説明

設計最適化システムおよび設計最適化方法

【課題】短い時間で且つ低コストで設計最適化処理を行なうようにする。
【解決手段】
端末装置11と仲介サーバ12とメインサーバ13とがネットワークを介して相互に接続され、仲介サーバ12は端末装置11が有するファイル15A,16Aをメインサーバ13へ転送するファイル送受信手段18を有し、メインサーバ13は、端末装置11から転送されたファイル15B,16Bに基づき入力ファイル22を生成する入力ファイル生成手段21と、入力ファイル22に基づいて計算を行ない、その計算結果を含む出力ファイル24を生成する解析手段23と、出力ファイル24に含まれる計算結果の一部または全部が所定の目標値に近付くように、所定のアルゴリズムに従ってファイル15B,16Bを書き換えるファイル書き換え手段25とを備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設計最適化システムおよび設計最適化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、部品や構造の設計に際して、「解析ソルバ」および「プリ/ポスト」といったソフトウェアによって構成されているCAE(Computer Aided Engineering)が用いられている。
このうち、解析ソルバは、単にソルバとも呼ばれ、設計対象物の性能(例えば、衝突性能や応力性能など)を解析(計算)するソフトウェアである。
【0003】
また、プリ/ポストは、文字通り、解析ソルバに対する前処理および後処理を行なうソフトウェアであって、解析ソルバに対して入力される計算モデルファイルを作成し、また、解析ソルバから出力されたソルバ出力ファイル、即ち、解析結果をユーザが確認できるように処理するようになっている。
解析ソルバおよびプリ/ポストといったCAEを用いた設計手法としては、図5に示すような例が挙げられる。この手法においては、まず、初期設計を行ない(ステップS101)、その後、この初期設計の内容をCAE(プリ/ポストやソルバ等)によって処理し(ステップS102)、処理結果に基づいて設計者が再び設計を行なう(ステップS103)。
【0004】
その後、再設計物をCAEによって再び処理し(ステップS102)、必要に応じて更なる再設計を行なう(ステップS103)。なお、このステップS102とステップS103との処理は、原則的には、設計者が目標とする結果が得られるまで繰り返し行なわれる。
その後、上記のステップS102およびS103によって求められた設計物が要件とする性能を満たしているか否かが実験により計測され(ステップS104)、この実験結果に基づいて、最終的な設計が行なわれる(ステップS105)。
【0005】
しかしながら、ステップS102およびステップS103に示すように、ユーザが繰り返し再設計を行なうのは非効率的であるため、近年、図6に示す手法が用いられるようになってきている。
この手法においては、まず、初期設計を行ない(ステップS111)、その後、この初期設計の内容をプリ/ポストによって処理した後にソルバによって解析する(ステップS112)。
【0006】
そして、CAE(プリ/ポストおよびソルバ等)による処理結果に基づき、最適化ソフトウェアが設計対象物の設計値(設計変数)を自動的に補正して(ステップS113)、その後再びCAEに投入する(ステップS112)。
その後、再設計された設計対象物を解析処理し(ステップS112)、必要に応じて更なる再設計を行なう(ステップS113)。なお、このステップS112とステップS113との処理は、設計者が目標とする結果が得られるまで、自動的に繰り返し行なわれる。
【0007】
その後、この設計対象物が要件とする性能を満たしているか否かが実験により計測され(ステップS114)、この実験結果に基づいて、最終的な設計が行なわれる(ステップS115)。
ここで、図6に示す手法を実現するための具体的な機器構成の一例を図7に示す。この図7に示す設計システム100は、主に、EWS(Engineering WorkStation)101と計算サーバ102とが図示しないネットワークにより接続されて構成されている。
【0008】
また、EWS101は、設計者によって操作される端末装置であって、プリ/ポスト・ソフトウェア(以下、単に「プリ/ポスト」という)103と、設計最適化・ソフトウェア(以下、単に「設計最適化ソフト」という)104とを有している。
また、計算サーバ102は、EWS101に比べて高い処理性能を有するサーバであって、解析ソルバ・ソフトウェア(以下、単に「解析ソルバ」という)109を有しているが、設計者(ユーザ)によって直接操作されないようになっている。
【0009】
そして、設計者による計算サーバ上の解析ソルバの利用を可能とすべく、これらのEWS101と計算サーバ102との双方にはバッチ処理システム105が組み込まれており、EWS101から計算サーバ102へのファイル転送、解析ソルバの実行および計算サーバ102からEWS101へのファイル転送ができるようになっている。
このうち、プリ/ポスト103は、設計最適化ソフト104によって補正された設計変数ファイル107と初期設計ファイル108とに基づいて、ソルバ入力ファイル106を生成するものである。
【0010】
このうち、初期設計ファイル108は、例えば、断面形状や板厚など、設計対象物の初期の設計値が記録されたファイルであって、いわゆるモデルファイルといわれるものである。
また、設計変数ファイル107は、設計対象物における種々の設計値のいずれかを設計変数として扱い、この設計変数を設計値として含むソルバ入力ファイル106を生成するように、プリ/ポスト103に対して指令するコマンドファイルである。なお、設計変数の具体例としては、梁の断面積や断面形状、部材の厚さ、節点座標値などが挙げられる。
【0011】
ソルバ入力ファイル106は、設計最適化ソフト104によって最適化された設計変数ファイル107と初期設計ファイル108とに基づいて生成されたファイルであって、後に、計算サーバ102へ転送され、解析ソルバ109によって解析処理されるものである。
設計最適化ソフト104は、計算サーバ102内の解析ソルバ109によって解析されて出力されたソルバ出力ファイル111に含まれる目的関数を、設計者が所望する目的値に近付くと推測される設計変数を含む設計変数ファイル107を生成するものである。ここで、「目的関数」の具体例としては、例えば、応力や変位などが挙げられ、また、「目的値」の具体例としては、設計者が所望する応力値や変位量などが挙げられる。
【0012】
この設計最適化ソフト104による最適化においては、勾配法や進化アルゴリズムなど様々な手法が用いられるようになっており、このうち、勾配法は、ある一つの候補となる設計対象から、設計変数を変化させることによって変化する目的関数の勾配を調べながら、その解が改善される方向に設計変数を変えていくアルゴリズムであって、以前から一般的に用いられている手法である。なお、これらの手法は既に公知の技術であるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0013】
