説明

設備点検システム、計測システム、及び、設備点検方法

【課題】センサによる計測情報を用いる監視・保守対象に対する保守点検において、コストを増大させることなく、低消費電力な計測システムが低送信電力で送信する計測情報を端末装置に受信させることができる設備点検システム、計測システム、及び、設備点検方法を提供する。
【解決手段】監視対象設備である保守監視対象物5の状態を検出するセンサを備える計測システム6は、移動体4が備える情報端末4−1から受信機6−1が受信する励起信号に応じて、受信機6−1の通信可能エリアと一致しない範囲を通信可能エリアとする送信機6−4が、センサ6−2の計測結果である計測情報を情報端末4−1に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線信号を伝送手段として用いる設備点検システムに関する。特に、橋梁などの巨大な構造物等において行われる保守点検作業を円滑に行うとともにコスト削減を実現する設備点検システム、計測システム、及び、設備点検方法に関する。
【背景技術】
【0002】
安心・安全な社会を実現するために、インフラとしての構造物に対する保守点検作業は、必要不可欠である。一方、ユーザに安価なサービスを提供するためには、保守点検作業に関するコスト削減が必須となっている。
このような事情から、近年、コスト削減のための一手法として、人間の手を介さずに、センサを用いることにより保守点検作業を自動で行う手法が検討されている(例えば、特許文献1)。
以下、特許文献1に示される技術の説明として、排水機場において排水を行うポンプを監視対象とする保守点検作業に係る技術について、図面を用いて説明する。図6は、特許文献1の実施例における全体構成を示す図である。
【0003】
図6において、排水機場1は、ポンプ1−2と、ポンプ1−2の各部を制御する排水溝制御装置1−1とから構成される。ポンプ1−2は、エンジン1−2−1、減速機1−2−2、ポンプ本体1−2−3からなる3つの計測対象から構成される。ポンプ1−2における保守点検に係る構成として、無線信号を送受信する機能を有する計測制御部1−2−1−1、1−2−2−1、1−2−3−1、記憶部1−2−1−2、1−2−2−2、1−2−3−2、センサ1−2−1−3、1−2−2−3、1−2−3−3を備える。
センサ1−2−1−3、1−2−2−3、1−2−3−3は、自センサが取り付けられている装置の状態を計測し、各々記憶部1−2−1−2、1−2−2−2、1−2−3−2に計測情報を記憶させる。
計測制御部1−2−1−1、1−2−2−1、1−2−3−1は、各部を制御する。
【0004】
また、監視情報収集端末3は、無線信号を送受信する機能を有している。そして、監視情報収集端末3は、計測対象に備えられる計測制御部1−2−1−1、1−2−2−1、1−2−3−1への通信可能範囲内に位置する場合、計測情報の送信要求である励起信号を送信する。計測制御部1−2−1−1、1−2−2−1、1−2−3−1は、受信した励起信号に応じて、各々記憶部1−2−1−2、1−2−2−2、1−2−3−2から計測情報を読み出し、読み出した計測情報を監視情報収集端末3に送信する。
【0005】
監視情報収集端末3は、受信した計測情報を予め内部に備える記憶装置に記憶する、又は、無線通信により施設管理センタ2に送信する。
以上の構成により、監視対象設備である排水機場1を人間が目視することなく、保守人員が監視情報収集端末3を装備(携帯)して排水機場1付近を通りかかることにより保守点検の情報収集が行えるため、保守運用を早期に行えるとともに、保守に係る人件費の削減が期待できる。
【特許文献1】特開2004−102765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した特許文献1において、例えば、上述の保守人員に代えて、自動車が監視情報収集端末3を備え、この自動車による高速移動中に、監視情報収集端末3が計測情報を取得するシステムの場合、自動車の高速移動に伴い、励起信号の送信直後に計測制御部1−2−1−1、1−2−2−1、1−2−3−1の通信可能エリア外に移動してしまい、監視情報収集端末3による計測情報の取得に対する確実性が損なわれることになる。
【0007】
したがって、監視対象となる設備に付加される各計測制御部1−2−1−1、1−2−2−1、1−2−3−1は、監視情報収集端末3が通信可能エリア外に移動する前に計測情報の送信を完了しなければならない。すなわち、計測制御部1−2−1−1、1−2−2−1、1−2−3−1は、監視情報収集端末3から受信する励起信号に対して、直ちに計測情報の送信を開始しなければならないという制約が生じる。
