説明

記録装置

【課題】記録ヘッドの側面に付着する汚れを考慮した記録装置を提供すること。
【解決手段】記録装置(1)は、被記録媒体(P)を送り方向Yへ送る送り手段(2)と、記録可能範囲Aにおいて被記録媒体に対してインクを吐出して記録する記録ヘッド18と、該記録ヘッドを有し、所定の走査方向(X)へ移動するキャリッジ17と、該キャリッジを走査方向へ案内する二つのガイド部(25、26)と、該ガイド部の少なくとも一方(26)に設けられ、走査方向に対して傾いた傾斜部分26aと、を備え、前記キャリッジが前記記録可能範囲A内から該範囲外の所定の位置(B)へ移動する際、前記傾斜部分26aは、前記キャリッジ17を、該キャリッジの記録時の姿勢に対して走査方向(X)を中心軸として傾ける構成であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録媒体に対してインクを吐出して記録する記録ヘッドを備える記録装置に関する。
本願において、記録装置には、インクジェットプリンター、ラインプリンター、複写機、ファクシミリ等の種類が含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
従来では、特許文献1に示す如く、プリンターは、インクを吐出する記録ヘッドを備えていた。また、前記記録ヘッドにおける用紙と対向する面(ノズル形成面)には、インクを吐出するノズルが形成されていた。またさらに、前記ノズル形成面の汚れを拭き取ることができるワイパーが設けられていた。そして、定期的に前記ワイパーが前記ノズル形成面をきれいにしていた。従って、前記ノズルの状態をある程度安定させることができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−306037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記ノズルから吐出するインク滴が小さいため、該インク滴の一部はインクミストとなって浮遊する。そして、前記記録ヘッドの側面に付着して汚れとなる。
ここで、従来技術の問題点を図7(A)(B)に示す。
図7(A)(B)に示すのは、従来技術における記録ヘッドの側面図である。
図7(A)に示す如く、キャリッジ60は、記録ヘッド62を備えており、ガイド軸61によって用紙67の幅方向へ案内されながら移動することができるように構成されている。また、記録ヘッド62と対向する位置には、用紙67を支持する媒体支持部64が設けられている。またさらに、送りローラー対65によって用紙67が送られるように設けられている。
【0005】
前述したように、インクミストが記録ヘッド62の側面63に付着して汚れ66となる。
そして、図7(B)に示す如く、記録を続行すると、インクミストがさらに付着するため該汚れ66が徐々に大きく成長し、前記ノズル形成面に達する虞がある。係る場合、前記汚れが用紙67と接触し、用紙67が汚れる虞がある。また、前記汚れが前記ノズル形成面のノズルを覆い記録品質に影響がでる虞がある。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、記録ヘッドの側面に付着する汚れを考慮した記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様の記録装置は、被記録媒体を送り方向へ送る送り手段と、記録可能範囲において被記録媒体に対してインクを吐出して記録する記録ヘッドと、該記録ヘッドを有し、所定の走査方向へ移動するキャリッジと、該キャリッジを走査方向へ案内する二つのガイド部と、該ガイド部の少なくとも一方に設けられ、走査方向に対して傾いた傾斜部分と、を備え、前記キャリッジが前記記録可能範囲内から該範囲外の所定の位置へ移動する際、前記傾斜部分は、前記キャリッジを、該キャリッジの記録時の姿勢に対して走査方向を中心軸として傾ける構成であることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、前記キャリッジを前記所定の位置へ移動させるだけで前記キャリッジの姿勢を傾けることができる。
例えば、前記送り手段と、前記記録ヘッドの前記上流側の側面との間を拡げる方向へ前記キャリッジを傾ける。そして、前記記録ヘッドの側面をクリーニングしやすい姿勢にすることができる。その結果、傾けるための専用の動力を必要としない。
【0009】
そして、前記記録ヘッドにおける送り方向上流側の側面、下流側の側面および送り方向に対する被記録媒体の幅方向両側の側面の少なくとも一の面に付着し固化したインクを除去することができる。その結果、良好な記録を実行することができる。即ち、前記少なくとも一の面に付着したインクにより被記録媒体が汚れる虞がない。特に、前記送り手段と、前記記録ヘッドの前記上流側の側面との間が狭い構成である場合に有効である。
