設計知識作成支援装置
【課題】不具合情報から抽出した設計知識を、既存設計知識に登録・改訂する際、抽出知識が新たな知識か、既存知識なのかを判定できず、設計知識の拡充プロセスを十分支援できない。
【解決手段】製品やサービスの不具合情報と、設計知識データベースからの設計知識と、技術用語間の上位・下位や部分・全体関係を定義したシソーラスから、不具合情報と設計知識の類似度を類似度判定部で判定し、類似度と不具合情報の重要度から、異なる算式で不具合情報毎の既存設計知識の類似度と、新規設計知識の不具合情報候補を提示し、既存設計知識の類似度からの追加修正設計知識と新規設計知識を設計知識データベースに登録し、かつこの両設計知識と不具合情報の関係リンクを設計知識・不具合情報リンクデータベースに登録する既存設計知識修正候補と設計知識新規追加候補の2つ提示・登録部を備える。
【解決手段】製品やサービスの不具合情報と、設計知識データベースからの設計知識と、技術用語間の上位・下位や部分・全体関係を定義したシソーラスから、不具合情報と設計知識の類似度を類似度判定部で判定し、類似度と不具合情報の重要度から、異なる算式で不具合情報毎の既存設計知識の類似度と、新規設計知識の不具合情報候補を提示し、既存設計知識の類似度からの追加修正設計知識と新規設計知識を設計知識データベースに登録し、かつこの両設計知識と不具合情報の関係リンクを設計知識・不具合情報リンクデータベースに登録する既存設計知識修正候補と設計知識新規追加候補の2つ提示・登録部を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、企業における製品の設計品質の向上を目的として、製品不具合に関する情報から、設計者が設計のミスを防止するためのチェックリストを作成する作業を支援し、また、チェックリストを参照するための参考情報として関連する不具合情報を提示させることができる設計知識作成支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
企業にとっては、製品の設計品質を向上させ、製品に関わる不具合や事故を低減することは、社会的な責任であると共に、企業の信頼やコストに関わる重要な課題でもある。製品の品質を向上させるためには、従来から、製品不具合に関する情報を、設計者が設計のミスを防止するためのチェックリストや設計基準書等の設計知識として蓄積・活用することがなされてきた。しかし、設計知識を作成することは手間が大きいという課題があり、以下にあげるような設計知識を作成・活用するための技術が開示されている。
【0003】
特許文献1は、製品の生産現場および市場で発生する品質問題に対する対策検討結果を設計知識として、データベースに登録蓄積し、蓄積した設計知識は、製品品番、部品品番、部位、現象等にふくまれる文字列による検索を可能とし、さらに、製品の設計時に考慮すべき情報を、設計部門で事前チェックのためのチェックリストに反映させる技術が開示されている。
【0004】
特許文献2は、製品の生産現場および市場で発生する品質問題に対する対策検討結果を設計知識として、データベースに登録して蓄積し、特定された不良が発生する可能性の高い部品や原因、合わせて不具合の解消方法を提示することで、不具合の対策の実施を確実に行うことができる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-187069号公報 「品質問題フォロー方法およびシステム」
【特許文献2】特開2006-11744号公報 「不良再発防止装置、不良再発防止方法、プログラムおよび記憶媒体」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の特許文献1も特許文献2も、不具合情報から抽出した設計知識を、既存の設計知識に登録・改訂する際に、抽出された知識が新たな知識なのか、既存の知識なのかを判定するしくみがないので、設計知識を拡充していくプロセスを十分支援できないという課題があった。
【0007】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、不具合情報と既存の設計知識との類似性を判定する手段を新たに提案することにより、不具合報告書から抽出した設計知識が新規であるか、既存であるかを判定することを支援することで、設計知識の作成を効率化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る設計知識作成支援装置は、
生産過程や市場で生じた製品やサービスの不具合情報を管理する不具合情報データベースと、
製品やサービスの設計ミス防止用の設計知識を管理する設計知識データベースと、
製品やサービスに関わる技術用語間の上位・下位関係および部分・全体関係のシソーラスが記載された技術用語シソーラスと、
設計知識と不具合情報との関係リンクを管理する設計知識・不具合情報リンクデータベースと、
不具合情報、設計知識、および、技術用語シソーラスを入力して、不具合情報と設計知識の類似度を判定する類似度判定部と、
類似度判定部による不具合情報と設計知識の類似度と、不具合情報の構造と内容から算定される重要度を用いて、不具合情報毎に設計知識データベースの設計知識が追加修正可能な既存の設計知識の類似度一覧を提示すると共に、追加修正の設計知識と不具合情報との関係リンクを設計知識・不具合情報リンクデータベースに登録する既存設計知識修正候補提示・登録部と、
類似度判定部による不具合情報と設計知識の類似度と、不具合情報の構造と内容から算定される重要度を用いて、新規の設計知識を含む不具合情報の候補を提示し、かつ設計知識データベースの設計知識を新規登録すると共に、新規登録の設計知識と不具合情報との関係リンクを設計知識・不具合情報リンクデータベースに登録する設計知識新規追加候補提示・登録部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る設計知識作成支援装置によれば、
製品やサービスの不具合情報と、設計知識データベースからの設計知識と、技術用語間の上位・下位や部分・全体関係が定義されたシソーラスを入力し、不具合情報と設計知識の類似度を類似度判定部で判定し、類似度と不具合情報の重要度から、不具合情報毎に、既存設計知識の類似度一覧を提示し、この一覧を基に設計知識データベースに設計知識を追加修正し、かつ追加修正設計知識と不具合情報との関係リンクを設計知識・不具合情報リンクデータベースに登録する既存設計知識修正候補提示・登録部と、また、類似度と不具合情報の重要度から、新規設計知識の不具合情報候補を提示、設計知識データベースに設計知識を新規登録しかつ新規登録設計知識と不具合情報の関係リンクを設計知識・不具合情報リンクデータベースに登録する設計知識新規追加候補提示・登録部を備えるので、不具合報告書から抽出した設計知識が新規であるか、また、既存のどの知識を修正すればよいかがわかり、設計知識を効率的に作成できる。さらに、同時に、設計知識から不具合情報へのリンクにより、設計知識を守らない場合に、どのような不具合が生じるかがわかるので、設計者の設計ミスをより防止できると共に、品質改善のための設計部門での対策を検討する際にも役立つ効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1を示す基本構成図である。
