説明

記録装置

【課題】奥行き寸法の短い短寸のトレイの使用を可能にし、記録装置本体の小型化を図ることにある。
【解決手段】本発明の記録装置は、硬質被記録材Qがセット可能で、プリンター本体2に内蔵されたトレイ55と、前記トレイのセットポジションと格納ポジションを通る当該トレイの往復移動を案内する往復移動経路56と、前記往復移動経路に設けられ、前記トレイの搬送を司る搬送手段としての搬送用ローラー34と、記録実行領域としての記録ポジション51に搬送された前記被記録材に記録を実行する記録実行装置4とを備え、前記トレイは前記往復移動の移動長さより短く形成されていると共に、該トレイの前記移動長さの移動を可能にする拡張移動機構59を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク等の被記録材に記録を実行する場合に使用される該被記録材がセット可能なトレイが記録装置本体に内蔵されているプリンター、ファクシミリあるいは複写機に代表される、複合機を含む概念の記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、記録装置の一例であるインクジェットプリンターを例に採って説明する。インクジェットプリンターには用紙やフィルム等、自立性を有しない軟質被記録材と、光ディスク(CD−RやDVD−R等)で代表される自立性を有する硬質被記録材との両方に対して選択的に記録を実行することができるインクジェットプリンターが存在する。そして、前記CD−R等の被記録材に対して記録を実行する場合には、別途付属品として用意されている専用のトレイを使用するか、下記の特許文献1に示すようにプリンター本体内にトレイが内蔵されている構造のインクジェットプリンターを使用する。前記トレイにはCD−R等の被記録材をセットするセット凹部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−59584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のトレイ内蔵型のプリンターは、トレイをセットポジションと格納ポジションとの広い範囲に亘って往復移動させるために、奥行き寸法の長い長尺なトレイが使用されていた。そのため、トレイの奥行き寸法が長い分、プリンター本体の奥行き寸法も長くなってしまい、記録装置本体の小型化を図る上において障害になっていた。
【0005】
本発明の目的は、奥行き寸法の短い短寸のトレイの使用を可能にし、記録装置本体の小型化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る録材装置は、被記録材がセット可能で、記録装置本体に内蔵された保持トレイと、前記保持トレイのセットポジションと格納ポジションを通る当該保持トレイの往復移動を案内する往復移動経路と、前記往復移動経路に設けられ、前記保持トレイの搬送を司る搬送手段と、記録実行領域に搬送された前記被記録材に記録を実行する記録実行装置とを備え、前記保持トレイは前記往復移動の移動長さより短く形成されていると共に、該保持トレイの前記移動長さの移動を可能にする拡張移動機構を備えていることを特徴とするものである。
【0007】
本態様によれば、拡張移動機構によって、保持トレイの往復移動の全移動長さより短く形成されている短寸の保持トレイの使用が可能になり、前記短寸の保持トレイを記録装置本体奥部側の格納ポジションから記録装置本体前方のセットポジションまでの長いストローク、移動させることが可能になる。従って、保持トレイ内蔵型の記録装置の小型化を図ることができる。
【0008】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係る記録装置において、前記拡張移動機構は、前記保持トレイの一端部において、前記保持トレイの往復移動方向に対する傾き姿勢を変化可能に接続されているガイドアームと、該ガイドアームと係合して当該ガイドアームの姿勢変化と移動を案内するガイド部と、を備えることを特徴とするものである。
【0009】
本態様によれば、姿勢変化可能なガイドアームとガイドレールの採用によって保持トレイを格納ポジションに位置させた状態ではガイドアームを折り畳んで保持トレイの後端部に沿わせた姿勢で収納することが可能になる。一方、保持トレイをセットポジションに移動させるときは、ガイドアームを搬送方向にストレートに伸びた姿勢に移行させることにより実現することができる。また、拡張移動機構を比較的簡単な構造且つ少ない部品点数で構成できるようになる。
【0010】
本発明の第3の態様は、前記第2の態様に係る記録装置において、前記ガイドアームは複数設けられており、これら複数のガイドアームは前記保持トレイが格納ポジションに位置しているときは互いに重なる姿勢になることを特徴とするものである。
【0011】
本態様によれば、ガイドアームを複数設けることによって保持トレイの搬送姿勢が安定し、被記録材に対する正確且つ円滑な搬送が可能になる。また、保持トレイを格納ポジションに位置させたとき、複数のガイドアームが上下等に互いに重なる姿勢で収納されることによって、記録装置本体の奥行き方向での一層のコンパクト化が可能になる。
また、互いに重ね合わされるガイドアーム間に係合段差を設けておけば、重なった状態でも一つのガイドアームの厚さ範囲に抑えることが可能になり、記録装置本体の高さ方向におけるコンパクト化にも寄与し得るようになる。
【0012】
本発明の第4の態様は、前記第2の態様または第3の態様に係る記録装置において、前記ガイド部は、前記往復移動経路を構成するために対向配置された一方の経路構成部材と他方の経路構成部材の少なくとも一方または双方に設けられており、前記ガイド部が複数個設けられている場合には一方のガイドアームを前記一方の経路構成部材のガイド部に係合させ、他方のガイドアームを前記他方の経路構成部材のガイド部に係合させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
本態様によれば、既存の経路構成部材を利用してガイド部が形成されるため、部品点数の削減が図られる。また、例えば上方(一方)に配置されるガイドアームを上方(一方)の経路構成部材のガイド部に係合させ、下方(他方)に配置されるガイドアームを下方(他方)の経路構成部材のガイド部に係合させることにより、複数のガイドアーム間の干渉を防止して記録装置本体の高さ方向のコンパクト化を維持した効率の良いガイドアームの配置が可能になる。