尚、クリーニングは手動でユーザーが綿棒等で前記記録ヘッドの上流側の側面をクリーニングしてもよい。また、クリーニング手段によって自動でクリーニングする構成でもよい。
【0010】
また、前記キャリッジが所定の位置から記録可能範囲内に戻ることにより、前記キャリッジの姿勢を容易に元に戻すことができる。つまり、前記キャリッジの姿勢の切り換えを容易に行うことができる。
またさらに、所定の位置は記録可能範囲の外にあるので、前記傾斜部分が記録実行時において前記キャリッジに対して影響を与える虞がない。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記二つのガイド部は、走査方向に対する前記キャリッジの姿勢を決めるガイド軸と、該ガイド軸を中心とした周方向の前記キャリッジの姿勢を決めるガイド部材と、を有しており、前記傾斜部分は、前記ガイド部材に設けられている構成であることを特徴とする。
本態様によれば、第1の態様と同様の作用効果に加え、前記傾斜部分を容易に構成することができる。また、前記ガイド軸を中心に前記キャリッジを揺動させるので、前記ガイド軸を特別な形状にする必要はない。断面が円形状であればよい。
【0012】
本発明の第3の態様は、第2の態様において、前記キャリッジの自重が、前記ガイド軸を中心とした周方向のベクトル成分として前記ガイド部材に対して作用する構成であることを特徴とする。
本態様によれば、第2の態様と同様の作用効果に加え、前記ガイド軸を中心とした方向における前記キャリッジの姿勢を精度よく決めることができる。さらに、前記傾斜部分によって容易に前記キャリッジの姿勢を変えることができる。
【0013】
本発明の第4の態様は、第2または第3の態様において、前記記録ヘッドが前記所定の位置に位置するときに前記ガイド部材が前記キャリッジと接触する箇所の軸方向から見た断面形状は、前記記録ヘッドが前記記録可能範囲内に位置するときに前記ガイド部材が前記キャリッジと接触する箇所の軸方向から見た断面形状と、異なる構成であることを特徴とする。
本態様によれば、第2または第3の態様と同様の作用効果に加え、容易に前記傾斜部分を構成することができる。
【0014】
本発明の第5の態様は、第1から第4のいずれか一の態様において、前記記録ヘッドにおける送り方向上流側の側面、下流側の側面および送り方向に対する被記録媒体の幅方向両側の側面の少なくとも一の面に対するクリーニングのタイミングを測るタイミング計測手段と、該タイミング計測手段により前記クリーニングのタイミングになったことを知らせるお知らせ手段と、前記クリーニングのタイミングになった後に受ける制御信号によって前記キャリッジを前記所定の位置へ移動する動作を実行可能な制御部と、をさらに備えていることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、第1から第4のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、ユーザーは前記クリーニングが必要でありそうなタイミングを知ることができる。そして、ユーザーが必要であると判断した場合、クリーニングを自ら行うこと、またはクリーニング手段によって行うことにより、前記少なくとも一の面に付着し固化したインクを除去することができる。
【0016】
本発明の第6の態様は、第1から第5のいずれか一の態様において、前記インクは、有機溶剤系インクであることを特徴とする。
本態様によれば、第1から第5のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、特に有機溶剤系インクである場合、インクミストが発生した際、前記側面に付着したミストインクが固化した汚れとなり、該汚れが成長しやすい。係る場合に特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施例のプリンター内部の概略を示す側面図。
【図2】本実施例の記録部を示す平面図。
【図3】(A)(B)は本実施例の記録部を示す側断面図。
【図4】本実施例のプリンターの制御を示す図。
【図5】(A)(B)は他の実施例1の記録部を示す側断面図。
【図6】(A)(B)は他の実施例2の記録部を示す平面図および側断面図。
【図7】(A)(B)は従来技術における問題点を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すのは、本発明に係る記録装置の一例であるプリンター1の概略を示す側面図である。