解析ソルバ109は、EWS101から転送されたソルバ入力ファイル106に基づいて解析(計算)し、目的関数を含む上記のソルバ出力ファイル111を解析結果として生成するものである。
バッチ処理システム105は、プリ/ポスト103によって生成されたソルバ入力ファイル106を計算サーバ102に転送し、転送したソルバ入力ファイル106を解析ソルバ109にジョブとして投入し、さらに、解析ソルバ109により出力されたソルバ出力ファイル111をEWS101に転送するものである。
【0014】
なお、上述の図7に示す構成とは異なるが、従来の設計最適化に関する一般的な技術の一例を示す文献としては、以下の特許文献1が挙げられる。
【特許文献1】特開2004−30661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、解析ソルバ109には、流体解析用,衝突解析用,構造解析用など、様々な種類のものが存在する。このため、図7に示すようなバッチ処理システム105は、解析ソルバ109の種類に応じて専用設計する必要がある。
また、図7に示す設計システム100においては、その説明を簡略化するため、1台のEWS101と1台の計算サーバ102とから構成された場合を例にとって説明したが、一般的には、複数台のEWS101と複数台の計算サーバ102とがネットワークで相互接続された構成になっている。
【0016】
そして、このバッチ処理システム105を複数台のEWS101や複数台の計算サーバ102にそれぞれ組み込むには、多くの手間やコストが必要となる。
さらに、この設計システム100では、プリポスト103による処理,解析ソルバ109による解析,設計最適化ソフト104による最適化という1回の処理サイクルにおいて、EWS101と計算サーバ102との間で最低でも2回のファイル転送が必要となり、処理速度の低減を招いている。
【0017】
ここで、このようなバッチ処理システム105を廃すべく、本発明を創作する過程で創案された設計システムを図8に示す。この設計システム120は、EWS121と、ファイルサーバ122と、計算サーバ123とから主に構成されている。EWS121は設計者によって操作される端末装置であり、また、計算サーバ123はEWS121に比べて大幅に処理性能が高いサーバであって解析ソルバ131を有している点は、図7を用いて説明した設計システム100と原則的に同様の構成である。
【0018】
しかしながら、図8に示す設計システム120においては、ファイルサーバ122が設けられている点で、図7に示す設計システム100と異なっている。
このファイルサーバ122は共有ファイル領域122Aを備えており、この共有ファイル領域122Aは、EWS121によってマウントされ得るとともに、計算サーバ123によってもマウントされ得るようになっている。したがって、このファイルサーバ122の共有ファイル領域122Aに保存されているファイルに対しては、EWS121からも計算サーバ123からもアクセスすることができるようになっている。
【0019】
他方、EWS121には、プリ/ポスト124および設計最適化ソフト125が備えられている。
これらのうち、プリ/ポスト124は、設計変数ファイル127および初期設計ファイル128を生成するとともに、設計最適化ソフト125による最適化の過程で補正された(書き換えられた)設計変数ファイル127と初期設計ファイル128とに基づいて、ソルバ入力ファイル129を生成することができるようになっている。なお、初期設計ファイル128は、設計対象物である部品の断面形状や板厚など、初期の設計値が含まれたモデルファイルである。また、設計変数ファイル127は、設計対象物の設計値のうちのいずれかを設計変数として扱い、この設計変数を設計値として含むソルバ入力ファイル129を生成するように、プリ/ポスト124に対して指令するコマンドファイルである。
【0020】
ソルバ入力ファイル129は、初期設計ファイル128と設計最適化ソフト125によって補正された設計変数ファイル127とに基づいて生成されたファイルであって、ファイルサーバ122の共有ファイル領域122A内に保存されており、計算サーバ123の解析ソルバ131によって解析処理されるようになっている。
設計最適化ソフト125は、計算サーバ123内の解析ソルバ131による解析結果としてのソルバ出力ファイル132に含まれる目的関数を、目的値に近付ける或いは一致させるべく、設計変数ファイル127に含まれる設計変数を適宜補正するものである。
【0021】
他方、計算サーバ123には、ジョブキューイングシステム126と、解析ソルバ131とが備えられている。
このうち、解析ソルバ131は、EWS121のプリ/ポスト124によって生成されたソルバ入力ファイル129に含まれる断面形状や板厚といった設計値に基づいて解析を行ない、応力や変位といった目的関数を含むソルバ出力ファイル132を生成するものである。
【0022】
また、ジョブキューイングシステム126は、ファイルサーバ122の共有ファイル領域122A内に保存されているソルバ入力ファイル129をソルバ131の入力ファイルとしてジョブ投入するものである。なお、このジョブキューイングシステム126にはある程度の汎用性を持たせることができ、この計算サーバ123に複数のソルバ131が内蔵されたような場合であっても、1つのジョブキューイングシステム132で対応できる点で、図7に示すバッチ処理システム105と大きく異なっている。また、計算サーバ123に組み込まれているソルバ131の種類が変わった場合であっても、原則的には、このジョブキューイングシステム126を大幅に変更することなく、そのまま用いることができる点でも、バッチ処理システム105に比べ機能的に優れているといえる。
【0023】
なお、このジョブキューイングシステム126をEWS121にインストールすることにより、計算サーバ102のジョブキューイングシステム126をEWS121から制御することができるので、計算サーバ123へソルバ131の実行ジョブを投入することもできる。
しかしながら、この図8に示す設計システム120は、設計者(ユーザ)による計算サーバ123の直接操作を禁止するという条件を満たしつつ、解析ソルバ131の種類に依存しない汎用的なシステムであるものの、ファイルサーバ122を設置することが必要となるとともに、ジョブキューイングシステム126が必要となる。したがって、コスト抑制という観点からは、この設計システム120も好ましい構成とは言い難い。
【0024】
