説明

記録装置

【課題】記録ヘッドの上流側側面に付着する汚れを考慮した記録装置を提供すること。
【解決手段】記録装置10は、被記録媒体を送り方向へ送る搬送ローラー28と、前記被記録媒体に対してインクを吐出する記録ヘッド36と、前記送り方向と交差する交差方向へ前記記録ヘッドを移動させる第1移動機構62と、前記記録ヘッドの移動範囲内において記録領域の外に配設され、前記搬送ローラーと一体に回転するクリーニング部材60と、クリーニング実行信号に基づいて前記記録ヘッドを前記クリーニング部材によるクリーニングポジションに前記第1移動機構によって位置させ、前記搬送ローラーを回転させて前記クリーニング部材に前記記録ヘッドにおける前記送り方向の上流側側面をクリーニングさせる制御部48とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録媒体に対してインクを吐出して記録する記録ヘッドを備える記録装置に関する。
本願において、記録装置には、インクジェットプリンター、ラインプリンター、複写機、ファクシミリ等の種類が含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示す如く、プリンターは、インクを吐出する記録ヘッドを備えている。また、前記記録ヘッドにおける用紙と対向する面(ノズル形成面)には、インクを吐出するノズルが形成されている。またさらに、前記ノズル形成面の汚れを拭き取ることができるワイパーが設けられている。そして、定期的に前記ワイパーが前記ノズル形成面をきれいにしている。従って、前記ノズルの状態をある程度安定させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−306037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記ノズルから吐出するインク滴が小さいため、該インク滴の一部はインクミストとなって浮遊する。そして、前記記録ヘッドの側面に付着して汚れとなる。
ここで、従来技術の問題点を図9(A)(B)に示す。
図9(A)(B)に示すのは、従来技術における記録ヘッド部分の側面図である。
図9(A)に示す如く、キャリッジ80は、記録ヘッド82を備えており、ガイド軸84によって用紙86の幅方向(紙面に垂直な方向)へ案内されながら移動することができるように構成されている。また、記録ヘッド82と対向する位置には、用紙86を支持する媒体支持部88が設けられている。またさらに、送りローラー対90によって用紙86が送られるように設けられている。
【0005】
前述したように、インクミストが記録ヘッド82の側面92に付着して汚れ94となる。
そして、図9(B)に示す如く、記録を続行すると、インクミストがさらに付着するため該汚れ94が徐々に大きく成長し、前記ノズル形成面に達する虞がある。係る場合、前記汚れが用紙86と接触し、用紙86が汚れる虞がある。このため、記録ヘッド82の側面92をクリーニングし、前記側面92に付着した汚れ94を除去する必要がある。
しかし、記録ヘッド82の用紙86の送り方向上流側側面は、用紙86の記録時に該用紙86の正確な位置制御を行うために前記上流側側面と送りローラー対90との間の距離が短く設定されている。そのため、ユーザーが手動でクリーニングをすることが困難である。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、記録ヘッドの上流側側面に付着する汚れを考慮した記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様の記録装置は、被記録媒体を送り方向へ送る搬送ローラーと、前記被記録媒体に対してインクを吐出する記録ヘッドと、前記送り方向と交差する交差方向へ前記記録ヘッドを移動させる第1移動機構と、前記記録ヘッドの移動範囲内において記録領域の外に配設され、前記搬送ローラーと一体に回転するクリーニング部材と、クリーニング実行信号に基づいて前記記録ヘッドを前記クリーニング部材によるクリーニングポジションに前記第1移動機構によって位置させ、前記搬送ローラーを回転させて前記クリーニング部材に前記記録ヘッドにおける前記送り方向の上流側側面をクリーニングさせる制御部とを備えることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、前記第1移動機構によって前記記録ヘッドを前記記録領域の外に位置するクリーニングポジションに移動させてクリーニングする。従って、従来困難であった前記記録ヘッドの前記上流側側面のクリーニングを簡単に行うことができる。また、前記記録ヘッドを記録領域の外に位置させてクリーニングを実行することから、除去したインクにより記録領域内を汚す虞がなく、前記記録領域内へ搬送されて記録される被記録媒体を汚すことがない。
