試料中における変異したC.ディフィシル菌株を検出および同定するための方法
本発明は、試料中の変異したC.ディフィシル菌株を検出および同定するための方法に関し、この方法は、以下の工程:(a)患者の生体排泄物試料および/または生体組織試料を獲得し、(b)この試料をグループI、グループII、グループIII、グループIV、グループVおよびグループVIの抗体グループの少なくとも3種からの少なくとも各1個の抗体と接触させ、(c)抗体反応を検出し、かつ反応パターンを作成し、(d)(c)で得られた反応パターンと、技術水準から公知であって、検出試験中におけるその存在を試験すべきC.ディフィシル菌株の参考パターンと比較し、(e)(c)で得られた反応パターンと参考パターンとの一致を、それぞれの参考試料のC.ディフィシル菌株が試料中に存在することの試料として評価する、ことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
クリストリジウムディフィシルは、3〜6μmの長さおよび約0.5μmの幅を有する、偏性嫌気性のグラム陽性桿菌である。クロストリジウム属は、バチルス科に属する。抗生物質関連大腸炎の重要な病原菌としてのC.ディフィシルの発見は、70年代の終わり頃である。C.ディフィシルの名称は、培養におけるゆっくりとした増殖および細菌の困難な単離に由来する。捕足血液寒天培地上で、大きく、灰色半透明のコロニーが溶血現象なく増殖する。すべてのクロストリジウムのように、C.ディフィシルは芽胞形成能を有する。この方法で、この細菌は極端な環境条件下であっても生存することができる。
【0002】
健康な成人は、胃腸管中に2〜7%だけのC.ディフィシルを有する。抗生物質治療の間に、生理的寄生菌の保護作用が阻害され、かつ腸においてC.ディフィシルで覆われる。このようにして生じるクロストリジウムディフィシル関連疾患(CDAD)は、存在するC.ディフィシル菌株の毒性に依存して、その深刻度に関しては様々である。臨床的所見は、軽度の下痢から発熱および痙攣様の腹痛を伴う深刻な偽膜性大腸炎および深刻な合併症、たとえば大腸穿孔、敗血症および中毒性巨大結腸に亘る。毒性の要因として、先ず、エンテロトキシン(トキシンA)およびサイトトキシン(トキシンB)が挙げられる。これらの毒素は、大型クロストリジウム毒素(LCT、大クロストリジウム毒素)のファミリーに属し、かつ、グリコシルトランスフェラーゼ活性を有する。その上いくつかの菌株は、さらなる毒性の要因として議論されている2成分毒素CDT(ADP−リボシルトランスフェラーゼ)のための遺伝子を有する。
【0003】
C.ディフィシル菌株は、いわゆる標準菌株とその変異体との間で区別される。標準C.ディフィシル菌株は、一般にトキシノタイプ0の菌株と呼称される。これに関して、種々のリボタイプ、たとえば001、003および012を有する菌株が含まれる。トキシノタイプ0の菌株の菌株は、トキシンAおよびB双方の遺伝子の存在、その代わりに2成分毒素の遺伝子の欠失によって特徴付けられる。
【0004】
近年、標準C.ディフィシル菌株以外の数多くの異なるC.ディフィシル変異株が、次第に増大する臨床的重要性を有し、かつさらにペット(特にイヌ、ネコ)および家畜(特にウシおよびブタ)で検出されていることが示された。
【0005】
そうこうするうちに2003年以来、カナダ、米国、イギリスおよび他の多くの欧州の国々で、その土地でしばしば発生する、C.ディフィシル菌株による深刻な感染症が観察された。
【0006】
これらの深刻な感染症との関係で単離されたC.ディフィシル変異株は、トキシンAに関する遺伝子(tcdA)およびB(tcdB)と同様にCDTに関する遺伝子を有し、かつ、その調節遺伝子tcdCにおける部分的欠失を示す。
【0007】
PCR−リポタイプ027、トキシノタイプIII、REA−B1およびPFGE NAP1由来のこれらの高い毒性のC.ディフィシル菌株は、調節遺伝子tcdC中で18bpの欠失および117位でのフレームシフトを有し、この場合、これは、そのin vitroで証明された増加した毒素産生の要因として、かつその増加した毒性の原因として推測される。これらの菌株は、さらに通常のC.ディフィシル菌株と比較して変化した表面タンパク質およびヒト腸上皮細胞に対する増加した付着性を示すことにより特徴付けられる。さらにこれらの菌株は、gryA/Bに関する遺伝子および23sRNAにおける変異に基づいて、フロロキノロンの作用物質クラスの抗生物質に対して、ならびに抗生物質エリスロマイシンに対して耐性であることが推測される。
【0008】
以下、これらの高い毒性を有するC.ディフィシル菌株を「C.d.−027−hv」と略す。
【0009】
これまでC.ディフィシルによる感染の多くの患者は60歳以上であったが、C.d.−027−hvはさらに若い患者において、かつさらに病院以外では従来少ないリスクを有する患者においても検出される。その死亡率は、従来検出されたC.ディフィシル菌株に対して5倍程度増加する。
【0010】
臨床的に関連するC.ディシル菌株の他の群は、リボタイプ017、トキシンタイプVIIIおよびセロタイプFとしてクラス分けされる。これらの菌株は、tcdA遺伝子中で1.7kBの大きな欠失を示し、かつ早期の停止コドンに基づいてトキシンAを発現しないことによって基本的には特徴付けられる。この菌株は、クリンダマイシンおよびフルオロキノロンに対する抗生物質耐性を示し、これは2成分毒素CDTに関する遺伝子を欠失しており、かつさらに調節遺伝子tcdCの欠失を示す。このような菌株の発生は、特に米国、日本、イスラエル、アイルランドおよびオランダにより報告されている。このような感染症の患者の死亡率は、標準菌株の死亡率を14〜66%上回る。
【0011】
以下、これらの高い毒性を有するC.ディフィシル変異株を「C.d.−017−hv」と略す。
【0012】
C.ディフィシルの診断学的検出は、通常、トキシンAの検出により実施され、ヒトの場合にはさらにトキシンAとBとの組合せ検出を実施する。C.ディフィシル変異株の検出はこの方法では可能ではない。変異菌株は、全く検出されないか(トキシンA陰性菌株)あるいは個々には検出されない。
【0013】
変異したC.ディフィシル変異株の同定および特徴付けのために、これらを類型化することは必要不可欠である。C.ディフィシルを類型化するための方法は、技術水準から知られており、たとえばトキシノタイプ、セロタイプ、リボタイプによる類型化であるか、あるいはPRGEまたはREAによる類型化である。しかしながらこれらすべての方法は、手間と時間がかかり、特定の実験室においてのみ実施されるものであって、あらかじめ、対象となるC.ディフィシル菌株のコストのかかる単離を必要とする。
【0014】
特定のC.ディフィシル菌株を正確に同定するために、さらに、大抵においてなおもさらなる試験が要求され、これはたとえばC.d.−027−hvの場合には、抗生物質耐性およびtcdC遺伝子における欠失の検出である。
【0015】
したがって、実験室内の実施における、たとえばC.d.−027−hvの存在についての試験は、たとえば以下の方法である:
1.C.ディフィシルの検出を、一般にイムノアッセイによる患者の糞便におけるトキシンAおよび/またはBの検出により実施し、
2.陽性である場合:試験材料からのC.ディフィシル細菌を培養し、
3.細菌を適切に単離する場合:E−テスト中で、エリスロマイシン耐性およびモキシフロキサシン耐性の存在について試験し、
4.陽性の耐性検出の場合:リボタイプ027の存在について、DNA調製およびリボゾームRNA遺伝子のPCR増殖により試験し(リボタイプ類型化)(図1)、
5.リボタイプ027が陽性検出である場合:トキシン遺伝子tcdAおよびtcdBの双方、2成分毒素CDTのための遺伝子cdtA/Bおよび調節遺伝子tcdCにおける欠失を検出するために、部分的遺伝子型の類型化を行い、
6.試験された抗生物質耐性の双方および特徴付けされた遺伝子型パターンのすべての特徴が存在する場合:高い毒性を有するC.ディフィシル菌株リボタイプ027(C.d.−027−hv)の診断を行う。
【0016】
他の変異株および高い毒性を有するC.ディフィシル菌株のための類似する一連のものである、この従来の実験室内の実施における欠点は、特に、これは極めて時間消費的であることからなる:病原菌の単離および培養、抗生物質耐性の測定およびリボタイプ類型化のために7〜10日間の期間が必要である。
【0017】
医原性感染(院内感染)を回避し、かつ感染発生を制御する目的での最適な感染の監視のために、さらに患者および医療従事者を保護すると同時にコスト削減の理由から、この同定方法は特に迅速かつ可能な限り正確でなければならない。
【0018】
したがって本発明は、試料、特に患者試料(ヒトまたは動物の患者の試料)中における変異したC.ディフィシル菌株の迅速かつ安全な検出および同定のための方法を提供することに基づく。
【0019】
問題を解決するためのこの一連の課題は、特に(i)種々のC.ディフィシル菌株の毒素が、無類の領域により異なるものではないこと、(ii)特定のC.ディフィシル菌株のLCTsに対する特異的抗体を製造することは並大抵のことであること(EUは、たとえば特定の研究プログラムNo.37870、頭文字"EACCAD"に資金提供し、この場合、これはC.d.−027−hv菌株の研究を取り扱うものであって、かつ特にC.d.−027−hv菌株由来のLCTsに対するこのような抗体の産生を目的としている)、(iii)2成分毒素CDTは、さらに他のC.ディフィシル菌株から形成されること、および(iv)特定の遺伝子、たとえばtcdCにおける変異は、一般には糞便試料中で免疫学的に検出されるものではないこと、からなる。
【0020】
これらの課題は、以下の工程により特徴付けられる方法を提供することにより解決される:
(a)ヒトまたは動物の患者の生体排泄物試料および/または生体組織試料を獲得し、
(b)この試料を、グループI、グループII、グループIII、グループIV、グリープVおよびグループVIの少なくとも3種の抗体グループからのそれぞれ少なくとも1種の抗体と接触させ、その際、
グループIは以下の抗体:pan−TcdB抗体、を含み、
グループIIは以下の抗体:トキシンTcdB−10463およびTcdB−017と反応するが、トキシンTcdB−8864およびTcdB−027とは反応しない抗体、を含み、
グループIIIは以下の抗体:TcdB−10463とは反応するが、トキシンTcdB−8864、TcdB−017およびTcdB−027とは反応しない抗体、を含み、
グループIVは以下の抗体:トキシンTcdB−8864、TcdB−017およびTcdB−027とは反応するが、トキシンTcdB−10463とは反応しない抗体、を含み、
グループVは以下の抗体:トキシンTcdB−8864およびTcdB−027と反応するが、トキシンTcdB−10463およびTcdB−017とは反応しない抗体、を含み、
グループVIは以下の抗体:pan−TcdA抗体、を含み、
(c)抗体反応を検出し、かつ反応パターンを作成し、その際、それぞれ抗体グループI〜VIのそれぞれ(b)で使用された抗体を、検出された陽性抗体反応に関しては正の符号(たとえば"+")および検出された陰性抗体反応に関しては負の符号(たとえば"−")に分類し、かつ、
(d)(c)で得られた反応パターンと参考試料とを比較し、この場合、この参考試料は、技術水準において公知であり、かつ検出試験においてその存在を試験すべきC.ディフィシル菌株Rx1、Rx2、Rxiからのそれぞれの大クロストリジウム毒素(LCT)LCT−Rx1、LCT−Rx2、LCT−Rxiの少なくとも1種を、抗体グループI〜VIの少なくとも3種からなる工程(b)で選択された抗体との反応試験中で使用し、かつそれぞれのLCTおよび抗体グループI〜VIの少なくとも3種に関して得られた反応結果を、それぞれの抗体グループが、検出された陽性抗体反応の場合には正の符号(たとえば"+")であるか、検出された陰性抗体反応の場合には負の符号(たとえば"−")に分類されるようにしてパターン状に記録することにより得られたものであり、
(e)(c)で得られた反応パターンと参考パターンとの間の一致を、試料中において該当する参考パターンのC.ディフィシル菌株が存在することに関する指標として評価する、ことにより特徴付けられる。
【0021】
これに関してかつ以降において、次の意味を有する:
LCT:大クロストリジウム毒素、すなわちC.ディフィシル由来のトキシンAおよび/またはB、
TcdB−10463:C.ディフィシル菌株VPI−10563のトキシンB(=「標準−トキシン」)
TcdB−8864:C.ディフィシル菌株8864のトキシンB
TcdB−1470:C.ディフィシル菌株1470のトキシンB
TcdB−7002/8:C.ディフィシル菌株7002/8のトキシンB
TcdB−017:リボタイプ017を有するC.ディフィシル菌株のトキシンB
TcdB−027:リボタイプ027を有するC.ディフィシル菌株のトキシンB
pan−TcdA−抗体:すべての病原菌C.ディフィシル菌株のTcdA−タンパク質を認識する抗体(たとえばTTC8)
pan−TcdB−抗体:すべての病原菌C.ディフィシル菌株のTcdB−タンパク質を認識する抗体(たとえば2CV、TGC35)。
【0022】
本発明による方法の教示は、
(1.)C.ディフィシル由来のLCTsに対して、すなわち、トキシンAまたはトキシンBに対して調製された抗体を6個のグループに分類できるといった驚くべき発見に基づくものであり、これらのグループは、以下のような特徴を有する:
グループI=pan−TcdB抗体TGC35(DSM ACC2918)および2CV(DSM ACC2321)、ならびにTGC35および/または2CVと機能的および作用的に同一の抗体、
グループII=標準−トキシンTcdB−10463および変異したTcdB−017と反応するが、変異したトキシンTcdB−8864およびTcdB−027とは反応しない抗体、特に抗体TGC23(DSM ACC2917)およびこれと機能的および作用的に同一の抗体、
グループIII=標準−トキシンTcdB−10463と反応するが、変異したトキシンTcdB−8864、TcdB−017およびTcdB−027と反応しない抗体、特に抗体TGC41(DSM ACC2919)およびこれと機能的および作用的に同一の抗体、
グループIV=変異したトキシンTcdB−8864およびTcdB−017ならびにTcdB−027とは反応するが、標準−トキシンTcdB−10463とは反応しない抗体、特に抗体TGC16(DSM ACC2915)およびこれと機能的および作用的に同一の抗体;
グループV=変異したトキシンTcdB−8864およびTcdB−027とは反応するが、標準−トキシンTcdB−10463および変異したTcdB−017とは反応しない抗体、特に抗体TGC19(DSM ACC2916)およびこれと機能的および作用的に同一の抗体、
グループVI=すべての病原菌C.ディフィシル菌株のTcdA−タンパク質と反応するpan−TcdA抗体、特に抗体TTC8(DSM ACC2322)およびこれと機能的および作用的に同一の抗体(たとえばUS4879218中に記載された抗体PCG4);
及び
(2.)従来公知の毒性の変異したC.ディフィシル菌株またはそのLCTsがこれら6個のグループの抗体により、特にそのトキシンBをI〜Vの5種のグループの抗体により、それぞれ特徴的な反応パターンを示すといった驚くべき発見に基づくものであり、この場合、この反応パターンは、他の(高い)毒性を有する変異したC.ディフィシル菌株の毒素の反応パターンならびに標準C.ディフィシル菌株の毒素の反応パターンとは異なる。たとえば、高い毒性を有する変異したC.ディフィシル菌株C.d−027−hvが、グループI、II、III、IV、V、VIの順序での反応パターン"+−−+++"により特徴付けられる一方で、同様に高い毒性を有するC.ディフィシル菌株C.d−017−hvは、反応パターン"++−+−−"(同様にグループI、II、III、IV、V、VIの順序による)により特徴付けられる。
【0023】
現在知られており、かつ診断的に相当する毒性を有する変異した種々のC.ディフィシル菌株を同定および検出するために、一般には、異なる少なくとも3種の抗体グループからそれぞれ少なくとも1種の抗体が必要不可欠であり、かつ十分である。たとえば、通常の相当する変異したC.ディフィシル菌株由来のC.ディフィシル菌株C.d−027−hvと、標準−C.ディフィシル菌株を区別するために、3種のグループII、IVおよびVIの反応パターン、すなわち"−++"(グループII、IV、VIの順序による)が十分であり、C.ディフィシル菌株C.d−017−hvの識別または同定のために、3種のグループII、IVおよびVIの反応パターン、すなわち"++−"(同様にグループII、IV、VIの順序による)が十分である。