また、プリ/ポスト124,ソルバ131および設計最適化ソフト125による1回の処理サイクルにおいて、EWS121とファイルサーバ122との間およびファイルサーバ122と計算サーバ123との間で、ファイルがネットワーク(図示略)を通じて、最低4回やり取りされる。つまり、ファイルサーバ122の共有ファイル領域122AはEWS121および123によって互いにマウントされるので、システム的にはファイル転送が生じていないように見えるものの、実際には、図7に示す設計システム100よりも、図8に示す設計システム120の方が、ネットワークを通じたファイル転送の回数が増えてしまっており、処理時間やネットワークトラッフィックの増大を招くという課題もある。
【0025】
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、短い時間で且つ低コストで計算サーバにより設計最適化処理を行なうことができる、設計最適化システムおよび設計最適化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記目的を達成するため、本発明の設計最適化システム(請求項1)は、ユーザによって操作される端末装置と、該端末装置にネットワークを介して接続された仲介サーバと、該端末装置および該仲介サーバに該ネットワークを介して接続され、該端末装置からの直接的なログインを禁止するとともに該仲介サーバからのログインを許可するメインサーバとをそなえ、該端末装置は、該ユーザからの操作に基づいて該端末装置が有する単数または複数のファイルの情報を該仲介サーバに伝達するファイル情報伝達手段を有し、該仲介サーバは、該ファイル情報伝達手段から伝達された情報に基づき該単数または複数のファイルを該メインサーバへ転送するファイル送受信手段を有し、該メインサーバは、該ファイル送受信手段によって該端末装置から転送された該単数または複数のファイルに基づき入力ファイルを生成する入力ファイル生成手段と、該入力ファイル生成手段によって生成された該入力ファイルに基づいて計算を行ない、その計算結果を含む出力ファイルを生成する解析手段と、該解析手段によって生成された該出力ファイルに含まれる該計算結果の一部または全部が所定の目標値に近づくように、所定のアルゴリズムに従って該単数または複数のファイルを書き換えるファイル書き換え手段とを有することを特徴としている。
【0027】
また、請求項2記載の本発明の設計最適化システムは、請求項1記載の内容において、該入力ファイル生成手段は、該ファイル書き換え手段によって書き換えられた該単数または複数のファイルに基づき新たな入力ファイルを生成し、該解析手段は、該入力ファイル生成手段によって生成された該新たな入力ファイルに基づいて計算を行ない、その計算結果を含む新たな出力ファイルを生成し、該メインサーバは、所定の条件を満足するまで、該入力ファイル生成手段,該解析手段および該ファイル書き換え手段による一連の処理を繰り返し実行する最適化手段を有することを特徴としている。
【0028】
また、請求項3記載の本発明の設計最適化システムは、請求項1または2記載の内容において、該仲介サーバは、該メインサーバが有する該最適化手段を起動し、該最適化手段の操作ウィンドウを該端末装置のディスプレイに表示させる起動手段を有し、該メインサーバは、該起動手段により該端末装置のディスプレイに表示された該最適化手段の操作ウィンドウを介して該ユーザが該最適化手段を実行させることを許容するアクセス許容手段を有することを特徴としている。
【0029】
また、請求項4記載の本発明の設計最適化システムは、請求項3項記載の内容において、該仲介サーバは、該起動手段により起動された該最適化手段の作動状況を該端末装置に表示させる表示手段を有することを特徴としている。
また、請求項5記載の本発明の設計最適化方法は、ユーザによって操作される端末装置と、該端末装置にネットワークを介して接続された仲介サーバと、該端末装置および該仲介サーバに該ネットワークを介して接続され、該端末装置からの直接的なログインを禁止するとともに該仲介サーバからのログインを許可するメインサーバとをそなえた構成における設計最適化方法であって、該ユーザからの操作に基づいて該端末装置が有する単数または複数のファイルの情報を該仲介サーバに伝達するファイル情報伝達ステップと、該ファイル情報伝達ステップにおいて伝達された該単数または複数のファイルの情報に基づき、該単数または複数のファイルを該メインサーバへ転送するファイル送受信ステップと、該ファイル送受信ステップにおいて該端末装置から転送された該単数または複数のファイルに基づき該メインサーバにおいて入力ファイルを生成する入力ファイル生成ステップと、該入力ファイル生成ステップにおいて生成された該入力ファイルに基づいて計算を行ない、その計算結果を含む出力ファイルを該メインサーバにおいて生成する解析ステップと、該解析ステップにおいて生成された該出力ファイルに含まれる該計算結果の一部または全部が所定の目標値に近付くように、所定のアルゴリズムに従って該単数または複数のファイルを該メインサーバにおいて書き換えるファイル書き換えステップとを有することを特徴としている。
【0030】
また、請求項6記載の本発明の設計最適化方法は、請求項5記載の内容において、該ファイル書き換えステップにおいて書き換えられた該単数または複数のファイルに基づき新たな入力ファイルを生成する入力ファイル再生成ステップと、該入力ファイル生成ステップによって生成された該新たな入力ファイルに基づいて計算を行ない、その計算結果を含む新たな出力ファイルを生成する再解析ステップとを有し、所定の条件を満足するまで、該入力ファイル再生成ステップと該再解析ステップとによる一連の処理が繰り返し実行されることを特徴としている。
【0031】
また、請求項7記載の本発明の設計最適化方法は、請求項5または6記載の内容において、該仲介サーバには該最適化ステップおよび該再最適化ステップを実行する最適化手段が備えられ、該最適化手段を該仲介サーバにより起動し、該最適化手段の操作ウィンドウを該端末装置のディスプレイに表示させる起動ステップと、該起動ステップにより該端末装置のディスプレイに起動された該最適化手段の操作ウィンドウを介して該ユーザが該最適化手段を実行させることを許容するアクセス許容ステップとを有することを特徴としている。
【0032】
また、請求項8記載の本発明の設計最適化方法は、請求項7項記載の内容において、該起動ステップにより起動された該最適化手段の作動状況を該端末装置に表示させる表示ステップを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0033】
本発明の設計最適化システムによれば、入力ファイル生成手段と解析手段とファイル書き換え手段とによる一連の処理を全てメインサーバ内で行なうことで、端末装置およびネットワークの負荷を軽減し、最適化処理を短い時間で行なうことができる。また、端末装置およびメインサーバとは独立した仲介サーバにファイル送受信手段が設けられているので、端末装置およびメインサーバの種類や数に関係なく、また、メインサーバ内の入力ファイル生成手段,解析手段およびの種類に依存することなく、端末装置とメインサーバとの間でファイルの送受信が可能とすることができる。すなわち、汎用性が高い。したがって、ユーザからの直接的なログインを禁止された計算サーバ上の解析手段を用いた最適化処理を低コストで行なうことができる。(請求項1,5)
