説明

設計支援装置

【課題】構造物の設計支援装置において、構造設計の時間を減少させるとともに、精度の高い構造設計を実現する。
【解決手段】構造物の設計情報、物性値情報、拘束条件、および荷重条件を含む入力データを用いた有限要素法による構造解析を行い、構造物の設計を支援する設計支援装置Aに、入力データを用いて、構造物に等分布荷重を加えた有限要素法による構造解析を実施し、その構造物の変位を求め、その求めた変位から構造物の弱体部位を推定する構造解析部30を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品や部品等の構造物の構造設計を支援する設計支援装置に関し、例えば、構造物の設計情報、物性値情報、拘束条件、および荷重条件を含む入力データを用いた有限要素法による構造解析を行い、構造物の構造設計を支援する設計支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、工業製品等の構造物の設計に、コンピュータが利用されており、コンピュータに構造物の剛性評価等の解析を行わせるプログラムや、そのプログラムを実装したシステムが提案されている。
例えば、特許文献1には、製品の剛性設計に利用されるCAE(Computer Aided Engineering)システムの構成が開示されている。このCAEシステムは、CAD装置から3次元製品の形状データおよび材料データを取得し、その取得した形状データをもとに製品を有限要素(Finite Element)と呼ばれる有限の領域に離散化する有限要素分割を行う。そして、前記CAEシステムは、リブ設計、肉厚設計等の構造設計を行うための有限要素法による構造解析を行い、その解析結果(製品の変位や形状変形)を出力する。設計者は、前記解析結果より、初期段階の製品形状に修正を加えていき、製品スペックを満たす最適な製品形状を設計する。
なお、上述したCAEシステムを利用して構造物の剛性を確保するための構造設計を行う場合、設計者が設計図等から構造物の弱体部位を予測し、その予測した弱体部位を上記CAEシステムでシミュレーションして検証していた。
【0003】
【特許文献1】特開2000−293548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した、従来から行われている構造設計の手法は、以下に示す技術的課題を有している。
具体的には、上述した従来の構造設計は、設計者が構造物の弱体部位を予測しているため、設計者が弱体部位を探し出すことが困難であり、精度の高い構造設計を行うことができないという技術的課題を有していた。
また、設計者が弱体部位を予測する場合、疑わしい部分を全て弱体部位として挙げる傾向にあるため、予測した弱体部位が剛性基準を満たすか否かを検証するため手間が増えてしまい、その結果、構造設計に多大な時間がかかっていた。
【0005】
本発明は、上記の技術的課題を解決するためになされたものであり、構造物の構造設計を支援する設計支援装置において、構造設計の時間を減少させると共に、精度の高い構造設計を実現させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、構造物の設計情報、物性値情報、拘束条件、および荷重条件を含む入力データを用いた有限要素法による構造解析を行い、構造物の構造設計を支援する設計支援装置に適用される。
そして、前記設計支援装置は、前記入力データを用いて、前記構造物に等分布荷重を加えた有限要素法による構造解析を実施し、該構造物の変位を求め、該求めた変位から該構造物の弱体部位を推定する解析手段を備えることを特徴とする。
【0007】
このように本発明では、設計支援装置が、構造物に等分布荷重を加えた有限要素法による構造解析を実施し、該構造物の変位を求めて、その変位から該構造物の弱体部位を推定するようにしている(例えば、変位が一番大きい領域を弱体部位と推定する)。
すなわち、本発明によれば、従来のように、設計者が弱体部位を予測する必要がないため、正確に弱体部位を求めることができ、これにより、精度の高い構造設計を実現することができる。
【0008】
また、前記解析手段は、前記入力データを用いて、前記推定した弱体部位に所定の集中荷重を加えた有限要素法による構造解析を実施して前記構造物の変位を求め、該求めた変位が所定基準を満たすか否かにより、前記推定した弱体部位に剛性強化が必要であるか否かを判定することが望ましい。
