説明

記録装置

【課題】シンプルな機構を用いて記録ヘッドと被記録媒体との距離を適切且つ確実に確保し、高品質の記録を実行可能にすること。
【解決手段】被記録材を下流側へと1枚ずつ給送する被記録材給送装置2と、被記録材に記録を行う記録ヘッド13と、キャリッジガイド軸12に沿って主走査方向に往復移動可能な記録ヘッドを搭載したキャリッジ10と、被記録材を搬送する搬送駆動ローラ19aおよび搬送従動ローラ19bを備えた搬送ローラ19と、第1ポジション及び第2ポジションとをとり得る被記録材スタッカ50とを備えた記録装置であって、被記録材スタッカを変位させることにより、連動して前記キャリッジガイド軸を変位させる第1リンク機構を備え、被記録材スタッカが第1ポジションをとることにより、キャリッジガイド軸は連動して上方に変位し、かつ被記録材スタッカが第1ポジションをとっている限りキャリッジガイド軸は下降不能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録用紙などの被記録材にインクを吐出して記録を行うインクジェット式記録装置等の記録装置、更には被噴射媒体に液体噴射を実行して液体を付着させる液体噴射装置に関する。
【0002】
ここで、液体噴射装置とは、インクジェット式記録ヘッドが用いられ、該記録ヘッドからインクを吐出して被記録媒体に記録を行うプリンタ、複写機およびファクシミリ等の記録装置に限らず、インクに代えてその用途に対応する液体を前記記録ヘッドに相当する液体噴射ヘッドから被記録媒体に相当する被噴射媒体に噴射して、前記液体を前記被噴射媒体に付着させる装置を含む意味で用いる。
液体噴射ヘッドとして、前記記録ヘッドの他に、液晶ディスプレー等のカラーフィルター製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレーや面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料噴射ヘッド等が挙げられる。
【背景技術】
【0003】
記録装置又は液体噴射装置の1つとして、インクジェットプリンタ(以下「プリンタ」という。)200があり、このプリンタ200は、図10に示す如く、被記録材の搬送経路の上流側に設けられ、傾斜姿勢で堆積保持されている被記録材を下流側へと1枚(1単位)ずつ給送する被記録材給送装置2と、該被記録材給送装置2の下流側に配設され、被記録材に記録を行う記録ヘッドを搭載したキャリッジ(図示せず)と、回動することにより被記録材を搬送する搬送駆動ローラおよび搬送従動ローラからなる搬送ローラ(図示せず)とを備えている。
【0004】
そして、この被記録材給送装置2によって用紙Pを傾斜姿勢で堆積保持し、1枚ずつ湾曲させながら前方側へ給送し、前方側から略水平に排出させる第1の給送経路と、このような湾曲した給送経路を利用不能な剛性記録材を装置本体3の前面から略水平に給送し、再び前面から排出させる第2の給送経路とを有している。
【0005】
前記第2の給送経路は、例えば、CD−R(記録可能なコンパクトディスク)などの剛性記録材に対して記録を行う場合に使用されるが、この場合には、この剛性記録材をプリンタ200の前面側から前記記録ヘッドに向けて手差し給送する為の給紙トレーと、記録が行われて排紙される剛性記録材を受ける為の排紙トレーとを兼用する専用の剛性記録材用給排紙トレー202を、記録が行われて排紙される用紙を受ける為の排紙トレー201の上部に取り付ける必要があった。
【0006】
また、剛性記録材に対して記録を実行するには、記録ヘッドを搭載するキャリッジを上方に変位させて、この剛性記録材との距離を調節して、記録ヘッドと当該剛性記録材とを非接触とすることが必要である。このために、キャリッジガイド軸を変位させて、被記録材とのギャップを調節するPG操作レバー203が設けられており、ユーザーがこのPG操作レバー203を操作することが必要であって、被記録材に応じてこのPG操作レバー203を操作することが煩雑であった。さらに、剛性記録材の記録中においても、このPG操作レバー203は操作可能であるため、予期せぬ外力によってPG操作レバー203が作用してしまい、キャリッジが下降することで剛性記録材と接触し、記録ヘッド等を破損する虞があった(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−192782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような問題に鑑みなされたものであって、その目的は、シンプルな機構を用いて、記録ヘッドと被記録媒体との距離を適切且つ確実に確保し、高品質の記録を実行可能な記録装置さらには液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の第1の態様に係る記録装置は、被記録材の搬送経路の上流側に設けられ、傾斜姿勢で堆積保持されている前記被記録材を下流側へと1枚ずつ給送する被記録材給送装置と、該被記録材給送装置の下流側に配設され、前記被記録材に記録を行う記録ヘッドと、キャリッジガイド軸に沿って主走査方向に往復移動可能な、該記録ヘッドを搭載したキャリッジと、回動することにより前記被記録材を搬送する搬送駆動ローラおよび搬送従動ローラを備えた搬送ローラと、略水平な被記録材載置面上から被記録材を略水平のまま前記記録ヘッド下へ給送し、且つ、前記記録ヘッド下から前記被記録材載置面上へ略水平のまま排出する、該被記録材の給排出経路を形成する第1ポジションと、前記被記録材給送装置によって給送された被記録材が排出され、この被記録材をスタックする、前記第1ポジションより低く位置し、前記被記録材載置面が傾斜状態となる第2ポジションと、をとり得る被記録材スタッカと、を備えた記録装置であって、前記被記録材スタッカを変位させることにより、連動して前記キャリッジガイド軸を変位させる第1リンク機構を備え、前記被記録材スタッカが第1ポジションをとることにより、前記キャリッジガイド軸は連動して上方に変位し、かつ、該被記録材スタッカが第1ポジションをとっている限り、該キャリッジガイド軸は下降不能に構成されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の第2の態様に係る記録装置は、被記録材の搬送経路の上流側に設けられ、傾斜姿勢で堆積保持されている被記録材を下流側へと1枚ずつ給送する被記録材給送装置と、該被記録材給送装置の下流側に配設され、被記録材に記録を行う記録ヘッドと、キャリッジガイド軸に沿って主走査方向に往復移動可能な、該記録ヘッドを搭載したキャリッジと、回動することにより被記録材を搬送する搬送駆動ローラおよび搬送従動ローラを備えた搬送ローラと、前記被記録材給送装置によって給送不可能な剛性記録材を、略水平な被記録材載置面上から前記記録ヘッド下へ真っ直ぐに給送し、且つ、前記記録ヘッド下から前記被記録材載置面上へ真っ直ぐに排出する直線的な、被記録材の給排出経路を形成可能な第1ポジションと、前記被記録材給送装置によって給送可能な被記録材が排出され、この被記録材をスタックする、前記第1ポジションより低く位置し、被記録材載置面が傾斜状態となる第2ポジションと、をとり得る被記録材スタッカと、を備えた記録装置であって、前記被記録材スタッカを変位させることにより、連動して前記キャリッジガイド軸を変位させる第1リンク機構を備え、前記被記録材スタッカが第1ポジションをとることにより、前記キャリッジガイド軸は連動して上方に変位し、かつ、該被記録材スタッカが第1ポジションをとっている限り、該キャリッジガイド軸は下降不能に構成されていることを特徴とする。
【0011】
従来、被記録材としての用紙を給送する被記録材給送装置を用いての給送が不可能な、例えば、CD−Rなどの剛性記録材に対して記録を行うには、この剛性記録材をプリンタ前面側から記録ヘッドに向けて手差し給送する為の給紙トレーと、記録が行われて排紙される剛性記録材を受ける為の排紙トレーとを兼用する専用の剛性記録材用給排紙トレーを、記録が行われて排紙される用紙を受ける為の排紙トレーの上部に取り付ける必要があった。
【0012】
また、剛性記録材に対して記録を実行するには、キャリッジガイド軸を変位させて、被記録材とのギャップを調節するPG操作レバーが設けられており、ユーザーがこのPG操作レバーを操作することが必要であって、被記録材に応じてこのPG操作レバーを操作することが煩雑であるとともに、剛性記録材に対する記録中に、予期せぬ外力によってPG操作レバーが作用してしまい、キャリッジが下降することで剛性記録材と接触し、記録ヘッド等を破損する虞があった。
【0013】
しかし、本発明によれば、前記被記録材スタッカを変位させることにより、連動して前記キャリッジガイド軸を変位させる第1リンク機構を備えているため、例えば、CD−R(書き込み可能なコンパクトディスク)などの剛性のある剛性記録材の記録を、容易に、かつ確実に実行することができる。すなわち、被記録材スタッカを、剛性記録材を記録する際の第1ポジションに変位させることにより、キャリッジガイド軸が連動して上方に変位するため、記録ヘッドと剛性記録材とが接触することがなく、また、従来のPG操作レバーが不要となり、ユーザーが行う操作を減らすことができる。
【0014】
また、前記被記録材スタッカが第1ポジションをとることにより、前記キャリッジガイド軸が連動して上方に変位し、かつ、該被記録材スタッカが第1ポジションをとっている限り、該キャリッジガイド軸は、下降不能に構成されているため、記録の実行中においても、剛性記録材と記録ヘッドとが接触することがなく、記録ヘッドを破損等する虞がなく、さらに、予期せぬ外力によってキャリッジガイド軸が下降する虞もない。
【0015】
さらに、被記録材スタッカが、従来の剛性記録材用給排紙トレーの機能をも発揮するため、この剛性記録材用給排紙トレーが不要となり、コストダウンを図ることができるとともに、この剛性記録材用給排紙トレーの非使用時に保存等する必要もなくなるため、従来要していた保存スペース等の手間が不要となる。
【0016】
また、本発明の第3の態様に係る記録装置は、前記第1の態様または第2の態様において、操作部を操作することにより、前記搬送従動ローラを変位させて、該搬送従動ローラが前記搬送駆動ローラに当接した当接状態と、上方に退避した退避状態とを切り換える搬送従動ローラ切り換え手段を備えていることを特徴とする。
【0017】
この特徴によれば、操作部を操作することにより、前記搬送従動ローラを変位させて、該搬送従動ローラが前記搬送駆動ローラに当接した当接状態と、上方に退避した退避状態とを切り換える搬送従動ローラ切り換え手段を備えているため、ユーザーが被記録材給送装置から供給される用紙に対して記録を実行する際には当接状態とすることにより、この用紙を確実に搬送することができる。また、剛性記録材に対して記録を実行する際には、搬送従動ローラを一旦退避状態とすることにより、この剛性記録材を記録ヘッド下に供給し、その後の記録を確実に行うことができる。
【0018】
また、本発明の第4の態様に係る記録装置は、前記第3の態様において、前記搬送従動ローラ切り換え手段は、前記被記録材スタッカが第1ポジションをとっているときのみ、駆動可能となるように構成されていることを特徴とする。
【0019】
例えば、CD−Rなどの剛性記録材に対して記録を実行するとき、まず、被記録材スタッカを第1ポジションに位置させて、CD−Rを搭載したCDRトレーを、該被記録材スタッカの上面である被記録材載置面にセットする。そして、プリンタ前面側から手差しで給送するが、このとき搬送従動ローラが搬送駆動ローラに当接した当接状態では、該CDRトレーを搬送ローラで狭圧することができず、搬送することが不能である。
【0020】
しかし本発明の特徴によれば、前記搬送従動ローラ切り換え手段は、前記被記録材スタッカが第1ポジションをとっているときのみ、駆動可能となるように構成されているため、被記録材スタッカを第1ポジションに変位させたのち、まず、搬送従動ローラ切り換え手段を駆動させて、搬送従動ローラを一旦退避状態としてから、該CDRトレーを手差しする。そして、少なくとも搬送ローラで狭圧可能となってから、搬送従動ローラ切り換え手段を駆動させて、搬送従動ローラを当接状態とすることにより、このCDRトレーは搬送ローラに狭圧されて、確実に搬送することが可能となる。
【0021】
