説明

記録装置

【課題】 連続紙を切断する切断装置を昇降させる際の負荷を低減するとともに、連続紙を切断するときのカットラインを直線にすることができる記録装置を提供する。
【解決手段】 連続紙101の搬送方向と交差する方向に配された直線状の固定刃31と、固定刃に対して搬送下流側から所定角度αをもって回転可能に当接する回転刃21とを有し、回転刃を固定刃に沿って移動させることにより連続紙を切断する切断装置8を備える。切断装置を連続紙を切断可能な切断位置と上方に退避した退避位置との間で移動させるための昇降手段40(50)を備える。昇降手段により切断装置を切断位置に移動させたとき、搬送方向と交差する方向に延びる支点を中心に切断装置を搬送上流側へ回動させることにより、切断装置を搬送上流側の位置規制部材42に当接させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロール紙等の連続紙を切断するための切断装置を備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写機等の記録装置であって、特にポスターなどを印刷する大判系の機種においては、幅の広いロール紙等の連続紙から定型サイズのカット紙まで、用途に応じて記録媒体を使い分けて画像を出力する構成のものが広く使用されている。そこで、特許文献1は、ユーザの利便性を考慮して、連続紙とカット紙との両方の記録媒体を自動切り換え可能な画像形成装置の構成が開示されている。記録装置は、搬送ローラにより画像形成部まで搬送された記録媒体に対し、画像情報に基づいて記録ヘッドにより画像を記録する。画像形成部の搬送下流側には記録媒体を装置本体外へ搬送する排紙ローラが配される。
【0003】
連続紙を用いる記録装置では、排紙ローラの搬送下流に記録媒体を切断するための切断装置が配され、その搬送下流に排紙口が配される。切断装置は回転刃と固定刃とを有する。固定刃は、記録媒体の通過パス下面の全幅にわたって搬送方向と交差する方向に配され、その固定刃に沿って回転刃を移動させることで記録媒体を切断する。切断装置は排紙ローラと排紙口の間に配され、その固定刃は用紙下側全幅に配されている。そのため、カット紙を用いる際の排紙の妨げとならないように、切断装置を退避位置へ移動させるための移動機構が設けられている。つまり、カット紙に記録する際は、あらかじめ回転刃および固定刃を含む切断装置全体を搬送路から上方に退避させ、排出ローラから排紙口へ直接搬送することで排紙不良を防止している。また、ロール紙(連続紙)に記録する際は、切断装置を排紙ローラと排紙口の間に戻し、切断装置によりページ毎に切断したロール紙をその自重で排出可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−110506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の切断装置は、ロール紙の搬送方向と交差する方向の刃先を有する固定刃と、固定刃の刃先に対して所定の角度をもって回転可能に当接する回転刃とで構成される。かかる構成では、回転刃は、ロール紙の搬送方向に対し角度を有することになり、ロール紙を切断するときに搬送上流側に向けて喰い込もうとする。そのため、切断装置は、回転刃の切断方向への移動に伴って、固定刃を含む装置全体が搬送上流側へ片寄る方向の力をロール紙から受けることになる。
【0006】
そこで、負荷を抑えながら切断装置を滑らかに昇降させるためには、昇降手段に切断装置をスムーズに摺動させるための僅かなガタ(隙間)が必要となる。一方、このようなガタの存在により、切断装置が搬送下流側に傾いた状態で切断動作を行うと、回転刃の移動に伴って切断装置が搬送上流側へ引っ張られた状態となる。そのため、切断装置の搬送方向における位置が切断動作の過程で変位する(あるいは不安定になる)おそれがある。ロール紙は、固定刃の刃先に沿って切断されるため、切断装置が切断動作の過程で変位すると、カットラインが直線にならず、切断開始近傍の位置でカットラインが曲がるおそれがある。
【0007】
