説明

記録装置

【課題】印刷ヘッド搬送手段の搭載重量の増大を招くことなく、印刷ヘッドの往復動時の両方において紫外線照射を実行する。
【解決手段】記録装置1は、被記録媒体Pを載置する載置テーブル2と、紫外線の露光により硬化するインクを被記録媒体Pに対して吐出する印刷ヘッド3と、印刷ヘッド3を走査方向一方側及び他方側に往復移動させるキャリッジ4と、キャリッジ4による上記走査方向への印刷ヘッド3の移動範囲外に固定的に設けられ、上記被記録媒体Pに照射するための紫外線を発生する紫外線発生源10と、紫外線発生源10からから被記録媒体Pへ至るまでの光路30の終端部を、印刷ヘッド3の走査方向一方側を通過する第1光路31と印刷ヘッド3の走査方向他方側を通過する第2光路32とに切替可能な光路切替機構20と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録媒体に対しインクを吐出し所望の記録を行う記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被記録媒体に対してインクを吐出し、そのインクに対して紫外線を照射して硬化させる記録装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この記録装置では、被記録媒体である記録用紙がセットされると、印刷ヘッド(記録ヘッド)が走査方向一方側と走査方向他方側とに交互に往復移動する。移動する印刷ヘッドから記録用紙に対しインクが吐出され、その後紫外線が照射されることによりインクが硬化する。
【0003】
例えば、この従来技術のプリンタにおいて、印刷ヘッドを搬送する印刷ヘッド搬送手段(キャリッジ)に、紫外線発生源となる放電管と、可動平面反射鏡とが搭載されている構成を想定してみる。印刷ヘッドが走査方向一方側へと移動している場合には、可動平面反射鏡が放電管からの光路を印刷ヘッドの走査方向他方側へ切り替える。これにより、走査方向一方側へ移動する印刷ヘッドの移動方向の背後側において、記録用紙に吐出された直後のインクに対し照射を行うこと想定される。印刷ヘッドが走査方向他方側へと移動している場合には、可動平面反射鏡が上記光路を印刷ヘッドの走査方向一方側へと切り替える。これにより、走査方向他方側へ移動する印刷ヘッドの移動方向の背後側において、記録用紙に吐出された直後のインクに対し照射を行うことが想定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−132767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記可動平面反射鏡が放電管からの光路を切り替えることにより、印刷ヘッドが走査方向一方側及び他方側のいずれへ移動している間でも、印刷ヘッドの移動方向の背後側において照射を行う。しかしながら、上記従来技術は、紫外線発生源である放電管が印刷ヘッド搬送手段に設けられ、印刷ヘッドと一緒に往復動する構造である。この結果、印刷ヘッド搬送手段の搭載重量が増大し、当該搬送のために必要な駆動系が大きくなるという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、印刷ヘッド搬送手段の搭載重量の増大を招くことなく、印刷ヘッドの往復動時の両方において紫外線照射を実行できる、記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、被記録媒体を載置可能な載置手段と、紫外線の露光により硬化するインクを、前記載置手段が載置した前記被記録媒体に対して吐出する印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドを、走査方向一方側及び他方側に往復移動させるための印刷ヘッド搬送手段と、前記ヘッド搬送手段による前記走査方向への前記印刷ヘッドの移動範囲外に固定的に設けられ、前記載置手段が載置した前記被記録媒体に照射するための紫外線を発生する紫外線発生源と、前記固定的に設けられた前記紫外線発生源から発生された前記紫外線の、当該紫外線発生源から前記被記録媒体へ至るまでの光路の終端部を、前記印刷ヘッドの前記走査方向一方側を通過する第1光路と前記印刷ヘッドの前記走査方向他方側を通過する第2光路とに切替可能な光路切替手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
本願第1発明においては、載置手段に被記録媒体が載置されると、印刷ヘッド搬送手段により、印刷ヘッドが走査方向一方側と走査方向他方側とに交互に往復移動する。移動する印刷ヘッドからは、被記録媒体に対しインクが吐出される。
【0009】
上記のように印刷ヘッドから吐出されたインクは、その後紫外線が照射されることにより硬化する。本願第1発明においては、記録装置における印刷ヘッドの移動範囲外に固定された紫外線発生源から紫外線が発生され、その紫外線が被記録媒体へ導かれることによって上記インクへの照射が行われる。紫外線の上記紫外線発生源から被記録媒体への光路は、印刷ヘッドが走査方向一方側へと移動しているか走査方向他方側へ移動しているかに応じて、光路切替手段によって切り替えられる。
【0010】
印刷ヘッドが走査方向一方側へと移動している場合には、光路切替手段が上記光路の終端部を第2光路へと切り替える。第2光路は印刷ヘッドの走査方向他方側を通過して被記録媒体に到達することから、走査方向一方側へ移動する印刷ヘッドの移動方向の背後側において照射が行われる。これにより、被記録媒体に吐出された直後のインクに対し照射を行うことができる。印刷ヘッドが走査方向他方側へと移動している場合には、光路切替手段が上記光路の終端部を第1光路へと切り替える。第1光路は印刷ヘッドの走査方向一方側を通過して被記録媒体に到達することから、走査方向他方側へ移動する印刷ヘッドの移動方向の背後側において照射が行われる。これにより、被記録媒体に吐出された直後のインクに対し照射を行うことができる。
【0011】
以上のようにして、本願第1発明においては、印刷ヘッドが走査方向一方側へ移動している間でも他方側へ移動している間でも、印刷ヘッドの移動方向の背後側において照射が行われ、被記録媒体に吐出された直後のインクに対し照射を行うことができる。これにより、被記録媒体に対し迅速な記録を行うことができる。また、紫外線発生源は印刷ヘッドの移動範囲外に固定的に設けられることにより、紫外線発生源が印刷ヘッド搬送手段に配置される場合のような、印刷ヘッド搬送手段の搭載重量増大を回避することができる。
