説明

記録装置

【課題】バックテンション軽減のため記録動作時に用紙ガイドが用紙の側端から離間する記録装置において、装置使用者が記録動作時に用紙ガイドを手で操作して用紙の側端に合わせると、離間動作が終了して用紙ガイドが内側に移動した時に用紙の不揃いや用紙端部の傷や折れなどの損傷を発生させる虞がある。
【解決手段】ガイド部材(左ガイド部材18)のラック部(左ガイド腕部材22)と歯合する歯合位置と、該ガイド部材のラック部から離間する非歯合位置とを相互遷移するガイド部材ロック部材(サイドガイドロックギア25)が設けられていて、該ガイド部材の圧板11に対する移動を選択的に抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被記録媒体を給送する給送手段と、被記録媒体に画像を記録(印字)する記録手段とを備えた記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被記録媒体を給送する給送手段と、被記録媒体に画像を記録(印字)する記録手段とを備えた記録装置の一形態としてインクジェット記録装置がある。インクジェット記録装置の給送手段と記録手段の構成として、装置本体の後方上部に給送手段を配置し、給送部の前方に記録手段を配置したものが一般的であり、給送手段にセットされた被記録媒体を給送手段により記録手段に給送して、搬送手段により被記録媒体を搬送する中で記録手段により被記録媒体への記録動作を行ない、記録動作終了後に装置前方から被記録媒体を装置外に排出する構成となっている。
【0003】
さらに給送手段においては、被記録媒体をセットする載置台に被記録媒体の幅方向両端部を規制するガイド部材が配置されており、装置使用者がセットする被記録媒体のサイズに合わせて片方または両方のガイド部材を移動させて、被記録媒体の幅方向両端部の位置を規制する構成となっている。上記ガイド部材が被記録媒体の側端部をガイドすることで横方向への位置ずれ(斜行など)を防ぎながら、給送手段から記録手段への被記録媒体の給送動作を精度良く行うことが可能な構成となっている。
【0004】
ここで一般的なインクジェット記録装置は、給送手段から給送された被記録媒体が記録部における搬送手段によって搬送され、その後一旦停止した後に、インクカートリッジを搭載したキャリッジが被記録媒体搬送方向と交差する方向に往復移動する中でインクカートリッジから被記録媒体の被記録面にインクを吐出して記録動作を行う。1ラインの記録動作終了後に再度被記録媒体が搬送方向に一定量搬送され、その後停止し、再びキャリッジが搬送方向と交差する方向に移動する中でインクカートリッジからインクを吐出して記録動作を行う。この繰り返しにより被記録媒体上に記録画像が形成される構成となっている。
【0005】
上記のようなインクジェット記録装置では、1ライン毎の記録動作が繰り返されるために、被記録媒体の搬送方向への搬送精度が画像品質に大きな影響を与える構成となっている。このため記録動作時においては被記録媒体の幅方向の位置を規制するガイド部材と被記録媒体側端部との間の摩擦抵抗がバックテンションとして働き、記録動作時における被記録媒体の搬送方向の搬送精度に影響を与え、画像品質を劣化させる一因となっている。
【0006】
上記問題点に対して例えば特許文献1においては以下の構成の記録装置が提案されている。被記録媒体を載置し、上下方向に揺動して給送手段(送りローラ)に対して接触/離間させる圧板と、圧板に載置された被記録媒体の側端部をガイドするガイド部材を備え、圧板が上下方向の揺動に連動して横方向にも移動し、圧板の移動に連動してガイド部材も移動し、ガイド部材が被記録媒体の側端部から離間する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−89278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に示した従来例では、以下に示す問題点があった。圧板とガイド部材が用紙の幅方向端部(被記録媒体の側端部)から離間する方向に移動して用紙の幅方向端部とガイド部材が離間した状態で用紙を搬送しているときに、装置使用者がガイド部材を手で操作して用紙の幅方向端部に合わせたとする。この状況において、用紙搬送動作およびガイド部材離間動作が終了して圧板とガイド部材が圧板上に載置された次ページ以降の用紙の幅方向端部に接近する方向に移動すると、ガイド部材が用紙の幅方向端部よりも内側に移動してしまい、用紙の不揃いや、用紙端部の傷や折れなどの損傷を発生させる虞があった。
【0009】
