説明

記録装置

【課題】 測色に要する時間を短縮する。
【解決手段】 記録媒体にインクを付与して記録を行う記録部と、前記記録部によって記録媒体にインクを付与することによって記録されたパターンのインクの溶媒の蒸発を促進させる蒸発促進手段と、前記記録部によって記録媒体に記録されたパターンを測色する測色部と、前記蒸発促進手段による溶媒の蒸発促進と前記測色部による測色を交互に行うように制御する制御手段とを有する記録装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測色センサを備えた記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、色校正のために本印刷の前に校正用カラーパッチを印刷し、それをセンサで読み取る測色が行われていた。
【0003】
インクによって形成された画像は乾燥後に行うことが理想的であるが、自然乾燥には時間がかかる。そこで、引用文献1では印刷したカラーパッチに風を送り、カラーパッチを乾燥させて、測色を行うことによって時間を短縮している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008‐254221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では印刷されたカラーパッチ全体に温風を均一に当てて乾燥を行い、その後に測色器によって測色を行っていた。測色前にカラーパッチ全体を乾燥させるためには時間がかかり、測色全体に時間がかかることが課題となっていた。
【0006】
本発明は測色に要する時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の構成は、記録媒体にインクを付与して記録を行う記録部と、前記記録部によって記録媒体にインクを付与することによって記録されたパターンのインクの溶媒の蒸発を促進させる蒸発促進手段と、前記記録部によって記録媒体に記録されたパターンを測色する測色部と、前記蒸発促進手段による溶媒の蒸発促進と前記測色部による測色を交互に行うように制御する制御手段とを有する記録装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、測色に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態である記録装置の構成図。
【図2】乾燥機、測色器、印刷されたカラーパッチの位置関係を表した図。
【図3】記録装置と測色器の回路構成を表現したブロック図である。
【図4】測色の動作のフローチャート。
【図5】測色の動作を説明するための図。
【図6】測色の動作を説明するための図。
【図7】測色の動作を説明するための図。
【図8】測色の動作を説明するための図。
【図9】記録された画像の自然乾燥による色差の変化を示すグラフ。
【図10】記録された画像の送風乾燥による色差の変化を示すグラフ。
【図11】経過時間(自然乾燥の時間)と送風乾燥の短縮可能時間の関係を示すグラフ。
【図12】インクの吐出量と送風乾燥の短縮可能時間の減少(何%に減るか)の関係を示すグラフ。
【図13】パッチ列群を複数の領域に分けた例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本発明の実施形態である記録装置の構成図である。図1において、3000は、ロール状に巻かれた記録媒体を示し、記録装置に回転可能に支持されている。3020は、ロール状記録媒体3000から引き出された、連続記録媒体を挟持して搬送する搬送ローラ対である。3010はインクを吐出する記録ヘッドである。記録部である記録ヘッド3010によって記録媒体にインクを付与し、画像を記録する。記録ヘッド3010により、ホストコンピュータなどから送られた画像データに基づく画像や、測色用のカラーパッチなどのパターンを記録媒体に印刷する。3030は、記録ヘッド3010によって形成された画像のインクの溶媒の蒸発を促進する蒸発促進手段である乾燥機である。乾燥機3030にはファンとヒーターが内装され、ノズル3031から搬送方向の上流方向に温風が吹き出される。
【0011】
なお、ここで「乾燥」という言葉で表現している意味は、必ずしも記録媒体の含水量または含液量を0%にすることではなく、インクの溶媒を蒸発させて含水量または含液量を低下させることである。よってこの乾燥機3030が行っていることは記録媒体からの液体の蒸発促進である。
【0012】
3050は、測色部である測色ユニットである。測色ユニット3050はガイドシャフト3041に案内されて連続記録媒体1010の搬送方向に交わる方向に走査する測色センサ3040を有している。測色センサ3040が走査することによって連続記録媒体1010に記録されたパターンを読み取る。
【0013】
測色ユニット3050は乾燥機3030を支持している。測色ユニット3050は乾燥機3030と一体に、連続記録媒体1010に接触する測色位置と、連続記録媒体から離間した退避位置3051に移動可能である。また記録媒体を乾燥するときは、測色ユニット3050は色測色位置と退避位置の間の位置で、測色ユニット3050と連続記録媒体1010の間に隙間ができる位置に停止し、観測機3030から送風する。
【0014】