【0014】
本発明の第5の態様は、前記第2の態様から第4の態様のいずれか一つに係る記録装置において、前記保持トレイは、前記被記録材が記録実行領域の記録実行終了ポジションと前記セットポジションとの間を移動するときは、前記ガイドアームが前記搬送手段による搬送力を受けることによって搬送されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
本態様によれば、保持トレイに搬送力を付与する搬送伝達部材としてガイドアームを利用することによって短寸の保持トレイを使用した場合でも長い移動ストロークを確保することが可能になる。
【0016】
本発明の第6の態様は、前記第5の態様に係る記録装置において、前記ガイドアームの、前記搬送手段を構成する搬送駆動ローラーと接する側の面については、少なくとも前記搬送手段から搬送力を受ける範囲は平坦面に形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
本態様によれば、ガイドアームが搬送伝達部材として機能する移動範囲内では、搬送用駆動ローラーと接触するガイドアームの接触面が段差のない平坦面に形成されることによって、前記移動範囲内における保持トレイの円滑な搬送が実現される。
【0018】
本発明の第7の態様は、前記第2の態様から第6の態様のいずれか一つに係る記録装置において、前記ガイドアームが複数本設けられている場合には、前記保持トレイと前記ガイドアームとの接続部においては、各接続部毎、保持トレイとガイドアームの位置関係が逆配置になるように構成されていることを特徴とするものである。
【0019】
保持トレイとガイドアームとの接続部には、互いに平坦になるように設計、製造しても、両部材間に段差が僅かに発生する。本態様によれば、各接続部毎、保持トレイとガイドアームの位置関係が逆配置になるので、前記段差が相殺されてその影響がほとんど出なくなる効果がある。すなわち、前記段差が保持トレイの搬送に与える影響を小さくすることができる。
【0020】
本発明の第8の態様は、前記第2の態様から第7の態様のいずれか一つに係る記録装置において、前記ガイドアームの基端部に前記ガイド部と係合する係合部を有し、前記セットポジションへ移動した位置において、前記係合部が前記ガイド部から抜けるのを防止する抜け止め部を備えていること特徴とするものである。
【0021】
本態様によれば、保持トレイが格納ポジション等からセットポジションへ移動して停止した位置において、ガイドアームに設けられた係合部がガイド部から抜けるのを防止するための抜け止め部を備えているので、保持トレイやガイドアームに不用意な外力が加わったとしても、ガイドアームがガイド部から抜けることは無く、その結果、保持トレイ自体も記録装置からはずれることはない。
【0022】
本発明の第9の態様は、前記第1の態様から第6の態様のいずれか一つに係る記録装置において、前記保持トレイが記録実行開始ポジションと記録実行終了ポジションとの間を移動するときには、前記保持トレイは前記搬送手段から搬送力を受けるように構成されていることを特徴とするものである。
【0023】
本態様によれば、被記録材の被記録面に記録が実行される記録実行開始ポジションから記録実行終了ポジションまでの間は、保持トレイは搬送手段によって直接搬送力が付与されるから、被記録材の搬送姿勢が安定し、円滑な被記録材の搬送が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施例に係るインクジェットプリンターの内部構造を示す斜視図。
【図2】同インクジェットプリンターのトレイ格納時の側断面図。
【図3】同インクジェットプリンターの記録開始時の側断面図。
【図4】同インクジェットプリンターの記録終了ポジションに位置するときの側断面図。
【図5】同インクジェットプリンターの硬質被記録材セット時の側断面図。
【図6】拡張移動機構を示すトレイ格納時の平面図。
【図7】図6中のA−A断面図。
【図8】拡張移動機構を示す硬質被記録材セット時の平面図。
【図9】トレイの複数のポジションが併記されている図8中のB−B断面図。
【図10】トレイとアームの接続構造を示す分解斜視図。
【図11】トレイ格納時の拡張移動機構を示す斜視図。
【図12】上部経路構成部材を示す下面図。
【図13】被記録材の搬送装置を示すトレイ格納時の平面図。
【図14】同インクジェットプリンターの記録実行開始時の平面図。
【図15】同インクジェットプリンターの記録実行終了ポジションに位置するときの平面図。
【図16】同インクジェットプリンターの硬質被記録材セット時の平面図。
【図17】拡張移動機構の構成を異らせた他の実施例を示す平面図。
【図18】同上、更に他の実施例を示すトレイ格納時の側面図(a)と、硬質被記録材セット時の側面図(b)。
【図19】アーム74Lの基端部74bを上斜め方向からみたガイドピン79の周辺を拡大した斜視図。
【図20】アーム74Lに設けられたガイドピン79と係合するガイドレール77Lの先端部の一部を拡大したときの、上部経路構成部材57を上斜め方向から見た斜視図。
【図21】アーム74Lに設けられたガイドピン79と係合するガイドレール77Lの先端部の一部を拡大したときの、上部経路構成部材57を下斜め方向から見た斜視図。
【図22】アーム74Lが最大の伸張姿勢になる直前時のアーム74Lとガイドレール77Lとの関係を示す斜視図。
【図23】アーム74Rを天地逆にした時の基端部74bとガイドピン79の周辺を拡大した斜視図。
【図24】アーム74Rに設けられたガイドピン79と係合するガイドレール77Rの先端部の一部を拡大したときの、下部経路構成部材62を上斜め方向から見た斜視図。
【図25】アーム74Rに設けられたガイドピン79と係合するガイドレール77Rの先端部の一部を拡大したときの、下部経路構成部材62を下斜め方向から見た斜視図。