そこで本発明は、用紙の幅方向端部とガイド部材が離間した状態において装置使用者がガイド部材を移動させることで発生する用紙の不揃いや用紙端部の損傷を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、被記録媒体を載置する圧板部材と、前記圧板部材に対して被記録媒体搬送方向に交差する方向へ移動可能に取り付けられたガイド部材と、前記被記録媒体を給送する給送手段と、前記給送手段の下流側に配置された搬送手段とを備え、前記ガイド部材あるいは前記ガイド部材の一部である側端ガイド部材を前記被記録媒体側端から離間させる方向に移動させるガイド部材離間手段を有する記録装置において、前記ガイド部材あるいは前記側端ガイド部材が前記被記録媒体側端から離間しているときに、前記ガイド部材の前記圧板部材に対する移動を抑制するガイド部材ロック手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被記録媒体の側端に対するガイド部材の離間時において、該ガイド部材の移動を防ぐことが可能となる。このため、圧板部材上に載置された次ページ以降の被記録媒体の不揃いや、被記録媒体端部の損傷の発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例であるインクジェット記録装置の概略斜視図。
【図2】本発明の実施例である給送部の斜視図(1)。
【図3】本発明の実施例である給送部の斜視図(2)。
【図4】本発明の実施例である給送部の概略断面図。
【図5】本発明の実施例である左右のガイド部材の連結状態の模式的斜視図。
【図6】本発明の実施例である記録部の概略断面図。
【図7】本発明の実施例であるガイド部材ロック部材周辺の模式斜視図。
【図8】本発明の実施例であるガイド部材の模式断面図。
【図9】本発明の実施例であるガイド部材とガイド部材ロック部材とレバー部材の模式斜視図。
【図10】本発明の実施例であるガイド部材ロック部材とレバー部材の模式断面図。
【図11】本発明の実施例であるガイド部材とレバー部材の模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0014】
ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0015】
(インクジェット記録装置)
図1に、本発明の実施の形態に係るインクジェット記録装置1の斜視図を示す。インクジェット記録装置1は、給送部2と記録部3を備えている。図1において左側が装置前方(FRONTの表示で示す)であり、符合Aで示した方向が被記録媒体搬送方向である。
【0016】
給送部はインクジェット記録装置1の本体後方上部に配置され、記録部3は給送部2の装置本体前方に配置されている。給送部にセットされた被記録媒体が給送部の給送手段により図1に示すA方向に給送され、記録部3に到達する。その後記録部3に搭載された搬送手段により搬送される中で記録動作が行われる。記録動作終了後、被記録媒体は記録部3の前方より機外に排出される構成になっている。
【0017】
(給送部の構成)
次に本発明の実施の形態に係る給送部の構成について図2〜図4を用いて説明する。図2および図3は給送部2の概略斜視図であり、図4はその概略断面図である。給送部2は、圧板11、給送ローラ12、分離ローラ13、および圧板11、給送ローラ12、分離ローラ13を支持する給送フレーム15を備えている。図4に示す16は被記録媒体である用紙束である。
【0018】
圧板11は用紙束16を載置する載置台であり、その上端付近の回転中心部17を給送フレーム15に対して回動自在に軸支されており、回転中心部17を中心に下端が給送ローラ12に対して接触/離間する方向に回動可能な構成となっている。給送ローラ12は円筒形状をなしており、給送フレーム15に対して回動可能に軸支され、圧板の下端部近傍に対向する位置に配置されている。また図2に示すように、給送ローラ12は圧板11の用紙載置部幅方向の略中央部付近に対向するように配置されており、圧板11に載置された用紙束16の幅方向中央部付近を給送する構成となっている。
【0019】
圧板11には用紙束16を案内する左右のガイド部材18、19が取り付けられている。左右のガイド部材18、19にはそれぞれ左右の用紙側端ガイド部材が具備されている。図2、図4には左ガイド部材18に具備されている用紙左側端ガイド部材20を示す。図3に右ガイド部材19に具備されている用紙右側端ガイド部材21を示す。左右のガイド部材18、19は圧板11に対して用紙搬送方向に交差する方向、すなわち用紙幅方向に移動可能に取り付けられており、載置する用紙サイズに合わせて装置使用者が操作することが可能な構成になっている。