図2は、記録装置と乾燥機、および測色器と、印刷されたカラーパッチの位置関係を表した図である。1000は、記録ヘッド3010や搬送ローラ対3020を備えた記録装置を表す。1010は記録媒体であり、記録装置によりカラーパッチ1020が記録されている。1040は乾燥機3030による乾燥が最も効果的に行われる範囲である乾燥領域を示している。1041は測色センサ3040の1回の走査によって測色出来る範囲である測色領域を表している。
【0015】
図3は、記録装置と測色器の回路構成を表現したブロック図である。2010は記録装置の制御やデータの処理を行うCPUである。2030はプログラムやデータなどを記憶するメモリである。2040はタイマーである。タイマー2040は、ある時点からの経過時間などを測定するもので、本実施形態では、記録時点からの経過時間を測定する。2020は吐出カウンタであり、インクの吐出量をカウントする。タイマー2040で測定された時間や、吐出カウンタによってカウントされた吐出量はメモリ2030に記憶される。
【0016】
2070は、乾燥時間制御部である。乾燥機による乾燥の時間を制御することが出来る。3052は測色ユニット3050を移動させるモータである。
【0017】
次に、図4に示すフローチャートを参照して測色の動作について説明する。
【0018】
まず、ステップS1において、記録ヘッド3010によって測色用のパッチ列を印刷する。図2に示すように記録媒体1010の幅方向に並ぶパッチ列1021、1022、1023を印刷しながら、記録媒体を矢印Aで示す搬送方向に搬送する。所定のパッチ列群1020の記録が終了したらステップS2に移行してフォーワードフィードする。図5に示すようにパッチ列群1020の全体が乾燥領域1040の下流側に位置するまで搬送したらステップS3に移行してバックフィードを行う。
【0019】
ステップS3では、搬送ローラ対3020によって記録媒体を図6の矢印Bで示す上流方向に搬送し、図6に示すように次に測色するパッチ列1030を含む複数のパッチ列を乾燥領域1040に移動する。乾燥領域1040は複数のパッチ列を同時に乾燥させることができる広さを有している。
【0020】
ステップS4では、後述する手順で送風乾燥時間を算出する。
【0021】
ステップS5ではモータ3052を駆動して測色ユニット3050を乾燥位置に移動する。そして、乾燥機3030から温風を送風する。
【0022】
算出された送風乾燥時間送風したら送風を停止し、ステップS6に移行し、記録媒体をさらに上流方向に搬送し、図7に示すように次に測色するパッチ列1030を測色領域1041に移動する。次にステップS7では、モータ3052を駆動して、測色ユニット3050を記録媒体1010に接触する測色位置まで下降させる。さらに測色センサ3040を記録媒体1010に沿うように走査し、パッチ列を読み取る。
【0023】
ステップS8では乾燥が終了している複数のパッチ列の全ての測色が完了したか否かを判断する。測色していないパッチ列が残っていたら、ステップS6に戻り、図8に示すようにパッチ列1030、1029を順次測色する。測色ユニット3050が測色位置あると記録媒体の搬送ができないので、記録媒体を搬送するときはモータ3052を駆動して測色ユニット3050を乾燥位置に移動する。測色時は測色ユニット3050を測色位置に移動する。
【0024】
ステップS8で乾燥済みのパッチ列の全ての測色が終了していたら、ステップS9で、記録した全てのパッチ列の測色が終了したかを判断し、測色していないパッチ列が残っていたら、ステップS3に戻り、乾燥と測色を繰り返す。
【0025】
このように、記録されたパターンの蒸発促進を分割された領域ごとに行い、1つの領域の蒸発促進が終了するたびに、蒸発促進が終了した領域の測色を行うように制御がなされる。すなわち、蒸発促進と測色は交互に行われる。
【0026】
ステップS9で最後のパッチ列1021の測色を終了して次に測色すべきパッチ列がなくなった場合はモータ3052を駆動して、測色ユニット3050を退避位置に上昇させて測色動作を終了する。
【0027】
次にインクによって記録された記録媒体の画像の色変化について説明する。図9は、印刷された印字物を自然乾燥させたときの、その時間に対する、画像の色差の変化を示すグラフである。時間経過とともに変化が小さくなってゆき、色が安定する。色が安定している状態ほど、乾燥の度合いも高いと考えられる。
【0028】
図10は同じく印字物に対して、乾燥機による送風で乾燥を行った場合の、画像の色差の変化を示すグラフである。図9と同様に時間の経過とともに安定な値に近づいてゆくが、初めの間は、急速に安定値に近づいていくが、叙々に変化はなだらかになり、ある時間になると、変化が小さくなってある一定の値からほとんど変化がなくなる。自然乾燥に比べて送風乾燥では色が安定するまでに必要な時間が短くなる。インクの安定に必要な時間が短縮されたことが分かる。
【0029】
表1は、本実施形態の乾燥機3030によって送風乾燥したときにインクが安定するまでに要する乾燥時間を記録媒体の種類ごとに示している。
【0030】
【表1】

【0031】
表1では、例えば普通紙ならば記録ヘッド3010によって画像が形成された直後から、画像に75秒間送風を続けると画像のインクが安定し、測色した結果が安定する、ということである。
【0032】
ところが本実施形態の記録装置では上述したように、画像形成直後から送風乾燥するわけではなく、搬送、乾燥、色測を繰り返しながら順次パッチ列の色側を行ってゆく。パッチ列の位置によっては送風乾燥前にある程度自然乾燥が行われている。従って自然乾燥した分、送風乾燥の対象となる領域の送風乾燥の時間を短くすることができる。