【0012】
第2発明は、上記第1発明において、前記紫外線発生源は、前記印刷ヘッドの移動範囲よりも前記走査方向一方側に設けられており、前記光路切替手段は、前記紫外線発生源から前記走査方向他方側へ出射された前記紫外線を入射して前記印刷ヘッドの前記走査方向他方側へ所定の反射角で反射し、前記第2光路を生成する他方側反射手段と、開閉可能に構成され、閉じ状態においては、前記紫外線発生源から前記走査方向他方側へ出射された前記紫外線を入射して前記印刷ヘッドの前記走査方向一方側へ所定の反射角で反射し前記第1光路を生成するとともに、開き状態においては、前記紫外線発生源から前記走査方向他方側へ出射された前記紫外線を前記他方側反射手段へと導く、開閉手段と、を有することを特徴とする。
【0013】
本願第2発明においては、光路切替手段は、開閉手段と、他方側反射手段とを備える。印刷ヘッドが走査方向一方側へと移動している場合には、開閉手段が開かれる。これにより、紫外線発生源から走査方向他方側へ出射された紫外線が、開き状態の開閉手段を介し、他方側反射手段へと導かれる。他方側反射手段は入射した紫外線を所定の反射角で反射して第2光路を生成する。第2光路は印刷ヘッドの走査方向他方側を通過して被記録媒体に到達することから、走査方向一方側へ移動する印刷ヘッドの移動方向の背後側において照射が行われる。これにより、被記録媒体に吐出された直後のインクに対し照射を行うことができる。
【0014】
印刷ヘッドが走査方向他方側へと移動している場合には、開閉手段が閉じられる。これにより、紫外線発生源から走査方向他方側へ出射された紫外線を、閉じ状態の開閉手段が所定の反射角で反射して第1光路を生成する。第1光路は印刷ヘッドの走査方向一方側を通過して被記録媒体に到達することから、走査方向他方側へ移動する印刷ヘッドの移動方向の背後側において照射が行われる。これにより、被記録媒体に吐出された直後のインクに対し照射を行うことができる。
【0015】
以上のようにして、本願第2発明においては、印刷ヘッドが走査方向一方側へ移動している間でも他方側へ移動している間でも、印刷ヘッドの移動方向の背後側において照射が行われ、被記録媒体に吐出された直後のインクに対し照射を行うことができる。また、開閉手段の開閉動作を利用して光路の切替を行うことにより、第1光路側と第2光路側の両方に2つの反射手段を設ける必要がなく、他方側反射手段のみ設ければ足りる。これにより、部品点数を軽減し装置の製造コストを低減することができる。
【0016】
第3発明は、上記第1発明において、前記光路切替手段は、前記走査方向に直交する方向における第1反射位置に位置し、前記紫外線発生源から前記走査方向他方側へ出射された前記紫外線を入射して前記印刷ヘッドの前記走査方向一方側へ所定の反射角で反射して前記第1光路を生成する一方側反射手段と、前記走査方向に直交する方向における前記第1反射位置とは異なる第2反射位置に位置し、前記紫外線発生源から前記走査方向他方側へ出射された前記紫外線を入射して前記印刷ヘッドの前記走査方向他方側へ所定の反射角で反射して前記第2光路を生成する他方側反射手段と、前記紫外線発生源を、前記第1反射位置に対応した第1移動位置、及び、前記第2反射位置に対応した第2移動位置、に移動可能な移動機構と、を有することを特徴とする。
【0017】
本願第3発明においては、光路切替手段は、第1反射位置に位置する一方側反射手段と、第2反射位置に位置する他方側反射手段と、第1移動位置及び第2移動位置に紫外線発生源を移動可能な移動機構と、を備える。
【0018】
印刷ヘッドが走査方向一方側へと移動している場合には、移動機構によって紫外線発生源は第2移動位置に移動する。これにより、紫外線発生源から走査方向他方側へ出射された紫外線が、第2反射位置に位置する他方側反射手段へと導かれる。他方側反射手段は入射した紫外線を所定の反射角で反射して第2光路を生成する。第2光路は印刷ヘッドの走査方向他方側を通過して被記録媒体に到達することから、走査方向一方側へ移動する印刷ヘッドの移動方向の背後側において照射が行われる。これにより、被記録媒体に吐出された直後のインクに対し照射を行うことができる。
【0019】
印刷ヘッドが走査方向他方側へと移動している場合には、移動機構によって紫外線発生源は第1移動位置に移動する。これにより、紫外線発生源から走査方向他方側へ出射された紫外線が、上記第2反射位置とは異なる第1反射位置に位置する一方側反射手段へと導かれる。一方側反射手段は入射した紫外線を所定の反射角で反射して第1光路を生成する。第1光路は印刷ヘッドの走査方向一方側を通過して被記録媒体に到達することから、走査方向他方側へ移動する印刷ヘッドの移動方向の背後側において照射が行われる。これにより、被記録媒体に吐出された直後のインクに対し照射を行うことができる。
【0020】
以上のようにして、本願第3発明においては、印刷ヘッドが走査方向一方側へ移動している間でも他方側へ移動している間でも、印刷ヘッドの移動方向の背後側において照射が行われ、被記録媒体に吐出された直後のインクに対し照射を行うことができる。また、第1光路と第2光路との切替のために必要なる動作が、印刷ヘッドの移動範囲外に固定的に設けられた紫外線発生源の移動のみであり、印刷ヘッド搬送手段の搭載物における切替動作等は必要ない。したがって、印刷ヘッド搬送手段の搭載物(ヘッドユニット)に光路の切替機構等を設ける場合のように生じうる振動の発生等を回避でき、印刷品質の低下を確実に防止することができる。
【0021】
第4発明は、上記第2又は第3発明において、前記紫外線発生源は、少なくとも1つの発光素子と、前記発光素子から広がりながら発光された光を略平行光へと変換する変換手段と、を備えており、前記第1光路及び前記第2光路には、前記略平行光を所定の角度で広げる拡散手段が設けられていることを特徴とする。
【0022】
本願第4発明においては、第1光路及び第2光路の拡散手段に到達するまでは、紫外線発生源からの紫外線は略平行光の態様で導かれる。これにより、記録装置の製造時における各部品の組み付け時に生じうる誤差により上記略平行光の光線方向における距離が変動したとしても、ビーム径は変化しない。この結果、記録装置の製造時における部品の加工精度や組立精度を比較的低く抑えることが可能となり、製造コストを低減することができる。
【0023】