また、入力ファイル生成手段,解析手段,ファイル書き換え手段および最適化手段による一連の処理を全てメインサーバ内で行なうことができるため、処理時間を短縮することができる。
【0034】
また、最適化計算における繰り返し計算のループが、メインサーバ内で閉じているので、全体の処理時間をさらに短縮できる。(請求項2,6)
仲介サーバには起動手段が設けられているので、メインサーバが端末装置からの直接的なログインを禁止している場合であっても、メインサーバ内の最適化手段を起動することが可能となり、ユーザの利便性を大きく向上させることができる。また、この起動手段により起動された最適化手段が、端末装置から制御を受けることを許容するアクセス許容手段を備えているので、最適化手段を起動した後、ユーザは端末装置から最適化手段を直接的に操作することができ、メインサーバが端末装置からの直接的なログインを禁止することでメインサーバの機密性を確保しながら、ユーザの利便性を更に大きく向上させることができる。(請求項3,7)
また、最適化手段が表示手段を備えているので、この最適化手段による作動状況を端末装置に表示することができ、ユーザの利便性を更に向上させることができる。(請求項4,8)
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面により、本発明の一実施形態に係る設計最適化システムおよび設計最適化方法について説明すると、図1は設計最適化システムの全体構成を示す模式的なブロック図、図2〜図4は設計最適化システムの作用および設計最適化方法を示す模式的なフローチャートである。
図1に示すように、設計最適化システム10は、EWS11と、ウェブサーバ12と、計算サーバ13とから主に構成され、これらのEWS11とウェブサーバ12と計算サーバ13とは互いに図示しないネットワークによって相互に接続されている。
【0036】
このうち、EWS(端末装置)11は設計者によって操作される端末装置であり、また、ウェブサーバ(仲介サーバ)12はウェブページの閲覧サービスを提供するサーバであり、また、計算サーバ(メインサーバ)13は、EWS11に比べて大幅に処理性能が高いサーバであって、種々の計算に用いられるものである。
また、この計算サーバ13は、EWS11からの直接的なログインを禁止し、一方で、ウェブサーバ12からの直接的なログインを許容するようになっている。これにより、EWS11のユーザが直接的に計算サーバ13を操作することを禁じて計算サーバ13の機密性を確保すると共に、ユーザがウェブサーバ12経由で計算サーバ13の機能を限定的に利用することができるので、ユーザの利便性を高めることができるようになっている。なお、ユーザが計算サーバ13の機能を限定的に使用することができる場合については後述する。
【0037】
次に、EWS11,ウェブサーバ12および計算サーバ13にインストールされているソフトウェアおよびこれらのソフトウェアによって生成されるファイルについて説明する。
EWS11には、プリ/ポスト・ソフトウェア(以下、単に「プリ/ポスト」という)14およびウェブ・ブラウザ・ソフトウェア(以下、単に「ウェブ・ブラウザ」という)17がインストールされている。
【0038】
プリ/ポスト14は、設計変数ファイル(変数ファイル)15Aおよび初期設計ファイル(初期ファイル)16Aを生成するものである。
また、設計変数ファイル15Aは、設計対象物の設計値(より具体的には、初期設計ファイル16Aに含まれる設計値)のうちのいずれかを設計変数として扱い、この設計変数を設計値として含むソルバ入力ファイル22(後述する)を生成するように、計算サーバ13にインストールされたプリ/ポスト21(後述する)に対して指令するコマンドファイルである。なお、この設計変数ファイル15Aに含まれる設計変数とは、即ち、設計対象物である部品の設計条件であって、例えば、断面形状や板厚などが該当する。
【0039】
また、初期設計ファイル16Aは、初期の設計値が含まれたモデルファイルであって、設計対象物である部品の設計値が含まれるようになっている。
また、これらの設計変数ファイル15Aや初期設計ファイル16Aは、後述するウェブサーバ12のファイル送受信システム18によって計算サーバ13に転送されるようになっている。なお、計算サーバ13に転送される前の設計変数ファイルおよび初期設計ファイルをそれぞれ符号15A,16Aで示すとともに、計算サーバ13に転送された後の設計変数ファイルおよび初期設計ファイルをそれぞれ符号15B,16Bで示す。
【0040】
また、EWS11のウェブ・ブラウザ17は、Hyper Text Markup Languageのタグに従ってレイアウトを再現し、文字や画像、動画、音声などを再生することができるソフトウェアである。また、本実施形態においては、このウェブ・ブラウザ17を通じて、ウェブサーバ12にCGI(Common Gateway Interface)プログラムとしてインストールされたファイル送受信システム18および最適化ソフト起動システム19を操作することができるようになっている。
【0041】
このウェブサーバ12にインストールされたファイル送受信システム(ファイル送受信手段)18は、EWS11のプリ/ポスト14によって生成された設計変数ファイル15Aと初期設計ファイル16Aとを計算サーバ13に転送するCGIプログラムであって、EWS11のウェブ・ブラウザ17を通じて入力されたユーザのリクエストに応じて作動するようになっている。
【0042】
そして、起動したファイル送受信システム18は、計算サーバ13に対してネットワークを介してリモートログインを行ない、ウェブ・ブラウザ17を通じて入力されたユーザのリクエストに応じたファイル(ここでは、設計変数ファイル15Aや初期設計ファイル16A)をEWS11から計算サーバ13へ転送するようになっている。
また、このファイル送受信システム18は、図示しないが、計算サーバ13において最適化が完了した設計変数を含む設計変数ファイル15Bなど、ユーザのリクエストに応じたファイルを再びEWS11へ転送することもできるようになっている。
【0043】
一方、最適化ソフト起動システム(起動手段)19は、起動後、計算サーバ13に対してネットワークを介してリモートログインを行ない、その後、計算サーバ13にインストールされた設計最適化ソフト25(後述する)を起動させるCGIプログラムであって、上記のファイル送受信システム18と同様に、EWS11のウェブ・ブラウザ17を通じて入力されたユーザのリクエストに応じて起動するようになっている。そして、その起動画面は、インターフェース・ウィンドウ(操作ウィンドウ)25Aとしてネットワークを介してEWS11のディスプレイに表示するようになっている。
