説明

設置位置情報管理システム、ラック、管理対象機器および設置位置情報管理方法

【課題】複数の搭載位置を有するラックに搭載される機器の設置位置情報を管理する設置位置情報管理システムにおいて、ラックに搭載される機器の位置情報を自動的に設定、管理できるようにする。
【解決手段】サーバラック1が、サーバ3に対して設置位置を表す情報2を送信する無線通信モジュール14を、複数のサーバ3の各搭載位置に対応させて複数個備え、サーバ3が、無線通信モジュール14から送信される設置位置を表す情報2を受信する無線通信モジュール32と、管理用端末5に対して設置位置を表す情報2を送信する通信部33とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のサーバ等の管理対象機器の設置位置情報を管理する設置位置情報管理システム、当該設置位置情報管理システムのラック、当該設置位置情報管理システムによる管理対象機器、および、当該設置位置情報管理システムの設置位置情報管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多数のサーバを有する施設では、サーバ管理を効率的に行う必要がある。例えば、クラウドコンピューティング発展に伴いデータセンターの規模が拡大しつつある。このため、データセンターにおいては、サーバ管理を効率的に行うことが特に重要となっている。
サーバを管理する方法の1つとして、IP(Internet Protocol)アドレスなど、ネットワークアドレス(通信ネットワークにおけるサーバのアドレス)を用いてサーバを識別し管理する方法が考えられる。ネットワークアドレスを用いてサーバを識別し管理する方法は、ネットワーク上でサーバを管理する際には特に有効である。例えば、サーバ管理装置が、ネットワークアドレスに基づいて各サーバにアクセスし、各サーバがマネジメント機能を実行して取得した当該サーバの負荷状態など、様々な情報を取得し得る。これにより、サーバの管理者は、サーバ管理装置を介して一括して各サーバの状態を監視できる。
【0003】
一方、保守作業などサーバに対して直接作業を行う場合は、ネットワークアドレスのみならずサーバの位置情報が必要となる。すなわち、ネットワークアドレスは、サーバの位置とは無関係に設定可能であり、通常、サーバの位置を正確に示してはいない。このため、ネットワークアドレスのみでは、作業対象のサーバを特定することができない。
また、ネットワークアドレスのみでは、サーバを設置位置ごとに分けて管理することもできない。例えば、作業のためにサーバを収納するラックの電源を落とす場合に、ネットワークアドレスのみからは、どのサーバが影響を受けるかを把握し管理することができない。
【0004】
そこで、例えば、各サーバのネットワークアドレスと設置場所とを対応付けた設置場所リストを予め作成しておき、作業対象のサーバのネットワークアドレスをキーとして設置場所リストを検索して作業対象のサーバの位置情報を取得することが考えられる。
しかしながら、サーバを設置する際に設置場所リストを手作業で作成することは、作成者の負担が大きい。特に、大規模なデータセンターなど多数のサーバを備える施設では、設置場所リスト作成に多大な時間を要し、設置場所リスト作成者の負担が特に大きい。さらには、サーバ設置作業者が設置場所リストを作成する場合、設置場所リスト作成に時間を要することで、サーバ設置作業に要する時間が増大してしまうことが考えられる。また、サーバの配置替えを行う際や、サーバを増設または撤去する際の、設置場所リストの更新作業も作業者にとって負担となる。さらには、設置場所リストの更新作業を失念し、保守作業等を行う際にサーバを特定できなくなってしまうおそれもある。
【0005】
すなわち、ネットワークアドレスを用いてサーバを管理し、各サーバのネットワークアドレスと設置場所とを対応付けた設置場所リストを手作業で作成する場合、以下の点が課題となる。
第1の課題は、サーバを設置する際にサーバ毎の設置場所をリストに記入する必要がある点である。サーバの設置台数が少ない場合は問題ないが、1度に大量のサーバを新設する場合は大変な手間が必要となる。同様の問題は大量のサーバを撤去または移動する際にも発生する。