【0008】
この制約に対応する方法として、計測制御部1−2−1−1、1−2−2−1、1−2−3−1の処理能力や無線信号の送信電力を高めることにより、上記の制約への解決を図ることも考えられる。しかし、このようなセンサを用いた保守システムは、自立型の電源、すなわち電池を用いることがあり、電池の交換が容易でない装置への電池交換作業や、電池交換により発生するコスト等の観点から、保守監視系における低消費電力化が必須となる。このため、計測制御部1−2−1−1、1−2−2−1、1−2−3−1の処理能力、送信電力を高めることは、得策ではない。
【0009】
処理能力や、送信電力を高めることなく上述の制約に対応する方法として、監視情報収集端末3が計測情報を受信するまでの間、各計測制御部1−2−1−1、1−2−2−1、1−2−3−1の通信可能エリアに監視情報収集端末3を備える保守人員が、待機することも可能である。
【0010】
しかしながら、保守人員に待機されることにより、待ち時間が発生し、単位時間当たりにおける点検(計測情報の取得)可能な監視対象の数が減り、点検作業効率が悪化する。一般的にセンサを用いた保守監視システムは、監視対象物の数が膨大であるため、待機時間により点検効率が悪化すると、監視情報収集端末3を備える保守人員の大幅な増員が必要となり、人件費の増大を招いてしまい、保守点検作業へのコストを削減する目的に反するという問題がある。
【0011】
本発明は、このような事情を考慮し、上記の問題を解決すべくなされたもので、その目的は、センサによる計測情報を用いる監視・保守対象に対する保守点検において、コストを増大させることなく、低消費電力な計測システムが低送信電力で送信する計測情報を端末装置に受信させることができる設備点検システム、計測システム、及び、設備点検方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題を解決するために、本発明は、設備点検システムが、移動体が備える通信端末と、監視対象設備の状態を計測情報として検出するセンサを備える計測システムとを備える設備点検システムであって、前記通信端末が、前記計測システムに計測結果を示す計測情報を要求する励起信号を送信し、当該励起信号への応答である計測情報を前記計測システムから受信する通信手段とを備え、前記計測システムが、前記通信端末から励起信号を受信する受信手段と、前記通信端末から送信される前記励起信号を受信すると、通信領域が前記受信手段とは異なる通信領域であり前記移動体の移動経路を含む領域である送信領域(例えば、実施形態における送信アンテナ6−41の通信可能エリア)に、前記監視対象設備において前記センサにより計測される計測情報を前記励起信号への応答として前記通信端末に送信する送信手段とを備えることを特徴とする設備点検システムである。
【0013】
また、本発明は、前記計測システムが、前記励起信号に対する応答の送信タイミングを通知する送信タイミング通知を前記送信手段に送信する送信タイミング通知手段を備え、前記計測システムの前記送信手段が、前記送信タイミング通知手段から受信する送信タイミング通知に応じて前記計測情報を前記通信端末に送信することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、前記送信タイミングが、前記通信端末が前記送信手段の前記送信領域内であることを示す第2励起信号の送信タイミングであり、前記送信タイミング通知手段が、前記通信端末から前記第2励起信号を受信すると前記送信タイミング通知を前記送信手段に送信することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、前記送信タイミングが、前記通信端末から受信する前記励起信号の受信タイミングから所定の時間経過後であり、前記送信タイミング通知手段が、前記通信端末からの前記励起信号の受信タイミングから前記所定の時間までをカウントし、カウント終了タイミングに前記送信タイミング通知を前記送信手段に送信することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の計測システムは、移動体が備え、励起信号の送信及び無線信号の受信を行う通信端末と、監視対象設備の状態を計測情報として検出するセンサを備える計測システムとを備える設備点検システムにおける計測システムであって、前記通信端末から前記励起信号を受信する受信手段と、前記通信端末から送信される前記励起信号を受信すると、通信領域が前記受信手段とは異なる通信領域であり前記移動体の移動経路を含む領域である送信領域に、前記監視対象設備において前記センサにより計測される計測情報を前記励起信号への応答として前記通信端末に送信する送信手段とを備えることを特徴とする計測システムである。
