説明

試料測定装置

【課題】作動距離(WD)を可及的に小さくすることである。
【解決手段】エネルギ線EBを試料Wに照射することにより生じる光Lを測定する試料測定装置であって、エネルギ線EBを発生させるエネルギ線発生部21と、前記エネルギ線発生部21から発生したエネルギ線EBを収束して前記試料Wに照射する対物レンズ225と、前記エネルギ線EBが照射された前記試料Wから生じる光Lを集光するミラー面23と、を備え、前記対物レンズ225の少なくとも一部を、前記ミラー面23における前記エネルギ線入射側端部よりも前記試料側に設けていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エネルギ線を試料に照射することにより生じる光を測定する試料測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の試料測定装置(光学測定装置)には、電子線を試料に照射することにより試料から生じる光(カソードルミネッセンス)を用いて試料の微小領域における物性評価や半導体素子の解析を行うものがある。
【0003】
この試料測定装置は、特許文献1に示すように、カソードルミネッセンスを集光するために、試料を覆うように集光ミラー部を配置し、電子顕微鏡の外部に設けられた光ファイバ又は分光器入射スリットに焦点が結像されるように構成している。
【0004】
しかしながら、電子顕微鏡の鏡筒部(鏡筒本体)と試料との間にその鏡筒部と別体をなす集光ミラー部を設けているので、鏡筒部内にある対物レンズは当然集光ミラー部の上部に位置してしまい、対物レンズの試料側先端から試料までの距離(以下、単に作動距離(WD)という。)が大きくなり、試料測定装置の空間分解能が劣化してしまうという問題がある。
【特許文献1】特開2003−157789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、作動距離(WD)を可及的に小さくすることをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る試料測定装置は、エネルギ線を試料に照射することにより生じる光を測定する試料測定装置であって、エネルギ線を発生させるエネルギ線発生部と、前記エネルギ線発生部から発生したエネルギ線を収束して前記試料に照射する対物レンズと、前記エネルギ線が照射された前記試料から生じる光を集光するミラー面と、を備え、前記対物レンズの少なくとも一部を、前記ミラー面における前記エネルギ線入射側端部よりも前記試料側に設けていることを特徴とするものである。ここで、試料から生じる光には、例えばカソードルミネッセンス、フォトルミネッセンス又はエレクトロルミネッセンス等のルミネッセンスがある。
【0007】
このようなものであれば作動距離(WD)を可及的に小さくすることができ、試料測定装置の空間分解能の劣化を防ぐことができ、測定精度の向上を図ることができる。
【0008】
具体的には、前記対物レンズ及び前記ミラー面を有する鏡筒部を備え、前記鏡筒部が、鏡筒本体と、その鏡筒本体に支持される集光ミラー部とを有し、前記鏡筒本体が、前記対物レンズを備え、前記集光ミラー部が、前記対物レンズによって収束されるエネルギ線を通過させ、そのエネルギ線を前記試料に照射するためのエネルギ線通路と、その通路の軸線上に焦点が設定された前記ミラー面と、前記鏡筒本体の試料側端部が嵌め込まれる凹部とを備え、前記鏡筒本体の試料側端部を前記凹部に嵌め込むことによって、前記対物レンズの少なくとも一部を、前記ミラー面における前記エネルギ線入射側端部よりも前記試料側に設けていることが望ましい。ここで、「鏡筒本体が対物レンズを備えている」とは、作動距離を対物レンズの試料側先端から試料までの距離とする場合には、鏡筒本体が対物レンズの全てを備えていることをいい、作動距離を対物レンズにおける試料側先端以外の部分から試料までの距離とする場合には、鏡筒本体が当該部分を含む対物レンズの少なくとも一部を備えていることを示す。
【0009】
対物レンズの少なくとも一部を、前記ミラー面における前記エネルギ線の入射側端部よりも前記試料側に設けるための別の具体的な実施の態様としては、前記対物レンズ及び前記ミラー面を有する鏡筒部を備え、前記鏡筒部が、鏡筒本体と、その鏡筒本体に支持される集光ミラー部とを有し、前記集光ミラー部に、前記対物レンズを構成する少なくとも1つの電極が形成されていることが考えられる。
【0010】
このとき、前記集光ミラー部が、前記エネルギ線発生部から発生したエネルギ線を通過させ、そのエネルギ線を前記試料に照射するためのエネルギ線通路を有し、そのエネルギ線通路の内壁に前記対物レンズを構成する少なくとも1つの電極が形成されていることが望ましい。
【0011】
作動距離を大幅に小さくするためには、前記集光ミラー部が、前記対物レンズを構成する電極とすることが好適である。