第5発明は、上記第2又は第3発明において、前記紫外線発生源は、少なくとも1つの発光素子と、前記発光素子から広がりながら発光された光を略平行光へと変換する変換手段と、を備えており、前記発光素子の光源部分が間隔をあけて複数あり、前記変換手段が複数あることを特徴とする。
【0024】
これにより、変換手段を1つだけ設けその唯一の変換手段で間隔のあいた複数の発光素子の光源部分の全ての紫外線を平行光にする構成する場合よりも、変換手段が小型化ものですみ、配置の自由度が増す。
【0025】
第6発明は、上記第5発明において、複数の前記変換手段が、別々の前記発光素子から照射された紫外線を略平行光へと変換することを特徴とする。
【0026】
複数の変換手段がそれぞれ別々の発光素子からの紫外線を略平行光とすることにより、変換手段が小型化する。
【0027】
第7発明は、上記第6発明において、複数の前記変換手段が、前記光路切替手段による光路切替よりも上流側の光路に設けられ、別々の前記発光素子から照射された紫外線を略平行光へと変換することを特徴とする。
【0028】
変換手段による光路切替の下流側において、双方の光路に同数の変換手段を設けた構成に比べ、変換手段の数が半分で済む。
【0029】
第8発明は、上記第6発明において、複数の前記変換手段が、前記発光素子と同数配置され、別々の前記発光素子から照射された紫外線を略平行光へと変換することを特徴とする。
【0030】
これにより、変換手段を1つだけ設けその唯一の変換手段で、間隔のあいた複数の発光素子の光源部分の紫外線を平行光にする構成する場合よりも、変換手段が小型化ものですみ、配置の自由度が増す。
【0031】
第9発明は、上記第4発明において、前記発光素子が複数あり、前記変換手段が1つ設けられることを特徴とする。
【0032】
複数の変換手段を設ける場合よりも、変換手段の設置が容易である。
【0033】
第10発明は、上記第2乃至第9発明のいずれか1つにおいて、前記発光素子による前記載置手段が載置した前記被記録媒体に対する照射領域の形状が前記走査方向に直交する線に関して対象形状であることを特徴とする。
【0034】
これにより、均一な照射を行うことができる。
【0035】
第11発明は、上記第2乃至第10発明のいずれか1つにおいて、前記発光素子による前記載置手段が載置した前記被記録媒体に対する照射領域の形状が、前記第1光路を経由した発光素子による照射領域と前記第2光路を経由した発光素子による照射領域とで同じであることを特徴とする。
【0036】
これにより、印刷ヘッドが走査方向一方側へ移動している間でも他方側へ移動している間でも、同等の照射領域を確保することができる。
【0037】
第12発明は、上記第2乃至第11発明のいずれか1つにおいて、閉じ状態の開閉手段若しくは一方側反射手段が、前記紫外線を水平方向から入射して反射するときの反射軸と当該水平方向とのなす角度をα、前記水平方向からの前記紫外線の入射位置の前記被記録媒体からの高さをH、前記印刷ヘッドの下面の前記被記録媒体からの高さをh、としたとき、開閉手段若しくは一方側反射手段は、前記入射位置から、前記印刷ヘッドの下面の前記一方側端部までの、水平方向距離Lが、L ≧ H/tan(180°−2α) + h/tan(180°−2α)となるように、配置されていることを特徴とする。
【0038】
本願第12発明においては、上記の寸法関係を満たすことにより、開閉手段又は一方側反射手段により生成された第1光路を経て記録媒体に照射された紫外線の反射光が印刷ヘッドの下面の一方側端部より他方側へと導かれることはない。これにより、印刷ヘッドの下面に対し紫外線が到達するのを防止できるので、吐出前のインクに誤って紫外線が照射され必要以上に早くインクの硬化が開始されるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、印刷ヘッド搬送手段の搭載重量の増大を招くことなく、印刷ヘッドの往復動時の両方において紫外線照射を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の記録装置の一実施の形態を示す正面図である。
【図2】図1の記録装置に設置された紫外線発生源の発光素子の配置を示す正面図である。
【図3】紫外線発生源の発光素子に設けられたコリメータレンズの配置を示す正面図である。
【図4】第1光路及びシャッタと、紫外線発生源と、印刷ヘッドの位置関係について示す説明図である。
【図5】記録装置の印刷ヘッドの走査時のタイミングチャートである。
【図6】紫外線発生源を移動可能に配置する変形例の記録装置を示す正面図である。
【図7】図6の記録装置の紫外線発生源からの紫外線の光路に設けられた拡散ミラーを示す正面図である。
【図8】記録装置に設置される移動機構を示す正面図である。
【図9】平板状の反射ミラーを用いる変形例の記録装置を示す正面図である。
【図10】凸レンズを用いる変形例の記録装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0042】
図1は、本発明の記録装置の一実施の形態を示す正面図である。本実施形態の記録装置1は、紙や布等の被記録媒体Pを載置して水平方向に支持する載置テーブル2(載置手段)と、紫外線の露光により硬化するインクを、載置テーブル2が載置した被記録媒体Pに対して吐出する印刷ヘッド3と、この印刷ヘッド3を搭載して、印刷ヘッド3を、図1中の左側(=走査方向一方側。以下適宜、単に「左側」という)及び図1中の右側(=走査方向他方側。以下適宜、単に「右側」という)に往復移動させるキャリッジ4(印刷ヘッド搬送手段)と、このキャリッジ4による上記走査方向への印刷ヘッド3の移動範囲外に固定的に設けられた紫外線発生源10と、キャリッジ4に設けられた光路切替機構20(光路切替手段)とを有している。
【0043】
載置テーブル2の例えば左側には、適時、印刷ヘッド3のノズル孔からインクを噴出してノズル孔のインク詰まり等を噴射除去するフラッシング部7が設けられ、載置テーブル2の上記走査方向の例えば他方側には、印刷ヘッド3のノズル孔の残りのインク等を吸引除去するパージング部8が設けられている。
【0044】
印刷ヘッド3は、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の4色のインクを各別に吐出するノズル孔を備えている。各色のノズル孔は、印刷ヘッド3の下面(載置テーブル2側の面)のノズル面3aに上記走査方向と直交する直交方向に沿って配列され開口されている。
