診断システム及び診断装置
【課題】人体を撮像した画像を解析して人体の状態を診断する診断システムにおいて、人体の状態に対して最適な診断をすることができる診断システムの提供を目的とする。
【解決手段】診断システム1に、特定の色光の光源で被写体を照射する照射部5と、前記光源による被写体の反射光を撮像する撮像部6と、前記撮像部6の撮像により取得した画像データを解析する画像解析部15と、解析された画像データと予め設定された複数の条件を比較して被写体の状態を判断する判断部16を備える。
【解決手段】診断システム1に、特定の色光の光源で被写体を照射する照射部5と、前記光源による被写体の反射光を撮像する撮像部6と、前記撮像部6の撮像により取得した画像データを解析する画像解析部15と、解析された画像データと予め設定された複数の条件を比較して被写体の状態を判断する判断部16を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は診断システム及び診断装置に関し、特に被験者の各部位の撮影画像から医療診断などを行う診断システム及び診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、被験者(被写体)をセンサやCCDカメラなどによって撮像し、これにより得られた画像データを解析して医療診断や美容診断などを行う診断システムが開発されている。
【0003】
例えば、本出願人は、先に、撮像装置によって撮像した被験者の画像データを画素値に変換し、この画素値を解析して均等色空間データに変換し、得られた均等色空間データを予め取得しておいた正常(健康)状態のデータと比較し、正常状態のデータからある一定の尺度で離れている場合には撮像した被験者が異常(不健康)状態であると判断する診断システムを提供した(特許文献1参照)。
【特許文献1】特願2004−366508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1は、被験者の状態が正常状態であるか異常状態であるかを判断するだけに留まるものであり、被験者の状態に適した診断をするためには更なる改良が必要であった。
【0005】
本発明は上述した点に鑑み、被験者を撮像した画像を解析して被験者の状態を診断する診断システム及び診断装置において、被験者の状態に対して最適な診断をすることができる診断システム及び診断装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明の診断システムは、特定の色光の光源により被写体を照射する照射部と、被写体を撮像する撮像部と、前記照射部により照射された被写体を前記撮像部により撮像し、前記撮像により取得した画像データを解析する画像解析部と、前記画像解析部により解析された画像データと予め設定された複数の条件を比較して被写体の状態を判断する判断部と、を有することを特徴とする診断システム。
【0007】
また、上記課題を解決するため本発明の診断装置は、特定の色光の光源により被写体を照射する照射部と、前記照射部により照射された被写体を撮像する撮像部とを有する撮像装置に接続される診断装置であって、前記撮像装置から取得した被写体の画像データを解析する画像解析部と、前記画像解析部により解析された画像データと予め設定された複数の条件を比較して被写体の状態を判断する判断部と、を有することを特徴とする。
【0008】
上記本発明の診断システム及び診断装置によれば、人体を撮像した画像データに基づいて人体の状態を複数の状態から判断するので、人体の状態が正常、異常の2通りだけではなくより詳細に判断することができ、人体の状態に最適な診断をすることが可能となる。また、人体の病変や異常は人体表面の分光スペクトルの狭い帯域の特性に現れるが、そうした帯域の影響が強調できる特定の色光によって被写体を照射して撮像するので、画像データから病変や異常を検出しやすくなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被写体の状態を詳細に判断することができるので、被写体の状態に最適な診断をすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本発明を実施するための形態の説明において用いる用語や断定的な記載により、本発明の技術的範囲が限定されることはない。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の診断システム1には撮像装置2が備えられており、撮像装置2には互いに通信可能なネットワークを介して診断装置13が接続されている。さらに、診断装置13には互いに通信可能なネットワークを介して一つ以上の外部装置25が接続されている。なお、撮像装置2についても外部装置25と通信可能な構成にすることも可能である。
【0012】
本実施形態におけるネットワークはデータ通信可能である通信網を意味するものであれば特に限定されず、例えばインターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、電話回線網、ISDN(Integrated Services Digital Network)回線網、CATV(Cable Television)回線、光通信回線などを含めることができる。また、有線のみならず無線によって通信可能な構成としても良い。
【0013】
外部装置25とはパーソナルコンピュータなどであり、何らかのコンサルティングや診断が受けられる場所に設置されていることが望ましい。例えば、本実施形態に係る診断システム1で健康に関するデータを得る場合は、病院や健康管理施設などの公共施設に設置しておくことが考えられる。また、美容に関するデータの場合は、コスメティック関係の店や施設・病院などに設置しておくことが考えられる。また、外部装置25をコンサルティング情報が得られるインターネットサイトや、コンサルタントや医師、店員などの携帯端末として構成しても良い。
【0014】
図2に示すように、本実施形態の診断システム1が備える撮像装置2には以下の各構成部分が設けられている。
【0015】
外部通信部3は、有線又は無線の通信手段により診断装置13及び外部装置25と情報通信ができるように構成されている。この外部通信部3を経由して、画像解析の結果や画像データ、バイタルデータなどを診断装置13に送信するようになっている。
【0016】
画像表示部4は、CRT,液晶,有機EL,プラズマ又は投影方式などのディスプレイから構成され、撮影画像の他、外部装置25から与えられた情報、画像処理によって得られた情報又は撮像装置2の各構成部分の状態に関する情報などを表示するようになっている。また、撮影画像から異常データが検出された際の警告を表示することや、音声手段により異常データの検出を音声で知らせることが可能な構成とすることもできる。
【0017】
照射部5は、図3に示すように、画像表示部4の周辺縁部に設けられている。このような構成により、被験者に対して様々な方向から照明光を与えることができ、比較的照明むらの少ない画像を得ることができるようになっている。また、画像表示部4の周辺端部の上部のみ又は左右部のみに照射部5を配置しても良い。なお、画像表示部4に近接しない場所に照射部5を配置することも可能である。
【0018】
図4は図3に示す照射部5の点線部分を拡大した図である。図4に示すように、本実施形態の照射部5にはそれぞれ異なる色光を発光する矩形光源が配列されている。そして、一点鎖線部に示すような所定のエリアの光源を組み合わせたものを1つの色光セットとし、この色光セットを図5に示すように画像表示部2の周辺縁部に配列している。このような構成により、被験者に光源からの各色光を均等に照射できるようになっている。なお、矩形光源ではなく円形光源や棒状光源を使用することも可能である。
【0019】
照射部5が備える光源としては、蛍光ランプ,白熱電球,LED,レーザー,有機ELなどの人工光源などを使用することが可能であるが、撮影画像への周辺環境光の影響を抑えるために、強度が強いストロボ、高輝度LEDなどの光源を使うことが望ましい。また、光源は可視光域だけでなくその周辺(紫外域、近赤外、赤外領域)にも発光特性をもつものが望ましい。また、環境光の影響をできるだけ抑えるためにはストロボのような輝度の高い光を照射できる光源であることが望ましいが、被験者の動画を撮像する場合は、強度やスペクトルなどの特性が長時間安定した光を照射できる光源であることが望ましい。また、点光源より線・面光源としたほうが、被験者に対して空間的に強度の分布が抑えられた光を得ることができるので、被験者への照明むらが抑えられて望ましい画像が得られる。
【0020】
本実施形態の光源としては、図6に示すような発光特性をもつLEDのうち2種類(色光A及び色光B)のものを用い、図7にこのLEDの特性を示す。こういった特性をもつLEDは、例えば、色光Aとして株式会社東芝のTLPGE1100B(ピーク波長562nm、半値幅11nm)、色光BとしてTLSHシリーズ(ピーク波長623nm、半値幅13nm)などがあるが、その他市販されている各社のLEDを使用することも可能である。なお、白色光源を干渉フィルタと共に使用して光源として用いることもでき、白色光源の前面に1枚以上の干渉フィルタを配置し、照明光の特性を狭帯域化させることで、任意の波長の光源を得ることができる。干渉フィルタとしては、Omega Optical社のバンドパスフィルタなど市販されている各社のフィルタを用いることができる。
【0021】
なお、照射部5は、顔領域の画像を撮像する際に被験者を照明する機能を果たす他、被験者の瞳孔の動きを撮像する際に、照明の強さや波長を急激に変化させ、その照射前後の瞳孔の動きを計測することにより正常か異常かを判断することを可能とする機能も果たすことができるようになっている。
【0022】
図8及び図9に被験者の特定部位(a)及び別の特定部位(b)が健康(正常)状態と不健康(異常)状態であるときの分光反射率を示す。一般に、被験者に異常がある場合は体の組織や構成が変化するため、被写体表面における分光反射率が正常状態と異なる。
【0023】
図8に示す特定部位(a)の例では、正常状態と異常状態は低波長側(色光Aの帯域に重なる)において分光反射率の差異が大きく、図9に示す特定部位(b)の例では、中域から高域(色光Bの帯域に重なる)において分光反射率の差異が大きくなっている。このように、どの波長領域において分光反射率が異なるかは被写体依存である。
【0024】
そして、色光A及び色光Bを被験者の特定部位(a)に対して照射すると、被験者の反射光のスペクトルは、図10に示すように色光A又は色光Bと被写体の分光反射率の積となっている。同様に、色光A及び色光Bを被験者の他の特定部位(b)に対して照射すると、被写体の反射光のスペクトルは、図11に示すように色光A又は色光Bと被写体の分光反射率の積となっている。
【0025】
図2に戻り、撮像部6は、CCDやCMOSなどの撮像素子により静止画又は動画を取得することができる1つ又は複数のカメラによって構成されている。また、例えば、デジタルカメラ、ビデオカメラ、その他携帯電話などに付属のカメラモジュールにより構成しても良い。なお、被験者の画像は、被験者の立ち位置や身長に関わらず安定した構図で撮像することが望ましい。そこで、本実施形態では、図12に示すように複数の撮像部6を等間隔に配置して被験者を撮像し、複数の撮影画像を合成して良い構図の画像を出力するように構成されるのが好ましい。また、図13に示すように、1台の撮像部6の位置を三次元的に調整できる機構を設けて、被験者の頭部・顔などを撮像可能なように構成しても良い。また、図14に示すように、多数のカメラモジュールの組み合わせで撮像部6を構成し、被験者を一括撮像して、所定の構図の画像を切り出すことができるように構成しても良い。
【0026】
さらに、上述のように構図が固定された画像ではなく、被験者の動きと連動して構図が変わるような画像を得ることが望ましい場合、例えば被験者が表示画面に近づくとアップになる場合などは、1つ以上のカメラで撮像された画像を合成し、表示座標の原点を固定してそのまま表示するように構成すれば良い。
【0027】
また、本実施形態の撮像部6は3個の画像チャンネル数を備えているが、3個以上の画像チャンネルをもつマルチチャンネル(マルチバンド)としても良い。
【0028】
また、撮像部6は被写体表面の反射光を撮像して、RGB画像のR,G,B各信号に対応する各チャンネルの画素値に変換するようになっている。上述のように、被験者の特定部位(a)における正常状態と異常状態の分光反射率は図10に示すようになるが、この色光A又は色光Bに起因する反射光を撮像部6で撮像し、チャンネル1及びチャンネル2により反射光を分離すると、図15に示すように各チャンネルの画素値を得ることができる。同様に、被験者の他の特定部位(b)における分光反射率は図11に示すようになるが、色光A又は色光Bに起因する反射光を分離すると、図16に示すように画素値を得ることができる。
【0029】
ここで、色光A又は色光Bに起因する反射光の分離は各チャンネルの帯域の違いによって行っている。例えば、色光AはRGBのうちチャンネル1の帯域に含まれ、色光Bはチャンネル2の帯域に含まれる。また、色光Aと色光Bの発光のタイミングをずらして撮像することにより分離することも可能である。
【0030】
このように、色光A又は色光Bに起因する反射光を分離することで、被験者の特定部位(a)の撮影画像はチャンネル1において、特定部位(b)の撮影画像はチャンネル2において、正常状態及び異常状態における画素値の分離が容易となっている。
【0031】
図2に戻り、周辺環境情報取得部7は、環境情報取得手段としての計測計を備え、撮像装置2が設置される周辺環境の情報を取得して撮影画像の解析時に異常データの判別を支援することができるようになっている。ここで周辺環境とは、環境照明光の強度や特性,気温や水温などの温度,湿度,気圧,などをいう。また、環境照明光の取得方法としては、(a)照度計タイプ(b)スペクトル計測計タイプ(c)色温度計測タイプなどがあるが、全てを包含できる(b)のタイプが望ましい。また、その他の温度、湿度、気圧については、それぞれを計測する計測器具やセンサを用いても良いし、ネットワークを通じて外部装置25から情報を入手しても良い。
【0032】
I/O部8は、バイタル情報取得手段としてのバイタルセンサ(体温計、体重計、体脂肪率計、血圧計、心電計、肌年齢計測計、骨密度計、肺活量計など)や、CFカード、SDカード、USBメモリカードなどの可搬型デバイスを扱う機器を接続できるように構成されており、これらの機器から計測データや画像データの入出力を行うようになっている。なお、バイタルセンサは撮像装置2の一部分として構成することも可能である。
【0033】
また、I/O部8に接続したバイタルセンサを刺激付加手段として、被験者に刺激を付加した前後の経時変化を撮像し、その画像から被験者の正常状態と異常状態を区別することもできる。ここで刺激とは、光を与える、押す、圧力を加える、温度を変える、香りを加える、音を加える、針などで刺す、物を塗る、物を注入する、などを指す。例えば、圧力センサなどにより肌の一部を圧迫し、圧迫前後の状態を計測することにより、各計測値の変化量を特徴データとして平常状態と異常状態を区別することができる。また、皮膚を水やお湯、もしくは遠赤外線などにより温め、その前後の状態を観察することで、血液の流れの変化を測定し、その変化の仕方が正常時と相違するか否かを判断することもできる。
