(A)は紙搬送ローラが停止時・減速時・微速時の状態を表した図で、(B)は紙搬送ローラが加速時・高速回転時の状態を表した図である。
【図5】従来例の用紙搬送装置の紙搬送ローラ制御波形であり、(A)は全体の駆動速度制御波形、(B)は停止前後の駆動速度波形拡大図である。
【図6】従来例の用紙搬送装置の要部構成図であり、(A)は組立斜視図、(B)は分解斜視図、(C)は用紙搬送状態図、(D)は搬送停止状態図である。
【図7】実施形態で用いられる記録装置の斜視図であり、非使用時における前面から見た状態を示している。
【図8】実施形態で用いられる記録装置の斜視図であり、非使用時における背面から見た状態を示している。
【図9】実施形態で用いられる記録装置の斜視図であり、使用時における前面から見た状態を示している。
【図10】実施形態で用いられる記録装置本体の内部機構を説明するための図であり、右上部からの斜視図である。
【図11】実施形態で用いられる記録装置本体の内部機構を説明するための図であり、左上部からの斜視図である。
【図12】実施形態で用いられる記録装置本体の内部機構を説明するための側断面図である。
【図13】実施形態で用いられる記録装置の斜視図であり、フラットパス記録時における前面から見た状態を示している。
【図14】実施形態で用いられる記録装置の斜視図であり、フラットパス記録時における背面から見た状態を示している。
【図15】実施形態で行われるフラットパス記録を説明するための模式的側断面図である。
【図16】実施形態で用いられる記録装置本体におけるクリーニング部を示す斜視図である。
【図17】図16のクリーニング部におけるワイパ部の構成および動作を説明するための断面図である。
【図18】本発明の実施形態における電気的回路の全体構成を概略的に示すブロック図である。
【図19】実施形態で適用したヘッドカートリッジにインクタンクを装着する状態を示した斜視図である。
【図20】本発明の実施形態の変形例1で用いられる記録装置の要部構成側面図である。
【図21】本発明の実施形態の変形例2で用いられる記録装置の要部構成側面図である。
【図22】本発明の実施形態の変形例3で用いられる記録装置の要部構成側面図である。
【図23】本発明の実施形態の変形例4で用いられる記録装置の要部構成側面図である。
【図24】本発明の実施形態で、駆動回転体が金属軸の表面にゴムを巻いたローラである場合の構成斜視図である。
【図25】本発明の実施形態で、駆動回転体にベルトを掛けまわした場合の構成斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施例1)
以下本発明の実施形態を図面に基づき説明する。なお、各図面を通して同一符号は、同一又は対応する部分を示す。
【0011】
図1、図2、図3、図4は本発明の実施形態に係る用紙搬送装置の要部構成図であり、図1(A)は分解斜視図、(B)、(C)は分解斜視図の拡大図、図2(A)は分解平面図、(B)は組立状態平面図、図3(A)、(B)は組立状態斜視図、図4は摩擦ブレーキ機構の側面図で、(A)は紙搬送ローラ201が停止・減速時・微速時、(B)は紙搬送ローラ201が加速・高速回転時、の状態を示したものである。
【0012】
図1(A)において、用紙を搬送する為の紙搬送ローラ201の回転軸201aを手前側板206と奥側板207の両側板で支持している。紙搬送ローラ軸201aに取り付けた紙搬送ローラプーリ208と駆動モータ210には駆動ベルト209が所定のテンションで張架され、駆動力を伝達しており、駆動モータ210を駆動させることによって紙搬送ローラ201を回転させ紙を搬送させる。そして、図1(B)、(C)、図2(A)、(B)において、摩擦付与部材203に設けた穴203bに、紙搬送ローラ201の側面に軸201bを貫通させ摩擦付与部材203を紙搬送ローラ201に対して軸201bを中心に回転自在に取り付ける。以上で説明した構成により摩擦付与部材203は紙搬送ローラ201と共に回転する。手前側板206には、ブレーキドラム202を固定し取り付ける。ブレーキドラム202には摩擦付与部材203が押圧され摩擦力を生じる。慣性錘204はブレーキドラム202に貫通しており、紙搬送ローラ201と同軸で回転する。さらに、慣性錘204は、慣性錘204に固定した軸204aを摩擦付与部材203に開けられた長穴203aに係合することにより、慣性錘204に発生する慣性力を摩擦付与部材203に伝達する。
【0013】
図3(A)、(B)、図4(A)において、摩擦付与部材203は、紙搬送ローラ201の側面に設けたバネ受け面201cと摩擦付与部材203のバネ受け面203cの間に圧縮バネ205を挟む。圧縮バネ205が発生させる付勢力によって、軸201bを回転軸にしてブレーキドラム202にブレーキパッド203dが当接しており、紙搬送ローラ201のブレーキ源としての摩擦力を発生させる。図4(B)において、紙搬送ローラ201が停止状態から動き出し目標速度へ加速している間は、慣性錘204に紙搬送ローラ201の回転方向(a)とは逆方向(b)に慣性力が働くため、慣性錘204が係合している摩擦付与部材203がブレーキドラム202へ当節する付勢力を停止時よりも軽減する。また、紙搬送ローラ201が高速回転している時は、摩擦付与部材203の錘部203eに遠心力が働き円周方向(C)へ離れようとするため、同様にブレーキドラム202に作用する圧縮バネ205の付勢力を紙搬送ローラ201が停止している時よりも軽減する。