【図2】設計知識例であり、製品やサービスの設計ミスを防止するためのチェック項目を示す図である。
【図3】不具合情報の例を示す図である。
【図4】技術用語シソーラスの例を示す図である。
【図5】不具合情報・設計知識類似度情報の例を示す図である。
【図6】既存修正候補の不具合情報一覧画面の例を示す図である。
【図7】新規追加候補の不具合情報一覧画面の例を示す図である。
【図8】類似設計知識の一覧画面の例を示す図である。
【図9】設計知識・不具合情報リンクデータベースの登録前の例を示す図である。
【図10】設計知識・不具合情報リンクデータベースの登録後の例を示す図である。
【図11】類似度判定処理の詳細フロー図である。
【図12】既存設計知識修正候補提示・登録処理の詳細フロー図である。
【図13】新規設計知識追加候補提示・登録処理の詳細フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1を示す基本構成図である。なお、以下の説明では、製品・サービスの設計の例として表示装置の電気回路分野を選択し説明するが、機械設計、信頼性・保全性など設計一般の分野に適用しうるものである。また、設計知識として、チェック項目を例として説明するが、例示するチェック項目と同様の文書構造や内容をもつ設計基準書、設計支援エキスパートシステムのルールなどにも適用しうるものである。さらに、不具合情報として、不具合報告書を例として説明するが、例示する不具合情報と類似の文書構造や内容をもつ試験フォローシート、不具合対策防止書などにも適用しうるものである。
【0012】
図1において、類似度判定部101は、製品やサービスに関わる技術用語間の上位・下位関係や部分・全体関係などのシソーラスを記載した技術用語シソーラス102を参照しながら、不具合情報データベース103における不具合情報109と、設計知識データベース104中の設計知識110の構造を利用して、不具合情報109と設計知識110の類似度を判定し、不具合情報・設計知識類似度情報111を生成する。
【0013】
既存設計知識修正候補提示・登録部105は、不具合情報・設計知識類似度情報111と、不具合情報109の構造と内容から算定される重要度を用いて、不具合情報109毎に、類似度の高い設計知識をもつ不具合情報の一覧である既存修正候補の不具合情報一覧画面112を提示する。そしてこの不具合情報一覧の中から選択された設計知識の修正に反映させる不具合情報を受理すると、選択された不具合情報に類似した設計知識の一覧を示す類似設計知識一覧画面113を提示し、設計知識データベース104の設計知識110の追加修正を実施すると共に、設計知識の具体事例である不具合情報109との関係リンクを設計知識・不具合情報リンクデータベース107に登録する。
【0014】
設計知識新規追加候補提示・登録部106は、不具合情報・設計知識類似度情報111と、不具合情報109の構造と内容から算定される重要度を用いて、新規の設計知識110を含む不具合情報109の候補の一覧である新規追加候補の不具合情報一覧画面114を提示し、設計知識データベース104の設計知識110を新規登録すると共に、設計知識110の具体事例である不具合情報109との関係リンクを設計知識・不具合情報リンクデータベース107に登録する。
【0015】
設計知識表示部108は、設計知識・不具合情報リンクデータベース107を入力として、設計知識毎に関連する不具合情報のリストを提示する。
【0016】
図2は、設計知識110の例であり、製品やサービスの設計ミスを防止するためのチェック項目を示している。設計知識201は、例えば、設計知識ID、分類、内容の構造をもつ。設計知識IDは、設計知識110を一意に定める識別子の一例であり、設計知識データベース104中に同じIDは一つしかない。分類は、電気回路、機械設計、信頼性・保全性などの、設計知識が対象とする分類領域を示す。内容は、設計知識の具体的な内容をテキスト、表、または、図等のイメージで記載したものである。
設計知識202, 設計知識203,設計知識204も、設計知識201と同様であり、設計知識データベース104には、複数の設計知識が管理されているものとする。
【0017】
図3は、不具合情報109の例であり、製品やサービスの生産過程や市場で生じた不具合の情報に関して、不具合が生じた状況とその対処内容について、記載するものである。構造部301は、不具合情報の構造を示しており、例えば、不具合情報ID、設計機種、品名、分類、現象、原因、対処、再発防止策、対応コスト、対応工数などからなる。内容部は、各々の左に示す構造に対応する内容を格納している。
不具合情報IDは、不具合情報を一意に定める識別子の一例であり、不具合情報データベース103中に同じIDは一つしかない。
【0018】
図4は、技術シソーラス102の例であり、製品やサービスに関わる技術用語間の上位・下位関係や部分・全体関係などのシソーラスを記載する。技術シソーラス102は、例えば、「技術用語A401は、技術用語B402の用語関係403である」というような2項関係で表現できる。例えば、図4の表の2行目は、「長さは、仕様の下位概念である」ことを意味する。同様に、3行目と4行目は、各々、「重さは、仕様の下位概念である」、「モータは、圧縮機の部分である」ことを意味する。
【0019】
図5は、不具合情報・設計知識類似度情報111の例である。不具合情報・設計知識類似度情報は、類似度の判定対象とする不具合情報501毎に、設計知識の類似度一覧502が定まるという構造をもつ。
また、設計知識の類似度一覧502の2行目503は、「不具合情報IDが1001の不具合情報と設計知識IDが201の類似度が4である」ことを示す。同様に、3行目504と4行目505は、各々「不具合報告書IDが1001の不具合情報と設計知識IDが202の設計知識の類似度が3である」、「不具合報告書IDが1001の不具合情報と設計知識IDが301の類似度が1である」ことを示す。
【0020】
図6は、既存修正候補の不具合情報一覧画面112の例である。既存修正候補の不具合情報一覧画面は、不具合情報を行として、不具合情報ID、設計知識データベース104中の設計知識110において最も高い類似度、および不具合情報109の構造と内容から算定される重要度、スコアを列としてもつテーブルである。スコアは、最大類似度と重要度の関数であり、最大類似度が大きいほど大きく、また、重要度が大きいほど大きい値をもつ。図6では、例えば、スコア = 最大類似度 × 重要度 というスコア関数を用いて、計算されている。
【0021】