【0034】
メモリ部9は、RAM、ROMなどから構成され、撮像装置2の各構成部分における処理に必要なデータを一時的に蓄えることによって、撮像装置2を高速かつ安定に動作させることができる。また、後述する個人認証により個人を特定するために、個人の顔領域画像、顔の三次元形状の計測値、その他特徴的な情報(めがねの使用、ほくろ、しみなどの情報)などの認証情報やこの認証情報に対応して基本情報(名前、身長、体重、年齢など)を記憶している。
【0035】
データ処理部10は、撮像部6で撮像した被験者の各部位の画像、周辺環境情報取得部7で取得した周辺環境情報、I/O部8から入力された計測データや画像データなどのデータ処理を行う。
【0036】
すなわち、データ処理部10は撮影画像の中から診断の対象となる興味領域の抽出を行う。例えば、興味領域が被験者の顔である場合は、予めメモリ部9に登録されている被験者の標準的な顔画像をテンプレートの基本画像とし、そのテンプレートを画面左上からラスター操作を行いテンプレートと画像の相関が一番高い箇所を顔領域とする。また、興味領域から更に部位を指定する場合は、被験者が顔枠を矩形ポインタなどで囲んで指定する手段や、被験者がポイントを指定すると、指定位置を中心として所定の大きさの矩形が表示される指定手段などを設けることも可能である。そして、興味領域の抽出を行うと、データ処理部10は外部通信部3を経由して診断装置13にその興味領域の画像を送信する。
【0037】
また、データ処理部10は、環境光の特性が変わっても見た目的に色再現の安定した画像を表示するために、環境光の特性を周辺環境情報取得部7で取得し、その色彩データに応じて表示白色の色度点や明るさを調整するようになっている。すなわち、周辺環境光や光源の特性に関わらず、安定した色再現で画像を表示するために、これらの特性を補正(キャリブレーション)する。通常、キャリブレーションではテストパターンを撮像し、その撮像データが別途指定の設定値になるように補正するが、比較的高価で保管しにくいテストパターンを使用しないで同じ処理ができるほうが望ましい。そこで、経時的にほとんど変化しないと思われる、被験者の歯や画像撮像時の背景データを使用することができる。その際、同一装置に複数の被験者が登録されている場合は被験者ごとに歯のデータを登録しておく必要がある。
【0038】
また、データ処理部10には、撮像部6において同じ構図で被験者を撮像する場合において、被験者がカメラの光軸方向に動く場合に、照明のあたり方によって画面上の被験者の明るさや大きさが変わらないように、それを補正する機能が設けられている。この場合においては、撮像部6で撮像された画像から撮像装置2と被験者との距離を推定する。測定方法としては、三次元測量法、ステレオ計測法などの一般的な方法を使用することができる。また、カメラでよく使われるレーザー測光用機器を撮像装置2に取り付けて計測しても良い。また、撮影画像による距離推定を各画素で行うことで、被験者の三次元形状の推定が可能となる。各画素における被験者とカメラとの距離がわかると、光源と被験者との距離が画素ごとに得られるので、より正確・詳細に表示画像の明るさを補正することができる。
【0039】
また、データ処理部10は、被験者の個人認証のために撮影画像から個人の特定を行うようになっている。すなわち、撮像部6で撮像された画像を解析し、メモリ部9に登録されている個人データから自動的に照合して個人を特定することができるように構成されている。この特定は、例えば顔部位を抽出した後に個人に合わせた基本となるテンプレート画像と抽出された画像との相関をとり比べることによって行う。
【0040】
ユーザインターフェイス部11は、キーボード、マウス、トラックボールなどから構成され、被験者の指示入力を可能とすると共に、被験者に撮像装置2の状況や要求を伝達することを可能としている。なお、被験者の負担が少ない装置構成とすることが望ましいことから、画像表示部4と一体にしてタッチパネルとしてユーザインターフェイス部11を構成することもできる。また、スピーカーやマイクなどの音響設備を備えることにより被験者の音声によってコミュニケートできる構成とすることが望ましい。
【0041】
また、ジェスチャ(身振りや手振り、また手話など高度なコミュニケート手段も含む)などの被験者の意思を表す動作により指示入力を可能とする構成であることが望ましい。具体的には、撮像部6により被験者の動作を撮影し、データ処理部10により撮影画像のエッジを抽出して被験者の部位を特定し、部位に含まれる特徴点の推移を解析することで、被験者の意思通りの入力が可能となる。例えば、撮影画像が被験者の顔画像であった場合、この顔画像に含まれるあご、鼻の頭、額を特徴点とし、これらの特徴点が垂直方向に振動していると解析されると、被験者が首を縦に振っているので、「はい」を意味すると判断する。また、撮影画像が被験者の手の画像であった場合、手の人差し指を特徴点とし、特徴点が推定方向に振動していると計測されると、指を横に振っているので、「いいえ」を意味すると判断する。
【0042】
このように、ジェスチャなどの被験者の意思を表す動作により指示入力が可能となる構成にすることにより、被験者が口のきけない人や目の悪い人であっても容易に望み通りの処理を行わせることができる。
【0043】
なお、図23に示すジェスチャ解析テーブルは、予めメモリ部9に記憶されており、ユーザインターフェイス部11のマウスやキーボードを用いて、被験者が随時、修正、追加できるように構成されている。また、被験者の国籍、経済圏、文化圏、戸籍、年齢、性別などの属性により、ジェスチャの意味する内容が異なる場合がある。例えば、首を縦に振る動作は、国によって「はい」を意味する場合もあれば、「いいえ」を意味する場合もある。また、手でOKサインを出す動作は、「はい」を意味する場合もあれば、「お金」や「数字の0」を意味する場合もある。したがって、このような被験者の属性により意味が異なるジェスチャを使用する場合は、予めメモリ部9に被験者の基本情報に対応して属性を記録しておくことが望ましい。
【0044】
また、ジェスチャを解析するための撮影画像は、必ずしも動画である必要はなく、静止画であっても構わない。例えば、図24に示すように、画像表示部4に複数の項目を表示しておき、被験者が立てている指の本数を解析することにより、複数の項目の中から一つを選択することができる。また、上、下、左、右など被験者の指が指す向きを解析し、この向きに合わせてカーソルを動かして複数の項目の中から一つを選択しても良い。また、撮影部6により被験者の意思を表す動作を撮像する際は、照射部5による色光の種類は特に限定されない。
【0045】
ユーザインターフェイス部11では、例えば被験者の撮像時において、撮影画像による診断の興味領域が舌であった場合、被験者に舌をだすように音声もしくは文字で指示し、口の動きから舌がでたことを推測して撮像部6により撮像させることもできる。
【0046】
また、データ処理部10において撮影画像の中から診断の対象となる興味領域の抽出を行い、さらに興味領域から部位を指定する場合において、インターフェイス部11において被験者が顔枠を矩形ポインタなどで囲んで指定する手段や、被験者がポイントを指定すると指定位置を中心として所定の大きさの矩形が表示される指定手段などを設けることができる。
【0047】
また、ユーザインターフェイス部11には、撮影画像の解析時に異常データの判別を支援する目的でデータ取得手段が設けられている。例えば、ユーザインターフェイス部11において撮像ごとに問診を行えるシステムを構築しておくことができる。具体的には、単純に健康、不調を区別するボタンを押すようにするだけでも良い。その際に取得するデータ内容としては、現在の体調の自己判断(体が重い、熱がある、寒気がする、など)や、調子に関わる個人データ(睡眠時間や飲酒、喫煙、投薬情報など)が含まれる。音声で対話式に取得してもいいし、画像表示部4に問診票を表示してタッチパネルなどのユーザインターフェイス部11の入力により取得しても良い。また、音声で取得する場合、声の調子がそのときの体調に関係する場合が多いので、声の周波数やトーンを解析して解析結果を問診データに加えても良い。
【0048】
また、ユーザインターフェイス部11には個人認証手段が設けられている。すなわち、複数の被験者が診断システム1を使用する場合、現在使用している個人を特定する必要がある。そこで、データ処理部10における初期登録時に撮像された個人の顔領域画像などとの照合による個人の特定結果に基づき、特定結果に間違いがないかどうかを本人に確認できるようになっている。
【0049】
また、ユーザインターフェイス部11には、一定期間ごとに音声の出力などによって被験者に診断システム1の使用を促す手段が設けられている。なお、被験者への使用を促す手段は画像表示部4への表示であっても良い。すなわち、本実施形態の診断システム1においては一定期間ごとに被験者の正常状態データを確認・更新する必要があるので、一定期間ごと、例えば一ヶ月ごとにバイタルセンサなどの使用を被験者に促すことにより、正常状態のデータの更新を行うことが可能となっている。さらに、診断の目的によっては日常的もしくは定期的な診断システム1の使用が必要な場合がある。そこで、被験者の不在などにより診断システム1が使用されない状況が続いた場合や、定期的に撮像部2による撮像が行われない場合は、ユーザインターフェイス部11がアラートを表示又は音声を発することによって外部に通報するように構成されている。
【0050】
制御部12は、CPU及びRAMを備え、撮像装置2の各構成部分を駆動制御するようになっている。本実施形態の撮像装置2は動画像も扱うため、制御部12はできる限り高速動作・制御が可能なチップにより構成することが望ましい。また、制御部12は、外部通信部3を経由して診断装置13から送信される指示信号又はユーザインターフェイス部11から入力される指示信号に基づいて、照射部5における各光源のOn/Offを独立に制御するようになっている。なお、上記指示信号に基づく制御を行う他、他の公知な方法によって被験者を推定することも可能である。
【0051】
次に、図2に示すように、本実施形態の診断システム1が備える診断装置13には以下の各構成部分が設けられている。
【0052】
外部通信部14は、有線又は無線の通信手段により、撮像装置2及び外部装置25と情報通信ができるように構成されている。そして、外部通信部3と同様に、この外部通信部3を経由して、画像解析の結果や画像データ、バイタルデータなどを診断装置13又は外部装置25に送信するようになっている。
【0053】
画像解析部15は、撮像装置2から外部通信部3及び外部通信部14を経由して診断装置13に送信された画像データに基づいて画像解析を行うようになっている。
【0054】
ここで本実施形態においては、上述したように、人肌など対象物の病変や異常が被験者の分光スペクトルの狭い帯域の特性に現れることに着目したものであり、そうした帯域の影響が強調できる照明を照射して撮像することで、画像から病変や異常を検出しやすくしている。すなわち、撮像装置2の撮像部6において被写体表面の反射光が撮像され、チャンネルごとに画素値に変換されると、図15に示すように被験者の特定部位(a)についてはチャンネル1において正常状態と異常状態の画素値の分離が容易となっており、図16に示すように被験者の他の特定部位(b)についてはチャンネル2において正常状態と異常状態の画素値の分離が容易となっている。
【0055】
画像解析部15は、撮像部6により変換された各チャンネルの画素値から三刺激値データ(RGB)をそれぞれ算出し、この三刺激値データからプライマリ変換によって反応色データを算出し、この反応色データから均等色空間データ(色彩データ)に変換するようになっている。この均等色空間には、一例として、CIEのL*a*b*,L*u*v*,明度方向が規格化されたu´v´などがあり、それらの派生空間も含まれる。その後、画像解析部15は、興味領域の均等色空間データに基づき、被験者の特定部位ごとに正常状態と異常状態の画像データを分離するようになっている。
【0056】
判断部16は、画像解析部15の解析結果に基づいて医療診断などの診断を行うようになっている。すなわち、画像解析部15で変換された均等色空間データにより、図17に示すように正常状態・異常状態の色彩データやその他特徴量を二次元以上(本実施形態では二次元)の座標として表し、画像を解析した結果得られた座標を正常状態の座標と比較し、撮像した被験者が正常状態であるか異常状態であるかを判断するようになっている。
【0057】
つまり、予め「正常」と判断された画像データから計測された計測値を用いて正常状態データを求めておき、この正常状態データの全てを含む領域を「正常領域」と設定する。また、この正常領域からある一定の尺度まで離れた領域を「注意領域」、この注意領域からある一定の尺度まで離れた領域を「警告領域」、これらの領域の補集合を「危険領域」と設定する。そして、判断部16は、被験者の画像を解析した結果得られた座標がこれらのどの領域に属するかを検出することにより、被験者の状態を判断するようになっている。
【0058】
このように、色彩データを表す二次元の座標上において、異常状態と判断する領域を「注意領域」、「警告領域」、「危険領域」の複数の領域に分割し、各領域に設定されたそれぞれの条件と被験者の画像データを解析して得られた結果とを比較し、正常、注意、警告、危険という4段階に分けて被験者の健康状態を判断するので、被験者の健康状態を詳細に判断することが可能となる。
【0059】
なお、「正常領域」は、例えば、正常状態データの平均値を中心点とし、この中心点からある一定の尺度まで離れた領域となるように設定しても良い。更に、各領域における一定の尺度は、正常状態データのばらつきを考慮して自動的に設定できるようにしても良いし、正常状態データの平均値を表示部19に表示させ、被験者がユーザインターフェイス部18を用いて任意に設定できるようにしても良い。また、過去に「異常」と判断されたデータから「注意領域」、「警告領域」、「危険領域」を設定し、これらの領域の補集合を「正常領域」というように設定しても良い。
【0060】
ここで、図17は特定部位(a)または他の特定部位(b)における色彩データの座標を示すものである。また、図17における「特徴量1」とは例えばCIEのa*やu*やu´といった値であり、「特徴量2」とは例えばCIEのb*やv*やv´といった値である。なお、他の色彩データや色彩データ以外の計測値(3次元形状やテクスチャなど)であっても良い。なお、色光Aと色光Bを同時に照射してから分離するのではなく、色光Aと色光Bと別々に照射して画像を撮像してから画像解析を行っても良い。
【0061】
正常状態と異常状態の判断としては、例えば、620nm付近を中心とする狭帯域の色光を照射すると血液中のヘモグロビンの画像に対する関与が強調されるということが知られており、血流が途絶えてしまうような異常の検知に効果的と思われる。この場合、図6の色光Bを用いることにより、画像解析による正常状態と異常状態との判別の精度が向上する。