【0024】
本発明による方法を用いた場合には、特に以下の利点を伴う:
直接、糞便試料に基づいて、簡単な試験により、かつ数時間内に、定められた高い毒性を有する変異したC.ディフィシル菌株が存在するか否かについて確認することができる。Wirdらは、たとえばC.d−027−hvの存在について試験し、かつ、抗体グループI、IV、Vおよび/またはVIの少なくとも1種からなる1の抗体に対して陽性反応が示されない抗原−抗体反応パターンが得られる場合には、C.d−027−hv型の菌株が存在しないと間違いなく診断することができる。4種の抗体グループI、IV、VおよびVIのすべてに対する抗原−抗体反応パターンが陽性反応を示す場合には、極めて高い可能性で、C.d−027−hv菌株での感染が存在する。疑惑診断を確認するためにはその後に、抗生物質耐性、リボタイプ類型化および/または遺伝子分析(トキシン遺伝子tcdA、tcdBおよびtcdA/Bの検出ならびに特徴的欠失およびフレームシフトによるレギュレータ遺伝子tcdCの検出)の、時間およびコストのかかる特別な分析を実施することができ、またこれを実施すべきである。いいかえれば:本発明による方法は、従来の試験方法における最初の3個の工程(トキシン検出、細菌培養、抗生物質耐性)を置換し、かつ本質的に短縮された時間で、すなわち、従来数日かかるところを数時間で、試験すべき変異されたC.ディフィシル菌株、たとえばC.d.−027−hvによる感染が存在しない場合を、少なくとも間違いなく排除する診断が可能である。本発明による方法は、試験すべき変異したC.ディフィシル菌株、たとえばC.d.−027−hvまたはC.d−017−hvの存在を示される場合にはじめて、従来の試験方法において要求される時間およびコストのかかるさらなる工程(4、5および6)を実施する。
【0025】
さらに、たとえば予防的措置、たとえば分離、隔離、厳しい衛生的措置は、C.d.−027−hv感染またはC.d−017−hv感染のリスクが、本発明による検出試験の結果に基づいて実際に高いレベルで示される場合には、その後に集中的に使用することができる。
【0026】
グループI〜VIの抗体は、特にモノクローナル抗体である。原則として、本発明による方法のための抗体としてさらに当業者に公知の、天然の生物工学的に製造されたか、あるいは遺伝子光学的に製造された抗体代替物のすべて、たとえばキメラ抗体(Nanobodies)、アフィボディ(Affibodies)、アンチカリン、システイン−ノットミニタンパク質を考慮することができる。
【0027】
本発明の一の実施形態において、その実施において極めて良好であると証明されるのは、グループIからの少なくとも1種の抗体がモノクローナル抗体2CV(DSM ACC2321)またはモノクローナル抗体TGC35(DSM ACC2918)であること、および/またはグループIIからの少なくも1種の抗体がモノクローナル抗体TGC23(DSM ACC2917)であること、および/またはグループIIIからの少なくとも1種の抗体がモノクローナル抗体TGC41(DSM ACC2919)であること、および/またはグループIVからの少なくとも1種の抗体がモノクローナル抗体TGC16(DSM ACC2916)であること、および/またはグループVからの少なくとも1種の抗体がモノクローナル抗体TGC19(DSM ACC2916)であること、および/またはグループVIからの少なくとも1種の抗体がモノクローナル抗体TTC8(DSM ACC2322)であることである。
【0028】
生体排泄物試料は、その実施において特に糞便試料であり、かつ生体組織試料は特に血液試料である。
【0029】
変異したC.ディフィシル菌株の迅速かつ確実な検出が可能であることからその実施において特に適した方法のさらなる実施形態は、工程(b)中で、試料をそれぞれグループI、IVおよびVIからなるそれぞれ1種の抗体と接触させ、かつ工程(c)中で、グループI、IVおよびVIからの抗体の陽性反応が、高い毒性を有する変異したC.ディフィシル菌株の存在を示すことにより特徴付けられる。
【0030】
高い毒性を有するC.ディフィシル菌株リボタイプ027、PFGE−NAP1、REA−B1およびトキシノタイプIIIの迅速かつ信頼性の高い検出を可能にし、かつそれによってC.d.−027−hv試験の疑惑を低減させる方法の、実施のために特に適した実施形態は、工程(b)において、試料を、それぞれ抗体グループII、グループIVおよびグループVIからなるそれぞれ少なくとも1種の抗体と接触させ、かつ工程(c)において、グループIVおよびグループVIからの抗体の陽性反応、ならびにグループIIからの1種またはそれ以上の抗体の陰性反応が、リボタイプ027、PFGE−NP1、REA−B1、トキシノタイプIIIの型の高い毒性を有する変異したC.ディフィシル菌株の存在を示すことにより特徴付けられる。この実施形態はなおも、工程(b)において試料を、抗体グループIおよび/または抗体グループIIIおよび/または抗体グループVのそれぞれ少なくとも1種の抗体と接触させることにより、かつ工程(c)中でさらにグループIおよびグループVからの1種またはそれ以上の抗体との陽性反応、ならびにグループIIIからの1種またはそれ以上の抗体との陰性反応により、リボタイプ027、PFGE−NAP1、REA−B1、トキシノタイプIIIの高い毒性を有する変異したC.ディフィシル菌株の存在を示すことにより拡張することができる。
【0031】
高い毒性を有するC.ディフィシル菌株リボタイプ017、トキシノタイプVIIIおよびセロタイプFの迅速かつ信頼性の高い検出を可能にし、かつそれによってC.d.−017−hv試験の疑惑を低減させる方法の、実施のために同様に特に適したさらなる実施形態は、工程(b)中で、試料をそれぞれグループII、グループIVおよびグループVIの抗体グループからの少なくとも1種の抗体と接触させ、かつ工程(c)中でグループIIおよびグループIVからの抗体との陽性反応、ならびにグループVIからの1種またはそれ以上の抗体との陰性反応が、リボタイプ017、トキシノタイプVIIIおよびセロタイプFの型の高い毒性を有する変異したC.ディフィシル菌株の存在を示すことにより特徴付けられる。この実施形態はなおも、工程(b)において試料を、抗体グループIおよび/または抗体グループIIIおよび/または抗体グループVのそれぞれ少なくとも1種の抗体と接触させることにより、かつ工程(c)中でさらにグループIからの1種またはそれ以上の抗体との陽性反応、ならびにグループIIIおよびグループVからの抗体との陰性反応により、リボタイプ017、トキシノタイプVIIIおよびセロタイプFの高い毒性を有する変異したC.ディフィシル菌株の存在を示すことにより拡張することができる。
【0032】
本発明の基礎となる課題は、DSMZ(Braunschweig, Deutschland)に2008年6月5日付けで寄託された名称DSM ACC2916(TGC19)のハイブリドーマ細胞系から製造され、かつ本発明による方法において変異したC.ディフィシル菌株を検出および同定するために、特に、C.ディフィシル菌株リボタイプ027、PFGE−NAP1、REA−B1およびトキシノタイプIIIを検出および同定するための変法に適しており、かつこのような使用が予定される、モノクローナル抗体を調製することにより解決される。
【0033】
上記課題はさらに、DSMZ(Braunschweig, Deutschland)に2008年6月5日付けで寄託された名称DSM ACC2917(TGC23)のハイブリドーマ細胞系から製造され、かつ本発明による方法において変異したC.ディフィシル菌株を検出および同定するために、特にC.ディフィシル菌株リボタイプ017、トキシノタイプVIIIおよびセロタイプFを検出および同定するための変法に適しており、かつこのような使用が予定される、モノクローナル抗体を調製することにより解決される。
【0034】
上記課題はさらに、DSMZ(Braunschweig, Deutschland)に名称DSM ACC2915(TGC16)として寄託されたハイブリドーマ細胞系から製造され、かつ試料中において、変異したC.ディフィシル菌株を検出および同定するための方法において、特にリボタイプ017、トキシノタイプVIIIおよびセロタイプFを有するC.ディフィシル菌株、および/またはリボタイプ027、PFGE−NAP1、REA−B1およびトキシノタイプIIIを有するC.ディフィシル菌株を検出および同定するための変法における使用に適しており、かつこのような使用が予定される、モノクローナル抗体を提供することにより解決される。
【0035】
上記課題はさらに、DSMZ(Braunschweig, Deutschland)に名称DSM ACC2918(TGC35)として寄託されたハイブリドーマ細胞系から製造され、かつ試料中において、変異したC.ディフィシル菌株を検出および同定するための方法、特にリボタイプ017、トキシノタイプVIIIおよびセロタイプFを有するC.ディフィシル菌株、および/またはリボタイプ027、PEGE−NAP1、REA−B1およびトキシノタイプIIIを有するC.ディフィシル菌株を検出および同定するための変法における使用に適しており、かつこのような使用が予定される、モノクローナル抗体を提供することにより解決される。
【0036】
本発明を次に実施例に基づき詳細に説明する:
実施例中に挙げられた図を以下に示す:
図1:使用された菌株のリボタイプの類型化
菌株はStubbsらの方法によりリボタイプの類型化を実施し、かつ参考菌株との調整により種々のリボタイプに分類した。これに関して、菌株VPI−10463および菌株8864は、従来知られていないリボタイプであり、かつ菌株1470はリボタイプ017に、かつ菌株7002/8はリボタイプ027に分類した。マーカーバンドは、600bp、500bp、400bpおよび300bp(上から)で流した。
【0037】
図2:精製されたトキシンB変異体
種々のトキシン13個の変異体を、クマシー染色されたSDS−PAGE中で示す。それぞれのトキシンを1レーンあたり250〜400ng使用する。
【0038】
図3:モノクローナル抗トキシンB抗体の特異性の検出
種々のトキシンD変異体をSDS−PAGE中に導入し、ナイロン膜上にブロットし、引き続いて相当する抗体により発現させた。モノクローナル抗体TGC35(図3A)、TGC16(図3B)、TGC41(図3C)、TGC23(図3D)およびTGC19(図3E)の特異性が示される。
【0039】
図4:モノクローナル抗体の結合領域
図4Aは、トキシンBの構造を図示したものである。図4Bは、トキシンB内部の抗体の結合領域を表したものである。図4Cはモノクローナル抗体の反応性を示す。
【0040】
図5:C.ディフィシル菌株の参考パターン
4種の異なるC.ディフィシル菌株の培養上清中におけるトキシンAおよびトキシンB発現は、抗体グループI、II、IVおよびVIからの捕捉抗体の使用下で、サンドウィッチELISA法により試験した。捕捉抗体として、グループI:TGC35、グループII:TGC23、グループIV:TGC16、グループVI:TTC8からのものを使用した。C.ディフィシル菌株の認識パターンは、VPI−10463(図5A)、8864(図5B)、1470リボタイプ017(図5C)および7002/8リボタイプ027(図5D)を示す。
【0041】
図6:捕捉ELISA法中の種々のC.ディフィシル菌株の反応パターン
同定抗体として、グループIからTGC35、グループIIからTGC23、グループIVからTGC16およびグループVIからTTC8を使用した。図6Aにおいて、種々のC.ディフィシル菌株の結果および図6Bにおいて、さらなるC.ディフィシル菌株の結果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】使用された菌株のリボタイプを示す図
【図2】精製されたトキシンB変異体のSDS−PAGEによる図
【図3】特異的モノクローナル抗トキシンB抗体の検出を示す図
【図4】モノクローナル抗体の結合領域を示す図(A:トキシンBの構造を示す図、B:トキシンBの内部構造を示す図、C:モノクローナル抗体の反応性を示す図)
【図5A】C.ディフィシル菌株VPI−10463の培養上清中でのトキシンAおよびBの発現を示す図
【図5B】C.ディフィシル菌株8864の培養上清中でのトキシンAおよびBの発現を示す図
【図5C】C.ディフィシル菌株1470の培養上清中でのトキシンAおよびBの発現を示す図
【図5D】C.ディフィシル菌株7002/8の培養上清中でのトキシンAおよびBの発現を示す図
【図6A】種々のC.ディフィシル菌株の捕捉ELISA法における結果を示す図
【図6B】種々のC.ディフィシル菌株の捕捉ELISA法における結果を示す図
【実施例】
【0043】
例1:C.ディフィシル由来のトキシンBと特異的に反応するモノクローナル抗体の製造
(A)種々のC.ディフィシル菌株からの精製されたC.ディフィシルトキシンBの獲得
以下のC.ディフィシル菌株を使用した:
VPI−10463(ATCC43255)、
8864(CCUG20309)、
1470(ATCC43598)、および
7002/8(患者試料からのヒト単離物)
【0044】
菌株を、Stubbsら(1999年)によるリボタイプ類型化法により、リボタイプを類型化した。これに関する結果は、図1に示す。これにより、菌株1470がリボタイプ017に、かつ菌株7002/8がリボタイプ027に相当する一方、菌株VPI−10463および8864は従来知られていないリボタイプに分類されることが示された。
【0045】
菌株VPI−10463由来の発現したトキシンB(TcdB−10463)は、技術水準において一般に標準−トキシンと呼称される。
【0046】
菌株8864は、特に標準−トキシンとはC−末端レセプター結合ドメインにおいて異なるこれらトキシンの変異体(TcdB−8864)を製造する(Soehnetら、1998年)。
【0047】
菌株1470は、特に標準−トキシンBとはN−末端酵素ドメインにおいて異なるトキシンB(TcdB−1470)を発現する(Eichel-Streiberら、1995年)。
【0048】
菌株7002/8リボタイプ027のトキシンBの配列は知られていない。これとは対照的にTcdB−027の配列は、2種の他のC.d.−027−hv菌株において測定した(菌株QCD−32g58、ジーンバンク−Acc.番号NZ_AML00000000、菌株R20291、www.sanger.ac.uk)。これらのTcdB−027配列と標準−トキシンBおよび他の変異したTcdB−トキシンとの比較は、このTcdB−027が、N−末端酵素ドメイン中で標準−トキシンTcdB−10463に類似するが、しかしながらC−末端ドメインにおいては変異したトキシンTcdB−8864に類似することが示す。
【0049】
トキシンの精製のために、細菌を脳心臓浸出物栄養培地(Becton Dickinson, Heidelberg, Deutschland)中で嫌気性に導いた。引き続いてトキシンAおよびBをこれら培養物の上清から、Moosら(2000年)で記載されたようにして精製した。トキシンの純度はクマシーゲル中で試験した(図2参照)。
【0050】
C.ディフィシル菌株VPI−10463、8864および1470の単離および精製されたTcdBは、技術水準で知られ、かつ一般に使用された方法を用いて不活性化され、かつ不活性化の成果を細胞毒性試験中で検査した。
【0051】
(B)(A)からのトキシンB−変異体に対するモノクローナル抗体の獲得
一連のバッチにおいて、それぞれ不活性化されたトキシンB変異体TcdB−8864およびTcdB−1470ならびに標準−トキシンTcdB−10163を用いてそれぞれ複数のマウスを基礎免疫し、引き続いて2回の追加免疫を行った。免疫原に対する動物のタイターを測定し、かつ有意なタイターが発見された場合には脾臓を摘出した。単離された脾臓細胞は、技術水準から公知であって、かつ一般的に使用された方法を用いて、マウス−ミエローマ細胞系X63Ag8.653(ATCC CRL1580)と融合させ、かつこの融合細胞を引き続いて選択し、かつクローニングした。このようにして得られたハイブリドーマ−クローンを、免疫化に使用すべきトキシンBに対して特異的なモノクローナル抗体の製造において免疫的にスクリーニングした。
【0052】
