試料測定装置及び試料測定方法
【課題】簡素かつ小型で運搬に適するとともに、計測後の濃度算出処理も簡易な精度のよい試料測定装置を安価に提供すること。
【解決手段】試料測定装置10は、紫外光を発生する低圧水銀ランプ21と、試料を収容した状態で低圧水銀ランプ21からの光束を通過させる紫外線透過セル30と、紫外線透過セル30を通過した光束を検出する計測用フォトダイオード51と、計測用フォトダイオード51の検出出力に対応する測定結果を数値化した値を表示する出力表示装置70と、電源装置22、62、72とを備える。これにより、紫外線透過セル30中の試料が紫外域に吸光性等を有する場合、試料濃度すなわち試料中の対象物濃度を紫外光透過率に関連させて簡単に決定することができる。
【解決手段】試料測定装置10は、紫外光を発生する低圧水銀ランプ21と、試料を収容した状態で低圧水銀ランプ21からの光束を通過させる紫外線透過セル30と、紫外線透過セル30を通過した光束を検出する計測用フォトダイオード51と、計測用フォトダイオード51の検出出力に対応する測定結果を数値化した値を表示する出力表示装置70と、電源装置22、62、72とを備える。これにより、紫外線透過セル30中の試料が紫外域に吸光性等を有する場合、試料濃度すなわち試料中の対象物濃度を紫外光透過率に関連させて簡単に決定することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材用防カビ剤等の薬剤の成分濃度を光学的に計測するための試料測定装置、及び試料測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬液の濃度を測定するために使用される透過光測定用光学装置として、ハロゲンランプからの光束を単一のフローセルに入射させ透過させるとともに、透過後の紫外光をバンドパスフィルタを介して紫外用の検出器に入射させ、透過後の赤外光をバンドパスフィルタを介して赤外用の検出器に入射させるものが存在する(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−12726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記透過光測定用光学装置では、2種類の光線を利用して薬液の濃度を測定するので、装置が全体的に大型化しやすく計測後の濃度算出処理も複雑なものになりやすい。また、2種類の光線を利用したとしても、各光線用にバンドパスフィルタを2枚使用すると装置が高価になる。
【0004】
そこで、本発明は、簡素かつ小型で運搬に適するとともに、計測後の濃度算出処理も簡易な精度のよい試料測定装置を安価に提供することを目的とする。
【0005】
また、本発明は、上記の試料測定装置を用いた試料測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る試料測定装置は、(a)紫外光を発生する紫外光ランプと、(b)試料を収容した状態で紫外光ランプからの光束を通過させる紫外線透過セルと、(c)紫外線透過セルを通過した光束を検出する計測用半導体光検出素子と、(d)計測用半導体光検出素子の検出出力に対応する測定結果を数値化した値を表示する出力表示装置と、(e)紫外光ランプと、計測用半導体光検出素子と、出力表示装置とを動作させるための電源とを備える。ここで、「数値化した値を表示すること」には、数値をデジタル的又はアナログ的に表示することを意味し、図形サイズを増減させるといった表示を含む。
【0007】
上記試料測定装置では、計測用半導体光検出素子が紫外線透過セルを通過した光束を検出し、出力表示装置が、計測用半導体光検出素子の検出出力を数値化した値を表示するので、紫外線透過セル中の試料が紫外域に吸光性等を有する場合、試料濃度すなわち試料中の対象物濃度を紫外光透過率に関連させて簡単に決定することができる。
【0008】
本発明の具体的な態様では、上記試料測定装置において、紫外光ランプと計測用半導体光検出素子との間の計測用光路上であって、紫外線透過セルの後段及び/又前段に配置され、紫外域に透過帯を有するバンドパスフィルタをさらに備える。この場合、紫外線透過セル中の試料が吸光性を有する波長に絞って紫外光透過率を計測することができ、試料濃度の計測精度を高めることができる。
【0009】
本発明の別の態様では、紫外光ランプは、低圧水銀ランプであり、出力表示装置は、低圧水銀ランプの発光特性とバンドパスフィルタの透過特性とを参酌して決定した増幅特性を有する増幅回路と、当該増幅回路の出力電圧又は出力電流を計測する電気計測器とを有する。この場合、低圧水銀ランプは携帯用に小型化することができ、増幅回路や電気計測器はその動作状態の設定によって高精度で再現性ある濃度計測を可能にする。
【0010】
本発明のさらに別の態様では、紫外光ランプと、紫外線透過セルと、計測用半導体光検出素子とを相互に固定して収納するとともに、出力表示装置の表示器部分を外壁に設けた携帯型の遮光ケースをさらに備える。この場合、試料測定装置を携帯型のユニットとして簡易に目的地に運搬することができ、屋外等の様々な場所に存在する試料中の対象物濃度を迅速に測定することができる。
【0011】
本発明のさらに別の態様では、計測用の波長とは異なる所定の紫外領域波長で発光する紫外線発光ダイオードと、紫外線発光ダイオードから射出され紫外線透過セルを通過した光束を検出する補正用半導体光検出素子とをさらに備え、出力表示装置は、補正用半導体光検出素子の検出出力と計測用半導体光検出素子の検出出力とに基づいて得た結果を測定結果として数値化した値を表示する。この場合、出力表示装置が、各半導体光検出素子の検出出力だけでなく、例えば制御装置での演算によって補正された計測用半導体光検出素子の検出出力を数値化した値を表示することができるので、紫外線透過セル中の試料が不純物質の影響等で紫外域の測定波長と異なる位置に吸光性等を有する場合であっても、精度のよい試料濃度を簡単に決定することができる。また、試料に応じた補正が可能になるので、より精度のよい試料濃度を決定することができる。
【0012】
本発明のさらに別の態様では、計測用光路、及び紫外線発光ダイオードと補正用半導体光検出素子との間の補正用光路は、紫外線透過セルを通過する光路であって、紫外光ランプと紫外線透過セルとの間、及び紫外線発光ダイオードと紫外線透過セルとの間の遮光位置に配置可能な遮光板をさらに備え、計測用光路及び補正用光路の切り替えは、遮光板の配置によって行われる。この場合、計測に用いない光路を遮光することによって、迷光を防止することができ、各光路に入射する光束を安定させつつ試料の紫外線透過率を精度よく計測することができる。
【0013】
本発明のさらに別の態様では、計測用光路、及び紫外線発光ダイオードと補正用半導体光検出素子との間の補正用光路は、紫外線透過セルを通過する光路であって、計測用光路及び補正用光路の切り替えを行う光路切替装置をさらに備える。この場合、光路切替装置を利用して紫外線透過セルに入射させる光束に応じて光路を切り替え、計測用光路及び補正用光路のそれぞれの光路について計測を行うことにより、各光路に入射する光束を安定させつつ試料の紫外線透過率を精度よく計測することができる。
【0014】
本発明のさらに別の態様では、計測用半導体光検出素子は、補正用半導体光検出素子として用いられ、計測用光路上及び補正用光路上においてそれぞれ紫外光ランプからの透過光量及び紫外線発光ダイオードからの透過光量を測定する。この場合、計測用半導体光検出素子を補正用半導体光検出素子と兼用することにより、1つの半導体光検出素子の検出出力を利用して試料の紫外線透過率の補正された測定値を得ることができる。
【0015】
本発明のさらに別の態様では、計測用光路及び補正用光路に入射する光束は互いに独立し、紫外光ランプの透過光量は計測用光路上で測定され、紫外線発光ダイオードの透過光量は補正用光路上で測定される。この場合、例えば遮光された各光路上で独立して透過光量の測定を行うことにより、各光路に入射する光束を安定させつつ試料の紫外線透過率を精度よく計測することができる。
【0016】
本発明のさらに別の態様では、計測用光路及び補正用光路のいずれか一方に光束を入射させるタイミングに応じて、計測用半導体光検出素子及び補正用半導体光検出素子のいずれか一方に光束を検出させるタイミングを制御する制御装置をさらに備える。この場合、各光路に光束を入射させるタイミングに応じて光束を検出することにより、効率よく光束を検出することができ、補正の演算等を含む計測の自動化が可能になる。
【0017】
本発明のさらに別の態様では、制御装置は、紫外線発光ダイオードに対する補正用半導体光検出素子の検出出力により、紫外光ランプに対する計測用半導体光検出素子の検出出力のベースラインに相当する値を測定する。この場合、補正用半導体光検出素子の検出出力により、紫外線吸光性の異なる試料に応じた計測用半導体光検出素子の検出出力のベースラインの変化を補正することができる。ここで、試料の媒質、不純物等は、測定する試料によって多少異なるため、試料ごとに紫外線吸光性が多少異なるものとなり、通常バックグラウンドの変化として現われる。
【0018】
本発明のさらに別の態様では、制御装置は、紫外光ランプに対する計測用半導体光検出素子の検出出力からベースラインを差し引く換算処理を行い、出力表示装置に計算結果を表示させる。この場合、計測用半導体光検出素子の検出出力を自動的に補正することにより、試料濃度を精度よく、簡単に決定することができる。
【0019】
本発明のさらに別の態様では、紫外線透過セルは、木材用防カビ剤溶液、洗濯用洗剤溶液、及びガソリンのいずれかの試料を収納し、出力表示装置は、紫外線透過セル中の試料の濃度を反映した数値を示す。この場合、希釈液中の木材用防カビ剤の濃度、洗濯液中の洗濯用洗剤の濃度、又はガソリン中の不純物濃度を簡易かつ正確に決定することができる。
【0020】
上記課題を解決するため、本発明に係る試料測定方法は、(a)紫外線透過セルに収容された試料の濃度を測定する試料測定方法であって、(b)紫外光ランプからの光束を、紫外光ランプと計測用半導体光検出素子との間の計測用光路上にある紫外線透過セルに通過させ、紫外線透過セルを通過した光束を検出する主計測工程と、(c)主計測用光路を、紫外線発光ダイオードと補正用半導体光検出素子との間の補正用光路に切り替え、計測用の波長と異なる波長で発生する紫外線発光ダイオードからの光束を、補正用光路上にある紫外線透過セルに通過させ、紫外線透過セルを通過した光束を検出する比較計測工程と、(d)主計測工程における測定結果を比較計測工程における測定結果によって補正し、数値化した値を表示する出力処理工程とを行う。
【0021】
上記試料測定方法では、計測用半導体光検出素子及び補正用半導体光検出素子によって、各光路中の紫外線透過セルを通過した光源の異なる光束を検出し、主計測工程における測定結果を比較計測工程における測定結果により補正し、数値化した値を表示するので、紫外線透過セル中の試料が紫外の特定波長域に吸光性等を有する場合、試料濃度すなわち試料中の対象物濃度を紫外光透過率に関連させて精度よく簡単に決定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る試料測定装置の構造を概念的に説明するブロック図である。
【0023】
この試料測定装置10は、試料である薬液CS中の対象成分の濃度を測定するためのものであり、紫外光を含む照明光を発生する紫外光光源20と、紫外線透過セルとして薬液を収容する紫外線透過セル30と、紫外線透過セル30の透過光のうち特定波長成分のみを通過させるバンドパスフィルタ40と、バンドパスフィルタ40を通過した光束を検出する光検出装置50と、光検出装置50の電流出力等を適宜増幅する増幅装置60と、増幅装置60の出力を視覚的に表示する出力表示装置70とを備える。ここで、試料測定装置10には、紫外光光源20と、光検出装置50と、増幅装置60と、出力表示装置70とを駆動させる電池等の電源すなわち電源装置が内蔵されている。
【0024】
紫外光光源20は、例えば紫外光ランプである小型の低圧水銀ランプ21で構成され、低圧水銀ランプ21は、オン・オフ可能な電源装置22に駆動されて必要な輝度で点灯される。紫外光光源20は、例えば150〜450nmの範囲で可視光や紫外光を発生するが、本実施形態では、200〜350nmの紫外光が濃度計測に利用される。なお、紫外光は、薬液CS中の対象成分に吸収される場合が多く、対象成分が低濃度であっても定量が可能であり、比較的高精度の濃度測定を可能にする。
【0025】
紫外線透過セル30は、例えば石英ガラスで形成された四角柱の筒状の容器であり、紫外光光源20と光検出装置50との間の計測用光路PA1上に配置されている。紫外線透過セル30は、紫外光全体に対して良好な透過性を有する。紫外線透過セル30内の空間の計測用光路PA1方向に関する厚みは、薬液CSすなわち計測対象の種類や濃度等によって適宜変更することができるが、例えば具体的な実施例では、5〜30mm程度、さらに具体的には、14mmとした。
【0026】
バンドパスフィルタ40は、目標とする紫外光のみを透過させる誘電体多層膜からなり、紫外線透過セル30と光検出装置50との間の計測用光路PA1上に配置されている。バンドパスフィルタ40の透過波長は、計測対象の種類や濃度等によって適宜変更することができるが、例えば木材用防カビ剤処理液の濃度を計測する場合、269nmのピークをターゲットとした。バンドパスフィルタ40は、紫外線透過セル30に収容する薬液CSの種類に応じて透過特性の異なるものに変更することができる。
【0027】
光検出装置50は、例えばGaAlP系の半導体素子で構成され、バンドパスフィルタ40を通過した計測用光路PA1上に配置される計測用フォトダイオード51であり、紫外域において高い感度を有し、入射紫外光量が多いほど出力電流が増加する。なお、計測用フォトダイオード51の感度は、例えば波長150〜400nmの範囲に亘っている。
【0028】
増幅装置60は、オペアンプ等の回路素子によって構成され増幅回路本体61と、増幅回路本体61を駆動する電源装置62とを備える。増幅回路本体61は、光検出装置50の検出出力を適当なゲインで増幅し、計測用フォトダイオード51に入射する検出光の強度値に応じて増加する出力電圧を発生する。
【0029】
出力表示装置70は、電圧計回路やLCD等の表示器からなる電気計測器本体71と、電気計測器本体71を駆動する電源装置72とを備える。出力表示装置70は、増幅回路本体61からの増幅出力の電圧値をユーザが視覚的に認識できる数値等として表示器(後述)上に表示する。
【0030】
図2は、図1に示す試料測定装置10の外観図であり、図3(A)は、図2に示す試料測定装置10の側面図であり、図3(B)は、試料測定装置10の平面図である。
【0031】
図2に示すように、試料測定装置10は、遮光性の材料で形成され箱状の外観を有する外装ケース11中に収納されている。外装ケース11の寸法は、例えば約10cm×10cm×30cmである。外装ケース11の周囲外壁のうち一側面には、図1の出力表示装置70の表示器部分であるディスプレイ73が固定されており、ユーザが測定結果を確認できるようになっている。ディスプレイ73の隣には、主電源スイッチであるスナップスイッチ81が取り付けられており、ユーザが試料測定装置10の動作を開始したり停止したりすることができるようになっている。なお、外装ケース11は、携帯型の遮光ケースであり、外光(紫外線)が入射しない内部空間中に、紫外線透過セル30、バンドパスフィルタ40、光検出装置50、増幅装置60等を収納している。ここで、紫外線透過セル30は、不図示のホルダに交換可能に固定されており、着脱可能な上蓋11fを分離することにより、紫外線透過セル30の交換が可能になっている。
【0032】
図3(A) 及び図3(B)に示すように、外装ケース11中には、中央を仕切るように延びる支持板12が固定されており、支持板12上には、発光管21aを内蔵する低圧水銀ランプ21が固定されている。この低圧水銀ランプ21には、支持板12の裏面に固定された電池BA1からの電力が供給される。支持板12上には、紫外線透過セル30用のホルダ83も固定されている。また、支持板12上には、ホルダ83を挟んで反対側に、台座を介してフォトダイオード51が固定されている。計測用フォトダイオード51の入射面側には、バンドパスフィルタ40が貼り付けられている。さらに、支持板12上には、増幅装置60の増幅回路本体61に相当する増幅回路基板85が固定されている。この増幅回路基板85には、支持板12の裏面に固定された電池BA2からの電力が供給される。
【0033】
図4は、図1等に示す試料測定装置10の回路構成を説明する図である。低圧水銀ランプ21の電源をオン・オフするためのスイッチ・リード線と、電気計測器本体71に電力を供給するための電池BA2と、増幅回路基板85に電力を供給するための電池BA2と、増幅回路基板85の出力信号端子とは、第1のコネクタCO1に接続されている。また、スナップスイッチ81の各端子と、電気計測器本体71の入力端子や電源端子とは、第2のコネクタCO2に接続されている。第1のコネクタCO1と第2のコネクタCO2との間は、ケーブルCAが介在しており、両コネクタCO1、CO2の対応する番号同士が電気的に接続される。これにより、スナップスイッチ81のオンに伴って、低圧水銀ランプ21と、増幅回路基板85と、電気計測器本体71とに電源電圧が供給されて電源オン状態となる。低圧水銀ランプ21が電源オン状態になると、不図示の紫外線透過セル30が紫外線で照明される。紫外線透過セル30の透過光は、不図示のバンドパスフィルタ40を介して計測用フォトダイオード51に入射するので、計測用フォトダイオード51の検出信号が、増幅回路基板85で増幅され、増幅回路基板85の出力信号が、電気計測器本体71に入力信号として入力される。電気計測器本体71は、電圧計であり、電圧検出値をディスプレイ73に表示する。
【0034】
図5は、増幅回路基板85の具体的回路構成の一例を説明する図である。増幅回路基板85は、オペアンプLM358、コンデンサ、固定抵抗、可変抵抗等で形成され、計測用フォトダイオード51の検出信号を適当なゲインで増幅して電気計測器本体71に出力する。
【0035】
以上説明した試料測定装置10では、試料の透過光量を計測用フォトダイオード51が検出し、検出出力を数値化した値を出力表示装置70のディスプレイ73に表示するので、紫外線透過セル30中の試料が紫外域に吸光性等を有する場合、試料濃度すなわち試料中の対象物質濃度を紫外光透過率に関連させて簡単に決定することができる。また、紫外線透過セル30中の試料が吸光性を有する波長に絞って紫外線透過率を計測し、増幅回路や電気計測器の動作によって高精度で再現性ある濃度計測をすることができる。さらに、試料測定装置10は、電源を内蔵し、低圧水銀ランプ21等を小型化することにより携帯型のユニットとして簡易に目的地に運搬することができ、屋外等の様々な場所に存在する試料中の対象物濃度を迅速に測定することができる。
【0036】
以下、図1〜図5で説明した試料測定装置10による具体的な測定例について説明する。
【実施例1】
【0037】
本実施例では、木材用防カビ剤処理液の濃度測定を行った。日本曹達社製木材用防カビ剤「ミルカット180(商標)」を水で希釈化し、濃度0.25〜2%の希釈液を調整した。この希釈剤1mLをさらに50mLのメタノールで溶解し、塩酸を加えて酸性とした試料を得た。この試料を紫外線透過セル30に収納し、本実施形態の試料測定装置10によって計測を行った。以下の表1は、希釈液である試料中の処理液濃度と、ディスプレイ73の表示値である測定値との関係を示す。
【表1】
【0038】
以上の表1からも明らかなように、希釈液濃度と測定値との間に良好な相関が見られ、繰り返し測定の結果についても十分な再現性が見られた。
【0039】
図6は、表1の結果をグラフ化したものであり、横軸が電圧出力の測定値を、縦軸が防カビ剤濃度を表す。グラフから明らかなように、グラフ中の曲線の内挿や外挿によってディスプレイ73の表示値から紫外線透過セル30中の木材用防カビ剤の濃度を、測定光のスキャン等を行うことなく迅速に決定できることが分かる。なお、従来型の分光分析装置等では、起動時の調整が複雑で動作の安定までに時間がかかり、本実施例のような簡便な操作は不可能である。
【実施例2】
【0040】
本実施例では、洗濯用洗剤の濃度測定を行った。花王株式会社製洗濯用洗剤「アタック(商標)」を水で希釈化し、濃度50〜1000mg/Lの希釈液を調整した。この希釈液をひだ折り濾紙にて濾過し、不溶物を除去した試料を得た。この試料を紫外線透過セル30に収納し、本実施形態の試料測定装置10によって計測を行った。以下の表2は、希釈液である試料中の洗濯用洗剤濃度と、ディスプレイ73の表示値である測定値との関係を示す。
【表2】
【0041】
以上の表2からも明らかなように、洗濯用洗剤濃度と測定値との間に良好な相関が見られ、繰り返し測定の結果についても十分な再現性が見られた。
【0042】
図7は、表2の結果をグラフ化したものであり、横軸が電圧出力の測定値を、縦軸が洗剤濃度を表す。グラフから明らかなように、グラフ中の曲線の内挿や外挿によってディスプレイ73の表示値から紫外線透過セル30中の洗濯用洗剤の濃度を、測定光のスキャン等を行うことなく迅速に決定できることが分かる。
【実施例3】
【0043】
本実施例では、ガソリンのBTX濃度測定を行った。ガソリンにトルエンを加え、濃度50〜1000mg/Lの希釈液を調整して試料を得た。この試料を紫外線透過セル30に収納し、本実施形態の試料測定装置10によって計測を行った。以下の表3は、希釈液である試料中のトルエン濃度と、ディスプレイ73の表示値である測定値との関係を示す。
【表3】
【0044】
以上の表3からも明らかなように、トルエン濃度と測定値との間に良好な相関が見られ、繰り返し測定の結果についても十分な再現性が見られた。
【0045】
図8は、表3の結果をグラフ化したものであり、横軸が電圧出力の測定値を、縦軸がトルエン濃度を表す。グラフから明らかなように、グラフ中の曲線の内挿や外挿によってディスプレイ73の表示値から紫外線透過セル30中のトルエンの濃度ひいてはBTXの濃度を、測定光のスキャン等を行うことなく迅速に決定できることが分かる。
【0046】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係る試料測定装置について説明する。なお、第2実施形態に係る試料測定装置110は、第1実施形態の試料測定装置10を変形したものであり、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様であるものとする。
【0047】
図9は、第2実施形態に係る試料測定装置110の光学系部分を説明する図である。図10は、試料測定装置110の回路構成等を説明する図である。この試料測定装置110は、光学系として、紫外光光源120と、紫外線透過セル30と、光検出装置150と、バンドパスフィルタ40と、光路切替装置140とを備え、回路系として、増幅装置160と、出力変換装置170と、電圧発生装置91と、制御装置92と、入力装置93と、ディスプレイ94とを備える。ここで、出力変換装置170とディスプレイ94とは、測定結果を表示するための出力表示装置として機能する。また、試料測定装置110には、紫外光光源120、光検出装置150、光路切替装置140と、増幅装置160、出力変換装置170、電圧発生装置91と、制御装置92と、入力装置93と、ディスプレイ94とを駆動させる電源すなわち電源装置が内蔵されている。
【0048】
紫外光光源120は、例えば小型の低圧水銀ランプ21と、紫外線発光ダイオード23とで構成される。低圧水銀ランプ21は、制御装置92を介してオン・オフ可能な電源装置22に駆動されて必要な輝度で点灯される。低圧水銀ランプ21は、例えば150〜450nmの範囲で可視光や紫外光を発生するが、本実施形態では、200〜350nmの紫外光が濃度計測に利用される。一方、紫外線発光ダイオード23は、同様にオン・オフ可能な電源装置22に駆動されて必要な輝度で点灯される。紫外線発光ダイオード23は、例えば400nmに極大ピークをもつが、本実施形態では、350nm付近の紫外線(補正用参照光)が補正用計測に利用される。
【0049】
光検出装置150は、低圧水銀ランプ21からの光束を測定光として受光する計測用半導体光検出素子である計測用フォトダイオード51と、紫外線発光ダイオード23からの光束をバックグラウンド光として受光する補正用半導体光検出素子である補正用フォトダイオード52とで構成される。なお、両フォトダイオード51、52の感度は、例えば150〜400nmの範囲に亘っている。
【0050】
バンドパスフィルタ40は、低圧水銀ランプ21と計測用フォトダイオード51との間の計測用光路PA1上に配置されている。なお、紫外線発光ダイオード23は、比較的狭い特定波長の光束を射出するので、紫外線発光ダイオード23と補正用フォトダイオード52との間の補正用光路PA2上には、バンドパスフィルタを設けなくてよい。
【0051】
光路切替装置140は、各フォトダイオード51、52に入射する各光源21、23からの光束をそれぞれ遮光する遮光板41、42と、遮光板41、42をそれぞれ保持する遮光板ホルダ43、44と、光路PA1又はPA2を開放するために遮光板41、42をスライドさせて遮光板41、42の位置を変更する遮光板切替装置45とを備える。なお、遮光板41、42は、光路PA1、PA2を遮光する際に、低圧水銀ランプ21と紫外線透過セル30との間、及び紫外線発光ダイオード23と紫外線透過セル30との間の遮光位置にそれぞれ配置可能である。また、遮光板41、42は、光路PA1、PA2から退避した退避位置にも移動可能になっている。遮光板切替装置45は、スライド機構及びアクチュエータ等を含み、制御装置92により動作タイミングを含めて駆動制御される。
【0052】
増幅装置160は、計測用フォトダイオード51の出力信号を増幅する増幅回路基板201と、補正用フォトダイオード52の出力信号を増幅する増幅回路基板202とを備える。増幅回路基板201、202は、光検出装置150の検出出力を適当なゲインで増幅し、計測用フォトダイオード51及び補正用フォトダイオード52に入射する検出光の強度値に応じて増加する出力電圧を発生する。
【0053】
出力変換装置170は、一対のA/D変換器171、172を備える。増幅回路基板201、202は、計測用フォトダイオード51及び補正用フォトダイオード52の検出信号を適当なゲインで増幅してそれぞれA/D変換器171、172に出力する。A/D変換器171、172は、検出信号をデジタルデータに変換する。ディスプレイ94は、A/D変換器171、172とともに出力表示装置を構成する。ディスプレイ94は、A/D変換器171、172による変換出力から得た測定結果を表示するためのもので、増幅装置160からの増幅出力の電圧値をユーザが視覚的に認識できる数値等として表示する。
【0054】
電圧発生装置91は、増幅回路基板201に接続されており、増幅回路基板201のオペアンプA1に供給する電圧を調整する。電圧発生装置91により発生させる電圧は、測定する試料の種類等により適宜調整される。
【0055】
入力装置93は、入力装置93に設けた不図示のボタン等の操作を受けて試料測定の開始を制御装置92に指示するコマンドを出力する。なお、入力装置93の操作により、制御装置92に測定試料のパラメータ等を設定し、試料に応じて電圧発生装置91の出力調整、演算補正調整等を行うこともできる。
【0056】
制御装置92は、遮光板切替装置45を介して計測用光路PA1及び補正用光路PA2のいずれか一方に光束を入射させるタイミングに応じて、計測用フォトダイオード51及び補正用フォトダイオード52のいずれか一方に光束を検出させるタイミングを制御する。これにより、適切なタイミングでデータを取り込むことができ、効率よく光束を検出することができる。
【0057】
また、制御装置92は、必要ならば、入力装置93からの指示に従い、電源装置22を介して低圧水銀ランプ21及び紫外線発光ダイオード23の電源のオン・オフを行う構成とすることもできる。なお、低圧水銀ランプ21及び紫外線発光ダイオード23を手動でオン・オフさせることもできる。
【0058】
低圧水銀ランプ21を電源オン状態にして光路切替装置140により計測用光路PA1を選択すると、不図示の紫外線透過セル30が紫外線で照明される。紫外線透過セル30の透過光は、バンドパスフィルタ40を介して計測用フォトダイオード51に入射するので、計測用フォトダイオード51の検出信号が、増幅回路基板201で増幅され、増幅回路基板201の出力信号が、A/D変換器171に入力信号として入力される。また、紫外線発光ダイオード23を電源オン状態にして光路切替装置140により補正用光路PA2を選択すると、紫外線透過セル30が紫外線で照明される。紫外線透過セル30の透過光は、補正用フォトダイオード52に直接入射するので、補正用フォトダイオード52の検出信号が、増幅回路基板202で増幅され、増幅回路基板202の出力信号が、A/D変換器172に入力信号として入力される。A/D変換器171、172は、電圧計と同様に機能してデジタル電圧検出値を出力し、A/D変換器171、172で得られたデジタル電圧検出値は、制御装置92に送られる。
【0059】
また、制御装置92は、紫外線発光ダイオード23に対する補正用フォトダイオード52の検出出力により、低圧水銀ランプ21に対する計測用フォトダイオード51の検出出力のベースラインに相当する値を決定する。A/D変換器171、172からそれぞれデータが送られた後、制御装置92は、低圧水銀ランプ21に対する計測用フォトダイオード51の検出出力からベースラインを差し引く換算処理を行い、ディスプレイ94に計算結果を表示させる。
【0060】
以下、試料測定装置110の光学系部分の動作機構及び試料測定方法について説明する。試料測定装置110を用いた試料測定方法は、制御装置92の制御下で実行され、計測用光路PA1上の紫外線透過セル30を通過した光束を計測する主計測工程と、補正用光路PA2上の紫外線透過セル30を通過した光束を計測する比較計測工程と、主計測工程における測定結果を比較計測工程における測定結果によって補正し、数値化した値を表示する出力処理工程とで構成される。
【0061】
主計測工程において、図9(A)に示すように、低圧水銀ランプ21から射出された光束は、バンドパスフィルタ40によって特定の紫外線域に調整される。遮光板42は、制御装置92の制御信号に基づいて遮光板切替装置45により退避位置に移動され、計測用光路PA1が開放される。この際、補正用光路PA2は遮光位置にある遮光板41により遮光されている。計測用光路PA1の開放により、低圧水銀ランプ21から射出された光束は紫外線透過セル30を通過し、計測用フォトダイオード51に入射する。計測用フォトダイオード51に入射した光束は図10の増幅回路基板201により増幅され、出力電圧が発生する。この電圧値はデジタル電圧検出値として制御装置92に送られる。
【0062】
次に、比較計測工程において、図9(B)に示すように、遮光板41は、制御装置92の制御信号に基づいて遮光板切替装置45により退避位置に移動され、補正用光路PA2が開放されている。この際、計測用光路PA1は、遮光位置にある遮光板42により遮光されている。補正用光路PA2の開放により、紫外線発光ダイオード23から射出された光束は紫外線透過セル30を通過し、補正用フォトダイオード52に入射する。補正用フォトダイオード52に入射した光束は図10の増幅回路基板202により増幅され、出力電圧が発生する。この電圧値はデジタル電圧検出値として制御装置92に送られる。
【0063】
次に、出力処理工程において、制御装置92に送られた主計測工程におけるデジタル電圧検出値は、比較計測工程におけるデジタル電圧検出値により補正処理され、換算処理後の値が試料の濃度に相当する値としてディスプレイ94に表示される。具体的には、次式を用いて主計測工程及び比較計測工程におけるデジタル電圧検出値が換算処理される。なお、a、b、cの値は測定する試料により変化する。
Y=aX1+bX2+c
X1:バンドパスフィルタを通過した低圧水銀ランプによる試料の透過光量(主計測工程におけるデジタル電圧検出値)
X2:紫外線発光ダイオードによる試料の透過光量(比較計測工程におけるデジタル電圧検出値)
Y:X1、X2から予測される分光光度計吸光度(275〜350nm)(補正後の値)
【0064】
以上説明した試料測定装置110では、制御装置92により計測用フォトダイオード51で検出した試料の透過光量を補正用フォトダイオード52で検出した試料の透過光量により補正する処理を行い、数値化した値をディスプレイ94に表示することができる。そのため、紫外線透過セル30中の試料が不純物質の影響等で紫外域の測定波長と異なる位置に吸光性等を有する場合であっても、精度のよい試料濃度を簡単に決定することができる。また、試料に応じて補正がされるので、より精度のよい試料濃度を決定することができる。試料測定装置110において、光路切替装置140を用いて計測に用いない光路を遮光することによって、迷光を防止することができる。さらに、各光路PA1、PA2に入射する光束を独立させることにより、光束を安定させつつ試料の紫外線透過率を精度よく計測することができる。なお、補正後の値Yについては、分光光度計の吸光度にする必要はなく、実際の濃度に直接換算した結果を表示することができる。
【0065】
以下、図9で説明した試料測定装置110による具体的な測定例について説明する。
【実施例4】
【0066】
計測値の補正方法として、処理液の着色、濁りによる測定値への影響に対してベースライン上昇分を一定値としてこれを差し引くことで補正することが考えられる。例えば、標準試料に比べてベースライン上昇が観察された場合、分光光度計による高精度の確認試験に基づき、便宜上350nmにおける上昇分を267nmでの吸光度から差し引くことで対応できる。
【0067】
しかし、試料によっては測定サンプル間においてベースラインの上昇分に差異があるため、これを一定の定数として計測結果を差し引くわけにはいかない。
【0068】
そこで、本実施例では、ベースラインが変動することを前提として計測結果を補正処理する第2実施形態の試料測定装置110を用い、木材処理後の防カビ材希釈液の濃度測定を行った。
【0069】
下記表4は、分光光度計にて275nmの吸光度から350nmのベースライン上昇分を差し引いたデータ(分光光度計実測値)に、バンドパスフィルタを透過させた低圧水銀ランプ21における試料の透過光量を対比させたものである。この場合、その相関は図11のグラフに示したように、特に低濃度側で低いものであった。低圧水銀ランプ21の測定だけではベースラインの変化に対応できず、測定後の信憑性が低くなる場合があることが分かる。
【表4】
【0070】
下記表5は、試料測定装置110を用いて、紫外線発光ダイオード23における試料の透過光量を測定し、分光光度計350nmでのベースライン上昇分と比較したものである。この場合、その相関は図12のグラフに示したように、高いものであった。紫外線発光ダイオード23によってベースラインの変化を検出できることが分かる。
【表5】
【0071】
下記表6は、表4の低圧水銀ランプ21における試料の透過光量を表5の紫外線発光ダイオード23における試料の透過光量により補正した予測値と、分光光度計の実測値とを比較したものである。この場合、その相関は図13のグラフに示したように、高いものであった。
【表6】
【0072】
以上のことから、低圧水銀ランプ21における試料の透過光量を紫外線発光ダイオード23における試料の透過光量により補正することにより、分光光度計による解析結果に近い測定値を得ることができることが分かり、簡易測定器でも比較的高精度の測定結果を得ることができた。具体的に、制御装置92で行われる換算処理式は、次式となる。
Y=−0.003887X1+0.1677X2+2.710
【0073】
以上の第2実施形態では自動測定を可能にするシステムについて説明したが、手動での測定も可能である。例えば、主計測工程において、遮光板42を手で取り除いて計測用光路PA1を開放し、計測用フォトダイオード51に入射した光束を図10の増幅回路基板201により増幅させ、出力電圧値を計測する。この際、補正用光路PA2は、遮光板41により遮光されている。次に、比較計測工程において、遮光板41を取り除いて開放し、補正用フォトダイオード52に入射した光束を増幅回路基板202により増幅させ、出力電圧値を計測する。この際、計測用光路PA1は、遮光板42により遮光されている。次に、出力処理工程において、主計測工程における出力電圧値は、計算機や換算テーブルを利用して、比較計測工程における出力電圧値により補正換算処理され、その補正後の値に基づいて試料の濃度に相当する値を決定する。
【0074】
また、第2実施形態では、ディスプレイ94に補正後の値を表示したが、主計測工程及び比較計測工程における計測値をそれぞれ直接表示してもよい。
【0075】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態に係る試料測定装置について説明する。なお、第3実施形態に係る試料測定装置210は、第2実施形態の試料測定装置110を変形したものであり、特に説明しない部分については、第2実施形態と同様であるものとする。
【0076】
図14(A)、14(B)は、第3実施形態に係る試料測定装置210の光学系部分を示す。第3実施形態に係る試料測定装置210において、紫外線透過セル30が移動することにより光路PA1、PA2の切り替えが行われる。紫外線透過セル30は、光路切替装置240により各光路PA1、PA2上に移動可能となっている。光路切替装置240は、紫外線透過セル30を固定するホルダ(不図示)と、ホルダを動かすアクチュエータ(不図示)等から構成される。アクチュエータが、各光路PA1、PA2上の所定位置にホルダを動かすことにより、光路PA1、PA2の切り替えを行う。ここで、紫外線透過セル30には光束が入射しない側面部分に遮光板143が取り付けられている。さらに、計測用光路PA1及び補正用光路PA2は、遮光板143によって光路が仕切られており、紫外線透過セル30が両光路PA1、PA2のいずれか一方上に移動することにより完全に光路PA1、PA2の独立性を保っている。また、低圧水銀ランプ21、紫外線発光ダイオード23、計測用フォトダイオード51、及び補正用フォトダイオード52は、固定されている。
【0077】
なお、図14(C)、14(D)のように、紫外線透過セル30の下部に回転機構を有する光路切替装置241を光路PA1、PA2上に設け、紫外線透過セル30を±90°回転させることにより、光路PA1、PA2の切り替えを行ってもよい。光路切替装置241も光路切替装置240と同様に、紫外線透過セル30を固定するホルダとアクチュエータ等から構成される。
【0078】
以上説明した試料測定装置210では、試料に応じて補正がされるので、より精度のよい試料濃度を決定することができる。試料測定装置210において、光路切替装置240、241を用いて計測に用いない光路を遮光することによって、迷光を防止することができる。さらに、各光路PA1、PA2に入射する光束を独立させることにより、光束を安定させつつ試料の紫外線透過率を精度よく計測することができる。
【0079】
〔第4実施形態〕
以下、第4実施形態に係る試料測定装置について説明する。なお、第4実施形態に係る試料測定装置310は、第2実施形態等の試料測定装置110を変形したものであり、特に説明しない部分については、第2実施形態等と同様であるものとする。
【0080】
図15(A)、15(B)は、第4実施形態に係る試料測定装置310の光学系部分を示す。第4実施形態に係る試料測定装置310において、計測用フォトダイオード51は、補正用フォトダイオードと兼用され、低圧水銀ランプ21及び紫外線発光ダイオード23を一体的に移動することにより光路PA1、PA2の切り替えが行われる。例えば、低圧水銀ランプ21及び紫外線発光ダイオード23の下部に設けた光路切替装置340により各光路PA1、PA2の切り替えを行っている。光路切替装置340は、支持台341と、アクチュエータ(不図示)等から構成される。支持台341には、低圧水銀ランプ21と、バンドパスフィルタ40と、紫外線発光ダイオード23と、遮光板243とが固定されている。遮光板243は、低圧水銀ランプ21と紫外線発光ダイオード23との間に固定されている。アクチュエータにより支持台341を動かし、低圧水銀ランプ21及び紫外線発光ダイオード23がそれぞれ計測用フォトダイオード51に入射する位置に移動させることで光路PA1、PA2の切り替えを行っている。ここで、紫外線透過セル30及び計測用フォトダイオード51は固定されている。
【0081】
なお、図15(C)、15(D)のように、回転機構有する光路切替装置342を光路PA1、PA2上に設け、光路PA1、PA2の切り替えを行ってもよい。光路切替装置342上には、反射ミラー244が固定されており、光路PA1、PA2のうち一方を計測用フォトダイオード51へ導き、他方は遮光するようになっている。この光路切替装置342を±90°回転させることにより、光路PA1、PA2の切り替えを行うことができる。
【0082】
以上説明した試料測定装置310では、計測用フォトダイオード51を補正用フォトダイオード52として用いることにより、1つのフォトダイオードで計測値の補正を行うことができる。そのため、試料測定装置310のコストを安価にすることができる。また、試料に応じて補正がされるので、より精度のよい試料濃度を決定することができる。試料測定装置310において、光路切替装置340、342を用いて計測に用いない光路を遮光することによって、迷光を防止することができる。さらに、各光路PA1、PA2に入射する光束を独立させることにより、光束を安定させつつ試料の紫外線透過率を精度よく計測することができる。
【0083】
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、紫外光光源20として低圧水銀ランプ21及び紫外線発光ダイオード23を用いたが、他の発光管タイプの紫外光光源を用いることができ、或いは近紫外等発光する発光ダイオード等の広義の紫外光ランプを1つ以上準備して同時又は個別に切り替えながら点灯させて、目的とする紫外線を発光させることができる。
【0084】
また、紫外線透過セル30は、薬液CSを保持することができ紫外線を効率よく透過させるものであれば、石英ガラス以外の他の材料で形成することができる。特に紫外線透過セル30を樹脂セルに置き換えた場合、樹脂セルを使い捨て型のものにすることができる。
【0085】
また、バンドパスフィルタ40は、誘電体多層膜に限らず、多様なフィルタを使用することができる。なお、バンドパスフィルタ40は、紫外線透過セル30の後段に限らず、紫外線透過セル30の前段に配置することができ、多少特性の異なる2つのバンドパスフィルタ40を紫外線透過セル30の前後に配置することもできる。
【0086】
また、光検出装置50は、フォトダイオード51、52に限らず、様々な半導体光検出素子すなわち固体素子によって形成することができ、これによっても小型化が達成される。
【0087】
また、増幅装置60や出力表示装置70や出力変換装置170も、実施形態で説明したものは一例であり、測定対象に応じて電流や電圧のいずれを増幅し、電流値や電圧値のいずれを表示するかを使い分けることができる。なお、測定対象となり得る物質は紫外光を吸収する性質を有するものであれば何でも良く、他の分野への応用も可能である。
【0088】
また、増幅回路基板201において、電圧発生装置91を用いたが、計測用光路PA1上に試料ごとに対応したNDフィルタを設けることにより電圧増幅を調整してもよい。
【0089】
また、図10において、各フォトダイオード51、52に対して増幅装置160に増幅回路基板201、202を設けたが、図16の増幅装置260の増幅回路基板203ように増幅回路基板を1つにしてもよい。
【0090】
また、本実施形態において、光路切替装置140等により計測用光路PA1及び補正用光路PA2の切り替えを行ったが、手動により光路の切り替えを行ってもよい。
【0091】
また、本実施形態において、試料測定装置10、110に、紫外光光源20、120等を駆動させる電源を内蔵したが、外部から電源を供給してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】第1実施形態に係る試料測定装置を概念的に説明するブロック図である。
【図2】図1の試料測定装置を外観を説明する斜視図である。
【図3】(A)、(B)は、図2の試料測定装置の内部を説明する側面図及び平面図である。
【図4】試料測定装置の回路構成を説明するブロック図である。
【図5】増幅回路基板の具体的回路構成の一例を説明する回路図である。
【図6】図1に示す試料測定装置を用いた実施例1の測定結果を説明するグラフである。
【図7】図1に示す試料測定装置を用いた実施例2の測定結果を説明するグラフである。
【図8】図1に示す試料測定装置を用いた実施例3の測定結果を説明するグラフである。
【図9】第2実施形態に係る試料測定装置の光学系部分を説明するブロック図である。
【図10】図9の試料測定装置の回路構成等を説明する図である。
【図11】図9に示す試料測定装置を用いた実施例4の測定結果を説明するグラフである。
【図12】図9に示す試料測定装置を用いた実施例4の測定結果を説明するグラフである。
【図13】図9に示す試料測定装置を用いた実施例4の測定結果を説明するグラフである。
【図14】第3実施形態に係る試料測定装置の光学系部分を説明するブロック図である。
【図15】第4実施形態に係る試料測定装置の光学系部分を説明するブロック図である。
【図16】図10の試料測定装置の回路構成等の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0093】
10、110、210、310…試料測定装置、 11…外装ケース、 12…支持板、 20、120…紫外光光源、 21…低圧水銀ランプ、 22、62、72…電源装置、 23…紫外線発光ダイオード、 30…紫外線透過セル、 40…バンドパスフィルタ、 41、42、143、243…遮光板、 50、150…光検出装置、 51、52…フォトダイオード、 60、160、260…増幅装置、 61…増幅回路本体、 70…出力表示装置、 71…電気計測器本体、 73、94…ディスプレイ、 81…スナップスイッチ、 85、201、202、203…増幅回路基板、 92…制御装置、 140、240、241、340、342…光路切替装置、 170…出力変換装置、 171、172、173…A/D変換器、 BA1、BA2、BA3…電池、 PA1…計測用光路、 PA2…補正用光路、 SC…薬液
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材用防カビ剤等の薬剤の成分濃度を光学的に計測するための試料測定装置、及び試料測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬液の濃度を測定するために使用される透過光測定用光学装置として、ハロゲンランプからの光束を単一のフローセルに入射させ透過させるとともに、透過後の紫外光をバンドパスフィルタを介して紫外用の検出器に入射させ、透過後の赤外光をバンドパスフィルタを介して赤外用の検出器に入射させるものが存在する(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−12726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記透過光測定用光学装置では、2種類の光線を利用して薬液の濃度を測定するので、装置が全体的に大型化しやすく計測後の濃度算出処理も複雑なものになりやすい。また、2種類の光線を利用したとしても、各光線用にバンドパスフィルタを2枚使用すると装置が高価になる。
【0004】
そこで、本発明は、簡素かつ小型で運搬に適するとともに、計測後の濃度算出処理も簡易な精度のよい試料測定装置を安価に提供することを目的とする。
【0005】
また、本発明は、上記の試料測定装置を用いた試料測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る試料測定装置は、(a)紫外光を発生する紫外光ランプと、(b)試料を収容した状態で紫外光ランプからの光束を通過させる紫外線透過セルと、(c)紫外線透過セルを通過した光束を検出する計測用半導体光検出素子と、(d)計測用半導体光検出素子の検出出力に対応する測定結果を数値化した値を表示する出力表示装置と、(e)紫外光ランプと、計測用半導体光検出素子と、出力表示装置とを動作させるための電源とを備える。ここで、「数値化した値を表示すること」には、数値をデジタル的又はアナログ的に表示することを意味し、図形サイズを増減させるといった表示を含む。
【0007】
上記試料測定装置では、計測用半導体光検出素子が紫外線透過セルを通過した光束を検出し、出力表示装置が、計測用半導体光検出素子の検出出力を数値化した値を表示するので、紫外線透過セル中の試料が紫外域に吸光性等を有する場合、試料濃度すなわち試料中の対象物濃度を紫外光透過率に関連させて簡単に決定することができる。
【0008】
本発明の具体的な態様では、上記試料測定装置において、紫外光ランプと計測用半導体光検出素子との間の計測用光路上であって、紫外線透過セルの後段及び/又前段に配置され、紫外域に透過帯を有するバンドパスフィルタをさらに備える。この場合、紫外線透過セル中の試料が吸光性を有する波長に絞って紫外光透過率を計測することができ、試料濃度の計測精度を高めることができる。
【0009】
本発明の別の態様では、紫外光ランプは、低圧水銀ランプであり、出力表示装置は、低圧水銀ランプの発光特性とバンドパスフィルタの透過特性とを参酌して決定した増幅特性を有する増幅回路と、当該増幅回路の出力電圧又は出力電流を計測する電気計測器とを有する。この場合、低圧水銀ランプは携帯用に小型化することができ、増幅回路や電気計測器はその動作状態の設定によって高精度で再現性ある濃度計測を可能にする。
【0010】
本発明のさらに別の態様では、紫外光ランプと、紫外線透過セルと、計測用半導体光検出素子とを相互に固定して収納するとともに、出力表示装置の表示器部分を外壁に設けた携帯型の遮光ケースをさらに備える。この場合、試料測定装置を携帯型のユニットとして簡易に目的地に運搬することができ、屋外等の様々な場所に存在する試料中の対象物濃度を迅速に測定することができる。
【0011】
本発明のさらに別の態様では、計測用の波長とは異なる所定の紫外領域波長で発光する紫外線発光ダイオードと、紫外線発光ダイオードから射出され紫外線透過セルを通過した光束を検出する補正用半導体光検出素子とをさらに備え、出力表示装置は、補正用半導体光検出素子の検出出力と計測用半導体光検出素子の検出出力とに基づいて得た結果を測定結果として数値化した値を表示する。この場合、出力表示装置が、各半導体光検出素子の検出出力だけでなく、例えば制御装置での演算によって補正された計測用半導体光検出素子の検出出力を数値化した値を表示することができるので、紫外線透過セル中の試料が不純物質の影響等で紫外域の測定波長と異なる位置に吸光性等を有する場合であっても、精度のよい試料濃度を簡単に決定することができる。また、試料に応じた補正が可能になるので、より精度のよい試料濃度を決定することができる。
【0012】
本発明のさらに別の態様では、計測用光路、及び紫外線発光ダイオードと補正用半導体光検出素子との間の補正用光路は、紫外線透過セルを通過する光路であって、紫外光ランプと紫外線透過セルとの間、及び紫外線発光ダイオードと紫外線透過セルとの間の遮光位置に配置可能な遮光板をさらに備え、計測用光路及び補正用光路の切り替えは、遮光板の配置によって行われる。この場合、計測に用いない光路を遮光することによって、迷光を防止することができ、各光路に入射する光束を安定させつつ試料の紫外線透過率を精度よく計測することができる。
【0013】
本発明のさらに別の態様では、計測用光路、及び紫外線発光ダイオードと補正用半導体光検出素子との間の補正用光路は、紫外線透過セルを通過する光路であって、計測用光路及び補正用光路の切り替えを行う光路切替装置をさらに備える。この場合、光路切替装置を利用して紫外線透過セルに入射させる光束に応じて光路を切り替え、計測用光路及び補正用光路のそれぞれの光路について計測を行うことにより、各光路に入射する光束を安定させつつ試料の紫外線透過率を精度よく計測することができる。
【0014】
本発明のさらに別の態様では、計測用半導体光検出素子は、補正用半導体光検出素子として用いられ、計測用光路上及び補正用光路上においてそれぞれ紫外光ランプからの透過光量及び紫外線発光ダイオードからの透過光量を測定する。この場合、計測用半導体光検出素子を補正用半導体光検出素子と兼用することにより、1つの半導体光検出素子の検出出力を利用して試料の紫外線透過率の補正された測定値を得ることができる。
【0015】
本発明のさらに別の態様では、計測用光路及び補正用光路に入射する光束は互いに独立し、紫外光ランプの透過光量は計測用光路上で測定され、紫外線発光ダイオードの透過光量は補正用光路上で測定される。この場合、例えば遮光された各光路上で独立して透過光量の測定を行うことにより、各光路に入射する光束を安定させつつ試料の紫外線透過率を精度よく計測することができる。
【0016】
本発明のさらに別の態様では、計測用光路及び補正用光路のいずれか一方に光束を入射させるタイミングに応じて、計測用半導体光検出素子及び補正用半導体光検出素子のいずれか一方に光束を検出させるタイミングを制御する制御装置をさらに備える。この場合、各光路に光束を入射させるタイミングに応じて光束を検出することにより、効率よく光束を検出することができ、補正の演算等を含む計測の自動化が可能になる。
【0017】
本発明のさらに別の態様では、制御装置は、紫外線発光ダイオードに対する補正用半導体光検出素子の検出出力により、紫外光ランプに対する計測用半導体光検出素子の検出出力のベースラインに相当する値を測定する。この場合、補正用半導体光検出素子の検出出力により、紫外線吸光性の異なる試料に応じた計測用半導体光検出素子の検出出力のベースラインの変化を補正することができる。ここで、試料の媒質、不純物等は、測定する試料によって多少異なるため、試料ごとに紫外線吸光性が多少異なるものとなり、通常バックグラウンドの変化として現われる。
【0018】
本発明のさらに別の態様では、制御装置は、紫外光ランプに対する計測用半導体光検出素子の検出出力からベースラインを差し引く換算処理を行い、出力表示装置に計算結果を表示させる。この場合、計測用半導体光検出素子の検出出力を自動的に補正することにより、試料濃度を精度よく、簡単に決定することができる。
【0019】
本発明のさらに別の態様では、紫外線透過セルは、木材用防カビ剤溶液、洗濯用洗剤溶液、及びガソリンのいずれかの試料を収納し、出力表示装置は、紫外線透過セル中の試料の濃度を反映した数値を示す。この場合、希釈液中の木材用防カビ剤の濃度、洗濯液中の洗濯用洗剤の濃度、又はガソリン中の不純物濃度を簡易かつ正確に決定することができる。
【0020】
上記課題を解決するため、本発明に係る試料測定方法は、(a)紫外線透過セルに収容された試料の濃度を測定する試料測定方法であって、(b)紫外光ランプからの光束を、紫外光ランプと計測用半導体光検出素子との間の計測用光路上にある紫外線透過セルに通過させ、紫外線透過セルを通過した光束を検出する主計測工程と、(c)主計測用光路を、紫外線発光ダイオードと補正用半導体光検出素子との間の補正用光路に切り替え、計測用の波長と異なる波長で発生する紫外線発光ダイオードからの光束を、補正用光路上にある紫外線透過セルに通過させ、紫外線透過セルを通過した光束を検出する比較計測工程と、(d)主計測工程における測定結果を比較計測工程における測定結果によって補正し、数値化した値を表示する出力処理工程とを行う。
【0021】
上記試料測定方法では、計測用半導体光検出素子及び補正用半導体光検出素子によって、各光路中の紫外線透過セルを通過した光源の異なる光束を検出し、主計測工程における測定結果を比較計測工程における測定結果により補正し、数値化した値を表示するので、紫外線透過セル中の試料が紫外の特定波長域に吸光性等を有する場合、試料濃度すなわち試料中の対象物濃度を紫外光透過率に関連させて精度よく簡単に決定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る試料測定装置の構造を概念的に説明するブロック図である。
【0023】
この試料測定装置10は、試料である薬液CS中の対象成分の濃度を測定するためのものであり、紫外光を含む照明光を発生する紫外光光源20と、紫外線透過セルとして薬液を収容する紫外線透過セル30と、紫外線透過セル30の透過光のうち特定波長成分のみを通過させるバンドパスフィルタ40と、バンドパスフィルタ40を通過した光束を検出する光検出装置50と、光検出装置50の電流出力等を適宜増幅する増幅装置60と、増幅装置60の出力を視覚的に表示する出力表示装置70とを備える。ここで、試料測定装置10には、紫外光光源20と、光検出装置50と、増幅装置60と、出力表示装置70とを駆動させる電池等の電源すなわち電源装置が内蔵されている。
【0024】
紫外光光源20は、例えば紫外光ランプである小型の低圧水銀ランプ21で構成され、低圧水銀ランプ21は、オン・オフ可能な電源装置22に駆動されて必要な輝度で点灯される。紫外光光源20は、例えば150〜450nmの範囲で可視光や紫外光を発生するが、本実施形態では、200〜350nmの紫外光が濃度計測に利用される。なお、紫外光は、薬液CS中の対象成分に吸収される場合が多く、対象成分が低濃度であっても定量が可能であり、比較的高精度の濃度測定を可能にする。
【0025】
紫外線透過セル30は、例えば石英ガラスで形成された四角柱の筒状の容器であり、紫外光光源20と光検出装置50との間の計測用光路PA1上に配置されている。紫外線透過セル30は、紫外光全体に対して良好な透過性を有する。紫外線透過セル30内の空間の計測用光路PA1方向に関する厚みは、薬液CSすなわち計測対象の種類や濃度等によって適宜変更することができるが、例えば具体的な実施例では、5〜30mm程度、さらに具体的には、14mmとした。
【0026】
バンドパスフィルタ40は、目標とする紫外光のみを透過させる誘電体多層膜からなり、紫外線透過セル30と光検出装置50との間の計測用光路PA1上に配置されている。バンドパスフィルタ40の透過波長は、計測対象の種類や濃度等によって適宜変更することができるが、例えば木材用防カビ剤処理液の濃度を計測する場合、269nmのピークをターゲットとした。バンドパスフィルタ40は、紫外線透過セル30に収容する薬液CSの種類に応じて透過特性の異なるものに変更することができる。
【0027】
光検出装置50は、例えばGaAlP系の半導体素子で構成され、バンドパスフィルタ40を通過した計測用光路PA1上に配置される計測用フォトダイオード51であり、紫外域において高い感度を有し、入射紫外光量が多いほど出力電流が増加する。なお、計測用フォトダイオード51の感度は、例えば波長150〜400nmの範囲に亘っている。
【0028】
増幅装置60は、オペアンプ等の回路素子によって構成され増幅回路本体61と、増幅回路本体61を駆動する電源装置62とを備える。増幅回路本体61は、光検出装置50の検出出力を適当なゲインで増幅し、計測用フォトダイオード51に入射する検出光の強度値に応じて増加する出力電圧を発生する。
【0029】
出力表示装置70は、電圧計回路やLCD等の表示器からなる電気計測器本体71と、電気計測器本体71を駆動する電源装置72とを備える。出力表示装置70は、増幅回路本体61からの増幅出力の電圧値をユーザが視覚的に認識できる数値等として表示器(後述)上に表示する。
【0030】
図2は、図1に示す試料測定装置10の外観図であり、図3(A)は、図2に示す試料測定装置10の側面図であり、図3(B)は、試料測定装置10の平面図である。
【0031】
図2に示すように、試料測定装置10は、遮光性の材料で形成され箱状の外観を有する外装ケース11中に収納されている。外装ケース11の寸法は、例えば約10cm×10cm×30cmである。外装ケース11の周囲外壁のうち一側面には、図1の出力表示装置70の表示器部分であるディスプレイ73が固定されており、ユーザが測定結果を確認できるようになっている。ディスプレイ73の隣には、主電源スイッチであるスナップスイッチ81が取り付けられており、ユーザが試料測定装置10の動作を開始したり停止したりすることができるようになっている。なお、外装ケース11は、携帯型の遮光ケースであり、外光(紫外線)が入射しない内部空間中に、紫外線透過セル30、バンドパスフィルタ40、光検出装置50、増幅装置60等を収納している。ここで、紫外線透過セル30は、不図示のホルダに交換可能に固定されており、着脱可能な上蓋11fを分離することにより、紫外線透過セル30の交換が可能になっている。
【0032】
図3(A) 及び図3(B)に示すように、外装ケース11中には、中央を仕切るように延びる支持板12が固定されており、支持板12上には、発光管21aを内蔵する低圧水銀ランプ21が固定されている。この低圧水銀ランプ21には、支持板12の裏面に固定された電池BA1からの電力が供給される。支持板12上には、紫外線透過セル30用のホルダ83も固定されている。また、支持板12上には、ホルダ83を挟んで反対側に、台座を介してフォトダイオード51が固定されている。計測用フォトダイオード51の入射面側には、バンドパスフィルタ40が貼り付けられている。さらに、支持板12上には、増幅装置60の増幅回路本体61に相当する増幅回路基板85が固定されている。この増幅回路基板85には、支持板12の裏面に固定された電池BA2からの電力が供給される。
【0033】
図4は、図1等に示す試料測定装置10の回路構成を説明する図である。低圧水銀ランプ21の電源をオン・オフするためのスイッチ・リード線と、電気計測器本体71に電力を供給するための電池BA2と、増幅回路基板85に電力を供給するための電池BA2と、増幅回路基板85の出力信号端子とは、第1のコネクタCO1に接続されている。また、スナップスイッチ81の各端子と、電気計測器本体71の入力端子や電源端子とは、第2のコネクタCO2に接続されている。第1のコネクタCO1と第2のコネクタCO2との間は、ケーブルCAが介在しており、両コネクタCO1、CO2の対応する番号同士が電気的に接続される。これにより、スナップスイッチ81のオンに伴って、低圧水銀ランプ21と、増幅回路基板85と、電気計測器本体71とに電源電圧が供給されて電源オン状態となる。低圧水銀ランプ21が電源オン状態になると、不図示の紫外線透過セル30が紫外線で照明される。紫外線透過セル30の透過光は、不図示のバンドパスフィルタ40を介して計測用フォトダイオード51に入射するので、計測用フォトダイオード51の検出信号が、増幅回路基板85で増幅され、増幅回路基板85の出力信号が、電気計測器本体71に入力信号として入力される。電気計測器本体71は、電圧計であり、電圧検出値をディスプレイ73に表示する。
【0034】
図5は、増幅回路基板85の具体的回路構成の一例を説明する図である。増幅回路基板85は、オペアンプLM358、コンデンサ、固定抵抗、可変抵抗等で形成され、計測用フォトダイオード51の検出信号を適当なゲインで増幅して電気計測器本体71に出力する。
【0035】
以上説明した試料測定装置10では、試料の透過光量を計測用フォトダイオード51が検出し、検出出力を数値化した値を出力表示装置70のディスプレイ73に表示するので、紫外線透過セル30中の試料が紫外域に吸光性等を有する場合、試料濃度すなわち試料中の対象物質濃度を紫外光透過率に関連させて簡単に決定することができる。また、紫外線透過セル30中の試料が吸光性を有する波長に絞って紫外線透過率を計測し、増幅回路や電気計測器の動作によって高精度で再現性ある濃度計測をすることができる。さらに、試料測定装置10は、電源を内蔵し、低圧水銀ランプ21等を小型化することにより携帯型のユニットとして簡易に目的地に運搬することができ、屋外等の様々な場所に存在する試料中の対象物濃度を迅速に測定することができる。
【0036】
以下、図1〜図5で説明した試料測定装置10による具体的な測定例について説明する。
【実施例1】
【0037】
本実施例では、木材用防カビ剤処理液の濃度測定を行った。日本曹達社製木材用防カビ剤「ミルカット180(商標)」を水で希釈化し、濃度0.25〜2%の希釈液を調整した。この希釈剤1mLをさらに50mLのメタノールで溶解し、塩酸を加えて酸性とした試料を得た。この試料を紫外線透過セル30に収納し、本実施形態の試料測定装置10によって計測を行った。以下の表1は、希釈液である試料中の処理液濃度と、ディスプレイ73の表示値である測定値との関係を示す。
【表1】
【0038】
以上の表1からも明らかなように、希釈液濃度と測定値との間に良好な相関が見られ、繰り返し測定の結果についても十分な再現性が見られた。
【0039】
図6は、表1の結果をグラフ化したものであり、横軸が電圧出力の測定値を、縦軸が防カビ剤濃度を表す。グラフから明らかなように、グラフ中の曲線の内挿や外挿によってディスプレイ73の表示値から紫外線透過セル30中の木材用防カビ剤の濃度を、測定光のスキャン等を行うことなく迅速に決定できることが分かる。なお、従来型の分光分析装置等では、起動時の調整が複雑で動作の安定までに時間がかかり、本実施例のような簡便な操作は不可能である。
【実施例2】
【0040】
本実施例では、洗濯用洗剤の濃度測定を行った。花王株式会社製洗濯用洗剤「アタック(商標)」を水で希釈化し、濃度50〜1000mg/Lの希釈液を調整した。この希釈液をひだ折り濾紙にて濾過し、不溶物を除去した試料を得た。この試料を紫外線透過セル30に収納し、本実施形態の試料測定装置10によって計測を行った。以下の表2は、希釈液である試料中の洗濯用洗剤濃度と、ディスプレイ73の表示値である測定値との関係を示す。
【表2】
【0041】
以上の表2からも明らかなように、洗濯用洗剤濃度と測定値との間に良好な相関が見られ、繰り返し測定の結果についても十分な再現性が見られた。
【0042】
図7は、表2の結果をグラフ化したものであり、横軸が電圧出力の測定値を、縦軸が洗剤濃度を表す。グラフから明らかなように、グラフ中の曲線の内挿や外挿によってディスプレイ73の表示値から紫外線透過セル30中の洗濯用洗剤の濃度を、測定光のスキャン等を行うことなく迅速に決定できることが分かる。
【実施例3】
【0043】
本実施例では、ガソリンのBTX濃度測定を行った。ガソリンにトルエンを加え、濃度50〜1000mg/Lの希釈液を調整して試料を得た。この試料を紫外線透過セル30に収納し、本実施形態の試料測定装置10によって計測を行った。以下の表3は、希釈液である試料中のトルエン濃度と、ディスプレイ73の表示値である測定値との関係を示す。
【表3】
【0044】
以上の表3からも明らかなように、トルエン濃度と測定値との間に良好な相関が見られ、繰り返し測定の結果についても十分な再現性が見られた。
【0045】
図8は、表3の結果をグラフ化したものであり、横軸が電圧出力の測定値を、縦軸がトルエン濃度を表す。グラフから明らかなように、グラフ中の曲線の内挿や外挿によってディスプレイ73の表示値から紫外線透過セル30中のトルエンの濃度ひいてはBTXの濃度を、測定光のスキャン等を行うことなく迅速に決定できることが分かる。
【0046】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係る試料測定装置について説明する。なお、第2実施形態に係る試料測定装置110は、第1実施形態の試料測定装置10を変形したものであり、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様であるものとする。
【0047】
図9は、第2実施形態に係る試料測定装置110の光学系部分を説明する図である。図10は、試料測定装置110の回路構成等を説明する図である。この試料測定装置110は、光学系として、紫外光光源120と、紫外線透過セル30と、光検出装置150と、バンドパスフィルタ40と、光路切替装置140とを備え、回路系として、増幅装置160と、出力変換装置170と、電圧発生装置91と、制御装置92と、入力装置93と、ディスプレイ94とを備える。ここで、出力変換装置170とディスプレイ94とは、測定結果を表示するための出力表示装置として機能する。また、試料測定装置110には、紫外光光源120、光検出装置150、光路切替装置140と、増幅装置160、出力変換装置170、電圧発生装置91と、制御装置92と、入力装置93と、ディスプレイ94とを駆動させる電源すなわち電源装置が内蔵されている。
【0048】
紫外光光源120は、例えば小型の低圧水銀ランプ21と、紫外線発光ダイオード23とで構成される。低圧水銀ランプ21は、制御装置92を介してオン・オフ可能な電源装置22に駆動されて必要な輝度で点灯される。低圧水銀ランプ21は、例えば150〜450nmの範囲で可視光や紫外光を発生するが、本実施形態では、200〜350nmの紫外光が濃度計測に利用される。一方、紫外線発光ダイオード23は、同様にオン・オフ可能な電源装置22に駆動されて必要な輝度で点灯される。紫外線発光ダイオード23は、例えば400nmに極大ピークをもつが、本実施形態では、350nm付近の紫外線(補正用参照光)が補正用計測に利用される。
【0049】
光検出装置150は、低圧水銀ランプ21からの光束を測定光として受光する計測用半導体光検出素子である計測用フォトダイオード51と、紫外線発光ダイオード23からの光束をバックグラウンド光として受光する補正用半導体光検出素子である補正用フォトダイオード52とで構成される。なお、両フォトダイオード51、52の感度は、例えば150〜400nmの範囲に亘っている。
【0050】
バンドパスフィルタ40は、低圧水銀ランプ21と計測用フォトダイオード51との間の計測用光路PA1上に配置されている。なお、紫外線発光ダイオード23は、比較的狭い特定波長の光束を射出するので、紫外線発光ダイオード23と補正用フォトダイオード52との間の補正用光路PA2上には、バンドパスフィルタを設けなくてよい。
【0051】
光路切替装置140は、各フォトダイオード51、52に入射する各光源21、23からの光束をそれぞれ遮光する遮光板41、42と、遮光板41、42をそれぞれ保持する遮光板ホルダ43、44と、光路PA1又はPA2を開放するために遮光板41、42をスライドさせて遮光板41、42の位置を変更する遮光板切替装置45とを備える。なお、遮光板41、42は、光路PA1、PA2を遮光する際に、低圧水銀ランプ21と紫外線透過セル30との間、及び紫外線発光ダイオード23と紫外線透過セル30との間の遮光位置にそれぞれ配置可能である。また、遮光板41、42は、光路PA1、PA2から退避した退避位置にも移動可能になっている。遮光板切替装置45は、スライド機構及びアクチュエータ等を含み、制御装置92により動作タイミングを含めて駆動制御される。
【0052】
増幅装置160は、計測用フォトダイオード51の出力信号を増幅する増幅回路基板201と、補正用フォトダイオード52の出力信号を増幅する増幅回路基板202とを備える。増幅回路基板201、202は、光検出装置150の検出出力を適当なゲインで増幅し、計測用フォトダイオード51及び補正用フォトダイオード52に入射する検出光の強度値に応じて増加する出力電圧を発生する。
【0053】
出力変換装置170は、一対のA/D変換器171、172を備える。増幅回路基板201、202は、計測用フォトダイオード51及び補正用フォトダイオード52の検出信号を適当なゲインで増幅してそれぞれA/D変換器171、172に出力する。A/D変換器171、172は、検出信号をデジタルデータに変換する。ディスプレイ94は、A/D変換器171、172とともに出力表示装置を構成する。ディスプレイ94は、A/D変換器171、172による変換出力から得た測定結果を表示するためのもので、増幅装置160からの増幅出力の電圧値をユーザが視覚的に認識できる数値等として表示する。
【0054】
電圧発生装置91は、増幅回路基板201に接続されており、増幅回路基板201のオペアンプA1に供給する電圧を調整する。電圧発生装置91により発生させる電圧は、測定する試料の種類等により適宜調整される。
【0055】
入力装置93は、入力装置93に設けた不図示のボタン等の操作を受けて試料測定の開始を制御装置92に指示するコマンドを出力する。なお、入力装置93の操作により、制御装置92に測定試料のパラメータ等を設定し、試料に応じて電圧発生装置91の出力調整、演算補正調整等を行うこともできる。
【0056】
制御装置92は、遮光板切替装置45を介して計測用光路PA1及び補正用光路PA2のいずれか一方に光束を入射させるタイミングに応じて、計測用フォトダイオード51及び補正用フォトダイオード52のいずれか一方に光束を検出させるタイミングを制御する。これにより、適切なタイミングでデータを取り込むことができ、効率よく光束を検出することができる。
【0057】
また、制御装置92は、必要ならば、入力装置93からの指示に従い、電源装置22を介して低圧水銀ランプ21及び紫外線発光ダイオード23の電源のオン・オフを行う構成とすることもできる。なお、低圧水銀ランプ21及び紫外線発光ダイオード23を手動でオン・オフさせることもできる。
【0058】
低圧水銀ランプ21を電源オン状態にして光路切替装置140により計測用光路PA1を選択すると、不図示の紫外線透過セル30が紫外線で照明される。紫外線透過セル30の透過光は、バンドパスフィルタ40を介して計測用フォトダイオード51に入射するので、計測用フォトダイオード51の検出信号が、増幅回路基板201で増幅され、増幅回路基板201の出力信号が、A/D変換器171に入力信号として入力される。また、紫外線発光ダイオード23を電源オン状態にして光路切替装置140により補正用光路PA2を選択すると、紫外線透過セル30が紫外線で照明される。紫外線透過セル30の透過光は、補正用フォトダイオード52に直接入射するので、補正用フォトダイオード52の検出信号が、増幅回路基板202で増幅され、増幅回路基板202の出力信号が、A/D変換器172に入力信号として入力される。A/D変換器171、172は、電圧計と同様に機能してデジタル電圧検出値を出力し、A/D変換器171、172で得られたデジタル電圧検出値は、制御装置92に送られる。
【0059】
また、制御装置92は、紫外線発光ダイオード23に対する補正用フォトダイオード52の検出出力により、低圧水銀ランプ21に対する計測用フォトダイオード51の検出出力のベースラインに相当する値を決定する。A/D変換器171、172からそれぞれデータが送られた後、制御装置92は、低圧水銀ランプ21に対する計測用フォトダイオード51の検出出力からベースラインを差し引く換算処理を行い、ディスプレイ94に計算結果を表示させる。
【0060】
以下、試料測定装置110の光学系部分の動作機構及び試料測定方法について説明する。試料測定装置110を用いた試料測定方法は、制御装置92の制御下で実行され、計測用光路PA1上の紫外線透過セル30を通過した光束を計測する主計測工程と、補正用光路PA2上の紫外線透過セル30を通過した光束を計測する比較計測工程と、主計測工程における測定結果を比較計測工程における測定結果によって補正し、数値化した値を表示する出力処理工程とで構成される。
【0061】
主計測工程において、図9(A)に示すように、低圧水銀ランプ21から射出された光束は、バンドパスフィルタ40によって特定の紫外線域に調整される。遮光板42は、制御装置92の制御信号に基づいて遮光板切替装置45により退避位置に移動され、計測用光路PA1が開放される。この際、補正用光路PA2は遮光位置にある遮光板41により遮光されている。計測用光路PA1の開放により、低圧水銀ランプ21から射出された光束は紫外線透過セル30を通過し、計測用フォトダイオード51に入射する。計測用フォトダイオード51に入射した光束は図10の増幅回路基板201により増幅され、出力電圧が発生する。この電圧値はデジタル電圧検出値として制御装置92に送られる。
【0062】
次に、比較計測工程において、図9(B)に示すように、遮光板41は、制御装置92の制御信号に基づいて遮光板切替装置45により退避位置に移動され、補正用光路PA2が開放されている。この際、計測用光路PA1は、遮光位置にある遮光板42により遮光されている。補正用光路PA2の開放により、紫外線発光ダイオード23から射出された光束は紫外線透過セル30を通過し、補正用フォトダイオード52に入射する。補正用フォトダイオード52に入射した光束は図10の増幅回路基板202により増幅され、出力電圧が発生する。この電圧値はデジタル電圧検出値として制御装置92に送られる。
【0063】
次に、出力処理工程において、制御装置92に送られた主計測工程におけるデジタル電圧検出値は、比較計測工程におけるデジタル電圧検出値により補正処理され、換算処理後の値が試料の濃度に相当する値としてディスプレイ94に表示される。具体的には、次式を用いて主計測工程及び比較計測工程におけるデジタル電圧検出値が換算処理される。なお、a、b、cの値は測定する試料により変化する。
Y=aX1+bX2+c
X1:バンドパスフィルタを通過した低圧水銀ランプによる試料の透過光量(主計測工程におけるデジタル電圧検出値)
X2:紫外線発光ダイオードによる試料の透過光量(比較計測工程におけるデジタル電圧検出値)
Y:X1、X2から予測される分光光度計吸光度(275〜350nm)(補正後の値)
【0064】
以上説明した試料測定装置110では、制御装置92により計測用フォトダイオード51で検出した試料の透過光量を補正用フォトダイオード52で検出した試料の透過光量により補正する処理を行い、数値化した値をディスプレイ94に表示することができる。そのため、紫外線透過セル30中の試料が不純物質の影響等で紫外域の測定波長と異なる位置に吸光性等を有する場合であっても、精度のよい試料濃度を簡単に決定することができる。また、試料に応じて補正がされるので、より精度のよい試料濃度を決定することができる。試料測定装置110において、光路切替装置140を用いて計測に用いない光路を遮光することによって、迷光を防止することができる。さらに、各光路PA1、PA2に入射する光束を独立させることにより、光束を安定させつつ試料の紫外線透過率を精度よく計測することができる。なお、補正後の値Yについては、分光光度計の吸光度にする必要はなく、実際の濃度に直接換算した結果を表示することができる。
【0065】
以下、図9で説明した試料測定装置110による具体的な測定例について説明する。
【実施例4】
【0066】
計測値の補正方法として、処理液の着色、濁りによる測定値への影響に対してベースライン上昇分を一定値としてこれを差し引くことで補正することが考えられる。例えば、標準試料に比べてベースライン上昇が観察された場合、分光光度計による高精度の確認試験に基づき、便宜上350nmにおける上昇分を267nmでの吸光度から差し引くことで対応できる。
【0067】
しかし、試料によっては測定サンプル間においてベースラインの上昇分に差異があるため、これを一定の定数として計測結果を差し引くわけにはいかない。
【0068】
そこで、本実施例では、ベースラインが変動することを前提として計測結果を補正処理する第2実施形態の試料測定装置110を用い、木材処理後の防カビ材希釈液の濃度測定を行った。
【0069】
下記表4は、分光光度計にて275nmの吸光度から350nmのベースライン上昇分を差し引いたデータ(分光光度計実測値)に、バンドパスフィルタを透過させた低圧水銀ランプ21における試料の透過光量を対比させたものである。この場合、その相関は図11のグラフに示したように、特に低濃度側で低いものであった。低圧水銀ランプ21の測定だけではベースラインの変化に対応できず、測定後の信憑性が低くなる場合があることが分かる。
【表4】
【0070】
下記表5は、試料測定装置110を用いて、紫外線発光ダイオード23における試料の透過光量を測定し、分光光度計350nmでのベースライン上昇分と比較したものである。この場合、その相関は図12のグラフに示したように、高いものであった。紫外線発光ダイオード23によってベースラインの変化を検出できることが分かる。
【表5】
【0071】
下記表6は、表4の低圧水銀ランプ21における試料の透過光量を表5の紫外線発光ダイオード23における試料の透過光量により補正した予測値と、分光光度計の実測値とを比較したものである。この場合、その相関は図13のグラフに示したように、高いものであった。
【表6】
【0072】
以上のことから、低圧水銀ランプ21における試料の透過光量を紫外線発光ダイオード23における試料の透過光量により補正することにより、分光光度計による解析結果に近い測定値を得ることができることが分かり、簡易測定器でも比較的高精度の測定結果を得ることができた。具体的に、制御装置92で行われる換算処理式は、次式となる。
Y=−0.003887X1+0.1677X2+2.710
【0073】
以上の第2実施形態では自動測定を可能にするシステムについて説明したが、手動での測定も可能である。例えば、主計測工程において、遮光板42を手で取り除いて計測用光路PA1を開放し、計測用フォトダイオード51に入射した光束を図10の増幅回路基板201により増幅させ、出力電圧値を計測する。この際、補正用光路PA2は、遮光板41により遮光されている。次に、比較計測工程において、遮光板41を取り除いて開放し、補正用フォトダイオード52に入射した光束を増幅回路基板202により増幅させ、出力電圧値を計測する。この際、計測用光路PA1は、遮光板42により遮光されている。次に、出力処理工程において、主計測工程における出力電圧値は、計算機や換算テーブルを利用して、比較計測工程における出力電圧値により補正換算処理され、その補正後の値に基づいて試料の濃度に相当する値を決定する。
【0074】
また、第2実施形態では、ディスプレイ94に補正後の値を表示したが、主計測工程及び比較計測工程における計測値をそれぞれ直接表示してもよい。
【0075】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態に係る試料測定装置について説明する。なお、第3実施形態に係る試料測定装置210は、第2実施形態の試料測定装置110を変形したものであり、特に説明しない部分については、第2実施形態と同様であるものとする。
【0076】
図14(A)、14(B)は、第3実施形態に係る試料測定装置210の光学系部分を示す。第3実施形態に係る試料測定装置210において、紫外線透過セル30が移動することにより光路PA1、PA2の切り替えが行われる。紫外線透過セル30は、光路切替装置240により各光路PA1、PA2上に移動可能となっている。光路切替装置240は、紫外線透過セル30を固定するホルダ(不図示)と、ホルダを動かすアクチュエータ(不図示)等から構成される。アクチュエータが、各光路PA1、PA2上の所定位置にホルダを動かすことにより、光路PA1、PA2の切り替えを行う。ここで、紫外線透過セル30には光束が入射しない側面部分に遮光板143が取り付けられている。さらに、計測用光路PA1及び補正用光路PA2は、遮光板143によって光路が仕切られており、紫外線透過セル30が両光路PA1、PA2のいずれか一方上に移動することにより完全に光路PA1、PA2の独立性を保っている。また、低圧水銀ランプ21、紫外線発光ダイオード23、計測用フォトダイオード51、及び補正用フォトダイオード52は、固定されている。
【0077】
なお、図14(C)、14(D)のように、紫外線透過セル30の下部に回転機構を有する光路切替装置241を光路PA1、PA2上に設け、紫外線透過セル30を±90°回転させることにより、光路PA1、PA2の切り替えを行ってもよい。光路切替装置241も光路切替装置240と同様に、紫外線透過セル30を固定するホルダとアクチュエータ等から構成される。
【0078】
以上説明した試料測定装置210では、試料に応じて補正がされるので、より精度のよい試料濃度を決定することができる。試料測定装置210において、光路切替装置240、241を用いて計測に用いない光路を遮光することによって、迷光を防止することができる。さらに、各光路PA1、PA2に入射する光束を独立させることにより、光束を安定させつつ試料の紫外線透過率を精度よく計測することができる。
【0079】
〔第4実施形態〕
以下、第4実施形態に係る試料測定装置について説明する。なお、第4実施形態に係る試料測定装置310は、第2実施形態等の試料測定装置110を変形したものであり、特に説明しない部分については、第2実施形態等と同様であるものとする。
【0080】
図15(A)、15(B)は、第4実施形態に係る試料測定装置310の光学系部分を示す。第4実施形態に係る試料測定装置310において、計測用フォトダイオード51は、補正用フォトダイオードと兼用され、低圧水銀ランプ21及び紫外線発光ダイオード23を一体的に移動することにより光路PA1、PA2の切り替えが行われる。例えば、低圧水銀ランプ21及び紫外線発光ダイオード23の下部に設けた光路切替装置340により各光路PA1、PA2の切り替えを行っている。光路切替装置340は、支持台341と、アクチュエータ(不図示)等から構成される。支持台341には、低圧水銀ランプ21と、バンドパスフィルタ40と、紫外線発光ダイオード23と、遮光板243とが固定されている。遮光板243は、低圧水銀ランプ21と紫外線発光ダイオード23との間に固定されている。アクチュエータにより支持台341を動かし、低圧水銀ランプ21及び紫外線発光ダイオード23がそれぞれ計測用フォトダイオード51に入射する位置に移動させることで光路PA1、PA2の切り替えを行っている。ここで、紫外線透過セル30及び計測用フォトダイオード51は固定されている。
【0081】
なお、図15(C)、15(D)のように、回転機構有する光路切替装置342を光路PA1、PA2上に設け、光路PA1、PA2の切り替えを行ってもよい。光路切替装置342上には、反射ミラー244が固定されており、光路PA1、PA2のうち一方を計測用フォトダイオード51へ導き、他方は遮光するようになっている。この光路切替装置342を±90°回転させることにより、光路PA1、PA2の切り替えを行うことができる。
【0082】
以上説明した試料測定装置310では、計測用フォトダイオード51を補正用フォトダイオード52として用いることにより、1つのフォトダイオードで計測値の補正を行うことができる。そのため、試料測定装置310のコストを安価にすることができる。また、試料に応じて補正がされるので、より精度のよい試料濃度を決定することができる。試料測定装置310において、光路切替装置340、342を用いて計測に用いない光路を遮光することによって、迷光を防止することができる。さらに、各光路PA1、PA2に入射する光束を独立させることにより、光束を安定させつつ試料の紫外線透過率を精度よく計測することができる。
【0083】
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、紫外光光源20として低圧水銀ランプ21及び紫外線発光ダイオード23を用いたが、他の発光管タイプの紫外光光源を用いることができ、或いは近紫外等発光する発光ダイオード等の広義の紫外光ランプを1つ以上準備して同時又は個別に切り替えながら点灯させて、目的とする紫外線を発光させることができる。
【0084】
また、紫外線透過セル30は、薬液CSを保持することができ紫外線を効率よく透過させるものであれば、石英ガラス以外の他の材料で形成することができる。特に紫外線透過セル30を樹脂セルに置き換えた場合、樹脂セルを使い捨て型のものにすることができる。
【0085】
また、バンドパスフィルタ40は、誘電体多層膜に限らず、多様なフィルタを使用することができる。なお、バンドパスフィルタ40は、紫外線透過セル30の後段に限らず、紫外線透過セル30の前段に配置することができ、多少特性の異なる2つのバンドパスフィルタ40を紫外線透過セル30の前後に配置することもできる。
【0086】
また、光検出装置50は、フォトダイオード51、52に限らず、様々な半導体光検出素子すなわち固体素子によって形成することができ、これによっても小型化が達成される。
【0087】
また、増幅装置60や出力表示装置70や出力変換装置170も、実施形態で説明したものは一例であり、測定対象に応じて電流や電圧のいずれを増幅し、電流値や電圧値のいずれを表示するかを使い分けることができる。なお、測定対象となり得る物質は紫外光を吸収する性質を有するものであれば何でも良く、他の分野への応用も可能である。
【0088】
また、増幅回路基板201において、電圧発生装置91を用いたが、計測用光路PA1上に試料ごとに対応したNDフィルタを設けることにより電圧増幅を調整してもよい。
【0089】
また、図10において、各フォトダイオード51、52に対して増幅装置160に増幅回路基板201、202を設けたが、図16の増幅装置260の増幅回路基板203ように増幅回路基板を1つにしてもよい。
【0090】
また、本実施形態において、光路切替装置140等により計測用光路PA1及び補正用光路PA2の切り替えを行ったが、手動により光路の切り替えを行ってもよい。
【0091】
また、本実施形態において、試料測定装置10、110に、紫外光光源20、120等を駆動させる電源を内蔵したが、外部から電源を供給してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】第1実施形態に係る試料測定装置を概念的に説明するブロック図である。
【図2】図1の試料測定装置を外観を説明する斜視図である。
【図3】(A)、(B)は、図2の試料測定装置の内部を説明する側面図及び平面図である。
【図4】試料測定装置の回路構成を説明するブロック図である。
