説明

記録装置

【課題】手差し口から用紙を差し入れる際に、不適切な長さの用紙が手差し口から装置内部に容易に入り込んでしまうことを抑止することのできる記録装置を提供する。
【解決手段】インクジェットプリンターは、回動可能な手差しトレイ11を開いた状態で手差し口10から用紙を手差しで給送することができる様に構成されている。手差し口10の下流側には第1搬送ローラー対17が設けられており、この第1搬送ローラー対17と手差し口10との間の用紙経路には、手差し口10から差し入れられた用紙の下流側への進行を規制する規制部材15が設けられている。これにより、仮にユーザーが手差し口10に用紙先端を差し入れた後に用紙から手を離しても、用紙先端が規制部材15と係合することで、用紙がそのまま装置内部に入り込んでしまう(落下してしまう)ことが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファクシミリやプリンターに代表される記録装置に関し、特に媒体を差し入れる手差し口を備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリやプリンターに代表される記録装置においては、媒体としての用紙を複数枚セット可能であるとともに、セットされた複数枚の媒体を1枚ずつ給送する給送装置が設けられるが、この給送装置に加えて、或いは給送装置に代えて、手差しによって用紙を給送する為の手差しトレイ(手差し給送経路)が設けられる場合がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4640179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
手差し口から用紙を給送する用紙給送方法(用紙給送経路)は、例えば用紙カセットを利用した用紙給送方法とは異なり用紙を分離する分離手段を必要としないことから、用紙に対して不必要な捌き力を与えることがなく、ラベルシートなどを給送するのに適している。
【0005】
しかしながらその反面、用紙搬送上の観点で不適切な用紙が差し入れられ易いというデメリットも有する。即ち、記録装置の用紙搬送経路には用紙を搬送するローラー対が複数設けられるが、或るローラー対と、その下流のローラー対と、の間の搬送経路長よりも長さの短い用紙は、ローラー対間で用紙の受け渡しができない為、その用紙が搬送されると、装置内部で紙詰まり(用紙の滞留)が発生することとなる。
【0006】
この様な問題は、セットされた複数枚の用紙を一枚ずつ捌いて給送する自動給送装置を利用した用紙給送方法においても生じ得るものの、手差し口から用紙を給送する用紙給送方法の場合、手差し口から用紙を挿入するとそれがそのまま装置内に入り込み易く、自動給送装置に比べて上記のような不具合が生じ易い。また、一旦手差し口から装置内部に短尺用紙が入り込むと、その用紙を取り出すのは容易ではない。
【0007】
そこで本発明はこの様な状況に鑑みなされたものであり、その目的は、手差し口から用紙を差し入れる際に、不適切な長さの用紙が手差し口から装置内部に容易に入り込んでしまうことを抑止することのできる記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する為の、本発明の第1の態様に係る記録装置は、媒体を差し入れる手差し口と、前記手差し口から下流側に最初に位置する、媒体を搬送する第1ローラー対と、前記第1ローラー対より下流側に設けられた、媒体に対して記録を行う記録手段と、前記第1ローラー対と前記手差し口との間の媒体経路に設けられ、前記手差し口から差し入れられた媒体の下流側への進行を規制する規制手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、媒体を差し入れる手差し口と、当該手差し口から下流側に最初に位置する、媒体を搬送する第1ローラー対と、の間の媒体経路には、手差し口から差し入れられた媒体の下流側への進行を規制する規制手段が設けられているので、ユーザーが手差し口に媒体の先端を差し入れた後に手を離しても、媒体先端が規制手段と係合することで、媒体がそのまま装置内部に入り込んでしまうことが防止される。これにより、不適切な長さ(所定長よりも短い長さ)の媒体が、容易に装置内部に入り込んでしまうことを防止することができる。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記規制手段が媒体の進行を規制する位置は、前記手差し口から前記第1ローラー対に至る媒体経路における中間位置より前記手差し口寄りであることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、前記規制手段が媒体の進行を規制する位置が、前記手差し口から前記第1ローラー対に至る媒体経路における中間位置より前記手差し口寄りであるので、前記手差し口により近い位置で媒体の進行を規制することで、不適切な長さ(所定長よりも短い長さ)の媒体が、容易に装置内部に入り込んでしまうことをより確実に防止することができる。
【0012】