【0009】
さらに、本態様によれば、前記クリーニング部材は前記搬送ローラーと一体に回転する。従って、前記搬送ローラーと前記クリーニング部材との間に該クリーニング部材を駆動させる機構を設ける必要がなく、記録装置の部品点数を少なくすることができ、記録装置の構成を簡素なものとすることができる。
【0010】
本発明の第2の態様の記録装置は、第1の態様において、前記制御部は、前記クリーニングを実行する場合、前記記録ヘッドを前記クリーニングポジションで前記交差方向に往復動させることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、前記記録ヘッドを被記録媒体の送り方向と交差する方向へ往復動させながらクリーニングする。従って、クリーニング部材の前記交差方向における長さが記録ヘッドの対応する部分の長さより短いものであっても前記交差方向において前記クリーニング部材を前記側面の全長に渡って接触させることができる。これにより、本態様は、前記側面においてクリーニング残りが生ずる虞がなく前記側面への汚れの再付着を防止することができる。その結果、被記録媒体への良好な記録を実行することができる。即ち、前記側面に付着したインクにより被記録媒体が汚れることを防止することができる。
【0012】
本発明の第3の態様の記録装置は、第1の態様又は第2の態様において、前記制御部は、前記被記録媒体を前記搬送ローラー上から退避させた後に前記クリーニングを実行させることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、前記被記録媒体を前記搬送ローラー上から退避させた後に前記クリーニングを実行する。従って、第1の態様又は第2の態様と同様の作用効果に加え、前記被記録媒体が前記クリーニングに伴う前記搬送ローラーの回転により損傷することを防止することができる。
【0014】
本発明の第4の態様の記録装置は、第1の態様から第3の態様のいずれか一つの態様において、前記制御部は、前記被記録媒体への前記記録ヘッドの記録動作中に前記クリーニング実行信号を受けた場合、前記記録動作を優先し、前記被記録媒体への前記記録動作終了後に前記クリーニングを実行させることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、前記記録ヘッドが前記被記録媒体への記録動作中に前記制御部が前記クリーニング実行信号を受けたとき、前記被記録媒体への前記記録動作を優先する。従って、第1から第3のいずれか一つの態様と同様の作用効果に加え、前記被記録媒体への記録の中断に伴う位置ずれや記録品質の変化の影響を防止することができる。
【0016】
本発明の第5の態様の記録装置は、第1の態様から第4の態様のいずれか一つの態様において、前記制御部が、前記記録ヘッドが複数の前記被記録媒体への記録動作を連続して実行しているときに前記クリーニング実行信号を受けた場合、現在実行している記録動作終了後又は前記複数の被記録媒体への記録動作終了後に前記クリーニングを実行させることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、複数の被記録媒体への記録を前記記録ヘッドが連続して実行しているときに前記制御部は、前記クリーニング実行信号を受けたとき、一つの態様として現在実行している前記被記録媒体への記録動作終了後に前記クリーニングを実行させる。従って、第1の態様から第4の態様のいずれか一つの態様と同様の作用効果に加え、インク汚れにより低下していた被記録媒体の記録品質を次に記録を実行する被記録媒体から向上させることができる。また、他の態様として前記複数の被記録媒体への記録動作終了後に前記クリーニングを実行させる。この場合は、複数の前記被記録媒体への記録を指令したユーザーを前記クリーニングの実行で待たせることがなく、複数の前記被記録媒体の記録品質を統一したものとすることができる。
【0018】