第2の課題は、リストの管理が必要となる点である。設置場所リストを常に最新かつ正確なものとするためには、きちんとしたポリシーを定めて設置場所リストを管理しなければならない。そのためにはある程度の手間が必要である。
第3の課題は、棚卸対応である。企業で資産の棚卸をする場合、装置の種類や設置場所をリスト化する必要がある。大規模なデータセンターの場合にはリスト化が大変な手間となる。また、社外のデータセンターにサーバを設置している場合には現地での長時間作業が必要となり、作業者への負担も大きい。
【0006】
ここで、特許文献1には、ラックに搭載されたサーバの搭載位置を自動的に検出して管理するための構成管理方式が記載されている。特許文献1に記載されている構成管理方式では、各サーバに貼り付けられたタグをラック側に用意された読み取り装置で読み取ることで、各サーバの情報がラック側の制御装置(および通信装置)経由で管理端末へ送られるようになっている。
また、特許文献2には、サーバの位置情報をグラフィカルに表示する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−226582号公報
【特許文献2】特開2003−288236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されている構成管理方式では、管理端末において、まず、サーバを搭載しているラックに関する情報を確認し、その後、そのラックの各段に搭載されているサーバの位置を確認するようになっている。ここで特許文献1におけるラックに関する情報とは、ラックの品名、型名、製造番号、搭載可能サイズ等である。
【0009】
仮に、特許文献1に記載されている構成管理方式において、ラックに関する情報に、ラックの位置情報を含ませたとすれば、管理端末でラックの位置情報を管理することが可能となり、ひいてはラックに搭載されている各サーバの位置情報を管理することが可能となると考えられる。しかしながら、上述したように、特許文献1に記載されている構成管理方式では、各サーバに貼り付けられたタグから送信された情報がラック側に用意された読み取り装置で読み取られ、その後、ラック側の制御装置(および通信装置)経由で管理端末に対して情報が送られるという構成が用いられている。そのため、次のような点が課題となる。
【0010】
まず、特許文献1に記載されている方式の場合、サーバとラック側の制御装置との間の通信だけでは(つまりサーバは送信側、ラックは受信側に固定されているので、サーバはラック側から情報を得ることはできず)、サーバは自分自身の設置位置を知ることができず、管理端末においてサーバと設置場所との紐付処理をしなければならない。この場合の紐付処理とは、例えば、サーバID(identification;識別符号)とIPアドレスとのテーブルを管理端末が保持していて、管理端末が、サーバの電子タグから読み出すサーバIDをキーとしてテーブルを検索し、位置情報を読み出す処理である。サーバの個数が多くなると、この紐付処理に要する時間が増加する。
【0011】
また、管理端末には、ラック側の制御装置と通信を行って位置情報を収集することに対応した専用の管理用ソフトウェアが必要となり、専用ソフトウェアがインストールされていない通常のPC(パーソナルコンピュータ)では、位置情報を用いてサーバ管理を行うことができない。
【0012】
さらに、特許文献1に記載されている方式の場合、ラック側に、サーバ側から受信した情報を管理端末に送信するための通信装置を設け、さらに、ラック側の通信装置と管理端末とを接続するための通信回線を設ける必要があるという課題がある。
【0013】
また、特許文献2には、各サーバの位置情報を示す位置情報データベースの具体的作成方法は示されていない。
【0014】