【0012】
集光ミラー部の製作を容易にするための具体的な構成としては、前記集光ミラー部がアルミニウムから成形されており、前記対物レンズのうち接地された電極として機能させることが望ましい。これならば、集光ミラー部が対物レンズを構成する電極も兼ねるので作動距離(WD)を大幅に小さくすることができる。
【0013】
また、本発明に係る試料測定装置は、エネルギ線を試料に照射することにより生じる光を測定する試料測定装置であって、エネルギ線発生部からのエネルギ線を収束して前記試料に照射する対物レンズ及び前記試料から生じる光を集光するミラー面を有する鏡筒部を備え、前記鏡筒部の試料側先端部が、対物レンズを構成する電極と、エネルギ線が照射された試料から生じる光を集光するミラー面とを有することを特徴とするものである。
【0014】
作動距離を小さくするための具体的な実施の態様としては、前記鏡筒部が、鏡筒本体と、その鏡筒本体に支持される集光ミラー部とを有し、前記集光ミラー部に、前記対物レンズを構成する少なくとも1つの電極が形成されていることが望ましい。
【0015】
対物レンズの具体的な形成の態様としては、前記集光ミラー部が、前記エネルギ線発生部から発生したエネルギ線を通過させ、そのエネルギ線を前記試料に照射するためのエネルギ線通路を有し、そのエネルギ線通路の内壁に前記対物レンズを構成する少なくとも1つの電極が形成されていることが考えられる。
【発明の効果】
【0016】
このように本発明によれば、作動距離(WD)を可及的に小さくすることができるので、試料測定装置の空間分解能の劣化を抑制することができ、高精度な測定を行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態に係る試料測定装置は、エネルギ線である電子線EBを試料Wに照射することにより試料Wから生じる光L(カソードルミネッセンス)を用いて、試料Wの微小領域における物性評価や半導体素子の解析を行うもの(以下、電子線測定装置という。)であり、図1に示すように、試料台1と、その試料台1に載せた試料Wにエネルギ線である電子線EBを照射する電子線照射装置2と、電子線EBの照射によって試料Wから発生するルミネッセンスLを分光し、検出する光検出部たる検出装置3と、その検出装置3からの出力信号を受信し、前記試料Wを評価等(例えば応力測定)するために所定の演算処理を行う情報処理装置4とを備えている。
【0019】
まず、試料台1、検出装置3及び情報処理装置4について説明する。
【0020】
試料台1は、X軸、Y軸及びZ軸方向に移動可能なものであり、さらに本実施形態では試料スペクトルのピーク半値幅を小さくし、前記スペクトルから意味のある情報を得るために、図示しない冷却手段及び温度制御機構をさらに設け、この試料台1及び試料Wを数十K以下の所定温度に冷却できるようにしている。
【0021】
検出装置3は、分光部32及びセンシング部33を備えたものである。分光部32は、後述する集光ミラー部24Bで集光されたルミネッセンスLを単色光に分離するもので、例えばモノクロメータを利用して構成している。センシング部33は、前記分光部32で波長毎に複数に分光された各単色光の強度をそれぞれ測定し、各単色光の強度に応じた値の電流値(又は電圧値)を有する出力信号を出力するものである。本実施形態ではこのセンシング部33をフォトマルチプライヤ(PMT)を用いて構成しているが、測定する波長領域によって使用する機器を変えても構わない。例えば赤外(1μm〜)においては、Ge検出器、Pbs検出器、赤外PMT等を用いることが好ましい。また、光−電子変換効率、ダイナミックレンジ、S/Nに優れているといったことからCCDを利用してもよい。CCDによればスペクトルの一括検出も可能である。
【0022】
情報処理装置4は、構造としては、CPU、メモリ、入出力インターフェイス、AD変換器、入力手段等からなる汎用又は専用のコンピュータである。そして、前記メモリの所定領域に格納してあるプログラムに基づいてCPUやその周辺機器が作動することにより、この情報処理装置4が、前記検出装置3からの出力信号を受信し、走査した各測定ポイントでの応力を算出する。
【0023】
具体的な算出方法は、検出装置3からの光強度信号を受信してスペクトル波形を示すデータであるスペクトルデータを生成し、そのスペクトルデータの示すスペクトル波形をスムージングする。次に、スムージングによって得られた波形に微分演算を施して、得られた値がプラスからマイナスに反転する時点での波長をピーク波長とする。なお、所定の関数でフィッティングしてピーク波長を求めても良い。そして、測定対象となる試料Wから得られるピーク波長と基準となるピーク波長との変位量に基づいて、その試料Wに作用している応力を算出する。
【0024】