図1に示す如く、本発明に係るプリンター1は、媒体送り手段2と、送り経路と、記録部16と、排出部28と、を備えている。
【0019】
このうち、媒体送り手段2は、被送り媒体の一例である用紙Pを送り方向Yに送ることができるように設けられている。また、送り経路は、媒体送り手段2等によって送られる用紙Pを案内する媒体案内部によって構成されており、用紙Pが送られる経路である。
また、記録部16は、媒体送り手段2によって送られた用紙Pに対して記録を実行することができるように構成されている。またさらに、排出部28は、記録された用紙Pを排出し、排出トレイ上(図示せず)に載置することができるように設けられている。
【0020】
具体的に、媒体送り手段2は、載置部6と、ピックアップローラー3と、アーム部4と、分離手段7と、第1ローラー対14と、第2ローラー対15と、を備えている。このうち、載置部6は、用紙Pが載置されるように設けられている。また、ピックアップローラー3は、図示しないモーターの動力によって駆動することができ、載置部6に積層された用紙Pのうち、積層方向最上位に用紙Pと接触することができるように設けられている。尚、Z軸の矢印が示す方向は積層方向上方である。
【0021】
またさらに、アーム部4は、送り方向上流側である一端側の揺動軸5を中心に揺動可能に設けられている。そして、送り方向下流側である他端側にピックアップローラー3を回動可能に保持するように構成されている。
尚、前記モーターは、アーム部4とは別のプリンター1の基体部側の箇所に設けてもよいし、アーム部上に設けてもよい。
【0022】
また、分離手段7は、載置部6における用紙Pがセットされる箇所より送り方向下流側に設けられている。具体的には、ピックアップローラー3によって送られる用紙Pの側視した姿勢に対して傾斜した傾斜面8と有している。そして、用紙Pが重送された場合、ピックアップローラー3に対して最上位の用紙Pと次位以降の用紙Pとを分離することができるように設けられている。
【0023】
またさらに、第1ローラー対14および第2ローラー対15は、分離手段7を通過した用紙Pを記録部16へ送ることができるように設けられている。このうち、第1ローラー対14は、第1駆動ローラー14aと、第1従動ローラー14bとを有している。
尚、第1従動ローラー14bに代えて回動に所定の負荷を伴う所謂、リタードローラーでもよい。
【0024】
また、第2ローラー対15は、送り経路において第1ローラー対14より下流側に設けられている。具体的には、第2ローラー対15は、第2駆動ローラー15aと第2従動ローラー15bとを有している。そして、例えば、ステッピングモーターによって精度よく用紙Pを記録部16へ送ることができるように設けられている。
尚、用紙Pの先端が第2ローラー対15に到達した際、送り方向Yに対する用紙Pの姿勢を正す所謂、スキュー取りが実行されるように構成されているのは言うまでもない。
【0025】
また、記録部16は、キャリッジ17と、記録ヘッド18と、媒体支持部27と、第1ガイド軸25と、第2ガイド軸26と、を備えている。このうち、キャリッジ17は、用紙Pの幅方向Xへ延設された第1ガイド軸25および第2ガイド軸26に案内されながら幅方向Xへ移動するように構成されている。尚、キャリッジ17は、詳細な説明は省略するが公知のキャリッジ移動手段37(図2参照)によって動力が伝達されて幅方向Xに移動する。例えば、キャリッジ用モーター(図示せず)の動力が無端ベルト(図示せず)によってキャリッジ17に伝達されてキャリッジ17が移動する。また、記録ヘッド18は、キャリッジ17に設けられており、インクを用紙Pに対して吐出することができるように設けられている。所謂、インクジェット式の記録である。尚、符号23は、記録ヘッド18の右側側面である。
【0026】
またさらに、媒体支持部27は、記録ヘッド18と対向する位置に設けられ、用紙Pを支持し、用紙Pと記録ヘッド18との間の距離を所定の間隔にすることができるように構成されている。
また、排出部28は、第3ローラー対29と、図示しない排出トレイを備えている。第3ローラー対29は、送り経路において記録部16より下流側に設けられ、記録された用紙Pを排出トレイへ送ることができるように設けられている。
【0027】
図2に示すのは、本実施例の記録部16を示す平面図である。また、図3(A)(B)に示すのは、本実施例の記録部16を示す側断面図である。このうち、図3(A)はキャリッジ17が記録可能範囲A内に位置するときである。一方、図3(B)はキャリッジ17が記録可能範囲A外のクリーニング可能位置Bに位置するときである。