また、本発明の第5の態様に係る記録装置は、前記第3の態様または第4の態様において、前記被記録材スタッカのとるポジションに応じて、前記搬送従動ローラ切り換え手段の駆動を規制する規制手段を備えていることを特徴とする。
【0022】
この特徴によれば、前記被記録材スタッカのとるポジションに応じて、前記搬送従動ローラ切り換え手段の駆動を規制する規制手段を備えているため、ユーザーがその操作を間違えることなく、多種類の被記録材に対して最適な条件で、確実に記録を実行することができる。
【0023】
また、本発明の第6の態様に係る記録装置は、前記第5の態様において、前記規制手段は、前記被記録材スタッカが第2ポジションをとっているときには、前記搬送従動ローラが当接状態のみをとり得るように構成されていることを特徴とする。
【0024】
被記録材スタッカが第2ポジションに位置する際には、記録の行われる被記録材は、プリンタの後方側にある被記録材給送装置から供給され、搬送されて、記録が行われた後に、排出されて被記録材スタッカの被記録材載置面上にスタックする。すなわち、被記録材スタッカが第2ポジションに位置する限り、搬送ローラの搬送従動ローラを退避状態とする必要はなく、用紙を搬送可能な当接状態にあることが必要となる。
【0025】
そこで本発明では、前記規制手段は、前記被記録材スタッカが第2ポジションをとっているときには、前記搬送従動ローラが当接状態のみをとり得るように構成されているため、誤って搬送従動ローラが退避状態となり、被記録材給送装置から給送された被記録材を搬送ローラで狭圧することができずに、搬送することができなくなるという事態を生じることがない。すなわち、被記録材給送装置から給送された用紙を、確実に被記録材スタッカ側に搬送することが可能である。
【0026】
また、本発明の第7の態様に係る記録装置は、前記第3の態様から第6の態様のいずれかにおいて、前記被記録材スタッカが第1ポジションをとり、かつ、前記搬送従動ローラが退避状態にある場合において、該被記録材スタッカを第2ポジションへと変位させる際に、該搬送従動ローラが当接状態となるように、前記搬送従動ローラ切り換え手段に作用する、押し戻し手段を備えていることを特徴とする。
【0027】
被記録材スタッカが第2ポジションに位置する際には、被記録材としての用紙は被記録材給送装置側から供給され、搬送されて、記録が行われた後に、該被記録材スタッカの被記録材載置面上にスタックする。すなわち、被記録材スタッカが第2ポジションに位置する限り、搬送ローラは剛性記録材を搬送することがないため、搬送従動ローラは退避状態をとることなく、当接状態であることが必要である。
【0028】
そこで本発明では、前記被記録材スタッカが第1ポジションをとり、かつ、前記搬送従動ローラが退避状態にある場合において、該被記録材スタッカを第2ポジションへと変位させる際に、該搬送従動ローラが当接状態となるように、前記搬送従動ローラ切り換え手段に作用する、押し戻し手段を備えているため、被記録材スタッカが第2ポジションに位置する限り、搬送従動ローラを確実に当接状態とすることができる。
【0029】
すなわち、例えば、被記録材スタッカを第1ポジションに位置させて、剛性記録材に記録を実行した後に、該被記録材スタッカを第2ポジションに変位させて、被記録材給送装置から給紙された被記録材に記録を実行しようとした際、搬送従動ローラが退避状態であると、この被記録材を適切に搬送することができなくなる事態を生じる虞がある。しかし、本発明では、このような事態を生じることがなく、該被記録材スタッカを第2ポジションへと変位させる際に、搬送従動ローラを確実に当接状態とすることができる。
【0030】
また、本発明の第8の態様に係る記録装置は、前記第7の態様において、前記押し戻し手段は、前記規制手段と同一の部材で構成されていることを特徴とする。この特徴によれば、記録装置の内部設計を、簡易な構造、少ない部品数とすることができ、その設計が容易となり、さらに、コストの低減を図ることができる。
【0031】
また、本発明の第9の態様に係る記録装置は、前記第1の態様から第8の態様のいずれかにおいて、前記キャリッジガイド軸は、当該キャリッジガイド軸の両軸端が偏心機構を介してフレームに軸支されており、前記第1リンク機構は、前記被記録材スタッカと係合した作動部材と、該作動部材に連動して駆動し、前記偏心機構を回動させる動力伝達部材と、を備え、前記被記録材スタッカを変位させることによって、連動して前記キャリッジ軸を変位させて、前記記録ヘッドと被記録材とのギャップを調節するように構成されていることを特徴とする。この特徴によれば、簡易な構造ながら、確実にキャリッジを変位させることができる。
【0032】
また、本発明の第10の態様に係る記録装置は、前記第3の態様から第9の態様のいずれかにおいて、前記搬送従動ローラは、上流側を回動中心として下流側が上下に揺動可能な従動ローラホルダに軸支されており、前記搬送従動ローラ切り換え手段は、前記従動ローラホルダに当接可能なカムを有するカム回動軸を備え、前記操作部を操作することにより、該回動軸を回動させて、前記カムを前記従動ローラホルダの上流側のカムフォロアに当接および当接解除させるカム機構によって、該従動ローラホルダの揺動を利用して、前記搬送従動ローラの退避状態および当接状態とを切り換えるものであることを特徴とする。この特徴によれば、簡易な構造ながら、確実に搬送従動ローラの当接状態と退避状態とを切り換えることができる。
【0033】
また、本発明の第11の態様に係る記録装置は、前記第9の態様または第10の態様のいずれかにおいて、前記作動部材は、内部に空間部が設けられ、被記録材給送経路下流側から視て上に凸したU字型に形成されており、該空間部に前記操作部が配設されていることを特徴とする。
【0034】
この特徴によれば、作動部材は、被記録材給送経路下流側から視て、内部に空間部が設けられ、上に凸したU字型に形成されており、該空間部に前記操作部が配設されているため、より一層の省スペース化を図ることができるとともに、この作動部材を、簡易な構造ながら、操作部の駆動を規制する規制手段として確実に作用させることができる。
【0035】