【0062】
また、550nm付近を中心とする狭帯域の色光を照射すると毛細血管の強調ができるという報告もある。指先など毛細血管が集まる部分での異常を検知するのに効果的と思われる。この場合、図6の色光Aを用いることにより、画像解析による正常状態と異常状態との判別の精度が向上するといえる。
【0063】
また、撮像部6によって時系列的に、すなわち静止画を連続的に撮像又は動画により撮像された被験者の撮影画像を解析することにより、被験者の色彩データや三次元形状、テクスチャを計測(推定)し、それらの推定データから皮膚下の組織構造にかかわるヘモグロビン量、メラニン量、酸素飽和度などを推定することもできる。また、目の画像から、まばたき回数や目(特に白目)の色、目やにの状況などのデータを取得しても良い。
【0064】
また、画像解析部15は、外部通信部14を通じてコンサルタントなどに画像データを送付する場合、被験者の許容に応じて伝送できるデータの部位を変更するようになっている。例えば、個人の特定を回避するために目や口の周りの画像を除去又は変更して伝送することを被験者が希望した場合、画像内の該当部を自動抽出し、その部位を任意の色に変更したり、モザイクやぼかしを入れたりする。
【0065】
また個人情報を安全に秘匿するために、伝送されるデータや診断装置13の内部のデータは、各個人ごとに暗号キーを変更して暗号化する。キーの作製方法は、公知の方法がそれぞれ使用できるが、個人ごとのキー設定を可能とするバイオメトリクスが望ましい。この場合、個人の目、鼻、口などの顔内構成要素の位置関係や鼻の高さや、顔全体の形状などの三次元形状、虹彩情報などを暗号キーとする。
【0066】
なお、上述した撮像装置2のデータ処理部10における被験者の個人認証のための撮影画像の解析を、診断装置13の画像解析部15において行い、その特定結果を外部通信部14から撮像装置2に送信するようにしても良い。
【0067】
I/O部17は、CFカード、SDカード、USBメモリカードなどの可搬型デバイスを接続できるように構成されている。なお、I/O部17にバイタルセンサなどの計測装置を接続して使用するようにしても良い。
【0068】
ユーザインターフェイス部18は、被験者の指示入力を可能にすると共に、被験者に装置の状況や要求を伝達することができるように構成されている。撮像装置2のユーザインターフェイス部11と同様に、被験者に負担をかけない構成が望ましいが、メンテナンスやバックアップなど装置管理者による複雑な処理が必要な場合もあるので、キーボードやマウスのみを使用することもできる。ただし、ユーザインターフェイス部18は診断装置13において必須の構成部分ではなく、撮像装置2のユーザインターフェイス部11が診断装置13のユーザインターフェイス部18としての機能を兼ねる構成とすることもできる。この場合、撮像装置2のユーザインターフェイス部11を通じて入出力されるデータは外部通信部3及び外部通信部14を経由して診断装置13に転送される。
【0069】
表示部19は、液晶などのディスプレイを備え、診断装置13の動作状況やユーザインターフェイス部18による指示入力などを表示するようになっている。また、撮影画像から異常データが検出された際の警告を表示する。異常データが検出された際の警告としては、音声手段によって知らせるように構成することも可能である。ただし、表示部19も診断装置13において必須の構成部分ではなく、撮像装置2の画像表示部4を用いることもできる。その場合、表示される内容は、外部通信部14及び外部通信部3を経由して画像入出力装置に転送される。
【0070】
記憶部20は、バッファなどのメモリを備えており、データ保持部21、作業領域部22及びシステム情報保持部23から構成されている。
【0071】
データ保持部21は、撮像装置2から送信された診断対象となる興味領域の画像、装置状況などの各種データや、外部装置25から入力されたコンサルティング・診断データなどを保持するようになっている。また、データ保持部21には、図21に示すような被験者の生体情報や周辺環境情報などを示す診断表、図22に示すような予約表を保持するようになっている。すなわち、診断表は、周辺環境情報取得部7から取得した周辺環境のデータ、I/O部8に接続したバイタルセンサから取得したデータ、画像解析部15により解析された被験者の状態を示す診断結果、病院や診察所などへの診断予約の有無などからなり、この診断表を外部装置25に送信することにより、医師が被験者の病状をある程度判断できるようになっている。また予約表は、被験者が病院や診療所などに診断予約をする際に必要な情報を記入するための項目からなり、病院やコスメティック関係の店などに設置された外部装置25に予約表を送信することで、診断予約が行われるようになっている。
【0072】
作業領域部22は、診断装置13におけるデータ処理を高速に行うため、データ処理に使用する各種データを一時的に保持するようになっている。
【0073】
システム情報保持部23は、撮像装置2や診断装置13のシステム情報を保持するようになっている。このシステム情報保持部23は、撮像装置2の照射部5が備える光源としてのLED又はフィルタの管理番号と、効果的な被写体と、抽出できる特徴量を、図18のようにテーブル化して登録・管理している。撮像装置2の制御部12はこのテーブルによって照射部5が備える各光源のOn/Offを独立に制御して被写体に適した色光を与えることが可能となっている。
【0074】
また、システム情報保持部23は、撮像装置2の照射部5が備える光源やフィルタの分光特性、色彩データ、経時的な特性などを管理しており、画像解析部15が画像の解析上必要な場合にこれらのデータを参照できるようになっている。
【0075】
また、システム情報保持部23は、「正常」と判断された画像データから計測された計測値を用いて、画像解析部15における画像解析による診断の基準となる「正常状態データ」を作成して保持するようになっている。この正常状態データは、データの信頼性を高めるため、一定期間ごとに被験者の正常状態を確認した上で更新されるようになっている。すなわち、画像表示部4又はユーザインターフェイス部18において、例えば1ヶ月ごとにバイタルセンサなどの使用を被験者に促すことによって、正常状態データの更新を行うようになっている。また、最近1ヶ月のデータを基に毎日更新していくこともできる。これにより、季節や加齢による体調の変化にも対応できる。また、異常データを含む日を除いて、30日間など所定の日数を参考にして作成しても良い。
【0076】
また、診断システム1の導入時又は新しい被験者を登録して間もない時は、被験者個人の肌の色やその他の特徴についての情報が少なく、正常状態又は異常状態のデータを構成することができない。そこで、システム情報保持部23に予め一般人の平均的なデータを登録しておき、初回から所定の期間はその平均データ使用して仮の計測値を得るようになっている。また、診断システム1を使用する被験者の平均データを使用して仮の計測値を得ることもできる。そして、所定の期間経過後は被験者の実データに切り替えて、それまでの画像データに対して計測値を更新するようになっている。なお、「所定の期間」はシステム情報保持部23に予め登録しておく。
【0077】
さらに、システム情報保持部23は撮像装置2又は診断装置13の各構成部分の特性を保持するようになっている。すなわち、撮像装置2の照射部5,画像表示部4,撮像部6などは経時的に特性が変動し、通常は時間とともに劣化する。そこで、システム情報保持部23にこの経時変化の補正(調整)を行うタイミングを設定し、タグ情報から時刻情報などを読み取ることにより、指定したタイミングに従って撮像装置2又は診断装置の特性を計測・補正するようになっている。これにより、経時的に安定した画像計測値を得ることができるようになっている。
【0078】
また、定期的に行うキャリブレーションとは別に、周辺状況が変化したときに、被験者がキャリブレーションのタイミングを指示、もしくは、画像から自動的に周辺状況の変化を検知して、キャリブレーションを行うようになっている。ここで「周辺状況が変化」とは、例えば、周辺環境照明が大きく変わった(蛍光長などの照明を交換した、近くに新しい窓をつけたなど)場合や、周囲が変わった(画像の背景が変わった、部屋を模様替えした、装置の置き位置を変えたなど)場合が考えられる。周辺状況の違いは、システム情報保持部21に保存されている過去のデータと現状のデータを比較して、違いの程度に応じてキャリブレーションをするかどうかを判断することなどが可能である。
【0079】
データ管理部24は、記憶部20のデータ保持部21において保持される各個人の画像データにタグ(付帯情報)を付けて管理する。タグの付け方は、各データのヘッダやフッダに付帯させてもいいし、各データ名と関連づけて別ファイルにまとめても良い。
【0080】
ここで、タグの内容は、画像の撮影日時、被験者の名前及びその属性、撮像装置2及び診断装置13の情報、周辺環境の情報、撮影画像やI/O部8又はI/O部17に接続したバイタルセンサから取得された計測データ値、撮影画像を主観的に診断したときの診断情報、別途取得された問診データの内容などを含める。特に、時系列的に画像データを追跡するための撮影日時などの時間情報や、その他データの前後関係を把握できるようなタグは必須である。
【0081】
また、撮像装置2及び診断装置13の情報として必要なのは、画像から計測データを推定するのに関係する照射部5の情報、撮像部6の特性や撮像装置2の特性、データ処理部10におけるデータ処理方法の情報である。これらハードウェアやソフトウェアの情報はバージョンで管理されることが一般的であるので、タグにはそれぞれのバージョンNo.を記載する。
【0082】
なお、本実施形態の診断システム1が備える撮像装置2又は診断装置13が設置される場所としては、洗面所や浴室など水周りの近くが考えられる。したがって、湿気で曇らないように、曇り止め加工やコーティングなどの防水対策を施すことが望ましい。また、ほこりがたまりやすい場所に設置することも考えて、防汚シールなどの汚れやほこり対策があることが望ましい。
【0083】
次に、上述の診断システム1の作用について、図19乃至図20のフローチャートを参照して説明する。なお、本フローにおいては、被験者の健康状態を診断するものとし、外部装置25は病院の医師のもとに設置されている。また、「正常領域」、「注意領域」、「警告領域」、「危険領域」の条件は、予め上述した方法により設定されており、システム情報保持部23に記憶されている。
【0084】
被験者が診断システム1の使用を開始すると、まず、撮像部6が被験者の撮像を行う。
【0085】
データ処理部10は、撮像部6で撮像した被験者の画像、周辺環境情報取得部7で取得した周辺環境情報、I/O部8から入力された計測データや画像データ又はユーザインターフェイス部11から入力された被験者の指示入力データなどの入力情報を解析し、画像表示部4に画像の表示を行うと共に、照射部5の光源などを調整する。また、撮像部6で撮像された被験者の画像とメモリ部9に登録されている個人の認証情報との相関をデータ処理部10により解析し、メモリ部9に登録された複数の登録者の中から自動的に一人の候補者を抽出する(ステップ1、以下ステップをSともいう)。次に、「あなたは○○○○さんですか?」といったように、抽出された候補者名を画像表示部4に表示し、被験者が抽出された候補者であるか否かを質問する(S2)。
【0086】
被験者はこの質問に対してジェスチャを行うことで回答する。なお、本実施例においては、個人認証により個人が特定されることでその個人の属性が決定するため、この段階で属性によって意味が異なるジェスチャを用いると、ジェスチャの意味する内容が判断できない場合が生じる。したがって、このようなジェスチャを用いる場合は、メモリ部9に一般的なジェスチャを初期登録しておき、被験者がジェスチャにより回答する際に初期登録しておいたジェスチャを画像表示部14に表示し、この表示にしたがってジェスチャをするように被験者に指示すれば良い。また、属性によって意味が異なるジェスチャを用いずに、例えば、図24に示すように、画像表示部4に被験者の回答しうる全ての項目を表示しておき、被験者が立てた指の数に応じて項目を選択するようにしても良い。
【0087】
撮像部6は被験者が行ったジェスチャを画像データとして取得する(S3)。そして、上述したように、データ処理部10は取得した画像データのエッジを抽出して被験者の部位を特定し、部位に含まれる特徴点の推移を解析する(S4)。解析した結果、被験者のジェスチャが意味する内容が「いいえ」である場合は(S5でNO)、被験者は画像表示部4に表示された候補者ではないので、S1に戻り、データ処理部10での比較結果が次に被験者に近いと思われる候補者を抽出し、上記と同様の処理を繰り返す。
【0088】
一方、ステップ5において、被験者のジェスチャが意味する内容が「はい」である場合は(S5でYES)、被験者の個人認証が完了する。そして、個人認証により特定された被験者の身長、体重、年齢などの基本情報をメモリ部9から取得する(S6)。なお、このステップにおいて、周辺環境情報取得部7から周辺環境の情報を取得したり、I/O部8に接続されたバイタルセンサから被験者の体温、血圧、脈拍などを示す生理情報を取得するようにしても良い。
【0089】
次に、撮像部6が被験者のうち診断対象となる部位の画像を撮像する(S7)。この際、照射部5が複数の光源を照射して撮像を行う。すなわち、光源としてはLEDを使用するか、白色光源を干渉フィルタと共に使用するが、本実施形態の照射部5では、図6に示す特性を有する光源のうち2種類の光源(色光A及び色光B)を使用する。これにより、図8に示す特定部位(a)の例では、正常状態と異常状態で低波長側(色光Aの帯域に重なる)の差異が大きく、図9に示す特定部位(b)の例では、中域から高域(色光Bの帯域に重なる)の差異が大きくなる。そして、色光A及び色光Bを被験者の特定部位(a)に対して照射すると、被写体の反射光のスペクトルは図10に示すように色光A又は色光Bと被写体の分光反射率の積となる。同様に、色光A及び色光Bを被験者の他の特定部位(b)に対して照射すると、被験者の反射光のスペクトルは図11に示すように色光A又は色光Bと被写体の分光反射率の積となる。
【0090】
そして、撮像部6は、被験者表面の反射光を撮像して画素値に変換する。その際、チャンネルによって各色光に起因する反射光を分離することで、被験者の特定部位ごとに正常状態及び異常状態における画素値を分離しやすくする。さらに、データ処理部10は撮影画像の中から興味領域の抽出を行う(S8)。
【0091】
撮像装置2から外部通信部3及び外部通信部14を経由して、興味領域の撮影画像を診断装置13に送信する。そして、診断装置13に送信された興味領域の撮影画像は、記憶部20のデータ保持部21が保持する(S9)。データ管理部22は、データ保持部21において保持される各個人の画像データにタグ(付帯情報)を付けて管理する。
【0092】
そして、画像解析部15はデータ保持部21が保持する興味領域の画素値から三刺激値データ(RGB)をそれぞれ算出し、この三刺激値データからプライマリ変換によって反応色データを算出し、この反応色データから均等色空間データに変換する(S10)。その後、画像解析部15は均等色空間データに基づき、被験者の特定部位ごとに正常時と異常時の画像データを分離する(S11)。