本発明の第6の態様の記録装置は、第1の態様から第5の態様のいずれか一つの態様において、前記搬送ローラーを移動させて、前記クリーニング部材と前記記録ヘッドの側面との接触圧を調整可能にする第2移動機構を備えることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、前記記録ヘッドに対する前記搬送ローラーの位置を前記第2移動機構によって調整可能である。従って、第1の態様から第5の態様のいずれか一つの態様と同様の作用効果に加え、前記クリーニング部材と前記記録ヘッドの前記上流側側面との間の接触圧をクリーニングに最適なものとし、クリーニングの洗浄効果を高めることができる。さらに、前記クリーニング部材が前記クリーニングにより損耗し、前記記録ヘッドの前記側面に接触しなくなったとき、前記搬送ローラーの位置を調整して前記クリーニング部材を前記側面に再接触させてクリーニングを実行させることができる。これにより、クリーニング部材の交換頻度を減少させることができる。
【0020】
本発明の第7の態様の記録装置は、第1の態様から第6の態様のいずれか一つの態様において、前記クリーニング手段は交換可能であることを特徴とする。
本態様によれば、第1の態様から第5の態様のいずれか一つの態様と同様の作用効果に加え、所定回数以上のクリーニングを実施した前記クリーニング手段を交換することにより、低下したクリーニングの洗浄効果を回復することができる。
【0021】
本発明の第8の態様の記録装置は、第1の態様から第7の態様のいずれか一つの態様において、前記クリーニングのタイミング及び前記クリーニング部材の交換時期を知らせるお知らせ手段を備えることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、この記録装置を使用するユーザーは、前記記録ヘッドの前記上流側側面のクリーニングのタイミング及び前記クリーニングを行う前記クリーニング部材の交換時期を知ることができる。従って、第1の態様から第7の態様のいずれか一つの態様と同様の作用効果に加え、ユーザーは、クリーニングが必要であると判断したとき、クリーニングを実行させて被記録媒体の記録品質を維持させることができる。また、前記記録装置は、前記クリーニング部材の交換時期を前記おしらせ手段でユーザーに知らせることができる。このため、前記クリーニング部材の交換をユーザーが行うことにより前記クリーニングの洗浄効果を回復することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施例のプリンター内部の概略を示す側面図。
【図2】本実施例のプリンター内部の記録部の概略を示す側面図。
【図3】本実施例のプリンター内部の概略を示す平面図。
【図4】(A)(B)は本実施例の交換可能なクリーニング部材を示す図。
【図5】本実施例のクリーニング方法を示す図。
【図6】本実施例のクリーニング方法を示す図。
【図7】本実施例のクリーニング手順を示すフローチャート。
【図8】(A)(B)は第2の実施例のクリーニング手段を示す側面図。
【図9】(A)(B)は従来技術における問題点を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る記録装置の一例であるプリンターの概略を示す側面図である。図1に示す如く、本発明に係るプリンター10は、媒体送り手段12と、送り経路と、記録部14と、排出部16と、を備えている。
【0025】
このうち、媒体送り手段12は、被記録媒体の一例である用紙Pを送り方向Yに送ることができるように設けられている。また、送り経路は、媒体送り手段等によって送られる用紙Pを案内する媒体案内部によって構成されており、用紙Pが送られる経路を示す。
また、記録部14は、媒体送り手段12によって送られた用紙Pに対して記録を実行することができるように構成されている。またさらに、排出部16は、記録された用紙Pを排出し、排出トレイ上(図示せず)に載置することができるように設けられている。
【0026】
具体的に、媒体送り手段12は、載置部18と、ピックアップローラー20と、アーム部22と、分離手段24と、給送ローラー対26と、搬送ローラー対28と、を備えている。このうち、載置部18は、用紙Pが載置されるように設けられている。また、ピックアップローラー20は、モーターの動力によって駆動することができ、載置部18に積層された用紙Pのうち、積層方向最上位に用紙Pと接触することができるように設けられている。尚、Z軸の矢印が示す方向は積層方向上方である。