また、本発明の第12の態様に係る記録装置は、前記第3の態様から第11の態様のいずれかにおいて、前記搬送従動ローラ切り換え手段は、前記第1リンク機構の動きに連動して、駆動可能であることを特徴とする。
この特徴によれば、例えば、ユーザーが被記録材スタッカのポジションを変位させるだけで、被記録材の記録に最適となる条件を適宜設定することができる。
【0036】
また、本発明の第13の態様に係る液体噴射装置は、被噴射媒体の搬送経路の上流側に設けられ、傾斜姿勢で堆積保持されている前記被噴射媒体を下流側へと1単位ずつ給送する被噴射媒体給送装置と、該被噴射媒体給送装置の下流側に配設され、前記被噴射媒体に液体噴射を実行する液体噴射ヘッドと、キャリッジガイド軸に沿って主走査方向に往復移動可能な、該液体噴射ヘッドを搭載したキャリッジと、回動することにより前記被噴射媒体を搬送する搬送駆動ローラおよび搬送従動ローラを備えた搬送ローラと、略水平な被噴射媒体載置面上から被噴射媒体を略水平のまま前記液体噴射ヘッド下へ給送し、且つ、前記液体噴射ヘッド下から前記被噴射媒体載置面上へ略水平のまま排出する、該被噴射媒体の給排出経路を形成する第1ポジションと、前記被噴射媒体給送装置によって給送された被噴射媒体が排出され、この被噴射媒体をスタックする、前記第1ポジションより低く位置し、前記被噴射媒体載置面が傾斜状態となる第2ポジションと、をとり得る被噴射媒体スタッカと、を備えた液体噴射装置であって、前記被噴射媒体スタッカを変位させることにより、連動して前記キャリッジガイド軸を変位させる第1リンク機構を備え、前記被噴射媒体スタッカが第1ポジションをとることにより、前記キャリッジガイド軸は連動して上方に変位し、かつ、該被噴射媒体スタッカが第1ポジションをとっている限り、該キャリッジガイド軸は下降不能に構成されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係るプリンタの側断面図。
【図2】同プリンタの第1の搬送経路を使用して用紙に記録をしている状態を示す要 部拡大側断面図。
【図3】同プリンタの第2の給送経路を使用して剛性記録材を記録している状態を示 す要部拡大側断面図。
【図4】同プリンタの前面側から視た部分省略要部斜視図。
【図5】図4とほぼ同方向から視た部分省略要部斜視図。
【図6】同プリンタの後方側から視た部分省略要部斜視図。
【図7】本実施形態における第1リンク機構及び第2リンク機構の説明に供する部分 省略要部側面図。
【図8】本発明に係るプリンタの動作説明図。
【図9】本発明に係るプリンタの動作説明図。
【図10】従来のプリンタの説明に供する図面であって、(A)は正面図、(B)は 剛性記録材用給排紙トレーを取り付けた状態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面に基づいて本発明に係る液体噴射装置の一実施形態について、該液体噴射装置の一例であるインクジェットプリンタを取り上げて説明する。
【0039】
<インクジェットプリンタの全体構成>
まず、図1から図3を参照しつつ、本実施形態の記録装置としてのインクジェットプリンタ(以下「プリンタ」という。)100について説明する。ここで、図1は、プリンタ100の側断面図であり、図2は、第1の搬送経路「マル1」(この明細書で「マル1」とは図1及び図2に記載されているように数字の「1」を丸で囲ったものを指すことにする。)を使用して用紙に記録を実行している状態を示す要部拡大側断面図であり、図3は、第2の給送経路「マル2」(この明細書で「マル2」とは図3に記載されているように数字の「2」を丸で囲ったものを指すことにする。)を使用して剛性記録材を記録を実行している状態を示す要部拡大側断面図である。
なお、ここでは、被記録材給送装置としての給紙装置2を用いて湾曲姿勢で給紙可能な被記録材を「用紙P」と、湾曲姿勢で給排出不可能な被記録材を「剛性記録材G」とし、更にこれらを合わせて「被記録材」とすることがある。
【0040】
プリンタ100は、その上流側に用紙Pを供給する給紙装置2が設けられ、この給紙装置2によって用紙Pを傾斜姿勢で堆積保持し、1枚ずつ湾曲させながら下流側へ給送し、前方側から略水平に排出させる第1の給送経路「マル1」(図1及び図2)と、このような湾曲した給送経路を利用不可能な剛性記録材Gを前面側から略水平に給送し、再び前面から排出させる第2の給送経路「マル2」(図3)とを備えている。
【0041】
まず、第1の給送経路「マル1」を使用した給紙動作について、図1及び図2を参照しつつ説明し、適宜図3を参照して構成部材の動作についても説明する。
給紙装置2は、ホッパ16を備え、該ホッパ16に用紙Pを傾斜姿勢で複数枚堆積保持している。ホッパ16は、その上流側に回動支点(図示せず)を備え、該回動支点を中心に回動することにより、側面視略D形の給紙ローラ14に向けて離間及び圧接動作を行うことができるように構成されている。堆積保持されている用紙Pは、ホッパ16の給紙ローラ14に向けての圧接動作によって押し上げられ、用紙Pの最上位のものが給紙ローラ14と圧接する。この状態において、給紙ローラ14が回動することにより該用紙Pが下流側へと給紙されるようになっている。
【0042】
給紙ローラ14から下流の下方には、板状体の用紙ガイド15がほぼ水平に設けられ、給紙装置2から給紙された用紙Pの先端が該用紙ガイド15に当接し、なめらかに、湾曲されて下流側へと案内される。
【0043】
用紙ガイド15より下流には図示しない駆動手段によって回転駆動する搬送駆動ローラ19aと、この搬送駆動ローラ19aに当接して従動回転する搬送従動ローラ19bとから構成されている搬送ローラ19が配設されており、用紙Pは、該搬送ローラ19によって狭圧されて、下流側に搬送されるようになっている。搬送駆動ローラ19aは、主走査方向に長い棒状のローラで構成されており、一方、搬送従動ローラ19bは、主走査方向に短く、かつ主走査方向に所定の間隔で複数個配設されている。
【0044】
この搬送従動ローラ19bは、搬送従動ローラホルダ18の下流側において軸支され、当該搬送従動ローラホルダ18は、回動軸18aを中心に回動可能に設けられ、かつ、ねじりコイルバネ(図示せず)によって、搬送従動ローラ19bが常に搬送駆動ローラ19aに圧接した、後述する当接状態となるように回動付勢されている。