全部で15個の融合を実施し、かつ最終的には21個の異なるハイブリドーマ細胞系を単離し、この場合、この細胞系は、トキシンB特異的抗体を発現するものである。
【0053】
さらなる試験のために、細胞培養上清からの抗体を精製した。このために、ハイブリドーマ細胞系を、血清不含の培地ISF−1(Biochrom, Berlin, Deutschland)中に導入し、かつ引き続いて250mlの容積中で、スピンナーシステム(Belico, Vineland, USA)中で、50rpmで、培養物のバイタル値(Vitalitat)が30%を下回るまで培養した。培養上清をプロテインAカラム(HiTrap MabSelect SuRe, GE Healthcare, Freiburg, Deutschland)を用いて精製した。精製した抗体の濃度は1〜2mg/mlであり、その純度はクマシーゲル中で試験した。
【0054】
例2:抗トキシンB−抗体の特徴付け
例1で生成された抗体の特徴付けのために、これらの抗体を、ウェスタンブロットにおいて試験した。
【0055】
さらに、先ずそれぞれ250〜400ngの標準−トキシンB−10463およびトキシンB変異体TcdB−8864、TcdB−017およびTcdB−027を、SDS−PAGE中に導入し、かつ引き続いてセミドライブロット法でナイロン膜上にブロッティングした。検出は、技術水準において公知の方法にしたがって実施した。トキシンの検出のために、例1で製造したモノクローナル抗体を使用した。
【0056】
TGC16、TGC19、TGC23、TGC35およびTGC41(それぞれ実験室における名称)を有する抗体に関する結果は、図3にまとめる:
この結果は、製造された抗体の大部分が種々のトキシンB変異体の亜群を識別し、かつ、特定のトキシン変異体のみが単一特異性でないことを示す。
【0057】
全部で11個の種々の抗体を同定し、この場合、これは標準−トキシンBおよびすべてのトキシンB変異体と結合する。これらのいわゆるpan−TcdB抗体の特徴付けられた典型例は抗体TGC35である。このTGC35を製造するハイブリドーマ細胞系は、DSMZ(Deutsche Sammlung fur Mikroorganismen und Zeilkulturen, Braunschweig, Deutschland)に2008年6月5日付けでDSM ACC2918の名称で寄託されている。
【0058】
いくつかの抗体は、標準トキシンと同様にトキシンTcdB−07と反応する。これら抗体グループの特徴的な典型例は、抗体TGC23である。このTGC23を製造するハイブリドーマ細胞系は、DSMZに2008年6月5日付けでDSM ACC2917の名称で寄託されている。
【0059】
いくつかの抗体は、標準−トキシンTcdB−10463と特異的に反応する。この抗体グループの特異的な典型例は、抗体TGC41である。このTGC42を製造するハイブリドーマ細胞系は、DSMZに2008年6月5日付けでDSMACC2919の名称で寄託されている。
【0060】
驚くべきことに、さらに2種の抗体を製造することができ、この場合、この抗体は、1種またはそれ以上のトキシンB変異体とは反応するが、標準−トキシンBとは反応しない。
【0061】
抗体TGC16は、標準トキシンBとは結合しないが、しかしながら変異したトキシンTcdB−8864、TcdB−017およびTcdB−027とは良好に結合する。このTGC16を製造するハイブリドーマ細胞系は、DSMZに2008年6月5日付けでDSM ACC2915の名称で寄託されている。
【0062】
抗体TGC19は、標準トキシンBまたは変異したトキシンTcdB−017とは結合しないが、しかしながら変異したトキシンTcdB−8864およびTcdB−027とは良好に結合する。このTGC19を製造するハイブリドーマ細胞系は、DSMZに2008年6月5日付けでDSM ACC2916の名称で寄託されている。
【0063】
抗体は、捕捉ELISA中でその抗原検出限界について試験した。これに関して、ELISAプレートは1ウェルあたり50μlのコーティングバッファー(50mM、Na2CO3、50mM NaHCO3、pH9.6)および250ngの各抗体を用いて、3時間に亘って室温でインキュベートし、かつ、その際、抗体はELISAプレートに堆積する。非特異的な結合部分は、200μlの5×WAPU(12.5mlのTritonX100、62.5mlの1Mトリス−HCl(pH7.5)、62.5mlの20%濃度のゼラチン溶液、H2Oで500mlまでにする)を用いて、30分に亘ってブロッキングした。引き続き、種々の濃度の抗原を、すなわち、TGC16およびTGC19の場合には抗原TcdB−027を、TGC23およびTGC35の場合には抗原TcdB−017を適用する。検出は、ポリクローナル血清で実施した(266ng/ml)。反応結果(ここには示していない)は、抗体TGC16およびTGC23に関して、それぞれのトキシンBに関する検出限界を<300pg/mlであり、抗体TGC35に関しては1ng/mlを下回り、かつ抗体TGC19に関しては1ng/mlを下回ることを示す。
【0064】
抗体TGC16、TGC19、TGC23、TGC35およびTGC41は、トキシンBに対するその結合位置に関して試験した。トキシンBのタンパク質溶解による消化であるか、あるいはE.Coli中の組み換えトキシンB部分フラグメントのクローニングおよび発現によって、トキシンBのタンパク質フラグメントを製造した。このトキシンB部分フラグメントは、ウェスタンブロット試験中で分離し、かつこのブロットを引き続いて抗体TGC16、TGC19、TGC23、TGC35およびTGC41を用いてインキュベートした。この消化結果は図4に図示し、かつ個々の抗体がトキシンB分子の種々の領域を認識するか、あるいは結合することを示す:すべてのアミノ酸位置の記載は、標準−トキシンTcdB−10463中の相当する位置に関して示す。
【0065】
TGC16はTcdB−8864、TcdB−017およびTcd−027と、それぞれグリコシルトランスフェラーゼドメインの範囲内で結合し、かつここでアミノ酸位置122〜261の範囲内である。
【0066】
TCG19はTcdB−8864およびTcd−027と、それぞれ、アミノ酸位置543〜2366の間のグリコシルトランスフェラーゼドメインの向こう側の範囲内で結合する。
【0067】
TGC23は、標準−トキシンおよびTcdB−017と、それぞれ、アミノ酸位置1692〜2113の間でC−末端から離れてリガンドドメイン中で結合する。
【0068】
TGC35は、標準−トキシン、TcdB−8864、TcdB−017およびTcd−027と、それぞれ、トキシンのN−末端のグリコシルトランスフェラーゼドメインとC−末端のリガンドドメインとの間のトランスロケーションドメインの範囲内でアミノ酸位置543〜1692の間で結合する。
【0069】
TGC41は、標準−トキシンとTGC16と同様に結合し、これは、グリコシルトランスフェラーゼドメインの範囲内であり、かつそこではアミノ酸位置122〜261の範囲であることを意味する。
【0070】
TGC16およびTGC41は、同じトキシンB領域中、すなわち、グリコシルトランスフェラーゼ領域中で結合するが、しかしながら異なるトキシンB変異体、すなわち、一方において標準−トキシン(TGC41)と結合し、かつ他方においてTcdB−8864、TcdB−017およびTcd−027(TGC16)と結合する。したがって、標準トキシンBであるTcdB−10463と変異したトキシンTcdB−8864、TcdB−017およびTcd−027との間で特異的識別が可能なトキシンB中での領域を初めて同定した。驚くべきことに、この領域はまさに、トキシンBの酵素活性を介在するグリコシルトランスフェラーゼドメインである。この酵素活性は、原則、すべてのトキシンBにおいて同一である。
【0071】
一連の本発明による新たに製造された抗体は、抗体(抗体グループ/抗体クラス)とは異なるグループ(クラス)を作成し、この場合、これは、標準−トキシンBとの反応性および種々のトキシンB変異体との反応性に関して互いに異なっている。
【0072】
pan−TcdB−抗体のグループは、以下グループIと呼称する。このグループの典型例は、モノクローナル抗体TGC35および2CVである(EP 0994904から知られている)。
【0073】
標準−トキシンおよびトキシンTcdB−017と反応するが、しかしながら変異したトキシンTcdB−027およびTcdB8864とは反応しない、これら抗体のグループは、以下グループIIとして呼称する。このグループの典型例は、モノクローナル抗体TGC23である。
【0074】
標準トキシンTcdB−10463と反応するが、しかしながら変異したトキシンTcdB−027、TcdB−8864およびTcdB−1470とは反応しない、これら抗体のグループは、以下グループIIIとして呼称する。このグループの典型例は、モノクローナル抗体TGC41である。
【0075】
標準トキシンBとは反応しないが、しかしながらトキシンTcdB−8864、Tcd−017およびTcdB−027と良好に反応するこれら抗体のグループは、以下グループIVと呼称する。このグループの典型的な例は、モノクローナル抗体TGC16である。
【0076】
標準トキシンBまたはトキシンTcdB−017とは反応しないが、しかしながらトキシンTcdB−8864およびTcdB−027とは良好に反応するこれら抗体のグループは、以下グループVと呼称する。このグループの典型例は、モノクローナル抗体TGC19である。
【0077】
文献からpan−TcdA特異的抗体のグループ以外のものが知られており、これは以下グループVIと呼称する。このグループの典型例は、モノクローナル抗体TTC8である(EP0994904から知られている)。
【0078】
例3:捕捉ELISA中でのLctsの検出−抗体グループI、II、IVおよびVIの使用下で公知の種々のC.ディフィシル菌株のための抗原抗体−参考パターンの作成
原則として、抗原抗体−参考パターンの作成を以下のようにして実施する:技術水準から公知であって、かつ検出試験中でその存在について試験すべきC.ディフィシル菌株Rx1、Rx2、RXiから、それぞれ少なくともトキシンB、特に双方の大クロストリジウムトキシン(LCTs)を獲得する(培養上清または精製トキシンの形で)。これら公知のトキシンLCT−Rx1、LCT−Rx2、LCT−Rxiを用いて、特にそれぞれ抗体グループI〜VIからのそれぞれ少なくとも1種の抗体を用いて反応試験を実施する。それぞれのLCT(LCT−Rx1、LCT−Rx2、LCT−Rxi)および使用された抗体グループに関して得られた反応結果は、それぞれの抗体グループが、検出された陽性抗体反応の場合には正の符号(たとえば"+")であるか、あるいは検出された陰性抗体反応の場合には負の符号(たとえば"−")に分類されるように記録する。
【0079】
前記例では、具体的に以下のように実施した:
ELISAプレートに、例2で記載した精製した抗体TGC35(グループI)、TGC23(グループII)、TGC16(グループIV)およびTTC8(グループVI)を以下のようにして添加した:1ウェルあたり、250ngの各抗体を含む、50μlのコーティングバッファー(50mM Na2CO3、50mM NaHCO3、pH9.6)を3時間に亘って室温でインキュベートし、かつ、その際、抗体は、ELISAプレートに堆積した。引き続いて、非特異的な結合部分を、200μlの5×WAPU(12.5mlのTritonX100、62.5mlの1Mトリス−HCl(pH7.5)、62.5mlの20%濃度のゼラチン溶液、H2Oで500mlまでにする)を用いて、30分に亘ってブロッキングした。
【0080】
C.ディフィシル菌株10463、8864、1470および7002/8は、例1に記載するようにして調製し、かつ培養上清の50μlのアリコートを、抗体で被覆されたマイクロタイタープレート上に提供した。非特異的に結合したタンパク質を、TBST(150mM NaCl、10mMトリス、0.05%Tween20、pH8.0)を用いて、3回の洗浄により除去した。引き続いて、場合によりそれぞれの抗体と結合したトキシンを、捕捉ELISA中で、50μlのポリクローナル抗トキシンB血清(266ng/ml)で検出した。検出を、標準的な方法で、アルカリホスファターゼを用いて実施した。
【0081】
これらELISAの結果は、図5に図示する。図5から、4種の異なるC.ディフィシル菌株のそれぞれが4種の使用された抗体を用いて、他の菌株の反応パターン異なるいくつかのその特異的な反応パターンを示すことが明らかである。
【0082】
菌株VPI−10463の上清は、抗体TGC35/グループI、TGC23/グループIIおよびTTC8/グループVIと陽性に反応し、かつTGC16/グループIVと陰性に反応する(図5A参照)。
【0083】
菌株8864の上清は、抗体TGC35/グループIおよびTGC16/グループIVと陽性に反応し、かつTGC23/グループIIおよびTTC8/グループVIと陰性に反応する(図5B参照)。
【0084】
菌株1470(リボタイプ017)の上清は、抗体TGC35/グループI、TGC23/グループIIおよびTGC16/グループIVと陽性に反応し、かつ、TTC8/グループVIと陰性に反応する(図5C参照)。
【0085】
菌株7002/8(リボタイプ027)の上清は、抗体TGC35/グループI、TGC16/グループIVおよびTTC8/グループVIと陽性に反応し、かつTGC23/グループIIと陰性に反応する(図5D参照)。
【0086】
リボタイプ027のC.ディフィシル菌株のトキシンBと、抗体グループI〜VIの抗体の種々の組合せとの平行試験におけるこれらの結果を検討することにより、TcdB−027とグループI、IV、VおよびVIの抗体とは常に陽性であり、かつグループIIおよびIIIの抗体とは常に陰性に反応することが確認される。
【0087】
いいかえれば:グループI、グループII、グループIII、グループIV、グループV、グループVIの順序で6種の抗体グループの抗体との、公知ではないC.ディフィシル菌株のトキシンBの反応パターン"+−−+++"は、この公知ではないC.ディフィシル菌株がリボタイプ−027であり、さらにこれに関して高い毒性を有する菌株C.d.−027hvが含まれるとの推論を可能にする。
【0088】
リボタイプ017のC.ディフィシル菌株のトキシンBと、抗体グループI〜VIの抗体の種々の組合せとの平行試験におけるこれらの結果を検討することにより、TcdB−017とグループI、IIおよびIVの抗体とは常に陽性であり、かつグループIII、VおよびVIの抗体とは常に陰性に反応することが確認される。
【0089】
いいかえれば:グループI、グループII、グループIII、グループIV、グループV、グループVIの順序で6個の抗体グループの抗体との、公知ではないC.ディフィシル菌株のトキシンBの反応パターン"++−+−−"は、公知ではないC.ディフィシル菌株がリボタイプ−017であり、さらにこれに関して高い毒性を有する菌株C.d.−017hvが含まれるとの推論を可能にする。
【0090】
例4:抗原抗体反応−参考パターンに基づくC.ディフィシルリボタイプの同定
抗原抗体反応−参考パターンを作成するために、例3に記載されたようにして実施する。
【0091】
試料−特異的反応パターンを作成するために、以下のようにして実施する:
試験すべきC.ディフィシル菌株を公知の方法で調製し、かつその上清または精製したトキシンを試験する。このためにグループI、II、III、IV、VおよびVIの少なくとも2種、特に3種または4種からなるそれぞれ少なくとも1種の抗体、たとえば抗体TGC16、TGC19、TGC23、TGC41、TGC35およびTTC81を、当業者に公知であって、かつ一般的に使用されている方法で、適した表面、たとえば膜上に適用する。
【0092】
引き続いて試料をこれら抗体(以下、同定抗体とする)と接触させる。これに関して適した方法は、当業者に知られており、たとえばELISAまたはEP 1143248に記載されているようないわゆる「側方流(lateral flow)」法である。
【0093】
工程特異的な反応時間の終了時において、それぞれのバッチから非結合試料材料を除去する(洗浄)。
【0094】