【0017】
また、本発明の設備点検方法は、移動体が備える通信端末と、監視対象設備の状態を計測情報として検出するセンサと受信手段と送信手段とを備える計測システムとを備える設備点検システムにおける設備点検方法であって、前記通信端末が、前記計測システムに計測結果を示す計測情報を要求する励起信号を送信する励起信号送信ステップと、前記計測システムの前記受信手段が、前記通信端末から前記受信手段が励起信号を受信する受信ステップと、前記送信手段が、前記通信端末から送信される前記励起信号を受信すると、通信領域が前記受信手段とは異なる通信領域であり前記移動体の移動経路を含む領域である送信領域に、前記監視対象設備において前記センサにより計測される計測情報を前記励起信号への応答として前記通信端末に送信する送信ステップと、前記通信端末が、前記励起信号への応答である前記計測情報を前記計測システムから受信する計測情報受信ステップとを有することを特徴とする設備点検方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、監視対象設備の状態を計測情報として検出するセンサを備える計測システムにおいて、移動体が備える通信端末から受信手段が受信する励起信号に応じて、通信領域が受信手段の通信領域と異なる通信領域であり、移動体の移動経路を含む領域である送信領域に、送信手段が、センサの計測結果である計測情報を通信端末に送信するようにした。
上記の構成とすることにより、通信端末を備える移動体が監視対象設備の付近を通過する際、計測システムにおいて、受信手段の通信領域に到達した移動体の通信端末から受信手段が励起信号を受信し、通信領域が受信手段の通信領域と異なる送信領域に、送信手段が、励起信号の送信位置と異なる場所に移動した移動体の通信端末に対して励起信号への応答である計測情報を送信することができる。
【0019】
このため、励起信号の受信から計測情報を送信するまでの間における移動体の移動範囲を全て通信領域とするように計測システム側が送信電力を上げる必要がなくなる。これにより、低送信電力で出力した送信信号を通信端末に受信させることが可能になり、送受信における計測システム側の消費電力を低減させることが可能になるという効果がある。
また、本発明の計測システムは、通信端末を備える移動体による移動を継続させたまま通信端末に計測情報を受信させることで、待ち時間を生じさせることなく効率的に計測情報を受信させることができ、移動体(例えば、車や、保守人員)の数の増大を抑制することでコストアップを抑制することが可能になるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<第1実施形態>
以下、本発明の一実施形態として、第1実施形態による設備点検システムについて、例えば、道路に架かる橋梁の設備点検を行う場合を例に、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態による設備点検システムの機能構成を示す概略図である。
同図において、保守監視対象物5は、内部に計測システム6を備える橋梁である。移動体4は、計測システム6との通信を行う情報端末4−1を備え、設備点検の対象となる保守監視対象物5の付近を巡回する移動体であり、例えば、自動車などが適用可能である。
【0021】
移動体4に備えられる情報端末4−1は、例えば、パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistants:情報携帯端末)、携帯電話など、保守監視対象物5の設備点検情報として、計測結果を収集する通信手段を備える装置である。具体的には、情報端末4−1は、計測結果の送信を要求する励起信号を計測システム6に送信し、励起信号に応じて送信される計測結果を受信する。情報端末4−1は、定期的、すなわち、所定周期ごとに励起信号を発信してもよいし、移動体4に乗車する人員による励起信号の発信命令の入力に基づき励起信号を発信することでもよい。
なお、情報端末4−1は、移動体4のバッテリなどから電源供給を行う構成など、計測結果の収集中の電源が確保可能な構成であればいずれの電源でも適用可能である。
【0022】
計測システム6は、無線信号を受信する受信アンテナ6−11を備える受信機6−1と、センサ6−2と、計測結果記憶装置6−3と、無線信号を送信する送信アンテナ6−41を備える送信機6−4と、タイマ6−5とを備える。計測システム6は、センサ6−2が計測する保守監視対象物5の計測結果を情報端末4−1に送信する。