【0045】
なお、この搬送従動ローラ19bは、後述する搬送従動ローラ切り換え手段としての第2リンク機構を駆動させることによって、搬送従動ローラホルダ18が、その回動支点18aを中心に回動することで、搬送駆動ローラ19bと当接した当接状態(図2)と、上方に退避した退避状態(図3)とを切り換えることができるように構成されている。
【0046】
より具体的には、カム回動軸31に、カム部36が搬送従動ローラホルダの上流側のカムフォロア部18bと当接するように設けられており、このカム回動軸31が回動することにより、該カム部36がカムフォロア部18bに上方から当接して、搬送従動ローラホルダ18が回動支点18aを中心に回動することによって、搬送従動ローラ19bが上方に退避して、図3に示す如く退避状態となる。そして、カム部36のカムフォロア部18bに対する当接が解除されると、搬送従動ローラ19bは、ねじりコイルバネ(図示せず)によって、搬送駆動ローラ19aに向けて回動付勢されて、図2に示し如く当接状態となる。なお、カム回動軸31を回動させる第2リンク機構の構成については、後に説明する。
【0047】
さらに下流側には、用紙に記録を行う記録部26が構成されている。該記録部26は、プラテン28及び記録ヘッド13が、上下に対向するように配設されている。該プラテン28は、主走査方向に長く構成されており、記録部26に搬送されてきた用紙Pを下側から支持することができるようになっている。
【0048】
記録ヘッド13は、キャリッジ10の底部に設けられ、該キャリッジ10は主走査方向に延びるキャリッジガイド軸12によってガイドされながら主走査方向に往復移動することができる。また、キャリッジ10は、例えばイエロー、マゼンダ、シアン、ブラック等のインクカートリッジ11を備えており、フルカラー記録を実行することができるように構成されている。
【0049】
なお、プラテン28と記録ヘッド13との距離(以下「PG」という。)は、記録精度を左右する重要な要素であり、そのため被記録材の厚みに応じて適宜調節する必要がある。従って、キャリッジガイド軸12を上下方向に変位させるPG調整手段としての第1リンク機構を備えている。この第1リンク機構の構成については、後に説明する。
【0050】
記録部26より下流側は、プリンタ100における用紙Pの排紙部となっていて、図示しない駆動手段によって回転駆動される排紙駆動ローラ20aと、該排紙駆動ローラ20aに軽く圧接することによって従動回転する排紙従動ローラ20bとからなる排紙ローラ20を備えている。そして、記録部26で記録が行われた用紙Pは、排紙ローラ20に狭圧されつつ、排紙駆動ローラ20aが回転(正転)することにより被記録材スタッカ50上に排出されるようになっている。
【0051】
排紙従動ローラ20bは、その外周に複数の歯を有する歯付きローラであり、排紙従動ローラホルダ23によって自由回転可能に軸支されている。この排紙従動ローラホルダ23は、主走査方向に長い板状体からなり、用紙Pの排紙経路を側視して記録ヘッド13の下流近傍から下流に向かって略水平に延びる排紙従フレーム25に固設されている。そして、該排紙従フレーム25は同様に主走査方向に長く、かつ記録ヘッド13の下流近傍から下流に向かって略水平に延びる板状体からなる排紙主フレーム24に、コイルバネ27によって上方から圧接するような状態で取り付けられている。
【0052】
排紙従動ローラ20bの上流には排紙補助ローラ22が設けられ、用紙Pは、該排紙補助ローラ22によってやや下方に押しつけられるようになっている。また、搬送従動ローラ19bは、搬送駆動ローラ19aよりその軸芯位置がやや下流側に配設されていて、更に、排紙従動ローラ20bは、排紙駆動ローラ20aよりその軸芯位置がやや上流側に配設されている。このような構成によって、用紙Pは、搬送ローラ19と排紙ローラ20との間において、僅かに下に凸となる湾曲状態となり、記録ヘッド13に対向する位置にある用紙Pはプラテン28に押しつけられ、これにより用紙Pの浮き上がりが防止され、正常に記録が実行されるようになっている。
【0053】
なお、排紙補助ローラ22は、排紙従動ローラ20bと同様に歯付きローラから構成されており、排紙補助ローラホルダ21に軸支されている。また、該排紙補助ローラホルダ21は、前述した排紙従動ローラホルダ23と同様に排紙従フレーム25に固設されている。
【0054】
また、排紙従フレーム25は、後述するホルダ回動軸29に設けられたカム29aが回動して、下側から当接することにより、その上流側25cを回動中心として、回動することができるようになっている。すなわち、排紙従フレーム25は、排紙主フレーム24の直近上側に平行である状態(図2)と、回動してその下流側が浮き上がった状態(図3)とを、とることができるように構成されている。
【0055】
このような構成により、排紙従フレーム25に固設されている排紙従動ローラホルダ23及び排紙補助ローラホルダ21が、排紙従フレーム25とともに回動することにより、排紙従動ローラ20b及び排紙補助ローラ22が、上方に退避することができるようになっている。これにより、図3に示す如く、被記録材が厚手なもの(剛性記録材G)であって、例えば、CD−Rである場合に生じる虞のある、以下のような不具合を防止することができる。上述した排紙従動ローラ20b及び排紙補助ローラ22は、歯付きローラであるため、この歯がCD−Rの記録面に点接触して、このCD−Rの記録面直下に構成されている情報記憶部分に作用して、情報を破壊する虞がある。このような不具合を防止すべく、被記録材がCDRである場合には、排紙従動ローラ20b及び排紙補助ローラ22がCDRの記録面に接触しないように、上方に退避させる。すなわち、被記録材の種類に応じて状態を変えることができるようになっている。
【0056】
そして、排出された用紙Pは、被記録材載置面51が傾斜姿勢(第2ポジション)の被記録材スタッカ50上にスタックするようになっている。なお、図3の如く、剛性記録材Gを記録する際には、被記録材スタッカ50は、被記録材載置面51が略水平状態である第1ポジションに位置しているものである。なお、この被記録材スタッカ50の構成及び動作については、後に説明する。