図7は、新規追加候補の不具合情報一覧画面114の例である。追加修正候補の不具合情報一覧画面は、不具合情報を行として、不具合情報ID、設計知識データベース104中の設計知識110において最も高い類似度、および不具合情報109の構造と内容から算定される重要度、スコアを列としてもつテーブルである。スコアは、最大類似度と重要度の関数であり、最大類似度が小さいほど大きく、また、重要度が大きいほど大きい値をもつ。図6では、スコア = 重要度 / 最大類似度 というスコア関数を用いて、計算されている。
【0022】
図8は、類似設計知識の一覧画面113の例であり、類似度の判定対象とする不具合情報501毎に、類似する設計知識110の一覧を類似度と共に表示することにより、既存の設計知識110の修正と、設計知識・不具合情報リンクの設計知識・不具合情報リンクデータベース107への追加を反映させるための画面である。
類似設計知識の一覧画面113は、登録対象となる不具合情報を示す部分である不具合情報部801と、修正・登録対象となる設計知識の一覧を示す部分である設計知識部802からなる。
【0023】
設計知識部802は、新規登録ボタン803と、不具合情報部801の不具合情報と類似した設計知識の一覧を表示する修正候補設計知識一覧部804がある。
新規登録ボタン803を押すと、不具合情報の分類を設計知識の分類とし、また、不具合情報の再発防止策を設計知識の内容とした設計知識を新たに作成し、設計知識データベース104でダブりのない新たな設計知識IDと共に、新たな設計知識を登録する。またその新たに取得した設計知識IDと、不具合情報部にある不具合情報へのリンクを設計知識・不具合情報リンクデータベース107に登録する。
修正候補設計知識一覧部804は、行が一つの設計知識110に対応している。その行中の修正登録ボタン805を押すことにより、その行の設計知識を修正することができると共に、新規に作成された設計知識から不具合情報部の不具合情報IDへのリンクを、設計知識・不具合情報リンクデータベース107に登録する。
【0024】
図9は、設計知識・不具合情報リンクデータベース107の例である。設計知識・不具合情報リンクデータベースは、設計知識から不具合情報へのリンクであり、設計知識IDと不具合情報IDの対からなる表である。
例えば、図9の2行目は、設計知識IDが201の設計知識から、不具合情報IDが12の不具合情報へのリンクを表現している。
【0025】
図10は、設計知識から不具合情報部の不具合情報IDへのリンクが登録された設計知識・不具合情報リンクデータベース107の例である。
【0026】
この発明の処理内容の概略は、図1の説明で記載したとおりであるが、以下では、図11、図12、図13を用いることにより、この発明の詳細の処理内容について説明する。
【0027】
図11は、この発明の類似度判定部101における類似度判定処理の詳細フローである。以下では、図3の不具合情報を対象として、図2の設計知識201,202,203を対象として、類似度判定する場合を例に説明する。
ステップS101は、不具合情報の構造解析であり、不具合情報を順に読みこみ、不具合報告書の構造を解析し、不具合報告の属性毎のテキストを抽出し、ステップS102に進む。
具体的には、図3の不具合報告書ID、製品機種、品名等の構造部と、その内容部の対の集合を抽出する。この例では、対<不具合報告書ID, 1001>、対<再発防止策,信号ケーブルの長さが適切かを確認する>などからなる対の集合を抽出する。
【0028】
ステップS102は、重要度計算処理であり、不具合情報に対処するために生じたコストに関わる構造の内容から、不具合情報の重要度を計算し、ステップS103に進む。例えば、図3の不具合情報の場合は、「重要度 = 対応コスト/対応コストの基本単位 + 対策工数/対策工数の基本単位」の算出式で、対応コストの基本単位=100万、対策工数の基本単位1MMとすると、重要度 = 200万/100万 + 1MM/1MM = 3 となる。
【0029】
ステップS103は、技術用語抽出処理であり、不具合報告書の構造「再発防止策」の内容であるテキストから技術用語を抽出し、ステップS104に進む。
この例では、テキスト「信号ケーブルの長さが適切かを確認する」から、技術用語として、「信号」、「ケーブル」、「長さ」を抽出する。
【0030】
ステップS104は、内容類似度計算処理であり、技術用語抽出処理で抽出した技術用語を技術用語シソーラス102を用いて、設計知識データベース104中の設計知識を検索し、照合の度合いに応じて、内容類似度を計算し、ステップS105に進む。ここでは、類似度を計算するスコアの例として、技術用語そのものを含む場合のスコアを1とし、技術用語シソーラスを用いて照合できるものを含む場合のスコアを0.5として、スコアの和を計算するものとする。
【0031】
設計知識ID 201には、技術用語「信号」を含み、また、長さは、技術シソーラス「仕様」の下位概念として照合するので、不具合情報IDが1001の不具合情報と設計知識IDが201の設計知識との内容類似度は、1.5となる。
【0032】
また、同様に、設計知識ID 202は、「信号」を含み、また、設計知識ID 203は、技術用語「ケーブル」を含むので、まとめると、
IDが1001の不具合情報とIDが201の設計知識との内容類似度 = 1.5
IDが1001の不具合情報とIDが202の設計知識との内容類似度 = 1
IDが1001の不具合情報とIDが301の設計知識との内容類似度 = 1
となる。
【0033】
ステップS105は、分類類似度計算処理であり、不具合情報の分類の内容と、設計知識の分類とを照合して、ステップS106に進む。ここでは、分類類似度を計算するスコアの例として、分類が一致する場合のスコアを1とし、分類が一致しない場合のスコアを0とすると、分類類似度は、下記のようになる。
【0034】
IDが1001の不具合情報とIDが201の設計知識との分類類似度 = 1
IDが1001の不具合情報とIDが202の設計知識との分類類似度 = 1
IDが1001の不具合情報とIDが203の設計知識との分類類似度 = 0
【0035】
ステップS106は、類似度計算処理であり、内容類似度と分類類似度を用いて、不具合情報と設計知識の類似度を計算し、不具合情報・設計知識類似度一覧表を作成して、ステップS107に進む。
ここでは、類似度 = 内容類似度/内容類似度の基本単位 + 分類類似度/分類類似度の基本単位とし、内容類似度の基本単位=1 分類類似度の基本単位=1とすると、
【0036】
IDが1001の不具合情報とIDが201の設計知識との類似度 = 2.5
IDが1001の不具合情報とIDが202の設計知識との類似度 = 2
IDが1001の不具合情報とIDが203の設計知識との類似度 = 1
【0037】