【0093】
次に、図20に進み、均等色空間データによって、図17に示すように正常状態・異常状態の色彩データやその他特徴量を二次元以上(本実施形態では二次元)の座標として表し、判断部16は正常時と異常時の座標を比較する(S12)。すなわち、得られた座標が正常状態データから求められた正常領域に属するか否かを判断する。なお、このステップにおいて、撮像部6によって時系列的(静止画を連続的に、動画的に)に撮像された被験者の撮影画像を解析することにより、被験者の色彩データや三次元形状、テクスチャを計測(推定)し、それらの推定データから皮膚下の組織構造にかかわるヘモグロビン量、メラニン量、酸素飽和度などを推定することもできる。また、目の画像から、まばたき回数や目(特に白目)の色、目やにの状況などのデータを取得しても良い。
【0094】
判断部16が正常領域に属すると判断した場合(S12でYES)は、被験者の健康状態は正常である旨を画像表示部4又は表示部19に表示すると共にデータ保持部21に記録し(S13)、診断処理を終了する。一方、判断部16が正常領域に属さないと診断した場合(S12でNO)は、注意領域に属するか否かを判断する(S14)。
【0095】
判断部16が注意領域に属すると判断した場合(S14でYES)は、被験者の健康状態が注意状態である旨の診断結果を取得する(S17)。そして、ユーザインターフェイス部11が「体調は良いですか?」などの音声を出力する、あるいは画像表示部4が文字を表示し(S18)、被験者の体調が良いか否かを被験者に質問する。この質問に対して、被験者はジェスチャを行うことで回答する。撮像部6は被験者が行ったジェスチャを画像データとして取得する(S19)。そして、データ処理部10は取得した画像データのエッジを抽出して被験者の部位を特定し、部位に含まれる特徴点の推移と図23に示すようなジェスチャ解析テーブルに基づいて、被験者が行ったジェスチャを解析する(S20)。解析した結果、ジェスチャの意味する内容が「はい」である場合は(S21でYES)、被験者の健康状態が注意状態である旨を画像表示部4又は表示部19に表示すると共にデータ保持部21に記録し(S13)、診断処理を終了する。
【0096】
ジェスチャの意味する内容が「いいえ」である場合は(S19でNO)は、ユーザインターフェイス部11が「医師による診断は必要ですか?」などの音声を出力する、あるいは画像表示部4が文字を表示し(S23)、被験者に対して医師による診断が必要であるか否かを質問する。この質問に対して、被験者はジェスチャを行うことにより回答する。撮像部6は被験者が行ったジェスチャを画像データとして取得する(S24)。そして、データ処理部10は取得した画像データのエッジを抽出して被験者の部位を特定し、部位に含まれる特徴点の推移と、図23に示すジェスチャ解析テーブルに基づいて被験者が行ったジェスチャを解析する(S25)。
【0097】
解析した結果、ジェスチャの意味する内容が「はい」である場合は(S26でYES)、画像表示部4又は表示部19は医師の診断予約を行うために、図22に示すような予約表を画面上に表示するとともに、被験者に所定の項目を入力するように促す(S27)。被験者により所定の項目が入力され、更に、図示の送信ボタンをクリックしたことが検知されると(S28)、診断予約の入力処理が完了し、予約表を外部通信部14を経由して外部装置25に送信する(S29)。次に、ユーザインターフェイス部11が「診断表を医師に送信しても良いですか?」などの音声を出力する、あるいは画像表示部4が文字を表示し(S30)、被験者の診断結果を医師に送信してもよいか否かを被験者に質問する。この質問に対して、被験者はジェスチャを行うことで回答する。撮像部6は被験者が行ったジェスチャを画像データとして取得する(S31)。そして、データ処理部10は取得した画像データのエッジを抽出して被験者の部位を特定し、部位に含まれる特徴点の推移と図23に示すジェスチャ解析テーブルに基づいて、被験者が行ったジェスチャを解析する(S32)。
【0098】
解析した結果、被験者のジェスチャが意味する内容が「はい」である場合は(S33でYES)、上記診断システム1による処理で得られた診断結果に基づいて診断表を作成し(S34)、医師に診断表を送信する(S35)。そして、被験者の健康状態が注意状態であることと、医師に予約表、診断表を送信したことを画像表示部4又は表示部19に表示すると共にデータ保持部21に記録し(S13)、診断処理を終了する。ステップ33に戻り、被験者のジェスチャが意味する内容が「いいえ」である場合は(S33でNO)、被験者の健康状態が注意状態であることと、医師に予約表を送信したことを画像表示部4又は表示部19に表示すると共にデータ保持部21に記録し(S13)、診断処理を終了する。
【0099】
ステップ26に戻り、ジェスチャの意味する内容が「いいえ」である場合は(S26でNO)、上述したステップ30以降の処理を行った後、被験者の健康状態が注意状態であることと、医師への診断表の送信の有無(S33の判断結果による)を画像表示部4又は表示部19に表示すると共にデータ保持部21に記録し(S13)、診断処理を終了する。
【0100】
ステップ14に戻り、判断部16が注意領域に属さないと判断した場合(S14でNO)は、警告領域に属するか否かを判断する(S15)。判断部16が警告領域に属すると判断した場合(S15でYES)は、被験者の健康状態が警告状態である旨の診断結果を取得する(S22)。そして、上述したステップ23以降の処理を行った後、被験者の健康状態が警告状態である旨と、医師への診断予約、診断表の送付の有無を画像表示部4又は表示部19に表示すると共にデータ保持部21に記録し(S13)、診断処理を終了する。
【0101】
ステップ15に戻り、判断部16が警告領域に属さないと判断した場合(S15でNO)は、被験者の状態は危険領域であると判断し、被験者の健康状態が危険状態である旨の診断結果を取得する(S16)。そして、上述したステップ27以降の処理を行った後、被験者の健康状態が危険状態であること、医師に診断表を送信したこと、診断表の送信の有無(S33の判断結果による)を画像表示部4又は表示部19に表示すると共にデータ保持部21に記録し(S13)、診断処理を終了する。
【0102】
なお、上記フローのステップ1〜5において、何度繰り返しても被験者が特定できない場合は、被験者に名前の入力を促す(画像表示部4に「あなたの名前は?」と表示すると同時に登録されている候補者リストを表示し、被験者はその中から選択する)処理を行うことができる。また、ステップ13において、画像表示部4又は表示部19に表示する内容は、上記内容に限られず、例えば、被験者の診断結果から推測される病状、今後の対処方法、過去の診断結果なども合わせて表示するようにしても良い。また、診断システム1の質問に対して被験者のジェスチャにより回答するように構成したが、回答方法はジェスチャに限られず、上述したようなユーザインターフェイス部11のマウスやキーボードなどの入力操作や音声入力により回答するように構成しても良い。
【0103】
以上より、本実施形態の診断システム1によれば、異常状態と判断する領域を「注意領域」、「警告領域」、「危険領域」という複数の領域に分割し、各領域に設定されたそれぞれの条件と被験者の画像データを解析して得られた結果を比較することにより、被験者の健康状態を正常、注意、警告、危険という4段階に分けて判断するように構成したので、被験者の状態を詳細に判断することができ、被験者の健康状態に最適な診断をすることが可能となる。
【0104】
また、被験者の病変や異常は被験者表面の分光スペクトルの狭い帯域の特性に現れるが、そうした帯域の影響が強調できる特定の色光によって被験者を照射して撮影するので、画像データから病変や異常を検出しやすくなる。
【0105】
また、正常状態と異常状態における被写体表面の分光反射率がどの波長領域において顕著に相違するかは被写体依存だが、この波長領域に対応した各色光に起因する反射光をチャンネルによって分離するので、特定の被写体に対して特定のチャンネルで正常状態と異常状態の画素値の分離が容易となる。
【0106】
また、座標上において正常状態と異常状態のデータを視覚により容易に判別することができる。
【0107】
以上詳細に説明したように、本発明の診断システムによれば、特定の色光で照射するので、画像データから病変や異常を検出しやすくなり、正常、注意、警告、危険状態を判別して診断の精度を向上させることができる。
【0108】
また、特定の被写体に対して特定のチャンネルで正常状態と異常状態の画素値の分離が容易となる。
【0109】
なお、本実施形態においては、データ管理の都合上、診断装置1には撮像装置2と診断装置13を別々に設けたが、例えば、ユーザインターフェイス部11とユーザインターフェイス部18、画像表示部4と表示部19といった同一の機能を有するものを一つにまとめ、撮像装置2と診断装置13を一つの装置として構成しても良い。また、異常状態を注意状態、警告状態、危険状態の3つに分けて被験者の健康状態を判断するようにしたが、特にこれに限定されるものではなく、例えば2つや4つに分けて健康状態を判断するようにしても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の実施形態に係る診断システムの全体構成を示す概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係る診断システムの全体構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る画像表示部及び照射部を示す正面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る照射部が備える光源の例を示す部分拡大図である。
【図5】本発明の実施形態に係る照射部の光源が構成する色光ユニットの配置を示す正面図である。
【図6】LEDの放射スペクトル例を表すグラフである。
【図7】本発明の実施形態に係る照射部が備える光源の特性を表すグラフである。
【図8】被写体の特定部位(a)の分光反射率を表すグラフである。
【図9】被写体の他の特定部位(b)の分光反射率を表すグラフである。
【図10】被写体の特定部位(a)の反射光を示すグラフである。
【図11】被写体の特定部位(b)の反射光を示すグラフである。
【図12】本発明の実施形態に係る撮像部の配置を示す図である。
【図13】本発明の実施形態に係る撮像部の他の配置を示す図である。
【図14】本発明の実施形態に係る撮像部の他の配置を示す図である。
【図15】被写体の特定部位(a)の反射光を変換した画素値のグラフである。
【図16】被写体の特定部位(b)の反射光を変換した画素値のグラフである。
【図17】被写体の特定部位(a)または特定部位(b)の画素値を色彩データとして座標上に表した図である。
【図18】本発明の実施形態に係るシステム情報保持部が備えるテーブルの例を示す図である。
【図19】本発明の実施形態に係る診断システムの作用を示すフローチャートである。
【図20】本発明の実施形態に係る診断システムの作用を示すフローチャートである。
【図21】診断表の一例を示す図である。
【図22】予約表の一例を示す図である。
【図23】ジェスチャ解析テーブルの一例を示す図である。
【図24】画像表示部に複数の項目を表示し、ジェスチャにより項目を選択する概念図である。
【符号の説明】
【0111】
1 診断システム
2 撮像装置
3 外部通信部
4 画像表示部
5 照射部
6 撮像部
7 周辺環境情報取得部
8 I/O部
9 メモリ部
10 データ処理部
11 ユーザインターフェイス部
12 制御部
13 診断装置
14 外部通信部
15 画像解析部
16 判断部
17 I/O部
18 ユーザインターフェイス部
19 表示部
20 記憶部
21 データ保持部
22 作業領域部
23 システム情報保持部
24 データ管理部
25 外部装置
【技術分野】
【0001】
本発明は診断システム及び診断装置に関し、特に被験者の各部位の撮影画像から医療診断などを行う診断システム及び診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、被験者(被写体)をセンサやCCDカメラなどによって撮像し、これにより得られた画像データを解析して医療診断や美容診断などを行う診断システムが開発されている。
【0003】
例えば、本出願人は、先に、撮像装置によって撮像した被験者の画像データを画素値に変換し、この画素値を解析して均等色空間データに変換し、得られた均等色空間データを予め取得しておいた正常(健康)状態のデータと比較し、正常状態のデータからある一定の尺度で離れている場合には撮像した被験者が異常(不健康)状態であると判断する診断システムを提供した(特許文献1参照)。
【特許文献1】特願2004−366508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1は、被験者の状態が正常状態であるか異常状態であるかを判断するだけに留まるものであり、被験者の状態に適した診断をするためには更なる改良が必要であった。
【0005】
本発明は上述した点に鑑み、被験者を撮像した画像を解析して被験者の状態を診断する診断システム及び診断装置において、被験者の状態に対して最適な診断をすることができる診断システム及び診断装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明の診断システムは、特定の色光の光源により被写体を照射する照射部と、被写体を撮像する撮像部と、前記照射部により照射された被写体を前記撮像部により撮像し、前記撮像により取得した画像データを解析する画像解析部と、前記画像解析部により解析された画像データと予め設定された複数の条件を比較して被写体の状態を判断する判断部と、を有することを特徴とする診断システム。
【0007】
また、上記課題を解決するため本発明の診断装置は、特定の色光の光源により被写体を照射する照射部と、前記照射部により照射された被写体を撮像する撮像部とを有する撮像装置に接続される診断装置であって、前記撮像装置から取得した被写体の画像データを解析する画像解析部と、前記画像解析部により解析された画像データと予め設定された複数の条件を比較して被写体の状態を判断する判断部と、を有することを特徴とする。
【0008】