【図26】アーム74Rが最大の伸張姿勢になる直前時のアーム74Rとガイドレール77Rとの関係を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る被記録材の搬送装置を備えた記録装置について説明する。最初に本発明の記録装置を実施するための最良の形態としてインクジェットプリンター1を採り上げて、その全体構成の概略を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1はインクジェットプリンターの内部構造を示す斜視図、図2はインクジェットプリンターの内部構造の概略を示すトレイが格納ポジションに位置しているときの側断面図である。図3は同インクジェットプリンターのトレイが記録実行開始ポジションに位置しているときの側断面図、図4は同インクジェットプリンターのトレイが記録実行終了ポジションに位置しているときの側断面図である。また図5は同インクジェットプリンターのトレイがセットポジションに位置しているときの側断面図である。
【0027】
尚、図示のインクジェットプリンター1は、上部に図示を省略した画像読み取り装置(スキャナー)を搭載した複合型のインクジェットプリンターであり、用紙やフィルム等の軟質被記録材Pと、CD−RやDVD−R等を含む光ディスク等の硬質被記録材Qとの両方に対して記録を実行することができるタイプのインクジェットプリンターである。また、図示のインクジェットプリンター1は、前記2種類の軟質被記録材P、硬質被記録材Qの記録実行領域での搬送方向Aと交差する幅方向Bに往復移動し得るキャリッジ40の下面に記録ヘッド42を搭載したシリアルプリンターである。
【0028】
このインクジェットプリンター1は、外観が比較的フラットな面によって構成されている矩形筐体状の記録装置本体としてのプリンター本体2を備えている。そして、前記プリンター本体2の前面2aの中央下部に多数枚の普通紙等の軟質被記録材Pを積畳状態で収容し得る給送用カセット11が着脱可能に装着されている。また、該給送用カセット11の装着面の上方には記録実行後の前記軟質被記録材Pを積畳状態でスタックするための排出用スタッカー47が設けられている。この他、プリンター本体2の前面2aには各種の操作指令を実行するための図示しない操作ボタンと、各種のインクカートリッジを収容するための図示しないカートリッジホルダー等が設けられている。
【0029】
給送用カセット11は、軟質被記録材Pの搬送経路の始発位置に設けられる部材で、給送用カセット11内に収容された前記軟質被記録材Pは、自動給送装置3によって最上位のものから順番に1枚ずつ繰り出されて後述するU字反転経路50に向けて給送されるようになっている。自動給送装置3は、給送用カセット11内の上位の前記軟質被記録材Pを後方に引き出すピックアップローラー16と、後方に引き出された上位の軟質被記録材Pを予備分離しながらU字反転経路50に導く分離斜面12と、該分離斜面12の後部斜め上方において自由回転可能な状態で設けられる第1ガイドローラー20と、該第1ガイドローラー20の後部斜め上方に設けられる分離ローラー21とを備えることによって構成されている。
【0030】
また、前記ピックアップローラー16は、揺動軸18を中心に揺動する揺動アーム17の先端部に設けられており、給送時に前記軟質被記録材Pの上面に圧接されて搬送方向Aへの回転によって給送用カセット11内の上位の軟質被記録材Pを後方に引き出すことができるようになっている。前記分離ローラー21は、トルクリミッタが接続された分離従動ローラー22と、分離駆動ローラー23との一対のニップローラーによって構成されており、前記分離斜面12による予備分離では分離できなかった後続の軟質被記録材Pを最上位の軟質被記録材Pから完全に分離させる本分離作用を担っている。
【0031】
前記自動給送装置3によって給送された軟質被記録材Pは、U字反転経路50内を搬送されて記録ポジション51に導かれる。記録ポジション51の下方には搬送されてきた前記軟質被記録材Pないしトレイ(硬質被記録材Qを保持する)の下面を支持して記録ヘッド42下面との間のギャップPGを規定するプラテン38が設けられている。尚、プラテン38は、支持部材である搬送案内部39と、該搬送案内部39の上面に形成されているプラテンリブ38aと、記録の実行に使用されなかった余剰のインクを回収するためのインク回収溝39aとを備えることによって構成されている。
【0032】
一方、記録ポジション51の上方には記録実行装置4の主要な構成部材である記録ヘッド42と、該記録ヘッド42を下面に搭載した状態で幅方向Bにキャリッジガイド軸41に案内されて往復移動し得るキャリッジ40とが設けられている。更に、記録実行装置4には前記記録ヘッド42に各色のインクを供給する図示しない複数本のインクチューブ及びインク供給ポンプと、キャリッジ40のホームポジションに設けられる図示しないキャッピング装置と、軟質被記録材Pと硬質被記録材Qとの切替え時等に使用される図示しない自動ギャップ調整機構等とが備えられている。
【0033】
また、前記記録ポジション51の搬送方向Aにおける下流位置には、被記録材の排出装置6が設けられている。被記録材の排出装置6は、排出駆動ローラー44と排出従動ローラー45との一対のニップローラーによって構成される排出用ローラー43と、上述した排出用スタッカー47とを備えることによって構成されている。また、前記排出用スタッカー47には入れ子状にその内部に収容される延長スタッカー48が引出し、格納自在に設けられている。
【0034】
[実施例1]
次に、このようにして構成されるインクジェットプリンター1に対して適用される本実施例の被記録材の搬送装置5を備えた記録装置について図面に基づいて具体的に説明する。
【0035】
図6はトレイが格納ポジションに位置しているときの拡張移動機構を示す平面図、図7は図6中のA−A断面図である。図8はトレイがセットポジションに位置しているときの拡張移動機構を示す平面図、図9は図8中のB−B断面図でありトレイの複数のポジションが併記されている。図10はトレイとアームを示す分解斜視図、図11はトレイが格納ポジションに位置しているときの斜め上部後方からの斜視図である。また図12は上部経路構成部材を示す下面図である。
【0036】
図13はトレイと拡張移動機構の作動態様を示すトレイが格納ポジションに位置しているときの平面図、図14は同トレイが記録実行開始ポジションに位置しているときの平面図である。図15は同トレイが記録実行終了ポジションに位置しているときの平面図、図16は同トレイがセットポジションに位置しているときの平面図である。