【0044】
なお、EWS11のユーザが、ファイル送受信システム18または最適化ソフト起動システム19にアクセスしようとする場合には、アクセスが許可される前に、このユーザが適切な権限を有しているか否かを確認すべく、ウェブサーバ12がユーザ認証を行なうようになっている。このため、正当な権限を有しないユーザはファイル送受信システム18や最適化ソフト起動システム19にアクセスすることができないようになっている。
【0045】
他方、計算サーバ13には、プリ/ポスト(入力ファイル生成手段)21と解析ソルバ(解析手段)23と設計最適化ソフト(最適化手段)25とがインストールされている。
これらのうち、プリ/ポスト21は、原則的にはEWS11にインストールされたプリ/ポスト14と同じソフトウェアであるが、EWS11のプリ/ポスト14が、設計変数ファイル15Aと初期設計ファイル16Aとの生成のために用いられていたのに対し、計算サーバ13にインストールされたプリ/ポスト21は、初期設計ファイル16Bと設計最適化ソフト25により補正された(書き換えられた)設計変数ファイル15Bとに基づいてソルバ入力ファイル(入力ファイル)22を生成するために用いられている点で異なっている。なお、この計算サーバ13にインストールされたプリ/ポスト21と、EWS11にインストールされたプリ/ポスト14とを区別するために、前者を「サーバ側プリ/ポスト」21といい、後者を「EWS側プリ/ポスト」14という場合がある。
【0046】
また、このサーバ側プリ/ポスト21によって生成されるソルバ入力ファイル22は、計算サーバ13に転送された初期設計ファイル16Bと設計最適化ソフト25によって補正された設計変数ファイル15Bとに基づいて生成されるファイルであって、計算サーバ13の解析ソルバ23によって解析処理されるものである。
また、解析ソルバ23は、サーバ側プリ/ポスト21によって生成されたソルバ入力ファイル22について応力解析(計算)を行ない、応力や変位といった目的関数を含むソルバ出力ファイル24を生成する解析プログラムである。
【0047】
また、設計最適化ソフト(最適化手段)25は、解析ソルバ23によって処理されて出力されたソルバ出力ファイル24に含まれる目的関数(例えば、応力や変位など)を、ユーザが所望する目的値(例えば、目標応力σTや目標変位量ΔTなど)に近付ける、または、一致させるべく、設計変数ファイル15Bに含まれる設計変数(例えば、断面形状や板厚など)を適宜補正する(書き換える)ことで、設計対象物である部品の最適化を図るものである。なお、この設計最適化ソフト25においては、勾配法、一次計画法や遺伝的アルゴリズムなど、種々のアルゴリズムにより設計変数を補正することができるようになっている。
【0048】
また、この設計最適化ソフト25は、計算サーバ13内のプリ/ポスト21および解析ソルバ23を統合的に制御することができるようになっており、EWS11に表示されたインターフェース・ウィンドウ(操作ウィンドウ)25Aからの指示を受けて制御可能に構成されている(アクセス許容手段)。
したがって、ユーザは、最適化手段ソフトシステム(起動手段)19によって起動・表示されたインターフェース・ウィンドウ(操作ウィンドウ)25Aを介して、EWS11から設計最適化ソフト25を制御することで、プリ/ポスト21および解析ソルバ23をも実行させることができるようになっている。
【0049】
さらに、インターフェース・ウィンドウ(操作ウィンドウ)25Aを介したユーザの操作により、設計最適化ソフト25は、最適化計算の作動状況を表示するモニタリング・ウィンドウ(図示略)を、EWS11のモニタ上に表示させる(表示手段)。
したがって、EWS11が計算サーバ13への直接的なログインが禁止されている本実施形態に係る設計最適化システム10においても、ユーザは、ウェブサーバ12の最適化ソフト起動システム19を用いて設計最適化ソフト25を起動・表示させて、操作することができ、さらに、起動した設計最適化ソフト25の作動状況を、EWS11のモニタ上に表示されたインターフェース・ウィンドウ25Aおよびモニタリング・ウィンドウにより確認することができるようになっている。
【0050】
なお、ユーザは、設計最適化ソフト25の作動状況のみならず、計算サーバ13内のプリ/ポスト21および解析ソルバ23の作動状況もモニタリング・ウィンドウで確認することができるようになっている。
また、ユーザは、このインターフェース・ウィンドウ25Aを介し、設計最適化ソフト25に対して、目的関数の目標値(例えば、目標応力値σTや目標変位値ΔTなど)をEWS11から入力することができ、さらに、設計最適化ソフト25による最適化処理の開始や中止などを直接的に操作することもできるようになっている。
【0051】
次に、この設計最適化システム10による作用、即ち、具体的な設計最適化方法について、図2〜図4に示すフローチャートを用いて説明する。
まず、図2のステップS11に示すように、EWS11のユーザからのリクエストにより、EWS側プリ/ポスト14は、初期設計ファイル16Aおよび設計変数ファイル15Aを生成する。
【0052】
その後、ユーザからのリクエストによりウェブ・ブラウザ17が起動され、起動したウェブブラウザ17を通じてユーザによるウェブサーバ12のファイル送受信システム18へのアクセスが行なわれる(ステップS12)。
なお、ウェブサーバ12は、EWS11のユーザによるファイル送受信システム18へのアクセスを許可する前に、このユーザが正当な権限を有するユーザであるか否かを認証する。より具体的には、ウェブサーバ12は、この認証において、ウェブ・ブラウザ17を通じてユーザIDおよびユーザパスワードの入力を要求し、ここでユーザによって入力されたユーザIDおよびユーザパスワードが、予めウェブサーバ12内に登録されたものと一致すれば、ファイル送受信システム18が起動し、EWS11のウェブ・ブラウザ17とファイル送受信システム18とのリンクが成立し、ユーザによるファイル送受信システム18へのアクセスが許容される(ステップS13)。
【0053】
なお、ステップS13におけるユーザ認証が成功しなかった場合についての制御フローは図示しないが、この場合は、ウェブサーバ12がファイル送受信システム18の起動を許可せずに制御は強制的に終了する。したがって、正当な権限を有するユーザのみが、この設計最適化システム10を利用することを許可されることとなり、設計最適化システム10の高い機密性を確保することができる。
【0054】
そして、起動したファイル送受信システム18に対し、ユーザがEWS11から計算サーバ13へ転送させたいファイルの選択がウェブ・ブラウザ17を通じて行なわれる(ステップS14;ファイル情報伝達ステップ)。なお、ここでは、ステップS11において生成された初期設計ファイル16Aと設計変数ファイル15Aとが転送対象として選択される。
【0055】