【0014】
以上に説明した機構によって、高速動作の妨げにならないブレーキ機構の実現が可能となる。
【0015】
・機構部の構成
本実施形態で適用する記録装置における各機構部の構成を説明する。本実施形態における記録装置本体は、各機構部の役割から、概して、給紙部、用紙搬送部、排紙部、キャリッジ部、フラットパス記録部、およびクリーニング部等に分類することができ、これらは外装部に収納されている。
【0016】
図7、図8、図9、図13および図14は、本実施形態で適用する記録装置の外観を示す斜視図である。ここで、図7は記録装置の非使用時における前面から見た状態、図8は記録装置の非使用時における背面から見た状態、図8は記録装置の使用時における前面から見た状態をそれぞれ示している。また、図13はフラットパス記録時における前面から見た状態、図14はフラットパス記録時における背面から見た状態をそれぞれ示している。また、図10〜図12および図15〜図17は、記録装置本体の内部機構を説明するための図である。ここで、図10は右上部からの斜視図、図11は左上部からの斜視図、図12は記録装置本体の側断面図である。図15はフラットパス記録時の断面図である。さらに、図16はクリーニング部の斜視図、図17はクリーニング部におけるワイピング機構の構成および動作を説明するための断面図をそれぞれ示したものである。図18は電気的回路の全体構成を概略的に示すブロック図、図19はヘッドカートリッジにインクタンクを装着する状態を示した斜視図を示したものである。
【0017】
以下、これらの図面を適宜参照しながら、各部を順次説明する。
【0018】
(A)外装部(図7、図8)
外装部は、給紙部、用紙搬送部、排紙部、キャリッジ部、クリーニング部、フラットパス部およびウエット液転写部の回りを覆うように取り付けられている。外装部は主に、下ケースM7080、上ケースM7040、アクセスカバーM7030、コネクタカバーおよびフロントカバーM7010から構成されている。
【0019】
下ケースM7080の下部には、不図示の排紙トレイレールが設けられており、分割された排紙トレイM3160が収納可能に構成されている。また、フロントカバーM7010は、非使用時に排紙口を塞ぐ構成になっている。
【0020】
上ケースM7040には、アクセスカバーM7030が取り付けられており、回動可能に構成されている。上ケースの上面の一部は開口部を有しており、この位置で、インクタンクH1900および記録ヘッドH1001(図22)が交換可能となるように構成されている。なお、本実施形態の記録装置においては、記録ヘッドH1001は、1色のインクを吐出可能な吐出部を複数色分、一体的に構成したユニットの形態である。そして、インクタンクH1900が色毎に独立に着脱可能な記録ヘッドカートリッジH1000として構成されている。上ケースM7040には、アクセスカバーM7030の開閉を検知用の不図示のドアスイッチレバー、LEDの光を伝達・表示するLEDガイドM7060、電源キーE0018、リジュームキーE0019およびフラットパスキーE3004等が設けられている。また、多段式の給紙トレイM2060が回動可能に取り付けられており、給紙部が使われない時は、給紙トレイM2060を収納することにより、給紙部のカバーにもなるように構成されている。
【0021】
上ケースM7040と下ケースM7080は、弾性を持った嵌合爪で取り付けられており、その間のコネクタ部分が設けられている部分を、不図示のコネクタカバーが覆っている。
【0022】
(B)給紙部(図9、図12)
図9および図12を参照するに、給紙部は次のように構成されている。すなわち、記録媒体を積載する圧板M2010、記録媒体を1枚ずつ給紙する給紙ローラM2080、記録媒体を分離する分離ローラM2041、記録媒体を積載位置に戻すための戻しレバーM2020等がベースM2000に取り付けられることで構成されている。
【0023】
(C)用紙搬送部(図9〜図12)
曲げ起こした板金からなるシャーシM1010には、記録媒体を搬送する搬送ローラ201が回動可能に取り付けられている。搬送ローラ201は、金属軸の表面にセラミックの微小粒がコーティングされた構成となっており、両軸の金属部分を不図示の軸受けが受ける状態で、シャーシM1010に取り付けられている。搬送ローラ201にはローラテンションバネ(不図示)が設けられており、搬送ローラ201を付勢することにより、回転時に適量の負荷を与えて安定した搬送が行えるようになっている。
【0024】
