説明

診断装置および電源装置

【課題】機器の状態を診断できるようにし、更に、複数の各機器の状態を診断できるようにする。
【解決手段】記憶手段に予め記憶された基準となる負荷電流のパターンと、計測手段で計測される負荷電流のパターンとを、制御指令に応じた機器のONまたはOFF動作に対応させて比較することによって、機器が正常にONまたはOFF動作しているか否かを診断することができ、例えば、時刻T3では、機器がONして負荷電流が上昇するはずであるが、破線で示すように、負荷電流が変化しないことから、機器が異常であると判定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器の異常や劣化などの機器の状態を診断する診断装置およびそれを用いた電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電源装置には、電力を供給する機器特有の負荷パターン、例えば、負荷電流のパターンを検出し、機器が、当該電源装置に適合した機器であるか否かを判別し、適合しない機器であるときには、定格を越える誤使用であるとして、電源の供給を停止するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−28318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の電源装置では、機器が当該電源装置に適合した機器であるか否かを判別するものであって、当該電源装置に適合した機器である場合に、その機器の状態、例えば、機器の異常や劣化の状態を診断するといったことはできない。
【0005】
更に、特許文献1の電源装置は、1台の機器に電力を供給するものであり、複数の機器に電力を供給するものではなく、したがって、複数の機器の状態、例えば、複数の機器のいずれかに異常が生じた場合に、どの機器にどのような異常が生じたかを診断することができない。
【0006】
本発明は、上述のような点に鑑みて為されたものであって、機器の状態を診断できるようにし、更に、複数の各機器の状態を診断できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の診断装置は、マスタ装置とスレーブ装置とがネットワークを介して接続され、前記スレーブ装置に接続された機器が電源ラインに接続され、前記マスタ装置からの制御指令によって前記機器が制御されるシステムにおける前記機器の状態を診断する診断装置であって、前記ネットワークに接続され、前記電源ラインを介して前記機器に供給される電力の状態を計測する計測手段と、前記計測手段で計測される電力の状態を、前記ネットワークを介して与えられる前記制御指令に関連付けて予め記憶する記憶手段と、前記記憶手段に予め記憶された前記制御指令に関連付けられた電力の状態と、前記制御指令に応じて前記計測手段で計測される電力の状態とに基づいて、機器の状態を判定する判定手段とを備えている。
【0008】
マスタ装置とスレーブ装置とは、ネットワークを介して接続されており、マスタ装置が主(親局)となり、スレーブ装置が従(子局)となり、マスタ装置が、ネットワークを介してスレーブ装置を制御する。
【0009】
マスタ装置は、複数の処理の実行を繰り返す、スキャン動作をするのが好ましい。
【0010】
ネットワークは、デバイスネットなどのフィールドネットワークであるのが好ましい。
【0011】
スレーブ装置に接続される機器としては、センサやスイッチなどの入力機器、あるいは、アクチュエータ、リレー、電磁バルブ、モータ、ヒータ、表示器などの出力機器がある。
【0012】
スレーブ装置および機器は、1台でもよいし、複数台でもよい。
【0013】
機器に供給される電力の状態は、電力そのものの状態であってもよいし、電圧、あるいは、電流の状態であってもよい。
【0014】
電力の状態を、制御指令に関連付けるとは、機器の動作を制御するための制御指令と機器に供給される電力の状態とを関連付けることをいい、例えば、マスタ制御装置が、1スキャンの動作を開始してからの時間と電力の状態とを関連付けたり、マスタ制御装置から伝送される制御指令のタイミングと電力の状態とを関連付けることなどをいう。
【0015】
制御指令によって機器の駆動や停止などの動作が制御されて、機器に供給される電力の状態に変化が生じるので、制御指令と電力の状態とを関連付けておけば、制御指令によって制御される機器の動作と電力の状態とを関連付けることができる。
【0016】
記憶手段に予め記憶される電力の状態は、判定手段における判定の基準となるものであり、例えば、機器が正常である場合の電力の状態であるのが好ましい。
【0017】