【0057】
<第1リンク機構及び第2リンク機構の構成>
ここで、図2から図9を参照しつつ、第1リンク機構及び第2リンク機構の構成について説明する。なお、図4はプリンタ100の前面側から視た部分省略要部斜視図であり、図5は図4とほぼ同方向から視た部分省略要部斜視図であり、図6は同プリンタの後方側から視た部分省略要部斜視図である。また、図7は本実施形態における第1リンク機構及び第2リンク機構の説明に供する部分省略要部側面図であり、図8はその動作説明図であり、図9もその動作説明図である。
【0058】
プリンタ100は、被記録材スタッカ50を変位させることにより、連動してキャリッジガイド軸12を変位させる第1リンク機構を備えている。そして、操作部としての操作レバー32を操作することにより、搬送従動ローラ19bを変位させて、この搬送従動ローラ19bが搬送駆動ローラ19aに当接した当接状態(図2)と上方に退避した退避状態(図3)とを切り換える、搬送従動ローラ切り換え手段としての第2リンク機構とを備えている。
【0059】
以下、第1リンク機構について説明する。
プリンタ100の前面側に配設されている、被記録材スタッカ50は、給紙装置2によって給送不可能な剛性記録材Gを、略水平な被記録材載置面51上から記録ヘッド13下へ真っ直ぐに給送し、且つ、記録ヘッド13下から被記録材載置面51上へ真っ直ぐに排出する直線的な、被記録材の給排出経路を形成可能な第1ポジション(図3)と、給紙装置2によって給送可能な用紙Pが排出され、この用紙Pをスタックする、前記第1ポジションより低く位置し、被記録材載置面51が傾斜状態となる第2ポジション(図2)と、をとり得るように構成されている。
【0060】
被記録材スタッカ50の上流側には、側方に向かって突出した係合軸52が設けられており、この係合軸52が、被係合部材である作動部材40の側面と係合している。この作動部材40は、下流側から視たとき、上に凸となる「U」字型に形成されている。従って、被記録材スタッカ50がポジションを変位させることより、この作動部材40も連動(追動)して垂直方向に変位可能である。なお、この作動部材40は、本体フレーム(図示せず)に固定されているガイド板60によって、その両側面からガイドされていて、このガイド板60の内面に沿って、垂直方向に変位するものである。
【0061】
そして、作動部材40の被記録材スタッカ50と係合している対面側は、キャリッジガイド軸12を軸支している偏心ブッシュ部44を有する回転体43に動力を伝達する動力伝達部材としての第1伝達部品41と係合している。なお、この第1伝達部品41は、作動部材40との係合部41aを回動中心にして、作動部材40に対して回動可能となっている。更に、第1伝達部品41は、係合部42aで、回転体43とをつなぐ第2伝達部品42と係合している。
【0062】
回転体43は、偏心ブッシュ部44を介して、自らの回動中心から偏った位置でキャリッジガイド軸12を軸支している。このような構成により、被記録材スタッカ50の切り換え操作よって回転体43が回動すると、該回転体43の回動中心から偏った位置に軸支されたキャリッジガイド軸12が鉛直方向に変位して、PGを調節することができる。
【0063】
すなわち、被記録材スタッカ50が、第1ポジション状態のときには、キャリッジガイド軸12が垂直上方向に変位して、PGが大きくなるようになっており、更に、被記録材スタッカ50が、第2ポジション状態のときには、キャリッジガイド軸12が垂直下方向に変位して、PGが小さくなるように構成されているものである。
【0064】
次に、第2リンク機構について説明する。
本実施形態においては、操作部としての操作レバー32を操作することによって、搬送従動ローラ19bを略鉛直方向に変位させて、この搬送従動ローラ19bが搬送駆動ローラ19aに当接した当接状態(図2)と上方に退避した退避状態(図3)とを切り換えることができる。
【0065】
操作レバー32は、回動軸32aを回動中心として回動可能に構成されていて、その上流側33aで第3伝達部品33と係合している。なお、この操作レバー32は、回動軸32aを回動中心として回動したとき、第3伝達部品33との係合部33aにおいて、該第3伝達部品33に対して回動可能に構成されている。
【0066】
第3伝達部品33は、上流側33bでカム回動軸31を軸支している第4伝達部品34と係合している。このような構成により、操作レバー32を下流側に回動(時計回り)させると、第3伝達部品33が下流側に引かれ、これによりカム回動軸31を軸支している第4伝達部材34が回動して、上述したように、カム部36が、搬送従動ローラ19bを軸支している搬送従動ローラホルダ18に当接して、搬送従動ローラ19bを退避状態とする。
【0067】
なお、操作レバー32は、作動部材40の内側につくられた空間部に配設されており、従って、被記録材スタッカ50が第2ポジションに位置するときには、自身の回動が規制されており、作動部材40が上方に変位したとき、すなわち、被記録材スタッカ50が第1ポジションに位置するときのみ操作することができるようになっている。
【0068】
すなわち、被記録材スタッカ50が第1ポジションをとっているときには、図7及び図8に示す如く、操作レバー32を操作可能であって、従って、搬送従動ローラ19bが当接状態または退避状態とすることができる。また、被記録材スタッカ50が第2ポジションをとっているときには、図9に示す如く、操作レバー32を操作不能であって、よって、搬送従動ローラ19bは、当接状態となるようになっている。
【0069】
ここで、第1リンク機構及び第2リンク機構の駆動について説明する。説明の便宜上、被記録材スタッカ50の動作を基に説明し、且つ、被記録材スタッカ50が第2ポジション状態(図9)から第1ポジション(図7、図8)に変位する場合、さらに、第1ポジション(図7、図8)から第2ポジション(図9)に変位する場合について説明する。
【0070】