搬送ローラ201には、従動する複数のピンチローラM3070が当接して設けられている。ピンチローラM3070は、ピンチローラホルダM3000に保持されているが、不図示のピンチローラバネによって付勢されることで、搬送ローラ201に圧接し、ここで記録媒体の搬送力を生み出している。この時、ピンチローラホルダM3000の回転軸は、シャーシM1010の軸受けに取り付けられ、この位置を中心に回転する。
【0025】
記録媒体が搬送されてくる入口には、記録媒体をガイドするためのペーパガイドフラッパM3030およびプラテンM3040が配設されている。また、ピンチローラホルダM3000には、PEセンサレバーM3021が設けられている。PEセンサレバーM3021は、記録媒体の先端および後端の検出をシャーシM1010に固定されたペーパエンドセンサ(以下PEセンサと称す)E0007に伝える役割を果たす。プラテンM3040は、シャーシM1010に取り付けられ、位置決めされている。ペーパガイドフラッパM3030は、不図示の軸受け部を中心に回転可能で、シャーシM1010に当接することで位置決めされる。
【0026】
搬送ローラ201の記録媒体搬送方向における下流側には、記録ヘッドH1001(図21)が設けられている。
【0027】
上記構成における搬送の過程を説明する。用紙搬送部に送られた記録媒体は、ピンチローラーホルダM3000およびペーパガイドフラッパM3030に案内されて、搬送ローラ201とピンチローラM3070とのローラ対に送られる。この時、PEセンサレバ−M3021が、記録媒体の先端を検知して、これにより記録媒体に対する記録位置が求められている。搬送ローラ201とピンチローラM3070とからなるローラ対は、LFモータE0002の駆動により回転され、この回転により記録媒体がプラテンM3040上を搬送される。プラテンM3040には、搬送基準面となるリブが形成されており、このリブにより、記録ヘッドH1001と記録媒体表面との間のギャップが管理されている。また同時に、当該リブが、後述する排紙部と合わせて、記録媒体の波打ちを抑制する役割も果たしている。
【0028】
搬送ローラ201が回転するための駆動力は、例えばDCモータからなるLFモータE0002の回転力が、不図示のタイミングベルトを介して、搬送ローラ201の軸上に配設されたプーリM3061に伝達されることによって得られている。また、搬送ローラ201の軸上には、搬送ローラ201による搬送量を検出するためのコードホイールM3062が設けられている。そして、隣接するシャーシM1010には、コードホイールM3062に形成されたマーキングを読み取るためのエンコードセンサM3090が配設されている。なお、コードホイールM3062に形成されたマーキングは、150〜300lpi(ライン/インチ;参考値)のピッチで形成されているものとする。
【0029】
(D)排紙部(図9〜図12)
排紙部は、第1の排紙ローラM3100および第2の排紙ローラM3110、複数の拍車M3120およびギア列などから構成されている。
【0030】
第1の排紙ローラM3100は、金属軸に複数のゴム部を設けて構成されている。第1の排紙ローラM3100の駆動は、搬送ローラ201の駆動が、アイドラギアを介して第1の排紙ローラM3100まで伝達されることによって行われている。
【0031】
第2の排紙ローラM3110は、樹脂の軸にエラストマの弾性体M3111を複数取り付けた構成になっている。第2の排紙ローラM3110の駆動は、第1の排紙ローラM3100の駆動が、アイドラギアを介して伝達すること行われる。
【0032】
拍車M3120は、周囲に凸形状を複数設けた例えばSUSでなる円形の薄板を樹脂部と一体としたもので、拍車ホルダM3130に複数取り付けられている。この取り付けは、コイルバネを棒状に設けた拍車バネによって行われているが、同時に拍車バネのばね力は、拍車M3120を排紙ローラM3100およびM3110に対し所定圧で当接させている。この構成によって拍車M3120は、2つの排紙ローラM3100およびM3110に従動して回転可能となっている。拍車M3120のいくつかは、第1の排紙ローラM3100のゴム部、あるいは第2の排紙ローラM3110の弾性体M3111の位置に設けられており、主に記録媒体の搬送力を生み出す役割を果たしている。また、その他のいくつかは、ゴム部あるいは弾性体M3111が無い位置に設けられ、主に記録時の記録媒体の浮き上がりを抑える役割を果たしている。
【0033】
また、ギア列は、搬送ローラ201の駆動を排紙ローラM3100およびM3110に伝達する役割を果たしている。
【0034】
以上の構成によって、画像形成された記録媒体は、第1の排紙ローラM3110と拍車M3120とのニップに挟まれ、搬送されて排紙トレイM3160に排出される。排紙トレイM3160は、複数に分割され、後述する下ケースM7080の下部に収納できる構成になっている。使用時は、引出して使用する。また、排紙トレイM3160は、先端に向けて高さが上がり、更にその両端は高い位置に保持されるよう設計されており、排出された記録媒体の積載性を向上し、記録面の擦れなどを防止している。