なお、計測システム6の各部の通信方法は、無線通信、有線通信、赤外線通信等など、いずれの方法でも適用可能である。
【0023】
計測システム6において、受信機6−1は、受信アンテナ6−11を介して情報端末4−1からの励起信号を受信すると、計測システム6の各部を起動させるとともに、タイマ6−5に励起信号の受信を通知する。
センサ6−2は、例えば、橋梁を支える鋼線の錆や傷の有無など、保守監視対象物5の状態を計測する検出装置であり、この計測結果を計測結果記憶装置6−3に出力し、記憶させる。センサ6−2は、所定周期ごと、及び、受信機6−1により起動された場合に保守監視対象物5の状態を計測する。
【0024】
センサ6−2は、所定周期ごとの計測結果を計測結果記憶装置6−3に出力し、受信機6−1により起動される場合の計測結果は送信機6−4に出力し、計測結果を出力すると次の計測処理までの間、低消費電力状態であるスリープ状態に移行する。
なお、センサ6−2は、保守監視を行う対象物や必要となる計測内容によって、複数個のセンサ群から構成されることでもよい。
【0025】
計測結果記憶装置6−3は、センサ6−2により計測された計測結果を記憶する。
タイマ6−5は、受信機6−1からの励起信号の通知後、所定の設定時間tr経過後、送信タイミング通知を送信機6−4に出力する。
送信機6−4は、タイマ6−5からの送信タイミング通知に応じて、計測結果を情報端末4−1に送信する。具体的には、送信機6−4は、受信機6−1により起動されると、計測結果記憶装置6−3が記憶する現在までのセンサ6−2による計測結果を読み出し、読み出した計測結果と、センサ6−2から入力される新たな計測結果とを無線信号に変調し、送信アンテナ6−41を介して情報端末4−1に送信する。
【0026】
ここで、情報端末4−1への計測結果の送信は、送信機6−4による無線信号の受信可能エリア内に移動体4が存在する時刻に行う必要がある。ここでは、例えば、道路に架かる橋梁である保守監視対象物5の下部を移動体4が図面に向かって右から左に通り抜ける際に、情報端末4−1が計測結果を受信する場合を例に説明する。
図2は、保守監視対象物5の計測システム6における無線信号の通信可能エリアと、保守監視対象物5の長さとを模式的に示す図である。
【0027】
同図において、受信アンテナ6−11が情報端末4−1からの励起信号を受信可能となる通信可能エリアの範囲を半径R1の円で示す。また、送信アンテナ6−41が情報端末4−1へ送信する計測結果について、情報端末4−1が受信可能となる通信可能エリアの範囲を半径R2の円で示し、移動体4は、2つの円の中心を結ぶ直線上を走行するものとする。受信アンテナ6−11における通信可能エリアの中心から、送信アンテナ6−41における通信可能エリアの中心までの距離を距離Lとする。ここでは、2つの通信可能エリアの中心間の距離Lと、保守監視対象物5の長さとを一致させた場合を示している。
【0028】
また、位置r11は、移動体4が受信アンテナ6−11の通信可能エリアに入る位置を示し、位置r12は、移動体4が受信アンテナ6−11の通信可能エリア外となる位置を示す。同様に、位置r21は、移動体4が送信アンテナ6−41の通信可能エリアに入る位置を示し、位置r22は、移動体4が送信アンテナ6−41の通信可能エリア外となる位置を示す。
【0029】
同図において、移動体4が保守監視対象物5の下部を平均移動速度Vで通過する際、受信アンテナ6−11の通信可能エリアの円の中心において励起信号を送信し、移動時間Tr後に送信アンテナ6−41の通信可能エリアの円の中心において計測結果を受信する場合、この移動時間Trを次式で示すことができる。
移動時間Tr=距離L/速度V
【0030】
移動体4の情報端末4−1が励起信号を送信する時刻を基準として、移動体4が計測結果の無線信号を受信することができる、すなわち、図2の送信アンテナ6−41の通信可能エリアである半径R2の円の内部に存在する時刻の範囲Triを次式に示す。
(L−R2)/V≦Tri≦(L+R2)/V
【0031】
上式に示す時刻の範囲Triの範囲内となるように、タイマ6−5が送信タイミング通知を出力する所定の設定時間trを設定することにより、移動体4が確実に受信することができるように送信機6−4が計測結果を送信することが可能になる。また、このように、送信機6−4がタイマ6−5からの送信タイミング通知入力に応じた間欠動作により、計測結果を送信することにより、送信機6−4の低消費電力化を実現することが可能になるという効果がある。
なお、移動体4が保守監視対象物5を通過する際の平均移動速度Vを予め取り決めておくことにより、タイマ6−5の設定時間trを固定の値に設定することができる。