図2に示す如く、第1ガイド軸25および第2ガイド軸26の少なくとも一方である第2ガイド軸26は、キャリッジ17の所定の走査方向である幅方向Xに対して傾斜した傾斜部分26aを有している。
【0028】
傾斜部分26aは、第2ガイド軸26における記録可能範囲A外の位置に設けられている。また、傾斜部分26aは、キャリッジ17が記録可能範囲A内から記録可能範囲A外である所定の位置のクリーニング可能位置Bへ移動した際、キャリッジ17の姿勢を、第1ガイド軸25を中心に傾けることができるように構成されている。またさらに、傾斜部分26aより端部側には、幅方向Xに対して平行な姿勢保持部分26bが形成されている。
【0029】
姿勢保持部分26bは、クリーニング可能位置Bへ移動に傾いたキャリッジ17の姿勢を保つことができるように構成されている。
尚、技術的思想としては、記録可能範囲A外でキャリッジ17の姿勢を傾けることができればよい。従って、傾斜部分26aの位置は、第2ガイド軸26における記録可能範囲A外の位置に限らない。キャリッジ側との接触部分との位置関係によっては記録可能範囲A内に設けることも可能である。また、姿勢保持部分26bは無くてもよい。
【0030】
また、プリンター1は、制御部30と、お知らせ手段32と、選択手段34とをさらに備えている。このうち、制御部30は、記録ヘッド18の側面(21〜24)のクリーニングのタイミングを測ること、即ち、見計らうことができるように構成されている。また、お知らせ手段32は、クリーニングのタイミングをユーザーに知らせることができるように設けられている。またさらに、選択手段34は、ユーザーがクリーニングを実行するか否かを選択することができるように設けられている。
【0031】
制御部30は、具体的には、タイミング計測手段31と、回数計測手段36とを有している。タイミング計測手段31は、前回記録ヘッド18の側面(21〜24)のクリーニングを実行したときを基準として、その後経過した時間や、その後のインク吐出量のカウントに基づいて、次回のクリーニングの望ましいタイミングを測ることができるように設けられている。例えば、その後所定時間経過した場合や、その後のインク吐出量が所定量に達した場合に、次回のクリーニングの望ましいタイミングとすることができる。尚、予め設けられた複数の条件に基づいて、タイミングを決定する構成でもよい。
【0032】
インク吐出量からインクミストが記録ヘッド18の側面(21〜24)に付着する量をおおよそ予測することができ、これに基づいて、タイミングを測ることができる。尚、ノズル列20から吐出したインク摘をカウントすることにより、インク吐出量を把握することができるものとする。
また、回数計測手段36は、ユーザーが選択手段34によってクリーニングの実行をしないことを連続して選択した回数を計測するように構成されている。
【0033】
お知らせ手段32は、具体的には、一例として表示部33を有している。音声や警告音で知らせてもよいのは勿論である。本実施例では、クリーニングをすることが望ましいタイミングである旨を表示してユーザーにクリーニングを促すことができるように設けられている。
選択手段34は、具体的には、一例として入力部35を有している。押しボタンやタッチパネルによって入力してもよいし、プリンター1に接続されたコンピューターを操作してプリンター1に入力してもよい。
【0034】
そして、タイミング計測手段31が、望ましいタイミングであると判断したとき、クリーニングをすることが望ましいタイミングである旨が表示部33に表示される。そして、ユーザーがクリーニングをすることを選択した場合、制御部30は、キャリッジ17をクリーニング可能位置Bへ移動させる。移動後のクリーニング可能位置Bは、記録ヘッド18の側面(21〜24)の近傍に他の部材がなく、ユーザーがクリーニングをしやすい位置であればよい。
【0035】
特に、図3(A)に示す記録可能の状態では、第2ローラー対15と、記録ヘッド18の上流側側面21との間の距離が短いため、ユーザーが手動でクリーニングをすることが困難である。
そこで、キャリッジ17をクリーニング可能位置Bへ移動させる。すると、図3(A)に示す状態から図3(B)に示す状態へキャリッジ17の姿勢が変化する。
【0036】
ここで、第1ガイド軸25と、第2ガイド軸26との関係について説明しながら、傾斜部分26aの作用効果について説明する。
図3(A)に示す如く、記録可能範囲A内では、記録ヘッド18のノズル形成面19が媒体支持部27に対して平行となるようにキャリッジ17の姿勢が保たれている。ここで、キャリッジ17をガイドする第1ガイド軸25は、走査方向である幅方向Xに対するキャリッジ17の姿勢を決めるように構成されている。