いずれの同定抗体が試料との抗原抗体−反応を示し、かついずれが反応していないのか検出するために、検出抗体を使用する。検出抗体として、トキシンAおよびトキシンBに対するポリクローナル血清(単一特異性または交差反応性)を使用するか、あるいはさらにグループI、II、III、IV、VまたはVIの1種またはそれ以上からなる抗体を使用する。検出抗体の選択に際して、その目的とするエピトープが、同定抗体の目的とするエピトープと異なるか、あるいは原則としてそれぞれのトキシン中で数倍存在することを考慮すべきであり、それにより、検出抗体は、トキシンとの複合体の形で同定抗体に結合することができる。検出抗体は、適したマーカー、たとえばコロイダルコールド、炭素粒子またはラテックス粒子であるか、あるいは酵素マーカー、たとえばHRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)またはアルカリホスファターゼを用いて標識する。
【0095】
検出抗体は、試料の適用前であるか、試料と一緒に、あるいは、同定抗体と試料との工程特異的な反応時間の終了後に、バッチに添加する。
【0096】
工程特異的な反応時間の終了時に、同定抗体と結合していない試料−トキシンおよび試料中に同時に存在する汚染物であるタンパク質を除去し(洗浄除去)、同定抗体、試料−トキシンおよび検出抗体からなる複合体(Komplex)が形成される場合には、マーカーシグナル(正のシグナル"+")のみが生じる。
【0097】
それぞれの同定抗体に関して得られるマーカーシグナル"+"または"−"を、反応パターンの形でまとめる。このような反応パターンは、たとえば図5Aのようにして表すことができる。この場合において、参考パターンとの比較は、C.ディフィシル菌株VPI−10463が存在するという結果(または疑惑診断)を導く。
【0098】
反応パターンが、たとえば図5Bのようにして表される場合には、参考パターンとの比較はC.ディフィシル菌株8864が存在するという結果(疑惑診断)を導く。反応パターンがたとえば図5Bのようにして表される場合には、参考パターンとの比較は、C.ディフィシル菌株8864が存在するという結果(疑惑診断)を導く。反応パターンがたとえば図5Cのようにして表される場合には、参考パターンとの比較は、C.ディフィシル菌株1470またはC.ディフィシル菌株リボタイプ017が存在するといった結果(疑惑診断)を導く。反応パターンが、たとえば図5Dのようにして表される場合には、参考パターンとの比較は、C.ディフィシル菌株7002/8またはC.ディフィシル菌株リボタイプ027が存在するといった結果(疑惑診断)を導く。
【0099】
例5:種々のC.ディフィシル菌株のグループI、II、IV、VIの抗体での分析
以下の試験において、種々のC.ディフィシル菌株を同定および検出するための本発明による方法を、公知のリボタイプを有する一連の菌株、すなわち、リボタイプ027(Lumc-1、Lumc-2、Lumc-3、Lumc-4、Lumc-5、Lumc-6、Lumc-8、Lumc-9、Lumc-10、Lumc-11、Lumc-12、Lumc-13、Lumc-14、Lumc-16、Lumc-17、Lumc-19、Lumc-20、Lumc-21、7002-42)の19種の菌株、リボタイプ017の4種の菌株(Lumc-22、Lumc-23、Lumc-40、Lumc-41)、リボタイプ001の2種の菌株(7002-29、7002-43)およびリボタイプ014の1種の菌株(Lumc-31)に基づいて実施した。参考菌株として、菌株VPI−10463、8864および7002/8を使用した。グループI、II、IVおよびVIの抗体は、捕捉ELISA中で使用し、かつ得られた反応パターンと作成された反応パターンとを比較した(例3参照)。
【0100】
種々のC.ディフィシル菌株は例1に記載するようにして調製し、かつその上清を引き続いての試験において使用した。同定抗体として、抗体TGC35(グループI)、TGC23(グループII)、TGC16(グループVI)を例3で記載したようにしてELISAプレートに添加した。これに関してそれぞれ250ng/ウェルでTGC23、128ng/ウェルでTGC16およびTGC35、ならびに1μg/ウェルでTTC8を使用し、かつこのプレートを引き続いてPBS中で洗浄した。
【0101】
ELISAsを実施するために、プレートの非特異的結合部分を先ずPBS+3%BSA中で、37℃でインキュベートすることによりブロッキングした。引き続いてC.ディフィシル培養の上清50μl/ウェルを適用し、かつこのプレートを再度37℃で1時間に亘ってインキュベートした。非結合タンパク質を、PBS+3%BSAの3回の洗浄により除去した。検出抗体として、TGC35、TGC16およびTGC23の場合には、ビオチン標識化ポリクローナル抗トキシンB血清(0.32μg/ml)を使用した。トキシンA検出の場合には、ビオチン化された形での抗体TTC8をさらに検出抗体として使用した。PBS+3%BSAでの再度の洗浄後に、1ウェルあたり50μlのストレプトアビジン−HRP(0.1μg/ml、Pierce, Rockford, USA)を添加し、かつこのプレートを37℃で1時間に亘ってインキュベートした。引き続いてこのプレートをPBSで洗浄し、かつ検出のために、50μl/ウェルのTMB(1-Step Ultra TMB、Pierce, Rockford, USA)を使用した。このプレートを室温で暗室下で30分に亘ってインキュベートし、引き続いてこの反応を100μl/ウェルの2M H2SO4により停止した。評価はOD450により空値に対して実施した。カットオフ値を0.5と定めた。
【0102】
この試験結果は、図6Aおよび図6Bに模式図的に表す:
− 19個の種々の菌株において、グループI、II、IVおよびVIの順序で反応パターン"+−++"を検出した。
【0103】
− 4個の種々のC.d−017−hv菌株において、グループI、II、IVおよびVIの順序で反応パターン"+++−"を検出した。017菌株の分析は、この菌株がin vitroで総じて相対的に少ない毒素を製造することを示す(さらにTGC35シグナルも比較的弱いものである)。しかしながら、この菌株においてのみ、抗体TGC23(DSMACC2917)とトキシンB−017との特異的反応が生じることが明らかである。すべての他の上清(すなわち、C.d.−027−hv菌株ならびにすべての試験されたリボタイプ001菌株)の場合における検出抗体TGC23の使用の再には、値が0.4を上回ることがないのに対してC.d.−017−hv菌株は、それぞれカットオフ値0.5を顕著に上回る吸収値を示す。
【0104】
グループI、II、IVおよびVIの順序での抗原−抗体反応パターン"+−++"は、試験された菌株がC.d.−027−hv菌株であるといった結果を導き、かつグループI、II、IVおよびVIの順序での反応パターン"+++−"である場合には、C.d.−017−hv菌株が存在することが結論付けられなければならない。
【0105】
【技術分野】
【0001】
クリストリジウムディフィシルは、3〜6μmの長さおよび約0.5μmの幅を有する、偏性嫌気性のグラム陽性桿菌である。クロストリジウム属は、バチルス科に属する。抗生物質関連大腸炎の重要な病原菌としてのC.ディフィシルの発見は、70年代の終わり頃である。C.ディフィシルの名称は、培養におけるゆっくりとした増殖および細菌の困難な単離に由来する。捕足血液寒天培地上で、大きく、灰色半透明のコロニーが溶血現象なく増殖する。すべてのクロストリジウムのように、C.ディフィシルは芽胞形成能を有する。この方法で、この細菌は極端な環境条件下であっても生存することができる。
【0002】
健康な成人は、胃腸管中に2〜7%だけのC.ディフィシルを有する。抗生物質治療の間に、生理的寄生菌の保護作用が阻害され、かつ腸においてC.ディフィシルで覆われる。このようにして生じるクロストリジウムディフィシル関連疾患(CDAD)は、存在するC.ディフィシル菌株の毒性に依存して、その深刻度に関しては様々である。臨床的所見は、軽度の下痢から発熱および痙攣様の腹痛を伴う深刻な偽膜性大腸炎および深刻な合併症、たとえば大腸穿孔、敗血症および中毒性巨大結腸に亘る。毒性の要因として、先ず、エンテロトキシン(トキシンA)およびサイトトキシン(トキシンB)が挙げられる。これらの毒素は、大型クロストリジウム毒素(LCT、大クロストリジウム毒素)のファミリーに属し、かつ、グリコシルトランスフェラーゼ活性を有する。その上いくつかの菌株は、さらなる毒性の要因として議論されている2成分毒素CDT(ADP−リボシルトランスフェラーゼ)のための遺伝子を有する。
【0003】
C.ディフィシル菌株は、いわゆる標準菌株とその変異体との間で区別される。標準C.ディフィシル菌株は、一般にトキシノタイプ0の菌株と呼称される。これに関して、種々のリボタイプ、たとえば001、003および012を有する菌株が含まれる。トキシノタイプ0の菌株の菌株は、トキシンAおよびB双方の遺伝子の存在、その代わりに2成分毒素の遺伝子の欠失によって特徴付けられる。
【0004】
近年、標準C.ディフィシル菌株以外の数多くの異なるC.ディフィシル変異株が、次第に増大する臨床的重要性を有し、かつさらにペット(特にイヌ、ネコ)および家畜(特にウシおよびブタ)で検出されていることが示された。
【0005】
そうこうするうちに2003年以来、カナダ、米国、イギリスおよび他の多くの欧州の国々で、その土地でしばしば発生する、C.ディフィシル菌株による深刻な感染症が観察された。
【0006】
これらの深刻な感染症との関係で単離されたC.ディフィシル変異株は、トキシンAに関する遺伝子(tcdA)およびB(tcdB)と同様にCDTに関する遺伝子を有し、かつ、その調節遺伝子tcdCにおける部分的欠失を示す。
【0007】
PCR−リポタイプ027、トキシノタイプIII、REA−B1およびPFGE NAP1由来のこれらの高い毒性のC.ディフィシル菌株は、調節遺伝子tcdC中で18bpの欠失および117位でのフレームシフトを有し、この場合、これは、そのin vitroで証明された増加した毒素産生の要因として、かつその増加した毒性の原因として推測される。これらの菌株は、さらに通常のC.ディフィシル菌株と比較して変化した表面タンパク質およびヒト腸上皮細胞に対する増加した付着性を示すことにより特徴付けられる。さらにこれらの菌株は、gryA/Bに関する遺伝子および23sRNAにおける変異に基づいて、フロロキノロンの作用物質クラスの抗生物質に対して、ならびに抗生物質エリスロマイシンに対して耐性であることが推測される。
【0008】
以下、これらの高い毒性を有するC.ディフィシル菌株を「C.d.−027−hv」と略す。
【0009】
これまでC.ディフィシルによる感染の多くの患者は60歳以上であったが、C.d.−027−hvはさらに若い患者において、かつさらに病院以外では従来少ないリスクを有する患者においても検出される。その死亡率は、従来検出されたC.ディフィシル菌株に対して5倍程度増加する。
【0010】
臨床的に関連するC.ディシル菌株の他の群は、リボタイプ017、トキシンタイプVIIIおよびセロタイプFとしてクラス分けされる。これらの菌株は、tcdA遺伝子中で1.7kBの大きな欠失を示し、かつ早期の停止コドンに基づいてトキシンAを発現しないことによって基本的には特徴付けられる。この菌株は、クリンダマイシンおよびフルオロキノロンに対する抗生物質耐性を示し、これは2成分毒素CDTに関する遺伝子を欠失しており、かつさらに調節遺伝子tcdCの欠失を示す。このような菌株の発生は、特に米国、日本、イスラエル、アイルランドおよびオランダにより報告されている。このような感染症の患者の死亡率は、標準菌株の死亡率を14〜66%上回る。
【0011】
以下、これらの高い毒性を有するC.ディフィシル変異株を「C.d.−017−hv」と略す。
【0012】
C.ディフィシルの診断学的検出は、通常、トキシンAの検出により実施され、ヒトの場合にはさらにトキシンAとBとの組合せ検出を実施する。C.ディフィシル変異株の検出はこの方法では可能ではない。変異菌株は、全く検出されないか(トキシンA陰性菌株)あるいは個々には検出されない。
【0013】
変異したC.ディフィシル変異株の同定および特徴付けのために、これらを類型化することは必要不可欠である。C.ディフィシルを類型化するための方法は、技術水準から知られており、たとえばトキシノタイプ、セロタイプ、リボタイプによる類型化であるか、あるいはPRGEまたはREAによる類型化である。しかしながらこれらすべての方法は、手間と時間がかかり、特定の実験室においてのみ実施されるものであって、あらかじめ、対象となるC.ディフィシル菌株のコストのかかる単離を必要とする。
【0014】
特定のC.ディフィシル菌株を正確に同定するために、さらに、大抵においてなおもさらなる試験が要求され、これはたとえばC.d.−027−hvの場合には、抗生物質耐性およびtcdC遺伝子における欠失の検出である。
【0015】
したがって、実験室内の実施における、たとえばC.d.−027−hvの存在についての試験は、たとえば以下の方法である:
1.C.ディフィシルの検出を、一般にイムノアッセイによる患者の糞便におけるトキシンAおよび/またはBの検出により実施し、
2.陽性である場合:試験材料からのC.ディフィシル細菌を培養し、
3.細菌を適切に単離する場合:E−テスト中で、エリスロマイシン耐性およびモキシフロキサシン耐性の存在について試験し、
4.陽性の耐性検出の場合:リボタイプ027の存在について、DNA調製およびリボゾームRNA遺伝子のPCR増殖により試験し(リボタイプ類型化)(図1)、
5.リボタイプ027が陽性検出である場合:トキシン遺伝子tcdAおよびtcdBの双方、2成分毒素CDTのための遺伝子cdtA/Bおよび調節遺伝子tcdCにおける欠失を検出するために、部分的遺伝子型の類型化を行い、
6.試験された抗生物質耐性の双方および特徴付けされた遺伝子型パターンのすべての特徴が存在する場合:高い毒性を有するC.ディフィシル菌株リボタイプ027(C.d.−027−hv)の診断を行う。
【0016】
他の変異株および高い毒性を有するC.ディフィシル菌株のための類似する一連のものである、この従来の実験室内の実施における欠点は、特に、これは極めて時間消費的であることからなる:病原菌の単離および培養、抗生物質耐性の測定およびリボタイプ類型化のために7〜10日間の期間が必要である。
【0017】
医原性感染(院内感染)を回避し、かつ感染発生を制御する目的での最適な感染の監視のために、さらに患者および医療従事者を保護すると同時にコスト削減の理由から、この同定方法は特に迅速かつ可能な限り正確でなければならない。
【0018】
したがって本発明は、試料、特に患者試料(ヒトまたは動物の患者の試料)中における変異したC.ディフィシル菌株の迅速かつ安全な検出および同定のための方法を提供することに基づく。
【0019】
問題を解決するためのこの一連の課題は、特に(i)種々のC.ディフィシル菌株の毒素が、無類の領域により異なるものではないこと、(ii)特定のC.ディフィシル菌株のLCTsに対する特異的抗体を製造することは並大抵のことであること(EUは、たとえば特定の研究プログラムNo.37870、頭文字"EACCAD"に資金提供し、この場合、これはC.d.−027−hv菌株の研究を取り扱うものであって、かつ特にC.d.−027−hv菌株由来のLCTsに対するこのような抗体の産生を目的としている)、(iii)2成分毒素CDTは、さらに他のC.ディフィシル菌株から形成されること、および(iv)特定の遺伝子、たとえばtcdCにおける変異は、一般には糞便試料中で免疫学的に検出されるものではないこと、からなる。
【0020】
これらの課題は、以下の工程により特徴付けられる方法を提供することにより解決される:
(a)ヒトまたは動物の患者の生体排泄物試料および/または生体組織試料を獲得し、
(b)この試料を、グループI、グループII、グループIII、グループIV、グリープVおよびグループVIの少なくとも3種の抗体グループからのそれぞれ少なくとも1種の抗体と接触させ、その際、
グループIは以下の抗体:pan−TcdB抗体、を含み、
グループIIは以下の抗体:トキシンTcdB−10463およびTcdB−017と反応するが、トキシンTcdB−8864およびTcdB−027とは反応しない抗体、を含み、
グループIIIは以下の抗体:TcdB−10463とは反応するが、トキシンTcdB−8864、TcdB−017およびTcdB−027とは反応しない抗体、を含み、
グループIVは以下の抗体:トキシンTcdB−8864、TcdB−017およびTcdB−027とは反応するが、トキシンTcdB−10463とは反応しない抗体、を含み、
グループVは以下の抗体:トキシンTcdB−8864およびTcdB−027と反応するが、トキシンTcdB−10463およびTcdB−017とは反応しない抗体、を含み、