【0045】
キャリッジ4は、上記走査方向に延びる複数本のガイドバー5に摺動自在に支持されている。このキャリッジ4には、無端ベルト駆動方式等の図示しない駆動機構が具備されている。キャリッジ4は、駆動機構による駆動によってガイドバー5を案内として上記走査方向に沿って往復移動され、これにともない印刷ヘッド3が走査方向に沿って往復移動する。
【0046】
紫外線発生源10は、載置テーブル2が載置した被記録媒体Pに照射する紫外線を発生する。この紫外線発生源10は、キャリッジ4による印刷ヘッド3の移動範囲よりも上記左側に設置されている。この紫外線発生源10は、紫外線を発光する光源部(図示せず)を備えたUVLED等の発光素子11を、少なくとも1個(この例では7個)備えている。7個の発光素子11は、図2に示すように、素子基板11aに実装されている。
【0047】
発光素子11は、印刷ヘッド3の走査方向と直交する直交方向(図2参照)に配列されている。また、発光素子11は、この例では、素子基板11aに対し上下・左右方向に互い違いになるよういわゆる千鳥配置状に設置されている。これにより、紫外線発生源10から(上記走査方向の他方側に)出射された紫外線と直交する断面における、光密度のムラを小さくすることができる。
【0048】
紫外線発生源10の紫外線出射側の直近位置には、発光素子11から広がりながら発光される紫外線を発光素子11の光軸と略平行な平行光に変換するために、コリメータレンズ12(変換手段)が配置されている。この例では、7個の発光素子11それぞれに対応するように、7個のコリメータレンズ12が設けられている。また発光素子11は、それぞれの上記光源部が互いに略等間隔となるように配置されており、これに対応して、上記コリメータレンズ12も互いに略等間隔となるように配置されている。
【0049】
紫外線発生源10から出射された紫外線は、コリメータレンズ12による変換を経ることによって、紫外線発生源10から被記録媒体Pへ至るまでの光路30中に介挿した拡散レンズ23(後述)に到達するまでは、光路30を略平行光の態様で導かれる。
【0050】
なお、コリメータレンズ12は、紫外線発生源10の複数の発光素子11の全てを1つでカバーする大きい形状のもの、紫外線発生源10の複数の発光素子11の全てを1つずつ同数個でカバーする小さい形状のもの(本実施形態の例)、紫外線発生源10の複数の発光素子11の全てを数個ずつに分けて幾つかの個数でカバーする中程度の大きさのもの、これらのいずれでもよい。大きい形状のコリメータレンズを用いれば、設置が容易になる利点はあるが、本実施形態では、図3に示すように、紫外線発生源10の複数の発光素子11の全てを1つずつ同数個でカバーする小さい形状のコリメータレンズ12を使用している。これにより、大型の唯一のコリメータレンズを用い、間隔を開けて配置された複数の発光素子11の全てをカバーする場合に比べ、レンズを小型化でき、配置の自由度が増す効果がある。
【0051】
光路切替機構20は、紫外線発生源10から出射された被記録媒体Pへ至るまでの紫外線の光路30の終端部を、印刷ヘッド3の左側を通過する第1光路31と印刷ヘッド3の右側を通過する第2光路32とに切替えるためのものである。この光路切替機構20は、キャリッジ4に揺動可能に設けられ、紫外線発生源10からの紫外線の光路30に対し開閉自在なシャッタ21(開閉手段)と、キャリッジ4に固定的に設けられ、光路30に介挿された反射ミラー22(他方側反射手段)とを備えている。
【0052】
シャッタ21は、平板状の反射板からなり、印刷ヘッド3の上記左側において走査方向と直交する水平方向に設置された支軸21aを備えている。そして、シャッタ21は、上記支軸21aを支点として揺動することにより、紫外線発生源10からの紫外線の光路30に挿入された閉じ状態と、光路30から退避した開き状態とに開閉し切替可能となっている。
【0053】
閉じ状態においては、シャッタ21は、印刷ヘッド3の左側において走査方向と直交する鉛直方向(上下方向)で、紫外線発生源10からの紫外線の光路30上に位置し、かつ上記走査方向を含む鉛直面内において左側へ所定の角度θ(=45°)で前傾している。そして、シャッタ21は、紫外線発生源10からの紫外線を入射し、印刷ヘッド3の左側へ所定の反射角(前傾角度θと略同じ角度)で反射し、第1光路31を生成する。これにより、紫外線発生源10から被記録媒体Pへ到達する紫外線の光路30の終端部が、第1光路31に切り替えられる。
【0054】
この第1光路31への切替は、印刷ヘッド3が右側へ向かって移動している場合に行う。紫外線発生源10から上記右側へ出射された紫外線は、光路30をシャッタ21まで進んだ後、シャッタ21で反射されて第1光路31に進み、印刷ヘッド3の左側を通過して、右側へ向かって移動している印刷ヘッド3の移動方向の背面側(つまり左側)において載置テーブル2上の被記録媒体Pに照射される。
【0055】
一方、開き状態においては、シャッタ21は、印刷ヘッド3の上記左側において走査方向と直交する鉛直方向(上下方向)で、紫外線発生源10からの紫外線の光路30から上方に退避し、紫外線発生源10からの紫外線を反射ミラー22に導く。
【0056】
反射ミラー22は、平板状の反射板からなり、印刷ヘッド3の上記右側において走査方向に直交する鉛直方向(この例では上方)に設置されている。この状態で、反射ミラー22は、紫外線発生源10からの紫外線の光路30上に位置し、かつ印刷ヘッド3の左側へ向かって所定の角度θ(=45°)で前傾している。そして、反射ミラー22は、上記開き状態のシャッタ21を介して導かれた紫外線発生源10からの紫外線を入射して、印刷ヘッド3の右側へ所定の反射角(反射ミラー22の前傾角度θと略同じ角度)で反射し、第2光路32を生成する。これにより、紫外線発生源10から被記録媒体Pへ到達する紫外線の光路30の終端部が、第2光路32に切り替えられる。
【0057】
この第2光路32への切替は、印刷ヘッド3が左側へ向かって移動している場合に行う。紫外線発生源10から上記右側へ出射された紫外線は、光路30を他方側の反射ミラー22まで進んだ後、第2光路32に進んで印刷ヘッド3の右側を通過し、左側へ向かって移動している印刷ヘッド3の移動方向の背面側において載置テーブル2上の被記録媒体Pに照射される。
【0058】