ステップS107は、不具合情報・設計知識類似度情報の一覧表生成処理であり、不具合情報毎に、不具合情報の重要度、不具合情報と設計知識との類似度を表にすることにより、不具合情報・設計知識類似度情報111を生成する。
ステップS102で得た重要度と、ステップS106で得た類似度から、図5の不具合情報に対する設計知識の類似度情報を得る。
【0038】
図12は、既存設計知識修正候補提示・登録部105の詳細処理フローである。
ステップS201は、既存修正スコア計算処理であり、類似度判定部101で計算した不具合情報毎の重要度と、設計知識との最大類似度から、既存修正スコアを計算する。
なお、既存修正スコアは、最大類似度が大きいほど大きく、また、重要度が大きいほど大きい評価関数により計算する。本例では、既存修正スコア = 最大類似度 × 重要度 というスコア関数を用いる。
類似度判定部101での類似度判定処理の結果が図5の不具合情報・設計知識類似度情報の場合には、不具合情報ID1001の重要度は3で、類似度の最大類似度が2.5なので、既存修正スコアは7.5となる。
【0039】
ステップS202は、既存修正候補の不具合情報一覧画面112の作成処理であり、既存修正スコアの大きいものから小さいものへ順に不具合情報を並べることにより、既存修正候補の不具合情報一覧画面を作成する。
図6は、既存修正候補の不具合情報一覧画面112の例であり、ステップS201で計算した不具合情報IDが1001の不具合情報は、既存修正スコアが7.5であり、図6の2行目に相当している。
【0040】
ステップS203は、類似設計知識一覧画面113の作成処理であり、既存修正候補の不具合情報一覧画面112の行を選択すると、行に対応する不具合情報に対する設計知識との類似度一覧表を参照し、類似設計知識一覧画面113を作成する。例えば、図6の601の行を押すと、図8の類似設計知識一覧画面801が得られる。
【0041】
ステップS204は、設計知識の修正とリンクの登録処理である。以下では、図6の既存修正候補不具合情報一覧画面112において、805の修正登録ボタンを押した場合の処理例を説明する。
まず、設計知識IDが201である設計知識から、不具合情報IDが1001である不具合情報へのリンクを設計知識・不具合情報リンクデータベース107に登録する。図9は登録前の設計知識・不具合情報リンクデータベースであり、図10は登録後の設計知識・不具合情報リンクデータベースである。
【0042】
続いて、図2の201に示す設計知識の編集画面に遷移する。設計知識管理者が、不具合情報IDが1001の不具合情報を参照しながら、201の設計知識を修正することができる。例えば、図2の204のように、設計知識の内容に、「表示装置の場合、信号ケーブルの長さが短いと、高温による出力波形なまりのため画面ちらつきが生じる場合がある」などを追記することにより、新たに生じた不具合情報を、設計知識に反映させることができる。
【0043】
図13は、設計知識新規追加候補提示・登録部106による新規設計知識追加候補提示・登録処理の詳細フローである。
ステップS301は、新規登録スコアの計算処理であり、類似度判定部101により類似性判定処理で計算した不具合情報毎の重要度と、設計知識との最大類似度から、新規登録スコアを計算する。
なお、新規登録スコアは、最大類似度が小さいほど大きく、また、重要度が大きいほど大きい評価関数により計算する。本例では、既存修正スコア = 重要度 / 最大類似度 というスコア関数を用いる。
類似性判定処理の結果が図5の不具合情報・設計知識類似度情報の場合には、不具合情報ID1001の重要度は3で、類似度の最大類似度が2.5なので、既存修正スコアは0.83となる。
【0044】
ステップS302は、設計知識新規追加候補提示・登録部106による新規追加候補不具合情報一覧画面114の作成処理であり、新規登録スコアの大きいものから小さいものへ順に不具合情報を並べることにより、既存修正候補の不具合情報一覧画面を作成する。
図7は、新規追加候補不具合情報一覧画面114の例であり、ステップS301で計算した不具合情報IDが1001の不具合情報は、既存修正スコアが0.83であり、図7の5行目に相当している。
【0045】
ステップS303は、設計知識の修正とリンクの登録処理であり、設計知識データベース104の設計知識110を追加すると共に、設計知識110の具体事例である不具合情報との関係リンクを設計知識・不具合情報リンクデータベース107に登録する。この処理はステップ204と同様の処理であり、説明を省略する。
【0046】
以上のように、不具合情報と既存の設計知識との類似性を判定する手段を設けることにより、不具合報告書から抽出した設計知識が新規であるか、また、既存のどの知識を修正すればよいかがわかるので、設計知識を効率的に作成できる。また、同時に、設計知識から不具合情報へのリンクにより、設計知識を守らない場合に、どのような不具合が生じるかがわかるので、設計者の設計ミスをより防止できると元に、品質改善のための設計部門での対策を検討する際にも役立つ。
【産業上の利用可能性】
【0047】
製品の開発から生産および市場における不具合や故障の情報に基づいて開発段階における開発設計課題を明確にして課題への対応を確実に行えるようにする設計知識である処のチェックリストを作成する際の設計知識作成支援装置に適用される。
【符号の説明】
【0048】
101;類似度判定部、102;技術用語シソーラス、103;不具合情報データベース、104;設計知識データベース、105;既存設計知識修正候補提示・登録部、106;設計知識新規追加候補提示・登録部、107;設計知識・不具合情報リンクデータベース、108;設計知識表示部、109;不具合情報、110;設計知識、111;不具合情報・設計知識類似度情報、112;不具合情報一覧画面、113;類似設計知識一覧画面、114;不具合情報一覧画面。
【技術分野】
【0001】
この発明は、企業における製品の設計品質の向上を目的として、製品不具合に関する情報から、設計者が設計のミスを防止するためのチェックリストを作成する作業を支援し、また、チェックリストを参照するための参考情報として関連する不具合情報を提示させることができる設計知識作成支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
企業にとっては、製品の設計品質を向上させ、製品に関わる不具合や事故を低減することは、社会的な責任であると共に、企業の信頼やコストに関わる重要な課題でもある。製品の品質を向上させるためには、従来から、製品不具合に関する情報を、設計者が設計のミスを防止するためのチェックリストや設計基準書等の設計知識として蓄積・活用することがなされてきた。しかし、設計知識を作成することは手間が大きいという課題があり、以下にあげるような設計知識を作成・活用するための技術が開示されている。
【0003】