【0032】
また、受信アンテナ6−11の通信可能エリアの中心ではなく、位置r11において情報端末4−1が励起信号を送信する場合、移動体4が送信アンテナ6−41の通信可能エリアである半径R2の円の内部に存在する時刻の範囲Tr11を次式に示す。
(L+R1−R2)/V≦Tr11≦(L+R1+R2)/V
【0033】
同様に、受信アンテナ6−11の通信可能エリアの中心ではなく、位置r12において情報端末4−1が励起信号を送信する場合、移動体4が送信アンテナ6−41の通信可能エリアである半径R2の円の内部に存在する時刻の範囲Tr12を次式に示す。
(L−R1−R2)/V≦Tr12≦(L−R1+R2)/V
図2の構成において、範囲Tr11と範囲Tr12との双方に含まれる範囲として、設定時間trを次式の範囲に設定することがより好適である。
(L+R1−R2)/V≦tr≦(L−R1+R2)/V
【0034】
次に、本発明の第1実施形態における設備点検システムの動作の流れを図面を用いて説明する。図3は、設備点検システムにおける動作の流れを示すフローチャートである。
所定周期ごとに励起信号を送信する情報端末4−1を備える移動体4は、所定の平均速度Vで走行しており、計測システム6の受信アンテナ6−11の通信可能エリアに到達する(ステップS1)。
移動体4が受信アンテナ6−11の通信可能エリア内を通過中において、計測システム6の受信機6−1は、所定周期ごとに情報端末4−1が送信する励起信号を受信する(ステップS2)。
【0035】
受信機6−1は、励起信号を受信すると、センサ6−2、計測結果記憶装置6−3、送信機6−4を起動させ、タイマ6−5に励起信号の受信を通知する(ステップS3)。
センサ6−2は、受信機6−1により起動すると、保守監視対象物5の状態の計測を行い、計測結果を送信機6−4に出力する(ステップS4)。
送信機6−4は、受信機6−1により起動すると、起動した計測結果記憶装置6−3から、現在までの計測結果を読み出す(ステップS5)。
【0036】
タイマ6−5は、受信機6−1から励起信号の受信の通知時点から設定時間trが経過すると、送信機6−4に送信タイミング通知を出力する(ステップS6)。
送信機6−4は、タイマ6−5から入力される送信タイミング通知に応じて、計測結果記憶装置6−3から読み出した計測結果と、センサ6−2から入力される新たな計測結果とを無線信号として送信アンテナ6−41を介して送信する(ステップS7)。
情報端末4−1は、移動体4が送信アンテナ6−41の通信可能エリア内において、計測結果を受信する(ステップS8)。
【0037】
上述の実施形態によれば、情報端末4−1を備える移動体4が保守監視対象物5である橋梁の下部を通過する際、計測システム6において、受信アンテナ6−11の通信可能エリアに到達した移動体4の情報端末4−1から送信される励起信号を受信し、受信アンテナ6−11の通信可能エリアと一致しない範囲を通信可能エリアとする送信アンテナ6−41が、励起信号の送信位置である受信アンテナ6−11の通信可能エリアと異なる場所に移動した移動体4の情報端末4−1に対して励起信号への応答である計測情報を送信することができる。
【0038】
このため、励起信号の受信から計測情報を送信するまでの間における移動体4の移動範囲を全て通信可能エリアとするように計測システム6側が送信電力を上げる必要がなくなる。これにより、低送信電力で出力した送信信号を情報端末4−1に受信させることが可能になり、送受信における計測システム6の消費電力を低減させることが可能になるという効果がある。
また、情報端末4−1を備える移動体4による移動を継続させたまま情報端末4−1に計測情報を受信させることで、待ち時間を生じさせることなく効率的に計測情報を受信させることができ、移動体4(例えば、車や、保守人員)の数の増大を抑制することでコストアップを抑制することが可能になるという効果がある。
【0039】
<第2実施形態>
次に、本発明の他の実施形態として、第2実施形態による設備点検システムの構成例について図面を参照して説明する。図4は、第2実施形態の構成を示す図である。同図において、第1実施形態の図1に示す構成と同様の構成については同一の符号を付し、異なる構成について説明する。図4に示す設備点検システムと図1に示す設備点検システムとで異なる点は、図4の受信機6−1aに受信アンテナ6−11aに加えて受信アンテナ6−12aが設けられている点と、これに伴い、図4の計測システム6aが図1のタイマ6−5を備えていない点である。
【0040】