本発明はこのような技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、連続紙を切断するための切断装置を昇降させる際の負荷を低減するとともに、連続紙を切断するときのカットラインを直線にすることができる記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、連続紙の搬送方向と交差する方向に配された直線状の固定刃と、該固定刃に対して搬送下流側から所定角度をもって回転可能に当接する回転刃とを有し、前記回転刃を前記固定刃に沿って移動させることにより連続紙を切断する切断装置と、前記切断装置を連続紙を切断可能な切断位置と上方に退避した退避位置との間で移動させるための昇降手段と、を備えた記録装置において、前記昇降手段により前記切断装置を前記切断位置に移動させたとき、搬送方向と交差する方向に延びる支点を中心に該切断装置を搬送上流側へ回動させることにより、該切断装置を搬送上流側の位置規制部材に当接させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、連続紙を切断するための切断装置を昇降させる際の負荷を低減するとともに、連続紙を切断するときのカットラインを直線にすることができる記録装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施形態に係る記録装置の切断装置が切断位置にあるときの状態を示す縦断面図
【図2】図1の記録装置の切断装置が退避位置にあるときの状態を示す縦断面図
【図3】切断装置の斜視図である。
【図4】回転刃と固定刃の位置関係を示す平面図
【図5】固定されていない状態で切断した場合の切断装置を示す平面図
【図6】切断装置が搬送路から上方に退避した位置にある状態を示す縦断面図
【図7】切断装置が切断位置にある状態を示す縦断面図
【図8】第2の実施形態に係る切断装置が搬送路から上方に退避した位置にある状態を示す縦断面図
【図9】第2の実施形態に係る切断装置が切断位置にある状態を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を具体的に説明する。なお、各図面を通して同一符号は同一または対応部分を示すものである。
〔第1の実施形態〕
図1は一実施形態に係る記録装置の切断装置が切断位置にあるときの状態を示す縦断面図である。図2は図1の記録装置の切断装置が退避位置にあるときの状態を示す縦断面図である。記録装置1は、所定サイズのカット紙と連続紙であるロール紙の両方の記録媒体を自動切り換え可能である。連続紙であるロール紙101は巻回された記録紙やプラスチックシートからなる記録媒体であり、カット紙102は一定寸法に裁断された記録紙やプラスチックシートからなる記録媒体である。これら連続紙およびカット紙としては種々の材質のものを使用することができ、材質を限定されるものではない。なお、図示の記録装置1は、画像情報に基づいて記録ヘッド70の吐出口から記録媒体へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置である場合を例示する。
【0012】
まず、図1を参照して、記録装置にロール紙が給紙され、切断装置により切断されるまでの一連の動作を説明する。連続紙であるロール紙101は、搬送手段としての一対のローラからなるロール紙給紙ローラ2により、搬送ローラ3へ搬送される。搬送ローラ3は、搬送手段としての一対のローラからなり、画像形成部へロール紙およびカット紙を搬送する。キャリッジ4は、記録ヘッド70を搭載し、主走査ガイドとしてのキャリッジシャフト5に沿って往復移動可能に案内支持されている。プラテン6は、画像形成部において記録媒体を裏面から案内支持し、記録ヘッド70と記録媒体とのギャップを保証している。排紙ローラ7および拍車7aからなる一対の回転体は、画像形成部を通して搬送されてくる記録媒体を排紙口71から装置本体外の排紙トレイ9へ案内するための搬送手段である。
【0013】