特許文献1は、製品の生産現場および市場で発生する品質問題に対する対策検討結果を設計知識として、データベースに登録蓄積し、蓄積した設計知識は、製品品番、部品品番、部位、現象等にふくまれる文字列による検索を可能とし、さらに、製品の設計時に考慮すべき情報を、設計部門で事前チェックのためのチェックリストに反映させる技術が開示されている。
【0004】
特許文献2は、製品の生産現場および市場で発生する品質問題に対する対策検討結果を設計知識として、データベースに登録して蓄積し、特定された不良が発生する可能性の高い部品や原因、合わせて不具合の解消方法を提示することで、不具合の対策の実施を確実に行うことができる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-187069号公報 「品質問題フォロー方法およびシステム」
【特許文献2】特開2006-11744号公報 「不良再発防止装置、不良再発防止方法、プログラムおよび記憶媒体」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の特許文献1も特許文献2も、不具合情報から抽出した設計知識を、既存の設計知識に登録・改訂する際に、抽出された知識が新たな知識なのか、既存の知識なのかを判定するしくみがないので、設計知識を拡充していくプロセスを十分支援できないという課題があった。
【0007】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、不具合情報と既存の設計知識との類似性を判定する手段を新たに提案することにより、不具合報告書から抽出した設計知識が新規であるか、既存であるかを判定することを支援することで、設計知識の作成を効率化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る設計知識作成支援装置は、
生産過程や市場で生じた製品やサービスの不具合情報を管理する不具合情報データベースと、
製品やサービスの設計ミス防止用の設計知識を管理する設計知識データベースと、
製品やサービスに関わる技術用語間の上位・下位関係および部分・全体関係のシソーラスが記載された技術用語シソーラスと、
設計知識と不具合情報との関係リンクを管理する設計知識・不具合情報リンクデータベースと、
不具合情報、設計知識、および、技術用語シソーラスを入力して、不具合情報と設計知識の類似度を判定する類似度判定部と、
類似度判定部による不具合情報と設計知識の類似度と、不具合情報の構造と内容から算定される重要度を用いて、不具合情報毎に設計知識データベースの設計知識が追加修正可能な既存の設計知識の類似度一覧を提示すると共に、追加修正の設計知識と不具合情報との関係リンクを設計知識・不具合情報リンクデータベースに登録する既存設計知識修正候補提示・登録部と、
類似度判定部による不具合情報と設計知識の類似度と、不具合情報の構造と内容から算定される重要度を用いて、新規の設計知識を含む不具合情報の候補を提示し、かつ設計知識データベースの設計知識を新規登録すると共に、新規登録の設計知識と不具合情報との関係リンクを設計知識・不具合情報リンクデータベースに登録する設計知識新規追加候補提示・登録部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る設計知識作成支援装置によれば、
製品やサービスの不具合情報と、設計知識データベースからの設計知識と、技術用語間の上位・下位や部分・全体関係が定義されたシソーラスを入力し、不具合情報と設計知識の類似度を類似度判定部で判定し、類似度と不具合情報の重要度から、不具合情報毎に、既存設計知識の類似度一覧を提示し、この一覧を基に設計知識データベースに設計知識を追加修正し、かつ追加修正設計知識と不具合情報との関係リンクを設計知識・不具合情報リンクデータベースに登録する既存設計知識修正候補提示・登録部と、また、類似度と不具合情報の重要度から、新規設計知識の不具合情報候補を提示、設計知識データベースに設計知識を新規登録しかつ新規登録設計知識と不具合情報の関係リンクを設計知識・不具合情報リンクデータベースに登録する設計知識新規追加候補提示・登録部を備えるので、不具合報告書から抽出した設計知識が新規であるか、また、既存のどの知識を修正すればよいかがわかり、設計知識を効率的に作成できる。さらに、同時に、設計知識から不具合情報へのリンクにより、設計知識を守らない場合に、どのような不具合が生じるかがわかるので、設計者の設計ミスをより防止できると共に、品質改善のための設計部門での対策を検討する際にも役立つ効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1を示す基本構成図である。
【図2】設計知識例であり、製品やサービスの設計ミスを防止するためのチェック項目を示す図である。
【図3】不具合情報の例を示す図である。
【図4】技術用語シソーラスの例を示す図である。
【図5】不具合情報・設計知識類似度情報の例を示す図である。
【図6】既存修正候補の不具合情報一覧画面の例を示す図である。
【図7】新規追加候補の不具合情報一覧画面の例を示す図である。
【図8】類似設計知識の一覧画面の例を示す図である。
【図9】設計知識・不具合情報リンクデータベースの登録前の例を示す図である。
【図10】設計知識・不具合情報リンクデータベースの登録後の例を示す図である。
【図11】類似度判定処理の詳細フロー図である。
【図12】既存設計知識修正候補提示・登録処理の詳細フロー図である。
【図13】新規設計知識追加候補提示・登録処理の詳細フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1を示す基本構成図である。なお、以下の説明では、製品・サービスの設計の例として表示装置の電気回路分野を選択し説明するが、機械設計、信頼性・保全性など設計一般の分野に適用しうるものである。また、設計知識として、チェック項目を例として説明するが、例示するチェック項目と同様の文書構造や内容をもつ設計基準書、設計支援エキスパートシステムのルールなどにも適用しうるものである。さらに、不具合情報として、不具合報告書を例として説明するが、例示する不具合情報と類似の文書構造や内容をもつ試験フォローシート、不具合対策防止書などにも適用しうるものである。
【0012】
図1において、類似度判定部101は、製品やサービスに関わる技術用語間の上位・下位関係や部分・全体関係などのシソーラスを記載した技術用語シソーラス102を参照しながら、不具合情報データベース103における不具合情報109と、設計知識データベース104中の設計知識110の構造を利用して、不具合情報109と設計知識110の類似度を判定し、不具合情報・設計知識類似度情報111を生成する。
【0013】