【0035】
(E)キャリッジ部(図10〜図12)
キャリッジ部は、記録ヘッドH1001を取り付けるためのキャリッジM4000を有しており、キャリッジM4000は、ガイドシャフトM4020およびガイドレールM1011によって支持されている。ガイドシャフトM4020は、シャーシM1010に取り付けられており、記録媒体の搬送方向に対して直角方向にキャリッジM4000を往復走査させるように案内支持している。ガイドレールM1011は、シャーシM1010に一体に形成されており、キャリッジM4000の後端を保持して記録ヘッドH1001と記録媒体との隙間を維持する役割を果たしている。また、ガイドレールM1011のキャリッジM4000との摺動側には、ステンレス等の薄板からなる摺動シートM4030が張設され、記録装置の摺動音の低減化を図っている。
【0036】
キャリッジM4000は、シャーシM1010に取り付けられたキャリッジモータE0001によりタイミングベルトM4041を介して駆動される。また、タイミングベルトM4041は、アイドルプーリM4042によって張設、支持されている。さらに、タイミングベルトM4041は、キャリッジM4000とゴム等からなるキャリッジダンパを介して結合されており、キャリッジモータE0001等の振動を減衰することで、記録される画像のむら等を低減している。
【0037】
キャリッジM4000の位置を検出するためのエンコーダスケールE0005(図19について後述)が、タイミングベルトM4041と平行に設けられている。エンコーダスケールE0005上には、150lpi〜300lpiのピッチでマーキングが形成されている。そして、当該マーキングを読み取るためのエンコーダセンサE0004(図19について後述)が、キャリッジM4000に搭載されたキャリッジ基板E0013(図19について後述)に設けられている。キャリッジ基板E0013には、記録ヘッドH1001と電気的な接続を行うためのヘッドコンタクトE0101も設けられている。また、キャリッジM4000には、電気基板E0014から記録ヘッドH1001へ、駆動信号を伝えるための不図示のフレキシブルケーブルE0012(図19について後述)が接続されている。
【0038】
記録ヘッドH1001をキャリッジM4000に固定するための構成として次のものが設けられている。すなわち、記録ヘッドH1001をキャリッジM4000に押し付けながら位置決めするための不図示の突き当て部と、所定の位置に固定するための不図示の押圧手段が、キャリッジM4000上に設けられている。押圧手段は、ヘッドセットレバーM4010に搭載され、記録ヘッドH1001をセットする際に、ヘッドセットレバーM4010を回転支点を中心に回して、記録ヘッドH1001に作用する構成になっている。
【0039】
さらに、キャリッジM4000には、CD−R等の特殊メディアへ記録を行う際や、記録結果や用紙端部等の位置検出用として、反射型の光センサからなる位置検出センサM4090が取り付けられている。位置検出センサM4090は、発光素子より発光し、その反射光を受光することで、キャリッジM4000の現在位置を検出することができる。
【0040】
上記構成において記録媒体に画像形成する場合、列方向の位置に対しては、搬送ローラ201およびピンチローラM3070からなるローラ対が、記録媒体を搬送して位置決めする。また、行方向の位置に対しては、キャリッジモータE0001によりキャリッジM4000を上記搬送方向と垂直な方向に移動させて、記録ヘッドH1001を目的の画像形成位置に配置させる。位置決めされた記録ヘッドH1001は、電気基板E0014からの信号に従って、記録媒体に対しインクを吐出する。記録ヘッドH1001についての詳細な構成および記録システムは後述する。本実施形態の記録装置においては、記録ヘッドH1001により記録を行いながらキャリッジM4000が列方向に走査する記録主走査と、搬送ローラ201により記録媒体が行方向に搬送される副走査とを交互に繰り返す。これにより、記録媒体上に画像を形成していく構成となっている。
【0041】
(F)フラットパス記録部(図13〜図15)
給紙部からの給紙は、図11に示したように記録媒体が通る経路がピンチローラに達するまで曲がっているため、記録媒体を曲げた状態で行われることになる。従って、例えば0.5mm程度以上の厚い記録媒体等を給紙部から給紙しようとすると、曲げられた記録媒体の反力が発生し、給紙抵抗が増えて給紙が行えない場合がある。また、給紙が可能であっても、排紙後の記録媒体が曲がったままとなったり、折れたりすることもある。
【0042】
厚い記録媒体等、曲げたくない記録媒体や、CD−R等、曲げることのできない記録媒体に対して記録を行うのがフラットパス記録である。
【0043】