また、図1に示すように、第1光路31、第2光路32のそれぞれの終端直前には、凹レンズ等の拡散レンズ23(拡散手段)が設けられている。この拡散レンズ23は、載置テーブル2に載置された被記録媒体Pへの紫外線の照射ムラを小さくするためのものである。拡散レンズ23は、第1光路31、第2光路32を進んだ略平行光の紫外線のスポットを円形のまま拡径するようになっている。あるいは、拡散レンズ23は、第1光路31、第2光路32を進んだ略平行光の紫外線のスポットを、印刷ヘッド3の走査方向と直交する方向にのみ楕円形に拡径してもよい。すなわち、被記録媒体Pに照射される紫外線のスポットは、印刷ヘッド3の走査方向では当該印刷ヘッド3の走査によって重なりが生じるので照射ムラが起こりづらい。これに対し、上記走査方向と直交する方向では、印刷ヘッド3の走査による重なりが生じにくいので照射ムラが起こりやすい。したがって、拡散レンズ23は、紫外線を上記走査方向と直交する方向にのみ楕円形に拡径して、当該直交方向で紫外線のスポットの重なりを生じさせるものが好ましい。
【0059】
なお、第1光路31による被記録媒体Pの上記左側の照射領域の形状と第2光路32による被記録媒体Pの上記右側の照射領域の形状とは、被記録媒体Pに対する照射を均等にするため、上記走査方向に直交する直交線(図1中の上下方向の線)に対し線対称とし、さらには同一形状であることが好ましい。
【0060】
なお、上記第1光路31及びシャッタ21と、紫外線発生源10と、印刷ヘッド3は、例えば図4に示すような位置関係となっている。すなわち、図4に示すように、紫外線発生源10からの紫外線を水平方向からシャッタ21の表面に入射して反射するときの反射軸(入射面の法線n)と当該水平方向とのなす角度をα、水平方向からの紫外線の入射位置の被記録媒体Pからの高さをH、印刷ヘッド3の下面の被記録媒体Pからの高さをhとしたとき、シャッタ21は、上記入射位置から、印刷ヘッド3の下面の前記一方側(左側)端部までの、水平方向距離Lが、L ≧ H/tan(180°−2α) + h/tan(180°−2α)となるように、配置されている。
【0061】
以上のように構成した本実施形態の作用効果を以下に説明する。
【0062】
上記記録装置1において、載置テーブル2に被記録媒体Pが載置されると、キャリッジ4により印刷ヘッド3が左側と右側とに交互に往復移動し、移動する印刷ヘッド3からは、被記録媒体Pに対しインクが吐出され、被記録媒体Pの表面に文字、画像等の記録像が描画される。そして、その後、印刷ヘッドから吐出されたインクに紫外線が照射されることにより硬化して、被記録媒体Pへの記録像の定着が完了し、記録が終了する。その際、記録装置1における印刷ヘッド3の移動範囲外に固定された紫外線発生源10から紫外線が発生され、その紫外線が被記録媒体Pへ導かれることによって上記インクへの照射が行われる。
【0063】
本実施形態では、紫外線の上記紫外線発生源10から被記録媒体Pへの光路30は、印刷ヘッド3が左側へと移動しているか右側へ移動しているかに応じて、光路切替機構20によって切り替えられる。印刷ヘッド3が左側へと移動している場合には、光路切替機構20のシャッタ21が開かれる。これにより、紫外線発生源10から右側へ出射された紫外線が、開き状態のシャッタ21を介し、他方側の反射ミラー22へと導かれる。反射ミラー22は、入射した紫外線を所定の反射角で反射して第2光路32を生成する。第2光路32は印刷ヘッド3の右側を通過して被記録媒体Pに到達することから、左側へ移動する印刷ヘッド3の移動方向の背後側において照射が行われる。これにより、被記録媒体Pに吐出された直後のインクに対し照射を行うことができる。
【0064】
一方、印刷ヘッド3が右側へと移動している場合には、シャッタ21が閉じられる。これにより、紫外線発生源10から右側へ出射された紫外線を、閉じ状態のシャッタ21が所定の反射角で反射して第1光路31を生成する。第1光路31は印刷ヘッド3の左側を通過して被記録媒体Pに到達することから、右側へ移動する印刷ヘッド3の移動方向の背後側において照射が行われる。これにより、被記録媒体Pに吐出された直後のインクに対し照射を行うことができる。
【0065】
以上のように、本実施形態の記録装置1においては、印刷ヘッド3が左側へ移動している間でも右側へ移動している間でも、印刷ヘッド3の移動方向の背後側において照射が行われ、被記録媒体Pに吐出された直後のインクに対し照射を行うことができる。これにより、被記録媒体Pに対し迅速な記録を行うことができる。
【0066】
図5は、上記のようにして印刷ヘッド3が左側(走査方向一方側)及び右側(走査方向他方側)へ交互に走査され往復動するときの、印刷ヘッド3及び紫外線発生源10の制御態様を表す、タイミングチャートである。上記したように、印刷ヘッド3が左側へ走査中のときには紫外線発生源10から出射された紫外線が第2光路32へ導かれて照射され、印刷ヘッド3が右側へ走査中のときには紫外線発生源10から出射された紫外線が第1光路31へ導かれて照射される。なお、上記の第1光路31と第2光路32との間で光路切り替えを行うためにシャッタ21が閉じ状態から開き状態へ、開き状態から閉じ状態へ駆動されている途中では、図示のように、記録装置1に設けた照射制御手段(図示せず)が発光素子11を消灯するように制御し、紫外線の照射を中止する。これにより、無駄な電力消費を低減することができる。また、シャッタ21から不特定な方向に紫外線が反射されることで誤ってノズル孔に紫外線が照射され、例えばインクが固まってノズル孔が詰まる等の種々の不具合が起こるのを確実に防止することができる。
【0067】
そして、本実施形態においては、紫外線発生源10が、印刷ヘッド3の移動範囲外に固定的に設けられることにより、紫外線発生源10がキャリッジ4に配置される従来構造のような、キャリッジ4の搭載重量(印刷ヘッド3を含むヘッドユニットの重量)の増大を回避することができる。すなわち、キャリッジ4の搭載重量増大を招くことなく、印刷ヘッド3の往復動時の両方において紫外線照射を実行することができる。
【0068】