本発明は、上述の課題を解決することのできる設置位置情報管理システム、ラック、管理対象機器および設置位置情報管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、本発明の一態様による設置位置情報管理システムは、ラックと、前記ラックに搭載される複数の管理対象機器と、前記管理対象機器の設置位置情報を管理する管理装置とを具備し、前記ラックは、前記管理対象機器に対して設置位置情報を送信する設置位置情報送信部を、前記複数の管理対象機器の各搭載位置に対応させて複数具備し、前記管理対象機器は、当該管理対象機器の搭載位置に対応する前記設置位置情報送信部から送信される前記設置位置情報を受信する設置位置情報受信部と、前記管理装置から設置位置情報要求信号を受信すると前記管理装置に対して前記設置位置情報を送信する通信部とを具備することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の一態様によるラックは、管理対象機器を搭載可能な複数の搭載位置を複数有するとともに設置位置情報を送信する設置位置情報送信部を前記搭載位置毎に具備することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の一態様による管理対象機器は、設置位置情報を受信する設置位置情報受信部と、設置位置情報要求信号を受信すると前記設置位置情報を送信する通信部とを具備することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の一態様による設置位置情報管理方法は、複数の管理対象機器と、前記複数の管理対象機器を搭載し、前記管理対象機器に対して設置位置情報を送信する設置位置情報送信部を前記複数の管理対象機器の各搭載位置に対応させて複数具備するラックと、前記管理対象機器の設置位置情報を管理する管理装置とを用い、前記管理対象機器が、当該管理対象機器の搭載位置に対応する前記設置位置情報送信部から送信される前記設置位置情報を受信する設定位置情報受信ステップと、前記管理対象機器が、前記管理装置から設置位置情報要求信号を受信し、前記管理装置に対して前記設置位置情報を送信する設置位置情報送信ステップと、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ラックに搭載される複数の管理対象機器(例えばサーバ)に、ラック側の設置位置情報送信部から送信された、当該管理対象機器の搭載位置に対応する設置位置情報を受信する設置位置情報受信部を設けているので、例えばサーバをラックに設置するだけで設置位置を自動的にサーバに設定することが可能となり、サーバの位置情報を自動的に設定、管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態における設置位置情報管理システムの概略構成を示す構成図である。
【図2】同実施形態におけるサーバラック1が、サーバの位置情報の元となるサーバラックの座標情報の入力を受け付けて、サーバの座標情報を送信する処理手順を示すフローチャートである。
【図3】同実施形態におけるサーバ3が座標情報を取得する処理手順を示すフローチャートである。
【図4】同実施形態において、管理用端末5とサーバ3との間で座標情報2を送受信する際の処理の流れを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態における設置位置情報管理システムの概略構成を示す構成図である。図1を参照すると、本発明による設置位置情報管理システムの一実施形態の構成要素としての、サーバラック1、サーバ3、および管理用端末5が示されている。なお、図1に示す構成は一例であって、サーバラック1、サーバ3、および管理用端末5の個数は図示するものに限定されない。例えば、複数のサーバラック1にサーバ3が搭載されていてもよい。また、複数の管理用端末5が分散処理にてサーバ3を管理するようにしてもよい。
なお、複数のサーバ3は、内部の構成が同一であってもよいし、異なるものであってもよい。また、管理用端末5とサーバ3との間を接続する管理用ネットワーク4は、管理用ネットワーク専用のケーブルを用いて構成されるものでもよいし、他のネットワークとケーブルを共用するものであってもよい。
【0022】
サーバラック1は、ラック座標入力部11、ラック座標表示部12、コントローラ13、および、サーバ3と通信するための無線通信モジュール14を搭載している。そして、ラック座標入力部11と、ラック座標表示部12とが、コントローラ13に接続されている。設置位置情報管理システムのユーザ(例えばサーバ3の管理者)は、ラック座標入力部11を操作することでサーバラック1のサーバルーム内における座標を設定でき、ラック座標表示部12を用いて、設定した内容を確認することができる。なお、ここでいう「サーバルーム」とは、サーバを収納する部屋である。サーバルーム内にサーバラック1が設置され、各サーバラック内にサーバ3が搭載される。また、ここでいうサーバルームは、サーバ専用の部屋である必要はなく、他の機器と共にサーバが収納されている、いわゆるマシン室であってもよい。また、サーバルームは1室である必要は無く、複数のサーバルームにサーバラック1が設置されていてもよい。