図4の計測システム6aにおいて、受信機6−1aが備える受信アンテナ6−12aは、送信機6−4の送信アンテナ6−41の近傍に配置されており、情報端末4−1からの励起信号を受信する。
なお、本実施形態において、送信機6−4に接続された送信アンテナ6−41と、その送信アンテナ6−41の付近に設置された受信アンテナ6−12aは別々の構成として図示しているが、送受信を同時に行わないのであれば、送受信の切替スイッチを用いて1つのアンテナで構成することも可能である。
【0041】
受信機6−1aは、図1の受信機6−1と同様に、受信アンテナ6−11aを介して受信アンテナ6−11aの通信可能エリア内の情報端末4−1から送信される第一の励起信号を受信する。また、受信機6−1aは、送信アンテナ6−41の通信可能エリアに接近する移動体4の情報端末4−1から送信される第二の励起信号を受信アンテナ6−12aを介して受信する。受信機6−1aは、受信アンテナ6−12aから受信する第二の励起信号に応じて、送信機6−4に送信タイミング通知を出力し、また、センサ6−2、計測結果記憶装置6−3を、スリープ状態にさせる。
【0042】
すなわち、設備点検システム全体の動作に関して、本実施形態における計測システム6aが、第一の実施形態における計測システム6に対して異なる点は、情報端末4−1からの励起信号を2回受信する点である。
上記の構成とすることにより、受信アンテナ6−12aを介して受信する第二の励起信号により、受信機6−1aは、移動体4が送信機6−4の通信可能エリアに到達するタイミングを検出し、送信機6−4に送信タイミング通知を出力することができる。これにより、送信機6−4は、第一の実施形態と比較して、より確実に計測結果を情報端末4−1に受信させることが可能になるという効果がある。
【0043】
<第3実施形態>
次に、本発明の他の実施形態として、第2実施形態の応用である第3実施形態による設備点検システムの構成例について図面を参照して説明する。図5は、第3実施形態の全体構成を示す図である。同図において、図4の第2実施形態と異なる点は、第一の励起信号を受信する受信装置(第一の受信機6−1A)と第二の励起信号を受信する受信装置(第二の受信機6−5A)とがそれぞれ独立した構成である点である。
また、図5において、図1の第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、異なる構成について説明する。
【0044】
図5の計測システム6Aにおいて、第一の受信機6−1Aは、受信アンテナ6−11Aを備えており、情報端末4−1から第一の励起信号を受信すると、センサ6−2、計測結果記憶装置6−3、送信機6−4、第二の受信機6−5Aを起動させる。
また、第二の受信機6−5Aは、送信アンテナ6−41の近傍に備えられる受信アンテナ6−51Aを備える。第二の受信機6−5Aは、送信アンテナ6−41の通信可能エリアに接近する移動体4の情報端末4−1から送信される第二の励起信号を受信アンテナ6−51Aを介して受信する。第二の受信機6−5Aは、受信アンテナ6−51Aから受信する第二の励起信号に応じて、送信機6−4に送信タイミング通知を出力し、また、センサ6−2、計測結果記憶装置6−3を、スリープ状態にさせる。
【0045】
本実施形態によれば、第2実施形態による情報端末4−1への計測情報受信の確実性を高める効果がある。
また、保守監視対象物5−3が巨大な設備であり、例えば、この設備に敷設されている光ファイバ管路により、計測システム6Aにおける制御信号や測定結果のやり取りを行う構成に対して本発明を適用する場合、次の効果が得られる。
【0046】
すなわち、保守監視対象物5−3が巨大な設備である場合、第2実施形態の受信アンテナ6−12aと受信機6−1aとを接続する光ファイバの配線長が長くなるが、本実施形態のように受信装置を複数用意することにより、配線長の短縮、すなわち、コストの削減を実現することが可能になるという効果がある。
【0047】
以上、述べたとおり、本発明の一実施形態である第1実施形態の設備点検システムを適用することにより、計測システムが動作する時間を必要最低限に抑制することができ、計測システムの電池の長寿命化を実現することが可能になる。また、移動体が計測結果の無線信号の送信エリアに存在する時刻において送信処理を行うようにすることにより、携帯端末宛に確実な計測結果の伝達を実現することができる。
【0048】
また、第2実施形態に示す設備点検システムを適用することにより、複数回送信される励起信号により計測システムを制御することにより、計測システムのセンサ6−2、計測結果記憶装置6−3、及び、送信機6−4の稼働時間を必要最低限にするととともに、移動体の移動速度によらず、携帯端末に確実に計測情報を受信させることが可能になるという効果がある。