ここで、フラットパス記録には本体背面のスリット状の開口部から(給紙装置の下)、手差し給紙の態様で記録媒体を本体のピンチローラにニップさせ、記録を行うタイプがある。しかし本実施形態のフラットパス記録は、記録媒体を本体手前の排紙口から記録位置まで給紙し、スイッチバックしてから記録を行う形態のものである。
【0044】
フロントカバーM7010は、通常記録した記録媒体を数十枚程度積載しておくためのトレイを兼ねるために排紙部より下方にある(図9)。フラットパス記録時には、記録媒体を排紙口から水平に、通常の搬送方向とは反対方向に給紙するために、フロントトレイM7010を排紙口の位置まで上げる(図13)。フロントカバーM7010には不図示のフック等が設けられており、フラットパス給紙位置にフロントカバーM7010を固定可能である。フロントカバーM7010がフラットパス給紙位置にあることはセンサで検知可能であり、当該検知に応じてフラットパス記録モードと判断することができる。
【0045】
フラットパス記録モードでは、記録媒体をフロントトレイM7010に載せて排紙口から記録媒体を挿入するために、まずフラットパスキーE3004を操作する。これによって、想定している記録媒体の厚みより高い位置まで、拍車ホルダM3130とピンチローラホルダM3000とを不図示の機構により持ち上げる。また通紙領域内にキャリッジM4000が存在するような場合などは、キャリッジM4000を不図示のリフト機構により持ち上げることにより、記録媒体を挿入し易くすることができる。またリアトレイボタンM7110を押すことによってリアトレイM7090を開き、さらにリアサブトレイM7091をV字に開くことも可能である(図14)。リアトレイM7090およびリアサブトレイM7091は、長い記録媒体を本体前面から挿入した場合は本体背面から突出するので、長い記録媒体を本体背面でも支えるためのトレイである。厚い記録媒体は記録中にフラットな姿勢を保たないと吐出口が設けられたヘッドの面(吐出面)と擦れたり、搬送負荷が変化したりすることから記録品位に影響を及ぼすおそれがあるので、これらのトレイの配設は有効である。しかし本体背面からはみ出ない程度の長さの記録媒体であれば、リアトレイM7090等を開く必要はない。
【0046】
以上によって、記録媒体を排紙口から本体内に挿入可能となる。記録媒体の後端部(ユーザに最も近く位置する手前側の端部)と右端部とをフロントトレイM7010のマーカ位置に揃えて、フロントトレイM7010に載せる。
【0047】
ここで再度フラットパスキーE3004を操作すると、拍車ホルダ3130が降りて排紙ローラM3100およびM3110と拍車3120とで記録媒体をニップする。その後、排紙ローラM3100,M3110で記録媒体を所定量本体内に引き込む(通常記録時の搬送方向とは逆方向)。最初に記録媒体をセットした際に記録媒体の手前側の端部(後端部)を揃えているので、短い記録媒体の前端部(ユーザから見て最も奥側の端部)は搬送ローラ201まで届いていないことがある。従って所定量とは、想定している一番短い記録媒体の後端が搬送ローラ201に届くまでの距離とする。所定量送られた記録媒体は搬送ローラ201に届いているので、その位置でピンチローラホルダM3000を降ろして、搬送ローラ201とピンチローラM3070とで記録媒体をニップさせる。そして記録媒体をさらに送り、その後端部が搬送ローラ201とピンチローラM3070とでニップされるようにする。これで記録媒体のフラットパス記録のための給紙が終了したことになる(記録待機位置)。
【0048】
排紙ローラM3100およびM3110と拍車M3120とのニップ力は、通常記録時の排紙時に形成画像に影響を与えないよう、比較的低く設定されている。従って、フラットパス記録時には記録を行うまでに記録媒体の位置がずれてしまうおそれがある。しかし本実施形態では、ニップ力が比較的高い搬送ローラ201とピンチローラM3070とによって記録媒体をニップさせるので、記録媒体のセット位置が確保されたことになる。また、記録媒体を上記所定量だけ本体内に送るとき、フラットパス紙検知センサレバー(以下FPPEセンサレバーと称す)M3170が、ここでは図示しない赤外線センサであるFPPEセンサE9001の光路を遮蔽または形成する。これにより、記録媒体の後端位置(記録時の前端位置となる)を検知することができる。なお、FPPEセンサレバーはプラテンM3040と拍車ホルダM3130の間に回動可能に設けられたものとすることができる。
【0049】
記録媒体が上記記録待機位置に設定されると、記録コマンドを実行する。すなわち、記録ヘッドH1001による記録位置まで搬送ローラ201で記録媒体を搬送し、後は通常の記録動作と同じように記録を行い、記録後フロントトレイM7010に排紙することになる。
【0050】
フラットパス記録をさらに行いたい場合は、記録した記録媒体をフロントトレイM7010から取り出し、次の記録媒体をセットして、後は前述した処理を繰り返せばよい。具体的には、フラットパスキーE3004を押すことによって、拍車ホルダM3130とピンチローラホルダM3000とを持ち上げて、記録媒体をセットすることから始まる。