【0023】
無線通信モジュール14もコントローラ13に接続されており、サーバ3と通信可能となるようサーバラック1の各段(すなわちサーバ3の各搭載位置)に設置されている。なお、無線通信モジュール14の用いる通信方式としては、非接触で通信可能な様々な方式を用いることができる。例えば、無線通信モジュール14が、NFC(Near Field Communication)によってサーバ3と通信するようにしてもよいし、IrDA(登録商標)(Infrared Data Association)、RFID(Radio Frequency IDentification)など他の通信方式を用いてサーバ3と通信するようにしてもよい。
【0024】
サーバ3は、BMC(Base Management Controller)31と、無線通信モジュール32と、通信部33とを備える。
無線通信モジュール32は、例えばサーバ3の本体側面に位置する。そして、サーバラック1にサーバ3を設置した際に、サーバ3側の無線通信モジュール32と、サーバラック側の無線通信モジュール14とが、互いに向き合って通信可能となるように配置されている。
【0025】
BMC31は、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置)やメモリを有して構成され、所定のプログラムを実行することでサーバ3内の各種ハードウェアの監視、リモートコントロール、イベントの記録などを行う監視装置である。また、BMC31は、無線通信モジュール32を起動して受信待機状態とする機能や、無線通信モジュール32がサーバラック1側の無線通信モジュール14から受信した情報を、通信部33を介して管理用端末5へ送信する機能を有している。
【0026】
具体的には、無線通信モジュール32がBMC31に接続されており、BMC31は、無線通信モジュール32および無線通信モジュール14を介してサーバラック1のコントローラ13と情報を送受信する。また、BMC31は、通信部33を介して管理用ネットワーク4に接続されている。これにより、管理用端末5は通信部52を介して管理用ネットワーク4に接続することで、管理用ネットワーク4を経由してサーバ3のBMC31から情報を取得することができる。
【0027】
管理用端末5では集中管理ソフトウェア51が動作しており、BMC31から収集した情報を元にサーバ管理を行っている。集中管理ソフトウェア51は、例えば、管理用端末5の備えるCPUが、管理用端末5の備える記憶装置から当該ソフトウェアを読み出して実行することによって動作する。
【0028】
次に、図1に示す設置位置情報管理システムの動作について、図2〜図4を参照して説明する。なお、以下の例において特に説明をしない場合、図1に示す管理用端末5が、1つのサーバルーム内に設置されている1または複数のサーバラック1に搭載されている1または複数のサーバ3を管理対象としているものとする。また、管理用端末5には、管理対象としている1または複数のサーバ3の各IPアドレスが登録されているものとする。
【0029】
図2は、サーバラック1が、サーバの位置情報の元となるサーバラックの座標情報の入力を受け付けて、サーバの座標情報を送信する処理手順を示すフローチャートである。
サーバラック1を設置する際、設置者は、ラック座標入力部11を用いて、サーバルーム内の位置情報として座標情報[X,Y]を設定する(ステップS11)。なお、XおよびYは、サーバラック1の設置位置を特定するための情報であり、例えばサーバラック1が設置されているサーバルームの間取り図など所定の図面上の座標データであってもよいし、緯度と経度に対応する座標であってもよい。なお、管理用端末5が、複数の建物や階に設けられたサーバルームなど、複数のサーバルームに設置されたサーバラック1を管理する場合は、サーバラック1の設置位置を特定するための情報として、2次元の座標情報に限らず、例えばサーバルームを有する建物を特定する情報、サーバルームが位置する建物内の階を特定する情報、サーバルームがその階のどこに位置するのかを特定する情報等を含むようなものとすることができる。