また、本実施形態では特に、シャッタ21が、L ≧ H/tan(180°−2α) + h/tan(180°−2α)の寸法関係を満たすように配置されている。これにより、シャッタ21により生成された第1光路31を経て被記録媒体Pに照射された紫外線の反射光が印刷ヘッド3の下面の一方側端部より他方側へと導かれることはない。この結果、印刷ヘッド3の下面に対し紫外線が到達するのを防止できるので、吐出前のインクに誤って紫外線が照射され、印字ヘッド3のノズル孔が硬化したインクで詰まってインクの吐出不良が起こることを防止できる。なお、上記の位置関係の設定はシャッタ21について説明したが、後述の、図6に示す変形例の光路切替機構20の左拡散ミラー24や、図9に示す変形例の光路切替機構20の左反射ミラー27についても、上記シャッタ21と同様の位置設定となっており、同様の効果を得ることができる。
【0069】
また、本実施形態では特に、開閉自在なシャッタ21の開閉動作を利用して光路30の切替を行うことにより、第1光路31側と第2光路32側の両方に2つの反射手段を設ける必要がなく、右側の反射ミラー22のみを設ければ足りる。これにより、部品点数を軽減し装置の製造コストを低減できる効果がある。
【0070】
また、本実施形態では特に、コリメータレンズ12からの紫外線が第1光路31又は第2光路32の拡散レンズ23に到達するまでは、光路30を略平行光の態様で導かれる。これにより、記録装置1の製造時における各部品の組み付け時に生じうる誤差により上記略平行光の光線方向における距離が変動したとしても、ビーム径は変化しない。この結果、記録装置1の製造時における部品の加工精度や組立精度を比較的低く抑えることが可能となり、製造コストを低減することができる。
【0071】
なお、本発明は、上記実施形態に限られず、技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例について説明する。
【0072】
(1)紫外線発生源を移動可能に配置する場合
上記実施形態においては、紫外線発生源10からの紫外線を、開閉自在なシャッタ21を用いて、印刷ヘッド3の左側を通過する第1光路31と右側を通過する第2光路32とに切り替えた。本変形例では、図6に示すように、紫外線発生源10を移動することによって光路が切り替えられる。なお、上記実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化している。
【0073】
図6において、本変形例の光路切替機構20は、キャリッジ3に設けられた図6中の左側(=走査方向一方側。以下適宜、単に「左側」という)の左拡散ミラー24(一方側反射手段、拡散手段)及び右拡散ミラー25(他方側反射手段、拡散手段)と、キャリッジ4による上記走査方向への印刷ヘッド3の移動範囲外の左側に固定的に設けられた、紫外線発生源10を上下方向に移動可能な移動機構40と、を備えている。
【0074】
左拡散ミラー24及び右拡散ミラー25は、図7に示すように、例えばアルミ板26aの表面に二フッ化マグネシウム(MgF)コートした凸面の複数のアルミ鏡面26を設けたものである。アルミ鏡面26は、好ましくは、紫外線発生源10の発光素子11と同数とし、1個の発光素子11に1個のアルミ鏡面26が対応するように、発光素子11と対応した配置となっている。
【0075】
左拡散ミラー24は、印刷ヘッド3の左側において走査方向と直交する鉛直方向(上下方向)における第1反射位置で、左側へ所定の角度θ(=45°)で前傾している。この左拡散ミラー24は、上記移動機構40により移動して上記第1反射位置に対応した高さの第1移動位置に紫外線発生源10が到達したときの、当該紫外線発生源10から図6中の右側(=走査方向他方側。以下適宜、単に「右側」という)へ出射された紫外線の光路30上に位置している。
【0076】
一方、右拡散ミラー25は、印刷ヘッド3の右側において走査方向に直交する鉛直方向(上下方向)における、上記第1位置とは高さの異なる(この例では上記第1位置よりも低い位置の)第2反射位置で、上記左側へ所定の角度θ(=45°)で前傾している。この右拡散ミラー25は、上記移動機構40により移動して上記第2反射位置に対応した高さの第2移動位置に紫外線発生源10が到達したときの、当該紫外線発生源10から右側へ出射された紫外線の光路30上に位置している。
【0077】
移動機構40は、この例では、図8に示すように、上下1対のスプロケット41a,41bと、これらスプロケット41a,41bに架け回して、鉛直方向に周回可能な段付きの無端ベルト42と、一方のスプロケット41aに取り付けたステップモータ43と、を備えている。このとき、紫外線発生源10及びコリメータレンズ12は、筐体44に設置されている。筐体44は、上記走査方向と直交する方向に間隔を開けた1対の鉛直方向のガイドバー45,45の間に摺動自在に支持されており、その筐体44の図8中左側の側面が上記無端ベルト42に固着されている。移動機構40は、ステップモータ43の駆動力によってスプロケット41aを介し無端ベルト42を鉛直方向に正逆に駆動する。これにより、紫外線発生源10が、コリメータレンズ12とともに、上記第1反射位置に対応した上記第1移動位置、又は、上記第2反射位置に対応した上記第2移動位置に、選択的に移動する。
【0078】
詳細には、キャリッジ4により印刷ヘッド3が左側へ向かって移動しているときには、移動機構40によって紫外線発生源10は第2移動位置に移動する(図6中の破線で示す状態)。これにより、紫外線発生源10から右側へ出射された紫外線が、第2反射位置に位置する右拡散ミラー25へと導かれる。右拡散ミラー25は入射した紫外線を所定の反射角(右拡散ミラー25の前傾角度θと略同じ角度)で反射して、第2光路32を生成する。第2光路32は印刷ヘッド3の右側を通過して被記録媒体Pに到達することから、左側へ向かって移動する印刷ヘッド3の移動方向の背後側において照射が行われる。これにより、被記録媒体Pに吐出された直後のインクに対し照射を行うことができる。
【0079】
一方、キャリッジ4により印刷ヘッド3が右側へ向かって移動しているときには、移動機構40によって紫外線発生源10は第1移動位置に移動する(図6中の実線で示す状態)。これにより、紫外線発生源10から右側へ出射された紫外線が、上記第1反射位置に位置する左拡散ミラー24へと導かれる。左拡散ミラー24は入射した紫外線を所定の反射角(左拡散ミラー24の前傾角度θと略同じ角度)で反射して、第1光路31を生成する。第1光路31は印刷ヘッド3の左側を通過して被記録媒体Pに到達することから、右側へ移動する印刷ヘッド3の移動方向の背後側において照射が行われる。これにより、被記録媒体Pに吐出された直後のインクに対し照射を行うことができる。なお、上記のようなキャリッジ4の搬送方向の切り替え、及び、移動機構40の移動方向の切り替えは、図示しない制御装置からの制御信号に基づき、互いに連携して制御される。