【0037】
本実施例の被記録材の搬送装置5は、CD−R等の硬質被記録材Qをセットするプリンター本体2に内蔵された短寸のトレイ55と、前記トレイ55のセットポジション53と格納ポジション54間の往復移動を案内する往復移動経路56と、前記往復移動経路56の途中に設けられ、前記トレイ55に搬送力を付与する搬送駆動ローラー35と搬送従動ローラー36とによって構成される搬送手段としての搬送用ローラー34と、前記トレイ55の後端部に接続され、前記トレイ55のセットポジション53と格納ポジション54間の移動を可能にする移動ストロークSの拡張機能を有する拡張移動機構59と、を備えることによって基本的に構成されている。
【0038】
また、本実施例に係る被記録材の搬送装置5にあっては、前記構成に加えて普通紙等の軟質被記録材Pを多数枚積畳状態で収容し得る上述した給送用カセット11と、前記軟質被記録材Pの給送用カセット11からの後方への給送と、U字反転そしてプリンター本体2の前面2aに向けての搬送を案内する上述したU字反転経路50と、前記トレイ55を、前記搬送用ローラー34に受け渡すまでの補助的な搬送を実行する補助搬送機構67と、が備えられている。
【0039】
尚、本明細書で使用する前記記録ポジション51とは、記録ヘッド42によって被記録材に記録が行われる記録実行領域を意味している。図3、図14において、符号60は硬質被記録材Qに記録が開始されるときのトレイ55の先端位置を示しているが、以下のこの位置をトレイ55における記録実行開始ポジション60と称す。この記録実行開始ポジション60に対応して、硬質被記録材Qへの記録が終了するときのトレイ55の先端位置がトレイ55における記録終了ポジションになる。図4、図15において、符号61は記録終了ポジションにおけるトレイ55の先端位置を示している。
【0040】
最初に軟質被記録材P用の搬送経路を構成するU字反転経路50について説明する。U字反転経路50は、プリンター本体2内部の後部スペースを利用して設けられており、U字反転経路50の外側案内面50aを形成する一例として2分割された上方に位置する上部ハウジング63,64及び搬送案内上37と、下方に位置する下部ハウジング65と、U字反転経路50の内側案内面50bを形成する上述した上部経路構成部材57とを備えることによってU字反転経路50は構成されている。
【0041】
また、前記U字反転経路50には、図2〜図4に示すように、送り駆動ローラー26と送り従動ローラー27との一対のニップローラーによって構成されている第1中間送りローラー25と、自由回転可能な第2ガイドローラー29と、送り駆動ローラー32と送り従動ローラー33との一対のニップローラーによって構成されている第2中間送りローラー31とが設けられている。そして、これらの各第1中間送りローラー25、第2ガイドローラー29、第2中間送りローラー31の送り及び案内作用によってU字反転経路50に供給された軟質被記録材Pは、当該U字反転経路50を通って、U字反転経路50の下流近傍位置に設けられる上述した搬送用ローラー34のニップ点に供給されるようになっている。
【0042】
搬送用ローラー34は、ローラー駆動軸35aによって支持された搬送駆動ローラー35と、前記搬送案内上37の先端において自由回転可能な状態で設けられている搬送従動ローラー36との一対のニップローラーによって構成されている。また、前記搬送従動ローラー36の搬送方向Aの位置は、搬送駆動ローラー35の搬送方向Aの位置よりも幾分下流にずれた位置に設定されている。そしてこのような位置設定の搬送用ローラー34を採用することによって、供給された軟質被記録材Pの先端を下方のプラテンリブ38aに押し付けてヘッド擦れを防止し、記録品質の向上を図っている。
【0043】
また、前記ローラー駆動軸35aには、図示しない駆動モーターからの動力が伝達されて、軟質被記録材P及びトレイ55(硬質被記録材Q)の各搬送を実行する他、ギヤ輪列66を介して補助搬送機構67に動力を伝達させてトレイ55の格納ポジション54からの移動開始動作と、格納ポジション54に戻す移動終了動作とを実行できるようになっている。
また、前記ローラー駆動軸35aには、図示しないクラッチ装置が設けられており、クラッチ装置の係合位置を適宜可変することによって、上述した図示しないインク供給ポンプ、キャッピング装置、自動ギャップ調整機構及び自動給送装置3に対して選択的にローラー駆動軸35aの動力を伝えることができるようになっている。
【0044】
トレイ55は往復移動における全移動長さより短く形成されている。すなわち、トレイ55は、図10に示すように、奥行き寸法の短い短寸の矩形平板状の部材である。トレイ55の上面55aにおける幅方向の中央位置の幾分前方寄りの位置には、硬質被記録材Qをセットするためのセット凹部71と、その中心にセットされた硬質被記録材Qを保持する保持凸部72とが設けられている。また、前記トレイ55にセットできる硬質被記録材Qとしては、12cm直径あるいは8cm直径のCD−R、CD−RW、DVD−R、DVD−RWあるいは次世代の光ディスクとして注目されているブルーレイディスクや今後開発されるものを含めた種々の光ディスク等が適用可能である。
【0045】
図10に示すように、前記トレイ55の先端部80は、櫛歯状の凹凸形状に形成されており、このうちの凸部が前下がり傾斜の案内爪84になっている。また、前記トレイ55の後端部の左右のコーナー部付近には、後述する拡張移動機構59の左右のアーム74L,74Rのそれぞれの先端部74a,74aと回転自在に接続される舌片状をした接続片75L,75Rが設けられている。そして、向かって左側の接続片75Lの下面と向かって右側の接続片75Rの上面には、後述する左右の接続穴78L,78Rに係合する、先端部に係止フランジ部85を備えた茸状の接続凸部75aが設けられている。
【0046】