このように、本発明によれば、設計支援装置が推定した弱体部位について所定基準を満たすか否かを検証することにより、剛性が不足している部位を判定できる。そのため、上述した従来技術のように、弱体部位の検証に、多大な時間が取られることがない。
【0009】
また、前記解析手段は、前記所定基準を満たさなければ、前記弱体部位に対して有限要素法によるトポロジ最適化処理を行い、前記構造物の剛性強化が必要な部位を求め、該剛性強化が必要な部位を示す情報を出力することが望ましい。
上記のように、構造物の剛性強化が必要な部位を求めて出力することにより、設計者に、剛性強化が必要な部位に対する設計変更を促すことができる。すなわち、本発明によれば、設計者に対して、所定の剛性基準を満たすように構造物を設計するように誘導することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、構造物の設計を支援する設計支援装置において、構造設計の時間を減少させると共に、精度の高い構造設計を実現させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
先ず、本実施形態の構造物の設計支援装置の機能構成を図1に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態の設計支援装置の機能ブロック図である。
【0012】
図示するように、設計支援装置Aは、製品(或いは製品を構成する部品)等の構造物の設計情報等を使ってその製品の剛性などの特性を解析したり、トポロジ(topology)の最適化を行ったりする情報処理装置1と、設計者からの各種要求を受け付ける入力装置2と、情報処理装置1が行った解析結果を出力する出力装置3とを備える。また、情報処理装置1は、LAN(Local Area Network)等のネットワークNWを介して、CAD装置4に接続されている。
【0013】
情報処理装置1は、構造物に対し、有限要素法による構造解析を行い、構造物の変位を求めて、その変位から当該構造物の弱体部位を推定する。また、情報処理装置1は、前記構造解析により、構造物に弱体部位があれば、さらに、有限要素法によるトポロジ最適化処理を実行し、出力装置3に、その解析結果を出力すると共に、設計者に構造物の剛性の強化対策を促す。
また、情報処理装置1は、前記解析結果を参照した設計者からの強化対策を示す情報の入力を受け付け、その受け付けた情報に応じて、有限要素法による構造解析を行い、強化対策により弱体部位が剛性基準を満たすようになったか否かを検証する。
【0014】
入力装置2は、キーボードやマウス等により構成され、設計者からの各種要求や解析条件(物性値情報、拘束条件、荷重条件)等を受け付けて情報処理装置1に出力する。
出力装置3は、液晶ディスプレイ等により構成され、情報処理装置1が出力する画像情報を表示する。
また、CAD装置4には、構造解析を行う対象の構造物のCAD情報(例えば、自動車の構成部品の設計情報)が格納されている。そして、CAD装置4は、情報処理装置1からの要求にしたがい、情報処理装置1にCAD情報を出力する。
以下、設計支援装置Aの具体的な構成を説明する。なお、本実施形態のCAD装置4は、公知の技術により実現されるため、詳細な説明は省略する。
【0015】
情報処理装置1は、制御部10、データ取得部20、構造解析部30、および出力部40を有する。
制御部10は、情報処理装置1の全体の動作を制御する。また、制御部10は、入力装置2を介して、設計者が入力する各種要求を受け付ける。そして、制御部10は、上記の受け付けた要求にしたがい、データ取得部20、構造解析部30、および出力部40を制御して、設計者からの要求に応じた処理を行う。
【0016】
データ取得部20は、ネットワークNWに接続されている外部装置(例えば、CAD装置4)と通信を行い、外部装置との間でデータの授受を行う。例えば、データ取得部20は、ネットワークNWを介して、CAD装置4にアクセスし、CAD装置4に格納されているCAD情報を取得する。
また、データ取得部20は、入力装置2を介して、設計者が入力する、解析対象の構造物の「解析条件(物性値情報、拘束条件、荷重条件)」の入力を受け付ける。
【0017】
構造解析部30は、CAD装置4から取得した構造物の「設計情報」、および「解析条件」を用いて、後述する図3の各処理ステップを実行し、構造物の弱体部位を予測したり、設計者に弱体部位に対する強化対策(設計変更)を行うように促したりする。
出力部40は、構造解析部30から解析結果を取得し、その解析結果から解析結果を示す画像情報(図4、5、6参照)を生成し、出力装置3に、その生成した画像情報を出力する。