この応力算出について原理を簡単に説明しておく。測定試料Wの電子線EBを照射された部位に存在する応力と得られるピーク波長との関係は、応力の大きさが十数GPa程度までは直線近似することができ、その相関は、下式(1)で示される。
【0025】
νσ=ν+Π・σ ・・・(1)
【0026】
ここでνσは測定したスペクトルのピーク波長、νは基準となるピーク波長、σは測定試料Wに作用している応力を示すテンソル、ΠはPS(Piezo−Spectroscopic)係数と呼ばれ、応力のみに依存して位置に依存しないテンソルである。このν及びΠが相関データとしてメモリ内の格納部に格納してある。かかる相関データは、測定試料Wと同等の試料に、既知の応力を複数作用させることによって統計的に求めるようにしている。
【0027】
ここで基準となるピーク波長は、例えば、試料Wの残留応力を測定したい場合には、残留応力の存在していない他の同等の試料や、当該試料Wにおける残留応力の存在していない部位から得られた蛍光スペクトル波形から特定する。一方、例えば試料Wに作用させた外力に起因して発生する内部応力を測定したい場合には、外力を作用させていない状態での試料Wから得られた蛍光スペクトル波形から基準となるピーク波長を特定する。この基準ピーク波長を示すデータは、例えばメモリの所定領域に設定した格納部に格納してある。
【0028】
次に、電子線照射装置2について説明する。
【0029】
電子線照射装置2は、例えば走査型のもので、エネルギ線発生部である電子銃21と、電子銃21から射出された電子線EBを試料Wの測定部位に収束させるレンズ機構とともに電子線EBを走査させるための走査機構などからなるエネルギ線制御手段22と、電子線EBを通過させて照射し、試料Wから生じる光Lを集光するミラー面23と、それらを保持する鏡筒部24とを備えている。なお本実施形態では前記電子銃21に熱電界放出型のものを用いている。
【0030】
具体的に鏡筒部24は、図2及び図3に示すように、鏡筒本体24Aと、その鏡筒本体24Aに支持される集光ミラー部24Bとを備えている。
【0031】
鏡筒本体24Aは、高抵抗導電性を有する筒状のセラミックスコラムであり、内部に電子銃21が設けられるフランジ部24A1と、そのフランジ部24A1から下方に延出した円筒部24A2とからなる。
【0032】
円筒部24A2は、その内壁(内周)にエネルギ線制御手段22を備えている。具体的に円筒部24A2の内壁には、電子銃21から電子を引き出すためのガンレンズ221、電子線量をモニタするためのアパーチャ用電極222、電子線EBの非点収差を補正するための非点補正器(スティグメータ)223、電子線EBを偏光させるための偏向器(デフレクタ)224、が上部からこの順で形成されており、さらに、偏向器(デフレクタ)224の下側には、電子線EBを収束させるための静電型レンズである対物レンズ225の一部を構成する2つのリング状の電極2251、2252が形成されている。
【0033】
ガンレンズ221はトライオード型の電極であり、アパーチャ用電極222、非点補正器(スティグメータ)223及び偏向器(デフレクタ)224はそれぞれ周方向に沿って配置された8個の電極片を備えている。また、それぞれの電極及び電極片は、配線25を介して外部に設けた電源(図示しない)により所定の電圧が印加され、又はアースに接続されている。その配線25は円筒部内部を通って電極及び電極片それぞれに接続されている。なお、図3には配線25は図示していない。
【0034】
上記対物レンズ225を構成する2つの電極2251、2252は、後述する集光ミラー部24Bが鏡筒本体24Aに取り付けられることによって、集光ミラー部24Bとともにトライオード型の電極を構成するようにしている。2つの電極2251、2252は、薄厚のリング状電極であり、上の電極2251には、0V(アース)が接続され、下の電極2252には、適切な高電圧(必要なレンズを生成できる電圧)が印加されるようにしている。その作製方法は、円筒部24A2の内壁にセラミックメタライズ処理を行い、先ずニッケル層22aを形成して、その上に金層22bを形成することによって行う。なお、ガンレンズ221、アパーチャ用電極222、非点補正器(スティグメータ)223及び偏向器(デフレクタ)224を構成する電極及び電極片も同様の処理によって作製する。
【0035】
集光ミラー部24Bは、鏡筒本体24A及び試料Wの間に設けられ、試料Wから発生するルミネッセンスLを最小限の損失で集め後述する分光部32に導くものであり、鏡筒本体24Aで収束された電子線EBを通過させ、その電子線EBを試料Wに照射するためのエネルギ線通路24B1と、その通路24B1の軸線上に焦点Fが設定されたミラー面23とを有するものである。さらに、集光ミラー部24Bは、複数(本実施形態では3つ)のボルトで締結されることにより、鏡筒本体24Aに固定支持されるための孔24B2を有している。