【0030】
コントローラ13は、ラック座標表示部が入力を受け付けるサーバラック1の座標情報[X,Y]を記憶するとともに、ラック座標表示部12に表示させる(ステップS12)。また、コントローラ13は、記憶する座標情報[X,Y]にラック各段の番号Zを加えた座標情報[X,Y,Z](以下では、この座標情報[X,Y,Z]を「座標情報2」と称する)を、無線通信モジュール14を介して定期的に送信する(ステップS13)。
【0031】
例えば、サーバルーム内の座標[1,2]に設置されたサーバラック1の1段目(例えば下から1段目)に設置された無線通信モジュール14が送信する座標情報は[1,2,1]となり、同じく2段目に設置された無線通信モジュール14の場合は[1,2,2]、3段目であれば[1,2,3]となる。
なお、ラック各段の番号Zは、例えば、サーバラック1の製造時に予めコントローラ13の記憶部に書き込まれている。
【0032】
図3は、サーバ3が座標情報を取得する処理手順を示すフローチャートである。
サーバ3の無線通信モジュール32は、サーバ3の動作中常に受信状態で待機している(ステップS21)。そして、無線通信モジュール32は、無線通信モジュール14から座標情報2を受信したか否かを判定する(ステップS22)。座標情報2を受信したと判定した場合(ステップS22:YES)、BMC31が無線通信モジュール32から座標情報2を受け取り、当該座標情報2を自身の座標として記憶する(ステップS23)。一方、ステップS22において座標情報2を受信していないと判定した場合(ステップS22:NO)、ステップS22に戻り、無線通信モジュール32が座標情報を待ち受ける。
なお、図3に示した座標情報2のやりとりは、サーバ3をサーバラック1に搭載した時に自動で行われる。
【0033】
BMC31に保存されたサーバ3の座標情報2は、管理用ネットワーク4経由で定期的に管理用端末5上の集中管理ソフトウェア51によって集められ、ここでIPアドレスと位置情報を紐付けた一括管理が行われる。
【0034】
図4は、管理用端末5とサーバ3との間で座標情報2を送受信する際の処理の流れを示すシーケンス図である。まず、管理用端末5が、サーバ3のIPアドレスを宛先として座標情報2の要求信号を送信する(ステップS31)。そして、宛先のIPアドレスに該当するサーバ3が、当該座標情報2の要求信号を受信する(ステップS32)。座標情報2の要求信号を受信したサーバ3は、要求された座標情報2を送信する(ステップS34)。そして、管理用端末5が、この座標情報2を受信する(ステップS33)。そして、管理用端末5において、管理ソフトウェア51は、サーバ3のIPアドレスと、受信した座標情報2に基づく位置情報とを対応づけて記憶(新規に登録または既存の情報を更新)する(ステップS35)。ここでいう「位置情報」は、サーバ3の設置位置(サーバラック1の設置位置およびサーバラック1内での搭載位置からなる位置)を表す情報であり、座標情報2と同一の情報であってもよいし、例えば所定の文字情報や数値情報に変換されたものであってもよい。
【0035】
上記の図4のステップS31〜S35の各処理は、1または複数のサーバ3の各々に対して定期的に繰り返し実行される。
【0036】
以上のように、本実施形態における設置位置情報管理システムは、サーバの実空間の位置情報を用いた効率的なサーバ管理のために、サーバをサーバラックに設置するだけで設置場所を自動認識する機能を実現している。このため、図1に示すように、サーバラック1に無線通信モジュール14と制御用マイクロコンピュータからなるコントローラ13を搭載し、サーバルーム内におけるサーバラックの設置位置(座標情報等の位置情報)を記憶・送信できるようにしている。サーバルームにサーバラック1を設置する際、設置者は、ラック座標入力部11およびラック座標表示部12を用いて、サーバラック1に位置情報を設定しておく。また、サーバ3は無線通信モジュール32を有し、サーバラック1から座標情報を取得できるようになっている。そして、サーバラック1は内部にサーバ3が設置されたことを認識すると(例えば無線通信モジュール14から一定間隔で通信を試行することで設置を確認する)、無線通信モジュール14を用いて当該サーバ3に位置情報を送信する。これにより、サーバ3は、自身の設置位置を取得することが可能となる。