既存設計知識修正候補提示・登録部105は、不具合情報・設計知識類似度情報111と、不具合情報109の構造と内容から算定される重要度を用いて、不具合情報109毎に、類似度の高い設計知識をもつ不具合情報の一覧である既存修正候補の不具合情報一覧画面112を提示する。そしてこの不具合情報一覧の中から選択された設計知識の修正に反映させる不具合情報を受理すると、選択された不具合情報に類似した設計知識の一覧を示す類似設計知識一覧画面113を提示し、設計知識データベース104の設計知識110の追加修正を実施すると共に、設計知識の具体事例である不具合情報109との関係リンクを設計知識・不具合情報リンクデータベース107に登録する。
【0014】
設計知識新規追加候補提示・登録部106は、不具合情報・設計知識類似度情報111と、不具合情報109の構造と内容から算定される重要度を用いて、新規の設計知識110を含む不具合情報109の候補の一覧である新規追加候補の不具合情報一覧画面114を提示し、設計知識データベース104の設計知識110を新規登録すると共に、設計知識110の具体事例である不具合情報109との関係リンクを設計知識・不具合情報リンクデータベース107に登録する。
【0015】
設計知識表示部108は、設計知識・不具合情報リンクデータベース107を入力として、設計知識毎に関連する不具合情報のリストを提示する。
【0016】
図2は、設計知識110の例であり、製品やサービスの設計ミスを防止するためのチェック項目を示している。設計知識201は、例えば、設計知識ID、分類、内容の構造をもつ。設計知識IDは、設計知識110を一意に定める識別子の一例であり、設計知識データベース104中に同じIDは一つしかない。分類は、電気回路、機械設計、信頼性・保全性などの、設計知識が対象とする分類領域を示す。内容は、設計知識の具体的な内容をテキスト、表、または、図等のイメージで記載したものである。
設計知識202, 設計知識203,設計知識204も、設計知識201と同様であり、設計知識データベース104には、複数の設計知識が管理されているものとする。
【0017】
図3は、不具合情報109の例であり、製品やサービスの生産過程や市場で生じた不具合の情報に関して、不具合が生じた状況とその対処内容について、記載するものである。構造部301は、不具合情報の構造を示しており、例えば、不具合情報ID、設計機種、品名、分類、現象、原因、対処、再発防止策、対応コスト、対応工数などからなる。内容部は、各々の左に示す構造に対応する内容を格納している。
不具合情報IDは、不具合情報を一意に定める識別子の一例であり、不具合情報データベース103中に同じIDは一つしかない。
【0018】
図4は、技術シソーラス102の例であり、製品やサービスに関わる技術用語間の上位・下位関係や部分・全体関係などのシソーラスを記載する。技術シソーラス102は、例えば、「技術用語A401は、技術用語B402の用語関係403である」というような2項関係で表現できる。例えば、図4の表の2行目は、「長さは、仕様の下位概念である」ことを意味する。同様に、3行目と4行目は、各々、「重さは、仕様の下位概念である」、「モータは、圧縮機の部分である」ことを意味する。
【0019】
図5は、不具合情報・設計知識類似度情報111の例である。不具合情報・設計知識類似度情報は、類似度の判定対象とする不具合情報501毎に、設計知識の類似度一覧502が定まるという構造をもつ。
また、設計知識の類似度一覧502の2行目503は、「不具合情報IDが1001の不具合情報と設計知識IDが201の類似度が4である」ことを示す。同様に、3行目504と4行目505は、各々「不具合報告書IDが1001の不具合情報と設計知識IDが202の設計知識の類似度が3である」、「不具合報告書IDが1001の不具合情報と設計知識IDが301の類似度が1である」ことを示す。
【0020】
図6は、既存修正候補の不具合情報一覧画面112の例である。既存修正候補の不具合情報一覧画面は、不具合情報を行として、不具合情報ID、設計知識データベース104中の設計知識110において最も高い類似度、および不具合情報109の構造と内容から算定される重要度、スコアを列としてもつテーブルである。スコアは、最大類似度と重要度の関数であり、最大類似度が大きいほど大きく、また、重要度が大きいほど大きい値をもつ。図6では、例えば、スコア = 最大類似度 × 重要度 というスコア関数を用いて、計算されている。
【0021】
図7は、新規追加候補の不具合情報一覧画面114の例である。追加修正候補の不具合情報一覧画面は、不具合情報を行として、不具合情報ID、設計知識データベース104中の設計知識110において最も高い類似度、および不具合情報109の構造と内容から算定される重要度、スコアを列としてもつテーブルである。スコアは、最大類似度と重要度の関数であり、最大類似度が小さいほど大きく、また、重要度が大きいほど大きい値をもつ。図6では、スコア = 重要度 / 最大類似度 というスコア関数を用いて、計算されている。
【0022】
図8は、類似設計知識の一覧画面113の例であり、類似度の判定対象とする不具合情報501毎に、類似する設計知識110の一覧を類似度と共に表示することにより、既存の設計知識110の修正と、設計知識・不具合情報リンクの設計知識・不具合情報リンクデータベース107への追加を反映させるための画面である。
類似設計知識の一覧画面113は、登録対象となる不具合情報を示す部分である不具合情報部801と、修正・登録対象となる設計知識の一覧を示す部分である設計知識部802からなる。
【0023】
設計知識部802は、新規登録ボタン803と、不具合情報部801の不具合情報と類似した設計知識の一覧を表示する修正候補設計知識一覧部804がある。
新規登録ボタン803を押すと、不具合情報の分類を設計知識の分類とし、また、不具合情報の再発防止策を設計知識の内容とした設計知識を新たに作成し、設計知識データベース104でダブりのない新たな設計知識IDと共に、新たな設計知識を登録する。またその新たに取得した設計知識IDと、不具合情報部にある不具合情報へのリンクを設計知識・不具合情報リンクデータベース107に登録する。
修正候補設計知識一覧部804は、行が一つの設計知識110に対応している。その行中の修正登録ボタン805を押すことにより、その行の設計知識を修正することができると共に、新規に作成された設計知識から不具合情報部の不具合情報IDへのリンクを、設計知識・不具合情報リンクデータベース107に登録する。
【0024】
図9は、設計知識・不具合情報リンクデータベース107の例である。設計知識・不具合情報リンクデータベースは、設計知識から不具合情報へのリンクであり、設計知識IDと不具合情報IDの対からなる表である。
例えば、図9の2行目は、設計知識IDが201の設計知識から、不具合情報IDが12の不具合情報へのリンクを表現している。
【0025】
図10は、設計知識から不具合情報部の不具合情報IDへのリンクが登録された設計知識・不具合情報リンクデータベース107の例である。
【0026】
この発明の処理内容の概略は、図1の説明で記載したとおりであるが、以下では、図11、図12、図13を用いることにより、この発明の詳細の処理内容について説明する。