この予め記憶される電力の状態を、計測手段で日々計測される電力の状態で修正し、経年変化等を考慮したものとすることによって、機器の寿命の診断を行えるようにしてもよい。
【0018】
本発明の診断装置によると、記憶手段に予め記憶された基準となる電力の状態と、計測手段で計測される電力の状態とを、制御指令に応じた機器の動作に対応させて比較することができるので、機器の状態を、前記基準となる状態、例えば、正常な状態と比較することができ、これによって、機器の異常や劣化状態を診断することができる。しかも、制御指令に応じた機器の動作に対応させて電力の状態を比較できるので、複数の機器がある場合に、機器の動作毎、すなわち、機器毎にその状態を診断することができる。
【0019】
(2)本発明の診断装置の一つの実施形態では、前記マスタ装置が、プログラマブルロジックコントローラであり、前記制御指令が、前記機器を駆動または停止させるONまたはOFFの制御指令であり、前記記憶手段には、前記ONまたはOFFの前記制御指令のタイミングに関連付けて前記電力の状態が記憶され、前記判定手段は、前記記憶手段に予め記憶された前記ONまたはOFFの制御指令のタイミングに応じた電力の状態と、前記ONまたはOFFの制御指令に応じて前記計測手段で計測される電力の状態とに基づいて、機器の状態を判定する。
【0020】
前記記憶手段には、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)が繰り返し実行する1スキャンに対応する電力の状態を、ONまたはOFFの制御指令に関連付けて記憶させるのが好ましい。
【0021】
この実施形態によると、記憶手段に予め記憶された基準となる電力の状態と、計測手段で計測される電力の状態とを、機器の駆動または停止のタイミングに対応させて比較することができるので、機器の動作状態を、例えば、正常な動作状態と比較することができ、これによって、機器が正常なタイミングで駆動または停止しているかを判定でき、機器の異常や劣化状態を診断することができる。
【0022】
(3)本発明の診断装置の他の実施形態では、前記計測手段は、前記電力の状態として、前記電源ラインから前記機器に供給される負荷電流の状態を計測し、前記記憶手段には、負荷電流のパターンが記憶される。
【0023】
この実施形態によると、記憶手段に予め記憶された基準となる負荷電流のパターンと、計測手段で計測される負荷電流のパターンとを、制御指令に応じた機器の動作に対応させて比較することができるので、負荷電流のパターンに基づいて、機器の異常や劣化状態を診断することができる。
【0024】
(4)本発明の電源装置は、マスタ装置とスレーブ装置とがネットワークを介して接続され、前記スレーブ装置に接続された機器が前記マスタ装置からの制御指令によって制御され、前記機器に電力を供給する電源装置であって、前記ネットワークに接続され、前記機器に供給する電力の状態を計測する計測手段と、前記計測手段で計測される電力の状態を、前記ネットワークを介して与えられる前記制御指令に関連付けて予め記憶する記憶手段と、前記記憶手段に予め記憶された前記制御指令に関連付けられた電力の状態と、前記制御指令に応じて前記計測手段で計測される電力の状態とに基づいて、機器の状態を判定する判定手段とを備えている。
【0025】
本発明の電源装置によると、記憶手段に予め記憶された基準となる電力の状態と、計測手段で計測される電力の状態とを、制御指令に応じた機器の動作に対応させて比較することができるので、機器の状態を、前記基準となる状態、例えば、正常な状態と比較することができ、機器の異常や劣化状態を診断することができる。しかも、制御指令に応じた機器の動作に対応させて電力の状態を比較できるので、複数の機器がある場合に、機器の動作毎、すなわち、機器毎にその状態を診断することができる。
【0026】
(5)本発明の電源装置の一つの実施形態では、前記マスタ装置が、プログラマブルロジックコントローラであり、前記制御指令が、前記機器を駆動または停止させるONまたはOFFの制御指令であり、前記記憶手段には、前記ONまたはOFFの前記制御指令のタイミングに関連付けて前記電力の状態が記憶され、前記判定手段は、前記記憶手段に予め記憶された前記ONまたはOFFの制御指令のタイミングに応じた電力の状態と、前記ONまたはOFFの制御指令に応じて前記計測手段で計測される電力の状態とに基づいて、機器の状態を判定するものである。
【0027】
この実施形態によると、記憶手段に予め記憶された基準となる電力の状態と、計測手段で計測される電力の状態とを、機器の駆動または停止のタイミングに対応させて比較することができるので、機器の動作状態を、例えば、正常な動作状態と比較することができ、これによって、機器が正常なタイミングで駆動または停止しているかを判定でき、機器の異常や劣化状態を診断することができる。