【0020】
ここで図5に左右のガイド部材18、19の連結機構の模式斜視図を示す。図5に示すように左右のガイド部材18、19は夫々ラック形状を有した左右のガイド腕部材22、23と一体的に移動可能に締結されており、左右のガイド腕部材22、23がピニオン部材であるガイド部材ギア24と歯合している。(ガイド部材ギア24は図2〜図4に示す圧板11の裏面の用紙幅方向略中央部に圧板に対して回動自在に取り付けられている。)このため本装置においては、左右どちらかのガイド部材を操作するともう一方のガイド部材も連動して移動する構成となっている。また、左右のガイド部材18、19は給送ローラ12に対して用紙束16の左右幅方向側端までの距離が同じになるように調整されている。よって様々なサイズの用紙束を圧板11上に載置した時においても、左右のガイド部材18、19で幅方向の位置を調整することにより、給送ローラ12が用紙束の幅方向略中央付近に位置する構成となっている。よって用紙束16の給送動作を行ったとき、用紙の搬送精度の左右による差を軽減させる構成となっている。
【0021】
図4に示すように分離ローラ13は給送ローラ12の下方、圧板11の下流側に配置されており、給送ローラ12に接触する接触姿勢と給送ローラ12から離間する離間姿勢との間で分離ローラ軸13aを中心に回動可能の状態で軸支される構成となっている。また分離ローラ13はトルクリミッタ機構により略一定の従動回転抵抗が与えられた構成になっており、給送ローラ12の回転と分離ローラ13の従動回転抵抗により用紙束16の分離動作が行われる構成となっている。
【0022】
(記録部の構成)
図6は、本発明の実施の形態に係る記録部3の概略断面図である。記録部3は搬送手段である搬送ローラ31、搬送ローラに従動して回転する従動ローラ32、プラテン33、排紙ローラ34、記録手段35を備えている。給送部から給送された用紙の先端が搬送ローラ31に到達すると、用紙は搬送ローラ31、従動ローラ32で挟持されながら記録部を搬送される。さらに用紙の先端が排紙ローラ34に到達すると搬送ローラ31と排紙ローラ34の両方により搬送され、その途中に記録手段35により記録動作が行われる構成となっている。
【0023】
(給送および記録動作)
次に図4、図6を用いて一連の給送および記録動作について説明する。給送部2は待機状態においては図4に示すように、圧板11が給送ローラ12から離間した位置で保持される構成となっている。この状態で装置使用者は図4に示すように用紙束16を圧板11上に載置する。そして左右のガイド部材18、19を操作して左右の用紙側端ガイド部材20、21により、用紙束16の左右の側端位置を規制することで給送ローラ12が用紙束16の幅方向略中央部に当接するように調整することが可能な構成となっている。
【0024】
給送動作が開始されると、給送ローラ12が図4における符号Bで示した回転方向へ回転し始める。すると、圧板11が符号Cで示した揺動方向へ揺動し、圧板11上に載置された用紙束16の最上位の用紙16aが給送ローラ12の外周面に押しつけられて当接する。
【0025】
給送ローラ12が符号Bで示した回転方向へさらに回転すると、給送ローラ12の外周面に当接している用紙16aが給送方向へ給送されていく。前述したように、用紙16aの下側に重なった状態の他の用紙束16zは、分離ローラ13の従動回転抵抗によって最上位の用紙16aから分離されて、給送ローラ12の外周面と分離ローラ13の外周面との当接面より先への進入が防止される。
【0026】
給送ローラ12が符号Bで示した回転方向へさらに回転し、所定の回転位置まで回転した時点で圧板11が符号Dで示した揺動方向へ揺動する。このように、圧板11が給送ローラ12から離間し、圧板11が給送ローラ12に押し付けられた状態から解除されるので、圧板11および給送ローラ12から用紙へのバックテンションが軽減される構成となっている。
【0027】
給送ローラ12がさらに回転すると、用紙束から分離された用紙16aの先端は図6に示す搬送ローラ31および従動ローラ32が接する位置に到達する。ここで搬送ローラ31の回転方向や、給送ローラ12や搬送ローラ31の回転速度や回転数を制御することにより、用紙16aの先端を用紙搬送方向に対して直角に揃える所謂レジストレーション取り動作を行う。ここで、圧板上に配置された左右のガイド部材18、19における左右の側端ガイド部材20、21が用紙16aの左右側端を規制していることにより、用紙16aの幅方向の位置精度の低下を防止しつつ先端を揃えるレジストレーション取り動作を行うことが可能な構成になっている。
【0028】