また、第3実施形態に示す設備点検システムを適用することにより、受信機とアンテナとの間の配線を短縮することができ、コストを削減することが可能になるとともに、巨大な構造物に対する保守管理における計測システムの設置条件を緩和することが可能になるという効果がある。
【0049】
上述したように、計測システムにおいて、監視情報である計測情報を収集する携帯端末からの励起信号の受信位置と、計測情報の送信位置とを物理的に異なる場所に配置させることにより、励起信号の受信時刻から、計測情報を送信するまでの間に、計測システムに対し、送信処理に要する時間の猶予を与えることができる。これにより、情報端末が高速移動を行い、かつ、計測システムの処理速度が低速であり送信電力が低い場合であっても、情報端末が保守対象を通り過ぎるだけで計測情報を確実に取得させることが可能となり、保守監視における計測システムの低消費電力化を実現することができる。
【0050】
なお、上述の実施形態において、送信機6−4が送信する計測結果は、センサ6−2による新たな計測結果と、計測結果記憶装置6−3が記憶する過去の計測結果とを含むこととして説明したが、これに限られず、センサ6−2による新たな計測結果、又は、計測結果記憶装置6−3に保存されている計測結果の少なくとも一方を送信することとしてもよい。
また、送信機6−4における通信可能エリアは、移動体4の情報端末4−1に計測情報を受信させることが可能である移動体4の経路内であればいずれの範囲でもよい。例えば、受信機6−1の通信可能エリアの一部を含む、すなわち、受信機6−1の通信可能エリアと送信機6−4の通信可能エリアとが一部重複するようにしてもよい。
【0051】
なお、上述の計測システム6、6a、6A、及び、情報端末4−1は、内部にコンピュータシステムを有している。そして、計測システム6の受信機6−1、センサ6−2、送信機6−4、タイマ6−5、並びに、計測システム6aの受信機6−1a、計測システム6Aの第二の受信機6−5Aの動作の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータシステムが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでいう「コンピュータシステム」とは、CPU及び各種メモリやOS、周辺機器等のハードウェアを含むものである。
【0052】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、図3に示す各ステップを実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、また、図1に示す計測システム6の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、また、図4、及び、図5における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、保守点検対象の設備に関する計測結果の情報を移動体が備える携帯端末に受信させる処理を行ってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0053】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組合せで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1実施形態による設備点検システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】同実施形態における計測システム6の通信可能エリアを示す図である。
【図3】同実施形態における設備点検システムの動作フローを示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態における計測システム6aの構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第3実施形態における計測システム6Aの構成を示すブロック図である。
【図6】特許文献1に示すシステムの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0055】
4 移動体
4−1 情報端末
5、5−2、5−3 保守監視対象物
6、6a、6A 計測システム
6−1、6−1a 受信機
6−1A 第一の受信機
6−5A 第二の受信機
6−11、6−11a、6−12a、6−11A、6−51A 受信アンテナ
6−2 センサ
6−3 計測結果記憶装置