排紙ローラ7と排紙口71との間に切断装置8が配設されている。切断装置8は、回転刃21と固定刃31によりロール紙101を所定サイズに切断するためのものである。記録装置1には、連続紙(ロール紙)101を切断可能な搬送路に沿った切断位置と上方に退避した退避位置との間で切断装置8を昇降移動させる(昇降駆動する)ための昇降手段40(図6)が設けられている。ロール紙101に画像を記録するときは、切断装置8が切断位置に配されているかどうかを確認し、切断装置8が切断位置に配されていない場合は切断位置まで降下移動させてロール紙101を切断可能な状態にする。そして、ロール紙101をロール紙給紙ローラ2により解きながら搬送ローラ3へ搬送する。ロール紙101が搬送ローラ3のニップに到達するとロール紙給紙ローラ2はニップを開放した状態となる。次いで、ロール紙101は搬送ローラ3により画像形成部に搬送される。
【0014】
記録装置1には、CPU、メモリおよびI/O回路等を備えたコントローラからなる制御手段90が設けられている。この制御手段90は、内部メモリに予め格納された制御プログラムに従い、駆動モータや各種装置の動作を制御する。これにより、記録媒体(連続紙およびカット紙)の搬送・記録の動作を制御するとともに、画像データに基づいて記録ヘッド70の駆動を制御することにより、記録媒体に画像を記録していく。また、制御手段90は、切断装置8および昇降手段40(50)の動作を制御する。さらに、制御手段90は、その他の記録装置の全体の動作およびそのタイミングを制御する。
【0015】
画像形成部において、キャリッジ4の往動または復動による1ライン分のスキャンにより画像を形成すると、ロール紙101を搬送ローラ3により矢印Aの方向(搬送方向)に所定ピッチだけ送る。そこでキャリッジ4を再び移動させて次のラインの画像形成を行う。1ライン分の画像形成と所定ピッチの紙送りを交互に繰り返すことにより、ページ全体に画像が記録される。ロール紙の101の記録済み部は、排紙ローラ7により装置本体外の排紙トレイ9へ向けて搬送される。所定範囲(1ページ分)の記録が終了すると、ロール紙101は搬送ローラ3により所定の切断位置まで搬送される。切断装置8は、切断位置において、下側に配された固定刃31の上面に支持された記録媒体を、その上面から回転刃21により切断していくように構成されている。ロール紙101が切断位置まで搬送されると、排紙ローラ7と拍車7aのニップでロール紙101を挟持する。そして、記録されたロール紙101は、切断動作信号に基づいて、切断位置(下降位置)にある切断装置8の回転刃21と固定刃31によって切断される。切断動作の前に排紙ローラ7と拍車7aでロール紙101を挟持することにより、切断時におけるロール紙101の浮き上がりを防止することができ、正確にロール紙101を切断することができる。また、切断装置8は排紙ローラ7と排紙口との間に配されているため、切断されたロール紙101は自重により排紙トレイ9に排出される。記録媒体の下側に配される固定刃31の上面はプラテン6の通紙面より低位に位置し、排紙トレイ9の上面(載置面)は固定刃31の上面より低位に位置しており、したがって、これらはロール紙101が搬送方向に対して漸次低位に配されている。
【0016】
次に、図2を参照して、記録装置にカット紙が給紙され、記録されたカット紙が排紙トレイ9に排出されるまでの一連の動作について説明する。給紙カセット10はカット紙102を積載収納するためのものであり、装置本体に着脱可能になっている。給紙カセット10に収納されたカット紙102は、カット紙給紙ローラ11と分離ローラ12からなるローラ対により、1枚ずつ分離されて中間給紙ローラ13へ搬送される。中間給紙ローラ13は、搬送手段としての一対のローラからなり、カット紙102を搬送ローラ3へ搬送する。
【0017】
カット紙102に画像を記録するときは、切断装置8が搬送路から上方に退避した退避位置にあるか否かを確認し、退避位置にない場合は後述する昇降手段の駆動により退避位置まで上昇移動させてカット紙102の排紙を妨害しない状態にする。カット紙102は、カット紙給紙ローラ11と分離ローラ12により1枚ずつ中間給紙ローラ13に導かれ、さらに中間給紙ローラ13により搬送ローラ3に導かれる。そして、搬送ローラ3により画像形成部に搬送されたカット紙102に対し、ロール紙101の場合と同様に、記録ヘッド70による1ライン分の画像形成と所定ピッチの紙送りを交互に繰り返すことによりページ全体に画像を記録する。