【0037】
一方、第2ガイド軸26は、第1ガイド軸25を中心軸とした周方向におけるキャリッジ17の姿勢を決めるように構成されている。また、本実施例では、キャリッジ17の自重が、第1ガイド軸25を中心とした周方向のベクトル成分Fとして第2ガイド軸26に対して作用する構成である。本実施例では、図3(A)における第1ガイド軸25を中心とした反時計方向のベクトル成分Fがキャリッジ17から第2ガイド軸26に対して作用する。
【0038】
そして、図3(B)に示す如く、キャリッジ17を記録可能範囲A内から範囲外であるクリーニング可能位置Bへ移動させると、第2ガイド軸26の傾斜部分26aがキャリッジ17と接触する。そして、傾斜部分26aが、キャリッジ17の自重による前記周方向のベクトル成分Fに抗して、図3(B)における第1ガイド軸25を中心とした時計方向へキャリッジ17を回動させる。従って、記録ヘッド18のノズル形成面19が媒体支持部27に対して傾くと共に、記録ヘッド18と媒体支持部27との間の距離が長くなる。そして、第2ローラー対15と、記録ヘッド18の上流側側面21との間の距離が長くなる。
【0039】
その結果、ユーザーは、記録ヘッド18の全ての側面(21〜24)に手が届くので、全ての側面(21〜24)に付着し固化したインク汚れを落とすことができる。この際、例えば、綿棒等を用いて前記インク汚れを落とすことができる。
また、キャリッジ移動手段37の動力を利用し、傾斜部分26aによってキャリッジ17の姿勢を傾けることができるので、キャリッジ17の姿勢を変えるため専用の動力を有する機構を設ける必要がない。
【0040】
尚、本実施例では、記録可能範囲A内における第2ガイド軸26の軸方向(X)から見た断面形状S1と、クリーニング可能位置Bにおける第2ガイド軸26の軸方向(X)から見た断面形状S2とが異なるように構成することにより、傾斜部分26aを構成したが、これに限らない。本実施例において、前記断面形状S1、S2が異なるように構成したのは、容易に傾斜部分26aを構成することができるからである。また、第1ガイド軸25および第2ガイド軸26の一方である第2ガイド軸26に傾斜部分26aを設けたが、これに限らない。技術的思想としては、クリーニング可能位置Bでの姿勢が、記録可能範囲A内の姿勢に対してクリーニングしやすいように傾いていればよく、傾斜部分26aを両方に設けてもよいのは勿論である。
【0041】
続いて、クリーニング手順の全体について詳しく説明する。
図4に示すのは、本実施例のプリンター1の制御を示す図である。
図4に示す如く、ステップS1では、クリーニングを実行することが望ましい所定のタイミングか否かを判定する。具体的には、制御部30のタイミング計測手段31が、前回クリーニングを実行したときを基準として、該基準からの経過時間やインク吐出量に基づいて前記タイミングを見計らい、現在が該タイミングか否かを判定する。そして、該タイミングであると判定した場合、ステップS2へ進む。一方、まだ前記タイミングではないと判定した場合、ステップS1へ戻って繰り返す。
【0042】
ステップS2では、クリーニングを実行することが望ましい所定のタイミングであることを、お知らせ手段32によってユーザーに対して知らせる。例えば、表示部33にその旨を表示して知らせることができる。音声や警告音でもよいのは勿論である。そして、ステップS3へ進む。
ステップS3では、前回までにクリーニングを実行しないことが連続して選択された回数が、所定の回数に達したか否かを判定する。
【0043】
具体的には、制御部30の回数計測手段36によって計測された回数が所定の回数に達したか否かを制御部30が判定する。ここで、所定の回数は、クリーニングを実行しなくても記録品質に大きな影響を与えない程度に許容することができる回数である。
前記連続して選択された回数が前記所定の回数に達していないと判定した場合、クリーニングを実行するか否かの選択の余地があるので、ステップS4へ進む。一方、前記連続して選択された回数が前記所定の回数に達したと判定した場合、クリーニングを実行するか否かの選択の余地はないので、ステップS6へ進む。
【0044】
ステップS4では、ユーザーが選択手段34によってクリーニングを実行するか否かを選択する。例えば、入力部35(図2参照)により実行するか否かを入力する。そして、クリーニングを実行することを選択した場合、ステップS5へ進む。一方、クリーニングを実行しないことを選択した場合、タイミング計測手段31による前記基準をリセットしてからステップS1へ戻る。係る場合、クリーニングを実行することよりも記録を続行することを優先するため、記録を続行することができる。