本発明の第3の態様は、第1のまたは第2の態様において、前記第1ローラー対から下流側の媒体経路には少なくとも一以上のローラー対が設けられ、前記手差し口から前記第1ローラー対に至る媒体経路長が、前記第1ローラー対から下流側におけるローラー間の媒体経路長のうち、最も長い媒体経路長よりも長いことを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、前記手差し口から前記第1ローラー対に至る媒体経路長が、前記第1ローラー対から下流側におけるローラー間の媒体経路長のうち最も長い媒体経路長よりも長いので、ユーザーは媒体を前記手差し口に差し込んだ際に、媒体後端が手差し口の内側に入り込む前に媒体先端が第1ローラー対に突き当たれば、その媒体は必ず搬送が可能であると判断できる。
【0014】
即ち、ユーザーは媒体の長さをその都度計測することなく、媒体を差し入れる際に突き当て感を得られるか得られないかで、容易に且つ迅速に、その媒体が「確実に」搬送可能であるか否かを判断することが可能となる。
【0015】
本発明の第4の態様は、第1のまたは第2の態様において、前記第1ローラー対から下流側の媒体経路には少なくとも一以上のローラー対が設けられ、前記手差し口から前記第1ローラー対に至る媒体経路長が、前記第1ローラー対から下流側におけるローラー間の媒体経路長のうち、最も長い媒体経路長と同じであることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、前記手差し口から前記第1ローラー対に至る媒体経路長が、前記第1ローラー対から下流側におけるローラー間の媒体経路長のうち最も長い媒体経路長と同じであるので、前記第1ローラー対から下流側において搬送可能な長さの媒体を前記手差し口から差し込むと、媒体先端が第1ローラー対に突き当たった状態では、媒体後端は前記手差し口から出ることとなる。
【0017】
逆に、前記第1ローラー対から下流側において搬送不可能な長さの媒体を前記手差し口から差し込むと、媒体後端が前記手差し口に差し掛かっても媒体先端が第1ローラー対に突き当たることができず、即ちユーザーは突き当て感を得ることができない。即ち、ユーザーは媒体長さをその都度計測することなく、突き当て感を得られるか得られないかで、容易に且つ迅速に、その媒体が搬送可能か否かを判断することが可能となる。
【0018】
本発明の第5の態様は、第1から第4の態様のいずれかにおいて、媒体が前記第1ローラー対を通過する際の負荷が、媒体が前記規制手段を通過する際の負荷より大きいことを特徴とする。
【0019】
ユーザーが前記手差し口から媒体を差し入れた際、前記規制手段の位置が突き当たり位置であると誤認すると、媒体先端はその位置で留まるので、前記第1ローラー対を正転させても媒体はフィードされない。しかしながら本態様によれば、媒体が前記第1ローラー対を通過する際の負荷が、媒体が前記規制手段を通過する際の負荷より大きいので、ユーザーが前記手差し口から媒体を差し入れた際に、前記規制手段の位置が突き当たり位置であると誤認することを防止でき、媒体の先端が前記第1ローラー対に突き当たったことを容易に確認することができる。その結果、媒体を適切に下流側にフィードすることができる。
【0020】
本発明の第6の態様は、第1から第5の態様のいずれかにおいて、前記規制手段は、変形可能なシート状部材により構成されていることを特徴とする。
本態様によれば、前記規制手段が、変形可能なシート状部材により構成されているので、前記規制手段を、構造簡単にして且つ低コストに構成することができる。
【0021】
本発明の第7の態様は、第1から第6の態様のいずれかにおいて、前記手差し口は、前記記録装置の上部において上方に開口していることを特徴とする。
本態様によれば、前記手差し口は、前記記録装置の上部において上方に開口しているので、媒体が自重によって装置内部に入り込み易いが、上記第1の態様の作用効果により不適切な長さ(所定長よりも短い長さ)の媒体が容易に装置内部に入り込んでしまうことが防止されるので、上記第1の態様の作用効果をより一層得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るインクジェットプリンターを装置前方側から見た斜視図(手差しトレイクローズ)
【図2】本発明に係るインクジェットプリンターを装置前方側から見た斜視図(手差しトレイオープン)
【図3】本発明に係るインクジェットプリンターの用紙搬送経路を示す側断面概略図。
【図4】図3の部分拡大図。
【図5】図3の部分拡大図。
【図6】図3の部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は、以下説明する実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることを前提として、以下本発明の一実施形態を説明するものとする。
【0024】