【0027】
またさらに、アーム部22は、送り方向上流側である一端側の揺動軸30を中心に揺動可能に設けられている。そして、送り方向下流側である他端側にピックアップローラー20を回動可能に保持するように構成されている。尚、モーターは、アーム部22とは別のプリンター10の基体部側の箇所に設けてもよいし、アーム部上に設けてもよい。前者の場合、揺動軸30を介してギア輪列等の動力伝達手段によってピックアップローラー20まで動力を伝達するように構成する。一方、後者の場合、揺動軸30を介さずにギア輪列等の動力伝達手段によってピックアップローラー20まで動力を伝達するように構成する。
【0028】
また、分離手段24は、載置部18における用紙Pがセットされる箇所より送り方向下流側に設けられている。具体的には、ピックアップローラー20によって送られる用紙Pの側視した姿勢に対して傾斜した傾斜面32を有している。そして、用紙Pが重送された場合、ピックアップローラー20に対して最上位の用紙Pと次位以降の用紙Pとを分離することができるように設けられている。所謂、土手分離機構である。
ここで、「土手分離機構」とは、所定の角度で用紙Pが進入するように面を設け用紙Pの先端に負荷を与えることにより分離する機構をいう。
【0029】
またさらに、給送ローラー対26および搬送ローラー対28は、分離手段24を通過した用紙Pを記録部14へ送ることができるように設けられている。このうち、給送ローラー対26は、給送駆動ローラー26aと、給送従動ローラー26bとを有している。
尚、給送従動ローラー26bに代えて回動に所定の負荷を伴う所謂、リタードローラーでもよい。係る場合、土手分離機構での分離が十分でない場合に、重送された用紙Pを確実に分離することができる。即ち、給送駆動ローラー26aと直接的に接触する用紙を、該用紙よりリタードローラー側の用紙から分離することができる。
【0030】
また、搬送ローラー対28は、送り経路において給送ローラー対26と記録部14との間で該記録部14の上流側近傍に設けられている。具体的には、搬送ローラー対28は、搬送駆動ローラー28aと搬送従動ローラー28bとを有している。そして、例えば、ステッピングモーターによって精度よく用紙Pを記録部14へ送ることができるように設けられている。尚、用紙Pの先端が搬送ローラー対28に到達した際、送り方向Yに対する用紙Pの姿勢を正す所謂、スキュー取りが実行されるように構成されているのは言うまでもない。
【0031】
また、記録部14は、キャリッジ34と、記録ヘッド36と、媒体支持部38と、第1ガイド軸40と、第2ガイド軸42と、を備えている。このうち、キャリッジ34は、用紙Pの幅方向X(紙面に垂直な方向)へ延設された第1ガイド軸40および第2ガイド軸42に案内されながら幅方向Xへ移動するように構成されている。尚、キャリッジ34は、詳細な説明は省略するが後述する公知のキャリッジ移動手段62(図3参照)によって動力が伝達されて幅方向Xに移動する。また、記録ヘッド36は、キャリッジ34に設けられており、インクを用紙Pに対して吐出することができるように設けられている。所謂、インクジェット式の記録である。尚、符号44は、記録ヘッド36における送り方向の上流側側面である。
【0032】
またさらに、媒体支持部38は、記録ヘッド36と対向する位置に設けられ、用紙Pを支持し、用紙Pと記録ヘッド36との間の距離を所定の間隔にすることができるように構成されている。
また、排出部16は、排出ローラー対46と、図示しない排出トレイを備えている。排出ローラー対46は、送り経路において記録部14より下流側に設けられ、記録された用紙Pを排出トレイへ送ることができるように設けられている。尚、媒体送り手段12の載置部18は、プリンター本体に対して着脱可能な所謂、カセットタイプの構成でもよいし、プリンター本体と一体に形成されている構成でもよい。
【0033】
図2は、本実施例のプリンター内部の記録部の概略を示す側面図である。
記録部14は、制御部48と電気的に接続されている。後ほど詳細に説明するが、制御部48は、クリーニング実行信号を受けてキャリッジ34、キャリッジ移動手段62及び搬送駆動ローラー対28を制御し、記録ヘッド36の上流側側面44のクリーニングを実行させる。
【0034】