【0051】
一方、フラットパス記録を終了する場合は、フロントトレイM7010を通常記録位置に戻すことによって通常記録モードに戻すことができる。
【0052】
(G)クリーニング部(図16、図17)
クリーニング部は記録ヘッドH1001のクリーニングを行うための機構である。これは、ポンプM5000、記録ヘッドH1001の乾燥を抑えるためのキャップM5010、記録ヘッドH1001の吐出口形成面をクリーニングするためのワイパ部M5020などから構成されている。
【0053】
本実施形態では、クリーニング部の主な駆動力は、APモータE3005(図18)から伝達される。そして不図示のワンウェイクラッチにより、一方向の回転でポンプM5000を作動させ、もう一方向の回転ではワイパ部M5020の移動およびキャップM5010の昇降を行わせるようになっている。なお、APモータE3005は記録媒体の給紙動作の駆動源にも用いられるものであるが、クリーニング部の動作を行うための専用のモータが設けられていてもよい。
【0054】
キャップM5010はモータE0003から不図示の昇降機構を介して昇降可能に駆動される。そして、上昇位置では、記録ヘッドH1001に設けた数個の吐出部の吐出面毎にキャッピングを施し、非記録動作時等においてその保護を行ったり、あるいは吸引回復を行うことが可能である。また、記録動作時には記録ヘッドH1001との干渉を避ける下降位置に設定され、また吐出面との対向によって予備吐出を受けることが可能である。例えば記録ヘッドH1001に10個の吐出部が設けられ、5個の吐出部の吐出面毎に一括してキャッピングを施すことが可能となるよう、図示の例ではキャップM5010は2つ設けられている。
【0055】
ゴム等の弾性部材でなるワイパ部M5020は不図示のワイパホルダに固定されている。ワイパホルダは図17の+Yおよび−Y方向(吐出部における吐出口の配列方向)に移動可能である。そして、記録ヘッドH1001がホームポジションに到達したときに、矢印−Y方向にワイパホルダが移動することによって、ワイピングが可能である。ワイピング動作が終了すると、キャリッジをワイピング領域の外に退避させてから、ワイパが吐出面等と干渉しない位置に戻す。なお、本例のワイパ部M5020には、全吐出部の吐出面を含む記録ヘッドH1001の面全体をワイピングするワイパブレードM5020Aが設けられている。また、5つの吐出部の吐出面毎に、ノズル近傍をするワイピングする2つのワイパブレードM5020B,M5020Cが設けられている。
【0056】
そして、ワイピング後には、ワイパ部M5020がブレードクリーナM5060に当接することにより、ワイパブレードM5020A〜M5020C自身へ付着したインクなども除去することができる構成になっている。また、ワイピングに先立ってワイパブレードM5020A〜M5020Cにウエット液を転写させておくことによりワイピングによるクリーニング性を向上する構成(ウエット液転写部)が設けられている。このウエット液転写部の構成およびワイピング動作については後述する。
【0057】
吸引ポンプM5000は、キャップM5010を吐出面に接合させてその内部に密閉空間を形成した状態で負圧を発生させることが可能である。これにより、インクタンクH1900から吐出部内にインクを充填させたり、吐出口もしくはその内方のインク路に存在する塵埃、固着物、気泡等を吸引除去したりすることができる。
【0058】
吸引ポンプM5000としては、例えばチューブポンプ形態のものが用いられる。これは、可撓性を有するものとしたチューブの少なくとも一部を沿わせて保持する曲面が形成された部材と、これに向けて可撓性チューブを押圧可能なローラと、このローラを支持して回転可能なローラ支持部とを有するものとすることができる。すなわち、ローラ支持部を所定方向に回転させることで、ローラは曲面形成部材上で可撓性チューブを押しつぶしながら転動する。これに伴い、キャップM5010が形成する密閉空間に負圧が生じてインクが吐出口より吸引され、キャップM5010からチューブないし吸引ポンプに引き込まれる。そして、引き込まれているインクはさらに下ケースM7080に設けた適宜の部材(廃インク吸収体)に向けて移送される。
【0059】
なお、キャップM5010の内側部分には、吸引後の記録ヘッドH1001の吐出面に残るインクを削減するために、吸収体M5011が設けられている。また、キャップM5010を開放した状態で、キャップM5010ないし吸収体M5011に残っているインクを吸引することにより、残インクによる固着およびその後の弊害が起こらないように配慮されている。ここで、インク吸引経路の途中に大気開放弁(不図示)を設け、キャップM5010を吐出面から離脱させる際に予めこれを開放しておくことで、吐出面に急激な負圧が作用しないようにしておくことが好ましい。
【0060】