レジストレーション取り動作終了後、用紙16aは搬送ローラ31と従動ローラ32に挟持され、搬送ローラ31の用紙搬送方向への回転駆動により搬送され、その後に用紙16aが記録動作開始位置に達した後に記録手段35による記録動作が開始される構成となっている。
【0029】
ここで、搬送ローラ31による用紙16aの搬送が開始された後で、記録手段35による記録動作が開始される前に、分離ローラ13が給送ローラ12から離間する方向に揺動し、また給送ローラ12への駆動は非伝達状態となる。このため搬送ローラ31により搬送されている用紙16aと給送ローラ12が接触していても、給送ローラ12は用紙16aに従動回転する(所謂連れ周り状態)。よって給送ローラ12および分離ローラ13から用紙16aへのバックテンションは軽減される構成となっている。
【0030】
また、本実施例においては、搬送ローラ31による用紙16aの搬送が開始された後で、記録手段35による記録動作が開始される前に、後述する用紙側端ガイド部材離間手段により、左右の用紙側端ガイド部材20、21を用紙16aの側端から離間する方向に移動させる構成となっている。よって用紙側端の摩擦抵抗は軽減され、左右の用紙側端ガイド20、21から用紙16aへのバックテンションも軽減される構成となっている。
【0031】
用紙16aが搬送ローラ31により搬送され、記録動作開始位置に達すると搬送ローラ31による搬送は一旦停止される。この状態で記録手段35が用紙16aの印字面上を搬送方向に交差する方向に往復運動し、その過程でインク滴を吐出することで1ライン分の記録動作を行う。1ライン分の記録動作が終了すると用紙16aは搬送ローラ31により必要量だけ搬送して停止する。すると再び記録手段35が往復移動を行ない、その過程でインク吐出による記録動作が行われる。この動作を繰り返すことにより、用紙ほぼ全面への記録動作が可能となる。
【0032】
上記のように本実施例においては用紙16aへの記録動作時に、圧板11および分離ローラ13を給送ローラ12から離間させ給送ローラへ12の駆動を非伝達状態にすることで、圧板11、給送ローラ12、分離ローラ13から用紙へのバックテンションを軽減している。また左右の用紙側端ガイド部材20、21を用紙側端から離間させることで、左右の用紙側端ガイド20、21から用紙へのバックテンションを軽減している。このように用紙への様々なバックテンションを軽減することで用紙の搬送精度が向上して、優れた画像品質の記録動作を行うことが可能な構成となっている。
【0033】
(次の用紙給紙時における用紙側端ガイドの動作)
上述した給送および記録動作により、用紙16aの記録動作が終了すると、2枚目の用紙16bの給送動作が開始される。ここで、1枚目の用紙16aの記録動作が終了した後で、2枚目の用紙16bの給送が開始する前に、左右の用紙側端ガイド部材20、21が2枚目の用紙16bの側端部に接触する方向に移動する構成となっている。このように本実施例においては、記録動作時には左右の用紙側端ガイド部材が用紙側端部から離間し、次の用紙の給紙時には離間していた左右の側端ガイド部材が内側に移動して用紙束側端部に接触し、給紙時には用紙束側端部をガイドすることで良好な給紙動作を行うことが可能な構成となっている。
【0034】
(サイドガイドロック手段)
ここで本実施例においては、ガイド部材の圧板部材に対する移動を抑制するガイド部材ロック手段を備えている。まず図5にてガイド部材ロック部材であるサイドガイドロックギア25の位置を示す。図5に示すように、サイドガイドロックギア25は左ガイド腕部材22のラック面に対向する位置で、ピニオン部材であるガイド部材ギア24の近傍に配置されている。次に図7(a)、(b)にて本実施例におけるガイド部材ロック手段について説明する。サイドガイドロックギア25は、左ガイド腕部材22のラック形状と歯合する歯型形状を有する。図7(a)は用紙セット時および給紙動作時における左ガイド腕部材22に対するサイドギアロックギア25の位置を示しており、図7(b)は記録動作時での位置を示している。図7(a)の用紙セット時および給紙動作時においては、サイドガイドロックギア25と左ガイド腕部材22は離間しており、サイドガイドロックギア25は左ガイド腕部材22に対して非歯合位置にある。このため装置使用者は圧板に対してガイド部材を移動することが可能である。一方、図7(b)に示した記録動作時においては、サイドガイドロックギア25は図7(b)において上方(矢印方向)に移動して左ガイド腕部材22に対して歯合位置にある。このため左ガイド腕部材22の左右方向への移動が抑制された状態となっている。ここで図5に示したように、右ガイド腕部材23はガイド部材ギア24を介して左ガイド腕部材22と連結されているため、サイドガイドロックギア25によりロックされることで、左右のガイド腕部材22、23の移動が抑制される構成となっている。