図1及び図2は、本発明に係る記録装置の一例としてのインクジェットプリンター1を、装置前方側から見た斜視図であり、図1は手差しトレイ11がクローズ状態を、図2は手差しトレイ11がオープン状態を、それぞれ示している。また図3はインクジェットプリンター1の用紙搬送経路を示す側断面概略図、図4、図5、図6は図3の部分拡大図である。尚、図4、図5、図6では、図3に示された構成要素を適宜省略して描いている。
【0025】
図1及び図2において、インクジェットプリンター1は、媒体の一例としての記録用紙にインクジェット記録を行う記録部が構成された装置本体2の上部にスキャナ部を備えており、即ちインクジェット記録機能に加えてスキャナ機能を備える複合機として構成されている。上部のカバー5は開閉可能なカバーであり、当該カバー5を開放することにより、スキャナ部の図示しない原稿台が表れる様になっている。
【0026】
装置前面において符号7は記録用紙を収容する、着脱可能な用紙カセットであり、符号9は記録が行われて排出された用紙を受ける排紙受けトレイである。
符号6は、電源ボタンや各種印刷設定・記録実行を行う操作ボタン、印刷設定内容や印刷画像のプレビュー表示などを行う表示部、等を備えて成る操作パネルである。
【0027】
そして装置後部には、記録用紙を手差しで給送する為の手差しトレイ11が設けられている。この手差しトレイ11は開閉可能に設けられており、閉じることで図1に示す様に記録用紙を差し入れる手差し口が閉じられ、塵埃等が装置内部に侵入しない様になっている。そして手差しトレイ11を開くことで、図2に示す様に記録用紙を差し入れる手差し口10が開放され(形成され)、また用紙支持面11aによって用紙を支持できる様になっている。
【0028】
続いて図3を参照しながら、装置本体2の内部における用紙搬送経路について説明する。尚、図2は用紙搬送経路の構成を示しているが、全ての構成を示すものではなく、説明に不要な構成要素は適宜図示を省略している。
【0029】
インクジェットプリンター1は、2つの用紙給送手段(用紙給送経路)を備えており、1つは装置下部に設けられた用紙カセット7からの用紙給送経路であり、もう1つは、上述した手差しトレイ11からの用紙給送経路である。
【0030】
用紙カセット7からの用紙給送経路において、用紙カセット7と対向する位置に設けられた符号21で示すローラーは図示しないモーターにより回転駆動される給送ローラーであり、この給送ローラー21は揺動軸22aを中心に揺動可能な揺動部材22に設けられ、揺動部材22の揺動を介して用紙カセット7に対し進退可能となっている。そして給送ローラー21が用紙カセット7に収容された用紙の最上位のものと接して回転することで、当該最上位の用紙を下流側に送り出す。
【0031】
用紙カセット7において給送側に位置する内壁は分離斜面23となっており、送り出される用紙先端が分離斜面23に摺接しながら下流側に進むことで、当該送り出される用紙と、これに連れられて重送されようとする次位以降の用紙との分離が行われる。
【0032】
用紙カセット7から送り出された用紙は、図示しないモーターにより回転駆動される大径の反転ローラー25によって湾曲反転させられた後、図示しないモーターにより回転駆動される駆動ローラー29と、従動回転する従動ローラー30と、のこれらローラーで構成される第2搬送ローラー対28に到達する。尚、符号26、27は反転ローラー25による用紙搬送を補助する、従動回転可能な補助ローラーである。
【0033】
第2搬送ローラー対28を構成する駆動ローラー29及び従動ローラー30は、下流側へと用紙を精密送りするローラー対であり、このローラー対の下流側にはインクジェット式の記録ヘッド35と、用紙を支持する支持部材32とが対向配置されている。
【0034】
記録ヘッド35は、主走査方向(図3の紙面表裏方向)に往復動可能なキャリッジ34の底部に設けられ、キャリッジ34が主走査方向に移動する過程において記録ヘッド35からインクが吐出されることにより、記録用紙への記録が行われる。
【0035】
次に、記録ヘッド35の下流側において、符号37は図示しないモーターにより回転駆動され、回転することにより用紙を排出する排出駆動ローラーであり、符号38は排出駆動ローラー37との間で用紙をニップする、従動回転可能な排出従動ローラーである。これらローラー対により、記録の行われた用紙は、排紙受けトレイ9に向けて排出される。
【0036】
続いて、手差しトレイ11からの用紙給送経路について説明する。手差しトレイ11が開いた状態において、手差し口10は、装置本体2の外観を構成するハウジング3の上部開口縁部3bと手差しトレイ11(用紙支持面11a)との間で形成され、即ち装置上部において上方に開口する様に形成されている。尚、本実施形態ではこの様に手差し口10はハウジング3の開口縁部3bと手差しトレイ11(用紙支持面11a)との間で形成されているが、例えばハウジング3の上面に単純な開口形状を形成し、これを手差し口としても良い。この場合、手差しトレイは設けなくても良いし、手差しトレイを設ける場合には手差し口の外側に設けても良い。
【0037】
手差し口10から下流側には、後述する規制手段を構成する規制部材15が用紙通過経路を閉塞する様に設けられており、更にその下流側には、「第1ローラー対」としての第1搬送ローラー対17が設けられている。第1搬送ローラー対17は、図示しないモーターにより回転駆動される駆動ローラー18と、従動回転可能な従動ローラー19と、のこれらローラーで構成されている。そしてこのローラー対により用紙が第2搬送ローラー対28へと搬送される様になっている。
【0038】
以下、更に手差し給送経路について説明する。図4において符号Pで示す破線は、手差し給送経路を経由した用紙の通過経路である。また図4において符号L1は、手差し口10から第1搬送ローラー対17に至る用紙経路の長さを示しており、符号L2は手差し口10から、規制部材15が用紙の進行を規制する位置までの用紙経路の長さを示している。また符号M1は、第1搬送ローラー対17から第2搬送ローラー対28に至る用紙経路の長さを示しており、符号M2は第2搬送ローラー対28から排出駆動ローラー37及び排出従動ローラー38に至る用紙経路の長さを示している。
【0039】
手差し口10の下流側に設けられた規制部材15は、第1搬送ローラー対17と手差し口10との間の用紙経路に設けられ、手差し口10から差し入れられた用紙の下流側への進行を規制する様に機能する。
【0040】
規制部材15は、本実施形態では可撓性を有する変形可能なシート材により構成され、一端側がハウジング部材3に取り付けられ、他端側が下方に垂下する様に、且つ用紙通過経路を遮る様に取り付けられている。
【0041】
即ち、差し入れられる用紙の長さが、例えば用紙経路長M1より短い場合には、その用紙は第1搬送ローラー対17と第2搬送ローラー対28との間で受け渡しができず、紙ジャムとなる。そしてその様な長さの短い用紙が、不用意に手差し口10から入り込んでしまう場合がある。
【0042】
しかしながら手差し口10の下流側には手差し口10から差し入れられた用紙の下流側への進行を規制する規制部材15が設けられているので、仮にユーザーが手差し口10に用紙先端を差し入れた後に用紙から手を離しても、図6において符号P2で示す用紙の様に、用紙先端が規制部材15と係合することで、用紙がそのまま装置内部に入り込んでしまう(落下してしまう)ことが防止される。即ち、不適切な長さ(所定長よりも短い長さ)の用紙が容易に装置内部に入り込んでしまうことを防止することができる。
【0043】
尚、用紙の進行を規制する規制部材15は、ユーザーが用紙を積極的に押し入れた際にも用紙の進行を規制する様な厳格なものではなく、上記の様に一例として用紙の自重によって当該用紙が装置内部に入り込んでしまうことを防止する程度のものであり、即ち或る程度の通紙負荷を生じさせるものである。
【0044】
尚、規制部材15は、本実施形態では用紙幅方向(図4の紙面表裏方向)の全域をカバーする幅で形成されているが、用紙幅方向に所定幅を有する規制部材を、用紙幅方向に渡って適宜の間隔で設ける形態としても良い。
【0045】
また、本実施形態では、規制部材15が用紙の進行を規制する位置が、手差し口10から第1搬送ローラー対17に至る用紙経路における中間位置より手差し口10寄りであるので(L2<[L1×(1/2)])、手差し口10により近い位置で用紙の進行を規制することで、搬送不可能な短尺の用紙が容易に装置内部に入り込んでしまうことを、より確実に防止することができる。
【0046】
ところで、本実施形態では、用紙経路長L1は、第1搬送ローラー対17から下流側におけるローラー間の経路長M1、M2のうち、全てに対して長くなる様に構成されている。これにより、用紙後端が手差し口10の内側に入り込む前に用紙先端が第1搬送ローラー対17に突き当たれば(図5の符号P1で示す用紙の状態)、その用紙は、必ず搬送が可能であると判断できる(用紙長は経路長M1及び経路長M2のいずれに対しても長いことになる)。
【0047】
即ち、ユーザーは突き当て感を得られるか得られないかで、用紙長が確実に搬送可能であるか否かを判断することが可能となり、不適切な長さ、即ちローラー間で用紙の受け渡しができないような短い長さの用紙が装置内部に差し入れられることを、用紙長をその都度計測することなく、容易且つ迅速に判断することができる。
【0048】
尚、他の実施形態として、手差し口10から第1搬送ローラー対17に至る用紙経路長L1を、第1搬送ローラー対17から下流側におけるローラー間の用紙経路長のうち最も長い用紙経路長と同じにすることも好適である。これにより、第1搬送ローラー対17から下流側において搬送可能な長さの用紙を手差し口10から差し込むと、用紙先端が第1搬送ローラー対17に突き当たった状態では、用紙後端は手差し口10から出ることとなる。
【0049】
逆に、第1搬送ローラー対17から下流側において搬送不可能な長さの用紙を手差し口10から差し込むと、用紙後端が手差し口10に差し掛かっても用紙先端が第1搬送ローラー対17に突き当たることができず、即ちユーザーは突き当て感を得ることができない。即ち、ユーザーは用紙長を計測することなく、突き当て感を得られるか得られないかで、容易に且つ迅速に、その用紙が搬送可能か否かを判断することが可能となる。
【0050】