カット紙102は搬送ローラ3を抜ける前に排紙ローラ7と拍車7aのニップで挟持され、搬送ローラ3と同期駆動される排紙ローラ7により装置本体外へ向けて搬送される。画像記録を終了したカット紙102は、排紙ローラ7と拍車7aにより排紙口71へ直接搬送され、排紙トレイ9へ排出される。記録媒体をロール紙101とカット紙102に切り換え可能な記録装置1においては、以上のように、排紙ローラ7と排紙口71との間に切断装置8を配設し、切断装置8を搬送路上の切断位置と上方の退避位置との間で切り換えることにより、記録媒体の排紙性を向上させている。
【0018】
図3は切断装置8の斜視図である。図4は切断装置8の回転刃と固定刃の位置関係を示す平面図である。図5は切断装置が固定されていない状態で記録媒体を切断したときの当該切断装置の変位を例示する平面図である。次に図3、図4および図5を参照して、切断装置8について説明する。切断装置8は回転刃ユニット20と固定刃ユニット30を備えている。回転刃ユニット20は回転刃21と回転刃ホルダ22で構成されている。固定刃ユニット30は固定刃31とガイドレール32とスライダ33とプーリ34とベルト35などで構成されている。回転刃ユニット20は、両端のプーリ34、34の間に張架されたベルト35に連結されることでガイドレール32に沿って移動可能なスライダ33に固定されている。連結されている。
【0019】
ガイドレール32の上面に固定された固定刃31は、直線状をしており、記録媒体(連続紙)101の搬送方向と交差する方向(通常、直交する方向)に配されている。回転刃ホルダ22に保持された回転刃21は、固定刃31の搬送方向下流側に配され、固定刃31の刃先31aに対して搬送下流側から所定角度αをもって回転可能に当接するように保持されている。ガイドレール32は回転刃ユニット20を記録媒体の搬送方向と交差する矢印B方向に案内するように構成されており、その上面は記録媒体の通紙面と平行な平面部となっている。この平面部の上面に直線状の固定刃31が両面テープまたはスポット溶接などの固定手段で固定されている。固定刃31の搬送下流側の端縁には、記録媒体の搬送方向と交差(直交)する矢印B方向Bに刃先31aが設けられている。スライダ33はガイドレール32の内側の案内面に沿って移動可能であり、回転刃ユニット20はスライダ33に保持されている。スライダ33は両端部に配されたプーリ34、34に掛け渡されたベルト35に連結されており、したがって、不図示のモータによりベルト35を走行駆動して回転刃ユニット20を移動させることにより、回転刃21を固定刃31の刃先31aに当接させて回転させながら搬送方向と交差する方向(矢印B方向)に移動させることができる。
【0020】
ここで、回転刃21と固定刃31は協働して連続紙(ロール紙)101を切断するように配されており、ロール紙101のカットラインは直線状の固定刃の刃先31aと略一致する。回転刃21を切断方向(図4における矢印Bの右方向)へ移動させながらロール紙101を切断するとき、この回転刃21は、角度αで傾斜しているためにロール紙101の搬送上流側へ喰い込もうとする。そのため、回転刃21は、ロール紙101に対して搬送上流側から下流側に引き出す力を作用させながら、該ロール紙を切断することになる。したがって、回転刃21の切断方向(図4における矢印Bの右方向)への移動に伴い、該回転刃21はロール紙101から搬送上流側へ寄せ付ける方向の力(付勢力)をる力を受けることとなる。これにより、切断装置8は、その姿勢が図3中の矢印Fで示す方向に回動変位する方向の力(付勢力)を受けることになる。
【0021】
こうして切断装置8が矢印F方向に付勢されることから、図5に示すように、切断開始前に実線8aで示す位置にあった切断装置8は、ロール紙101を切断する時には点線8bで示すように搬送上流側へ変位した状態になる。つまり、切断途中の切断装置8は、点線8bで示すように寸法xだけ搬送上流側へ付勢された位置へ移動することになる。そのため、ロール紙101のカットライン101aは、図示のように、切断開始側の端縁近傍で寸法xだけ搬送上流側へ曲がった状態(または傾斜した状態)になる。なお、切断装置8の変位量である寸法xは、ロール紙101の厚みや剛度に依存して決まるものであり、厚くて剛度の高いロール紙101ほど大きくなる。