グループVIは以下の抗体:pan−TcdA抗体、を含み、
(c)抗体反応を検出し、かつ反応パターンを作成し、その際、それぞれ抗体グループI〜VIのそれぞれ(b)で使用された抗体を、検出された陽性抗体反応に関しては正の符号(たとえば"+")および検出された陰性抗体反応に関しては負の符号(たとえば"−")に分類し、かつ、
(d)(c)で得られた反応パターンと参考試料とを比較し、この場合、この参考試料は、技術水準において公知であり、かつ検出試験においてその存在を試験すべきC.ディフィシル菌株Rx1、Rx2、Rxiからのそれぞれの大クロストリジウム毒素(LCT)LCT−Rx1、LCT−Rx2、LCT−Rxiの少なくとも1種を、抗体グループI〜VIの少なくとも3種からなる工程(b)で選択された抗体との反応試験中で使用し、かつそれぞれのLCTおよび抗体グループI〜VIの少なくとも3種に関して得られた反応結果を、それぞれの抗体グループが、検出された陽性抗体反応の場合には正の符号(たとえば"+")であるか、検出された陰性抗体反応の場合には負の符号(たとえば"−")に分類されるようにしてパターン状に記録することにより得られたものであり、
(e)(c)で得られた反応パターンと参考パターンとの間の一致を、試料中において該当する参考パターンのC.ディフィシル菌株が存在することに関する指標として評価する、ことにより特徴付けられる。
【0021】
これに関してかつ以降において、次の意味を有する:
LCT:大クロストリジウム毒素、すなわちC.ディフィシル由来のトキシンAおよび/またはB、
TcdB−10463:C.ディフィシル菌株VPI−10563のトキシンB(=「標準−トキシン」)
TcdB−8864:C.ディフィシル菌株8864のトキシンB
TcdB−1470:C.ディフィシル菌株1470のトキシンB
TcdB−7002/8:C.ディフィシル菌株7002/8のトキシンB
TcdB−017:リボタイプ017を有するC.ディフィシル菌株のトキシンB
TcdB−027:リボタイプ027を有するC.ディフィシル菌株のトキシンB
pan−TcdA−抗体:すべての病原菌C.ディフィシル菌株のTcdA−タンパク質を認識する抗体(たとえばTTC8)
pan−TcdB−抗体:すべての病原菌C.ディフィシル菌株のTcdB−タンパク質を認識する抗体(たとえば2CV、TGC35)。
【0022】
本発明による方法の教示は、
(1.)C.ディフィシル由来のLCTsに対して、すなわち、トキシンAまたはトキシンBに対して調製された抗体を6個のグループに分類できるといった驚くべき発見に基づくものであり、これらのグループは、以下のような特徴を有する:
グループI=pan−TcdB抗体TGC35(DSM ACC2918)および2CV(DSM ACC2321)、ならびにTGC35および/または2CVと機能的および作用的に同一の抗体、
グループII=標準−トキシンTcdB−10463および変異したTcdB−017と反応するが、変異したトキシンTcdB−8864およびTcdB−027とは反応しない抗体、特に抗体TGC23(DSM ACC2917)およびこれと機能的および作用的に同一の抗体、
グループIII=標準−トキシンTcdB−10463と反応するが、変異したトキシンTcdB−8864、TcdB−017およびTcdB−027と反応しない抗体、特に抗体TGC41(DSM ACC2919)およびこれと機能的および作用的に同一の抗体、
グループIV=変異したトキシンTcdB−8864およびTcdB−017ならびにTcdB−027とは反応するが、標準−トキシンTcdB−10463とは反応しない抗体、特に抗体TGC16(DSM ACC2915)およびこれと機能的および作用的に同一の抗体;
グループV=変異したトキシンTcdB−8864およびTcdB−027とは反応するが、標準−トキシンTcdB−10463および変異したTcdB−017とは反応しない抗体、特に抗体TGC19(DSM ACC2916)およびこれと機能的および作用的に同一の抗体、
グループVI=すべての病原菌C.ディフィシル菌株のTcdA−タンパク質と反応するpan−TcdA抗体、特に抗体TTC8(DSM ACC2322)およびこれと機能的および作用的に同一の抗体(たとえばUS4879218中に記載された抗体PCG4);
及び
(2.)従来公知の毒性の変異したC.ディフィシル菌株またはそのLCTsがこれら6個のグループの抗体により、特にそのトキシンBをI〜Vの5種のグループの抗体により、それぞれ特徴的な反応パターンを示すといった驚くべき発見に基づくものであり、この場合、この反応パターンは、他の(高い)毒性を有する変異したC.ディフィシル菌株の毒素の反応パターンならびに標準C.ディフィシル菌株の毒素の反応パターンとは異なる。たとえば、高い毒性を有する変異したC.ディフィシル菌株C.d−027−hvが、グループI、II、III、IV、V、VIの順序での反応パターン"+−−+++"により特徴付けられる一方で、同様に高い毒性を有するC.ディフィシル菌株C.d−017−hvは、反応パターン"++−+−−"(同様にグループI、II、III、IV、V、VIの順序による)により特徴付けられる。
【0023】
現在知られており、かつ診断的に相当する毒性を有する変異した種々のC.ディフィシル菌株を同定および検出するために、一般には、異なる少なくとも3種の抗体グループからそれぞれ少なくとも1種の抗体が必要不可欠であり、かつ十分である。たとえば、通常の相当する変異したC.ディフィシル菌株由来のC.ディフィシル菌株C.d−027−hvと、標準−C.ディフィシル菌株を区別するために、3種のグループII、IVおよびVIの反応パターン、すなわち"−++"(グループII、IV、VIの順序による)が十分であり、C.ディフィシル菌株C.d−017−hvの識別または同定のために、3種のグループII、IVおよびVIの反応パターン、すなわち"++−"(同様にグループII、IV、VIの順序による)が十分である。
【0024】
本発明による方法を用いた場合には、特に以下の利点を伴う:
直接、糞便試料に基づいて、簡単な試験により、かつ数時間内に、定められた高い毒性を有する変異したC.ディフィシル菌株が存在するか否かについて確認することができる。Wirdらは、たとえばC.d−027−hvの存在について試験し、かつ、抗体グループI、IV、Vおよび/またはVIの少なくとも1種からなる1の抗体に対して陽性反応が示されない抗原−抗体反応パターンが得られる場合には、C.d−027−hv型の菌株が存在しないと間違いなく診断することができる。4種の抗体グループI、IV、VおよびVIのすべてに対する抗原−抗体反応パターンが陽性反応を示す場合には、極めて高い可能性で、C.d−027−hv菌株での感染が存在する。疑惑診断を確認するためにはその後に、抗生物質耐性、リボタイプ類型化および/または遺伝子分析(トキシン遺伝子tcdA、tcdBおよびtcdA/Bの検出ならびに特徴的欠失およびフレームシフトによるレギュレータ遺伝子tcdCの検出)の、時間およびコストのかかる特別な分析を実施することができ、またこれを実施すべきである。いいかえれば:本発明による方法は、従来の試験方法における最初の3個の工程(トキシン検出、細菌培養、抗生物質耐性)を置換し、かつ本質的に短縮された時間で、すなわち、従来数日かかるところを数時間で、試験すべき変異されたC.ディフィシル菌株、たとえばC.d.−027−hvによる感染が存在しない場合を、少なくとも間違いなく排除する診断が可能である。本発明による方法は、試験すべき変異したC.ディフィシル菌株、たとえばC.d.−027−hvまたはC.d−017−hvの存在を示される場合にはじめて、従来の試験方法において要求される時間およびコストのかかるさらなる工程(4、5および6)を実施する。
【0025】
さらに、たとえば予防的措置、たとえば分離、隔離、厳しい衛生的措置は、C.d.−027−hv感染またはC.d−017−hv感染のリスクが、本発明による検出試験の結果に基づいて実際に高いレベルで示される場合には、その後に集中的に使用することができる。
【0026】
グループI〜VIの抗体は、特にモノクローナル抗体である。原則として、本発明による方法のための抗体としてさらに当業者に公知の、天然の生物工学的に製造されたか、あるいは遺伝子光学的に製造された抗体代替物のすべて、たとえばキメラ抗体(Nanobodies)、アフィボディ(Affibodies)、アンチカリン、システイン−ノットミニタンパク質を考慮することができる。
【0027】
本発明の一の実施形態において、その実施において極めて良好であると証明されるのは、グループIからの少なくとも1種の抗体がモノクローナル抗体2CV(DSM ACC2321)またはモノクローナル抗体TGC35(DSM ACC2918)であること、および/またはグループIIからの少なくも1種の抗体がモノクローナル抗体TGC23(DSM ACC2917)であること、および/またはグループIIIからの少なくとも1種の抗体がモノクローナル抗体TGC41(DSM ACC2919)であること、および/またはグループIVからの少なくとも1種の抗体がモノクローナル抗体TGC16(DSM ACC2916)であること、および/またはグループVからの少なくとも1種の抗体がモノクローナル抗体TGC19(DSM ACC2916)であること、および/またはグループVIからの少なくとも1種の抗体がモノクローナル抗体TTC8(DSM ACC2322)であることである。
【0028】
生体排泄物試料は、その実施において特に糞便試料であり、かつ生体組織試料は特に血液試料である。
【0029】
変異したC.ディフィシル菌株の迅速かつ確実な検出が可能であることからその実施において特に適した方法のさらなる実施形態は、工程(b)中で、試料をそれぞれグループI、IVおよびVIからなるそれぞれ1種の抗体と接触させ、かつ工程(c)中で、グループI、IVおよびVIからの抗体の陽性反応が、高い毒性を有する変異したC.ディフィシル菌株の存在を示すことにより特徴付けられる。
【0030】
高い毒性を有するC.ディフィシル菌株リボタイプ027、PFGE−NAP1、REA−B1およびトキシノタイプIIIの迅速かつ信頼性の高い検出を可能にし、かつそれによってC.d.−027−hv試験の疑惑を低減させる方法の、実施のために特に適した実施形態は、工程(b)において、試料を、それぞれ抗体グループII、グループIVおよびグループVIからなるそれぞれ少なくとも1種の抗体と接触させ、かつ工程(c)において、グループIVおよびグループVIからの抗体の陽性反応、ならびにグループIIからの1種またはそれ以上の抗体の陰性反応が、リボタイプ027、PFGE−NP1、REA−B1、トキシノタイプIIIの型の高い毒性を有する変異したC.ディフィシル菌株の存在を示すことにより特徴付けられる。この実施形態はなおも、工程(b)において試料を、抗体グループIおよび/または抗体グループIIIおよび/または抗体グループVのそれぞれ少なくとも1種の抗体と接触させることにより、かつ工程(c)中でさらにグループIおよびグループVからの1種またはそれ以上の抗体との陽性反応、ならびにグループIIIからの1種またはそれ以上の抗体との陰性反応により、リボタイプ027、PFGE−NAP1、REA−B1、トキシノタイプIIIの高い毒性を有する変異したC.ディフィシル菌株の存在を示すことにより拡張することができる。
【0031】
高い毒性を有するC.ディフィシル菌株リボタイプ017、トキシノタイプVIIIおよびセロタイプFの迅速かつ信頼性の高い検出を可能にし、かつそれによってC.d.−017−hv試験の疑惑を低減させる方法の、実施のために同様に特に適したさらなる実施形態は、工程(b)中で、試料をそれぞれグループII、グループIVおよびグループVIの抗体グループからの少なくとも1種の抗体と接触させ、かつ工程(c)中でグループIIおよびグループIVからの抗体との陽性反応、ならびにグループVIからの1種またはそれ以上の抗体との陰性反応が、リボタイプ017、トキシノタイプVIIIおよびセロタイプFの型の高い毒性を有する変異したC.ディフィシル菌株の存在を示すことにより特徴付けられる。この実施形態はなおも、工程(b)において試料を、抗体グループIおよび/または抗体グループIIIおよび/または抗体グループVのそれぞれ少なくとも1種の抗体と接触させることにより、かつ工程(c)中でさらにグループIからの1種またはそれ以上の抗体との陽性反応、ならびにグループIIIおよびグループVからの抗体との陰性反応により、リボタイプ017、トキシノタイプVIIIおよびセロタイプFの高い毒性を有する変異したC.ディフィシル菌株の存在を示すことにより拡張することができる。
【0032】
本発明の基礎となる課題は、DSMZ(Braunschweig, Deutschland)に2008年6月5日付けで寄託された名称DSM ACC2916(TGC19)のハイブリドーマ細胞系から製造され、かつ本発明による方法において変異したC.ディフィシル菌株を検出および同定するために、特に、C.ディフィシル菌株リボタイプ027、PFGE−NAP1、REA−B1およびトキシノタイプIIIを検出および同定するための変法に適しており、かつこのような使用が予定される、モノクローナル抗体を調製することにより解決される。
【0033】
上記課題はさらに、DSMZ(Braunschweig, Deutschland)に2008年6月5日付けで寄託された名称DSM ACC2917(TGC23)のハイブリドーマ細胞系から製造され、かつ本発明による方法において変異したC.ディフィシル菌株を検出および同定するために、特にC.ディフィシル菌株リボタイプ017、トキシノタイプVIIIおよびセロタイプFを検出および同定するための変法に適しており、かつこのような使用が予定される、モノクローナル抗体を調製することにより解決される。
【0034】
上記課題はさらに、DSMZ(Braunschweig, Deutschland)に名称DSM ACC2915(TGC16)として寄託されたハイブリドーマ細胞系から製造され、かつ試料中において、変異したC.ディフィシル菌株を検出および同定するための方法において、特にリボタイプ017、トキシノタイプVIIIおよびセロタイプFを有するC.ディフィシル菌株、および/またはリボタイプ027、PFGE−NAP1、REA−B1およびトキシノタイプIIIを有するC.ディフィシル菌株を検出および同定するための変法における使用に適しており、かつこのような使用が予定される、モノクローナル抗体を提供することにより解決される。
【0035】
上記課題はさらに、DSMZ(Braunschweig, Deutschland)に名称DSM ACC2918(TGC35)として寄託されたハイブリドーマ細胞系から製造され、かつ試料中において、変異したC.ディフィシル菌株を検出および同定するための方法、特にリボタイプ017、トキシノタイプVIIIおよびセロタイプFを有するC.ディフィシル菌株、および/またはリボタイプ027、PEGE−NAP1、REA−B1およびトキシノタイプIIIを有するC.ディフィシル菌株を検出および同定するための変法における使用に適しており、かつこのような使用が予定される、モノクローナル抗体を提供することにより解決される。
【0036】
本発明を次に実施例に基づき詳細に説明する:
実施例中に挙げられた図を以下に示す:
図1:使用された菌株のリボタイプの類型化
菌株はStubbsらの方法によりリボタイプの類型化を実施し、かつ参考菌株との調整により種々のリボタイプに分類した。これに関して、菌株VPI−10463および菌株8864は、従来知られていないリボタイプであり、かつ菌株1470はリボタイプ017に、かつ菌株7002/8はリボタイプ027に分類した。マーカーバンドは、600bp、500bp、400bpおよび300bp(上から)で流した。
【0037】
図2:精製されたトキシンB変異体
種々のトキシン13個の変異体を、クマシー染色されたSDS−PAGE中で示す。それぞれのトキシンを1レーンあたり250〜400ng使用する。
【0038】
図3:モノクローナル抗トキシンB抗体の特異性の検出
種々のトキシンD変異体をSDS−PAGE中に導入し、ナイロン膜上にブロットし、引き続いて相当する抗体により発現させた。モノクローナル抗体TGC35(図3A)、TGC16(図3B)、TGC41(図3C)、TGC23(図3D)およびTGC19(図3E)の特異性が示される。
【0039】
図4:モノクローナル抗体の結合領域