【0018】
つぎに、本実施形態の情報処理装置1のハードウェア構成を説明する。
図2は、本実施形態の情報処理装置のハードウェア構成図である。
図示するように、情報処理装置1は、CPU(Central Processing Unit)50と、RAM(Random Access Memory)等により構成された主記憶装置51と、I/Oインタフェース52と、ハードディスク等により構成された補助記憶装置53と、ネットワークNWに接続されている装置との間で行うデータ授受の制御を行うネットワークインタフェース54とを有する。
また、補助記憶装置53には、上述した各部(制御部10、データ取得部20、構造解析部30、および出力部40)の機能を実現するためのプログラム(設計支援プログラム55)が格納されている。
【0019】
そして、情報処理装置1の各部(制御部10、データ取得部20、構造解析部30、および出力部40)の機能は、CPU50が補助記憶装置53に格納されている前記プログラムを主記憶装置51にロードして実行することにより実現される。
【0020】
続いて、本実施形態の設計支援装置Aが行う構造物の設計支援処理について図3に基づいて説明する。
図3は、本発明の実施形態の設計支援装置が行う構造物設計支援処理の手順を示したフローチャートである。
なお、図示する処理ステップに先立って、設計支援装置Aを構成する情報処理装置1には、設計対象の構造物の設計情報と、当該構造物の解析条件(物性値情報、拘束条件、荷重条件)とが入力されているものとする。すなわち、情報処理装置1のメモリ(主記憶装置51又は補助記憶装置53)には、前記構造物の設計情報および解析条件が記憶されている。
また、以下のフローチャートでは、設計対象の構造物が、車両のインストルメントパネル(インパネ)である場合を例にする。また、以下の処理ステップの中で用いられる有限要素法は、周知のものと同様である。
【0021】
先ず、情報処理装置1の構造解析部30は、前記メモリに記憶されている「インパネの設計情報」および「インパネの解析条件」を用いて、インパネに所定の等分布荷重を加えた有限要素法による構造解析(等分布荷重による剛性CAE)を実施し、インパネの変位を求め、その変位からインパネの弱体部位を推定する(S10)。
具体的には、構造解析部30は、略板状の形成されたインパネの一方面(例えば、車室側に配置される意匠面)に対し、インパネの意匠面に略直交する方向の等分布荷重(x1(N))を加えた有限要素法による構造解析を実施し、インパネの意匠面の変位(Z(mm))を求める。そして、構造解析部30は、前記求めたインパネの変位のうち、その変位量が一番大きい領域(部位)を特定し、その特定した部分(領域)をインパネの弱体部位として推定する。すなわち、本ステップ(S10)では、1カ所の弱体部位が推定される。
【0022】
また、S10において、構造解析部30は、出力部40に、上記の解析結果(インパネの変位を示す情報、および弱体部位を示す情報)を送り、出力部40に解析結果の表示処理を実行させる。
具体的には、S10において、出力部40は、構造解析部30からの解析結果を受け付けると、該解析結果を用いて、インパネの変位および弱体部位を示した画像情報(弱体部位推定情報)を生成し、出力装置3にその「弱体部位推定情報」を表示する。
【0023】
例えば、出力部40は、出力装置3に図4に例示する弱体部位推定情報を表示する。なお、図示する符号100は、インパネを示している。また、弱体部位推定情報は、インパネ100の意匠面が、変位量に応じて色分された状態で示されている。また、この弱体部位推定情報では、インパネ100の意匠面のうち、符号101で示す領域の変位量が一番大きいことを示している。また、弱体部位が、符号102で示す破線で特定されている。
【0024】
つぎに、構造解析部30は、前記メモリに記憶されている「構造物の設計情報」および「構造物の解析条件」を用いて、S10で推定した弱体部位に対して、所定の集中荷重(x2(N))を加えた有限要素法による構造解析(集中荷重による剛性CAE)を実施し、インパネの変位(Z(mm))を求める(S15)。
また、構造解析部30は、前記求めた変位(Z(mm))が所定の目標値を達成しているか否かを判定する(S20)。
例えば、目標値が「a(mm)以内」と定められている場合、構造解析部30は、本ステップで求めた変位(Z(mm))のうちの最大変位(Zmax(mm))が目標値(a(mm))以内であるか否かを判定すればよい。
【0025】