【0028】
(6)本発明の電源装置の他の実施形態では、前記計測手段は、前記電力の状態として、前記機器に供給する負荷電流の状態を計測し、前記記憶手段には、負荷電流のパターンが予め記憶される。
【0029】
この実施形態によると、記憶手段に予め記憶された基準となる負荷電流のパターンと、計測手段で計測される負荷電流のパターンとを、制御指令に応じた機器の動作に対応させて比較することができるので、負荷電流のパターンに基づいて、機器の異常や劣化状態を診断することができる。
【0030】
(7)上記(6)の実施形態では、前記記憶手段には、前記負荷電流のパターンおよび該負荷電流のパターンの幅を規定する閾値が予め記憶され、前記判定手段は、前記記憶手段に予め記憶された負荷電流のパターンおよび前記閾値と、前記制御指令に応じて前記計測手段で計測される負荷電流のパターンとに基づいて、機器が正常であるか否かを判定する。
【0031】
閾値は、負荷電流のパターンを中心とした幅を規定するのが好ましく、この幅は、負荷電流のパターンのばらつきを考慮した幅にするのが好ましい。
【0032】
機器が異常であると判定されたときには、マスタ装置にその旨を伝送したり、当該電源装置の表示部などで異常である旨を報知するのが好ましい。
【0033】
この実施形態によると、計測手段で計測される負荷電流のパターンが、予め記憶された負荷電流のパターンを中心とした閾値で規定される幅の範囲内にあるか否かに応じて、機器が正常であるか否かを判定することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、記憶手段に予め記憶された基準となる電力の状態と、計測手段で計測される電力の状態とを、制御指令に応じた機器の動作に対応させて比較することができるので、機器の状態を、前記基準となる状態、例えば、正常な状態と比較することができ、機器の異常や劣化状態を診断することができる。しかも、制御指令に応じた機器の動作に対応させて比較できるので、複数の機器がある場合に、機器毎にその状態を診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係る電源ユニットを備えたシステムの構成図である。
【図2】図1の要部の接続状態の構成を示す図である。
【図3】電源ユニットの構成を示すブロック図である。
【図4】負荷電流のパターンを示す図である。
【図5】負荷の状態に変化が生じた場合の負荷電流のパターンを示す図である。
【図6】負荷電流のパターンの判定の閾値を示す図である。
【図7】動作説明に供するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面によって本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0037】
図1は、本発明の一つの実施の形態に係る電源装置を備えるシステムの概略構成図である。
【0038】
この実施形態のシステムでは、マスタ装置としてのPLC(プログラマブルロジックコントローラ)1と、複数のスレーブ装置としての、モータ制御装置2a,2b、ヒータ制御装置3a,3b、バルブ制御装置4、および、入力ユニット5等が、デバイスネットなどのネットワーク6を介してバス接続されている。
【0039】
PLC1は、図示しない電源ユニット、演算処理を行なうCPUユニット、I/Oユニットおよび通信マスタユニットなどの複数のユニットを連結して構成されている。
【0040】
モータ制御装置2a,2bは、PLC1からの制御指令に応じて出力機器としてのモータ7a,7bの駆動をそれぞれ制御し、ヒータ制御装置3a,3bは、PLC1からの制御指令に応じて出力機器としてのヒータ8a,8bの通電をそれぞれ制御し、バルブ制御装置4には、PLC1からの制御指令に応じて出力機器としての電磁バルブ9の開閉を制御する。
【0041】
入力ユニット5は、複数の入力チャンネルを有し、センサ10やスイッチ11等の入力機器が接続されている。
【0042】
負荷である各モータ7a,7b、各ヒータ8a,8b、電磁バルブ9および光電センサ等のセンサ10には、本発明に係る電源装置としての電源ユニット12から電力線13を介してDC電源が供給される。
【0043】
このシステムでは、センサ10等の入力機器の状態を示すON/OFF信号が、入力ユニット5に与えられ、パラレル/シリアル変換されてPLC1に伝送される。
【0044】