上記本発明の診断システム及び診断装置によれば、人体を撮像した画像データに基づいて人体の状態を複数の状態から判断するので、人体の状態が正常、異常の2通りだけではなくより詳細に判断することができ、人体の状態に最適な診断をすることが可能となる。また、人体の病変や異常は人体表面の分光スペクトルの狭い帯域の特性に現れるが、そうした帯域の影響が強調できる特定の色光によって被写体を照射して撮像するので、画像データから病変や異常を検出しやすくなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被写体の状態を詳細に判断することができるので、被写体の状態に最適な診断をすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本発明を実施するための形態の説明において用いる用語や断定的な記載により、本発明の技術的範囲が限定されることはない。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の診断システム1には撮像装置2が備えられており、撮像装置2には互いに通信可能なネットワークを介して診断装置13が接続されている。さらに、診断装置13には互いに通信可能なネットワークを介して一つ以上の外部装置25が接続されている。なお、撮像装置2についても外部装置25と通信可能な構成にすることも可能である。
【0012】
本実施形態におけるネットワークはデータ通信可能である通信網を意味するものであれば特に限定されず、例えばインターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、電話回線網、ISDN(Integrated Services Digital Network)回線網、CATV(Cable Television)回線、光通信回線などを含めることができる。また、有線のみならず無線によって通信可能な構成としても良い。
【0013】
外部装置25とはパーソナルコンピュータなどであり、何らかのコンサルティングや診断が受けられる場所に設置されていることが望ましい。例えば、本実施形態に係る診断システム1で健康に関するデータを得る場合は、病院や健康管理施設などの公共施設に設置しておくことが考えられる。また、美容に関するデータの場合は、コスメティック関係の店や施設・病院などに設置しておくことが考えられる。また、外部装置25をコンサルティング情報が得られるインターネットサイトや、コンサルタントや医師、店員などの携帯端末として構成しても良い。
【0014】
図2に示すように、本実施形態の診断システム1が備える撮像装置2には以下の各構成部分が設けられている。
【0015】
外部通信部3は、有線又は無線の通信手段により診断装置13及び外部装置25と情報通信ができるように構成されている。この外部通信部3を経由して、画像解析の結果や画像データ、バイタルデータなどを診断装置13に送信するようになっている。
【0016】
画像表示部4は、CRT,液晶,有機EL,プラズマ又は投影方式などのディスプレイから構成され、撮影画像の他、外部装置25から与えられた情報、画像処理によって得られた情報又は撮像装置2の各構成部分の状態に関する情報などを表示するようになっている。また、撮影画像から異常データが検出された際の警告を表示することや、音声手段により異常データの検出を音声で知らせることが可能な構成とすることもできる。
【0017】
照射部5は、図3に示すように、画像表示部4の周辺縁部に設けられている。このような構成により、被験者に対して様々な方向から照明光を与えることができ、比較的照明むらの少ない画像を得ることができるようになっている。また、画像表示部4の周辺端部の上部のみ又は左右部のみに照射部5を配置しても良い。なお、画像表示部4に近接しない場所に照射部5を配置することも可能である。
【0018】
図4は図3に示す照射部5の点線部分を拡大した図である。図4に示すように、本実施形態の照射部5にはそれぞれ異なる色光を発光する矩形光源が配列されている。そして、一点鎖線部に示すような所定のエリアの光源を組み合わせたものを1つの色光セットとし、この色光セットを図5に示すように画像表示部2の周辺縁部に配列している。このような構成により、被験者に光源からの各色光を均等に照射できるようになっている。なお、矩形光源ではなく円形光源や棒状光源を使用することも可能である。
【0019】
照射部5が備える光源としては、蛍光ランプ,白熱電球,LED,レーザー,有機ELなどの人工光源などを使用することが可能であるが、撮影画像への周辺環境光の影響を抑えるために、強度が強いストロボ、高輝度LEDなどの光源を使うことが望ましい。また、光源は可視光域だけでなくその周辺(紫外域、近赤外、赤外領域)にも発光特性をもつものが望ましい。また、環境光の影響をできるだけ抑えるためにはストロボのような輝度の高い光を照射できる光源であることが望ましいが、被験者の動画を撮像する場合は、強度やスペクトルなどの特性が長時間安定した光を照射できる光源であることが望ましい。また、点光源より線・面光源としたほうが、被験者に対して空間的に強度の分布が抑えられた光を得ることができるので、被験者への照明むらが抑えられて望ましい画像が得られる。
【0020】
本実施形態の光源としては、図6に示すような発光特性をもつLEDのうち2種類(色光A及び色光B)のものを用い、図7にこのLEDの特性を示す。こういった特性をもつLEDは、例えば、色光Aとして株式会社東芝のTLPGE1100B(ピーク波長562nm、半値幅11nm)、色光BとしてTLSHシリーズ(ピーク波長623nm、半値幅13nm)などがあるが、その他市販されている各社のLEDを使用することも可能である。なお、白色光源を干渉フィルタと共に使用して光源として用いることもでき、白色光源の前面に1枚以上の干渉フィルタを配置し、照明光の特性を狭帯域化させることで、任意の波長の光源を得ることができる。干渉フィルタとしては、Omega Optical社のバンドパスフィルタなど市販されている各社のフィルタを用いることができる。
【0021】
なお、照射部5は、顔領域の画像を撮像する際に被験者を照明する機能を果たす他、被験者の瞳孔の動きを撮像する際に、照明の強さや波長を急激に変化させ、その照射前後の瞳孔の動きを計測することにより正常か異常かを判断することを可能とする機能も果たすことができるようになっている。
【0022】
図8及び図9に被験者の特定部位(a)及び別の特定部位(b)が健康(正常)状態と不健康(異常)状態であるときの分光反射率を示す。一般に、被験者に異常がある場合は体の組織や構成が変化するため、被写体表面における分光反射率が正常状態と異なる。
【0023】
図8に示す特定部位(a)の例では、正常状態と異常状態は低波長側(色光Aの帯域に重なる)において分光反射率の差異が大きく、図9に示す特定部位(b)の例では、中域から高域(色光Bの帯域に重なる)において分光反射率の差異が大きくなっている。このように、どの波長領域において分光反射率が異なるかは被写体依存である。
【0024】
そして、色光A及び色光Bを被験者の特定部位(a)に対して照射すると、被験者の反射光のスペクトルは、図10に示すように色光A又は色光Bと被写体の分光反射率の積となっている。同様に、色光A及び色光Bを被験者の他の特定部位(b)に対して照射すると、被写体の反射光のスペクトルは、図11に示すように色光A又は色光Bと被写体の分光反射率の積となっている。
【0025】
図2に戻り、撮像部6は、CCDやCMOSなどの撮像素子により静止画又は動画を取得することができる1つ又は複数のカメラによって構成されている。また、例えば、デジタルカメラ、ビデオカメラ、その他携帯電話などに付属のカメラモジュールにより構成しても良い。なお、被験者の画像は、被験者の立ち位置や身長に関わらず安定した構図で撮像することが望ましい。そこで、本実施形態では、図12に示すように複数の撮像部6を等間隔に配置して被験者を撮像し、複数の撮影画像を合成して良い構図の画像を出力するように構成されるのが好ましい。また、図13に示すように、1台の撮像部6の位置を三次元的に調整できる機構を設けて、被験者の頭部・顔などを撮像可能なように構成しても良い。また、図14に示すように、多数のカメラモジュールの組み合わせで撮像部6を構成し、被験者を一括撮像して、所定の構図の画像を切り出すことができるように構成しても良い。
【0026】
さらに、上述のように構図が固定された画像ではなく、被験者の動きと連動して構図が変わるような画像を得ることが望ましい場合、例えば被験者が表示画面に近づくとアップになる場合などは、1つ以上のカメラで撮像された画像を合成し、表示座標の原点を固定してそのまま表示するように構成すれば良い。
【0027】
また、本実施形態の撮像部6は3個の画像チャンネル数を備えているが、3個以上の画像チャンネルをもつマルチチャンネル(マルチバンド)としても良い。
【0028】
また、撮像部6は被写体表面の反射光を撮像して、RGB画像のR,G,B各信号に対応する各チャンネルの画素値に変換するようになっている。上述のように、被験者の特定部位(a)における正常状態と異常状態の分光反射率は図10に示すようになるが、この色光A又は色光Bに起因する反射光を撮像部6で撮像し、チャンネル1及びチャンネル2により反射光を分離すると、図15に示すように各チャンネルの画素値を得ることができる。同様に、被験者の他の特定部位(b)における分光反射率は図11に示すようになるが、色光A又は色光Bに起因する反射光を分離すると、図16に示すように画素値を得ることができる。
【0029】
ここで、色光A又は色光Bに起因する反射光の分離は各チャンネルの帯域の違いによって行っている。例えば、色光AはRGBのうちチャンネル1の帯域に含まれ、色光Bはチャンネル2の帯域に含まれる。また、色光Aと色光Bの発光のタイミングをずらして撮像することにより分離することも可能である。
【0030】
このように、色光A又は色光Bに起因する反射光を分離することで、被験者の特定部位(a)の撮影画像はチャンネル1において、特定部位(b)の撮影画像はチャンネル2において、正常状態及び異常状態における画素値の分離が容易となっている。
【0031】
図2に戻り、周辺環境情報取得部7は、環境情報取得手段としての計測計を備え、撮像装置2が設置される周辺環境の情報を取得して撮影画像の解析時に異常データの判別を支援することができるようになっている。ここで周辺環境とは、環境照明光の強度や特性,気温や水温などの温度,湿度,気圧,などをいう。また、環境照明光の取得方法としては、(a)照度計タイプ(b)スペクトル計測計タイプ(c)色温度計測タイプなどがあるが、全てを包含できる(b)のタイプが望ましい。また、その他の温度、湿度、気圧については、それぞれを計測する計測器具やセンサを用いても良いし、ネットワークを通じて外部装置25から情報を入手しても良い。
【0032】
I/O部8は、バイタル情報取得手段としてのバイタルセンサ(体温計、体重計、体脂肪率計、血圧計、心電計、肌年齢計測計、骨密度計、肺活量計など)や、CFカード、SDカード、USBメモリカードなどの可搬型デバイスを扱う機器を接続できるように構成されており、これらの機器から計測データや画像データの入出力を行うようになっている。なお、バイタルセンサは撮像装置2の一部分として構成することも可能である。
【0033】
また、I/O部8に接続したバイタルセンサを刺激付加手段として、被験者に刺激を付加した前後の経時変化を撮像し、その画像から被験者の正常状態と異常状態を区別することもできる。ここで刺激とは、光を与える、押す、圧力を加える、温度を変える、香りを加える、音を加える、針などで刺す、物を塗る、物を注入する、などを指す。例えば、圧力センサなどにより肌の一部を圧迫し、圧迫前後の状態を計測することにより、各計測値の変化量を特徴データとして平常状態と異常状態を区別することができる。また、皮膚を水やお湯、もしくは遠赤外線などにより温め、その前後の状態を観察することで、血液の流れの変化を測定し、その変化の仕方が正常時と相違するか否かを判断することもできる。
【0034】
メモリ部9は、RAM、ROMなどから構成され、撮像装置2の各構成部分における処理に必要なデータを一時的に蓄えることによって、撮像装置2を高速かつ安定に動作させることができる。また、後述する個人認証により個人を特定するために、個人の顔領域画像、顔の三次元形状の計測値、その他特徴的な情報(めがねの使用、ほくろ、しみなどの情報)などの認証情報やこの認証情報に対応して基本情報(名前、身長、体重、年齢など)を記憶している。
【0035】
データ処理部10は、撮像部6で撮像した被験者の各部位の画像、周辺環境情報取得部7で取得した周辺環境情報、I/O部8から入力された計測データや画像データなどのデータ処理を行う。
【0036】
すなわち、データ処理部10は撮影画像の中から診断の対象となる興味領域の抽出を行う。例えば、興味領域が被験者の顔である場合は、予めメモリ部9に登録されている被験者の標準的な顔画像をテンプレートの基本画像とし、そのテンプレートを画面左上からラスター操作を行いテンプレートと画像の相関が一番高い箇所を顔領域とする。また、興味領域から更に部位を指定する場合は、被験者が顔枠を矩形ポインタなどで囲んで指定する手段や、被験者がポイントを指定すると、指定位置を中心として所定の大きさの矩形が表示される指定手段などを設けることも可能である。そして、興味領域の抽出を行うと、データ処理部10は外部通信部3を経由して診断装置13にその興味領域の画像を送信する。
【0037】
また、データ処理部10は、環境光の特性が変わっても見た目的に色再現の安定した画像を表示するために、環境光の特性を周辺環境情報取得部7で取得し、その色彩データに応じて表示白色の色度点や明るさを調整するようになっている。すなわち、周辺環境光や光源の特性に関わらず、安定した色再現で画像を表示するために、これらの特性を補正(キャリブレーション)する。通常、キャリブレーションではテストパターンを撮像し、その撮像データが別途指定の設定値になるように補正するが、比較的高価で保管しにくいテストパターンを使用しないで同じ処理ができるほうが望ましい。そこで、経時的にほとんど変化しないと思われる、被験者の歯や画像撮像時の背景データを使用することができる。その際、同一装置に複数の被験者が登録されている場合は被験者ごとに歯のデータを登録しておく必要がある。
【0038】
また、データ処理部10には、撮像部6において同じ構図で被験者を撮像する場合において、被験者がカメラの光軸方向に動く場合に、照明のあたり方によって画面上の被験者の明るさや大きさが変わらないように、それを補正する機能が設けられている。この場合においては、撮像部6で撮像された画像から撮像装置2と被験者との距離を推定する。測定方法としては、三次元測量法、ステレオ計測法などの一般的な方法を使用することができる。また、カメラでよく使われるレーザー測光用機器を撮像装置2に取り付けて計測しても良い。また、撮影画像による距離推定を各画素で行うことで、被験者の三次元形状の推定が可能となる。各画素における被験者とカメラとの距離がわかると、光源と被験者との距離が画素ごとに得られるので、より正確・詳細に表示画像の明るさを補正することができる。
【0039】
また、データ処理部10は、被験者の個人認証のために撮影画像から個人の特定を行うようになっている。すなわち、撮像部6で撮像された画像を解析し、メモリ部9に登録されている個人データから自動的に照合して個人を特定することができるように構成されている。この特定は、例えば顔部位を抽出した後に個人に合わせた基本となるテンプレート画像と抽出された画像との相関をとり比べることによって行う。
【0040】