【0022】
図6は切断装置8が搬送路から上方に移動した退避位置にある状態を示す縦断面図である。図7は切断装置8が搬送路に沿った切断位置にある状態を示す縦断面図である。記録装置1には、切断装置8を、連続紙(ロール紙)101を切断可能な切断位置と上方に退避した退避位置との間で移動させるための昇降手段40が設けられている。昇降手段40は昇降駆動部材41と昇降レール42を有する。次に、昇降手段40による切断装置8の昇降移動について説明する。
【0023】
不図示のモータ等の駆動源により駆動される昇降手段40には、切断装置8の搬送上流側に配された昇降駆動部材41が設けられている。切断装置8には、搬送上流側へ突出する昇降ピン43が設けられている。昇降ピン43は、切断装置8の固定刃ユニット30に固定されており、昇降手段の昇降力を受けるための昇降入力部を構成している。昇降駆動部材41は、モータ等の駆動源からの駆動力を切断装置8に昇降力として伝達するための昇降駆動部を構成している。かかる構成により、切断装置8は、昇降手段40により、昇降ピン43を介して矢印Cおよび矢印D方向に昇降駆動される。昇降レール42は、切断装置8の搬送上流側に配され、切断装置8の昇降移動を案内するとともに搬送上流側への変位を限定するための位置規制部材を構成している。この昇降レール42は、切断装置8の固定刃ユニット30に設けられた昇降ガイド44を介して、切断装置8を切断位置と退避位置との間の昇降移動可能に案内するように配されている。切断装置8の下方には、切断装置8が図7に示す切断位置にあるときに該切断装置の自重を支持するための支持部45が配されている。この支持部45は、切断装置8の重心Gよりも搬送下流側に配され、搬送下流側に傾いた状態で切断位置に下降移動してきた切断装置8を搬送上流側にある昇降レール42からなる位置規制部材に向けて付勢する(回動させる)ためのものである。
【0024】
カット紙102に画像を記録する際、図6に示すように、切断装置8は、カット紙102の排紙を妨害しないように搬送路から上方に退避した退避位置に位置している。ロール紙101に画像を記録する際は、切断装置8が図6の退避位置にある場合は、昇降手段40によって切断装置8を矢印C方向に移動させ、図7に示すような搬送路に沿った切断位置まで下降させる。その際、摺動負荷を軽減させて滑らかに切断装置8を昇降移動させるためには、昇降手段40(その昇降レール42)と切断装置8(その昇降ガイド44)との間に僅かなガタ(間隙、ゆとり)が必要である。ガタが存在しない場合は、摺動負荷が著しく増大し、摺動不能もしくは摺動不安定になるおそれがある。一方、このようなガタを設ける場合は、切断装置8が搬送路から上方の退避位置に配されているとき、切断装置8は、昇降ガイド44の上面P1を回動支点として、上部が搬送下流側へ傾いた状態になる。つまり、切断装置8は、昇降ガイド44の上面P1によって形成される搬送方向と交差する方向に延びる支点を中心に回動可能に支持されている。そして、切断装置8は、昇降手段40により昇降させる際、側面下部が位置規制部材42に当接した傾き姿勢(回動変位した姿勢)で昇降することになる。
【0025】
そこで、退避位置にあった切断装置8が切断位置の近くまで下降してくると、切断装置8が搬送下流側に傾いた状態で、切断装置8の底面が支持部45に当接する。すると、切断装置8は、搬送方向と交差する方向に延びる回動支点を形成する昇降ガイド44の上面P1を回動支点(回動中心)として、底面の重心Gの搬送下流側の部位P2で支持部45からの支持反力を受けることになる。こうして切断装置8の底面P2が支持部45で支持されると、切断装置8の姿勢を支配していた回動支点が、昇降ガイド44の上面P1から、支持部45に当接している底面P2に変化する。この状態で昇降手段40により切断装置8がさらに下降させられると、支持部45が切断装置8の重心Gよりも搬送下流側に位置する。このため、支持部45に支持されている切断装置8は、その底面P2を回動支点として切断装置8の上部が搬送上流側へ移動する方向に回動する。この底面の回動支点P2は搬送方向と交差する方向に延びる回動支点を形成している。これにより、切断装置8の全体が底面P2を回動支点として搬送上流側へ回動する。そして、切断装置8は、切断位置では、その上面(上部の側面)P3が位置規制部材(昇降レール)42に当接し押し付けられた状態になる。これにより、切断装置8は、切断位置において、ガタを押さえられた状態で適正な姿勢に保持される。