制御部48は、タイミング計測部50に電気的に接続されている。タイミング計測部50は、前回記録ヘッド36の上流側側面44のクリーニングを実行したときを基準として、その後経過した時間や、その後のインク吐出量のカウントに基づいて、次回のクリーニングの望ましいタイミングを測ることができるように設けられている。例えば、その後所定時間経過した場合や、その後のインク吐出量が所定量に達した場合に、次回のクリーニングの望ましいタイミングとすることができる。タイミング計測部50は、クリーニングの望ましいタイミングになったとき、制御部48にクリーニング実行信号を送信する。尚、予め設けられた複数の条件に基づいて、タイミングを決定する構成でもよい。
【0035】
タイミング計測部50は、インク吐出量からインクミストが記録ヘッド36の上流側側面44に付着する量をおおよそ予測することができ、これに基づいて、タイミングを測ることができる。尚、ノズルから吐出したインク摘をカウントすることにより、インク吐出量を把握することができるものとする。
【0036】
また、本実施例において、制御部48は、お知らせ手段52及び選択手段54に電気的に接続された構成とすることもできる。
【0037】
お知らせ手段52は、具体的には、一例として表示部56を有している。音声や警告音で知らせてもよいのは勿論である。本実施例では、タイミング計測部50での経過時間やインク吐出量のカウントの計測に基づいてクリーニングをすることが望ましいタイミングである旨を表示してユーザーにクリーニングを促すことができるように設けられている。更にお知らせ手段52は、所定回数のクリーニングを実行後に、後述するクリーニング部材60を交換することが望ましいタイミングである旨を表示してユーザーにクリーニング部材60の交換を促すことができる。
【0038】
選択手段54は、具体的には、一例として入力部58を有している。押しボタンやタッチパネルによって入力してもよいし、プリンター10に接続されたコンピューターを操作してプリンター10に入力してもよい。
【0039】
そして、タイミング計測部50が望ましいタイミングであると判断したとき、クリーニングをすることが望ましいタイミングである旨が表示部56に表示される。そして、ユーザーがクリーニングをすることを選択した場合、後述するように、キャリッジ移動手段62によってキャリッジ34が、クリーニング部材60が設けられている所定の位置まで移動する。そして、クリーニングが実行されるように構成されている。
尚、クリーニングを実行して、記録ヘッド36の上流側側面44をきれいにする点に関しては、選択手段54によるユーザーの選択を介さない構成でもよいのは勿論である。言い換えると、望ましいタイミングとなったとき、選択によらずに、クリーニングが実行される構成でもよい。
【0040】
図3に示すのは、本実施例のプリンター内部の概略を示す平面図である。図3に示す如く、本実施例のプリンター10は、クリーニング部材60をさらに備えている。クリーニング部材60は、記録ヘッド36の上流側側面44をきれいにするクリーニングを実行することができるように構成されている。
【0041】
キャリッジ34は、キャリッジ移動手段62によって幅方向X(紙面左右方向)へ移動可能に設けられている。例えば、専用のモーターの動力が無端ベルトによってキャリッジ34に伝達されて、キャリッジ34が移動することができる。
【0042】
クリーニング部材60は、搬送駆動ローラー28aの外周面に交換可能に取り付けられ、その取り付け位置は幅方向Xにおけるキャリッジ34の移動範囲内における記録領域Aの外である。これは、記録領域内を汚さないようにするためである。ここで、記録領域Aは、幅方向Xにおいて用紙Pが送られる領域(範囲)より少し広く構成されている。これは用紙Pの幅方向両端に対しても記録を実行するためである。所謂、縁なし記録である。
【0043】
また、図4(A)(B)に示す如く、クリーニング部材60は、具体的には、一例として回転ブラシ64である。図4(A)に示すように、複数のブラシ66が柔軟なシート部材68の一方の面に取り付けられており、他方の面には粘着部材70が取り付けられている。回転ブラシ64は、搬送駆動ローラー28aの外周面に粘着部材70を貼り付けて交換可能に取り付けられている。このため、回転ブラシ64は搬送駆動ローラー28aと一体に回転する。
回転ブラシ64すなわちクリーニング部材60は、搬送駆動ローラー28aに設ける構成にかえて、搬送従動ローラー28bに設ける構成としてもよい。