【図5】増幅回路基板の具体的回路構成の一例を説明する回路図である。
【図6】図1に示す試料測定装置を用いた実施例1の測定結果を説明するグラフである。
【図7】図1に示す試料測定装置を用いた実施例2の測定結果を説明するグラフである。
【図8】図1に示す試料測定装置を用いた実施例3の測定結果を説明するグラフである。
【図9】第2実施形態に係る試料測定装置の光学系部分を説明するブロック図である。
【図10】図9の試料測定装置の回路構成等を説明する図である。
【図11】図9に示す試料測定装置を用いた実施例4の測定結果を説明するグラフである。
【図12】図9に示す試料測定装置を用いた実施例4の測定結果を説明するグラフである。
【図13】図9に示す試料測定装置を用いた実施例4の測定結果を説明するグラフである。
【図14】第3実施形態に係る試料測定装置の光学系部分を説明するブロック図である。
【図15】第4実施形態に係る試料測定装置の光学系部分を説明するブロック図である。
【図16】図10の試料測定装置の回路構成等の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0093】
10、110、210、310…試料測定装置、 11…外装ケース、 12…支持板、 20、120…紫外光光源、 21…低圧水銀ランプ、 22、62、72…電源装置、 23…紫外線発光ダイオード、 30…紫外線透過セル、 40…バンドパスフィルタ、 41、42、143、243…遮光板、 50、150…光検出装置、 51、52…フォトダイオード、 60、160、260…増幅装置、 61…増幅回路本体、 70…出力表示装置、 71…電気計測器本体、 73、94…ディスプレイ、 81…スナップスイッチ、 85、201、202、203…増幅回路基板、 92…制御装置、 140、240、241、340、342…光路切替装置、 170…出力変換装置、 171、172、173…A/D変換器、 BA1、BA2、BA3…電池、 PA1…計測用光路、 PA2…補正用光路、 SC…薬液
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外光を発生する紫外光ランプと、
試料を収容した状態で前記紫外光ランプからの光束を通過させるための紫外線透過セルと、
前記紫外線透過セルを通過した光束を検出する計測用半導体光検出素子と、
前記計測用半導体光検出素子の検出出力に対応する測定結果を数値化した値を表示する出力表示装置と、
前記紫外光ランプと、前記計測用半導体光検出素子と、前記出力表示装置とを動作させるための電源と、
を備える試料測定装置。
【請求項2】
前記紫外光ランプと前記計測用半導体光検出素子との間の計測用光路上であって、前記紫外線透過セルの後段及び/又は前段に配置され、紫外域に透過帯を有するバンドパスフィルタをさらに備える請求項1記載の試料測定装置。
【請求項3】
前記紫外光ランプは、低圧水銀ランプであり、前記出力表示装置は、前記低圧水銀ランプの発光特性と前記バンドパスフィルタの透過特性とを参酌して決定した増幅特性を有する増幅回路と、当該増幅回路の出力電圧又は出力電流を計測する電気計測器とを有する、請求項1及び請求項2のいずれか一項記載の試料測定装置。
【請求項4】
前記紫外光ランプと、前記紫外線透過セルと、前記計測用半導体光検出素子とを相互に固定して収納するとともに、前記出力表示装置の表示器部分を外壁に設けた携帯型の遮光ケースをさらに備える請求項1から請求項3までのいずれか一項記載の試料測定装置。
【請求項5】
計測用の波長とは異なる所定の紫外領域波長で発光する紫外線発光ダイオードと、
前記紫外線発光ダイオードから射出され前記紫外線透過セルを通過した光束を検出する補正用半導体光検出素子と、
をさらに備え、
前記出力表示装置は、前記補正用半導体光検出素子の検出出力と前記計測用半導体光検出素子の検出出力とに基づいて得た結果を前記測定結果として数値化した値を表示する、請求項1から請求項4までのいずれか一項記載の試料測定装置。
【請求項6】
前記計測用光路、及び前記紫外線発光ダイオードと前記補正用半導体光検出素子との間の補正用光路は、前記紫外線透過セルを通過する光路であって、
前記紫外光ランプと前記紫外線透過セルとの間、及び前記紫外線発光ダイオードと前記紫外線透過セルとの間の遮光位置に配置可能な遮光板をさらに備え、
前記計測用光路及び前記補正用光路の切り替えは、前記遮光板の配置によって行われる、請求項5記載の試料測定装置。
【請求項7】
前記計測用光路、及び前記紫外線発光ダイオードと前記補正用半導体光検出素子との間の補正用光路は、前記紫外線透過セルを通過する光路であって、
前記計測用光路及び前記補正用光路の切り替えを行う光路切替装置をさらに備える請求項5記載の試料測定装置。
【請求項8】
前記計測用半導体光検出素子は、前記補正用半導体光検出素子として用いられ、前記計測用光路上及び前記補正用光路上においてそれぞれ前記紫外光ランプからの透過光量及び前記紫外線発光ダイオードからの透過光量を測定する請求項6及び請求項7のいずれか一項記載の試料測定装置。
【請求項9】
前記計測用光路及び前記補正用光路に入射する光束は互いに独立し、前記紫外光ランプの透過光量は前記計測用光路上で測定され、前記紫外線発光ダイオードの透過光量は前記補正用光路上で測定される、請求項6から請求項8までのいずれか一項記載の試料測定装置。
【請求項10】
前記計測用光路及び前記補正用光路のいずれか一方に光束を入射させるタイミングに応じて、前記計測用半導体光検出素子及び前記補正用半導体光検出素子のいずれか一方に光束を検出させるタイミングを制御する制御装置をさらに備える請求項6から請求項9までのいずれか一項記載の試料測定装置。
【請求項11】
前記制御装置は、前記紫外線発光ダイオードに対する前記補正用半導体光検出素子の検出出力により、前記紫外光ランプに対する前記計測用半導体光検出素子の検出出力のベースラインに相当する値を算出する、請求項10記載の試料測定装置。
【請求項12】
前記制御装置は、前記紫外光ランプに対する前記計測用半導体光検出素子の検出出力から前記ベースラインを差し引く換算処理を行い、前記出力表示装置に計算結果を表示させる請求項11記載の試料測定装置。
【請求項13】
前記紫外線透過セルは、木材用防カビ剤溶液、洗濯用洗剤溶液、及びガソリンのいずれかの試料を収納し、前記出力表示装置は、前記紫外線透過セル中の試料の濃度を反映した数値を示す、請求項1から請求項12までのいずれか一項記載の試料測定装置。
【請求項14】
紫外線透過セルに収容された試料の濃度を測定する試料測定方法であって、
紫外光ランプからの光束を、前記紫外光ランプと計測用半導体光検出素子との間の計測用光路上にある前記紫外線透過セルに通過させ、前記紫外線透過セルを通過した光束を検出する主計測工程と、
前記主計測用光路を、紫外線発光ダイオードと補正用半導体光検出素子との間の補正用光路に切り替え、計測用の波長と異なる波長で発光する前記紫外線発光ダイオードからの光束を、前記補正用光路上にある前記紫外線透過セルに通過させ、前記紫外線透過セルを通過した光束を検出する比較計測工程と、
前記主計測工程における測定結果を前記比較計測工程における測定結果によって補正し、数値化した値を表示する出力処理工程と、
を行う試料測定方法。
【請求項1】
紫外光を発生する紫外光ランプと、
試料を収容した状態で前記紫外光ランプからの光束を通過させるための紫外線透過セルと、
前記紫外線透過セルを通過した光束を検出する計測用半導体光検出素子と、
前記計測用半導体光検出素子の検出出力に対応する測定結果を数値化した値を表示する出力表示装置と、
前記紫外光ランプと、前記計測用半導体光検出素子と、前記出力表示装置とを動作させるための電源と、
を備える試料測定装置。
【請求項2】
前記紫外光ランプと前記計測用半導体光検出素子との間の計測用光路上であって、前記紫外線透過セルの後段及び/又は前段に配置され、紫外域に透過帯を有するバンドパスフィルタをさらに備える請求項1記載の試料測定装置。
【請求項3】
前記紫外光ランプは、低圧水銀ランプであり、前記出力表示装置は、前記低圧水銀ランプの発光特性と前記バンドパスフィルタの透過特性とを参酌して決定した増幅特性を有する増幅回路と、当該増幅回路の出力電圧又は出力電流を計測する電気計測器とを有する、請求項1及び請求項2のいずれか一項記載の試料測定装置。
【請求項4】
前記紫外光ランプと、前記紫外線透過セルと、前記計測用半導体光検出素子とを相互に固定して収納するとともに、前記出力表示装置の表示器部分を外壁に設けた携帯型の遮光ケースをさらに備える請求項1から請求項3までのいずれか一項記載の試料測定装置。
【請求項5】
計測用の波長とは異なる所定の紫外領域波長で発光する紫外線発光ダイオードと、
前記紫外線発光ダイオードから射出され前記紫外線透過セルを通過した光束を検出する補正用半導体光検出素子と、
をさらに備え、
前記出力表示装置は、前記補正用半導体光検出素子の検出出力と前記計測用半導体光検出素子の検出出力とに基づいて得た結果を前記測定結果として数値化した値を表示する、請求項1から請求項4までのいずれか一項記載の試料測定装置。
【請求項6】
前記計測用光路、及び前記紫外線発光ダイオードと前記補正用半導体光検出素子との間の補正用光路は、前記紫外線透過セルを通過する光路であって、
前記紫外光ランプと前記紫外線透過セルとの間、及び前記紫外線発光ダイオードと前記紫外線透過セルとの間の遮光位置に配置可能な遮光板をさらに備え、
前記計測用光路及び前記補正用光路の切り替えは、前記遮光板の配置によって行われる、請求項5記載の試料測定装置。
【請求項7】
前記計測用光路、及び前記紫外線発光ダイオードと前記補正用半導体光検出素子との間の補正用光路は、前記紫外線透過セルを通過する光路であって、
前記計測用光路及び前記補正用光路の切り替えを行う光路切替装置をさらに備える請求項5記載の試料測定装置。
【請求項8】
前記計測用半導体光検出素子は、前記補正用半導体光検出素子として用いられ、前記計測用光路上及び前記補正用光路上においてそれぞれ前記紫外光ランプからの透過光量及び前記紫外線発光ダイオードからの透過光量を測定する請求項6及び請求項7のいずれか一項記載の試料測定装置。
【請求項9】
前記計測用光路及び前記補正用光路に入射する光束は互いに独立し、前記紫外光ランプの透過光量は前記計測用光路上で測定され、前記紫外線発光ダイオードの透過光量は前記補正用光路上で測定される、請求項6から請求項8までのいずれか一項記載の試料測定装置。
【請求項10】
前記計測用光路及び前記補正用光路のいずれか一方に光束を入射させるタイミングに応じて、前記計測用半導体光検出素子及び前記補正用半導体光検出素子のいずれか一方に光束を検出させるタイミングを制御する制御装置をさらに備える請求項6から請求項9までのいずれか一項記載の試料測定装置。
【請求項11】
前記制御装置は、前記紫外線発光ダイオードに対する前記補正用半導体光検出素子の検出出力により、前記紫外光ランプに対する前記計測用半導体光検出素子の検出出力のベースラインに相当する値を算出する、請求項10記載の試料測定装置。
【請求項12】
前記制御装置は、前記紫外光ランプに対する前記計測用半導体光検出素子の検出出力から前記ベースラインを差し引く換算処理を行い、前記出力表示装置に計算結果を表示させる請求項11記載の試料測定装置。
【請求項13】
前記紫外線透過セルは、木材用防カビ剤溶液、洗濯用洗剤溶液、及びガソリンのいずれかの試料を収納し、前記出力表示装置は、前記紫外線透過セル中の試料の濃度を反映した数値を示す、請求項1から請求項12までのいずれか一項記載の試料測定装置。
【請求項14】
紫外線透過セルに収容された試料の濃度を測定する試料測定方法であって、
紫外光ランプからの光束を、前記紫外光ランプと計測用半導体光検出素子との間の計測用光路上にある前記紫外線透過セルに通過させ、前記紫外線透過セルを通過した光束を検出する主計測工程と、
前記主計測用光路を、紫外線発光ダイオードと補正用半導体光検出素子との間の補正用光路に切り替え、計測用の波長と異なる波長で発光する前記紫外線発光ダイオードからの光束を、前記補正用光路上にある前記紫外線透過セルに通過させ、前記紫外線透過セルを通過した光束を検出する比較計測工程と、
前記主計測工程における測定結果を前記比較計測工程における測定結果によって補正し、数値化した値を表示する出力処理工程と、
を行う試料測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−98043(P2009−98043A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270954(P2007−270954)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】
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