【0026】
なお、切断装置8を切断位置(図7)から搬送路から上方の退避位置(図6)まで矢印D方向に上昇移動させる際には、上述した下降移動の場合と逆の作用を与えることができる。すなわち、上昇移動に伴って、切断装置8は搬送方向と交差する方向に延びる底面P2を回動支点として、搬送方向と交差する方向に延びる支点をなす切断装置8の上面P3が昇降レール42から離間しながら、その上部が搬送下流側へ移動する方向に傾く(回動する)。そして、昇降ガイド44の上面P1が昇降レール42に押し付けられると、切断装置8は搬送下流側に傾いたまま搬送路から上方に退避した図6に示す退避位置に到達する。
【0027】
以上説明した記録装置は、回転刃を固定刃に沿って移動させることにより連続紙を切断する切断装置8と、切断装置8を連続紙101を切断可能な切断位置(図7)と上方に退避した退避位置(図6)との間で移動させるための昇降手段40と、を備えている。そして、切断装置8は、連続紙101の搬送方向と交差する方向に配された直線状の固定刃31と、固定刃31に対して搬送下流側から所定角度αをもって回転可能に当接する回転刃21とを有する。そこで、昇降手段40により切断装置8を切断位置に移動させたとき、搬送方向と交差する方向に延びる支点を形成する昇降ガイド44の上面P1を中心に、切断装置8をその上部が搬送上流側へ移動する方向へ回動させる。これにより、切断装置8を搬送上流側の位置規制部材42に当接させるように構成されている。かかる構成によれば、連続紙101を切断するための切断装置8を昇降させる際の負荷を低減するとともに、連続紙を切断するときのカットラインを直線にすることができ、連続紙を容易に精確に切断することができる。
【0028】
すなわち、以上説明した実施形態によれば、切断装置8を切断位置と搬送路から上方に退避した退避位置との間で昇降移動させる際に、昇降手段40に切断装置8が摺動するための僅かなガタ(間隙、ゆとり)が設けられることになる。そのため、昇降移動の際の摺動負荷が軽減され、滑らかに切断装置8を昇降移動させることができる。また、切断装置8を切断位置に下降移動させる際、切断位置まで降下したところで、切断装置8を搬送上流側へ回動させるために、切断装置8の重心Gよりも搬送下流側に配した支持部45に当接させている。そのため、切断装置8を搬送上流側の位置規制部材としての(昇降レール)42に押し付けることにより、切断装置8のガタを押さえることができ、連続紙101のカットラインを直線にすることができ、連続紙101を容易に精確に切断することが可能になる。
【0029】
〔第2の実施形態〕
図8は第2の実施形態に係る切断装置が搬送路から上方に退避した位置にある状態を示す縦断面図である。図9は図8の切断装置が搬送路に沿った切断位置にある状態を示す縦断面図である。図8および図9において、第1の実施形態と同じ構成要素については、それぞれを同じ符号を示し、それらの詳細説明は省略する。記録装置1には、切断装置8を、連続紙(ロール紙)101を切断可能な切断位置と上方に退避した退避位置との間で移動させるための昇降手段50が設けられている。昇降手段50は、昇降駆動部材51と昇降レール42を有する。昇降駆動部材51は、昇降手段50の昇降力を切断装置8に伝達するための出力部材を構成している。昇降レール42は、切断装置8の昇降移動を案内するとともに搬送上流側への変位を規制する部材であり、案内部材とともに切断装置8の位置姿勢を規制するための位置規制部材を構成している。
【0030】