【0035】
このように本実施例においては、図4、図6にて説明したように、記録動作時には左右の用紙側端ガイド部材20、21が用紙16aの側端から離間し、2枚目の用紙16bの給送が開始する前に、左右の用紙側端ガイド部材20、21が2枚目の用紙16bの側端部に接触する方向に移動する。ここで、記録動作時には図7(b)に示すようにサイドガイドロックギア25が、左ガイド腕部材22のラック形状に対して歯合位置にあり左右のガイド部材20、21の圧板部材11に対する移動が抑制されている。このため、装置使用者が記録動作中に用紙セット時の操作ミスと混同して、離間している左右のガイド部材18、19を誤って操作して用紙16aの側端に接触させてしまうことを抑制している。よって、2枚目の用紙16bの給送が開始する時に左右の用紙側端ガイド部材20、21が内側に移動して用紙束16の幅よりも狭くなり、用紙束端部の折れや損傷が発生することを防いでいる。
【0036】
ここで前述のように、サイドガイドロックギア25はピニオン部材であるガイド部材ギア24の左側近傍に配置され、左ガイド腕部材22と歯合する構成となっている。仮にサイドガイドロックギア25がガイド部材ギア24の右側にて左ガイド腕部材22と歯合する構成となっていると、左ガイド部材18を最も左側に広げた場合にも左ガイド腕部材22とサイドガイドロックギア25が歯合するためには左ガイド腕部材22の右端部を長く構成する必要がある。しかし本実施例のようにサイドガイドロックギア25がガイド部材ギア24の左側にて左ガイド腕部材22と歯合する構成とすることにより、左ガイド腕部材22の右端部は左ガイド部材18を最も左側に広げた場合に左ガイド腕部材22がガイド部材ギア24を歯合する長さに留めることが可能となる。よって左ガイド腕部材22の長さを必要以上に長くする必要がなくなる。このように、サイドガイドロックギア25はガイド部材ギア24と左ガイド部材18との間にて左ガイド腕部材22と歯合する位置に配置されている。このため左ガイド腕部材22の端部の長さを必要以上に長くすることを防ぎ、装置の小型化に貢献している。
【0037】
なお本実施例においては、サイドガイドロックギア25はガイド部材ギア24と左ガイド部材18との間にて左ガイド腕部材22と歯合する位置に配置されているが、ガイド部材ギア24と右ガイド部材19との間にて右ガイド腕部材23と歯合する位置に配置されても、本実施例と同様に装置の小型化に貢献するのは明白である。
【0038】
(ガイド部材構成および用紙側端ガイド離間手段構成)
次に図8を用いて左ガイド部材18の構成および用紙側端ガイド離間手段の構成について説明する。図8(a)、(b)は左ガイド部材18の用紙搬送方向下流側から上流側を見た模式断面図である。図8(a)は用紙セット時および給紙動作時の模式断面図であり、図8(b)は記録動作時の模式断面図である。図8(a)、(b)において、用紙左側端ガイド部材20は左ガイドベース26に対して用紙幅方向(図8(a)、(b)において左右方向)に移動可能に取り付けられている。また、左側端ガイドシフト部材27は左ガイドベース26に対して上下方向に移動可能に取り付けられている。
【0039】
図8(a)に示すように、用紙セット時および給紙動作時においては、用紙左側端ガイド部材20が左側端ガイドシフト部材27の用紙側端当接部27aに当接しており、用紙左側端ガイド部材20が左ガイドベース26から突出した状態で用紙束16の幅方向の位置が規定される構成となっている。なお、用紙左側端ガイド部材20は模式的に示した用紙左側端ガイドばね28により図8(a)において符号Eで示した方向に付勢力を受けており、左側端ガイドシフト部材27は模式的に示した左側端ガイドシフトばね29により図8(a)において符号Fで示した方向(下方向)に付勢力を受けている。一方図8(b)に示すように記録動作時においては、左側端ガイドシフト部材27が左側端ガイドシフトばね29の付勢力に抗して上方向に移動する。すると用紙左側端ガイド部材20は左側端ガイドシフト部材27の用紙側端当接部27aから離間して、用紙左側端ガイドばね28の付勢力により図8(b)において符号Eで示した方向に移動する。その結果、用紙左側端ガイド部材20は左ガイドベース26に埋没する状態となり、用紙束16の端部から離間する構成となっている。
【0040】