また、吸引ポンプM5000は、吸引回復だけでなく、キャップM5010が吐出面に対向した状態で行われる予備吐出動作によってキャップM5010に受容されたインクを排出するためにも作動させることができる。すなわち、予備吐出されてキャップM5010に保持されたインクが所定量に達したときに吸引ポンプM5000を作動させることで、キャップM5010内に保持されていたインクをチューブを介して廃インク吸収体に移送することができる。
【0061】
以上のワイパ部M5020の動作、キャップM5010の昇降および弁の開閉など、連続して行われる一連の動作は、モータE0003の出力軸上に設けた不図示のメインカムおよびこれに従動する複数のカム,アーム等によって制御可能である。すなわち、モータE0003の回転方向に応じたメインカムの回動によってそれぞれの部位のカム部,アーム等が作動することで、所定の動作を行うことが可能である。メインカムの位置はフォトインタラプタ等の位置検出センサで検出することができる。
【0062】
図18は、記録装置J0013における電気的回路の全体構成を概略的に説明するためのブロック図である。本実施形態で適用する記録装置では、主にキャリッジ基板E0013、メイン基板E0014、電源ユニットE0015およびフロントパネルE0106等によって構成されている。
【0063】
ここで、電源ユニットE0015は、メイン基板E0014と接続され、各種駆動電源を供給するものとなっている。
【0064】
1.4 記録ヘッド構成
以下に本実施形態で適用するヘッドカートリッジH1000の構成について説明する。本実施形態におけるヘッドカートリッジH1000は、記録ヘッドH1001と、インクタンクH1900を搭載する手段およびインクタンクH1900から記録ヘッドにインクを供給するための手段を有している。そして、キャリッジM4000に対して着脱可能に搭載される。
【0065】
図19は、本実施形態で適用するヘッドカートリッジH1000に対し、インクタンクH1900を装着する様子を示した図である。本実施形態の記録装置は、10色の顔料インクによって画像を形成する。10色とはシアン(C)、ライトシアン(Lc)、マゼンタ(M)、ライトマゼンタ(Lm)、イエロー(Y)、第1ブラック(K1)、第2ブラック(K2)、レッド(R)、グリーン(G)およびグレー(Gray)である。従ってインクタンクT0001もこれら10色分のものが独立に用意されている。そして、図に示すように、インクタンクそれぞれがヘッドカートリッジH1000に対して着脱自在となっている。なお、インクタンクH1900の着脱は、キャリッジM4000にヘッドカートリッジH1000が搭載された状態で行えるようになっている。
【0066】
(変形例1)
図20は本発明の実施形態における変形例1の側面図を示したものである。上記の実施形態では、摩擦付与部材203がブレーキドラム202の外側から押圧力を生じさせる構成を例にあげて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、図20において、摩擦付与部材211がブレーキドラム202の内側から押圧力を生じさせる構成もブレーキ機構として適用することができる。
【0067】
(変形例2)
図21は本発明の実施形態における変形例2の側面図を示したものである。上記の実施形態では、摩擦付与部材203と慣性錘204がそれぞれ独立した円管状の部材の構成を例にあげて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、図21において、摩擦付与部材203と慣性錘203fを1部品とする構成もブレーキ機構として適用することができる。
【0068】
(変形例3)
図22は本発明の実施形態における変形例3の側面図を示したものである。上記の実施形態では、摩擦付与部材203は圧縮バネ205によってブレーキドラム204に押圧されている構成であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、図22では、摩擦付与部材212自体が弾性体で出来ており、摩擦付与部材212を変形させてブレーキドラム202に押圧させた時の曲げ剛性で、ブレーキ力を発生させる構成であってもかまわない。また、摩擦付与部材212の一部が弾性体であってもかまわない。
【0069】
(変形例4)
図23は本発明の実施形態における変形例4の側面図を示したものである。前記の実施形態では、紙搬送ローラ201が高速回転時に、摩擦付与部材203の錘部203eに遠心力が働き、ブレーキパッド203dがブレーキドラム202に押圧する力を軽減させており、錘の機能分離がされている。本発明はこれに限定されるものではなく、図23では、慣性錘204に遠心錘215を、軸204bを中心に回転自在に取り付けているため、紙搬送ローラ201が加速時には、上記実施形態よりも摩擦付与部材203がブレーキドラムに押圧する力を強く軽減することが可能となる。また、遠心錘215は摩擦付与部材203と軸215aによって係合しているため、紙搬送ローラ201が高速回転時には、遠心力が遠心錘215の放射方向に働き、遠心錘215は軸204bを回転中心に外側に開こうとし、摩擦付与部材203がブレーキドラムに押圧する力を軽減する構成である。このように、慣性錘204と遠心錘215の機能を複合してもかまわない。