ユーザインターフェイス部11は、キーボード、マウス、トラックボールなどから構成され、被験者の指示入力を可能とすると共に、被験者に撮像装置2の状況や要求を伝達することを可能としている。なお、被験者の負担が少ない装置構成とすることが望ましいことから、画像表示部4と一体にしてタッチパネルとしてユーザインターフェイス部11を構成することもできる。また、スピーカーやマイクなどの音響設備を備えることにより被験者の音声によってコミュニケートできる構成とすることが望ましい。
【0041】
また、ジェスチャ(身振りや手振り、また手話など高度なコミュニケート手段も含む)などの被験者の意思を表す動作により指示入力を可能とする構成であることが望ましい。具体的には、撮像部6により被験者の動作を撮影し、データ処理部10により撮影画像のエッジを抽出して被験者の部位を特定し、部位に含まれる特徴点の推移を解析することで、被験者の意思通りの入力が可能となる。例えば、撮影画像が被験者の顔画像であった場合、この顔画像に含まれるあご、鼻の頭、額を特徴点とし、これらの特徴点が垂直方向に振動していると解析されると、被験者が首を縦に振っているので、「はい」を意味すると判断する。また、撮影画像が被験者の手の画像であった場合、手の人差し指を特徴点とし、特徴点が推定方向に振動していると計測されると、指を横に振っているので、「いいえ」を意味すると判断する。
【0042】
このように、ジェスチャなどの被験者の意思を表す動作により指示入力が可能となる構成にすることにより、被験者が口のきけない人や目の悪い人であっても容易に望み通りの処理を行わせることができる。
【0043】
なお、図23に示すジェスチャ解析テーブルは、予めメモリ部9に記憶されており、ユーザインターフェイス部11のマウスやキーボードを用いて、被験者が随時、修正、追加できるように構成されている。また、被験者の国籍、経済圏、文化圏、戸籍、年齢、性別などの属性により、ジェスチャの意味する内容が異なる場合がある。例えば、首を縦に振る動作は、国によって「はい」を意味する場合もあれば、「いいえ」を意味する場合もある。また、手でOKサインを出す動作は、「はい」を意味する場合もあれば、「お金」や「数字の0」を意味する場合もある。したがって、このような被験者の属性により意味が異なるジェスチャを使用する場合は、予めメモリ部9に被験者の基本情報に対応して属性を記録しておくことが望ましい。
【0044】
また、ジェスチャを解析するための撮影画像は、必ずしも動画である必要はなく、静止画であっても構わない。例えば、図24に示すように、画像表示部4に複数の項目を表示しておき、被験者が立てている指の本数を解析することにより、複数の項目の中から一つを選択することができる。また、上、下、左、右など被験者の指が指す向きを解析し、この向きに合わせてカーソルを動かして複数の項目の中から一つを選択しても良い。また、撮影部6により被験者の意思を表す動作を撮像する際は、照射部5による色光の種類は特に限定されない。
【0045】
ユーザインターフェイス部11では、例えば被験者の撮像時において、撮影画像による診断の興味領域が舌であった場合、被験者に舌をだすように音声もしくは文字で指示し、口の動きから舌がでたことを推測して撮像部6により撮像させることもできる。
【0046】
また、データ処理部10において撮影画像の中から診断の対象となる興味領域の抽出を行い、さらに興味領域から部位を指定する場合において、インターフェイス部11において被験者が顔枠を矩形ポインタなどで囲んで指定する手段や、被験者がポイントを指定すると指定位置を中心として所定の大きさの矩形が表示される指定手段などを設けることができる。
【0047】
また、ユーザインターフェイス部11には、撮影画像の解析時に異常データの判別を支援する目的でデータ取得手段が設けられている。例えば、ユーザインターフェイス部11において撮像ごとに問診を行えるシステムを構築しておくことができる。具体的には、単純に健康、不調を区別するボタンを押すようにするだけでも良い。その際に取得するデータ内容としては、現在の体調の自己判断(体が重い、熱がある、寒気がする、など)や、調子に関わる個人データ(睡眠時間や飲酒、喫煙、投薬情報など)が含まれる。音声で対話式に取得してもいいし、画像表示部4に問診票を表示してタッチパネルなどのユーザインターフェイス部11の入力により取得しても良い。また、音声で取得する場合、声の調子がそのときの体調に関係する場合が多いので、声の周波数やトーンを解析して解析結果を問診データに加えても良い。
【0048】
また、ユーザインターフェイス部11には個人認証手段が設けられている。すなわち、複数の被験者が診断システム1を使用する場合、現在使用している個人を特定する必要がある。そこで、データ処理部10における初期登録時に撮像された個人の顔領域画像などとの照合による個人の特定結果に基づき、特定結果に間違いがないかどうかを本人に確認できるようになっている。
【0049】
また、ユーザインターフェイス部11には、一定期間ごとに音声の出力などによって被験者に診断システム1の使用を促す手段が設けられている。なお、被験者への使用を促す手段は画像表示部4への表示であっても良い。すなわち、本実施形態の診断システム1においては一定期間ごとに被験者の正常状態データを確認・更新する必要があるので、一定期間ごと、例えば一ヶ月ごとにバイタルセンサなどの使用を被験者に促すことにより、正常状態のデータの更新を行うことが可能となっている。さらに、診断の目的によっては日常的もしくは定期的な診断システム1の使用が必要な場合がある。そこで、被験者の不在などにより診断システム1が使用されない状況が続いた場合や、定期的に撮像部2による撮像が行われない場合は、ユーザインターフェイス部11がアラートを表示又は音声を発することによって外部に通報するように構成されている。
【0050】
制御部12は、CPU及びRAMを備え、撮像装置2の各構成部分を駆動制御するようになっている。本実施形態の撮像装置2は動画像も扱うため、制御部12はできる限り高速動作・制御が可能なチップにより構成することが望ましい。また、制御部12は、外部通信部3を経由して診断装置13から送信される指示信号又はユーザインターフェイス部11から入力される指示信号に基づいて、照射部5における各光源のOn/Offを独立に制御するようになっている。なお、上記指示信号に基づく制御を行う他、他の公知な方法によって被験者を推定することも可能である。
【0051】
次に、図2に示すように、本実施形態の診断システム1が備える診断装置13には以下の各構成部分が設けられている。
【0052】
外部通信部14は、有線又は無線の通信手段により、撮像装置2及び外部装置25と情報通信ができるように構成されている。そして、外部通信部3と同様に、この外部通信部3を経由して、画像解析の結果や画像データ、バイタルデータなどを診断装置13又は外部装置25に送信するようになっている。
【0053】
画像解析部15は、撮像装置2から外部通信部3及び外部通信部14を経由して診断装置13に送信された画像データに基づいて画像解析を行うようになっている。
【0054】
ここで本実施形態においては、上述したように、人肌など対象物の病変や異常が被験者の分光スペクトルの狭い帯域の特性に現れることに着目したものであり、そうした帯域の影響が強調できる照明を照射して撮像することで、画像から病変や異常を検出しやすくしている。すなわち、撮像装置2の撮像部6において被写体表面の反射光が撮像され、チャンネルごとに画素値に変換されると、図15に示すように被験者の特定部位(a)についてはチャンネル1において正常状態と異常状態の画素値の分離が容易となっており、図16に示すように被験者の他の特定部位(b)についてはチャンネル2において正常状態と異常状態の画素値の分離が容易となっている。
【0055】
画像解析部15は、撮像部6により変換された各チャンネルの画素値から三刺激値データ(RGB)をそれぞれ算出し、この三刺激値データからプライマリ変換によって反応色データを算出し、この反応色データから均等色空間データ(色彩データ)に変換するようになっている。この均等色空間には、一例として、CIEのL*a*b*,L*u*v*,明度方向が規格化されたu´v´などがあり、それらの派生空間も含まれる。その後、画像解析部15は、興味領域の均等色空間データに基づき、被験者の特定部位ごとに正常状態と異常状態の画像データを分離するようになっている。
【0056】
判断部16は、画像解析部15の解析結果に基づいて医療診断などの診断を行うようになっている。すなわち、画像解析部15で変換された均等色空間データにより、図17に示すように正常状態・異常状態の色彩データやその他特徴量を二次元以上(本実施形態では二次元)の座標として表し、画像を解析した結果得られた座標を正常状態の座標と比較し、撮像した被験者が正常状態であるか異常状態であるかを判断するようになっている。
【0057】
つまり、予め「正常」と判断された画像データから計測された計測値を用いて正常状態データを求めておき、この正常状態データの全てを含む領域を「正常領域」と設定する。また、この正常領域からある一定の尺度まで離れた領域を「注意領域」、この注意領域からある一定の尺度まで離れた領域を「警告領域」、これらの領域の補集合を「危険領域」と設定する。そして、判断部16は、被験者の画像を解析した結果得られた座標がこれらのどの領域に属するかを検出することにより、被験者の状態を判断するようになっている。
【0058】
このように、色彩データを表す二次元の座標上において、異常状態と判断する領域を「注意領域」、「警告領域」、「危険領域」の複数の領域に分割し、各領域に設定されたそれぞれの条件と被験者の画像データを解析して得られた結果とを比較し、正常、注意、警告、危険という4段階に分けて被験者の健康状態を判断するので、被験者の健康状態を詳細に判断することが可能となる。
【0059】
なお、「正常領域」は、例えば、正常状態データの平均値を中心点とし、この中心点からある一定の尺度まで離れた領域となるように設定しても良い。更に、各領域における一定の尺度は、正常状態データのばらつきを考慮して自動的に設定できるようにしても良いし、正常状態データの平均値を表示部19に表示させ、被験者がユーザインターフェイス部18を用いて任意に設定できるようにしても良い。また、過去に「異常」と判断されたデータから「注意領域」、「警告領域」、「危険領域」を設定し、これらの領域の補集合を「正常領域」というように設定しても良い。
【0060】
ここで、図17は特定部位(a)または他の特定部位(b)における色彩データの座標を示すものである。また、図17における「特徴量1」とは例えばCIEのa*やu*やu´といった値であり、「特徴量2」とは例えばCIEのb*やv*やv´といった値である。なお、他の色彩データや色彩データ以外の計測値(3次元形状やテクスチャなど)であっても良い。なお、色光Aと色光Bを同時に照射してから分離するのではなく、色光Aと色光Bと別々に照射して画像を撮像してから画像解析を行っても良い。
【0061】
正常状態と異常状態の判断としては、例えば、620nm付近を中心とする狭帯域の色光を照射すると血液中のヘモグロビンの画像に対する関与が強調されるということが知られており、血流が途絶えてしまうような異常の検知に効果的と思われる。この場合、図6の色光Bを用いることにより、画像解析による正常状態と異常状態との判別の精度が向上する。
【0062】
また、550nm付近を中心とする狭帯域の色光を照射すると毛細血管の強調ができるという報告もある。指先など毛細血管が集まる部分での異常を検知するのに効果的と思われる。この場合、図6の色光Aを用いることにより、画像解析による正常状態と異常状態との判別の精度が向上するといえる。
【0063】
また、撮像部6によって時系列的に、すなわち静止画を連続的に撮像又は動画により撮像された被験者の撮影画像を解析することにより、被験者の色彩データや三次元形状、テクスチャを計測(推定)し、それらの推定データから皮膚下の組織構造にかかわるヘモグロビン量、メラニン量、酸素飽和度などを推定することもできる。また、目の画像から、まばたき回数や目(特に白目)の色、目やにの状況などのデータを取得しても良い。
【0064】
また、画像解析部15は、外部通信部14を通じてコンサルタントなどに画像データを送付する場合、被験者の許容に応じて伝送できるデータの部位を変更するようになっている。例えば、個人の特定を回避するために目や口の周りの画像を除去又は変更して伝送することを被験者が希望した場合、画像内の該当部を自動抽出し、その部位を任意の色に変更したり、モザイクやぼかしを入れたりする。
【0065】
また個人情報を安全に秘匿するために、伝送されるデータや診断装置13の内部のデータは、各個人ごとに暗号キーを変更して暗号化する。キーの作製方法は、公知の方法がそれぞれ使用できるが、個人ごとのキー設定を可能とするバイオメトリクスが望ましい。この場合、個人の目、鼻、口などの顔内構成要素の位置関係や鼻の高さや、顔全体の形状などの三次元形状、虹彩情報などを暗号キーとする。
【0066】
なお、上述した撮像装置2のデータ処理部10における被験者の個人認証のための撮影画像の解析を、診断装置13の画像解析部15において行い、その特定結果を外部通信部14から撮像装置2に送信するようにしても良い。
【0067】
I/O部17は、CFカード、SDカード、USBメモリカードなどの可搬型デバイスを接続できるように構成されている。なお、I/O部17にバイタルセンサなどの計測装置を接続して使用するようにしても良い。
【0068】
ユーザインターフェイス部18は、被験者の指示入力を可能にすると共に、被験者に装置の状況や要求を伝達することができるように構成されている。撮像装置2のユーザインターフェイス部11と同様に、被験者に負担をかけない構成が望ましいが、メンテナンスやバックアップなど装置管理者による複雑な処理が必要な場合もあるので、キーボードやマウスのみを使用することもできる。ただし、ユーザインターフェイス部18は診断装置13において必須の構成部分ではなく、撮像装置2のユーザインターフェイス部11が診断装置13のユーザインターフェイス部18としての機能を兼ねる構成とすることもできる。この場合、撮像装置2のユーザインターフェイス部11を通じて入出力されるデータは外部通信部3及び外部通信部14を経由して診断装置13に転送される。
【0069】
表示部19は、液晶などのディスプレイを備え、診断装置13の動作状況やユーザインターフェイス部18による指示入力などを表示するようになっている。また、撮影画像から異常データが検出された際の警告を表示する。異常データが検出された際の警告としては、音声手段によって知らせるように構成することも可能である。ただし、表示部19も診断装置13において必須の構成部分ではなく、撮像装置2の画像表示部4を用いることもできる。その場合、表示される内容は、外部通信部14及び外部通信部3を経由して画像入出力装置に転送される。
【0070】
記憶部20は、バッファなどのメモリを備えており、データ保持部21、作業領域部22及びシステム情報保持部23から構成されている。
【0071】