【0027】
図11は、この発明の類似度判定部101における類似度判定処理の詳細フローである。以下では、図3の不具合情報を対象として、図2の設計知識201,202,203を対象として、類似度判定する場合を例に説明する。
ステップS101は、不具合情報の構造解析であり、不具合情報を順に読みこみ、不具合報告書の構造を解析し、不具合報告の属性毎のテキストを抽出し、ステップS102に進む。
具体的には、図3の不具合報告書ID、製品機種、品名等の構造部と、その内容部の対の集合を抽出する。この例では、対<不具合報告書ID, 1001>、対<再発防止策,信号ケーブルの長さが適切かを確認する>などからなる対の集合を抽出する。
【0028】
ステップS102は、重要度計算処理であり、不具合情報に対処するために生じたコストに関わる構造の内容から、不具合情報の重要度を計算し、ステップS103に進む。例えば、図3の不具合情報の場合は、「重要度 = 対応コスト/対応コストの基本単位 + 対策工数/対策工数の基本単位」の算出式で、対応コストの基本単位=100万、対策工数の基本単位1MMとすると、重要度 = 200万/100万 + 1MM/1MM = 3 となる。
【0029】
ステップS103は、技術用語抽出処理であり、不具合報告書の構造「再発防止策」の内容であるテキストから技術用語を抽出し、ステップS104に進む。
この例では、テキスト「信号ケーブルの長さが適切かを確認する」から、技術用語として、「信号」、「ケーブル」、「長さ」を抽出する。
【0030】
ステップS104は、内容類似度計算処理であり、技術用語抽出処理で抽出した技術用語を技術用語シソーラス102を用いて、設計知識データベース104中の設計知識を検索し、照合の度合いに応じて、内容類似度を計算し、ステップS105に進む。ここでは、類似度を計算するスコアの例として、技術用語そのものを含む場合のスコアを1とし、技術用語シソーラスを用いて照合できるものを含む場合のスコアを0.5として、スコアの和を計算するものとする。
【0031】
設計知識ID 201には、技術用語「信号」を含み、また、長さは、技術シソーラス「仕様」の下位概念として照合するので、不具合情報IDが1001の不具合情報と設計知識IDが201の設計知識との内容類似度は、1.5となる。
【0032】
また、同様に、設計知識ID 202は、「信号」を含み、また、設計知識ID 203は、技術用語「ケーブル」を含むので、まとめると、
IDが1001の不具合情報とIDが201の設計知識との内容類似度 = 1.5
IDが1001の不具合情報とIDが202の設計知識との内容類似度 = 1
IDが1001の不具合情報とIDが301の設計知識との内容類似度 = 1
となる。
【0033】
ステップS105は、分類類似度計算処理であり、不具合情報の分類の内容と、設計知識の分類とを照合して、ステップS106に進む。ここでは、分類類似度を計算するスコアの例として、分類が一致する場合のスコアを1とし、分類が一致しない場合のスコアを0とすると、分類類似度は、下記のようになる。
【0034】
IDが1001の不具合情報とIDが201の設計知識との分類類似度 = 1
IDが1001の不具合情報とIDが202の設計知識との分類類似度 = 1
IDが1001の不具合情報とIDが203の設計知識との分類類似度 = 0
【0035】
ステップS106は、類似度計算処理であり、内容類似度と分類類似度を用いて、不具合情報と設計知識の類似度を計算し、不具合情報・設計知識類似度一覧表を作成して、ステップS107に進む。
ここでは、類似度 = 内容類似度/内容類似度の基本単位 + 分類類似度/分類類似度の基本単位とし、内容類似度の基本単位=1 分類類似度の基本単位=1とすると、
【0036】
IDが1001の不具合情報とIDが201の設計知識との類似度 = 2.5
IDが1001の不具合情報とIDが202の設計知識との類似度 = 2
IDが1001の不具合情報とIDが203の設計知識との類似度 = 1
【0037】
ステップS107は、不具合情報・設計知識類似度情報の一覧表生成処理であり、不具合情報毎に、不具合情報の重要度、不具合情報と設計知識との類似度を表にすることにより、不具合情報・設計知識類似度情報111を生成する。
ステップS102で得た重要度と、ステップS106で得た類似度から、図5の不具合情報に対する設計知識の類似度情報を得る。
【0038】
図12は、既存設計知識修正候補提示・登録部105の詳細処理フローである。
ステップS201は、既存修正スコア計算処理であり、類似度判定部101で計算した不具合情報毎の重要度と、設計知識との最大類似度から、既存修正スコアを計算する。
なお、既存修正スコアは、最大類似度が大きいほど大きく、また、重要度が大きいほど大きい評価関数により計算する。本例では、既存修正スコア = 最大類似度 × 重要度 というスコア関数を用いる。
類似度判定部101での類似度判定処理の結果が図5の不具合情報・設計知識類似度情報の場合には、不具合情報ID1001の重要度は3で、類似度の最大類似度が2.5なので、既存修正スコアは7.5となる。
【0039】
ステップS202は、既存修正候補の不具合情報一覧画面112の作成処理であり、既存修正スコアの大きいものから小さいものへ順に不具合情報を並べることにより、既存修正候補の不具合情報一覧画面を作成する。
図6は、既存修正候補の不具合情報一覧画面112の例であり、ステップS201で計算した不具合情報IDが1001の不具合情報は、既存修正スコアが7.5であり、図6の2行目に相当している。
【0040】
ステップS203は、類似設計知識一覧画面113の作成処理であり、既存修正候補の不具合情報一覧画面112の行を選択すると、行に対応する不具合情報に対する設計知識との類似度一覧表を参照し、類似設計知識一覧画面113を作成する。例えば、図6の601の行を押すと、図8の類似設計知識一覧画面801が得られる。
【0041】
ステップS204は、設計知識の修正とリンクの登録処理である。以下では、図6の既存修正候補不具合情報一覧画面112において、805の修正登録ボタンを押した場合の処理例を説明する。
まず、設計知識IDが201である設計知識から、不具合情報IDが1001である不具合情報へのリンクを設計知識・不具合情報リンクデータベース107に登録する。図9は登録前の設計知識・不具合情報リンクデータベースであり、図10は登録後の設計知識・不具合情報リンクデータベースである。
【0042】
続いて、図2の201に示す設計知識の編集画面に遷移する。設計知識管理者が、不具合情報IDが1001の不具合情報を参照しながら、201の設計知識を修正することができる。例えば、図2の204のように、設計知識の内容に、「表示装置の場合、信号ケーブルの長さが短いと、高温による出力波形なまりのため画面ちらつきが生じる場合がある」などを追記することにより、新たに生じた不具合情報を、設計知識に反映させることができる。