【0045】
ステップS5では、クリーニングを実行する。具体的には、前述したように、ユーザーがクリーニングをしやすい所定の位置であるクリーニング可能位置Bまでキャリッジ17を移動させる。そして、ユーザーが綿棒等を用いて記録ヘッド18の側面(21〜24)の前記インク汚れを落としてクリーニングを行う。そして、シーケンスを終了する。この際、記録を実行する場合、クリーニング可能位置Bから記録可能範囲A内へキャリッジ17が戻る。従って、キャリッジ17の姿勢は元の姿勢に戻る。また、記録を実行しない場合、図示しないキャップがある位置まで移動して、記録ヘッド18に対してキャップをする。
【0046】
ステップS6では、ユーザーが選択手段34によってクリーニングを実行することを選択する。言い換えると、実行しないことを選択することができない状態である。これにより、強制的にクリーニングを実行することを選択させることができる。選択されると、ステップS5へ進む。その結果、前述したように、インクミストが記録ヘッド18の側面(21〜24)に付着して汚れた固まりが、記録品質に影響する程度に成長することを防止することができる。
【0047】
尚、上記実施例では、キャリッジ17が用紙Pの幅方向Xに移動する構成として説明したが、キャリッジ17が用紙Pの送り方向Yへ移動する構成でもよい。係る場合も、記録ヘッド18の側面(21〜24)にインクミストが付着する現象が生じるからである。また、記録実行時にキャリッジ17が移動しない構成でもよい。例えば、幅方向Xに長いラインヘッドプリンターの構成である。係る場合も記録ヘッド18の側面(21〜24)にインクミストが付着する現象が生じるからである。
また、上記実施例では、二つのガイド部としての第1ガイド軸25および第2ガイド軸26について説明したが、第2ガイド軸26については、軸形状でなくてもよい。例えば、板金によって形成されたガイド部材であってもよい。幅方向Xに対して傾斜した傾斜部分(26a)を有していれば、同様の作用効果を得ることができるからである。
【0048】
また、インクが、有機溶剤系インクである場合、特に記録ヘッド18の側面(21〜24)にインクミストによる汚れが成長しやすい傾向にある。溶媒が気化してインクの色素(顔料、染料)が固化しやすいからである。従って、係る場合、本発明は特に有効である。
【0049】
ここで、有機溶剤系インクとは、有機溶剤を含有するインクをいう。上記実施例で使用できる有機溶剤としては、好ましくは極性有機溶媒、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、またはフッ化アルコールなど)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、またはシクロヘキサノンなど)、カルボン酸エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、またはプロピオン酸エチルなど)、またはエーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、またはジオキサンなど)を用いることができる。
【0050】
本実施例の記録装置であるプリンター1は、被記録媒体の一例である用紙Pを送り方向Yへ送る送り手段である媒体送り手段2と、記録可能範囲Aにおいて用紙Pに対してインクを吐出して記録する記録ヘッド18と、記録ヘッド18を有し、所定の走査方向の一例である幅方向Xへ移動するキャリッジ17と、キャリッジ17を幅方向Xへ案内する二つのガイド部の一例である第1ガイド軸25および第2ガイド軸26と、第1ガイド軸25および第2ガイド軸26の少なくとも一方の第2ガイド軸26に設けられ、幅方向Xに対して傾いた傾斜部分26aと、を備え、キャリッジ17が記録可能範囲A内から該範囲外の所定の位置であるクリーニング可能位置Bへ移動する際、傾斜部分26aは、キャリッジ17を、キャリッジ17の記録時の姿勢に対して幅方向Xを中心軸として傾ける構成であることを特徴とする。
【0051】
また、本実施例において、二つのガイド部は、幅方向Xに対するキャリッジ17の姿勢を決めるガイド軸としての第1ガイド軸25と、第1ガイド軸25を中心とした周方向のキャリッジ17の姿勢を決めるガイド部材としての第2ガイド軸26と、を有しており、傾斜部分26aは、第2ガイド軸26に設けられている構成であることを特徴とする。
またさらに、本実施例において、キャリッジ17の自重が、第1ガイド軸25を中心とした周方向のベクトル成分Fとして第2ガイド軸26に対して作用する構成であることを特徴とする。