不図示のモータ等の駆動源により駆動される昇降手段50には、切断装置8の搬送上流側に配された昇降駆動部材51が設けられている。切断装置8には、搬送上流側へ突出する昇降ピン43が設けられている。昇降ピン43は、切断装置8の固定刃ユニット30に固定されており、昇降手段の昇降力を受けるための昇降入力部を構成している。昇降駆動部材51は、モータ等の駆動源からの駆動力を切断装置8に昇降力として伝達するための昇降駆動部を構成している。かかる構成により、切断装置8は、昇降手段50により、昇降ピン43を介して矢印Cおよび矢印D方向に昇降駆動される。昇降レール42は、切断装置8の搬送上流側に配され、切断装置8の昇降移動を案内するとともに搬送上流側への変位を限定するための位置規制部材を構成している。この昇降レール42は、切断装置8の固定刃ユニット30に設けられた昇降ガイド44を介して、切断装置8を切断位置と退避位置との間の昇降移動可能に案内するように配されている。切断装置8の下方には、切断装置8が図9に示す切断位置にあるときに該切断装置の自重を支持するための支持部55が配されている。支持部55は、切断装置8の昇降入力部を構成する昇降ピン43より搬送下流側に配されている。この支持部55は、切断装置8の重心Gよりも搬送下流側で切断装置8の底面を支持するように配置されており、搬送下流側に傾いた状態で切断位置に下降移動してきた切断装置8を搬送上流側にある昇降レール42からなる位置規制部材に向けて付勢する(回動させる)ためのものである。
【0031】
本実施形態に係る記録装置のその他の構成は、前述の第1の実施形態と同様である。次に、昇降手段50により切断装置8を矢印矢印CおよびDの方向に昇降移動させるときの動作について説明する。支持部55は、昇降駆動部である昇降駆動部材51の搬送下流側であって切断装置8の底面側に配され、切断位置において切断装置8の自重を支えるためのものである。切断装置8(その昇降ガイド44)と昇降手段50(その位置規制部材42)との間には、円滑な昇降移動を保証するためのガタ(間隙、あそぴ)が設けられている。そのため、切断装置8を昇降させる際の負荷を低減して円滑に移動させることができる。その一方で、切断装置8は、図8に示すように搬送路から上方の退避位置に位置するとき、昇降ガイド44の上面P1を搬送方向と交差する方向に延びる回動支点として上部が搬送下流側に傾いた状態になっている。
【0032】
切断装置8を図8の退避位置から図9の切断位置まで矢印C方向に下降させる際、切断装置8は昇降ガイド44の上面P1を搬送方向と交差する方向に延びる回動支点として搬送下流側に傾いた姿勢となり、切断装置8の側面下部が位置規制部材42に当接して摺動することになる。切断装置8が切断位置の近くまで下降してくると、切断装置8が搬送下流側に傾いた状態で、その底面が支持部55に当接し、切断装置8の自重が支持部55から支持反力で支持される状態になる。切断装置8の底面が支持部55で支持された状態でさらに昇降手段50による下降駆動が続けられると、昇降ピン(昇降入力部)43の上面P4は、搬送上流側に配された昇降駆動部材51(その押圧面からなる昇降駆動部)によって矢印C方向に押し下げられる。そのとき、切断装置8は、搬送方向と交差する方向に延びる回動支点となる底面P2(その支持部55との当接部)を中心に回動することになる。そのため、切断装置8は、支持部55に支えられている底面P2を中心に、昇降ピン43の上面43が位置規制部材42に当接するまで切断装置8全体が搬送上流側に回動する。
【0033】
これによって、切断装置8は、切断位置(図9)においては、回動支点をなす底面P2で支持されるとともに、切断装置8の上面P3が位置規制部材42に押し付けられた状態になる。したがって、切断装置8は、切断位置において、ガタを押さえられた正しい切断姿勢に保持されることになる。つまり、本実施形態では、切断装置8が切断位置にあるとき、昇降駆動部である昇降駆動部材51によって、昇降入力部である昇降ピン43の上面P4に昇降手段50の押し下げ力を作用させるように構成されている。そして、本実施形態では、昇降手段50により切断装置8を切断位置に移動させたとき、切断装置8は、切断位置において、搬送方向と交差する方向に延びる支点を中心に回動し、搬送上流側に位置する位置規制部材42に向けて付勢される。したがって、切断装置8は、底面P2を支点にして回動し、切断装置8の上面P3が位置規制部材42に当接することで正しい切断姿勢に保持されることになる。