また、クリーニング部材60は、回転ブラシ64に代えてワイパー部材やスポンジ等を用いてもよく、搬送駆動ローラー28aの外周面に接着又は取付部材等で交換可能に取り付けられていてもよい。通常、記録精度を上げるために、記録ヘッド36の上流側側面44と搬送ローラー対28との間の間隔が狭く構成されている。このような構成である場合にクリーニング部材60は、特に有効である。
【0044】
続いて、本実施例のクリーニング方法についてより詳しく説明する。図5(A)(B)に示すのは、本実施例のクリーニング方法を示す図である。このうち、図5(A)は記録ヘッド36とクリーニング部材60との位置関係を示す概略平面図である。一方、図5(B)は記録ヘッド36とクリーニング部材60との位置関係を示す概略側面図である。
【0045】
図5(A)(B)に示す如く、クリーニング部材60が設けられている位置までキャリッジ34が移動すると、回転ブラシ64は、記録ヘッド36の上流側側面44と接触する。ここで、接触する箇所は、図5(B)に示す如く、上流側側面44におけるノズル形成面72に近い側であることが望ましい。言い換えると、上流側側面44と、ノズル形成面72とによって形成される角の近傍であることが望ましい。この理由は、インクミストが側面に付着して汚れが成長する際、ノズル形成面72に向かって成長することを防止できるからである。さらに、これにより、インクの固まりがノズル列74を覆うことによる吐出不良や、インクの固まりが用紙Pと接触することによる用紙汚れが生じることを防止できるからである。
【0046】
また、図5(B)に示す如く、キャリッジ34の移動が停止した後、回転ブラシ64が回転して、記録ヘッド36の上流側側面44に付着した汚れを落とすように構成されている。ここで、回転ブラシ64の回転方向は、図5(B)に示す如く、上流側側面44の汚れを下方へ移動させることができる方向が望ましい。これにより、付着した汚れが固化している場合は、下方へ払い落とすことができる。そして、下方に設けられた溝等に汚れを入れることができる。仮に逆方向へ回転すると、汚れを上方へまき散らす虞が生じる。尚、ただ単に汚れを落とすことを目的とした場合、回転ブラシ64の回転方向はどちらでもよいのは言うまでもない。
【0047】
また、本実施例においてブラシを用いたのは、記録ヘッド36の上流側側面44の付着した汚れが固化していることが考えられるからである。ブラシは固化した汚れを削り落とすことができるので、非常に有効である。
【0048】
更に図6に示す如く、前記クリーニング部材60の幅方向Xの長さが前記記録ヘッド36の前記上流側側面44の幅方向の長さよりも短いときは、キャリッジ34を幅方向Xにおいて往復動させる。このようにすれば、記録ヘッド36の上流側側面44が幅方向Xに移動しながら回転ブラシ64に接触することになり、記録ヘッド36の上流側側面44の幅方向全長にわたってクリーニングすることができる。これにより、前記上流側側面44の前記クリーニング部材60の長さより長い部分と回転ブラシ64とが接触しなかったことによるクリーニング残りの生ずる虞がなくなる。尚、クリーニング実行時にキャリッジ34を往復動させることについて、入力部58でユーザーに選択させる構成としてもよい。
尚、前記クリーニング部材60の幅方向Xの長さが前記記録ヘッド36の前記上流側側面44の幅方向の長さよりも長い場合においても、キャリッジ34を幅方向Xにおいて往復動させてよい。クリーニング部材60の回転動とキャリッジ34の往復動との両者の動きが合わさることで、洗浄効果が向上するからである。
【0049】
続いて、本実施例のクリーニング手順の全体について詳しく説明する。図7に示すのは、本実施例のクリーニング手順の全体を示す図である。
図7に示す如く、ステップS1では、制御部48でクリーニング実行信号を受信する。
前記クリーニング実行信号は、タイミング計測部50から送信され、又はタイミング計測部50の計測に基づきお知らせ手段52でクリーニングのタイミングを知らされたユーザーが選択手段54で前記クリーニングの実行を選択したことにより入力部58から送信される。そして、ステップ2へ進む。
【0050】
ステップS2では、記録部14において用紙Pへの記録動作が実行中であるか否かを判定する。具体的には、記録部14において用紙Pへの記録動作が行われていないと判定した場合、ステップ3に進む。一方、記録部14において用紙Pへの記録動作が行われていると判定した場合、用紙Pへの記録動作を継続するためにステップ6へ進む。