そして、ファイル送受信システム18に対して、ウェブ・ブラウザ17を通じてユーザから転送要求が入力されると、このファイル送受信システム18は、選択された初期設計ファイル16Aと設計変数ファイル15Aとを、EWS11から計算サーバ13へ転送する(ステップS15;ファイル送受信ステップ)。
そしてさらに、ユーザからウェブ・ブラウザ17を通じてウェブサーバ12に対して、計算サーバ13の設計最適化ソフト25に対する起動要求が入力されると、ウェブサーバ12内の最適化ソフト起動システム19が起動し(ステップS16)、ここで起動した最適化ソフト起動システム19が、計算サーバ13内の設計最適化ソフト25を起動させる(ステップS17;起動ステップ)。
【0056】
そして、ウェブサーバ12の最適化ソフト起動システム19は、起動した設計最適化ソフト25のインターフェース・ウィンドウ(操作ウィンドウ)25AをEWS11のモニタ上に表示させるとともに(起動ステップ)、アクセス部26がEWS11のユーザから設計最適化ソフト25に対する直接的な操作を許容する(ステップS18;アクセス許容ステップ)。
【0057】
そして、図3に示すステップS19において、設計最適化ソフト25に対して、EWS11に表示されたインターフェース・ウィンドウ25Aを通じて目的関数の目標値(例えば、目標応力値σTや目標変位値ΔTなど)および最適化処理の実行命令がユーザによって入力される(ステップS19)。
この最適化処理の実行命令を受けた計算サーバ13の設計最適化ソフト25は、目的関数(例えば、応力や変位など)を目標値(目標応力値σTや目標変位量ΔT)に近付ける或いは一致させるべく、設計変数ファイル15Bにおける設計変数(例えば、断面形状や板厚など)を補正する(ステップS20;ファイル書き換えステップ;最適化ステップ)。
【0058】
その後、サーバ側プリ/ポスト21は、ステップS20において補正された設計変数ファイル15Bと初期設計ファイル16Bとに基づいて、ステップS20において補正された設計変数(例えば、断面形状や板厚など)を設計値として適用された部品を示すソルバ入力ファイル22を生成する(ステップS21)。
そして、解析ソルバ23は、ステップS21において生成されたソルバ入力ファイル22の解析を行ない(ステップS22;解析ステップ)、ここでの解析結果をソルバ出力ファイル24として生成する(ステップS23;解析ステップ)。
【0059】
このとき、設計最適化ソフト25は、解析ソルバ23による直近の解析処理が何回目の処理であったかを判定し(ステップS24)、予め設定した終了回数(例えば、50回)を超えていた場合には(Noルート)、ステップS23で得られた目的関数を、EWS11のモニタ上に表示したモニタリング・ウィンドウを通じてユーザに通知して(ステップS32;表示ステップ)、最適化処理を終了する。
【0060】
一方、解析処理が設定した終了回数に達していない場合には(ステップS24のYesルート)、ステップS25に進み、このステップS25において、設計最適化ソフト25は、ステップS23において生成されたソルバ出力ファイル24に含まれている目的関数が、ステップS19においてEWS11のユーザによって入力された目標値に達しているか否かを判定する(ステップS25)。なお、ここで、「目的関数が目標値に達する」とは、厳密に完全一致することを意味するものではなく、所定の範囲で誤差が設定されており、実質的に一致したとみなされれば目的関数が目標値に達したと判定される。
【0061】
そして、このステップS25で、ソルバ出力ファイル24に含まれている目的関数が目標値に達したと判定された場合には(Noルート)、ステップS23で得られた目的関数を、EWS11のモニタ上に表示したモニタリング・ウィンドウを通じて、設計対象物である部品を最適化した結果の目的関数としてユーザに通知して(ステップS32)、最適化処理を終了する。
【0062】
一方、目的関数が目標値に達していないと判定された場合には(ステップS25のYesルート)、図4に示すステップS26に進み、設計最適化ソフト25が、自動的に設計変数ファイル15Bの設計変数を補正する(ステップS26;ファイル書き換えステップ;最適化ステップ)。
そして、サーバ側プリ/ポスト21は、初期設計ファイル16BとステップS26において補正された設計変数ファイル15Bとに基づいて、新たなソルバ入力ファイル22を生成する(ステップS27;入力ファイル再生成ステップ)。
【0063】
そして、解析ソルバ23は、ステップS27において生成された新たなソルバ入力ファイル22について解析処理を行ない、ここでの解析結果を新たなソルバ出力ファイル24として生成する(ステップS28およびS29;再解析ステップ)。
そして、最適化ソフト25は、解析ソルバ23による直近の解析処理が何回目の解析処理であったのかを判定し(ステップS30)、予め設定した終了回数の解析処理が行なわれたと判定した場合には、ステップS32に進み、最適化ソフト25は、EWS11のモニタ上に表示したモニタリング・ウィンドウを通じて、目的関数を通知し(表示ステップ)、最適化処理を終了する(Noルート)。
【0064】
一方、最適化ソフト25が、解析ソルバ23による直近の解析処理によっても終了回数に達していないと判定した場合には(ステップS30のYesルート)、ステップS31に進む。
そして、このステップS31において、最適化ソフト25は、上記のステップS29において生成された新たなソルバ出力ファイル24に含まれている目的関数が、ステップS19においてEWS11のユーザによって入力された目標値に達しているか否を判定する(ステップS31)。
【0065】
このステップS31で、目的関数が目標値に達していないと判定された場合には(Yesルート)、ステップS26に戻り、設計変数ファイル15Bの設計変数をさらに補正する。その後、解析ソルバ23による解析処理が所定回数に達するか、または、目的関数が目標値に達するまで、ステップS26〜S29の制御を繰り返す。
一方、ステップS31で、目的関数が目標値に達したと判定された場合には(Noルート)、ステップS32に進み、最適化ソフト25は、EWS11のモニタ上に表示したモニタリング・ウィドウを通じて、設計対象物である部品を最適化した結果の目的関数を通知し(表示ステップ)、最適化処理を終了する。なお、これらの最適化処理の繰り返しを終了する条件は種々あり、本発明は本実施形態における終了条件に限定されるものではない。
【0066】
このように、本発明の一実施形態に係る設計最適化システムによれば、サーバ側プリ/ポスト21と解析ソルバ23と設計最適化ソフト25とによる一連の最適化処理を、全て計算サーバ13内で行なうことで、最適化計算による繰り返し処理のループ内からファイル転送処理を排除し、設計最適化処理に要する時間を短縮させ、また、ネットワークトラフィックを低減することができる。
【0067】