【0034】
こうして、本実施形態でも、切断装置を昇降させるときは必要なガタを確保するとともに、切断位置においては、切断装置8を、搬送上流側の位置規制部材42に付勢することによりガタを低減もしくは無くした状態で適正な姿勢で保持することができる。したがって、本実施形態によっても、連続紙101を切断するための切断装置8を昇降させる際の負荷を低減するとともに、連続紙を切断するときのカットラインを直線にすることができ、連続紙を容易に精確に切断することが可能となる。なお、本実施形態においても、切断装置8を図9の切断位置から図8の退避位置まで矢印D方向に上昇移動させる際は、第1の実施の形態と同様、上述の下降移動の際とは逆の動作および作用によって、負荷を低減した状態で円滑に移動させることができる。また、本発明に係る記録装置は、切断装置全体が移動する構成であれば、上述の実施形態に限定されることなく種々の態様で実施できるものであり、本発明はこれらをその技術的範囲に含むものである。
【0035】
なお、以上の実施形態では、インクジェット記録装置を例に挙げて説明したが、本発明は、熱転写式、レーザービーム式、加熱式、ワイヤドット式など、その他の方法で画像形成する画像形成装置においても同様に適用可能である。また、本発明は、記録ヘッドによる主走査と搬送動作による副走査とを交互に繰り返して記録を行うシリアル方式、搬送動作による副走査のみで連続的に記録を行うライン方式など、記録動作の方式に関わらず、同様に適用可能である。また、本発明は、記録ヘッドの数、使用するインクの種類や性状数などに関わらず、同様に適用可能である。また、本発明は、記録媒体の材質として、紙、プラスチックフィルム、印画紙、不織布など、種々の異なる材質を使用する場合にも、同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 記録装置
3 搬送ローラ
7 排紙ローラ
8 切断装置
9 排紙トレイ
20 回転刃ユニット
21 回転刃
30 固定刃ユニット
31 固定刃
40 昇降手段
41 昇降駆動部(昇降駆動部材)
42 位置規制部材(昇降レール)
43 昇降入力部(昇降ピン)
44 昇降ガイド
45 支持部
50 昇降手段
51 昇降駆動部(昇降駆動部材)
55 支持部
70 記録ヘッド
90 制御手段
101 連続紙(ロール紙) 102 カット紙
101a カットライン
P1 昇降ガイドの上面
P2 底面 P3 昇降ピンの上面
P4 昇降ピンの押し下げ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続紙の搬送方向と交差する方向に配された直線状の固定刃と、該固定刃に対して搬送下流側から所定角度をもって回転可能に当接する回転刃とを有し、前記回転刃を前記固定刃に沿って移動させることにより連続紙を切断する切断装置と、
前記切断装置を連続紙を切断可能な切断位置と上方に退避した退避位置との間で移動させるための昇降手段と、を備えた記録装置において、
前記昇降手段により前記切断装置を前記切断位置に移動させたとき、搬送方向と交差する方向に延びる支点を中心に該切断装置を搬送上流側へ回動させることにより、該切断装置を搬送上流側の位置規制部材に当接させることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記切断装置が前記切断位置にあるときに該切断装置の自重を該切断装置の重心位置より搬送下流側で支持する支持部を有することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記昇降手段の昇降力を受けるために前記切断装置に設けられた昇降入力部と、前記切断装置が前記切断位置にあるときに前記昇降入力部に前記昇降手段の押し下げ力を作用させる昇降駆動部と、前記切断装置が前記切断位置にあるときに該切断装置を支持する支持部と、を有し、前記支持部が前記昇降入力部よりも搬送下流側に位置することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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