往復移動経路56は、前記トレイ55が格納ポジション54に位置しているときにトレイ55の下面55bを支持する下部経路構成部材62と、前記トレイ55の左右の側縁(エッジ)に摺接してトレイ55の移動を案内する左右のエッジガイド76L,76Rと、トレイ55が記録ポジション51に位置している時にトレイ55の下面55bと対向する前記搬送案内部39と、トレイ55がセットポジション53に位置しているときにトレイ55の下面55bを支持する前記排出用スタッカー47とを備えることによって構成されている。
【0047】
下部経路構成部材62は、前記トレイ55とほぼ同じ大きさの短形平板状の部材で、前記左右のエッジガイド76L,76Rは下部経路構成部材62の左右の側縁部から上方に向けて垂直に立ち上げられている。また、図10、図15に示すように、下部経路構成部材62には、次に述べる拡張移動機構59における向って右側のアーム74Rの基端部74bに設けられているガイドピン79と係合する平面視L字形のガイド部としてのガイドレール77Rが刻設されている。
【0048】
拡張移動機構59は、前記トレイ55の後端部に対して回動自在に接続されている左右一対のアーム74L,74Rと、これらのアーム74L,74Rの基端部74b,74b(図9)に設けられているガイドピン79,79と係合してアーム74L,74Rの姿勢と移動を案内する左右一対のガイド部としてのガイドレール77L,77Rとを備えることによって構成されている。
【0049】
アーム74L,74Rは、幅狭で先端部74a,74aが丸く加工された長尺な平板状の部材である。また、アーム74L,74Rは、先端部74a側と基端部74b側とで形状が異なっており、先端部74a側は幅広で肉厚、基端部74b側は幅狭で肉薄になっている。また、前記肉薄部分で左右のアーム74L,74Rが重ね合わされることによって厚さを大きくすることなく左右のアーム74L,74R間も干渉を防止してコンパクトに折り畳まれた姿勢で収納できるようになっている。因みに本実施例では、前記重ね合わせた部分において上方に位置しているのが向って左側のアーム74Lの下方に位置しているのが向って右側のアーム74Rになっている。
【0050】
また、向って左側のアーム74Lの先端部74aは、上面が一段低くなった段差形状になっており、その中心にはトレイ55の向って左側の後端部に設けられている前記接続片75Lの下方に突出した接続凸部75aを受け入れる長穴形状の接続穴78が形成されている。一方、向って右側のアーム74Rの先端部74aは、下面が一段低くなった段差形状になっており、その中心にはトレイ55の向って右側の後端部に設けられている前記接続片75Rの上方に突出した接続凸部75aを受け入れる長穴形状の接続穴78Rが形成されている。そして、前記接続片75L,75Rとアーム74L,74Rのそれぞれの先端部74a,74aとが接続された状態において、前記接続凸部75a,75aがぞれぞれの接続穴78L,78Rから突出することがないように形成されている。
【0051】
従って、前記トレイ55と左右一対のアーム74L,74Rは、搬送用ローラー34との接触範囲内において厚さがほぼ一定になるように形成されている。特に、トレイ55が記録実行終了ポジションとセットポジション53との間を移動するときには、前記2本のアーム74L,74Rが搬送用ローラー34によって挟持されることによって、アーム74L,74Rを介してトレイ55に搬送力が付与されるようになっている。そのため、前記移動範囲内でのアーム74L,74Rの搬送用ローラー34側の接触面86L,86Rは段差のない平坦面によって形成されている。
【0052】
また、前記トレイ55の向って左側(図10の視点)の接続片75Lとアーム74Lとの接続部87Lと、前記トレイ55の向って右側の接続片75Rとアーム74Rとの接続部87Rとには、成形誤差や組立誤差等によって微小な段差が生じている。しかし、左右の接続部87L,87R毎、トレイ55とアーム74L,74Rとの位置関係が上下逆配置になるように構成されているため、前記左右の段差は搬送方向のずれた位置に位置するようになる。従って、前記接続部87L,87Rが搬送用ローラー34のニップ点を通過する際に、前記左右の段差は順番に搬送用ローラー34のニップ点を通過することになり、トレイ55の搬送は搬送方向A或いは戻し方向Dであるとに拘らず円滑に実行されるようになる。
【0053】
ガイド部としてのガイドレール77(77L,77R)は、平面視L字形の左右対称配置された溝部によって構成されている。向って左側のガイドレール77Lは、上方に位置する上部経路構成部材57の内面57aに刻設されている。また、向かって右側のガイドレール77Rは、下方に位置する下部経路構成部材62の上面62aに刻設されており、向って左側のガイドレール77Lには、同じく向って左側に位置するアーム74Lのガイドピン79が、そして向って右側のガイドレール77Rには同じく向って右側に位置するアーム74Rのガイドピン79がそれぞれ係合して移動できるようになっている。従って、上部経路構成部材57は、上述したようにU字反転経路50の構成部材であるのと同時に、往復移動経路56の構成部材としても機能するように構成されている。
【0054】
また、前記トレイ55の搬送方向Aとこの搬送方向Aと反対方向の戻し方向Dの移動は、前記搬送用ローラー34に加えて、補助搬送機構67によって実行されている。補助搬送機構67は、格納ポジション54に位置しているトレイ55を記録実行開始ポジション60に受け渡すまでの移動と、記録実行開始ポジション60に位置しているトレイ55を格納ポジション54に戻して格納するまでの移動を担っている。尚、補助搬送機構67としては、ラック・ピニオン機構が一例として適用でき、本実施例では、図13に示したように、トレイ55の上面55aにおける向かって右側の後部コーナー部近くにラック68を、前記ローラー駆動軸35aの動力を伝達するギヤ輪列66の終端部に前記ラック68と噛み合うピニオン69をそれぞれ配設した補助搬送機構67になっている。
【0055】
次に、このようにして構成される本実施例の録材装置の作動態様を(1)格納(収納)時、(2)記録開始時、(3)記録終了時、(4)セット時に分けて説明する。
【0056】
(1)格納(収納)時(図2、図6、図7、図11、図13参照)
トレイ55が格納ポジション54に位置している場合には、図示のように下部経路構成部材62の後部スペースにおいて左右のアーム74L,74Rが上下に重ね合わされたコンパクトな姿勢で収納されている。そして、この状態では、図2に示すように軟質被記録材Pに対する記録の実行が可能になっている。即ち給送用カセット11内に収容されている軟質被記録材Pは、自動給送装置3によって最上位の1枚の軟質被記録材PのみがU字反転経路50に供給される。