【0033】
図11は記録時点からの経過時間(自然乾燥の時間)と送風乾燥の短縮可能時間の関係を示すグラフである。記録された画像ごとに記録してからの経過時間をタイマーでカウントし、このグラフを用いて経過時間に応じて送風乾燥の時間を短縮すれば測色のスループットが向上する。
【0034】
また、画像によってはインクの吐出量が多い部分もある。インクの吐出量が多い部分に関しては、同じ時間自然乾燥させても乾燥の度合いは小さくなる。したがって図11の短縮可能時間は吐出量が多いほど減少する。逆にインクの吐出量が多いほど送風乾燥の時間を増加させる必要がある。図12はインクの吐出量と送風乾燥の短縮可能時間の減少(何%に減るか)の関係を示すグラフである。
【0035】
次に、これらの特性を踏まえてパッチ列群の領域ごとに乾燥時間を決定する手順を説明する。図13に示すようにパッチ列群1020を例えば5つの領域1020a、1020b、1020c、1020d、1020eに分ける。第1領域1020aはパッチ列1021、1022、1023を含んでいる。各領域の記録が終了してからの経過時間をタイマー2040でカウントする。また各領域の画像の中で濃度が高く、最もインクの吐出量が多い部分の吐出量をメモリに記憶しておく。
【0036】
送風乾燥の対象となる各領域の乾燥時間Dは次の式で求めることができる。
D=B−T×I
D:領域ごとの乾燥時間
B:記録媒体の種類ごとの乾燥基本時間
T:記録時点からの経過時間に応じた送風乾燥短縮可能時間
I:インク吐出量に応じた送風乾燥短縮可能時間の減少係数
である。
【0037】
基本乾燥時間Bは予め表1のテーブルをメモリに記憶させておく。送風乾燥短縮可能時間Tは図11のグラフをテーブル化して予めメモリに記憶させておく。減少係数Iも図12のグラフをテーブル化して予めメモリに記憶させておく。
【0038】
図4のステップS4において乾燥制御部2070は、次に乾燥を行うパッチ列に関し、タイマー2040でカウントしていた記録が終了してからの経過時間を取得する。他に、メモリのテーブルから、基本乾燥時間Bと、経過時間に応じた送風乾燥短縮可能時間Tを取得する。さらにメモリに記憶してあったインク吐出量に応じた送風乾燥短縮可能時間の減少係数Iをテーブルから取得する。D=B−T×Iの式を用いて乾燥時間Dを算出する。
【0039】
乾燥制御部2070によって算出される乾燥時間は、印刷後からの経過時間が長くなってゆくため、徐々に短くなってゆく。こうすることで、先に乾燥や測色を行った部分にかかる時間分だけ、自然に乾燥されていることを考慮して、後に乾燥や測色を行う部分への時間を短縮できる。
【0040】
これにより、全体にかかる時間が短くなり、スループットが向上する。
【符号の説明】
【0041】
1000 記録装置
1010 記録媒体
1020 カラーパッチ
1030 測色領域
1040 乾燥領域
2010 CPU
2020 吐出カウンタ
2030 メモリ
2040 タイマー
2070 乾燥時間制御部
3000 ロール状記録媒体
3010 記録ヘッド
3020 搬送ローラー対
3030 乾燥機
3040 測色センサ
3050 測色ユニット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体にインクを付与して記録を行う記録部と、
前記記録部によって記録媒体にインクを付与することによって記録されたパターンのインクの溶媒の蒸発を促進させる蒸発促進手段と、
前記記録部によって記録媒体に記録されたパターンを測色する測色部と、
前記蒸発促進手段による溶媒の蒸発促進と前記測色部による測色を交互に行うように制御する制御手段と、
を有する記録装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記蒸発促進手段は記録されたパターンの蒸発促進を分割された領域ごとに行い、前記測色部は1つの領域の蒸発促進が終了するたびに、蒸発促進が終了した領域の測色を行うように制御する請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記蒸発促進手段による蒸発促進の時間を対象となる領域にパターンの記録が行われてからの経過時間に応じて減らす請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記制御手段は前記蒸発促進手段による蒸発促進の時間を記録媒体の種類に応じて変える請求項2に記載の記録装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記蒸発促進手段による蒸発促進の時間を対象となる領域のパターンのインクの吐出量に応じて変える請求項2に記載の記録装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記蒸発促進手段による蒸発促進の時間を対象となる領域のパターンの最も濃度が高い部分のインクの吐出量の多さに応じて増加させる請求項2に記載の記録装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記蒸発促進手段による蒸発促進の時間を対象となる領域ごとに変える請求項2に記載の記録装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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