【0052】
また、本実施例において、記録ヘッド18がクリーニング可能位置Bに位置するときに第2ガイド軸26がキャリッジ17と接触する箇所の軸方向(X)から見た断面形状S2は、記録ヘッド18が記録可能範囲A内に位置するときに第2ガイド軸26がキャリッジ17と接触する箇所の軸方向(X)から見た断面形状S1と、異なる構成であることを特徴とする。
【0053】
またさらに、本実施例において、記録ヘッド18における送り方向上流側の側面21、下流側の側面22および送り方向Yに対する用紙Pの幅方向両側の側面23、24の少なくとも一の面に対するクリーニングのタイミングを測るタイミング計測手段31と、タイミング計測手段31により前記クリーニングのタイミングになったことを知らせるお知らせ手段32と、をさらに備えていることを特徴とする。
また、本実施例において、インクは、有機溶剤系インクであることを特徴とする。
【0054】
[他の実施例1]
図5(A)(B)に示すのは、他の実施例1の記録部16を示す側断面図である。このうち、図5(A)はキャリッジ17が記録可能範囲A内に位置するときである。一方、図5(B)はキャリッジ17が記録可能範囲A外のクリーニング可能位置Bに位置するときである。
図5(A)(B)に示す如く、他の実施例1では、第1ガイド軸40が第2ガイド軸41より上方に設けられている。つまり、前述した実施例と比較して、第1ガイド軸40と第2ガイド軸41との位置関係が逆の構成である。
尚、その他の部材については、前述した実施例と同様であるので同じ符号を用いることとし、その説明は省略する。
【0055】
他の実施例1では、キャリッジ17の自重によって、前述した実施例と同様、図5(A)における第1ガイド軸40を中心とした反時計方向のベクトル成分Fがキャリッジ17から第2ガイド軸41に対して作用する。
そして、キャリッジ17を記録可能範囲A内から範囲外であるクリーニング可能位置Bへ移動させると、第2ガイド軸41の傾斜部分41aがキャリッジ17と接触する。そして、傾斜部分41aが、キャリッジ17の自重による前記周方向のベクトル成分Fに抗して、図5(B)における第1ガイド軸40を中心とした時計方向へキャリッジ17を回動させる。従って、記録ヘッド18のノズル形成面19が媒体支持部27に対して傾くと共に、記録ヘッド18と媒体支持部27との間の距離が長くなる。そして、第2ローラー対15と、記録ヘッド18の上流側側面21との間の距離が長くなる。
【0056】
その結果、ユーザーは、記録ヘッド18の全ての側面(21〜24)に手が届くので、全ての側面(21〜24)に付着し固化したインク汚れを落とすことができる。
尚、他の実施例1では、前述した実施例と比較して、第2ローラー対15と、記録ヘッド18の上流側側面21との間の距離がさらに長くなる。その分、ユーザーにとってクリーニングしやすい。
【0057】
[他の実施例2]
図6(A)に示すのは、他の実施例2の記録部16を示す平面図である。また、図6(B)に示すのは、他の実施例2の記録部16を示す側断面図である。
図6(A)(B)に示す如く、他の実施例2では、第2ガイド軸50の断面形状S3、S4が一定に構成されている。つまり、記録可能範囲A内における第2ガイド軸50の断面形状S3と、クリーニング可能位置Bにおける第2ガイド軸50の断面形状S4とが同一である構成である。
尚、その他の部材については、前述した実施例と同様であるので同じ符号を用いることとし、その説明は省略する。
【0058】
係る場合であっても、前述した実施例と同様、幅方向Xに対して傾斜した傾斜部分50aを構成することができる。
その結果、図6(B)に示す如く、キャリッジ17を記録可能範囲A内から範囲外であるクリーニング可能位置Bへ移動させると、前述した実施例(図3(B)参照)と同様、キャリッジ17の姿勢を傾けることができる。
【0059】
前述したように、技術的思想としては、クリーニング可能位置Bへ移動した際にキャリッジ17の姿勢を傾けることができればよい。従って、記録可能範囲A内における第2ガイド軸50の断面形状S3と、クリーニング可能位置Bにおける第2ガイド軸50の断面形状S4とが同一の構成でも、異なる構成でもどちらでもよい。
他の実施例2では、クリーニング可能位置Bにおける第2ガイド軸50の太さが、記録可能範囲A内における第2ガイド軸50の太さより太くならない。従って、前述した実施例と比較して、第2ガイド軸50の重量が増加しない。その分、プリンター1の持ち運びや、コスト面で有利である。
【0060】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