【0057】
そして、U字反転経路50では第1中間送りローラー25と第2中間送りローラー31とによって軟質被記録材Pに送り力が付与されて、更に第2ガイドローラー29と、U字反転経路50の外側案内面50a及び内側案内面50bと、搬送案内上37の内側案内面37aとによって案内されて軟質被記録材Pは搬送用ローラー34に導かれる。そして、搬送用ローラー34による挟圧送り作用によって、軟質被記録材Pは記録ポジション51に向けて搬送されて記録実行装置4による所望の記録が実行される。
【0058】
(2)記録開始時(図3、図9、図14参照)
格納ポジション54に位置しているトレイ55は、補助搬送機構67及び搬送用ローラー34によって、先ずは図5、図16に示したセットポジション53に移動する。すなわち、トレイ55の上面55aのラック68にローラー駆動軸35aの動力がギヤ輪列66及びピニオン69を介して伝達されると、トレイ55は前方への移動を開始する。トレイ55の先端部80が搬送用ローラー34のニップ点に至ると、前記補助搬送機構67からの動力伝達が終了し、トレイ55は搬送用ローラー34からの動力伝達が開始されて前記セットポジション53に至る。
【0059】
そして、トレイ55のセット凹部71に硬質被記録材Qがセットされると、そのセットされたトレイ55は搬送用ローラー34によって戻され、図3、図14の記録実行開始ポジション60に位置される。次いで、搬送用ローラー34による搬送力によってトレイ55は、搬送方向Aに向けて搬送され、同時に幅方向Bに往復移動するキャリッジ40の往復動作によって上方から硬質被記録材Qの被記録面の全幅に亘って記録ヘッド42から各色のインクが吐出されて、所望の記録が開始される。尚、トレイ55を使用するのは硬質被記録材Qの被記録面に記録を実行する場合であるから、記録開始前に、記録ヘッド42とプラテン38間のギャップPGを図示しない自動ギャップ調整装置を作動させて上方に拡大し、硬質被記録材Q用のギャップPGに設定される。
【0060】
(3)記録終了時(図4、図9、図15参照)
前記トレイ55が記録終了ポジションまで搬送されると、硬質被記録材Qの被記録面に対する記録実行が終了する。図4、図15に示すトレイ55の先端の位置は記録実行終了ポジション61に位置している状態である。
【0061】
尚、トレイ55が記録実行開始ポジション60から記録実行終了ポジション61まで移動するときには、前記搬送用ローラー34によって直接、トレイ55が挟持されることによって該トレイ55に搬送力が付与されるので、トレイ55の正確且つ安定した円滑な搬送によって記録品質の向上が図られる。
【0062】
(4)セット時(図5、図8、図9、図16参照)
硬質被記録材Qをトレイ55にセットする場合や記録の実行が終了した硬質被記録材Qをトレイ55から取り出す場合には、トレイ55は、移動ストロークS分、一杯に前方に引き出した図5、図8、図9、図16に示すセットポジション53に位置される。そして、前記記録実行終了ポジション61からセットポジション53までのトレイ55の移動は、図示のように左右のアーム74L,74Rを搬送方向Aに沿った姿勢にして搬送用ローラー34によって前記アーム74L,74Rを挟持することによってトレイ55に間接的に搬送力を付与することによって実行される。
【0063】
また、トレイ55が記録実行終了ポジション61とセットポジション53との間を移動している範囲内では、上述したようにアーム74L,74Rの搬送駆動ローラー35側の接触面86L,86Rは段差のない平坦面によって形成されている。そして、左右の接続部87L,87Rでのトレイ55とアーム74L,74Rとの位置関係が上述したように上下逆配置になっている。従って、トレイ55は、搬送用ローラー34によって直接、挟持されて搬送力が付与されていたときと同様に安定した姿勢が維持されて円滑に前記範囲内での搬送が実行される。
【0064】
そして、上述した格納ポジション54とセットポジション53間のトレイ55の移動と、記録実行開始ポジション60と記録実行終了ポジション61間のトレイ55の移動と、記録実行終了ポジション61とセットポジション53間のトレイ55の移動とを通じて左右のアーム74L,74Rのそれぞれの基端部74b,74bに設けられているガイドピン79,79は、常にガイドレール77L,77Rと係合しながら移動し、図2、図6、図7、図11、図13に示す、上下に重ね合わされた折り畳まれた姿勢から図5、図8、図9、図16に示す、伸張姿勢にアーム74L,74Rの姿勢を連続的に変化させながら移行して行く。
【0065】
ここで、アーム74L,74Rがセットポジション53に移動した位置におけるアーム74L,74Rとガイドレール77L,77Rとの関係について説明する。
【0066】
図19〜図22には、アーム74Lとガイドレール77Lの一部を拡大した状態及びトレイ55がセットポジション53に移動する直前のアーム74Lとガイドレール77Lとの関係を示す状態が記載されている。
【0067】
図19は、図8においてアーム74Lの基端部74bを上斜め方向からみたガイドピン79Lの周辺を拡大した斜視図である。図示したようにガイドピン79Lの先端部分はフック状になっており、抜け止め部としての上位引っ掛け部79Laが設けられている。
また、図20及び図21には、アーム74Lに設けられたガイドピン79Lと係合するガイドレール77Lの先端部の一部を拡大したときの、上部経路構成部材57を上斜め方向から見た状態(図20)と下斜め方向からみた状態(図21)が記載されている。上部経路構成部材57の内面に刻設されているガイドレール77Lの先端部には抜け止め部としての下位引っ掛け部77Laが設けられている。
【0068】