【0051】
ステップ3では、記録ヘッド36をクリーニングポジションに位置させる。具体的には、キャリッジ34を記録領域Aの外のクリーニング部材60と相対する位置にキャリッジ移動手段62によって移動させる。そして、ステップ4へ進む。
【0052】
ステップ4では、用紙Pを搬送ローラー28上から退避させる。具体的には、用紙Pへの記録動作が終了した後、記録された用紙Pが搬送ローラー28上に存在する場合、用紙Pを搬送ローラー28により送り方向下流へ搬送させる。また、用紙Pへの記録動作が終了した後、次に記録する予定の用紙Pが搬送ローラー28上に存在する場合、次に記録する予定の用紙Pを搬送ローラー28により送り方向上流の送り経路へ退避させる。そして、ステップ5へ進む。
【0053】
ステップ5では、クリーニング部材60がクリーニングを実行する。具体的には、搬送ローラー28を回転させて、クリーニング部材60が記録ヘッド36の上流側側面44をきれいにする。これにより、インクミストが上流側側面44に付着することによる汚れを落とすことができる。即ち、効率良くクリーニングを実行することができる。そして、シーケンスを終了する。
【0054】
ステップ6では、記録部14において用紙Pへの記録動作を継続することを優先する。用紙Pへの記録動作が終了すると、ステップ7へ進む。
【0055】
ステップ7では、次の用紙Pへ記録を実行するか否かを選択する。具体的には、現在記録動作実行中の用紙Pの次に記録すべき用紙Pがない場合、ステップ3に進む。また、現在記録動作実行中の用紙Pの次に記録すべき用紙Pがある場合、次に記録すべき用紙Pにおいて記録動作を継続するときはステップ6に戻り、又は記録動作を一旦保留しクリーニングを実行するときはステップ3に進む。尚、記録すべき用紙Pが複数枚ある場合において、ステップ3に進まないときはステップ6とステップ7とを繰り返す。
【0056】
[実施例2](図8)
次に、図8に基づいて、実施例2に係る記録装置10の搬送駆動ローラー28aについて説明する。本実施例の一つの態様として、記録装置10は搬送駆動ローラー28aを送り方向Y(紙面左右方向)及び幅方向X(紙面に鉛直方向)に交差する方向Z(紙面上下方向)へ移動させる搬送ローラー移動手段76を備えている。図示の例では搬送駆動ローラー28aの両端に搬送ローラー移動手段76が取り付けられ、搬送駆動ローラー28a及びクリーニング部材60をZ方向へ移動させる。
【0057】
即ち、搬送ローラー移動手段76は、記録ヘッド36の上流側側面44に対するクリーニング部材60の位置を前記Z方向に調整することができる。このため、搬送ローラー移動手段76は、上流側側面44とクリーニング部材60との間の接触圧を最適なものとし、クリーニングの洗浄効果を高めることができる。
【0058】
さらに、搬送ローラー移動手段76は、クリーニング部材60の回転ブラシ64がクリーニングに伴って損耗したとき、搬送駆動ローラー28a及びクリーニング部材60の前記Z方向における位置を調整し回転ブラシ64を上流側側面44に再接触させることができる。このため、搬送ローラー移動手段76は、クリーニング部材60の交換頻度を減少させることができる。尚、搬送ローラー移動手段76は、クリーニング部材60が搬送従動ローラー28bに取り付けられているとき、搬送従動ローラー28bに設けられている。また、搬送ローラー移動手段76は、一例としてラックピニオンやスライドなどの直線移動機構であるが、搬送ローラー28の前記Z方向の位置を調整することができる構成であればこれらに限られない。
【0059】
また、搬送ローラー移動手段76は、上記の例では搬送駆動ローラー28aを前記Z方向に移動させて前記クリーニング部材60と前記上流側側面44との位置を調整する構成としたが、前記搬送駆動ローラー28aをX方向又はY方向に移動させて前記クリーニング部材60と前記上流側側面44との位置を調整する構成としてもよい。
【0060】
また、本発明に係るプリンター10において、クリーニング部材60をユーザーが手動でクリーニングすることができる構成とすることが望ましい。このようにプリンター10を構成すれば、クリーニング部材60の交換を極力抑えることができ、省コスト化を図ることができる。
また、本発明に係るプリンター10は、クリーニング部材60を清掃する部材を備えていてもよい。この構成においても上記の効果を得ることができる。