データ保持部21は、撮像装置2から送信された診断対象となる興味領域の画像、装置状況などの各種データや、外部装置25から入力されたコンサルティング・診断データなどを保持するようになっている。また、データ保持部21には、図21に示すような被験者の生体情報や周辺環境情報などを示す診断表、図22に示すような予約表を保持するようになっている。すなわち、診断表は、周辺環境情報取得部7から取得した周辺環境のデータ、I/O部8に接続したバイタルセンサから取得したデータ、画像解析部15により解析された被験者の状態を示す診断結果、病院や診察所などへの診断予約の有無などからなり、この診断表を外部装置25に送信することにより、医師が被験者の病状をある程度判断できるようになっている。また予約表は、被験者が病院や診療所などに診断予約をする際に必要な情報を記入するための項目からなり、病院やコスメティック関係の店などに設置された外部装置25に予約表を送信することで、診断予約が行われるようになっている。
【0072】
作業領域部22は、診断装置13におけるデータ処理を高速に行うため、データ処理に使用する各種データを一時的に保持するようになっている。
【0073】
システム情報保持部23は、撮像装置2や診断装置13のシステム情報を保持するようになっている。このシステム情報保持部23は、撮像装置2の照射部5が備える光源としてのLED又はフィルタの管理番号と、効果的な被写体と、抽出できる特徴量を、図18のようにテーブル化して登録・管理している。撮像装置2の制御部12はこのテーブルによって照射部5が備える各光源のOn/Offを独立に制御して被写体に適した色光を与えることが可能となっている。
【0074】
また、システム情報保持部23は、撮像装置2の照射部5が備える光源やフィルタの分光特性、色彩データ、経時的な特性などを管理しており、画像解析部15が画像の解析上必要な場合にこれらのデータを参照できるようになっている。
【0075】
また、システム情報保持部23は、「正常」と判断された画像データから計測された計測値を用いて、画像解析部15における画像解析による診断の基準となる「正常状態データ」を作成して保持するようになっている。この正常状態データは、データの信頼性を高めるため、一定期間ごとに被験者の正常状態を確認した上で更新されるようになっている。すなわち、画像表示部4又はユーザインターフェイス部18において、例えば1ヶ月ごとにバイタルセンサなどの使用を被験者に促すことによって、正常状態データの更新を行うようになっている。また、最近1ヶ月のデータを基に毎日更新していくこともできる。これにより、季節や加齢による体調の変化にも対応できる。また、異常データを含む日を除いて、30日間など所定の日数を参考にして作成しても良い。
【0076】
また、診断システム1の導入時又は新しい被験者を登録して間もない時は、被験者個人の肌の色やその他の特徴についての情報が少なく、正常状態又は異常状態のデータを構成することができない。そこで、システム情報保持部23に予め一般人の平均的なデータを登録しておき、初回から所定の期間はその平均データ使用して仮の計測値を得るようになっている。また、診断システム1を使用する被験者の平均データを使用して仮の計測値を得ることもできる。そして、所定の期間経過後は被験者の実データに切り替えて、それまでの画像データに対して計測値を更新するようになっている。なお、「所定の期間」はシステム情報保持部23に予め登録しておく。
【0077】
さらに、システム情報保持部23は撮像装置2又は診断装置13の各構成部分の特性を保持するようになっている。すなわち、撮像装置2の照射部5,画像表示部4,撮像部6などは経時的に特性が変動し、通常は時間とともに劣化する。そこで、システム情報保持部23にこの経時変化の補正(調整)を行うタイミングを設定し、タグ情報から時刻情報などを読み取ることにより、指定したタイミングに従って撮像装置2又は診断装置の特性を計測・補正するようになっている。これにより、経時的に安定した画像計測値を得ることができるようになっている。
【0078】
また、定期的に行うキャリブレーションとは別に、周辺状況が変化したときに、被験者がキャリブレーションのタイミングを指示、もしくは、画像から自動的に周辺状況の変化を検知して、キャリブレーションを行うようになっている。ここで「周辺状況が変化」とは、例えば、周辺環境照明が大きく変わった(蛍光長などの照明を交換した、近くに新しい窓をつけたなど)場合や、周囲が変わった(画像の背景が変わった、部屋を模様替えした、装置の置き位置を変えたなど)場合が考えられる。周辺状況の違いは、システム情報保持部21に保存されている過去のデータと現状のデータを比較して、違いの程度に応じてキャリブレーションをするかどうかを判断することなどが可能である。
【0079】
データ管理部24は、記憶部20のデータ保持部21において保持される各個人の画像データにタグ(付帯情報)を付けて管理する。タグの付け方は、各データのヘッダやフッダに付帯させてもいいし、各データ名と関連づけて別ファイルにまとめても良い。
【0080】
ここで、タグの内容は、画像の撮影日時、被験者の名前及びその属性、撮像装置2及び診断装置13の情報、周辺環境の情報、撮影画像やI/O部8又はI/O部17に接続したバイタルセンサから取得された計測データ値、撮影画像を主観的に診断したときの診断情報、別途取得された問診データの内容などを含める。特に、時系列的に画像データを追跡するための撮影日時などの時間情報や、その他データの前後関係を把握できるようなタグは必須である。
【0081】
また、撮像装置2及び診断装置13の情報として必要なのは、画像から計測データを推定するのに関係する照射部5の情報、撮像部6の特性や撮像装置2の特性、データ処理部10におけるデータ処理方法の情報である。これらハードウェアやソフトウェアの情報はバージョンで管理されることが一般的であるので、タグにはそれぞれのバージョンNo.を記載する。
【0082】
なお、本実施形態の診断システム1が備える撮像装置2又は診断装置13が設置される場所としては、洗面所や浴室など水周りの近くが考えられる。したがって、湿気で曇らないように、曇り止め加工やコーティングなどの防水対策を施すことが望ましい。また、ほこりがたまりやすい場所に設置することも考えて、防汚シールなどの汚れやほこり対策があることが望ましい。
【0083】
次に、上述の診断システム1の作用について、図19乃至図20のフローチャートを参照して説明する。なお、本フローにおいては、被験者の健康状態を診断するものとし、外部装置25は病院の医師のもとに設置されている。また、「正常領域」、「注意領域」、「警告領域」、「危険領域」の条件は、予め上述した方法により設定されており、システム情報保持部23に記憶されている。
【0084】
被験者が診断システム1の使用を開始すると、まず、撮像部6が被験者の撮像を行う。
【0085】
データ処理部10は、撮像部6で撮像した被験者の画像、周辺環境情報取得部7で取得した周辺環境情報、I/O部8から入力された計測データや画像データ又はユーザインターフェイス部11から入力された被験者の指示入力データなどの入力情報を解析し、画像表示部4に画像の表示を行うと共に、照射部5の光源などを調整する。また、撮像部6で撮像された被験者の画像とメモリ部9に登録されている個人の認証情報との相関をデータ処理部10により解析し、メモリ部9に登録された複数の登録者の中から自動的に一人の候補者を抽出する(ステップ1、以下ステップをSともいう)。次に、「あなたは○○○○さんですか?」といったように、抽出された候補者名を画像表示部4に表示し、被験者が抽出された候補者であるか否かを質問する(S2)。
【0086】
被験者はこの質問に対してジェスチャを行うことで回答する。なお、本実施例においては、個人認証により個人が特定されることでその個人の属性が決定するため、この段階で属性によって意味が異なるジェスチャを用いると、ジェスチャの意味する内容が判断できない場合が生じる。したがって、このようなジェスチャを用いる場合は、メモリ部9に一般的なジェスチャを初期登録しておき、被験者がジェスチャにより回答する際に初期登録しておいたジェスチャを画像表示部14に表示し、この表示にしたがってジェスチャをするように被験者に指示すれば良い。また、属性によって意味が異なるジェスチャを用いずに、例えば、図24に示すように、画像表示部4に被験者の回答しうる全ての項目を表示しておき、被験者が立てた指の数に応じて項目を選択するようにしても良い。
【0087】
撮像部6は被験者が行ったジェスチャを画像データとして取得する(S3)。そして、上述したように、データ処理部10は取得した画像データのエッジを抽出して被験者の部位を特定し、部位に含まれる特徴点の推移を解析する(S4)。解析した結果、被験者のジェスチャが意味する内容が「いいえ」である場合は(S5でNO)、被験者は画像表示部4に表示された候補者ではないので、S1に戻り、データ処理部10での比較結果が次に被験者に近いと思われる候補者を抽出し、上記と同様の処理を繰り返す。
【0088】
一方、ステップ5において、被験者のジェスチャが意味する内容が「はい」である場合は(S5でYES)、被験者の個人認証が完了する。そして、個人認証により特定された被験者の身長、体重、年齢などの基本情報をメモリ部9から取得する(S6)。なお、このステップにおいて、周辺環境情報取得部7から周辺環境の情報を取得したり、I/O部8に接続されたバイタルセンサから被験者の体温、血圧、脈拍などを示す生理情報を取得するようにしても良い。
【0089】
次に、撮像部6が被験者のうち診断対象となる部位の画像を撮像する(S7)。この際、照射部5が複数の光源を照射して撮像を行う。すなわち、光源としてはLEDを使用するか、白色光源を干渉フィルタと共に使用するが、本実施形態の照射部5では、図6に示す特性を有する光源のうち2種類の光源(色光A及び色光B)を使用する。これにより、図8に示す特定部位(a)の例では、正常状態と異常状態で低波長側(色光Aの帯域に重なる)の差異が大きく、図9に示す特定部位(b)の例では、中域から高域(色光Bの帯域に重なる)の差異が大きくなる。そして、色光A及び色光Bを被験者の特定部位(a)に対して照射すると、被写体の反射光のスペクトルは図10に示すように色光A又は色光Bと被写体の分光反射率の積となる。同様に、色光A及び色光Bを被験者の他の特定部位(b)に対して照射すると、被験者の反射光のスペクトルは図11に示すように色光A又は色光Bと被写体の分光反射率の積となる。
【0090】
そして、撮像部6は、被験者表面の反射光を撮像して画素値に変換する。その際、チャンネルによって各色光に起因する反射光を分離することで、被験者の特定部位ごとに正常状態及び異常状態における画素値を分離しやすくする。さらに、データ処理部10は撮影画像の中から興味領域の抽出を行う(S8)。
【0091】
撮像装置2から外部通信部3及び外部通信部14を経由して、興味領域の撮影画像を診断装置13に送信する。そして、診断装置13に送信された興味領域の撮影画像は、記憶部20のデータ保持部21が保持する(S9)。データ管理部22は、データ保持部21において保持される各個人の画像データにタグ(付帯情報)を付けて管理する。
【0092】
そして、画像解析部15はデータ保持部21が保持する興味領域の画素値から三刺激値データ(RGB)をそれぞれ算出し、この三刺激値データからプライマリ変換によって反応色データを算出し、この反応色データから均等色空間データに変換する(S10)。その後、画像解析部15は均等色空間データに基づき、被験者の特定部位ごとに正常時と異常時の画像データを分離する(S11)。
【0093】
次に、図20に進み、均等色空間データによって、図17に示すように正常状態・異常状態の色彩データやその他特徴量を二次元以上(本実施形態では二次元)の座標として表し、判断部16は正常時と異常時の座標を比較する(S12)。すなわち、得られた座標が正常状態データから求められた正常領域に属するか否かを判断する。なお、このステップにおいて、撮像部6によって時系列的(静止画を連続的に、動画的に)に撮像された被験者の撮影画像を解析することにより、被験者の色彩データや三次元形状、テクスチャを計測(推定)し、それらの推定データから皮膚下の組織構造にかかわるヘモグロビン量、メラニン量、酸素飽和度などを推定することもできる。また、目の画像から、まばたき回数や目(特に白目)の色、目やにの状況などのデータを取得しても良い。
【0094】
判断部16が正常領域に属すると判断した場合(S12でYES)は、被験者の健康状態は正常である旨を画像表示部4又は表示部19に表示すると共にデータ保持部21に記録し(S13)、診断処理を終了する。一方、判断部16が正常領域に属さないと診断した場合(S12でNO)は、注意領域に属するか否かを判断する(S14)。
【0095】
判断部16が注意領域に属すると判断した場合(S14でYES)は、被験者の健康状態が注意状態である旨の診断結果を取得する(S17)。そして、ユーザインターフェイス部11が「体調は良いですか?」などの音声を出力する、あるいは画像表示部4が文字を表示し(S18)、被験者の体調が良いか否かを被験者に質問する。この質問に対して、被験者はジェスチャを行うことで回答する。撮像部6は被験者が行ったジェスチャを画像データとして取得する(S19)。そして、データ処理部10は取得した画像データのエッジを抽出して被験者の部位を特定し、部位に含まれる特徴点の推移と図23に示すようなジェスチャ解析テーブルに基づいて、被験者が行ったジェスチャを解析する(S20)。解析した結果、ジェスチャの意味する内容が「はい」である場合は(S21でYES)、被験者の健康状態が注意状態である旨を画像表示部4又は表示部19に表示すると共にデータ保持部21に記録し(S13)、診断処理を終了する。
【0096】
ジェスチャの意味する内容が「いいえ」である場合は(S19でNO)は、ユーザインターフェイス部11が「医師による診断は必要ですか?」などの音声を出力する、あるいは画像表示部4が文字を表示し(S23)、被験者に対して医師による診断が必要であるか否かを質問する。この質問に対して、被験者はジェスチャを行うことにより回答する。撮像部6は被験者が行ったジェスチャを画像データとして取得する(S24)。そして、データ処理部10は取得した画像データのエッジを抽出して被験者の部位を特定し、部位に含まれる特徴点の推移と、図23に示すジェスチャ解析テーブルに基づいて被験者が行ったジェスチャを解析する(S25)。
【0097】
解析した結果、ジェスチャの意味する内容が「はい」である場合は(S26でYES)、画像表示部4又は表示部19は医師の診断予約を行うために、図22に示すような予約表を画面上に表示するとともに、被験者に所定の項目を入力するように促す(S27)。被験者により所定の項目が入力され、更に、図示の送信ボタンをクリックしたことが検知されると(S28)、診断予約の入力処理が完了し、予約表を外部通信部14を経由して外部装置25に送信する(S29)。次に、ユーザインターフェイス部11が「診断表を医師に送信しても良いですか?」などの音声を出力する、あるいは画像表示部4が文字を表示し(S30)、被験者の診断結果を医師に送信してもよいか否かを被験者に質問する。この質問に対して、被験者はジェスチャを行うことで回答する。撮像部6は被験者が行ったジェスチャを画像データとして取得する(S31)。そして、データ処理部10は取得した画像データのエッジを抽出して被験者の部位を特定し、部位に含まれる特徴点の推移と図23に示すジェスチャ解析テーブルに基づいて、被験者が行ったジェスチャを解析する(S32)。