図4Aは、トキシンBの構造を図示したものである。図4Bは、トキシンB内部の抗体の結合領域を表したものである。図4Cはモノクローナル抗体の反応性を示す。
【0040】
図5:C.ディフィシル菌株の参考パターン
4種の異なるC.ディフィシル菌株の培養上清中におけるトキシンAおよびトキシンB発現は、抗体グループI、II、IVおよびVIからの捕捉抗体の使用下で、サンドウィッチELISA法により試験した。捕捉抗体として、グループI:TGC35、グループII:TGC23、グループIV:TGC16、グループVI:TTC8からのものを使用した。C.ディフィシル菌株の認識パターンは、VPI−10463(図5A)、8864(図5B)、1470リボタイプ017(図5C)および7002/8リボタイプ027(図5D)を示す。
【0041】
図6:捕捉ELISA法中の種々のC.ディフィシル菌株の反応パターン
同定抗体として、グループIからTGC35、グループIIからTGC23、グループIVからTGC16およびグループVIからTTC8を使用した。図6Aにおいて、種々のC.ディフィシル菌株の結果および図6Bにおいて、さらなるC.ディフィシル菌株の結果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】使用された菌株のリボタイプを示す図
【図2】精製されたトキシンB変異体のSDS−PAGEによる図
【図3】特異的モノクローナル抗トキシンB抗体の検出を示す図
【図4】モノクローナル抗体の結合領域を示す図(A:トキシンBの構造を示す図、B:トキシンBの内部構造を示す図、C:モノクローナル抗体の反応性を示す図)
【図5A】C.ディフィシル菌株VPI−10463の培養上清中でのトキシンAおよびBの発現を示す図
【図5B】C.ディフィシル菌株8864の培養上清中でのトキシンAおよびBの発現を示す図
【図5C】C.ディフィシル菌株1470の培養上清中でのトキシンAおよびBの発現を示す図
【図5D】C.ディフィシル菌株7002/8の培養上清中でのトキシンAおよびBの発現を示す図
【図6A】種々のC.ディフィシル菌株の捕捉ELISA法における結果を示す図
【図6B】種々のC.ディフィシル菌株の捕捉ELISA法における結果を示す図
【実施例】
【0043】
例1:C.ディフィシル由来のトキシンBと特異的に反応するモノクローナル抗体の製造
(A)種々のC.ディフィシル菌株からの精製されたC.ディフィシルトキシンBの獲得
以下のC.ディフィシル菌株を使用した:
VPI−10463(ATCC43255)、
8864(CCUG20309)、
1470(ATCC43598)、および
7002/8(患者試料からのヒト単離物)
【0044】
菌株を、Stubbsら(1999年)によるリボタイプ類型化法により、リボタイプを類型化した。これに関する結果は、図1に示す。これにより、菌株1470がリボタイプ017に、かつ菌株7002/8がリボタイプ027に相当する一方、菌株VPI−10463および8864は従来知られていないリボタイプに分類されることが示された。
【0045】
菌株VPI−10463由来の発現したトキシンB(TcdB−10463)は、技術水準において一般に標準−トキシンと呼称される。
【0046】
菌株8864は、特に標準−トキシンとはC−末端レセプター結合ドメインにおいて異なるこれらトキシンの変異体(TcdB−8864)を製造する(Soehnetら、1998年)。
【0047】
菌株1470は、特に標準−トキシンBとはN−末端酵素ドメインにおいて異なるトキシンB(TcdB−1470)を発現する(Eichel-Streiberら、1995年)。
【0048】
菌株7002/8リボタイプ027のトキシンBの配列は知られていない。これとは対照的にTcdB−027の配列は、2種の他のC.d.−027−hv菌株において測定した(菌株QCD−32g58、ジーンバンク−Acc.番号NZ_AML00000000、菌株R20291、www.sanger.ac.uk)。これらのTcdB−027配列と標準−トキシンBおよび他の変異したTcdB−トキシンとの比較は、このTcdB−027が、N−末端酵素ドメイン中で標準−トキシンTcdB−10463に類似するが、しかしながらC−末端ドメインにおいては変異したトキシンTcdB−8864に類似することが示す。
【0049】
トキシンの精製のために、細菌を脳心臓浸出物栄養培地(Becton Dickinson, Heidelberg, Deutschland)中で嫌気性に導いた。引き続いてトキシンAおよびBをこれら培養物の上清から、Moosら(2000年)で記載されたようにして精製した。トキシンの純度はクマシーゲル中で試験した(図2参照)。
【0050】
C.ディフィシル菌株VPI−10463、8864および1470の単離および精製されたTcdBは、技術水準で知られ、かつ一般に使用された方法を用いて不活性化され、かつ不活性化の成果を細胞毒性試験中で検査した。
【0051】
(B)(A)からのトキシンB−変異体に対するモノクローナル抗体の獲得
一連のバッチにおいて、それぞれ不活性化されたトキシンB変異体TcdB−8864およびTcdB−1470ならびに標準−トキシンTcdB−10163を用いてそれぞれ複数のマウスを基礎免疫し、引き続いて2回の追加免疫を行った。免疫原に対する動物のタイターを測定し、かつ有意なタイターが発見された場合には脾臓を摘出した。単離された脾臓細胞は、技術水準から公知であって、かつ一般的に使用された方法を用いて、マウス−ミエローマ細胞系X63Ag8.653(ATCC CRL1580)と融合させ、かつこの融合細胞を引き続いて選択し、かつクローニングした。このようにして得られたハイブリドーマ−クローンを、免疫化に使用すべきトキシンBに対して特異的なモノクローナル抗体の製造において免疫的にスクリーニングした。
【0052】
全部で15個の融合を実施し、かつ最終的には21個の異なるハイブリドーマ細胞系を単離し、この場合、この細胞系は、トキシンB特異的抗体を発現するものである。
【0053】
さらなる試験のために、細胞培養上清からの抗体を精製した。このために、ハイブリドーマ細胞系を、血清不含の培地ISF−1(Biochrom, Berlin, Deutschland)中に導入し、かつ引き続いて250mlの容積中で、スピンナーシステム(Belico, Vineland, USA)中で、50rpmで、培養物のバイタル値(Vitalitat)が30%を下回るまで培養した。培養上清をプロテインAカラム(HiTrap MabSelect SuRe, GE Healthcare, Freiburg, Deutschland)を用いて精製した。精製した抗体の濃度は1〜2mg/mlであり、その純度はクマシーゲル中で試験した。
【0054】
例2:抗トキシンB−抗体の特徴付け
例1で生成された抗体の特徴付けのために、これらの抗体を、ウェスタンブロットにおいて試験した。
【0055】
さらに、先ずそれぞれ250〜400ngの標準−トキシンB−10463およびトキシンB変異体TcdB−8864、TcdB−017およびTcdB−027を、SDS−PAGE中に導入し、かつ引き続いてセミドライブロット法でナイロン膜上にブロッティングした。検出は、技術水準において公知の方法にしたがって実施した。トキシンの検出のために、例1で製造したモノクローナル抗体を使用した。
【0056】
TGC16、TGC19、TGC23、TGC35およびTGC41(それぞれ実験室における名称)を有する抗体に関する結果は、図3にまとめる:
この結果は、製造された抗体の大部分が種々のトキシンB変異体の亜群を識別し、かつ、特定のトキシン変異体のみが単一特異性でないことを示す。
【0057】
全部で11個の種々の抗体を同定し、この場合、これは標準−トキシンBおよびすべてのトキシンB変異体と結合する。これらのいわゆるpan−TcdB抗体の特徴付けられた典型例は抗体TGC35である。このTGC35を製造するハイブリドーマ細胞系は、DSMZ(Deutsche Sammlung fur Mikroorganismen und Zeilkulturen, Braunschweig, Deutschland)に2008年6月5日付けでDSM ACC2918の名称で寄託されている。
【0058】
いくつかの抗体は、標準トキシンと同様にトキシンTcdB−07と反応する。これら抗体グループの特徴的な典型例は、抗体TGC23である。このTGC23を製造するハイブリドーマ細胞系は、DSMZに2008年6月5日付けでDSM ACC2917の名称で寄託されている。
【0059】
いくつかの抗体は、標準−トキシンTcdB−10463と特異的に反応する。この抗体グループの特異的な典型例は、抗体TGC41である。このTGC42を製造するハイブリドーマ細胞系は、DSMZに2008年6月5日付けでDSMACC2919の名称で寄託されている。
【0060】
驚くべきことに、さらに2種の抗体を製造することができ、この場合、この抗体は、1種またはそれ以上のトキシンB変異体とは反応するが、標準−トキシンBとは反応しない。
【0061】
抗体TGC16は、標準トキシンBとは結合しないが、しかしながら変異したトキシンTcdB−8864、TcdB−017およびTcdB−027とは良好に結合する。このTGC16を製造するハイブリドーマ細胞系は、DSMZに2008年6月5日付けでDSM ACC2915の名称で寄託されている。
【0062】
抗体TGC19は、標準トキシンBまたは変異したトキシンTcdB−017とは結合しないが、しかしながら変異したトキシンTcdB−8864およびTcdB−027とは良好に結合する。このTGC19を製造するハイブリドーマ細胞系は、DSMZに2008年6月5日付けでDSM ACC2916の名称で寄託されている。
【0063】
抗体は、捕捉ELISA中でその抗原検出限界について試験した。これに関して、ELISAプレートは1ウェルあたり50μlのコーティングバッファー(50mM、Na2CO3、50mM NaHCO3、pH9.6)および250ngの各抗体を用いて、3時間に亘って室温でインキュベートし、かつ、その際、抗体はELISAプレートに堆積する。非特異的な結合部分は、200μlの5×WAPU(12.5mlのTritonX100、62.5mlの1Mトリス−HCl(pH7.5)、62.5mlの20%濃度のゼラチン溶液、H2Oで500mlまでにする)を用いて、30分に亘ってブロッキングした。引き続き、種々の濃度の抗原を、すなわち、TGC16およびTGC19の場合には抗原TcdB−027を、TGC23およびTGC35の場合には抗原TcdB−017を適用する。検出は、ポリクローナル血清で実施した(266ng/ml)。反応結果(ここには示していない)は、抗体TGC16およびTGC23に関して、それぞれのトキシンBに関する検出限界を<300pg/mlであり、抗体TGC35に関しては1ng/mlを下回り、かつ抗体TGC19に関しては1ng/mlを下回ることを示す。
【0064】
抗体TGC16、TGC19、TGC23、TGC35およびTGC41は、トキシンBに対するその結合位置に関して試験した。トキシンBのタンパク質溶解による消化であるか、あるいはE.Coli中の組み換えトキシンB部分フラグメントのクローニングおよび発現によって、トキシンBのタンパク質フラグメントを製造した。このトキシンB部分フラグメントは、ウェスタンブロット試験中で分離し、かつこのブロットを引き続いて抗体TGC16、TGC19、TGC23、TGC35およびTGC41を用いてインキュベートした。この消化結果は図4に図示し、かつ個々の抗体がトキシンB分子の種々の領域を認識するか、あるいは結合することを示す:すべてのアミノ酸位置の記載は、標準−トキシンTcdB−10463中の相当する位置に関して示す。
【0065】
TGC16はTcdB−8864、TcdB−017およびTcd−027と、それぞれグリコシルトランスフェラーゼドメインの範囲内で結合し、かつここでアミノ酸位置122〜261の範囲内である。
【0066】
TCG19はTcdB−8864およびTcd−027と、それぞれ、アミノ酸位置543〜2366の間のグリコシルトランスフェラーゼドメインの向こう側の範囲内で結合する。
【0067】
TGC23は、標準−トキシンおよびTcdB−017と、それぞれ、アミノ酸位置1692〜2113の間でC−末端から離れてリガンドドメイン中で結合する。
【0068】
TGC35は、標準−トキシン、TcdB−8864、TcdB−017およびTcd−027と、それぞれ、トキシンのN−末端のグリコシルトランスフェラーゼドメインとC−末端のリガンドドメインとの間のトランスロケーションドメインの範囲内でアミノ酸位置543〜1692の間で結合する。
【0069】
TGC41は、標準−トキシンとTGC16と同様に結合し、これは、グリコシルトランスフェラーゼドメインの範囲内であり、かつそこではアミノ酸位置122〜261の範囲であることを意味する。
【0070】
TGC16およびTGC41は、同じトキシンB領域中、すなわち、グリコシルトランスフェラーゼ領域中で結合するが、しかしながら異なるトキシンB変異体、すなわち、一方において標準−トキシン(TGC41)と結合し、かつ他方においてTcdB−8864、TcdB−017およびTcd−027(TGC16)と結合する。したがって、標準トキシンBであるTcdB−10463と変異したトキシンTcdB−8864、TcdB−017およびTcd−027との間で特異的識別が可能なトキシンB中での領域を初めて同定した。驚くべきことに、この領域はまさに、トキシンBの酵素活性を介在するグリコシルトランスフェラーゼドメインである。この酵素活性は、原則、すべてのトキシンBにおいて同一である。
【0071】
一連の本発明による新たに製造された抗体は、抗体(抗体グループ/抗体クラス)とは異なるグループ(クラス)を作成し、この場合、これは、標準−トキシンBとの反応性および種々のトキシンB変異体との反応性に関して互いに異なっている。
【0072】
pan−TcdB−抗体のグループは、以下グループIと呼称する。このグループの典型例は、モノクローナル抗体TGC35および2CVである(EP 0994904から知られている)。
【0073】
標準−トキシンおよびトキシンTcdB−017と反応するが、しかしながら変異したトキシンTcdB−027およびTcdB8864とは反応しない、これら抗体のグループは、以下グループIIとして呼称する。このグループの典型例は、モノクローナル抗体TGC23である。
【0074】
標準トキシンTcdB−10463と反応するが、しかしながら変異したトキシンTcdB−027、TcdB−8864およびTcdB−1470とは反応しない、これら抗体のグループは、以下グループIIIとして呼称する。このグループの典型例は、モノクローナル抗体TGC41である。
【0075】
標準トキシンBとは反応しないが、しかしながらトキシンTcdB−8864、Tcd−017およびTcdB−027と良好に反応するこれら抗体のグループは、以下グループIVと呼称する。このグループの典型的な例は、モノクローナル抗体TGC16である。
【0076】
標準トキシンBまたはトキシンTcdB−017とは反応しないが、しかしながらトキシンTcdB−8864およびTcdB−027とは良好に反応するこれら抗体のグループは、以下グループVと呼称する。このグループの典型例は、モノクローナル抗体TGC19である。
【0077】
文献からpan−TcdA特異的抗体のグループ以外のものが知られており、これは以下グループVIと呼称する。このグループの典型例は、モノクローナル抗体TTC8である(EP0994904から知られている)。
【0078】
例3:捕捉ELISA中でのLctsの検出−抗体グループI、II、IVおよびVIの使用下で公知の種々のC.ディフィシル菌株のための抗原抗体−参考パターンの作成
原則として、抗原抗体−参考パターンの作成を以下のようにして実施する:技術水準から公知であって、かつ検出試験中でその存在について試験すべきC.ディフィシル菌株Rx1、Rx2、RXiから、それぞれ少なくともトキシンB、特に双方の大クロストリジウムトキシン(LCTs)を獲得する(培養上清または精製トキシンの形で)。これら公知のトキシンLCT−Rx1、LCT−Rx2、LCT−Rxiを用いて、特にそれぞれ抗体グループI〜VIからのそれぞれ少なくとも1種の抗体を用いて反応試験を実施する。それぞれのLCT(LCT−Rx1、LCT−Rx2、LCT−Rxi)および使用された抗体グループに関して得られた反応結果は、それぞれの抗体グループが、検出された陽性抗体反応の場合には正の符号(たとえば"+")であるか、あるいは検出された陰性抗体反応の場合には負の符号(たとえば"−")に分類されるように記録する。