記録動作が終了すると、左側端ガイドシフト部材27の上方への移動が解除される。すると、左側端ガイドシフトばね29の付勢力により、左側端ガイドシフト部材27が図8(a)、(b)において下方に移動して、これに連動して用紙左側端ガイド部材20が用紙左側端ガイドばね28の付勢力に抗して図8(a)、(b)において右方向に移動する。そして、図8(a)に示す用紙セット時および給紙動作時の状態に遷移する。
【0041】
このように、本実施例においては、左側端ガイドシフト部材27の上下移動により、用紙左側端ガイド部材20を左ガイドベース26に対して突出/埋没の移動をさせて用紙端部との接触/離間動作を制御する、用紙側端ガイド離間手段を具備している。
【0042】
(サイドガイドロックギア移動および側端ガイドシフト部材移動手段)
次に図9〜図11を用いてサイドガイドロックギア25および左側端ガイドシフト部材27の移動手段について説明する。
【0043】
図9はサイドガイドロックギア25と左ガイド部材18と、サイドガイドロックギア25および左側端ガイドシフト部材27の移動手段であるガイドシフトレバーを用紙搬送方向上流側から見た模式斜視図である。図9において、ガイドシフトレバー30は回転軸30aを中心に回動自在なレバー部材である。なお図4に示すように、ガイドシフトレバー30は給送フレーム15に軸支されており、圧板部材11に対して用紙束16の載置面の反対側に配置されている。また図9に示すように、ガイドシフトレバー30は幅方向中央部付近にサイドガイドロックギア押圧部30bを一体的に有しており、さらにはサイドガイドロックギア押圧部30bよりも端部側にガイドシフト押圧部30cを一体的に有している。
【0044】
図10は左ガイド腕部材22とサイドガイドロックギア25およびサイドガイドレバー30を図9におけるG方向から見たときの模式断面図であり、図10(a)は用紙セット時および給紙動作時の模式断面図、図10(b)は記録動作時の模式断面図である。また図11は左ガイド部材18およびサイドガイドレバー30を図9におけるG方向から見たときの模式断面図であり、図11(a)は用紙セット時および給紙動作時の模式断面図、図11(b)は記録動作時の模式断面図である。
【0045】
用紙セット時および給紙時のサイドガイドロックギア25と左側端ガイドシフト部材27の位置は以下となる。図10(a)においては、ガイドシフトレバー30はサイドガイドロックギア25から離間しており、図7(a)に示すように、サイドガイドロックギア25は左ガイド腕部材22に対して非歯合位置となり、圧板に対する左右のサイドガイドの移動が可能となる。また図11(a)においては、ガイドシフトレバー30は左側端ガイドシフト部材27から離間しており、図8(a)に示すように用紙左側端ガイド部材20は左ガイドベース26に対して突出状態となる。
【0046】
一方、記録動作時のサイドガイドロックギア25と左側端ガイドシフト部材27の位置は以下となる。図10(b)においてはガイドシフトレバー30が回転軸30aを中心に回転することにより、ガイドシフトレバー30に設けられたサイドガイドロックギア押圧部30bがサイドガイドロックギア25の下面に接触、これを押圧している。よってサイドガイドロックギア25が上方に移動して、図7(b)に示すように、サイドガイドロックギア25と左ガイド腕部材22が歯合し、圧板に対する左右のサイドガイドの移動を抑制する構成となっている。また、図11(b)においては、ガイドシフトレバー30が回転軸30aを中心に回転することにより、ガイドシフトレバー30に設けられたガイドシフト押圧部30cが左側端ガイドシフト部材27の下面に接触、これを押圧している。よって左側端ガイドシフト部材27が上方に移動して、図8(b)にて説明したように、用紙左側端ガイド部材20は左ガイドベース26に対して埋没状態となる。
【0047】
なお、サイドガイドロックギア25は用紙幅方向には移動せず、ガイド部材ギア24の近傍に配置されているため、図9に示すように、ガイドシフトレバー30のサイドガイドロックギア押圧部30bはガイドシフトレバー30の幅方向中央部付近に比較的小さい幅で形成されている。一方、左ガイド部材18は圧板上を用紙幅方向に移動可能であるため、左側端ガイドシフト部材27の位置は用紙幅方向で移動する。よって図9に示すように、ガイドシフトレバー30のガイドシフト押圧部30cはサイドガイドロックギア押圧部30bよりも端部側に、比較的大きい幅で形成されている。また、図5に示すように、右ガイド部材19はガイド部材ギア24を介して左ガイド部材18と連結されており、右ガイド部材19は圧板上を用紙幅方向に移動可能となる。このため、図9に示すように、ガイドシフトレバー30のガイドシフト押圧部30cは用紙幅方向反対側にも形成されている。