【0080】
以上のように、本変形例の記録装置1においても、上記実施形態と同様、印刷ヘッド3が左側へ移動している間でも右側へ移動している間でも、印刷ヘッド3の移動方向の背後側において照射が行われ、被記録媒体Pに吐出された直後のインクに対し照射を行うことができる。そして、紫外線発生源10が、印刷ヘッド3の移動範囲外に固定的に設けられることにより、上記実施形態と同様、キャリッジ4の搭載重量増大を招くことなく、印刷ヘッド3の往復動時の両方において紫外線照射を実行することができる。
【0081】
また、第1光路31と第2光路32との切替のために必要な動作が、印刷ヘッド3の移動範囲外に固定的に設けられた紫外線発生源10の移動のみであり、キャリッジ4の搭載物(ヘッドユニット)における切替動作等は必要ない。したがって、当該ヘッドユニットに光路の切替機構等を設ける場合のように生じうる振動の発生等を回避でき、印刷品質の低下を確実に防止することができる。
【0082】
(2)平板状の反射ミラーを用いる場合
この変形例では、上記図6に示した(1)の変形例における、左・右拡散ミラー24,25に代えて、図9に示すように、平板状の反射板からなる左反射ミラー27(一方側反射手段)及び右反射ミラー28(他方側反射手段)が用いられる。なお、上記実施形態及び(1)の変形例と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化している。また、この変形例では、平板状の反射板からなる反射ミラー27,28を使用したことから、第1光路31、第2光路32のそれぞれの終端直前に、図6では使用していない拡散レンズ23がそれぞれ設けられている。なお、この拡散レンズ23は、載置テーブル2が載置した被記録媒体Pへの紫外線の照射ムラを小さくするためのもので、図1に示したものと同等の構成である。
【0083】
左反射ミラー27は、印刷ヘッド3の図9中の左側(=走査方向一方側。以下適宜、単に「左側」という)において走査方向に直交する鉛直方向(上下方向)における第1反射位置で、上記左側へ所定の角度θ(=45°)で前傾している。この左反射ミラー27は、上記移動機構40により移動して上記第1反射位置と対応した高さの第1移動位置に紫外線発生源10が到達したときの、当該紫外線発生源10から図9中の右側(=走査方向他方側。以下適宜、単に「右側」という)へ出射された紫外線の光路30上に位置している。
【0084】
一方、右反射ミラー28は、印刷ヘッド3の右側において走査方向に直交する鉛直方向(上下方向)における、上記第1反射位置と高さの異なる(この例では上記第1位置よりも低い位置の)第2反射位置で、上記左側へ所定の角度θ(=45°)で前傾している。この右反射ミラー28は、上記移動機構40により移動して上記第2反射位置に対応した高さの第2移動位置に紫外線発生源10が到達したときの、当該紫外線発生源10から右側へ出射された紫外線の光路30上に位置している。
【0085】
そして、キャリッジ4により印刷ヘッド3が左側へ向かって移動しているときには、移動機構40によって紫外線発生源10は第2移動位置に移動する(図9中の破線で示す状態)。これにより、紫外線発生源10から右側へ出射された紫外線が、第2反射位置に位置する右反射ミラー28へと導かれる。右反射ミラー28は入射した紫外線を所定の反射角(右反射ミラー28の前傾角度θと略同じ角度)で反射して、第2光路32を生成する。第2光路32は印刷ヘッド3の右側を通過した後拡散レンズ23で拡散されて被記録媒体Pに到達することから、左側へ移動する印刷ヘッド3の移動方向の背後側において照射が行われる。これにより、被記録媒体Pに吐出された直後のインクに対し照射を行うことができる。
【0086】
一方、キャリッジ4により印刷ヘッド3が右側へ向かって移動しているときには、移動機構40によって紫外線発生源10は第1移動位置に移動する(図9中の実線で示す状態)。これにより、紫外線発生源10から右側へ出射された紫外線が、上記第1反射位置に位置する左反射ミラー27へと導かれる。左反射ミラー27は入射した紫外線を所定の反射角(左反射ミラーの前傾角度θと略同じ角度)で反射して、第1光路31を生成する。第1光路31は印刷ヘッド3の左側を通過した後拡散レンズ23で拡散されて被記録媒体Pに到達することから、右側へ移動する印刷ヘッド3の移動方向の背後側において照射が行われる。これにより、被記録媒体Pに吐出された直後のインクに対し照射を行うことができる。
【0087】
以上のように、本変形例の記録装置1においても、上記(1)の変形例と同様、印刷ヘッド3が左側へ移動している間でも右側へ移動している間でも、印刷ヘッド3の移動方向の背後側において照射が行われ、被記録媒体Pに吐出された直後のインクに対し照射を行うことができる。そして、紫外線発生源10が、印刷ヘッド3の移動範囲外に固定的に設けられることにより、上記と同様、キャリッジ4の搭載重量増大を招くことなく、印刷ヘッド3の往復動時の両方において紫外線照射を実行することができる。
【0088】
図1などに示す、拡散レンズ23について、もし、コリメータレンズ12による光が十分に平行にできないのであれば、コリメータレンズ12を通過した光は若干拡散したものになる。その場合には、図10に示すように、拡散レンズ23を凸レンズ29に置き換えて、コリメータレンズ12を若干通過した光を収束させてから、被記録媒体Pに到達させる。
【0089】
(3)その他
以上においては、載置手段である載置テーブル2が載置して水平方向に支持した被記録媒体Pに対し、印刷ヘッド3のノズル面3aからインクを下方に吐出する場合を示したが、本発明はこれに限られない。載置手段が被記録媒体Pを鉛直方向に支持し、印刷ヘッド3のノズル面3aが当該鉛直方向の被記録媒体Pに対しインクを水平方向に吐出する構成に、本発明を適用してもよい。この場合も同様の効果を得る。
【0090】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0091】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0092】
1 記録装置
2 載置テーブル(載置手段)
3 印刷ヘッド
4 キャリッジ(印刷ヘッド搬送手段)