そして、構造解析部30は、前記求めたインパネの変位のうちの最大変位(zmax)が目標値(a(mm))以内であれば(Zmax≦a)、S40に進む。すなわち、構造解析部30は、前記求めた変位(Z(mm))が所定の目標値に達成していれば、S10で推定した弱体部位に剛性強化の必要がないと判断して、S40に進む。
一方、構造解析部30は、前記最大変位(z(max))が目標値(a(mm))より大きければ(Zmax>a)、S25に進む。すなわち、構造解析部30は、前記求めた変位(Z(mm))が所定の目標値に達成していなければ、S10で予測した弱体部位に剛性強化の必要があると判断して、S25に進む。
【0026】
なお、構造解析部30は、S15において、出力部40に、本ステップでの解析結果(インパネの変位を示す情報)を送り、出力部40に解析結果の表示処理を実行させるようにしてもよい。
或いは、構造解析部30は、S20において、前記求めた変位(Z(mm))が目標値(a(mm))より大きいと判定した場合に、出力部40に、本ステップでの解析結果(インパネの変位を示す情報)を送り、出力部40に解析結果の表示処理を実行させ、設計者にインパネの弱体部位を提示するようにしてもよい。これにより、設計者に、インパネの設計変更(弱体部位の構造強化)を促すことができる。
【0027】
より具体的には、S15(又はS20)において、出力部40は、構造解析部30からの解析結果を受け付けると、その解析結果を用いて、インパネの変位を示した画像情報(弱体部位検証情報)を生成し、出力装置3にその「弱体部位検証情報」を表示する。
ここで、出力部40が表示する弱体部位検証情報の一例を図5に示す。
図示する弱体部位検証情報も、図4で示した弱体部位推定情報と同様、インパネ100の意匠面が、変位量に応じて色分された状態で示されている。なお、この弱体部位検証情報では、インパネ100の意匠面のうち、符号103の領域の変位量が一番大きいことを示している。
【0028】
図3に戻り、S20において求めたインパネの変位が所定の目標値を達成していないと判定した場合に進むS25以降の処理について説明する。
S25では、構造解析部30は、S10で予測した弱体部位に対して有限要素法によるトポロジ最適化処理を行い、インパネの剛性強化が必要な剛性強化必要部位を求める。そして、構造解析部30は、出力部40に、トポロジ最適化処理により求めた「剛性強化必要部位を示す情報」を送り、出力部40に「剛性強化必要部位を示す情報」の表示処理を実行させる。
【0029】
具体的には、S25では、構造解析部30は、前記メモリに記憶されている「構造物の設計情報」および「構造物の解析条件」と、S15の解析結果(求めた変位)とを用いて、S10で予測した弱体部位に対して有限要素法によるトポロジ最適化処理を行い、インパネの中から剛性強化が必要な剛性強化必要部位を求める。また、構造解析部30は、出力部40に、前記求めた「剛性強化必要部位を示す情報」を送信する。
出力部40は、構造解析部30からの「剛性強化必要部位を示す情報」を受け付けると、受け付けた「剛性強化必要部位を示す情報」を用いて、インパネの剛性強化必要部位を示した画像情報(剛性強化部位指定情報)を生成する。そして、出力部40は、出力装置3に、生成した剛性強化部位指定情報を表示する。
【0030】
ここで、出力部40が出力装置3に表示させる剛性強化部位指定情報の一例を図6に示す。
図示する剛性強化部位指定情報は、インパネの剛性強化が必要な部分が識別可能に構成されている。なお、図示する例では、符号104で示す部分(領域)が、剛性強化が必要な部位として、他の部分(剛性強化が不要な部位)と色分けして示されている。
【0031】
つぎに、構造解析部30は、設計者に、S25で求めた剛性強化が必要な部位に対して、板厚増加やリブ追加による強化対策が可能であるか否かを選択させる。そして、構造解析部30は、板厚増加やリブ追加による剛性強化対策が可能であるとの選択を受け付けた場合、具体的な「板厚増加やリブ追加による強化対策」を示す情報の入力を受け付け、S15の処理に戻る。一方、設計者は製造条件などから、板厚増加やリブ追加による強化対策ができないと判断した場合S35の処理に進む(S30)。
【0032】
例えば、S30において、構造解析部30は、出力部40を介して、出力装置3に表示させた剛性強化部位指定情報(図6参照)の画面上に、板厚増加やリブ追加による強化対策が可能であるか否かの選択を促す情報を示した子画面(図示しない)を表示する。設計者は、前記子画面を見て、入力装置2を介して、板厚増加やリブ追加による剛性強化対策が可能であるか否かを入力する。