また、EWS11および計算サーバ13から独立したウェブサーバ12にファイル送受信システム18が設けられているので、EWS11および計算サーバ13の種類や数に関係なく、計算サーバ13内のプリ/ポスト21,解析ソルバ23および設計最適化ソフト25の種類に依存することなく、EWS11と計算サーバ13との間でファイルの送受信が可能とすることができるので、低コストで設計最適化処理を行なうことができる。
【0068】
ウェブサーバ12には最適化ソフト起動システム19が設けられているので、計算サーバ13がEWS11からの直接的なログインを禁止している場合であっても、計算サーバ13内の設計最適化ソフト25を起動することが可能となり、ユーザの利便性を大きく向上させることができる。
また、この最適化ソフト起動システム19により起動された設計最適化ソフト25が、端末装置に表示されたインターフェース・ウィンドウ25Aを介して制御を受けることを許容するので、設計最適化ソフト25を起動した後、ユーザはEWS11から設計最適化ソフト25を直接的に操作することができ、計算サーバ13がEWS11からの直接的なログインを禁止することで計算サーバ13の機密性を確保しながら、ユーザの利便性を更に大きく向上させることができる。例えば、目標値をEWS11から直接的に入力したり、繰り返し計算を途中で中断させたりすることができる。
【0069】
また、設計最適化ソフト25による作動状況をEWS11に表示する表示手段を備えているので、ユーザの利便性を更に向上させることができる。
また、本発明の設計最適化方法によれば、入力ファイル生成ステップと解析ステップと設計最適化ステップとによる一連の処理を全て計算サーバ13内で行なうことで、設計最適化処理を短い時間で行なうことができる。
【0070】
また、EWS11および計算サーバ13とは独立したウェブサーバ12によりファイル送受信ステップが実行されるので、EWS11および計算サーバ13の種類や数に関係なく、EWS11と計算サーバ13との間でファイルの送受信が可能とすることができ、低コストで設計最適化処理を行なうことができる。
また、入力ファイル再生成ステップと再解析ステップと再最適化ステップとによる一連の処理を全て計算サーバ13内で繰り返し行なうことができるため、設計変数の最適化に必要な時間を短縮することができる。
【0071】
ウェブサーバ12により起動ステップが実行されるので、計算サーバ13がEWS11からのログインを禁止している場合であっても、計算サーバ13内で最適化ステップを実行することが可能となり、システムの機密性とユーザの利便性とを両立させることができる。
また、表示ステップが設定されているので、起動ステップにおいて起動された設計最適化ソフト25の作動状況をEWS11に表示することができ、ユーザの利便性を更に向上させることができる。
【0072】
また、解析ソルバは、インストールする対象となるマシン機器が特定される販売形態(いわゆる、ノードロックライセンス)もあり、計算能力の高い特定のマシンにのみインストールされる場合が一般的である。また、プリ/ポストや最適化ソフトは、インストールする対象となる対象が限定されず、その代わり、同時稼動数が限定されるようになっている場合が一般的である(いわゆる、フローティングライセンス)。
【0073】
従って、図7に示す設計システム100や、図8に示す設計システム120から、本実施形態に係る設計最適化システム10へ移行する場合であっても、解析ソルバのインストール先を変更することなく、プリ/ポストおよび設計最適化ソフトのインストール先を変更すればよいので、その移行に要するコストを十分に抑制することができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0074】
例えば、計算サーバ13に図示しないジョブキューイングシステムをインストールし、解析ソルバ23に投入されるジョブの数を適切に制御できるようにしてもよい。
また上述の実施形態においては、解析ソルバ23が応力解析用のソルバである場合を例にとって説明したが、このような用途のソルバに限定するものではなく、流体解析用,衝突解析用,振動解析用など、いずれの用途に用いられるソルバであってもよい。
【0075】
また、上述の実施形態においては、EWS11が1台であり、また、計算サーバ13が1台で構成された設計最適化システム10について説明したが、EWS11が複数台であり、また、計算サーバ13が複数台であってもよい。
ここで、図7に示す従来の設計最適化システム100および本発明が創作される過程で創案された図8に示す設計最適化システム120と本実施形態に係る設計最適化システム10とを比較する。
【0076】
図7に示す従来の設計最適化システム100によれば、バッチ処理システム105が必要不可欠になることから、EWS101の台数を増やしたり、計算サーバ102の設置台数、プリ/ポスト103や解析ソルバ109の種類を増やしたりする、システムの拡張がそもそも非常に困難である。
また、本発明が創作される過程で創案された図8に示す設計最適化システム120には、上述のバッチ処理システム105が不要となるので、ある程度のシステム拡張性は確保されているものの、EWS121の台数が増大したり、計算サーバ123の台数が増大した場合には、必然的にファイルサーバ122の共有ファイル領域122Aを拡張する必要があり、且つ、この共有ファイル領域122Aに対する同時マウント数が増大するため、ファイルサーバ122には高い処理能力が求められるため、システム拡張に要するコストの増大が著しい。
【0077】
これに対して、本実施形態に係る設計最適化システム10によれば、EWS11が複数台にするとともに、計算サーバ13が複数台にするような場合であっても、原則的に、ウェブサーバ12は1台で足りるため、コスト面で非常に有利である。なお、ウェブサーバ12に係る負荷が大きいような環境においては、ウェブサーバ12の台数を増やしたり、ウェブサーバ12の処理能力を高めたりする対応が必要となるものの、そもそもウェブサーバ12にかかる負荷は比較的小さいため、ウェブサーバ12の台数を増やしたり能力を増強したりする必要性は非常に稀であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施形態に係る設計最適化システムの全体構成を示す模式的なブロック構成である。
【図2】本発明の一実施形態に係る設計最適化システムの作用および本発明の一実施形態に係る設計最適化方法を示す模式的なフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態に係る設計最適化システムの作用および本発明の一実施形態に係る設計最適化方法を示す模式的なフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態に係る設計最適化システムの作用および本発明の一実施形態に係る設計最適化方法を示す模式的なフローチャートである。
【図5】従来の設計最適化の手法を示す模式図である。