ところで、ユーザーが手差し口10から用紙を差し入れた際、規制部材15の位置が突き当たり位置であると誤認すると、用紙先端はその位置で留まるので、第1搬送ローラー対17を正転させても用紙はフィードされない。しかしながら本実施形態では、用紙が第1搬送ローラー対17を通過する際の負荷(用紙先端を駆動ローラー18と従動ローラー19との間に差し入れて通過させる際の負荷)が、規制部材15を通過する際の負荷より大きく設定されている。
【0051】
従ってこれにより、ユーザーが手差し口10から用紙を差し入れた際に、規制部材15の位置が突き当たり位置であると誤認することを防止でき、用紙先端が第1搬送ローラー対17に突き当たったことを容易に確認することができる。その結果、用紙を適切に下流側にフィードすることができる。
【0052】
以上説明した実施形態は一例であり、本発明が上記実施形態に限られないことは言うまでもない。また本実施形態では本発明を記録装置の一例としてのインクジェットプリンターに適用したが、その他液体噴射装置一般に適用することも可能である。
【0053】
ここで、液体噴射装置とは、インクジェット式記録ヘッドが用いられ、該記録ヘッドからインクを吐出して被記録媒体に記録を行うプリンター、複写機およびファクシミリ等の記録装置に限らず、インクに代えてその用途に対応する液体を前記インクジェット式記録ヘッドに相当する液体噴射ヘッドから被記録媒体に相当する被噴射媒体に噴射して、前記液体を前記被噴射媒体に付着させる装置を含むものである。
【0054】
液体噴射ヘッドとして、前記記録ヘッドの他に、液晶ディスプレー等のカラーフィルター製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレーや面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料噴射ヘッド等が挙げられる。
【符号の説明】
【0055】
1 インクジェットプリンター、2 装置本体、3 ハウジング、5 カバー、6 操作パネル、7 用紙カセット、9 排紙受けトレイ、10 手差し口、11 手差しトレイ、15 規制部材、17 第1搬送ローラー対、18 駆動ローラー、19 従動ローラー、21 給送ローラー、22 揺動部材、23 分離斜面、25 中間ローラー、26、27 補助ローラー、28 第2搬送ローラー対、29 駆動ローラー、30 従動ローラー、32 案内部材、34 キャリッジ、35 インクジェット記録ヘッド、37 排出駆動ローラー、38 排出従動ローラー、P、P1、P2 記録用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を差し入れる手差し口と、
前記手差し口から下流側に最初に位置する、媒体を搬送する第1ローラー対と、
前記第1ローラー対より下流側に設けられた、媒体に対して記録を行う記録手段と、
前記第1ローラー対と前記手差し口との間の媒体経路に設けられ、前記手差し口から差し入れられた媒体の下流側への進行を規制する規制手段と、
を備えた記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、前記規制手段が媒体の進行を規制する位置は、前記手差し口から前記第1ローラー対に至る媒体経路における中間位置より前記手差し口寄りである、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の記録装置において、前記第1ローラー対から下流側の媒体経路には少なくとも一以上のローラー対が設けられ、
前記手差し口から前記第1ローラー対に至る媒体経路長が、前記第1ローラー対から下流側におけるローラー間の媒体経路長のうち、最も長い媒体経路長よりも長い、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の記録装置において、前記第1ローラー対から下流側の媒体経路には少なくとも一以上のローラー対が設けられ、
前記手差し口から前記第1ローラー対に至る媒体経路長が、前記第1ローラー対から下流側におけるローラー間の媒体経路長のうち、最も長い媒体経路長と同じである、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の記録装置において、媒体が前記第1ローラー対を通過する際の負荷が、媒体が前記規制手段を通過する際の負荷より大きい、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の記録装置において、前記規制手段は、変形可能なシート状部材により構成されている、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の記録装置において、前記手差し口は、前記記録装置の上部において上方に開口している、
ことを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−112472(P2013−112472A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259914(P2011−259914)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】