また、上記実施例では、クリーニング可能位置Bに位置するキャリッジ17の記録ヘッド18の側面(21〜24)を、ユーザーが手動でクリーニングする構成としたが、これに限らない。クリーニング手段によって自動でクリーニングする構成でもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 プリンター、2 媒体送り手段、3 ピックアップローラー、4 アーム部、
5 揺動軸、6 載置部、7 分離手段、8 傾斜面、14 第1ローラー対、
14a 第1駆動ローラー、14b 第1従動ローラー、15 第2ローラー対、
15a 第2駆動ローラー、15b 第2従動ローラー、16 記録部、
17 キャリッジ、18 記録ヘッド、19 ノズル形成面、20 ノズル列、
21 上流側側面、22 下流側側面、23 右側側面、24 左側側面、
25 第1ガイド軸、26 第2ガイド軸、26a 傾斜部分、26b 姿勢保持部分、
27 媒体支持部、28 排出部、29 第3ローラー対、30 制御部、
31 タイミング計測手段、32 お知らせ手段、33 表示部、34 選択手段、
35 入力部、36 回数計測手段、37 キャリッジ移動手段、
40 (他の実施例1の)第1ガイド軸、41 第2ガイド軸、41a 傾斜部分、
50 (他の実施例2の)第2ガイド軸、50a 傾斜部分、
60 (従来技術の)キャリッジ、61 ガイド軸、62 記録ヘッド、63 側面、
64 媒体支持部、65 送りローラー対、66 汚れ(付着したインク)、
67 用紙、A 記録可能範囲、B クリーニング可能位置(所定の位置)、
F ベクトル成分、P 用紙、S1 (記録可能範囲での)断面形状、
S2 (クリーニング可能位置での)断面形状、S3 (記録可能範囲での)断面形状、
S4 (クリーニング可能位置での)断面形状、X 幅方向、Y 送り方向、
Z 積層方向(鉛直方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体を送り方向へ送る送り手段と、
記録可能範囲において被記録媒体に対してインクを吐出して記録する記録ヘッドと、
該記録ヘッドを有し、所定の走査方向へ移動するキャリッジと、
該キャリッジを走査方向へ案内する二つのガイド部と、
該ガイド部の少なくとも一方に設けられ、走査方向に対して傾いた傾斜部分と、を備え、
前記キャリッジが前記記録可能範囲内から該範囲外の所定の位置へ移動する際、前記傾斜部分は、前記キャリッジを、該キャリッジの記録時の姿勢に対して走査方向を中心軸として傾ける構成である記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、前記二つのガイド部は、
走査方向に対する前記キャリッジの姿勢を決めるガイド軸と、
該ガイド軸を中心とした周方向の前記キャリッジの姿勢を決めるガイド部材と、を有しており、
前記傾斜部分は、前記ガイド部材に設けられている構成である記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載の記録装置において、前記キャリッジの自重が、前記ガイド軸を中心とした周方向のベクトル成分として前記ガイド部材に対して作用する構成である記録装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の記録装置において、前記記録ヘッドが前記所定の位置に位置するときに前記ガイド部材が前記キャリッジと接触する箇所の軸方向から見た断面形状は、前記記録ヘッドが前記記録可能範囲内に位置するときに前記ガイド部材が前記キャリッジと接触する箇所の軸方向から見た断面形状と、異なる構成である記録装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の記録装置において、前記記録ヘッドにおける送り方向上流側の側面、下流側の側面および送り方向に対する被記録媒体の幅方向両側の側面の少なくとも一の面に対するクリーニングのタイミングを測るタイミング計測手段と、
該タイミング計測手段により前記クリーニングのタイミングになったことを知らせるお知らせ手段と、
前記クリーニングのタイミングになった後に受ける制御信号によって前記キャリッジを前記所定の位置へ移動する動作を実行可能な制御部と、をさらに備えていることを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の記録装置において、前記インクは、有機溶剤系インクである記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate