説明

試料分析用容器およびそれを用いた分析装置

【課題】試料分析用容器から試料が飛び出ることを防止し、かつ、正確な定量分析をすることができる試料分析用容器とそれを用いた分析装置を提供する。
【解決手段】底部3と側面部36を有し上面が開口した本体2aと、底部3に置いた試料5の上を覆う蓋体4とからなる試料分析用容器2であって、底部3と蓋体4が設置される蓋体設置部6の間の側面部36に貫通孔8を設け、試料分析用容器2内で発生する気体を貫通孔8から試料分析用容器2の外部に容易に排出するとともに、試料5の試料分析用容器2外への飛び出しを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスクロマトグラフの分析装置で使用する定量的な分析精度向上に適した試料分析用容器およびそれを用いた分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機化合物など気化しやすい化合物の同定にガスクロマトグラフが用いられる。従来、ガスクロマトグラフを利用した分析装置に分析の対象となる試料を入れるための試料分析用容器100は、図7のように上面が開口している有底筒状となっている。
【0003】
この試料分析用容器100に分析対象の試料を入れ、この試料分析用容器100を石英管などを介して分析装置内に落として入れている。すなわち、試料分析用容器100は、分析装置内の所定の位置まで重力を利用して落とし込まれ、所定の位置で加熱されて試料分析用容器100内の試料の分析を開始する例が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−253606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように試料分析用容器100を分析装置の所定の位置まで落下させて保持する場合に、試料分析用容器100がそれを保持する部分へ衝突して試料分析用容器100内の試料が試料分析用容器100から飛び出すという課題がある。
【0005】
すなわち、試料分析用容器100の質量に比べてその中の試料の質量は小さいため、衝突時に試料に加わる単位質量あたりの力積が大きく、試料分析用容器100の上面の開口部より上まで試料が飛び上がる。そのために、試料分析用容器100の上面の開口部より上まで飛び上がった試料の一部が試料分析用容器100から脱落して正確な定量分析ができなくなる。
【0006】
このような課題を解決する方法として、試料分析用容器100内に試料を入れたのちにグラスウールなどの蓋体で試料分析用容器100に蓋をする方法などが考えられる。しかしながら、グラスウールなどの蓋体が試料分析用容器100内で発生する気体が外に出るのを妨げるため、試料から発生したガスが試料分析用容器100内に残りやすく、本来分析すべき気体の全量が分析装置まで運ばれずに正確な定量分析ができないという課題がある。
【0007】
本発明は上記課題を解決して、試料分析用容器からの試料の脱落がなく、定量分析の精度を向上させることを可能とした試料分析用容器と分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の試料分析用容器は、底部と側面部を有し上面が開口した本体と、底部に置いた試料の上を覆う蓋体とからなる試料分析用容器であって、底部と蓋体が設置される蓋体設置部の間の側面部に、貫通孔を設けている。
【0009】
このような構成とすることにより、試料分析用容器内で発生する気体を貫通孔から試料分析用容器の外に容易に排出することができるため、短時間で分析すべき気体の全量を分析装置の分析部まで搬送することができて正確な定量分析が可能となる。
【0010】
さらに、底部の少なくとも一部がテーパ形状を有していることが好ましい。このような構成とすることにより、試料分析用容器内に収納した試料が試料分析用容器の側面部から離れた場所、すなわち貫通孔から離れた場所に集まるため、試料が試料分析用容器の外に出る可能性を少なくすることが可能となる。
【0011】
さらに、蓋体が繊維状の部材で形成されていることが好ましい。このような構成とすることにより、試料分析用容器の落下により、試料が蓋体に衝突しても試料を破損する恐れがない。
【0012】
さらに、蓋体設置部の上の側面部に、本体の内方に突出する第1の凸部を備えることが好ましい。このような構成とすることにより、蓋体が試料分析用容器の外に飛び出すことを防止することができる。
【0013】
さらに、蓋体設置部と貫通孔との間の側面部に、本体の内方に突出する第2の凸部を備えることが好ましい。このような構成とすることにより、蓋体が貫通孔を塞ぎ試料分析用容器内からの気体の流出を妨げることがない。
【0014】
さらに、貫通孔が側面部に等間隔に形成されていることが好ましい。このような構成とすることにより、気体の流出をスムーズにすることが可能となる。
【0015】
さらに、貫通孔の下の側面部に、本体の内方に突出する第3の凸部を備えることが好ましい。このような構成とすることにより、試料が試料分析用容器の外に飛び出すことを防止することができる。
【0016】
さらに、第3の凸部が、底部の最も低い位置と貫通孔とを結ぶ投影線まで突出していることが好ましい。このような構成とすることにより、試料分析用容器の落下時の衝撃により試料が複数の破片に割れても、その破片が試料分析用容器の外に飛び出すことを防止することができる。
【0017】
また、本発明の分析装置は、試料分析用容器を加熱する加熱手段と、加熱手段によって加熱されて試料から発生した気体を搬送するガス搬送手段と、ガス搬送手段によって搬送された気体の成分を分析する分析手段とを備えている。
【0018】
このような構成とすることにより、試料分析用容器内で発生した気体を貫通孔から試料分析用容器外に容易に排出させることができるために、短時間で分析すべき気体の全量が分析装置の分析部まで運ばれて正確な定量分析ができ、かつそれまでに分析した試料の影響を受けない分析が可能となる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように本発明の試料分析用容器および分析装置によれば、蓋体を取り付けた状態であっても、試料分析用容器内の試料から発生させたガスの全量を、分析装置の分析部に運ぶことができるため、より正確な定量分析をすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態にかかる試料分析用容器および分析装置について、図面を参照しながら説明する。なお、図面で同じ符号が付いたものは、説明を省略する場合もある。また、図面は理解をしやすくするためにそれぞれの構成要素を模式的に示しているので、形状などについては正確な表示ではない。
【0021】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態における試料分析用容器2の模式図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)の1A−1A線の断面図、(c)は(a)の蓋体4を除いた場合に上面1Bから見た平面図である。なお、試料分析用容器2は、分析装置の所定の位置に配置されて加熱され、試料分析用容器2の内部に配置した試料5から気体を発生させるための容器である。
【0022】
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態における試料分析用容器2は上面が開口している底部3を有する本体2aと、この本体2aの内部上方に設けられて、石英ウールを数mm程度の厚さにした蓋体4からなり、蓋体4は、本体2aの開口部7から見ると内側の全面を覆っている。
【0023】
図1(a)に示すように、試料分析用容器2の本体2a内に試料5を入れて蓋体設置部6に、例えば石英ウールからなる蓋体4を配置する。蓋体4は弾力がある状態で形成されているので、本体2aの側面部36の内壁面9に対してその弾力により蓋体設置部6に押圧配置されている。なお、蓋体4は、伸縮自在の材質であるものを使用しており、ここでは石英ウールにより形成している。
【0024】
試料分析用容器2は、後述するように分析装置の配管内を落下させて試料分析用容器2の所定の位置に配置するようにしている。このとき、蓋体4があるために試料分析用容器2が分析装置の試料分析用容器保持部(図示せず)に衝突して、本体2aの底部3上に収納している試料5が飛び上がっても、試料5が試料分析用容器2の開口部7より上まで上がることを防止できる。また、蓋体4を繊維状のもので構成したので、試料5が蓋体4に衝突しても試料5が割れることはない。
【0025】
また、本発明の第1の実施の形態では、本体2aの側面部36で、本体2aの底部3と蓋体4を設置する蓋体設置部6の間に貫通孔8を設けている。したがって、試料分析用容器2内で発生した気体を貫通孔8を通して試料分析用容器2の外に容易に排出させることができ、試料分析用容器2内の気体の全量を分析装置の分析部に送ることができる。
【0026】
なお、貫通孔8は側面部36に等間隔に配置することが好ましい。このように構成することにより、各貫通孔8から気体が分析装置に均等に効率よく排出されて定量分析を正確に行うことができる。また、貫通孔8は側面部36に設けられており、試料分析用容器2を配管内で落下させる際の試料分析用容器2と試料5に加わる力積は上方向のみであるため、試料5が斜め方向に飛んで貫通孔8から試料分析用容器2の外に飛び出す可能性は少ない。
【0027】
また、本発明の第1の実施の形態における試料分析用容器2は、図1に示すように、底部3を略四角錐台形状としてテーパ形状のテーパ部39と底板部40からなるように構成してもよい。このような構成とすると、テーパ部39にある試料5が底板部40に集まり、試料5を内壁面9から離れた位置に集めることができる。そのため、試料5の飛ぶ方向が垂直方向から少しずれても、試料5が貫通孔8を通して試料分析用容器2の外に飛び出すことがない。
【0028】
以上のように、本発明の第1の実施の形態における試料分析用容器2は、分析装置の内部への試料5の飛散を防いで汚染を防止してそれら汚染物質の影響を排除し、なおかつ、試料5から発生する気体を容易に試料分析用容器2外に排出して分析装置の分析部に送ることができる。そのため、安定で正確な定量分析を行うことができる試料分析用容器2を実現することができる。
【0029】
図2に本発明の第1の実施の形態における試料分析用容器を用いた分析装置10の概略構成図を示す。分析装置10はガスクロマトグラフである。分析装置10は試料分析用容器2を分析装置10に導入するための試料導入部11と、試料分析用容器2を加熱する加熱手段である加熱部13と、試料分析用容器2から排出された気体を搬送するガス搬送手段であるガス搬送部41と、気体の成分を分析する分析部31とから構成されている。
【0030】
試料導入部11は、複数個用意された試料分析用容器2と試料分析用容器2を自動で導入できる回転式試料分析用容器ホルダ12とから構成されている。加熱部13は、試料分析用容器2を導入する容器導入口14と、試料分析用容器2を容器導入口14から矢印15の方向への開閉により容器導入管16の下方へ導くシャッター17と、試料分析用容器2を容器導入管16の中間の待機部18に待機させるシャッター19と、石英管21と、熱分解炉22とにより構成されている。また、ガス搬送部41は、ガス導入口26と、ガス排気口29と、接続部24と、ロート部38と、接続管35と、ガス導入口28とから構成されている。また、分析部31はカラム32と、質量分析計33とデータ処理を行うコンピュータ34とから構成されている。
【0031】
なお、シャッター19は、シャッター19を矢印20の方向の開閉動作により、試料分析用容器2を容器導入管16および石英管21の中を自由落下させて熱分解炉22の中の容器落下部23まで到達させるものである。また、容器導入管16と石英管21とは接続部24で接続されている。
【0032】
また、ガス導入口26は試料5から発生する気体を分析部に運ぶキャリアガス25を導入する導入口であり、ガス導入口28は試料分析用容器2を容器導入口14まで吹上げて回収するための吹上げガス27を導入する導入口である。また、ガス排気口29はキャリアガス25および吹上げガス27の少なくともその一部を排気ガス30として排気する排気口である。
【0033】
すなわち、分析装置10では、加熱部13の石英管21に配置した試料分析用容器2を熱分解炉22により石英管21の周囲より加熱して、試料5から発生した気体を石英管21内に排出し、その気体をキャリアガス25に搬送させて接続管35からカラム32の中に導入してガスクロマトグラフ法により分析するものである。
【0034】
次に、ガスクロマトグラフ法による分析装置10における分析手順と内容について、図1および図2を用いて具体的に説明する。
【0035】
図1に示すように試料5および蓋体4が中に入った試料分析用容器2を複数個使用して、図2に示す分析装置10の回転式試料分析用容器ホルダ12にセットする。このときに加熱部13のシャッター17、19は閉じている。また、ガス搬送部41のガス排気口29とガス導入口28は閉じており、キャリアガス25のガス導入口26は開いており少量のキャリアガス25を流している。そして、回転式試料分析用容器ホルダ12を回転させて分析したい試料分析用容器2が容器導入口14の位置にきたときにシャッター17を開き、試料分析用容器2を矢印37の方向に沿って容器導入管16の中を自由落下させて待機部18に配置する。この状態になるとシャッター17を直ちに閉じ、充分な量のキャリアガス25をガス導入口26より流入する。
【0036】
一方、加熱部13の熱分解炉22の温度が所定の温度になった状態になるとシャッター19が開き、試料分析用容器2は石英管21の中を自由落下して容器落下部23に導入される。容器落下部23の石英管21は径が絞られたロート部38を有しており、このロート部38と試料分析用容器2の略四角錐台形状のテーパ部39および底板部40の形状とが嵌まりあって安定した状態で容器落下部23に配置することができる。なお、石英管21の内径は試料分析用容器2の外形よりも大きく、さらに、ロート部38には試料分析用容器2のテーパ部39がロート部38に嵌まりあっても、石英管21と接続管35との間で気体とキャリアガス25とが連通可能な構成となっている。
【0037】
また、試料分析用容器2中の試料5が加熱されて発生した気体成分は、貫通孔8から石英管21内に排出され、石英管21の中でキャリアガス25と混合されて接続管35を通過してカラム32に供給される。分析部31のカラム32、質量分析計33およびコンピュータ34により気体成分の定性的、かつ定量的に成分分析を行うことができる。
【0038】
次に、熱分解炉22の設定温度を変えて連続して試料5から発生する気体の成分分析を行う場合には、その都度シャッター19を開いてガス導入口26を閉じ、さらにガス排気口29を開く。そして、ガス導入口28より吹上げガス27を導入し、試料分析用容器2を待機部18まで戻す。そののち、シャッター19、ガス排気口29およびガス導入口28を閉じ、ガス導入口26を開いてキャリアガス25を導入する。熱分解炉22の温度が所定の設定温度になった状態で再びシャッター19を開き、試料分析用容器2を石英管21の中に自由落下させて容器落下部23に導入する。
【0039】
このように、1つの試料5を用いて加熱の設定温度を変えて分析を行う場合は、試料分析用容器2は分析する設定温度が変わるごとに待機部18と容器落下部23とを往復する。1つの試料5で行うことができる全ての分析が終了すると、シャッター17およびシャッター19が開かれ、ガス導入口26およびガス排気口29が閉じられる。そして、ガス導入口28を開いて吹上げガス27が導入されると、容器落下部23にある試料分析用容器2が吹上げられて容器導入口14より排出される。この排出ののち回転式試料分析用容器ホルダ12に保持されている複数の試料分析用容器2のうち、次に分析する試料分析用容器2が容器導入口14から矢印37の方向に容器導入管16に自由落下して入る。このことにより、複数の試料分析用容器2の自動導入から複数回の分析が行われたのちに自動排出を行うまでの一連の動作を自動で行うことができる。
【0040】
すなわち、本発明の第1の実施の形態における試料分析用容器2と分析装置10によれば、試料5が試料分析用容器2から飛び出ることを防止することができるので、分析装置10において、試料分析用容器2内の試料5が石英管21などを汚染することなく、連続して迅速に分析を行うことができる。さらに、試料5から発生する気体の全量を分析部31に送ることができるので、成分分析の定量性を確保して測定精度を向上させることができる。
【0041】
なお、本発明の第1の実施の形態における試料分析用容器2の蓋体4には、石英ウールを使用したが石英ウールに限定するものではなく、板状の部材であって、試料5の加熱温度において気体を発生しない物質で形成したものであれば同様に使用することができる。また、加熱すると気体成分を生成する材料を含まない繊維状のものであれば、他の繊維状のものを用いた蓋体4であってもよい。
【0042】
以上のように、蓋体4と貫通孔8を有する本体2aにより試料分析用容器2を構成することにより、分析装置10の石英管21など分析装置10の内部を汚染することがない。また、試料分析用容器2内の気体を全て分析部31に送ることができるため、それまでに分析した試料5の影響を受けることがなく、正確な定量分析をすることができる分析装置10を実現することができる。
【0043】
(第2の実施の形態)
図3は、本発明の第2の実施の形態における試料分析用容器302の模式図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)の3A−3A線の断面図、(c)は(a)の蓋体304を除いた場合に上面3Bから見た平面図である。なお、第1の実施の形態と同一の構成要素に関しては同一の符号を用いている。
【0044】
本発明の第2の実施の形態の試料分析用容器302では、第1の実施の形態における試料分析用容器2に加えて蓋体304が試料分析用容器302の本体302aから外に飛び出すのを防止する目的で、本体302aの内方に突出する第1の凸部341を蓋体設置部306と開口部7の間に2個設けている。すなわち、第1の凸部341は、試料分析用容器302の落下時に蓋体304に上向きの力が加わった際に、蓋体304が試料分析用容器302の本体302aから外に飛び出すのを防止する。
【0045】
したがって、蓋体304が試料分析用容器302の本体302aから外に飛び出して、図2に示す分析装置10の石英管21が汚染されるのを防止して、より確実に、正確な定量分析をすることができる。
【0046】
(第3の実施の形態)
図4は、本発明の第3の実施の形態における試料分析用容器402の模式図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)の4A−4A線の断面図、(c)は(a)の蓋体404を除いた場合に上面4Bから見た平面図である。なお、第2の実施の形態と同一の構成要素に関しては同一の符号を用いている。
【0047】
本発明の第3の実施の形態の試料分析用容器402では、第2の実施の形態における試料分析用容器302に加えて、蓋体404が試料分析用容器402の本体402aの蓋体設置部406より下にずれるのを防止する目的で、本体402aの内方に突出する第2の凸部442を蓋体設置部406と貫通孔408の間に内壁面9を一周するように設けている。
【0048】
すなわち、試料分析用容器402が落下して図2に示す分析装置10のロート部38と衝突すると蓋体404に下向きの力が加わる。その力は、蓋体404を試料分析用容器402の本体402aの蓋体設置部406より下にずらすように働き、蓋体404が貫通孔408を塞ぐように働く。しかしながら、本発明の第3の実施の形態によれば、蓋体設置部406と貫通孔408との間に第2の凸部442を設けているために、蓋体404が下方にずれるのを防止して、蓋体404が貫通孔408を塞ぐことを防止することができる。その結果、試料分析用容器402の貫通孔408からの気体の流出を阻害せずに、より正確な定量分析をすることができる。
【0049】
なお、図4(c)に示すように、第1の凸部341は、側面部436の2箇所のみに設けているが、第2の凸部442は側面部436の全周に設けるようにしている。このようにすることにより、蓋体404を取り外すときに、第1の凸部341の固定が側面部436の2箇所のみであるために取り外しが容易である。
【0050】
また、第2の凸部442は内壁面9の全周にあるために蓋体404が第2の凸部442より下に設置されるのを防止している。そのため、蓋体404を容易に蓋体設置部406に設置することができる。
【0051】
さらに、試料分析用容器402が落下して、図2に示す分析装置10のロート部38と衝突したときなどに試料5が飛び上がり、蓋体404に試料5が衝突した際に、蓋体404が2箇所の第1の凸部341を結ぶ線を回転軸にして回転して蓋体404の効果が確実でなくなることも防止している。すなわち、第2の凸部442が側面部436の全周に載置されているために蓋体404に試料5が衝突しても、そののち蓋体404の自重によって第2の凸部442上に配置されるものである。
【0052】
なお、貫通孔408は側面部436に等間隔に配置されている。このようにすることにより、各貫通孔408を通過する気体の量は等しくなり、気体を効率よく試料分析用容器402の本体402aの外に排出することができる。
【0053】
(第4の実施の形態)
図5は、本発明の第4の実施の形態における試料分析用容器502の模式図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)の5A−5A線の断面図、(c)は(a)の蓋体504を除いた場合に上面5Bから見た平面図である。なお、第3の実施の形態と同一の構成要素に関しては同一の符号を用いている。
【0054】
本発明の第4の実施の形態の試料分析用容器502では、第3の実施の形態における試料分析用容器402に加えて、試料分析用容器502の本体502aの外部に試料5が飛び出すのを防止する目的で、本体502aの内方に突出する第3の凸部543を貫通孔508の下部に設けている。第3の凸部543を有することにより、試料分析用容器502の落下時に試料5が真上以外の方向にも飛んだ場合でも、貫通孔508の近くまで飛ぶ試料5が第3の凸部543に衝突して試料分析用容器502内に落ちる。そのため、試料5が貫通孔508を通して試料分析用容器502の本体502aの外に飛び出ることを防止することができる。
【0055】
(第5の実施の形態)
図6は、本発明の第5の実施の形態における試料分析用容器602の模式図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)の6A−6A線の断面図、(c)は(a)の上面6Bから見た平面図である。なお、第4の実施の形態と同一の構成要素に関しては同一の符号を用いている。
【0056】
本発明の第5の実施の形態では、試料分析用容器602の本体602aの外部に試料5が飛び出すのを防止する目的で設けた本体602aの内方に突出する第3の凸部643の先端部が、底部3の最も低い場所である底板部40と貫通孔608とを結ぶ投影線645よりも本体602aの内方に突出している。
【0057】
試料分析用容器602が落下した際の衝撃により、試料5が複数の破片に割れた場合には、その破片は垂直方向(真上方向)以外にも飛び散ることとなる。試料分析用容器602の本体602aの底部3はその一部がテーパ形状であるため、底部3の最も低い位置に試料5が集まる。したがって、衝撃で割れた破片は、底部3の最も低い位置から飛び散り、その飛び散りの軌跡は直線に近くなる。
【0058】
このとき、底部3から貫通孔608に向かって飛び散る破片は、投影線645よりも下を移動するが、投影線645より下を移動する場合は第3の凸部643に当たり貫通孔608まで到達しない。したがって、衝撃で試料5が割れた場合でも、その破片が試料分析用容器602の本体602aの外に飛び出ることを防止することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、正確な定量分析ができるので、各種試料分析用容器およびそれを用いた分析装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1の実施の形態における試料分析用容器を示す模式図
【図2】本発明の第1の実施の形態における試料分析用容器を用いた分析装置の概略構成図
【図3】本発明の第2の実施の形態における試料分析用容器を示す模式図
【図4】本発明の第3の実施の形態における試料分析用容器を示す模式図
【図5】本発明の第4の実施の形態における試料分析用容器を示す模式図
【図6】本発明の第5の実施の形態における試料分析用容器を示す模式図
【図7】従来の試料分析用容器を示す斜視図
【符号の説明】
【0061】
2,302,402,502,602 試料分析用容器
2a,302a,402a,502a,602a 本体
3 底部
4,304,404,504 蓋体
5 試料
6,406 蓋体設置部
7 開口部
8,408,508,608 貫通孔
9 内壁面
10 分析装置
11 試料導入部
12 回転式試料分析用容器ホルダ
13 加熱部
14 容器導入口
16 容器導入管
17,19 シャッター
18 待機部
21 石英管
22 熱分解炉
23 容器落下部
24 接続部
25 キャリアガス
26,28 ガス導入口
27 吹上げガス
29 ガス排気口
30 排気ガス
31 分析部
32 カラム
33 質量分析計
34 コンピュータ
35 接続管
36,436 側面部
38 ロート部
39 テーパ部
40 底板部
41 ガス搬送部
341 第1の凸部
442 第2の凸部
543,643 第3の凸部
645 投影線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と側面部を有し上面が開口した本体と、前記底部に置いた試料の上を覆う蓋体とからなる試料分析用容器であって、
前記底部と前記蓋体が設置される蓋体設置部の間の前記側面部に、貫通孔を設けたことを特徴とする試料分析用容器。
【請求項2】
前記底部の少なくとも一部がテーパ形状を有していることを特徴とする請求項1に記載の試料分析用容器。
【請求項3】
前記蓋体が、繊維状の部材で形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の試料分析用容器。
【請求項4】
前記蓋体設置部の上の前記側面部に、前記本体の内方に突出する第1の凸部を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の試料分析用容器。
【請求項5】
前記蓋体設置部と前記貫通孔との間の前記側面部に、前記本体の内方に突出する第2の凸部を備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の試料分析用容器。
【請求項6】
前記貫通孔が前記側面部に等間隔に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の試料分析用容器。
【請求項7】
前記貫通孔の下の前記側面部に、前記本体の内方に突出する第3の凸部を備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の試料分析用容器。
【請求項8】
前記第3の凸部が、前記底部の最も低い位置と前記貫通孔とを結ぶ投影線まで突出していることを特徴とする請求項7に記載の試料分析用容器。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の前記試料分析用容器を加熱する加熱手段と、前記加熱手段によって加熱されて前記試料から発生した気体を搬送するガス搬送手段と、前記ガス搬送手段によって搬送された気体の成分を分析する分析手段とを備えたことを特徴とする分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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