【図6】一般的な設計最適化の手法を示す模式図である。
【図7】従来の設計最適化システムを示す模式的なブロック構成図である。
【図8】本発明を創作する過程で創案された設計最適化システムを示す模式的なブロック構成図である。
【符号の説明】
【0079】
11 EWS(端末装置)
12 ウェブサーバ(仲介サーバ)
13 計算サーバ(メインサーバ)
14 EWS側プリ/ポスト(初期ファイル生成手段,設計変数ファイル生成手段)
15A,15B 設計変数ファイル(変数ファイル)
16A,16B 初期設計ファイル(初期ファイル)
18 ファイル送受信システム(ファイル送受信手段)
19 最適化ソフト起動システム(起動手段)
21 サーバ側プリ/ポスト(入力ファイル生成手段)
22 ソルバ入力ファイル(入力ファイル)
23 解析ソルバ(解析手段)
24 ソルバ出力ファイル(出力ファイル)
25 設計最適化ソフト(最適化手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによって操作される端末装置と、
該端末装置にネットワークを介して接続された仲介サーバと、
該端末装置および該仲介サーバに該ネットワークを介して接続され、該端末装置からの直接的なログインを禁止するとともに該仲介サーバからのログインを許可するメインサーバとをそなえ、
該端末装置は、
該ユーザからの操作に基づいて該端末装置が有する単数または複数のファイルの情報を該仲介サーバに伝達するファイル情報伝達手段を有し、
該仲介サーバは、
該ファイル情報伝達手段から伝達された情報に基づき該単数または複数のファイルを該メインサーバへ転送するファイル送受信手段を有し、
該メインサーバは、
該ファイル送受信手段によって該端末装置から転送された該単数または複数のファイルに基づき入力ファイルを生成する入力ファイル生成手段と、
該入力ファイル生成手段によって生成された該入力ファイルに基づいて計算を行ない、その計算結果を含む出力ファイルを生成する解析手段と、
該解析手段によって生成された該出力ファイルに含まれる該計算結果の一部または全部が所定の目標値に近づくように、所定のアルゴリズムに従って該単数または複数のファイルを書き換えるファイル書き換え手段とを有する
ことを特徴とする、設計最適化システム。
【請求項2】
該入力ファイル生成手段は、
該ファイル書き換え手段によって書き換えられた該単数または複数のファイルに基づき新たな入力ファイルを生成し、
該解析手段は、
該入力ファイル生成手段によって生成された該新たな入力ファイルに基づいて計算を行ない、その計算結果を含む新たな出力ファイルを生成し、
該メインサーバは、
所定の条件を満足するまで、該入力ファイル生成手段,該解析手段および該ファイル書き換え手段による一連の処理を繰り返し実行する最適化手段を有する
ことを特徴とする、請求項1記載の設計最適化システム。
【請求項3】
該仲介サーバは、該メインサーバが有する該最適化手段を起動し、該最適化手段の操作ウィンドウを該端末装置のディスプレイに表示させる起動手段を有し、
該メインサーバは、該起動手段により該端末装置のディスプレイに表示された該最適化手段の操作ウィンドウを介して該ユーザが該最適化手段を実行させることを許容するアクセス許容手段を有する
ことを特徴とする、請求項1または2記載の設計最適化システム。
【請求項4】
該仲介サーバは、該起動手段により起動された該最適化手段の作動状況を該端末装置に表示させる表示手段を有する
ことを特徴とする、請求項3に記載の設計最適化システム。
【請求項5】
ユーザによって操作される端末装置と、
該端末装置にネットワークを介して接続された仲介サーバと、
該端末装置および該仲介サーバに該ネットワークを介して接続され、該端末装置からの直接的なログインを禁止するとともに該仲介サーバからのログインを許可するメインサーバとをそなえた構成における設計最適化方法であって、
該ユーザからの操作に基づいて該端末装置が有する単数または複数のファイルの情報を該仲介サーバに伝達するファイル情報伝達ステップと、
該ファイル情報伝達ステップにおいて伝達された該単数または複数のファイルの情報に基づき、該単数または複数のファイルを該メインサーバへ転送するファイル送受信ステップと、
該ファイル送受信ステップにおいて該端末装置から転送された該単数または複数のファイルに基づき該メインサーバにおいて入力ファイルを生成する入力ファイル生成ステップと、
該入力ファイル生成ステップにおいて生成された該入力ファイルに基づいて計算を行ない、その計算結果を含む出力ファイルを該メインサーバにおいて生成する解析ステップと、
該解析ステップにおいて生成された該出力ファイルに含まれる該計算結果の一部または全部が所定の目標値に近付くように、所定のアルゴリズムに従って該単数または複数のファイルを該メインサーバにおいて書き換えるファイル書き換えステップとを有する
ことを特徴とする、設計最適化方法。
【請求項6】
該ファイル書き換えステップにおいて書き換えられた該単数または複数のファイルに基づき新たな入力ファイルを生成する入力ファイル再生成ステップと、
該入力ファイル生成ステップによって生成された該新たな入力ファイルに基づいて計算を行ない、その計算結果を含む新たな出力ファイルを生成する再解析ステップとを有し、
所定の条件を満足するまで、該入力ファイル再生成ステップと該再解析ステップとによる一連の処理が繰り返し実行される
ことを特徴とする、請求項5記載の設計最適化方法。
【請求項7】
該仲介サーバには該最適化ステップおよび該再最適化ステップを実行する最適化手段が備えられ、
該最適化手段を該仲介サーバにより起動し、該最適化手段の操作ウィンドウを該端末装置のディスプレイに表示させる起動ステップと、
該起動ステップにより該端末装置のディスプレイに起動された該最適化手段の操作ウィンドウを介して該ユーザが該最適化手段を実行させることを許容するアクセス許容ステップとを有する
ことを特徴とする、請求項5または6記載の設計最適化方法。
【請求項8】
該起動ステップにより起動された該最適化手段の作動状況を該端末装置に表示させる表示ステップを有する
ことを特徴とする、請求項7記載の設計最適化方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−318171(P2006−318171A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−139556(P2005−139556)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 株式会社エムエムシーコンピュータリサーチ MCOReソリューション2004 2005年3月25日発行
【出願人】(505173717)株式会社MCOR (5)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】