【0048】
このように、本実施例においては、用紙左側端ガイド部材の用紙端部からの離間動作と共に、サイドガイドロックギアの左ガイド腕部材に対する歯合位置と非歯合位置との相互遷移を、同一のレバー部品であるガイドシフトレバー30により行う。このため、圧板に対する左右のサイドガイドの移動抑制ロック動作を精度良く実現できる構成となっている。
【0049】
また、サイドガイドロックギア25をガイド部材ギア24の近傍に配置することでガイドシフトレバー30のサイドガイドロックギア押圧部30bとガイドシフト押圧部30cを同軸上に配置することが可能となり、装置の小型化に貢献する構成となっている。
【0050】
以上のように、本発明の実施の形態に係る給送部においては、ガイドシフトレバー30を回転させて、左右の用紙側端ガイド20、21を用紙束側端から離間させると共に、サイドガイドロックギア25と左ガイド腕部材22を歯合させることにより、圧板に対する左右のガイド部材の移動を抑制している。このため、用紙端部とガイド部材が離間した状態において、装置使用者がガイド部材を移動させることにより、用紙の不揃いや用紙端部の損傷が発生することを防ぐ給送記録装置を簡易な構成で実現している。
【0051】
なお、本実施例においては、左右のガイド部材18、19の一部に左右の用紙側端ガイド部材20、21を設け、左右の用紙側端ガイド部材20、21を用紙側端から離間させる方向に移動させる用紙側端ガイド部材離間手段を設けているが、左右のガイド部材18、19そのものを用紙側端から離間させる方向に移動させるガイド部材離間手段を設ける構成においても、サイドガイドロックギアによる左右のガイド部材の移動抑制については同様の効果が得られることは自明である。
【0052】
以上に説明した実施形態例に基づく本願発明は以下の態様および効果を奏する。
【0053】
本願の第1の態様は、被記録媒体を載置する圧板部材と、前記圧板部材に対して被記録媒体搬送方向に交差する方向へ移動可能に取り付けられたガイド部材と、前記被記録媒体を給送する給送手段と、前記給送手段の下流側に配置された搬送手段とを備え、前記ガイド部材あるいは前記ガイド部材の一部である側端ガイド部材を前記被記録媒体の側端(被記録媒体搬送方向に交差する方向にある端部)から離間させる方向に移動させるガイド部材離間手段を有する記録装置において、前記ガイド部材あるいは前記側端ガイド部材が前記被記録媒体側端から離間しているときに、前記ガイド部材の前記圧板部材に対する移動を抑制するガイド部材ロック手段を備えたことを特徴とする。
【0054】
本願の第2の態様では、上記第1の態様に加えて、前記記録装置は、前記搬送手段の下流側に配置された記録手段を備え、前記記録媒体が前記搬送手段に到達し前記搬送手段による搬送動作開始後で、前記記録手段による前記被記録媒体への記録動作開始前に、前記ガイド部材離間手段による前記ガイド部材あるいは前記側端ガイド部材の離間動作が行われることを特徴とする。
【0055】
上記第1および第2の態様によれば、装置使用者が被記録媒体セット時の操作ミスと混同して、誤ってガイド部材の移動を行う可能性のあるガイド部材離間時において、ガイド部材の移動を防ぐことが可能となる。このため、圧板上に載置された次ページ以降の被記録媒体の不揃いや、被記録媒体端部の損傷の発生の抑制を実現している。
【0056】
また本願の第3の態様では、上記第2の態様に加えて、前記ガイド部材にはラック形状が一体的に形成され、前記ガイド部材ロック手段は前記ガイド部材のラック形状と歯合する歯型形状を有するガイド部材ロック部材が、前記ガイド部材のラック部と歯合する歯合位置と、前記ガイド部材のラック部から離間する非歯合位置とを相互遷移することであることを特徴とする。
【0057】
本願の第4の態様は、上記第3の態様に加えて、前記圧板部材に対して被記録媒体載置面の反対側に、回転中心を軸支されたレバー部材が設けられていて、該レバー部材の回動により、前記ガイド部材ロック部材の歯合位置と非歯合位置との相互遷移が行われることを特徴とする。
【0058】
上記第3および第4の態様によれば、上記第1および2の態様の効果に加えて、簡易な機構でガイド部材ロック手段を構成することが可能となり、用紙の不揃いや用紙端部の損傷の発生を防ぐ記録装置を簡易な構成で実現している。
【0059】
また本願の第5の態様は、上記第4の態様に加えて、前記レバー部材の回動により、前記ガイド部材ロック部材の移動と共に、前記ガイド部材あるいは前記側端ガイド部材の離間動作が行われることを特徴とする。
【0060】