PLC1は、入力機器の状態に基づいて、演算処理など必要な処理を実行し、モータ7a,7b、ヒータ8a,8bあるいは電磁バルブ9の動作を決定し、ネットワーク6を介して対応するモータ制御装置2a,2b、ヒータ制御装置3a,3bあるいはバルブ制御装置4に制御指令を伝送し、対応する制御装置2a,2b、3a,3b、4が、モータ7a,7b、ヒータ8a,8bあるいは電磁バルブ9の動作を制御する。
【0045】
この実施形態の電源ユニット12は、電源を供給しているモータ7a,7bやヒータ8a,8b等の負荷の状態を診断できるようにするために、ネットワーク6を介してPLC1に接続されており、PLC1からの上記制御指令が与えられるようになっている。
【0046】
図2は、図1の要部の接続状態の構成を示すものであり、図1に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0047】
この実施形態の電源ユニット12は、交流電源14からの交流を直流24Vに変換し、モータ7a,7bやヒータ8a,8b等の負荷に、+24Vおよびグランドからなる電力線13を介して供給する。
【0048】
PLC1と、各制御装置2a,2b、3a,3b、4とは、2本のバスラインからなるネットワーク6で接続される一方、PLC1と電源ユニット12とが、ネットワーク6で接続される。
【0049】
図3は、電源ユニット12の構成を示すブロック図である。
【0050】
電源ユニット12は、交流電源14からの交流電力を直流電力に変換する電源回路15と、出力電流を計測する電流計測回路16と、電源回路15等の各部を制御するとともに、後述のように負荷の状態を判定するマイコンからなる制御回路17とを備えている。
【0051】
この実施形態では、当該電源ユニット12が電力を供給するモータ7a,7bやヒータ8a,8b等の負荷の状態を診断できるように、電流計測回路16および制御回路17によって、負荷の状態を診断する診断手段を構成している。
【0052】
すなわち、電源ユニット12は、予め、PLC1のON/OFFの制御指令に同期した電力状態の変化、この実施形態では、負荷電流の状態の変化を学習し、制御回路17の記憶部18に予め記憶する。具体的には、PLC1の制御指令に応じて変化する負荷電流を計測し、この負荷電流のパターンを予め学習して記憶する。
【0053】
PLC1は、共通処理、I/Oリフレッシュ処理、ユーザプログラム実行処理、周辺サービス処理等を繰り返し実行するものであり、この繰り返し実行の少なくとも1スキャン(1サイクル)について、制御指令に応じた負荷電流のパターンを学習して記憶する。
【0054】
図4は、この負荷電流のパターンの一例を示すものであり、横軸はスキャンを開始してからの時間を、縦軸は負荷電流をそれぞれ示している。
【0055】
この図4では、例えば、時刻T1で、PLC1からのON指令に応じて、モータ7aが駆動を開始して負荷電流が上昇し、時刻T2で、PLC1からのON指令に応じて、モータ7bが駆動を開始して負荷電流が上昇し、時刻T3で、PLC1からのON指令に応じて、ヒータ8aに対する通電が開始されて負荷電流が更に上昇する。
【0056】
時刻T4で、PLC1からのOFF指令に応じて、モータ7bの駆動が停止されて負荷電流が減少し、時刻T5で、PLC1からのON指令に応じて、ヒータ8bに対する通電が開始されて負荷電流が再び上昇し、時刻T6で、PLC1からのON指令およびOFF指令に応じて、電磁バルブ9が開閉されて負荷電流が上昇、下降する。
【0057】
同様に、時刻T7,T8,T9,T10で、負荷がONあるいはOFFされて終了する。
【0058】
電源ユニット12は、かかるPLC1からのON/OFF指令に同期した負荷電流のパターンを学習し、上述の図3の制御回路17の不揮発性メモリからなる記憶部18に予め記憶する。記憶部18に記憶する負荷電流のパターンは、1回の計測で得られた負荷電流のパターンとしてもよいし、複数回の計測を行って得えられた負荷電流の平均値のパターンとしてもよい。
【0059】
その後、電源ユニット12は、電流計測回路16で計測される負荷電流のパターンと、記憶部18に予め記憶されている負荷電流のパターンとを、図3の制御回路17の負荷電流比較部19で比較し、負荷の状態を判定部20で判定する。この判定部20で負荷に異常が生じたと判定されたときには、その判定結果を、PLC1に伝送するとともに、負荷異常出力を出力して、表示部などによって報知する。
【0060】
図5は、負荷の状態に変化が生じた場合の負荷電流のパターンの例を示す図であり、図4に対応する図である。
【0061】
この図5では、負荷の状態変化に対応する負荷電流の部分を破線で示している。
【0062】
時刻T3では、上述のように、PLC1からのON指令に応じて、ヒータ8aに対する通電が開始されて負荷電流が上昇するはずであるが、矢符Aで示すように、負荷電流は上昇することなく、変化しない状態が継続している。したがって、ヒータ8aは、通電を開始したにも拘らず、電流が増加していないことからヒータ8aは、断線したと判定することができる。
【0063】
また、時刻T6では、上述のように、PLC1からのON指令およびOFF指令に応じて、電磁バルブ9が開閉されて負荷電流が上昇、下降するのであるが、矢符Bで示すように、正常な電磁バルブ9の開閉の場合の負荷電流に変化に比べて、ON指令に対する応答が遅れている。したがって、ON指令に対する電磁バルブ9の応答が遅く、電磁バルブ9は劣化していると判定することができる。
【0064】
このように、PLC1からのON/OFF指令に同期した負荷電流のパターンを、予め学習した負荷電流のパターンと比較することによって、複数の負荷の状態を診断することができ、例えば、どの負荷に、どのような異常や劣化が生じたかを診断することが可能となる。
【0065】
予め学習する負荷電流のパターンは、ばらつく場合があるので、一定期間に亘って負荷電流のパターンを繰り返し計測し、負荷電流のパターンに幅を持たせてもよい。
【0066】
すなわち、図6に示すように、予め学習した実線で示される負荷電流のパターンPに対して、一定期間の負荷電流の計測によって、得られた負荷電流値i1〜i5が含まれるように、バラツキを考慮した負荷電流のパターンPの上限P1および下限P2の閾値を設定してもよい。この上限P1から下限P2までの電流の幅は、例えば、負荷電流のパターンPを基準として、基準±3σ(標準偏差)としてもよい。
【0067】
そして、この上限P1から下限P2の範囲の負荷電流のパターンに含まれない負荷電流値i6が計測されたときに、異常であると判定する。
【0068】
なお、一定の期間は、例えば、温度によって負荷電流のパターンのばらつきが大きい場合には、季節による温度変動を確認できる期間、例えば、1年としてよい。
【0069】
図7は、以上の負荷電流のパターンの学習およびそれを用いた診断処理を説明するためのフローチャートである。
【0070】
先ず、電源をONし(ステップn1)、負荷電流のパターンを学習する期間を設定する(ステップn2)。この学習する期間は、例えば、PLC1が繰り返し実行する1スキャンの期間とすればよい。
【0071】
次に、電流の計測を開始し(ステップn3)、計測値をデジタル値にA/D変換して読み込み(ステップn4)、計測開始からの時間と電流の読み込み値とを記憶部18に格納し(ステップn5)、学習期間に亘る格納が終了したか否かを判断し(ステップn6)、終了していないときには、ステップn4に戻る。
【0072】
ステップn6で、学習期間に亘る電流値の格納が終了したときには、格納した負荷電流のパターンを、基準のパターンとして決定する(ステップn7)。
【0073】
次に、負荷電流のばらつきに対応できるように、ばらつきを把握できる一定期間に亘ってON/OFFの制御指令に対応する各時間における負荷電流の値を計測するステップn8。この一定期間は、例えば、PLC1が繰り返し実行する1スキャンの複数倍の期間としてもよいし、一日としてもよいし、あるいは、温度変化によるばらつきが大きい場合には、季節による温度変動を考慮して1年としてもよい。
【0074】
この一定期間に亘ってON/OFFの制御指令に対応する各時間の電流値を計測し(ステップn8)、計測値を記憶部18である不揮発性メモリに格納し、一定期間の計測が終了したか否か判断し(ステップn10)、終了していないときには、ステップn8に戻る。
【0075】
ステップn10で、一定期間に亘る計測が終了したときには、計測した電流値の標準偏差を計算し(ステップn11)、一定期間の計測値のばらつきに基づく負荷電流のパターンの基準幅を算出して記憶し(ステップn12)、学習を終了する。
【0076】
次に、負荷電流のパターンの開始点からの時間と電流とを計測し(ステップn13)、記憶した負荷電流のパターンと比較し(ステップn14)、計測値が、記憶した負荷電流のパターンの基準幅よりも大きいときには、異常であるとして異常信号を出力し(ステップn16)、大きくないときには、正常であると判定する(ステップn17)。
【0077】
上述の実施形態では、電源ユニット12は、負荷の状態を診断する診断機能を内蔵したけれども、本発明の他の実施形態として、診断機能を電源ユニットから分離して独立の診断装置を構成してもよい。
【0078】
上述の実施形態では、出力機器の状態を診断したけれども、本発明の他の実施形態として、スイッチやセンサ等の入力機器の状態を診断できるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、機器の状態を診断する診断装置および電源装置として有用である。
【符号の説明】
【0080】
1 PLC
6 ネットワーク
7a,7b モータ
8a,8b ヒータ
9 電磁バルブ
12 電源ユニット
13 電力線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスタ装置とスレーブ装置とがネットワークを介して接続され、前記スレーブ装置に接続された機器が電源ラインに接続され、前記マスタ装置からの制御指令によって前記機器が制御されるシステムにおける前記機器の状態を診断する診断装置であって、
前記ネットワークに接続され、
前記電源ラインを介して前記機器に供給される電力の状態を計測する計測手段と、
前記計測手段で計測される電力の状態を、前記ネットワークを介して与えられる前記制御指令に関連付けて予め記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に予め記憶された前記制御指令に関連付けられた電力の状態と、前記制御指令に応じて前記計測手段で計測される電力の状態とに基づいて、機器の状態を判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする診断装置。
【請求項2】
前記マスタ装置が、プログラマブルロジックコントローラであり、
前記制御指令が、前記機器を駆動または停止させるONまたはOFFの制御指令であり、
前記記憶手段には、前記ONまたはOFFの前記制御指令のタイミングに関連付けて前記電力の状態が記憶され、
前記判定手段は、前記記憶手段に予め記憶された前記ONまたはOFFの制御指令のタイミングに応じた電力の状態と、前記ONまたはOFFの制御指令に応じて前記計測手段で計測される電力の状態とに基づいて、機器の状態を判定する請求項1に記載の診断装置。
【請求項3】
前記計測手段は、前記電力の状態として、前記電源ラインから前記機器に供給される負荷電流の状態を計測し、
前記記憶手段には、負荷電流のパターンが記憶される請求項1または2に記載の診断装置。
【請求項4】
マスタ装置とスレーブ装置とがネットワークを介して接続され、前記スレーブ装置に接続された機器が前記マスタ装置からの制御指令によって制御され、前記機器に電力を供給する電源装置であって、
前記ネットワークに接続され、
前記機器に供給する電力の状態を計測する計測手段と、
前記計測手段で計測される電力の状態を、前記ネットワークを介して与えられる前記制御指令に関連付けて予め記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に予め記憶された前記制御指令に関連付けられた電力の状態と、前記制御指令に応じて前記計測手段で計測される電力の状態とに基づいて、機器の状態を判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする電源装置。
【請求項5】
前記マスタ装置が、プログラマブルロジックコントローラであり、
前記制御指令が、前記機器を駆動または停止させるONまたはOFFの制御指令であり、
前記記憶手段には、前記ONまたはOFFの前記制御指令のタイミングに関連付けて前記電力の状態が記憶され、
前記判定手段は、前記記憶手段に予め記憶された前記ONまたはOFFの制御指令のタイミングに応じた電力の状態と、前記ONまたはOFFの制御指令に応じて前記計測手段で計測される電力の状態とに基づいて、機器の状態を判定する請求項4に記載の電源装置。
【請求項6】
前記計測手段は、前記電力の状態として、前記機器に供給する負荷電流の状態を計測し、
前記記憶手段には、負荷電流のパターンが予め記憶される請求項4または5に記載の電源装置。
【請求項7】
前記記憶手段には、前記負荷電流のパターンおよび該負荷電流のパターンの幅を規定する閾値が予め記憶され、
前記判定手段は、前記記憶手段に予め記憶された負荷電流のパターンおよび前記閾値と、前記制御指令に応じて前記計測手段で計測される負荷電流のパターンとに基づいて、機器が正常であるか否かを判定する請求項6に記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−200586(P2010−200586A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45866(P2009−45866)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】