なお、本ステップでは、設計者は、板厚増加やリブ追加による強化対策が可能と入力した場合、さらに、具体的な「板厚増加やリブ追加による強化対策」を示す情報を入力する。また、設計者は、板厚増加やリブ追加による強化対策ができないと入力した場合、S35に進んで、インパネの「拘束や支持部位の追加による強化対策」を示す情報を入力する。
【0033】
具体的には、S30において、構造解析部30は、データ取得部20を介して、設計者からの「板厚増加やリブ追加による強化対策」を示す情報を受け付けると、前記設計情報に「板厚増加やリブ追加による強化対策」を示す情報を反映させた上で、上述したS15およびS20の処理を行う。
そして、S20において、構造解析部30は、目標値を達成していれば、S30で受け付けた強化対策により弱体部位が所定の剛性基準を満たすように強化されたと判定してS40に進む。また、構造解析部30は、目標値を達成していなければ、S30で受け付けた強化対策が不十分であるとして、S25に戻り、再び、トポロジ最適化処理を行う。
【0034】
一方、S30において、構造解析部30は、板厚増加やリブ追加による強化対策ができないとの選択を受け付けた場合、インパネの「拘束や支持部位の追加による強化対策」を示す情報を受け付ける(S35)。
そして、構造解析部30は、「拘束や支持部位の追加による強化対策」を反映させた上で、再度、上述したS10以降の処理を行う。
【0035】
つぎに、S20において求めたインパネの変位が所定の目標値を達成していると判定した場合に進むS40の処理について説明する。
S40では、構造解析部30は、S10で推定した弱体部位が、所定の剛性基準を満たしているため、インパネの構造を決定して処理を終了する(例えば、S30やS35で強化対策が施されていれば、強化対策を施した構造に決定して処理を終了する)。
【0036】
ところで、本実施形態は、S10において、弱体部位が1カ所だけ推定されるように構成されている。そのため、S10〜S40の処理を実行して弱体部位に強化対策を行うと、1カ所の弱体部位に対する強化対策がなされることとなる。
なお、設計対象の構造物に弱体部位(剛性強化が必要な部位)が複数ある場合もあるが、その場合においても、以下に示すように図3のフローを繰り返して行うことにより対応することができる。
【0037】
具体的には、1回目に、S10〜S40の処理を実行して弱体部位への強化対策を終えると、S40で決定した構造について、再度、S10〜S20の処理を行い、他に弱体部位があるか否かを検証する。なお、この場合、1回目に推定した弱体部位に強化対策が施されているため、S10では、他の部位(1回目に推定した弱体部位以外の部位)が弱体部位として推定される。そして、S20においてインパネの変位が所定の目標値に達成していれば、他に弱体部位がないと判定すればよい(すなわち、S10で推定した弱体部位には剛性強化が必要ないと判定する)。
一方、S20においてインパネの変位が所定の目標値に達成していなければ、S25以降の処理を行い、2つめの弱体部位に対する強度対策を行うようにする。
また、前記の2回目に行ったS10〜S40の処理による弱体部位への強化対策を終えると、2回目のS40で決定した構造について、再度、S10〜S20の処理を行い、他に弱体部位があるか否かを検証する。
そして、他の弱体部位がないと判定されるまで、図3の処理を繰り返すようにすれば、弱体部位が複数個所ある場合においても、所定の剛性基準を満足する構造を確保することができる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態によれば、設計支援装置が、構造物に等分布荷重を加えた有限要素法による構造解析を実施し、その構造物の変位を求めて、その変位から該構造物の弱体部位を推定するようにしている(例えば、変位が一番大きい部分を弱体部位と推定する)。また、前記の推定した弱体部位に強化対策が必要であるか否かを、有限要素法による構造解析により検証している。
すなわち、本実施形態では、従来のように、設計者が弱体部位を予測する必要がないため、正確に弱体部位を求めることができる。また、本実施形態によれば、弱体部位が複数ある場合でも、上述したように、図3の処理フローを繰り返すことにより、複数の弱体部位を正確に特定することができる。
このように、本実施形態によれば、正確に構造物の弱体部位を特定することができるため、構造物の構造設計の精度を高めることができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、設計支援装置が推定した弱体部位について所定基準を満たすか否かを検証すればいいため、上述した従来技術のように、予測した弱体部位の検証に、多大な時間が取られることがない。すなわち、本実施形態によれな、構造設計の効率化を図ることができる。