【0037】
したがって、本実施形態の構成によれば、以下に記載するような効果を奏することができる。なお、その際、サーバラック1と管理用端末5との間で通信を行うための通信装置や通信回線は不要である。
【0038】
第1の効果は、サーバの設置された位置情報を活用し、大量のサーバを効率的に管理できることである。
設置位置をサーバ管理に活用する際、サーバ毎に設置位置を手動で登録することによって、各サーバの設置位置情報を取得する方法を、データセンターなどサーバの台数の多い場所で行うことは現実的ではなかった。これに対して、本実施形態における設置位置情報管理システムによれば、設置位置を自動で認識することができる。これにより、サーバ台数の特に多い大規模データセンターなどにおいても、各サーバの設置位置情報を取得して、位置情報によるサーバ管理を行うことができる。大規模データセンターなど、サーバ台数の多い場所では、位置情報によるサーバ管理の効果をより期待できる。すなわち、設置されているサーバ台数が多いほど、保守作業等を行う際、サーバの位置情報無しに作業対象のサーバを特定することが困難となる。これに対して、各サーバの位置情報があれば、サーバ台数にかかわらず、作業対象のサーバを容易に特定し得る。
【0039】
第2の効果は、サーバの設置位置を自動的に認識しているので、保守員の負担を軽減できることである。
本実施形態における設置位置情報管理システムでは、サーバ3をサーバラック1に設置するだけで、サーバ3が自らの位置を認識して管理用端末5に位置情報を送信するので、保守員がサーバ設置場所を手動で管理する必要無しに、各サーバの設置位置情報を取得できる。この点で、保守員への負担を軽減することができる。また、保守員によるサーバ一情報収集作業が不要なので、サーバ3をサーバラック1に設置する際の設置作業をより迅速に行える。
【0040】
第3の効果は、本実施形態における設置位置情報管理システムでは、サーバの設置位置をサーバ自身が直接認識することができるので、サーバ管理ソフトウェアは通常通りサーバから情報を取得するだけでよいことである。すなわち、管理用端末5は、SNMP(Simple Network Management Protocol)など、管理用端末5がサーバ3の状態情報を取得するための既存の通信プロトコルを用いて、他の状態情報と共に位置情報を取得できる。従って、管理用端末5が、各サーバから位置情報を取得するための複雑な仕組みを新たに具備する必要がない。
【0041】
また、位置情報の表示には、例えばサーバに内蔵されているWeb(ウェブ)ベースのコントロールパネルを使用できるため、専用の管理用ソフトウェアがインストールされていないPCを管理用端末51として使用して位置情報を参照し、サーバを管理することができる。
【0042】
さらに、サーバが自身の位置情報を蓄積することも可能となり、トレーサビリティの観点から位置情報を活用することも可能となる。例えば、サーバ3が、自らの位置情報の履歴を記憶しておくことにより、当該サーバ3が元々どこにあったかを把握できる。これにより、例えば固定資産管理の際、サーバが足りないことが発覚した場合に、(どこにあったサーバは無くなっていないかの情報から)どこにあったサーバが無くなっているかを推測することができ、無くなったサーバを探す際の参考情報にすることができる。
【0043】
次に、発明の他の実施形態について説明する。本発明の他の実施形態として、その基本的構成は上記の通りであるが無線通信装置を別方式に変更したものが考えられる。上述したNFC、IrDA、RFIDのほか、Zigbee(登録商標)、微弱無線など、様々な方式の無線通信を用いることができる。また、設置の手間は増えるがサーバをサーバラックに搭載すると同時にケーブルを接続して有線にて通信を行う方式や、高周波を用いた接触通信などを用いるようにしてもよい。
【0044】