【0079】
前記例では、具体的に以下のように実施した:
ELISAプレートに、例2で記載した精製した抗体TGC35(グループI)、TGC23(グループII)、TGC16(グループIV)およびTTC8(グループVI)を以下のようにして添加した:1ウェルあたり、250ngの各抗体を含む、50μlのコーティングバッファー(50mM Na2CO3、50mM NaHCO3、pH9.6)を3時間に亘って室温でインキュベートし、かつ、その際、抗体は、ELISAプレートに堆積した。引き続いて、非特異的な結合部分を、200μlの5×WAPU(12.5mlのTritonX100、62.5mlの1Mトリス−HCl(pH7.5)、62.5mlの20%濃度のゼラチン溶液、H2Oで500mlまでにする)を用いて、30分に亘ってブロッキングした。
【0080】
C.ディフィシル菌株10463、8864、1470および7002/8は、例1に記載するようにして調製し、かつ培養上清の50μlのアリコートを、抗体で被覆されたマイクロタイタープレート上に提供した。非特異的に結合したタンパク質を、TBST(150mM NaCl、10mMトリス、0.05%Tween20、pH8.0)を用いて、3回の洗浄により除去した。引き続いて、場合によりそれぞれの抗体と結合したトキシンを、捕捉ELISA中で、50μlのポリクローナル抗トキシンB血清(266ng/ml)で検出した。検出を、標準的な方法で、アルカリホスファターゼを用いて実施した。
【0081】
これらELISAの結果は、図5に図示する。図5から、4種の異なるC.ディフィシル菌株のそれぞれが4種の使用された抗体を用いて、他の菌株の反応パターン異なるいくつかのその特異的な反応パターンを示すことが明らかである。
【0082】
菌株VPI−10463の上清は、抗体TGC35/グループI、TGC23/グループIIおよびTTC8/グループVIと陽性に反応し、かつTGC16/グループIVと陰性に反応する(図5A参照)。
【0083】
菌株8864の上清は、抗体TGC35/グループIおよびTGC16/グループIVと陽性に反応し、かつTGC23/グループIIおよびTTC8/グループVIと陰性に反応する(図5B参照)。
【0084】
菌株1470(リボタイプ017)の上清は、抗体TGC35/グループI、TGC23/グループIIおよびTGC16/グループIVと陽性に反応し、かつ、TTC8/グループVIと陰性に反応する(図5C参照)。
【0085】
菌株7002/8(リボタイプ027)の上清は、抗体TGC35/グループI、TGC16/グループIVおよびTTC8/グループVIと陽性に反応し、かつTGC23/グループIIと陰性に反応する(図5D参照)。
【0086】
リボタイプ027のC.ディフィシル菌株のトキシンBと、抗体グループI〜VIの抗体の種々の組合せとの平行試験におけるこれらの結果を検討することにより、TcdB−027とグループI、IV、VおよびVIの抗体とは常に陽性であり、かつグループIIおよびIIIの抗体とは常に陰性に反応することが確認される。
【0087】
いいかえれば:グループI、グループII、グループIII、グループIV、グループV、グループVIの順序で6種の抗体グループの抗体との、公知ではないC.ディフィシル菌株のトキシンBの反応パターン"+−−+++"は、この公知ではないC.ディフィシル菌株がリボタイプ−027であり、さらにこれに関して高い毒性を有する菌株C.d.−027hvが含まれるとの推論を可能にする。
【0088】
リボタイプ017のC.ディフィシル菌株のトキシンBと、抗体グループI〜VIの抗体の種々の組合せとの平行試験におけるこれらの結果を検討することにより、TcdB−017とグループI、IIおよびIVの抗体とは常に陽性であり、かつグループIII、VおよびVIの抗体とは常に陰性に反応することが確認される。
【0089】
いいかえれば:グループI、グループII、グループIII、グループIV、グループV、グループVIの順序で6個の抗体グループの抗体との、公知ではないC.ディフィシル菌株のトキシンBの反応パターン"++−+−−"は、公知ではないC.ディフィシル菌株がリボタイプ−017であり、さらにこれに関して高い毒性を有する菌株C.d.−017hvが含まれるとの推論を可能にする。
【0090】
例4:抗原抗体反応−参考パターンに基づくC.ディフィシルリボタイプの同定
抗原抗体反応−参考パターンを作成するために、例3に記載されたようにして実施する。
【0091】
試料−特異的反応パターンを作成するために、以下のようにして実施する:
試験すべきC.ディフィシル菌株を公知の方法で調製し、かつその上清または精製したトキシンを試験する。このためにグループI、II、III、IV、VおよびVIの少なくとも2種、特に3種または4種からなるそれぞれ少なくとも1種の抗体、たとえば抗体TGC16、TGC19、TGC23、TGC41、TGC35およびTTC81を、当業者に公知であって、かつ一般的に使用されている方法で、適した表面、たとえば膜上に適用する。
【0092】
引き続いて試料をこれら抗体(以下、同定抗体とする)と接触させる。これに関して適した方法は、当業者に知られており、たとえばELISAまたはEP 1143248に記載されているようないわゆる「側方流(lateral flow)」法である。
【0093】
工程特異的な反応時間の終了時において、それぞれのバッチから非結合試料材料を除去する(洗浄)。
【0094】
いずれの同定抗体が試料との抗原抗体−反応を示し、かついずれが反応していないのか検出するために、検出抗体を使用する。検出抗体として、トキシンAおよびトキシンBに対するポリクローナル血清(単一特異性または交差反応性)を使用するか、あるいはさらにグループI、II、III、IV、VまたはVIの1種またはそれ以上からなる抗体を使用する。検出抗体の選択に際して、その目的とするエピトープが、同定抗体の目的とするエピトープと異なるか、あるいは原則としてそれぞれのトキシン中で数倍存在することを考慮すべきであり、それにより、検出抗体は、トキシンとの複合体の形で同定抗体に結合することができる。検出抗体は、適したマーカー、たとえばコロイダルコールド、炭素粒子またはラテックス粒子であるか、あるいは酵素マーカー、たとえばHRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)またはアルカリホスファターゼを用いて標識する。
【0095】
検出抗体は、試料の適用前であるか、試料と一緒に、あるいは、同定抗体と試料との工程特異的な反応時間の終了後に、バッチに添加する。
【0096】
工程特異的な反応時間の終了時に、同定抗体と結合していない試料−トキシンおよび試料中に同時に存在する汚染物であるタンパク質を除去し(洗浄除去)、同定抗体、試料−トキシンおよび検出抗体からなる複合体(Komplex)が形成される場合には、マーカーシグナル(正のシグナル"+")のみが生じる。
【0097】
それぞれの同定抗体に関して得られるマーカーシグナル"+"または"−"を、反応パターンの形でまとめる。このような反応パターンは、たとえば図5Aのようにして表すことができる。この場合において、参考パターンとの比較は、C.ディフィシル菌株VPI−10463が存在するという結果(または疑惑診断)を導く。
【0098】
反応パターンが、たとえば図5Bのようにして表される場合には、参考パターンとの比較はC.ディフィシル菌株8864が存在するという結果(疑惑診断)を導く。反応パターンがたとえば図5Bのようにして表される場合には、参考パターンとの比較は、C.ディフィシル菌株8864が存在するという結果(疑惑診断)を導く。反応パターンがたとえば図5Cのようにして表される場合には、参考パターンとの比較は、C.ディフィシル菌株1470またはC.ディフィシル菌株リボタイプ017が存在するといった結果(疑惑診断)を導く。反応パターンが、たとえば図5Dのようにして表される場合には、参考パターンとの比較は、C.ディフィシル菌株7002/8またはC.ディフィシル菌株リボタイプ027が存在するといった結果(疑惑診断)を導く。
【0099】
例5:種々のC.ディフィシル菌株のグループI、II、IV、VIの抗体での分析
以下の試験において、種々のC.ディフィシル菌株を同定および検出するための本発明による方法を、公知のリボタイプを有する一連の菌株、すなわち、リボタイプ027(Lumc-1、Lumc-2、Lumc-3、Lumc-4、Lumc-5、Lumc-6、Lumc-8、Lumc-9、Lumc-10、Lumc-11、Lumc-12、Lumc-13、Lumc-14、Lumc-16、Lumc-17、Lumc-19、Lumc-20、Lumc-21、7002-42)の19種の菌株、リボタイプ017の4種の菌株(Lumc-22、Lumc-23、Lumc-40、Lumc-41)、リボタイプ001の2種の菌株(7002-29、7002-43)およびリボタイプ014の1種の菌株(Lumc-31)に基づいて実施した。参考菌株として、菌株VPI−10463、8864および7002/8を使用した。グループI、II、IVおよびVIの抗体は、捕捉ELISA中で使用し、かつ得られた反応パターンと作成された反応パターンとを比較した(例3参照)。
【0100】
種々のC.ディフィシル菌株は例1に記載するようにして調製し、かつその上清を引き続いての試験において使用した。同定抗体として、抗体TGC35(グループI)、TGC23(グループII)、TGC16(グループVI)を例3で記載したようにしてELISAプレートに添加した。これに関してそれぞれ250ng/ウェルでTGC23、128ng/ウェルでTGC16およびTGC35、ならびに1μg/ウェルでTTC8を使用し、かつこのプレートを引き続いてPBS中で洗浄した。
【0101】
ELISAsを実施するために、プレートの非特異的結合部分を先ずPBS+3%BSA中で、37℃でインキュベートすることによりブロッキングした。引き続いてC.ディフィシル培養の上清50μl/ウェルを適用し、かつこのプレートを再度37℃で1時間に亘ってインキュベートした。非結合タンパク質を、PBS+3%BSAの3回の洗浄により除去した。検出抗体として、TGC35、TGC16およびTGC23の場合には、ビオチン標識化ポリクローナル抗トキシンB血清(0.32μg/ml)を使用した。トキシンA検出の場合には、ビオチン化された形での抗体TTC8をさらに検出抗体として使用した。PBS+3%BSAでの再度の洗浄後に、1ウェルあたり50μlのストレプトアビジン−HRP(0.1μg/ml、Pierce, Rockford, USA)を添加し、かつこのプレートを37℃で1時間に亘ってインキュベートした。引き続いてこのプレートをPBSで洗浄し、かつ検出のために、50μl/ウェルのTMB(1-Step Ultra TMB、Pierce, Rockford, USA)を使用した。このプレートを室温で暗室下で30分に亘ってインキュベートし、引き続いてこの反応を100μl/ウェルの2M H2SO4により停止した。評価はOD450により空値に対して実施した。カットオフ値を0.5と定めた。
【0102】
この試験結果は、図6Aおよび図6Bに模式図的に表す:
− 19個の種々の菌株において、グループI、II、IVおよびVIの順序で反応パターン"+−++"を検出した。
【0103】
− 4個の種々のC.d−017−hv菌株において、グループI、II、IVおよびVIの順序で反応パターン"+++−"を検出した。017菌株の分析は、この菌株がin vitroで総じて相対的に少ない毒素を製造することを示す(さらにTGC35シグナルも比較的弱いものである)。しかしながら、この菌株においてのみ、抗体TGC23(DSMACC2917)とトキシンB−017との特異的反応が生じることが明らかである。すべての他の上清(すなわち、C.d.−027−hv菌株ならびにすべての試験されたリボタイプ001菌株)の場合における検出抗体TGC23の使用の再には、値が0.4を上回ることがないのに対してC.d.−017−hv菌株は、それぞれカットオフ値0.5を顕著に上回る吸収値を示す。
【0104】
グループI、II、IVおよびVIの順序での抗原−抗体反応パターン"+−++"は、試験された菌株がC.d.−027−hv菌株であるといった結果を導き、かつグループI、II、IVおよびVIの順序での反応パターン"+++−"である場合には、C.d.−017−hv菌株が存在することが結論付けられなければならない。
【0105】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の変異したC.ディフィシル菌株を検出および同定するための方法において、以下の工程:
(a)生体排泄物試料および/または生体組織試料を獲得し、
(b)この試料を、グループI、グループII、グループIII、グループIV、グループVおよびグループVIの少なくとも3種の抗体グループからのそれぞれ少なくとも1種の抗体と接触させ、その際、
グループIは以下の抗体:pan−TcdB抗体、を含み、
グループIIは以下の抗体:トキシンTcdB−10463およびTcdB−017と反応するが、トキシンTcdB−8864およびTcdB−027とは反応しない抗体、を含み、
グループIIIは以下の抗体:TcdB−10463と反応するが、トキシンTcdB−8864、TcdB−017およびTcdB−027とは反応しない抗体、を含み、
グループIVは以下の抗体:トキシンTcdB−8864、TcdB−017およびTcdB−027と反応するが、トキシンTcdB−10463とは反応しない抗体、を含み、
グループVは以下の抗体:トキシンTcdB−8864およびTcdB−027と反応するが、トキシンTcdB−10463およびTcdB−017とは反応しない抗体、を含み、
グループVIは以下の抗体:pan−TcdA抗体、を含み、
(c)抗体反応を検出し、かつ反応パターンを作成し、その際、それぞれ抗体グループI〜VIのそれぞれ(b)で使用された抗体を、検出された陽性抗体反応に関してはプラスの符号(たとえば"+")および検出された陰性抗体反応に関してはマイナスの符号(たとえば"−")に分類し、かつ、
(d)(c)で得られた反応パターンと参考試料とを比較し、この場合、この参考試料は、技術水準において公知であり、かつ検出試験において試験すべきC.ディフィシル菌株Rx1、Rx2、Rxiからのそれぞれの大クロストリジウム毒素(LCT)LCT−Rx1、LCT−Rx2、LCT−Rxiの少なくとも1種を、抗体グループI〜VIの少なくとも3種からなる工程(b)で選択された抗体との反応試験中で使用し、かつそれぞれのLCTおよび抗体グループI〜VIの少なくとも3種に関して得られた反応結果を、それぞれの抗体グループが、検出された陽性抗体反応の場合には正の符号(たとえば"+")であるか、検出された陰性抗体反応の場合には負の符号(たとえば"−")に分類されるようにしてパターン状に記録することにより得られたものであり、
(e)(c)で得られた反応パターンと参考パターンとの間の一致を、試料中において該当する参考パターンのC.ディフィシル菌株が存在することに関する指標として評価する、ことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
グループIVからの少なくとも1種の抗体が、モノクローナル抗体TGC16(DSM ACC2915)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
グループVからの少なくとも1種の抗体が、モノクローナル抗体TGC19(DSM ACC2916)である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
グループVIからの少なくとも1種の抗体が、モノクローナル抗体TTC8(DSM ACC2322)である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
グループIからの少なくとも1種の抗体が、モノクローナル抗体2CV(DSM ACC2321)またはモノクローナル抗体TGC35(DSM ACC2918)である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
グループIIからの少なくとも1種の抗体が、モノクローナル抗体TGC23(DSM ACC2917)である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