上記第5の発明によれば、上記第1〜4の発明の効果に加えて、ガイド部材ロック手段とガイド部材離間手段を共通の機構で駆動させることが可能となり、用紙の不揃いや用紙端部の損傷の発生を防ぐ記録装置をさらに簡易な構成で実現している。
【0061】
また本願の第6の態様は、上記第3の態様に加えて、前記圧板部材には、左右の前記ガイド部材が取り付けられ、また被記録媒体の幅方向略中央部付近にピニオン部材が回動可能な状態で取り付けられ、前記ピニオン部材は前記左右のガイド部材のラック形状と歯合する位置に配置されており、前記ガイド部材ロック部材は前記ピニオン部材と前記左右のどちらか一方のガイド部材との間にて、当該ガイド部材のラック形状部に歯合する位置に配置され、かつ前記ピニオン部材の近傍に配置されていることを特徴とする。
【0062】
上記第6の発明によれば、ガイド部材のラック部を必要以上に長くすることなく、装置の小型化を実現することが可能な構成となっている。
【0063】
勿論、本願発明は上記の態様に限らず、本願の発明思想を逸脱しない範囲で様々な態様に変更可能である。
【符号の説明】
【0064】
11 圧板
12 給送ローラ
18 左ガイド部材
19 右ガイド部材
20 用紙左側端ガイド部材
21 用紙右側端ガイド部材
22 左ガイド腕部材
23 右ガイド腕部材
24 ガイド部材ギア
25 サイドガイドロックギア
27 左側端ガイドシフト部材
28 用紙左側端ガイドばね
29 左側端ガイドシフトばね
30 ガイドシフトレバー
35 記録手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体を載置する圧板部材と、前記圧板部材に対して被記録媒体搬送方向に交差する方向へ移動可能に取り付けられたガイド部材と、前記被記録媒体を給送する給送手段と、前記給送手段の下流側に配置された搬送手段とを備え、前記ガイド部材あるいは前記ガイド部材の一部である側端ガイド部材を前記被記録媒体の側端から離間させる方向に移動させるガイド部材離間手段を有する記録装置において、
前記ガイド部材あるいは前記側端ガイド部材が前記被記録媒体の側端から離間しているときに、前記ガイド部材の前記圧板部材に対する移動を抑制するガイド部材ロック手段を備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記記録装置は、前記搬送手段の下流側に配置された記録手段を備え、前記記録媒体が前記搬送手段に到達し前記搬送手段による搬送動作開始後で、前記記録手段による前記被記録媒体への記録動作開始前に、前記ガイド部材離間手段による前記ガイド部材あるいは前記側端ガイド部材の離間動作が行われることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記ガイド部材にはラック形状が一体的に形成され、前記ガイド部材ロック手段は前記ガイド部材のラック形状と歯合する歯型形状を有するガイド部材ロック部材が、前記ガイド部材のラック部と歯合する歯合位置と、前記ガイド部材のラック部から離間する非歯合位置とを相互遷移することであることを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記圧板部材に対して被記録媒体載置面の反対側に、回転中心を軸支されたレバー部材が設けられており、前記レバー部材の回動により、前記ガイド部材ロック部材の歯合位置と非歯合位置との相互遷移が行われることを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記レバー部材の回動により、前記ガイド部材ロック部材の移動と共に、前記ガイド部材あるいは前記側端ガイド部材の離間動作が行われることを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記圧板部材には、左右の前記ガイド部材が取り付けられ、また被記録媒体の幅方向中央部付近にピニオン部材が回動可能な状態で取り付けられ、前記ピニオン部材は前記左右のガイド部材のラック形状と歯合する位置に配置されており、前記ガイド部材ロック部材は前記ピニオン部材と前記左右のどちらか一方のガイド部材との間にて、当該ガイド部材のラック形状部に歯合する位置に配置され、かつ前記ピニオン部材の近傍に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−49503(P2013−49503A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187373(P2011−187373)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】