10 紫外線発生源
11 発光素子
12 コリメータレンズ(変換手段)
20 光路切替機構(光路切替手段)
21 シャッタ(開閉手段)
22 反射ミラー(他方側反射手段)
23 拡散レンズ(拡散手段)
24 左拡散ミラー(一方側反射手段、拡散手段)
25 右拡散ミラー(他方側反射手段、拡散手段)
27 左反射ミラー(一方側反射手段)
28 右反射ミラー(他方側反射手段)
30 光路
31 第1光路
32 第2光路
40 移動機構
P 被記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体を載置可能な載置手段と、
紫外線の露光により硬化するインクを、前記載置手段が載置した前記被記録媒体に対して吐出する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドを、走査方向一方側及び他方側に往復移動させるための印刷ヘッド搬送手段と、
前記ヘッド搬送手段による前記走査方向への前記印刷ヘッドの移動範囲外に固定的に設けられ、前記載置手段が載置した前記被記録媒体に照射するための紫外線を発生する紫外線発生源と、
前記固定的に設けられた前記紫外線発生源から発生された前記紫外線の、当該紫外線発生源から前記被記録媒体へ至るまでの光路の終端部を、前記印刷ヘッドの前記走査方向一方側を通過する第1光路と前記印刷ヘッドの前記走査方向他方側を通過する第2光路とに切替可能な光路切替手段と、
を有することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1記載の記録装置において、
前記紫外線発生源は、
前記印刷ヘッドの移動範囲よりも前記走査方向一方側に設けられており、
前記光路切替手段は、
前記紫外線発生源から前記走査方向他方側へ出射された前記紫外線を入射して前記印刷ヘッドの前記走査方向他方側へ所定の反射角で反射し、前記第2光路を生成する他方側反射手段と、
開閉可能に構成され、閉じ状態においては、前記紫外線発生源から前記走査方向他方側へ出射された前記紫外線を入射して前記印刷ヘッドの前記走査方向一方側へ所定の反射角で反射し前記第1光路を生成するとともに、開き状態においては、前記紫外線発生源から前記走査方向他方側へ出射された前記紫外線を前記他方側反射手段へと導く、開閉手段と、
を有することを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項1記載の記録装置において、
前記光路切替手段は、
前記走査方向に直交する方向における第1反射位置に位置し、前記紫外線発生源から前記走査方向他方側へ出射された前記紫外線を入射して前記印刷ヘッドの前記走査方向一方側へ所定の反射角で反射して前記第1光路を生成する一方側反射手段と、
前記走査方向に直交する方向における前記第1反射位置とは異なる第2反射位置に位置し、前記紫外線発生源から前記走査方向他方側へ出射された前記紫外線を入射して前記印刷ヘッドの前記走査方向他方側へ所定の反射角で反射して前記第2光路を生成する他方側反射手段と、
前記紫外線発生源を、前記第1反射位置に対応した第1移動位置、及び、前記第2反射位置に対応した第2移動位置、に移動可能な移動機構と、
を有することを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3記載の記録装置において、
前記紫外線発生源は、
少なくとも1つの発光素子と、
前記発光素子から広がりながら発光された光を略平行光へと変換する変換手段と、
を備えており、
前記第1光路及び前記第2光路には、
前記略平行光を所定の角度で広げる拡散手段が設けられている
ことを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項2又は請求項3記載の記録装置において、
前記紫外線発生源は、
少なくとも1つの発光素子と、
前記発光素子から広がりながら発光された光を略平行光へと変換する変換手段と、
を備えており、
前記発光素子の光源部分が間隔をあけて複数あり、前記変換手段が複数あることを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項5記載の記録装置において、
複数の前記変換手段が、別々の前記発光素子から照射された紫外線を略平行光へと変換することを特徴とする記録装置。
【請求項7】
請求項6記載の記録装置において、
複数の前記変換手段が、前記光路切替手段による光路切替よりも上流側の光路に設けられ、別々の前記発光素子から照射された紫外線を略平行光へと変換することを特徴とする記録装置。
【請求項8】
請求項6記載の記録装置において、
複数の前記変換手段が、前記発光素子と同数配置され、別々の前記発光素子から照射された紫外線を略平行光へと変換することを特徴とする記録装置。
【請求項9】
請求項4記載の記録装置において、
前記発光素子が複数あり、前記変換手段が1つ設けられることを特徴とする記録装置。
【請求項10】
請求項2乃至請求項9のいずれか1項記載の記録装置において、
前記発光素子による前記載置手段が載置した前記被記録媒体に対する照射領域の形状が前記走査方向に直交する線に関して対象形状であることを特徴とする記録装置。
【請求項11】
請求項2乃至請求項10項記載の記録装置において、
前記発光素子による前記載置手段が載置した前記被記録媒体に対する照射領域の形状が、前記第1光路を経由した発光素子による照射領域と前記第2光路を経由した発光素子による照射領域とで同じであることを特徴とする記録装置。
【請求項12】
請求項2乃至請求項11のいずれか1項記載の記録装置において、
閉じ状態の開閉手段若しくは一方側反射手段が、前記紫外線を水平方向から入射して反射するときの反射軸と当該水平方向とのなす角度をα、前記水平方向からの前記紫外線の入射位置の前記被記録媒体からの高さをH、前記印刷ヘッドの下面の前記被記録媒体からの高さをh、としたとき、
開閉手段若しくは一方側反射手段は、
前記入射位置から、前記印刷ヘッドの下面の前記一方側端部までの、水平方向距離Lが、
L ≧ H/tan(180°−2α) + h/tan(180°−2α)
となるように、配置されている
ことを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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