図22には、トレイ55がセットポジション53に移動する直前のアーム74Lとガイドレール77Lとの関係が記載されている。トレイ55がセットポジション53に位置する状態になった時は、ガイドレール77Lの先端部にガイドピン79Lが度当たって、トレイ55の排紙側への移動が規制される。また、トレイ55がセットポジション53に位置する状態から更に不用意な力によって排紙側へ引っ張られるような状態や、振動によって下方向へ動いたとしても、図22に記載されたガイドピン79Lの上位引っ掛け部79Laと、ガイドレール77Lの下位引っ掛け部77Laとが係合して、アーム74Lがガイドレール77Lから抜けるのを防止している。なお、本実施例ではガイドレール77Lの先端部とガイドピン79Lが度当たった際に、上位引っ掛け部それぞれの上位引っ掛け部79Laと下位引っ掛け部77Laとの間には隙間(遊び)が設けられているが、当該隙間がなくなるように各上位引っ掛け部79aを設けてもよい。
【0069】
図23〜図26には、アーム74Rとガイドレール77Rの一部を拡大した状態及びトレイ55がセットポジション53に移動する直前のアーム74Rとガイドレール77Rとの関係を示す状態が記載されている。
【0070】
図23は、図8において他方のアーム74Rを天地逆にしたときの基端部74bとガイドピン79Rの周辺を拡大した斜視図である。図示したようにガイドピン79Rの先端部分はフック状になっており、抜け止め部としての下位引っ掛け部79Raが設けられている。
また、図24及び図25にはアーム74Rに設けられたガイドピン79Rと係合するガイドレール77Rの先端部の一部を拡大したときの、下部経路構成部材62を上斜め方向から見た状態(図24)と下斜め方向からみた状態(図25)が記載されている。下部経路構成部材62の上面に刻設されているガイドレール77Rの先端部には抜け止め部としての上位引っ掛け部77Raが設けられている。
【0071】
図26には、トレイ55がセットポジション53に移動する直前のアーム74Rとガイドレール77Rとの関係が記載されている。トレイ55がセットポジション53に位置する状態になった時は、ガイドレール77Rの先端部にガイドピン79Rが度当たって、トレイ55の排紙側への移動が規制される。また、トレイ55がセットポジション53に位置する状態から更に不用意な力によって排紙側へ引っ張られるような状態や、振動によって上方向へ動いたとしても、図26に記載されたガイドピン79Rの下位引っ掛け部79Raと、ガイドレール77Rの上位引っ掛け部77Raとが係合して、アーム74Rがガイドレール77Rから抜けるのを防止している。なお、本実施例ではガイドレール77Rの先端部とガイドピン79Rが度当たった際に、下位引っ掛け部79Raと上位引っ掛け部77Raとの間には隙間(遊び)が設けられているが、当該隙間がなくなるように各引っ掛け部79aを設けてもよい。
【0072】
以上のように、トレイ55がセットポジション53に移動した位置において、アーム74L,74Rにそれぞれ設けられたガイドピン79L,79Rがガイドレール77L,77Rから抜けるのをフック状の抜け止め部によって防止することにより、トレイ55もプリンター本体2からはずれることを防止している。
【0073】
なお、アーム74L,74Rのガイドピン79L,79Rとガイドレール77L,77Rの先端部にそれぞれフック状の引っ掛け部として上位引っ掛け部79La、下位引っ掛け部79Ra、下位引っ掛け部77La、上位引っ掛け部77Raを設け、アーム74L,74Rとガイドレール77L,77Rが係合する抜け止め構造を示したが、アーム74L,74Rがガイドレール77L,77Rから抜けるのを防止できる構造であればよく、抜け止め構造は上記フック状のものに限定されない。
【0074】
尚、セットポジション53から格納ポジション54に向けてのトレイ55の復路移動時における被記録材の搬送装置5の作動態様も前記トレイ55の往路移動時における被記録材の搬送装置5の作動態様と逆の手順を辿るだけで、その内容は前記と同様である。
【0075】
[実施例2]
本発明に係る被記録材の搬送装置5を備えた記録装置としてのインクジェットプリンター1は、以上述べたような構成を基本とするものであるが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
【0076】
例えば図17に示すように、トレイ55に対するアーム74の接続位置はトレイの後端部の左右のコーナー部に限らず、トレイ55の後端部の中央位置であってもよい。因みに図17では、左右のアーム74L,74Rをそれぞれ回動支点88L,88Rで折れ曲がる2本のアーム要素89Aとアーム要素90A及びアーム要素89Bとアーム要素90Bとによって構成したパンタグラフ状の動きをする拡張移動機構59Aになっている。
【0077】
[実施例3]
また、拡張移動機構59は、上述したようなアーム74を使用したものに限定されない。例えば図18に示すように、チェーン状にないしシャッター状に複数のリンク片91が回動可能な状態で連接した構造の拡張移動機構59Bであってもよい。因みに図18では、トレイ55と上部経路構成部材57との間の空間を利用して上方にリンク片91を巻き取る構成の拡張移動機構59Bになっている。
【0078】
尚、リンク片91の幅寸法は短くても長くてもよく、幅寸法の短いリンク片91を使用する場合には、トレイ55の後端部の左右のコーナー部に2組設ける等、複数組設けることが可能である。一方、リンク片91の幅寸法を極限まで長くしてトレイ55の幅寸法とほぼ同じにすれば、シャッター状の拡張移動機構59Bとなる。また、リンク片91の巻取方向は上方に限らず、下方でもよいし、左右方向に巻き取るようにすることも可能である。
【0079】
[他の実施例]
更に例えば、軟質被記録材P用の搬送経路は、前述した実施例のようなU字反転経路50に限らず、プリンター本体2の後部上方に設けた給送用トレイから軟質被記録材Pをプリンター本体2の前面2aから突出する排出用スタッカー47に向けて直線的に搬送する直線的な搬送経路等であってもよい。
【0080】
また、軟質被記録材P用の搬送経路を備えない硬質被記録材Q専用の被記録材の搬送装置5やインクジェットプリンター1であってもよく、インクジェットプリンター1以外の装置、例えばDVDプレイヤーやパーソナルコンピューター等に本発明の被記録材の搬送装置5を適用することも可能である。
【0081】
この他、拡張移動機構59の構成は、前記実施例のように2本のアーム74L,74Rと2本のガイドレール77L,77Rを使用するものの他、3本以上のアーム74と3本以上のガイドレール77を使用するものや1本のアーム74と1本のガイドレール77のみを使用するものであってもよい。