【0061】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0062】
10 プリンター、12 媒体送り手段、14 記録部、16 排出部、
18 載置部、20 ピックアップローラー、22 アーム部、24 分離手段、
26 給送ローラー対、26a 給送駆動ローラー、26b 給送従動ローラー、
28 搬送ローラー対、28a 搬送駆動ローラー、28b 搬送従動ローラー、
30 揺動軸、32 傾斜面、34 キャリッジ、36 記録ヘッド、
38 媒体支持部、40 第1ガイド軸、42 第2ガイド軸、44 上流側側面、
46 排出ローラー対、48 制御部、50 タイミング計測部、
52 お知らせ手段、54 選択手段、56 表示部、58 入力部、
60 クリーニング部材、62 キャリッジ移動手段、64 回転ブラシ、
66 ブラシ、68 シート部材、70 粘着部材、72 ノズル形成面、
74 ノズル列、80 (従来技術の)キャリッジ、82 記録ヘッド、
84 ガイド軸、86 用紙、88 媒体支持部、90 送りローラー対、
92 側面、94 汚れ(付着したインク)、A 記録領域、P 用紙、X 幅方向、
Y 送り方向、Z 積層方向(鉛直方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体を送り方向へ送る搬送ローラーと、
前記被記録媒体に対してインクを吐出する記録ヘッドと、
前記送り方向と交差する交差方向へ前記記録ヘッドを移動させる第1移動機構と、
前記記録ヘッドの移動範囲内において記録領域の外に配設され、前記搬送ローラーと一体に回転するクリーニング部材と、
クリーニング実行信号に基づいて前記記録ヘッドを前記クリーニング部材によるクリーニングポジションに前記第1移動機構によって位置させ、前記搬送ローラーを回転させて前記クリーニング部材に前記記録ヘッドにおける前記送り方向の上流側側面をクリーニングさせる制御部と、
を備える記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、
前記制御部は、前記クリーニングを実行する場合、前記記録ヘッドを前記クリーニングポジションで前記交差方向に往復動させることを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の記録装置において、
前記制御部は、前記被記録媒体を前記搬送ローラー上から退避させた後に前記クリーニングを実行させることを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の記録装置において、
前記制御部は、前記被記録媒体への前記記録ヘッドの記録動作中に前記クリーニング実行信号を受けた場合、前記記録動作を優先し、前記被記録媒体への前記記録動作終了後に前記クリーニングを実行させることを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の記録装置において、
前記制御部は、前記記録ヘッドが複数の前記被記録媒体への記録動作を連続して実行しているときに前記クリーニング実行信号を受けた場合、現在実行している記録動作終了後又は前記複数の被記録媒体への記録動作終了後に前記クリーニングを実行させることを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の記録装置において、
前記搬送ローラーを移動させて前記クリーニング部材と前記記録ヘッドの側面との接触圧を調整可能にする第2移動機構を備える記録装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の記録装置において、
前記クリーニング部材は交換可能であることを特徴とする記録装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の記録装置において、
更に前記クリーニングのタイミング及び前記クリーニング部材の交換時期を知らせるお知らせ手段を備える記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−103399(P2013−103399A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248398(P2011−248398)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】