まず、図9に示す如く、被記録材スタッカ50が第2ポジションに位置し、その上面である被記録材載置面51が傾斜状態となる。このとき、キャリッジガイド軸12は、下方に下がった状態であり、また、被記録材スタッカ50は、その上面の被記録材載置面51上に、排出されてきた用紙Pをスタックすることが可能である。従って、上述した給紙装置2から第1の給送経路「マル1」を経て供給された用紙に対して記録を実行可能であり、搬送従動ローラ19bは、搬送駆動ローラ19aに当接した当接状態をとっているものである。これにより、用紙Pは搬送ローラ19に狭圧されつつ、記録部26に搬送されて記録が行われ、被記録材載置面51上にスタックする。
【0071】
なお、この被記録材スタッカ50が第2ポジションに位置するときには、操作レバー32は、作動部材40によって回動不能、すなわち操作不能となっている。すなわち、操作レバー32の回動軸32aの上流側を、作動部材40により上方から規制されていて、回動不能となっている。従って、操作レバー32を操作して第2リンク機構を駆動させることができず、そのために、搬送従動ローラ19bは、この被記録材スタッカ50が第2ポジションに位置するときには、必ず搬送駆動ローラ19aに当接した当接状態をとるようになっている。
【0072】
そして、被記録材スタッカ50を上方に上げることにより、第2ポジションから第1ポジション(図7)に変位させると、作動部材40も追動して上方に変位する。これにより、作動部材40と第1伝達部品41との係合部41aも上方に変位して、この係合部41aに連動して、第1伝達部品41が上流側(反時計回り)に回動する。この動力が第2伝達部材42によって伝えられ、回転体43を回動させて、その回動中心から偏った位置に軸支されているキャリッジガイド軸12が鉛直上方向に変位して、PGを調節するものである。
【0073】
すなわち、キャリッジガイド軸12が上方に変位することにより、記録ヘッド13とプラテン28との距離が、被記録材スタッカ50が第2ポジションに位置する場合と比べ、大きくなっている。
【0074】
なお、被記録材スタッカ50が第1ポジションに位置することに追動して、作動部材40も上方に変位したところで、操作レバー32の作動部材40による規制が解除されて、操作レバー32が操作可能となる(図7)。
【0075】
そして、操作レバー32を、回動軸32aを回動中心として、上流側(時計回り)に回動させる(図8)ことにより、第3伝達部品33が下流側に引かれ、これによりカム回動軸31を軸支している第4伝達部材34が回動して、上述したように、カム部36が、搬送従動ローラ19bを軸支している搬送従動ローラホルダ18に当接して、搬送従動ローラ19bを退避状態とする。
【0076】
これにより、被記録材載置面51から記録部26に向けて略水平に給送し、再び排出させる第2の給送経路「マル2」を使用して、剛性記録材Gを手差しにより供給することが可能となる。そして、搬送ローラ19で、剛性記録材Gを狭圧可能となってから、第2リンク機構を駆動させて、搬送従動ローラ19bを当接状態とすることにより、この剛性記録材Gは、搬送ローラ19によって狭圧されて、搬送することが可能となる。
【0077】
そして、記録の行われた剛性記録材Gは、第2の給送経路「マル2」を経て、再び被記録材載置面51上に排出される。なお、連続して剛性記録材Gに対して記録を実行する場合には、剛性記録材Gが排出された後は、搬送従動ローラ19bが当接状態となっているため、再度第2リンク機構を駆動させて、搬送従動ローラ19bを退避状態とした後に、当該剛性記録材Gを手差し供給するようになっている。そのため、被記録材スタッカ50が第1ポジションをとっているときには、操作レバー32を単独で操作して、搬送従動ローラ19bの状態を適宜変えることができるようになっている。
【0078】
次に、被記録材スタッカ50を下方に下げることで、第1ポジションから第2ポジションへと変位させることにより、第1リンク機構に作用して、まず、この被記録材スタッカ50と連動(追動)して作動部材40が下降する。これにより、作動部材40と第1伝達部品41との係合部41aも下方に変位して、この係合部41aを回動中心として、第1伝達部品41が下流側(時計回り)に回動する。この動力が第2伝達部材42によって、回転体43を回動させて、その回動中心から偏った位置に軸支されているキャリッジガイド軸12を鉛直下方向に変位させるものである。
【0079】
なお、被記録材スタッカ50を第1ポジションから第2ポジションへと変位させるとき、操作レバー32が上流側に回動している状態(図8)、すなわち、搬送従動ローラ19bが退避状態にある状態の場合には、被記録材スタッカ50を第2ポジションへと変位させることにより、作動部材40が押し戻し手段として第2リンク機構に作用して、搬送従動ローラ19bを当接状態とすることができるようになっている。
【0080】
すなわち、被記録材スタッカ50が第1ポジションであって、搬送従動ローラ19bが退避状態である場合には、第2リンク機構の操作レバー32は、上流側に回動している状態(図8)であるため、その操作レバー32の上流側32bの上方には、押し戻し手段としての作動部材40が位置している。この状態から、被記録材スタッカ50を第2ポジションへと変位させると、作動部材40も追動して下降して、これにより、操作レバー上流側32bがその上側から作動部材40によって付勢されて、作動部材40の下降に追動して、操作レバー32を上流側(反時計回り)に回動させるものである。
【0081】
従って、作動部材40が、操作レバー32を押し戻す押し戻し手段、及び第2リンク機構の駆動を規制する規制手段として、第2リンク機構に作用して、搬送従動ローラ19bを当接状態とすることができる。換言すれば、被記録材スタッカ50が第2ポジションに位置する場合には、搬送従動ローラ19bは、必ず搬送駆動ローラ19aに当接した当接状態をとるようになっている。
【0082】
また、上述した搬送従動ローラ切り換え手段としての第2リンク機構は、前記第1リンク機構の動きに連動し駆動させることも可能である。このような場合には、ユーザーが被記録材スタッカ50を操作するのみで、記録対象である被記録材の記録に最適となる条件を適宜設定することが可能となる。
【0083】