【符号の説明】
【0082】
1…記録装置としてのインクジェットプリンター、2…記録装置本体としてのプリンター本体、2a…前面、3…自動給送装置、4…記録実行装置、5…被記録材の搬送装置、6…被記録材の排出装置、11…給送用カセット、12…分離斜面、16…ピックアップローラー、17…揺動アーム、18…揺動軸、20…第1ガイドローラー、21…分離ローラー、22…分離従動ローラー、23…分離駆動ローラー、25…第1中間送りローラー、26…送り駆動ローラー、27…送り従動ローラー、29…第2ガイドローラー、31…第2中間送りローラー、32…送り駆動ローラー、33…送り従動ローラー、34…搬送用ローラー、35…搬送駆動ローラー、35a…ローラー駆動軸、36…搬送従動ローラー、37…搬送案内上、37a…内側案内面、38…プラテン、38a…プラテンリブ、39…搬送案内部、39a…インク回収溝、40…キャリッジ、41…キャリッジガイド軸、42…記録ヘッド、43…排出用ローラー、44…排出駆動ローラー、45…排出従動ローラー、47…排出用スタッカー、48…延長スタッカー、50…U字反転経路、50a…外側案内面、50b…内側案内面、51…記録ポジション、53…セットポジション、54…格納ポジション、55…トレイ、55a…上面、55b…下面、56…往復移動経路、57…上部経路構成部材、57a…内面、59…拡張移動機構、60…記録実行開始ポジション、61…記録実行終了ポジション、62…下部経路構成部材、62a…上面、63…上部ハウジング、64…上部ハウジング、65…下部ハウジング、66…ギヤ輪列、67…補助搬送機構、68…ラック、69…ピニオン、71…セット凹部、72…保持凸部、74…アーム、74a…先端部、74b…基端部、75L,75R…接続片、75a…接続凸部、76L,76R…エッジガイド、77,77L,77R…ガイド部としてのガイドレール、77La…抜け止め部としての下位引っ掛け部、77Ra…上位引っ掛け部、78…接続穴、79…ガイドピン、79La…上位引っ掛け部、79Ra…下位引っ掛け部、80…先端部、84…案内爪、85…係止フランジ部、86L,86R…接触面、87L,87R…接続部、88L,88R…回動支点、89A,89B,90A,90B…アーム要素、91…リンク片、P…軟質被記録材、Q…硬質被記録材、A…搬送方向、B…幅方向、PG…ギャップ、S…移動ストローク、D…戻し方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録材をセットするためのトレイであって、被記録材への着脱が可能となるよう露出される第1ポジションと当該第1ポジションから第1方向に退避して格納される第2ポジションとの間で往復移動されるトレイと、
前記往復移動のための搬送力を付与するための搬送手段と、
前記トレイに接続されて当該トレイへの前記搬送力の伝達を介在するための搬送力伝達部材であって、前記往復移動の方向に対する占有スペースが伸縮自在な搬送力伝達部材と、を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記第1ポジションと前記第2ポジションとの間の記録区間で前記トレイを搬送しつつ、当該トレイにセットされた被記録材に対して記録を実行する記録部をさらに備えており、
前記記録区間における前記トレイの移動では、前記搬送手段から前記トレイへと直接前記搬送力が伝達され、
前記記録区間の終端から前記第1ポジションまでの前記トレイの移動では、前記搬送手段から前記トレイへと前記搬送力伝達部材を介して前記搬送力が付与されることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記搬送手段は、前記トレイおよび前記搬送力伝達部材と当接して前記搬送力を付与する、駆動ローラにより、前記搬送力が付与されるように構成されており、
前記搬送力伝達部材における前記駆動ローラとの当接面は平坦面として形成されていることを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記搬送力伝達部材は、一端が前記トレイに接続されるリンク機構を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記搬送力伝達部材は、一端が前記トレイに接続されるアームであって、前記往復移動方向に対する傾き姿勢を変化させるように回動するアームを有していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項6】
請求項5に記載の記録装置であって、
前記アームの前記傾き姿勢の変化を案内するガイド部をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記ガイド部は、前記アームの他端に形成された被ガイド部と係合して、当該被ガイド部を前記傾き姿勢の変化に対応した軌跡に沿って案内することを特徴とする請求項6に記載の記録装置。
【請求項8】
前記被ガイド部と前記ガイド部との脱落を防止する脱落防止部を有することを特徴とする請求項7に記載の記録装置。
【請求項9】
第1の前記アームと第2の前記アームとを備えており、
前記トレイが前記第2ポジションに位置している状態において、前記第1のアームと前記第2のアームとは互いに重なることを特徴とする請求項5乃至請求項8のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項10】
第1の前記アームおよび第2の前記アームと、
前記トレイの前記往復移動を案内するために当該トレイを挟んで対向配置される第1のトレイ案内部材および第2のトレイ案内部材と、を備えており、
前記第1のトレイ案内部材は、前記第1のアームを案内する第1の案内部を有し、前記第2のトレイ案内部材は、前記第2のアームを案内する第2の案内部を有していることを特徴とする請求項5乃至請求項9のいずれか一項に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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