なお、特許請求の範囲に記載された構成と図1に示す実施形態の構成との対応は次のとおりである。特許請求の範囲に記載された「ラック」は、図1の「サーバラック1」に対応している。特許請求の範囲に記載された「管理対象機器」は、図1の「サーバ3」に対応している。特許請求の範囲に記載された「管理装置」は、図1の「管理用端末5」に対応している。特許請求の範囲に記載された「設置位置情報」は、図1の「座標情報2」に対応している。特許請求の範囲に記載された「設置位置情報送信部」は、図1の「無線通信モジュール14」に対応している。特許請求の範囲に記載された「設置位置情報受信部」は、図1の「無線通信モジュール32」に対応している。特許請求の範囲に記載された「通信部」は、図1の「通信部33」に対応している。特許請求の範囲に記載された「入力部」は、図1の「ラック座標入力部11」に対応している。特許請求の範囲に記載された「表示部」は、図1の「ラック座標表示部12」に対応している。特許請求の範囲に記載された「設置位置情報送信部毎に設定された所定の情報」は、図1の「ラック各段の番号Z」に対応している。特許請求の範囲に記載された「設置位置情報通信部」は、図1の「通信部52」に対応している。
【0045】
なお、コントローラ13や、BMC31や、集中管理ソフトウェア51の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0046】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1 サーバラック
2 座標情報
3 サーバ
4 管理用ネットワーク
5 管理用端末
11 ラック座標入力部
12 ラック座標表示部
13 コントローラ
14 無線通信モジュール
31 BMC
32 無線通信モジュール
33、52 通信部
51 集中管理ソフトウェア


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラックと、
前記ラックに搭載される複数の管理対象機器と、
前記管理対象機器の設置位置情報を管理する管理装置と
を具備し、
前記ラックは、前記管理対象機器に対して設置位置情報を送信する設置位置情報送信部を、前記複数の管理対象機器の各搭載位置に対応させて複数具備し、
前記管理対象機器は、当該管理対象機器の搭載位置に対応する前記設置位置情報送信部から送信される前記設置位置情報を受信する設置位置情報受信部と、前記管理装置から設置位置情報要求信号を受信すると前記管理装置に対して前記設置位置情報を送信する通信部とを具備する
ことを特徴とする設置位置情報管理システム。
【請求項2】
前記ラックは、
当該ラックの位置を示すラック位置情報の入力部と、
前記入力部で入力されたラック位置情報を表示する表示部と
を具備し、
前記複数の設置位置情報送信部は、前記入力部で入力されたラック位置情報と設置位置情報送信部毎に設定された所定の情報とに基づいて前記設置位置情報を送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の設置位置情報管理システム。
【請求項3】
管理対象機器を搭載可能な複数の搭載位置を複数有するとともに設置位置情報を送信する設置位置情報送信部を前記搭載位置毎に具備することを特徴とするラック。
【請求項4】
設置位置情報を受信する設置位置情報受信部と、
設置位置情報要求信号を受信すると前記設置位置情報を送信する通信部と
を具備することを特徴とする管理対象機器。
【請求項5】
複数の管理対象機器と、
前記複数の管理対象機器を搭載し、前記管理対象機器に対して設置位置情報を送信する設置位置情報送信部を前記複数の管理対象機器の各搭載位置に対応させて複数具備するラックと、
前記管理対象機器の設置位置情報を管理する管理装置と
を用い、
前記管理対象機器が、当該管理対象機器の搭載位置に対応する前記設置位置情報送信部から送信される前記設置位置情報を受信する設定位置情報受信ステップと、
前記管理対象機器が、前記管理装置から設置位置情報要求信号を受信し、前記管理装置に対して前記設置位置情報を送信する設置位置情報送信ステップと、
を具備することを特徴とする設置位置情報管理方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−146235(P2012−146235A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5594(P2011−5594)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】