【0043】
図13は、設計知識新規追加候補提示・登録部106による新規設計知識追加候補提示・登録処理の詳細フローである。
ステップS301は、新規登録スコアの計算処理であり、類似度判定部101により類似性判定処理で計算した不具合情報毎の重要度と、設計知識との最大類似度から、新規登録スコアを計算する。
なお、新規登録スコアは、最大類似度が小さいほど大きく、また、重要度が大きいほど大きい評価関数により計算する。本例では、既存修正スコア = 重要度 / 最大類似度 というスコア関数を用いる。
類似性判定処理の結果が図5の不具合情報・設計知識類似度情報の場合には、不具合情報ID1001の重要度は3で、類似度の最大類似度が2.5なので、既存修正スコアは0.83となる。
【0044】
ステップS302は、設計知識新規追加候補提示・登録部106による新規追加候補不具合情報一覧画面114の作成処理であり、新規登録スコアの大きいものから小さいものへ順に不具合情報を並べることにより、既存修正候補の不具合情報一覧画面を作成する。
図7は、新規追加候補不具合情報一覧画面114の例であり、ステップS301で計算した不具合情報IDが1001の不具合情報は、既存修正スコアが0.83であり、図7の5行目に相当している。
【0045】
ステップS303は、設計知識の修正とリンクの登録処理であり、設計知識データベース104の設計知識110を追加すると共に、設計知識110の具体事例である不具合情報との関係リンクを設計知識・不具合情報リンクデータベース107に登録する。この処理はステップ204と同様の処理であり、説明を省略する。
【0046】
以上のように、不具合情報と既存の設計知識との類似性を判定する手段を設けることにより、不具合報告書から抽出した設計知識が新規であるか、また、既存のどの知識を修正すればよいかがわかるので、設計知識を効率的に作成できる。また、同時に、設計知識から不具合情報へのリンクにより、設計知識を守らない場合に、どのような不具合が生じるかがわかるので、設計者の設計ミスをより防止できると元に、品質改善のための設計部門での対策を検討する際にも役立つ。
【産業上の利用可能性】
【0047】
製品の開発から生産および市場における不具合や故障の情報に基づいて開発段階における開発設計課題を明確にして課題への対応を確実に行えるようにする設計知識である処のチェックリストを作成する際の設計知識作成支援装置に適用される。
【符号の説明】
【0048】
101;類似度判定部、102;技術用語シソーラス、103;不具合情報データベース、104;設計知識データベース、105;既存設計知識修正候補提示・登録部、106;設計知識新規追加候補提示・登録部、107;設計知識・不具合情報リンクデータベース、108;設計知識表示部、109;不具合情報、110;設計知識、111;不具合情報・設計知識類似度情報、112;不具合情報一覧画面、113;類似設計知識一覧画面、114;不具合情報一覧画面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産過程や市場で生じた製品やサービスの不具合情報を管理する不具合情報データベースと、
製品やサービスの設計ミス防止用の設計知識を管理する設計知識データベースと、
製品やサービスに関わる技術用語間の上位・下位関係および部分・全体関係のシソーラスが記載された技術用語シソーラスと、
設計知識と不具合情報との関係リンクを管理する設計知識・不具合情報リンクデータベースと、
不具合情報、設計知識、および、技術用語シソーラスを入力して、不具合情報と設計知識の類似度を判定する類似度判定部と、
類似度判定部による不具合情報と設計知識の類似度と、不具合情報の構造と内容から算定される重要度を用いて、不具合情報毎に、既存の設計知識の類似度一覧を提示し、この一覧を基に設計知識データベースの設計知識を追加修正すると共に、追加修正の設計知識と不具合情報との関係リンクを設計知識・不具合情報リンクデータベースに登録する既存設計知識修正候補提示・登録部と、
類似度判定部による不具合情報と設計知識の類似度と、不具合情報の構造と内容から算定される重要度を用いて、新規の設計知識を含む不具合情報の候補を提示し、かつ設計知識データベースの設計知識を新規登録すると共に、新規登録の設計知識と不具合情報との関係リンクを設計知識・不具合情報リンクデータベースに登録する設計知識新規追加候補提示・登録部と、
を備えることを特徴とする設計知識作成支援装置。
【請求項2】
設計知識・不具合情報リンクデータベースを入力として、設計知識毎に関連する不具合情報のリストを提示する設計知識表示部を備えることを特徴とする請求項1に記載の設計知識作成支援装置。
【請求項1】
生産過程や市場で生じた製品やサービスの不具合情報を管理する不具合情報データベースと、
製品やサービスの設計ミス防止用の設計知識を管理する設計知識データベースと、
製品やサービスに関わる技術用語間の上位・下位関係および部分・全体関係のシソーラスが記載された技術用語シソーラスと、
設計知識と不具合情報との関係リンクを管理する設計知識・不具合情報リンクデータベースと、
不具合情報、設計知識、および、技術用語シソーラスを入力して、不具合情報と設計知識の類似度を判定する類似度判定部と、
類似度判定部による不具合情報と設計知識の類似度と、不具合情報の構造と内容から算定される重要度を用いて、不具合情報毎に、既存の設計知識の類似度一覧を提示し、この一覧を基に設計知識データベースの設計知識を追加修正すると共に、追加修正の設計知識と不具合情報との関係リンクを設計知識・不具合情報リンクデータベースに登録する既存設計知識修正候補提示・登録部と、
類似度判定部による不具合情報と設計知識の類似度と、不具合情報の構造と内容から算定される重要度を用いて、新規の設計知識を含む不具合情報の候補を提示し、かつ設計知識データベースの設計知識を新規登録すると共に、新規登録の設計知識と不具合情報との関係リンクを設計知識・不具合情報リンクデータベースに登録する設計知識新規追加候補提示・登録部と、
を備えることを特徴とする設計知識作成支援装置。
【請求項2】
設計知識・不具合情報リンクデータベースを入力として、設計知識毎に関連する不具合情報のリストを提示する設計知識表示部を備えることを特徴とする請求項1に記載の設計知識作成支援装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−221568(P2011−221568A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86256(P2010−86256)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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