グループIIIからの少なくとも1種の抗体が、モノクローナル抗体TGC41(DSM ACC2919)である、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程(b)において、試料を、それぞれグループI、IVおよびVIからのそれぞれ1種の抗体と接触させ、かつ、工程(c)において、グループI、IVおよびVIからの抗体の陽性反応が、高い毒性を有する変異したC.ディフィシル菌株の存在を示す、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程(b)において、試料を、グループII、グループIVおよびグループVIのそれぞれの抗体グループからのそれぞれ少なくとも1種の抗体と接触させ、かつ、
工程(c)において、グループIVおよびグループVIからの抗体の陽性反応、ならびにグループIIからの1種またはそれ以上の抗体の陰性反応が、高い毒性を有するC.ディフィシル菌株リボタイプ027、PFGE−NAP1、REA−B1およびトキシノタイプIIの存在を示す、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程(b)において、試料を、先ず、抗体グループIおよび/または抗体グループIIIおよび/または抗体グループVのそれぞれ少なくとも1種の抗体と接触させ、かつ、工程(c)においてさらに、グループIおよびグループVからの1種またはそれ以上の抗体の陽性反応、ならびにグループIIIからの1種またはそれ以上の陰性反応が、高い毒性を有するC.ディフィシル菌株リボタイプ027、PEGE−NAP1、REA−B1およびトキシノタイプIIIの存在を示す、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程(b)において、試料を、それぞれ抗体グループII、グループIVおよびグループVIからのそれぞれ少なくとも1種の抗体と接触させ、かつ、工程(c)において、グループIIおよびグループIVからの抗体の陽性反応、ならびにグループVIからの1種またはそれ以上の抗体の陰性反応が、高い毒性を有するC.ディフィシル菌株リボタイプ017、トキシノタイプVIIIおよびセロタイプFの存在を示す、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
工程(b)において、試料をさらに抗体グループIおよび/または抗体グループIIIおよび/または抗体グループVのそれぞれ少なくとも1種の抗体と接触させ、かつ、工程(c)においてさらにグループIからの1種またはそれ以上の抗体の陽性反応、ならびにグループIIIおよびグループVからの抗体の陰性反応が、高い毒性を有するC.ディフィシル菌株リボタイプ017、トキシノタイプVIIIおよびセロタイプFを示す、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法において使用するための、特にC.ディフィシル菌株リボタイプ027、PFGE−NAP1、REA−B1およびトキシノタイプIIIを検出および同定するための請求項10または11に記載の方法において使用するための、DSMZ(Braunschweig, Deutschland)にDSM ACC2916(TGC19)の名称で寄託されたハイブリドーマ細胞系から製造されるモノクローナル抗体。
【請求項15】
請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法において使用するための、特にC.ディフィシル菌株リボタイプ017、トキシノタイプVIIIおよびセロタイプFを検出および同定するための請求項12または13に記載の方法において使用するための、DSMZ(Braunschweig, Deutschland)にDSM ACC2917(TGC23)の名称で寄託されたハイブリドーマ細胞系から製造されるモノクローナル抗体。
【請求項16】
請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法において使用するための、特にリボタイプ017、トキシノタイプVIIIおよびセロタイプF、および/またはリボタイプ027、PFGE−NAP1、REA−B1およびトキシノタイプIIIを有するC.ディフィシル菌株を検出および同定するための、請求項10から13までのいずれか1項に記載の方法において使用するための、DSMZ(Braunschweig, Deutschland)にDSM ACC2915(TGC16)の名称で寄託されたハイブリドーマ細胞系から製造されるモノクローナル抗体。
【請求項17】
請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法において使用するための、特にリボタイプ017、トキシノタイプVIIIおよびセロタイプF、および/またはリボタイプ027、PFGE−NAP1、REA−B1およびトキシノタイプIIIを有するC.ディフィシル菌株を検出および同定するための、請求項10から13までのいずれか1項に記載の方法において使用するための、DSMZ(Braunschweig, Deutschland)にDSM ACC2918(TGC35)の名称で寄託されたハイブリドーマ細胞系から製造されるモノクローナル抗体。
【請求項1】
試料中の変異したC.ディフィシル菌株を検出および同定するための方法において、以下の工程:
(a)生体排泄物試料および/または生体組織試料を獲得し、
(b)この試料を、グループI、グループII、グループIII、グループIV、グループVおよびグループVIの少なくとも3種の抗体グループからのそれぞれ少なくとも1種の抗体と接触させ、その際、
グループIは以下の抗体:pan−TcdB抗体、を含み、
グループIIは以下の抗体:トキシンTcdB−10463およびTcdB−017と反応するが、トキシンTcdB−8864およびTcdB−027とは反応しない抗体、を含み、
グループIIIは以下の抗体:TcdB−10463と反応するが、トキシンTcdB−8864、TcdB−017およびTcdB−027とは反応しない抗体、を含み、
グループIVは以下の抗体:トキシンTcdB−8864、TcdB−017およびTcdB−027と反応するが、トキシンTcdB−10463とは反応しない抗体、を含み、
グループVは以下の抗体:トキシンTcdB−8864およびTcdB−027と反応するが、トキシンTcdB−10463およびTcdB−017とは反応しない抗体、を含み、
グループVIは以下の抗体:pan−TcdA抗体、を含み、
(c)抗体反応を検出し、かつ反応パターンを作成し、その際、それぞれ抗体グループI〜VIのそれぞれ(b)で使用された抗体を、検出された陽性抗体反応に関してはプラスの符号(たとえば"+")および検出された陰性抗体反応に関してはマイナスの符号(たとえば"−")に分類し、かつ、
(d)(c)で得られた反応パターンと参考試料とを比較し、この場合、この参考試料は、技術水準において公知であり、かつ検出試験において試験すべきC.ディフィシル菌株Rx1、Rx2、Rxiからのそれぞれの大クロストリジウム毒素(LCT)LCT−Rx1、LCT−Rx2、LCT−Rxiの少なくとも1種を、抗体グループI〜VIの少なくとも3種からなる工程(b)で選択された抗体との反応試験中で使用し、かつそれぞれのLCTおよび抗体グループI〜VIの少なくとも3種に関して得られた反応結果を、それぞれの抗体グループが、検出された陽性抗体反応の場合には正の符号(たとえば"+")であるか、検出された陰性抗体反応の場合には負の符号(たとえば"−")に分類されるようにしてパターン状に記録することにより得られたものであり、
(e)(c)で得られた反応パターンと参考パターンとの間の一致を、試料中において該当する参考パターンのC.ディフィシル菌株が存在することに関する指標として評価する、ことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
グループIVからの少なくとも1種の抗体が、モノクローナル抗体TGC16(DSM ACC2915)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
グループVからの少なくとも1種の抗体が、モノクローナル抗体TGC19(DSM ACC2916)である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
グループVIからの少なくとも1種の抗体が、モノクローナル抗体TTC8(DSM ACC2322)である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
グループIからの少なくとも1種の抗体が、モノクローナル抗体2CV(DSM ACC2321)またはモノクローナル抗体TGC35(DSM ACC2918)である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
グループIIからの少なくとも1種の抗体が、モノクローナル抗体TGC23(DSM ACC2917)である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
グループIIIからの少なくとも1種の抗体が、モノクローナル抗体TGC41(DSM ACC2919)である、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程(b)において、試料を、それぞれグループI、IVおよびVIからのそれぞれ1種の抗体と接触させ、かつ、工程(c)において、グループI、IVおよびVIからの抗体の陽性反応が、高い毒性を有する変異したC.ディフィシル菌株の存在を示す、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程(b)において、試料を、グループII、グループIVおよびグループVIのそれぞれの抗体グループからのそれぞれ少なくとも1種の抗体と接触させ、かつ、
工程(c)において、グループIVおよびグループVIからの抗体の陽性反応、ならびにグループIIからの1種またはそれ以上の抗体の陰性反応が、高い毒性を有するC.ディフィシル菌株リボタイプ027、PFGE−NAP1、REA−B1およびトキシノタイプIIの存在を示す、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程(b)において、試料を、先ず、抗体グループIおよび/または抗体グループIIIおよび/または抗体グループVのそれぞれ少なくとも1種の抗体と接触させ、かつ、工程(c)においてさらに、グループIおよびグループVからの1種またはそれ以上の抗体の陽性反応、ならびにグループIIIからの1種またはそれ以上の陰性反応が、高い毒性を有するC.ディフィシル菌株リボタイプ027、PEGE−NAP1、REA−B1およびトキシノタイプIIIの存在を示す、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程(b)において、試料を、それぞれ抗体グループII、グループIVおよびグループVIからのそれぞれ少なくとも1種の抗体と接触させ、かつ、工程(c)において、グループIIおよびグループIVからの抗体の陽性反応、ならびにグループVIからの1種またはそれ以上の抗体の陰性反応が、高い毒性を有するC.ディフィシル菌株リボタイプ017、トキシノタイプVIIIおよびセロタイプFの存在を示す、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
工程(b)において、試料をさらに抗体グループIおよび/または抗体グループIIIおよび/または抗体グループVのそれぞれ少なくとも1種の抗体と接触させ、かつ、工程(c)においてさらにグループIからの1種またはそれ以上の抗体の陽性反応、ならびにグループIIIおよびグループVからの抗体の陰性反応が、高い毒性を有するC.ディフィシル菌株リボタイプ017、トキシノタイプVIIIおよびセロタイプFを示す、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法において使用するための、特にC.ディフィシル菌株リボタイプ027、PFGE−NAP1、REA−B1およびトキシノタイプIIIを検出および同定するための請求項10または11に記載の方法において使用するための、DSMZ(Braunschweig, Deutschland)にDSM ACC2916(TGC19)の名称で寄託されたハイブリドーマ細胞系から製造されるモノクローナル抗体。
【請求項15】
請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法において使用するための、特にC.ディフィシル菌株リボタイプ017、トキシノタイプVIIIおよびセロタイプFを検出および同定するための請求項12または13に記載の方法において使用するための、DSMZ(Braunschweig, Deutschland)にDSM ACC2917(TGC23)の名称で寄託されたハイブリドーマ細胞系から製造されるモノクローナル抗体。
【請求項16】
請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法において使用するための、特にリボタイプ017、トキシノタイプVIIIおよびセロタイプF、および/またはリボタイプ027、PFGE−NAP1、REA−B1およびトキシノタイプIIIを有するC.ディフィシル菌株を検出および同定するための、請求項10から13までのいずれか1項に記載の方法において使用するための、DSMZ(Braunschweig, Deutschland)にDSM ACC2915(TGC16)の名称で寄託されたハイブリドーマ細胞系から製造されるモノクローナル抗体。
【請求項17】
請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法において使用するための、特にリボタイプ017、トキシノタイプVIIIおよびセロタイプF、および/またはリボタイプ027、PFGE−NAP1、REA−B1およびトキシノタイプIIIを有するC.ディフィシル菌株を検出および同定するための、請求項10から13までのいずれか1項に記載の方法において使用するための、DSMZ(Braunschweig, Deutschland)にDSM ACC2918(TGC35)の名称で寄託されたハイブリドーマ細胞系から製造されるモノクローナル抗体。
【図1】
【図2】
【図3A)】
【図3B)】
【図3C)】
【図3D)】
【図3E)】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図2】
【図3A)】
【図3B)】
【図3C)】
【図3D)】
【図3E)】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【公表番号】特表2013−500479(P2013−500479A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521958(P2012−521958)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【国際出願番号】PCT/DE2009/001044
【国際公開番号】WO2011/012098
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(512022745)バイオディクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【氏名又は名称原語表記】bioDics GmbH
【住所又は居所原語表記】Binger Weg 15, D−55444 Schweppenhausen, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【国際出願番号】PCT/DE2009/001044
【国際公開番号】WO2011/012098
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(512022745)バイオディクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【氏名又は名称原語表記】bioDics GmbH
【住所又は居所原語表記】Binger Weg 15, D−55444 Schweppenhausen, Germany
【Fターム(参考)】
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