【0070】
(変形例5)
また、上記の実施形態では、紙搬送ローラ201は金属軸の表面にセラミックの微小粒がコーティングされた構成となっているが、図24に示すように、金属軸の表面にゴムを巻いた構成でも良い。
【0071】
(変形例6)
また、上記の実施形態では、駆動回転体は紙搬送ローラ201であるが、図25に示すように、前記駆動回転体にベルトをかけまわした構成でも良い。
【0072】
(変形例7)
また、上記の実施形態では、慣性錘、遠心錘の両方を備えた機構であるが、慣性錘、遠心錘のどちらか一方でもかまわない。
【0073】
(変形例8)
また、上記の実施形態は、インクジェットプリンタを例に説明したが、本発明はインクジェットプリンタに限定するものではない。
【符号の説明】
【0074】
101 回転搬送手段
102 プーリ
118 摺動支持部材
119 スプリング(加圧付勢手段)
201 紙搬送ローラ
201a 紙搬送ローラ軸
201b 圧縮バネ受け面(紙搬送ローラ側)
201c 摩擦付与部材取り付け軸
202 ブレーキドラム
203 摩擦付与部材
203a 慣性錘支持穴
203b 紙搬送ローラ固定穴
203c 圧縮バネ受け面(摩擦付与部材側)
203d ブレーキパッド
204 慣性錘
204a 摩擦付与部材固定軸
205 圧縮バネ
206 手前側板
207 奥側板
208 紙搬送ローラプーリ
209 駆動ベルト
210 駆動モータ
M3040 プラテン
M3061 プーリ
M3070 ピンチローラ
M3100、M3110 排紙ローラ
H1001 記録ヘッド
H1900 インクタンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドを搭載したキャリッジの移動と、搬送部材による記録媒体の搬送と、により記録を行う記録装置において、
前記搬送部材を回転させる駆動回転体と、
前記駆動回転体に配され前記駆動回転体とともに回転する摩擦付与部材と、
装置本体に配され前記摩擦付与部材が押圧されるブレーキドラムと、
前記摩擦付与部材をブレーキドラムに押圧させるバネ部材と、
を備え、前記駆動回転体が回転しているときの前記摩擦付与部材の前記ブレーキドラムに対する押圧力は、前記駆動回転体が停止しているときの前記押圧力よりも小さいことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記駆動回転体が回転しているときは、前記摩擦付与部材は前記ブレーキドラムと離間する、あるいは押圧力を軽減することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記摩擦付与部材は、慣性錘を備え、加速時には前記駆動回転体の回転方向とは逆方向の慣性力を生じ、前記押圧力を軽減することを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記慣性錘は、前記駆動回転体と同心の円管錘であることを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記摩擦付与部材は、遠心錘を備え、高速回転時には前記駆動回転体の回転中心より放射方向の遠心力を生じ、前記押圧力を軽減することを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項6】
前記摩擦付与部材は、慣性錘を備え加速時には前記駆動回転体の回転方向とは逆方向の慣性力を生じ、さらに、遠心錘を備え高速回転時には前記駆動回転体の回転中心より放射方向の遠心力を生じ、前記押圧力を軽減することを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項7】
前記ブレーキドラムは、前記駆動回転体と同心の円周面を有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項8】
前記搬送部材は、前記駆動回転体と同心のローラであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項9】
前記搬送部材は、前記駆動回転体にかけまわされたベルトであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2010−269861(P2010−269861A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120857(P2009−120857)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】