【0098】
解析した結果、被験者のジェスチャが意味する内容が「はい」である場合は(S33でYES)、上記診断システム1による処理で得られた診断結果に基づいて診断表を作成し(S34)、医師に診断表を送信する(S35)。そして、被験者の健康状態が注意状態であることと、医師に予約表、診断表を送信したことを画像表示部4又は表示部19に表示すると共にデータ保持部21に記録し(S13)、診断処理を終了する。ステップ33に戻り、被験者のジェスチャが意味する内容が「いいえ」である場合は(S33でNO)、被験者の健康状態が注意状態であることと、医師に予約表を送信したことを画像表示部4又は表示部19に表示すると共にデータ保持部21に記録し(S13)、診断処理を終了する。
【0099】
ステップ26に戻り、ジェスチャの意味する内容が「いいえ」である場合は(S26でNO)、上述したステップ30以降の処理を行った後、被験者の健康状態が注意状態であることと、医師への診断表の送信の有無(S33の判断結果による)を画像表示部4又は表示部19に表示すると共にデータ保持部21に記録し(S13)、診断処理を終了する。
【0100】
ステップ14に戻り、判断部16が注意領域に属さないと判断した場合(S14でNO)は、警告領域に属するか否かを判断する(S15)。判断部16が警告領域に属すると判断した場合(S15でYES)は、被験者の健康状態が警告状態である旨の診断結果を取得する(S22)。そして、上述したステップ23以降の処理を行った後、被験者の健康状態が警告状態である旨と、医師への診断予約、診断表の送付の有無を画像表示部4又は表示部19に表示すると共にデータ保持部21に記録し(S13)、診断処理を終了する。
【0101】
ステップ15に戻り、判断部16が警告領域に属さないと判断した場合(S15でNO)は、被験者の状態は危険領域であると判断し、被験者の健康状態が危険状態である旨の診断結果を取得する(S16)。そして、上述したステップ27以降の処理を行った後、被験者の健康状態が危険状態であること、医師に診断表を送信したこと、診断表の送信の有無(S33の判断結果による)を画像表示部4又は表示部19に表示すると共にデータ保持部21に記録し(S13)、診断処理を終了する。
【0102】
なお、上記フローのステップ1〜5において、何度繰り返しても被験者が特定できない場合は、被験者に名前の入力を促す(画像表示部4に「あなたの名前は?」と表示すると同時に登録されている候補者リストを表示し、被験者はその中から選択する)処理を行うことができる。また、ステップ13において、画像表示部4又は表示部19に表示する内容は、上記内容に限られず、例えば、被験者の診断結果から推測される病状、今後の対処方法、過去の診断結果なども合わせて表示するようにしても良い。また、診断システム1の質問に対して被験者のジェスチャにより回答するように構成したが、回答方法はジェスチャに限られず、上述したようなユーザインターフェイス部11のマウスやキーボードなどの入力操作や音声入力により回答するように構成しても良い。
【0103】
以上より、本実施形態の診断システム1によれば、異常状態と判断する領域を「注意領域」、「警告領域」、「危険領域」という複数の領域に分割し、各領域に設定されたそれぞれの条件と被験者の画像データを解析して得られた結果を比較することにより、被験者の健康状態を正常、注意、警告、危険という4段階に分けて判断するように構成したので、被験者の状態を詳細に判断することができ、被験者の健康状態に最適な診断をすることが可能となる。
【0104】
また、被験者の病変や異常は被験者表面の分光スペクトルの狭い帯域の特性に現れるが、そうした帯域の影響が強調できる特定の色光によって被験者を照射して撮影するので、画像データから病変や異常を検出しやすくなる。
【0105】
また、正常状態と異常状態における被写体表面の分光反射率がどの波長領域において顕著に相違するかは被写体依存だが、この波長領域に対応した各色光に起因する反射光をチャンネルによって分離するので、特定の被写体に対して特定のチャンネルで正常状態と異常状態の画素値の分離が容易となる。
【0106】
また、座標上において正常状態と異常状態のデータを視覚により容易に判別することができる。
【0107】
以上詳細に説明したように、本発明の診断システムによれば、特定の色光で照射するので、画像データから病変や異常を検出しやすくなり、正常、注意、警告、危険状態を判別して診断の精度を向上させることができる。
【0108】
また、特定の被写体に対して特定のチャンネルで正常状態と異常状態の画素値の分離が容易となる。
【0109】
なお、本実施形態においては、データ管理の都合上、診断装置1には撮像装置2と診断装置13を別々に設けたが、例えば、ユーザインターフェイス部11とユーザインターフェイス部18、画像表示部4と表示部19といった同一の機能を有するものを一つにまとめ、撮像装置2と診断装置13を一つの装置として構成しても良い。また、異常状態を注意状態、警告状態、危険状態の3つに分けて被験者の健康状態を判断するようにしたが、特にこれに限定されるものではなく、例えば2つや4つに分けて健康状態を判断するようにしても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の実施形態に係る診断システムの全体構成を示す概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係る診断システムの全体構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る画像表示部及び照射部を示す正面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る照射部が備える光源の例を示す部分拡大図である。
【図5】本発明の実施形態に係る照射部の光源が構成する色光ユニットの配置を示す正面図である。
【図6】LEDの放射スペクトル例を表すグラフである。
【図7】本発明の実施形態に係る照射部が備える光源の特性を表すグラフである。
【図8】被写体の特定部位(a)の分光反射率を表すグラフである。
【図9】被写体の他の特定部位(b)の分光反射率を表すグラフである。
【図10】被写体の特定部位(a)の反射光を示すグラフである。
【図11】被写体の特定部位(b)の反射光を示すグラフである。
【図12】本発明の実施形態に係る撮像部の配置を示す図である。
【図13】本発明の実施形態に係る撮像部の他の配置を示す図である。
【図14】本発明の実施形態に係る撮像部の他の配置を示す図である。
【図15】被写体の特定部位(a)の反射光を変換した画素値のグラフである。
【図16】被写体の特定部位(b)の反射光を変換した画素値のグラフである。
【図17】被写体の特定部位(a)または特定部位(b)の画素値を色彩データとして座標上に表した図である。
【図18】本発明の実施形態に係るシステム情報保持部が備えるテーブルの例を示す図である。
【図19】本発明の実施形態に係る診断システムの作用を示すフローチャートである。
【図20】本発明の実施形態に係る診断システムの作用を示すフローチャートである。
【図21】診断表の一例を示す図である。
【図22】予約表の一例を示す図である。
【図23】ジェスチャ解析テーブルの一例を示す図である。
【図24】画像表示部に複数の項目を表示し、ジェスチャにより項目を選択する概念図である。
【符号の説明】
【0111】
1 診断システム
2 撮像装置
3 外部通信部
4 画像表示部
5 照射部
6 撮像部
7 周辺環境情報取得部
8 I/O部
9 メモリ部
10 データ処理部
11 ユーザインターフェイス部
12 制御部
13 診断装置
14 外部通信部
15 画像解析部
16 判断部
17 I/O部
18 ユーザインターフェイス部
19 表示部
20 記憶部
21 データ保持部
22 作業領域部
23 システム情報保持部
24 データ管理部
25 外部装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の色光の光源により被写体を照射する照射部と、被写体を撮像する撮像部と、前記照射部により照射された被写体を前記撮像部により撮像し、前記撮像により取得した画像データを解析する画像解析部と、前記画像解析部により解析された画像データと予め設定された複数の条件を比較して被写体の状態を判断する判断部と、
を有することを特徴とする診断システム。
【請求項2】
前記画像解析部は前記撮像部の撮像により取得した画像データの画素値を色彩データに変換し、前記判断部は前記色彩データと予め設定された複数の条件を比較して被写体の状態を判断することを特徴とする請求項1に記載の診断システム。
【請求項3】
前記判断部は前記画像解析部により解析された画像データと予め設定された少なくとも2つの条件を比較して被写体の状態を判断することを特徴とする請求項1または2に記載の診断システム。
【請求項4】
前記判断部の判断結果に基づき被写体に対する診断処理を決定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の診断システム。
【請求項5】
前記判断部の判断結果に基づき今後の処理をどのようにするかを被写体に対して問いかけ、該問いかけに対する被写体の動作を前記撮像部により撮像し、該撮像部の撮像により取得した画像データを解析することにより前記診断処理を決定することを特徴とする請求項4に記載の診断システム。
【請求項6】
前記画像データの解析は被写体の属性に基づいて行うことを特徴とする請求項5に記載の診断システム。
【請求項7】
特定の色光の光源により被写体を照射する照射部と、前記照射部により照射された被写体を撮像する撮像部とを有する撮像装置に接続される診断装置であって、前記撮像装置から取得した被写体の画像データを解析する画像解析部と、前記画像解析部により解析された画像データと予め設定された複数の条件を比較して被写体の状態を判断する判断部と、
を有することを特徴とする診断装置。
【請求項8】
前記画像解析部は前記撮像部の撮像により取得した画像データの画素値を色彩データに変換し、前記判断部は前記色彩データと予め設定された複数の条件とを比較して被写体の状態を判断することを特徴とする請求項7に記載の診断装置。
【請求項9】
前記判断部は前記画像解析部により解析された画像データと予め設定された少なくとも2つの条件を比較して被写体の状態を判断することを特徴とする請求項7または8に記載の診断装置。
【請求項10】
前記判断部の判断結果に基づき被写体に対する診断処理を決定することを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載の診断装置。
【請求項11】
前記判断部の判断結果に基づき今後の処理をどのようにするかを被写体に対して問いかけ、該問いかけに対する被写体の動作を前記撮像部により撮像し、該撮像部の撮像により取得した画像データを解析することにより前記診断処理を決定することを特徴とする請求項10に記載の診断装置。
【請求項12】
前記画像データの解析は被写体の属性に基づいて行うことを特徴とする請求項11に記載の診断装置。
【請求項1】
特定の色光の光源により被写体を照射する照射部と、被写体を撮像する撮像部と、前記照射部により照射された被写体を前記撮像部により撮像し、前記撮像により取得した画像データを解析する画像解析部と、前記画像解析部により解析された画像データと予め設定された複数の条件を比較して被写体の状態を判断する判断部と、
を有することを特徴とする診断システム。
【請求項2】
前記画像解析部は前記撮像部の撮像により取得した画像データの画素値を色彩データに変換し、前記判断部は前記色彩データと予め設定された複数の条件を比較して被写体の状態を判断することを特徴とする請求項1に記載の診断システム。
【請求項3】
前記判断部は前記画像解析部により解析された画像データと予め設定された少なくとも2つの条件を比較して被写体の状態を判断することを特徴とする請求項1または2に記載の診断システム。
【請求項4】
前記判断部の判断結果に基づき被写体に対する診断処理を決定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の診断システム。
【請求項5】
前記判断部の判断結果に基づき今後の処理をどのようにするかを被写体に対して問いかけ、該問いかけに対する被写体の動作を前記撮像部により撮像し、該撮像部の撮像により取得した画像データを解析することにより前記診断処理を決定することを特徴とする請求項4に記載の診断システム。
【請求項6】
前記画像データの解析は被写体の属性に基づいて行うことを特徴とする請求項5に記載の診断システム。
【請求項7】
特定の色光の光源により被写体を照射する照射部と、前記照射部により照射された被写体を撮像する撮像部とを有する撮像装置に接続される診断装置であって、前記撮像装置から取得した被写体の画像データを解析する画像解析部と、前記画像解析部により解析された画像データと予め設定された複数の条件を比較して被写体の状態を判断する判断部と、
を有することを特徴とする診断装置。
【請求項8】
前記画像解析部は前記撮像部の撮像により取得した画像データの画素値を色彩データに変換し、前記判断部は前記色彩データと予め設定された複数の条件とを比較して被写体の状態を判断することを特徴とする請求項7に記載の診断装置。
【請求項9】
前記判断部は前記画像解析部により解析された画像データと予め設定された少なくとも2つの条件を比較して被写体の状態を判断することを特徴とする請求項7または8に記載の診断装置。
【請求項10】
前記判断部の判断結果に基づき被写体に対する診断処理を決定することを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載の診断装置。
【請求項11】
前記判断部の判断結果に基づき今後の処理をどのようにするかを被写体に対して問いかけ、該問いかけに対する被写体の動作を前記撮像部により撮像し、該撮像部の撮像により取得した画像データを解析することにより前記診断処理を決定することを特徴とする請求項10に記載の診断装置。
【請求項12】
前記画像データの解析は被写体の属性に基づいて行うことを特徴とする請求項11に記載の診断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
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【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2007−125151(P2007−125151A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−319391(P2005−319391)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
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