【0040】
また、本実施形態では、所定の剛性基準を満たさない弱体部位に対して有限要素法によるトポロジ最適化処理を行い、剛性強化必要部位を求め、設計者に、その求めた剛性強化必要部位を提示するようにしている。
これにより、本実施形態によれば、設計者に対して、構造物の剛性強化が必要な部位に対して強化対策(設計変更)を取るように促すことができる。したがって、本実施形態では、所定の剛性基準を満たすように構造物を設計するように設計者を誘導することができる。
すなわち、本実施形態の設計支援装置を利用して構造物の構造設計を行うようにすれば、設計者にスキルや設計経験が少ない場合であっても、所定の剛性基準を満たすような構造物を設計するように誘導することができる。
【0041】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなくその要旨の範囲内において、種々の変形が可能である。
【0042】
上記実施形態の設計支援装置は、1台の情報処理装置1が構造設計支援のための各種処理を行うようにしているが、特にこれに限定されるものではない。複数のコンピュータにより構成されたシステムにより、上述した各部(制御部10、データ取得部20、構造解析部30、出力部40)の機能を実現させるようにしてもよい。
例えば、構構造解析部30の機能を実行(担当)するコンピュータと、画像情報を生成する出力部40の機能を実行(担当)するコンピュータとを分けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態の設計支援装置の機能ブロック図である。
【図2】本発明の実施形態の情報処理装置のハードウェア構成図である。
【図3】本発明の実施形態の設計支援装置が行う構造物設計支援処理の手順を示したフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態の設計支援装置が出力するインパネの弱体部位推定情報の一例を示した図である。
【図5】本発明の実施形態の設計支援装置が出力するインパネの弱体部位検証情報の一例を示した図である。
【図6】本発明の実施形態の設計支援装置が出力するインパネの剛性強化必要部位を示した画像情報の一例である。
【符号の説明】
【0044】
A…設計支援装置
1…情報処理装置
2…入力装置
3…出力装置
4…CAD装置
10…制御部
20…データ取得部
30…構造解析部
40…出力部
50…CPU
51…主記憶装置
52…I/Oインタフェース
53…補助記憶装置
54…NWインタフェース
55…設計支援プログラム
100…インストルメントパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の設計情報、物性値情報、拘束条件、および荷重条件を含む入力データを用いた有限要素法による構造解析を行い、構造物の構造設計を支援する設計支援装置であって、
前記入力データを用いて、前記構造物に等分布荷重を加えた有限要素法による構造解析を実施し、該構造物の変位を求め、該求めた変位から該構造物の弱体部位を推定する解析手段を備えることを特徴とする設計支援装置。
【請求項2】
前記解析手段は、
前記入力データを用いて、前記推定した弱体部位に所定の集中荷重を加えた有限要素法による構造解析を実施して前記構造物の変位を求め、該求めた変位が所定基準を満たすか否かにより、前記推定した弱体部位に剛性強化が必要であるか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の設計支援装置。
【請求項3】
前記解析手段は、
前記所定基準を満たさなければ、前記弱体部位に対して有限要素法によるトポロジ最適化処理を行い、前記構造物の剛性強化が必要な部位を求め、該剛性強化が必要な部位を示す情報を出力することを特徴とする請求項2に記載の設計支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−217547(P2009−217547A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60686(P2008−60686)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】