以上説明したように本発明によれば、被記録材スタッカを変位させることにより、連動してキャリッジガイド軸を変位させる第1リンク機構を備えているため、当該被記録材スタッカを操作させるだけで、被記録材に応じたPGに調節することができる。
【符号の説明】
【0084】
2 給紙装置、 3 装置本体、 10 キャリッジ、
11 インクカートリッジ、 12 キャリッジガイド軸、
13 記録ヘッド、 14 給紙ローラ、 15 用紙ガイド、
16 ホッパ、 18 搬送従動ローラホルダ、 19 搬送ローラ、
19a 搬送駆動ローラ、 19b 搬送従動ローラ、 20 排紙ローラ、21 補助ローラホルダ、 22 補助ローラ、
23 排紙従動ローラホルダ、 24 排紙主フレーム、
25 排紙従フレーム、 26 記録部、 27 ねじりばね、
28 プラテン、 29 ホルダ回動軸、 31 カム回動軸、
32 操作レバー、 33 第3伝達部品、 34 第4伝達部品、
36 カム部、 40 作動部材、 41 第1伝達部品、
42 第2伝達部品、 43 回転体、 44 偏心ブッシュ部、
50 被記録材スタッカ、 51 被記録材載置面、 52 係合軸、
100 インクジェットプリンタ、 P 用紙、 G 剛性記録材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録材の搬送経路の上流側に設けられ、堆積保持されている前記被記録材を下流側へと1枚ずつ給送する被記録材給送装置と、
該被記録材給送装置の下流側に配設され、前記被記録材に記録を行う記録ヘッドと、
キャリッジガイド軸に沿って主走査方向に往復移動可能な、該記録ヘッドを搭載したキャリッジと、
回動することにより前記被記録材を搬送する搬送駆動ローラおよび搬送従動ローラを備えた搬送ローラと、
略水平な被記録材載置面上から被記録材を略水平のまま前記記録ヘッド下へ給送し、且つ、前記記録ヘッド下から前記被記録材載置面上へ略水平のまま排出する、該被記録材の給排出経路を形成する第1ポジションと、前記被記録材給送装置によって給送された被記録材が排出され、この被記録材をスタックする、前記第1ポジションより低く位置し、前記被記録材載置面が傾斜状態となる第2ポジションと、をとり得る被記録材スタッカと、を備えた記録装置であって、
前記被記録材スタッカを変位させることにより、連動して前記キャリッジガイド軸を変位させる第1リンク機構を備え、
前記被記録材スタッカが第1ポジションをとることにより、前記キャリッジガイド軸は連動して上方に変位し、かつ、該被記録材スタッカが第1ポジションをとっている限り、該キャリッジガイド軸は下降不能に構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
被記録材の搬送経路の上流側に設けられ、堆積保持されている被記録材を下流側へと1枚ずつ給送する被記録材給送装置と、
該被記録材給送装置の下流側に配設され、被記録材に記録を行う記録ヘッドと、
キャリッジガイド軸に沿って主走査方向に往復移動可能な、該記録ヘッドを搭載したキャリッジと、
回動することにより被記録材を搬送する搬送駆動ローラおよび搬送従動ローラを備えた搬送ローラと、
前記被記録材給送装置によって給送不可能な剛性記録材を、略水平な被記録材載置面上から前記記録ヘッド下へ真っ直ぐに給送し、且つ、前記記録ヘッド下から前記被記録材載置面上へ真っ直ぐに排出する直線的な、被記録材の給排出経路を形成可能な第1ポジションと、前記被記録材給送装置によって給送可能な被記録材が排出され、この被記録材をスタックする、前記第1ポジションより低く位置し、被記録材載置面が傾斜状態となる第2ポジションと、をとり得る被記録材スタッカと、を備えた記録装置であって、
前記被記録材スタッカを変位させることにより、連動して前記キャリッジガイド軸を変位させる第1リンク機構を備え、
前記被記録材スタッカが第1ポジションをとることにより、前記キャリッジガイド軸は連動して上方に変位し、かつ、該被記録材スタッカが第1ポジションをとっている限り、該キャリッジガイド軸は下降不能に構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項3】
被噴射媒体の搬送経路の上流側に設けられ、堆積保持されている前記被噴射媒体を下流側へと1単位ずつ給送する被噴射媒体給送装置と、
該被噴射媒体給送装置の下流側に配設され、前記被噴射媒体に液体噴射を実行する液体噴射ヘッドと、
キャリッジガイド軸に沿って主走査方向に往復移動可能な、該液体噴射ヘッドを搭載したキャリッジと、
回動することにより前記被噴射媒体を搬送する搬送駆動ローラおよび搬送従動ローラを備えた搬送ローラと、
略水平な被噴射媒体載置面上から被噴射媒体を略水平のまま前記液体噴射ヘッド下へ給送し、且つ、前記液体噴射ヘッド下から前記被噴射媒体載置面上へ略水平のまま排出する、該被噴射媒体の給排出経路を形成する第1ポジションと、前記被噴射媒体給送装置によって給送された被噴射媒体が排出され、この被噴射媒体をスタックする、前記第1ポジションより低く位置し、前記被噴射媒体載置面が傾斜状態となる第2ポジションと、をとり得る被噴射媒体スタッカと、を備えた液体噴射装置であって、
前記被噴射媒体スタッカを変位させることにより、連動して前記キャリッジガイド軸を変位させる第1リンク機構を備え、
前記被噴射媒体スタッカが第1ポジションをとることにより、前記キャリッジガイド軸は連動して上方に変位し、かつ、該被噴射媒体スタッカが第1ポジションをとっている限り、該キャリッジガイド軸は下降不能に構成されていることを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−16367(P2011−16367A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199369(P2010−199369)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【分割の表示】特願2007−247281(P2007−247281)の分割
【原出願日】平成15年3月6日(2003.3.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】