6−4 送信機
6−41 送信アンテナ
6−5 タイマ
1 排水機場
1−1 排水溝制御装置
1−2 ポンプ
1−2−1 エンジン
1−2−2 減速機
1−2−3 ポンプ本体
1−2−1−1、1−2−2−1、1−2−3−1 計測制御部
1−2−1−2、1−2−2−2、1−2−3−2 記憶部
1−2−1−3、1−2−2−3、1−2−3−3 センサ
2 施設管理センタ
2−1 施設管理装置
3 監視情報収集端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体が備える通信端末と、監視対象設備の状態を計測情報として検出するセンサを備える計測システムとを備える設備点検システムであって、
前記通信端末は、
前記計測システムに計測結果を示す計測情報を要求する励起信号を送信し、当該励起信号への応答である計測情報を前記計測システムから受信する通信手段とを備え、
前記計測システムは、
前記通信端末から励起信号を受信する受信手段と、
前記通信端末から送信される前記励起信号を受信すると、通信領域が前記受信手段とは異なる通信領域であり前記移動体の移動経路を含む領域である送信領域に、前記監視対象設備において前記センサにより計測される計測情報を前記励起信号への応答として前記通信端末に送信する送信手段と
を備えることを特徴とする設備点検システム。
【請求項2】
前記計測システムは、
前記励起信号に対する応答の送信タイミングを通知する送信タイミング通知を前記送信手段に送信する送信タイミング通知手段を備え、
前記計測システムの前記送信手段は、
前記送信タイミング通知手段から受信する送信タイミング通知に応じて前記計測情報を前記通信端末に送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の設備点検システム。
【請求項3】
前記送信タイミングは、前記通信端末が前記送信手段の前記送信領域内であることを示す第2励起信号の送信タイミングであり、
前記送信タイミング通知手段は、
前記通信端末から前記第2励起信号を受信すると前記送信タイミング通知を前記送信手段に送信する
ことを特徴とする請求項2に記載の設備点検システム。
【請求項4】
前記送信タイミングは、前記通信端末から受信する前記励起信号の受信タイミングから所定の時間経過後であり、
前記送信タイミング通知手段は、
前記通信端末からの前記励起信号の受信タイミングから前記所定の時間までをカウントし、カウント終了タイミングに前記送信タイミング通知を前記送信手段に送信する
ことを特徴とする請求項2に記載の設備点検システム。
【請求項5】
移動体が備え、励起信号の送信及び無線信号の受信を行う通信端末と、監視対象設備の状態を計測情報として検出するセンサを備える計測システムとを備える設備点検システムにおける計測システムであって、
前記通信端末から前記励起信号を受信する受信手段と、
前記通信端末から送信される前記励起信号を受信すると、通信領域が前記受信手段とは異なる通信領域であり前記移動体の移動経路を含む領域である送信領域に、前記監視対象設備において前記センサにより計測される計測情報を前記励起信号への応答として前記通信端末に送信する送信手段と
を備えることを特徴とする計測システム。
【請求項6】
移動体が備える通信端末と、監視対象設備の状態を計測情報として検出するセンサと受信手段と送信手段とを備える計測システムとを備える設備点検システムにおける設備点検方法であって、
前記通信端末が、
前記計測システムに計測結果を示す計測情報を要求する励起信号を送信する励起信号送信ステップと、
前記計測システムの前記受信手段が、
前記通信端末から前記受信手段が励起信号を受信する受信ステップと、
前記送信手段が、
前記通信端末から送信される前記励起信号を受信すると、通信領域が前記受信手段とは異なる通信領域であり前記移動体の移動経路を含む領域である送信領域に、前記監視対象設備において前記センサにより計測される計測情報を前記励起信号への応答として前記通信端末に送信する送信ステップと、
前記通信端末が、
前記励起信号への応答である前記計測情報を前記計測システムから受信する計測情報受信ステップと
を有することを特徴とする設備点検方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−295051(P2009−295051A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−149899(P2008−149899)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】