【0036】
また、集光ミラー部24Bは、アルミニウムから形成されている。これは、集光ミラー部24Bをセラミックスにより成形すると、ミラー面23を切削する時に生じる粒塊によって、光が散乱してしまうからである。この点アルミニウムにより成形しているので、ミラー面23に粒塊が生じることはない。また、集光ミラー部24Bをアースに接続することによって、前記対物レンズ225を構成する2つの電極2251、2252とともに、トライオード型の対物レンズ225を構成する。これによって、対物レンズ225の最下端(試料側先端)は、エネルギ線通路24B1の試料側出口となる。つまり、対物レンズ225の少なくとも一部(本実施形態では、対物レンズ225を構成する電極のうち最も試料側のもの)を、ミラー面23における電子線入射側端部231(ミラー面23の上端部)よりも試料側に設けていることになる。
【0037】
ミラー面23は、放物面鏡又は楕円面鏡などが考えられるが本実施形態では楕円面鏡を用いている。楕円面鏡23はそれ自体が受光と集光の作用をし、楕円面により焦点Fを自由に設定できる利点を有している。その一方で楕円面鏡23は、結像倍率が機械的配置条件から決まるため、分光部32とのカップリングがうまくいかない欠点を有する。そこでこれを解消し、なおかつ光軸調整を簡単にするということから光ファイバ321を用い、楕円面鏡23で集光したルミネッセンスLを分光部32に転送するようにしている。ここで、上記光軸調節は、楕円面鏡23の焦点Fに併せて、図示しない調節機構により光ファイバ321の光入射部321Aを調節することにより行う。
【0038】
エネルギ線通路24B1は、特に図3に示すように、鏡筒本体24Aから射出された電子線EBを試料Wに照射するためのものであり、このエネルギ線通路24B1を通過した電子線EBが試料Wに照射される。また、エネルギ線通路24B1は、通過した電子線EBが試料Wに照射される照射位置Pが集光ミラー部24Bの焦点F内に入るように形成されている。
【0039】
しかして、本実施形態の電子線測定装置は、エネルギ線EBの軸Oと焦点Fとを一致させるように、鏡筒本体24Aに集光ミラー部24Bを支持させることにより、それらを一体的に構成し、鏡筒本体24Aと集光ミラー部24Bとの相対位置が一定となるようにしている。本実施形態では、鏡筒本体24Aと集光ミラー部24Bとは互いに分離可能なものであるので、鏡筒本体24A及び集光ミラー部24Bを一体的に構成するために位置決め構造5を備えている。
【0040】
位置決め構造5は、鏡筒本体24A及び集光ミラー部24Bをそれぞれ着脱可能にする一方で、エネルギ線制御手段22の軸線と前記エネルギ線通路24B1の軸線とを同軸に位置決めして、エネルギ線EBの軸Oと焦点Fとを一致させるように、前記鏡筒本体24Aに前記集光ミラー部24Bを支持させるものである。
【0041】
そして、位置決め構造5は、鏡筒本体24A又は集光ミラー部24Bの一方に設けた凸構造と、他方に設けられ前記凸構造に対応する凹構造とから構成され、具体的には、集光ミラー部上面24B3に形成され、鏡筒本体24Aの下端部が嵌め込まれる凹部24B4と、その凹部24B4の内周面24B41と略同一に形成された鏡筒本体24Aの下端部外周面とから構成されている。そして、鏡筒本体24Aの下端部の外周面を凹部24B4に嵌め合わせて埋め込み、複数(本実施形態では3つ)のボルトで締結することにより、鏡筒本体24Aに固定支持するようにしている。
【0042】
凹部24B4は、その内径が鏡筒本体24Aの円筒部24A2の下端部外周面の外径と略同一であり、その深さは任意に設定することができる。円筒部24A2の外径と凹部24B4の内径とを公差指定することによって、単に両者を嵌合し、凹部内に鏡筒本体24Aの下端部を設けるだけで、エネルギ線制御手段22の軸線と前記エネルギ線通路24B1の軸線との同軸度を出すようにして、エネルギ線EBの軸Oと焦点Fとを一致させるようにしている。
【0043】
このように構成した電子線測定装置によれば、作動距離(WD)を、たとえ対物レンズ225の高電圧を印加する電極を基準にしたとしても、可及的に小さくすることができるので、試料測定装置の空間分解能の劣化を抑制することができ、高精度な測定を行うことができるようになる。また、鏡筒本体24Aに集光ミラー部24Bを支持させているので、測定毎に一々集光ミラー部24Bの位置調節をする必要がなくなり、簡単な構成でありながら、電子線EBの照射位置Pを集光ミラー部24Bの焦点F内に簡易に位置調節できること及び振動などによる集光ミラー部24Bの位置ずれを防ぐことができる。したがって、常に電子線EBの照射位置Pが焦点F内に収まるので、照射位置Pにおいて励起されて生じる光Lを全て効率よく集光することができ、検出信号の減少を可及的に抑えることができる。
【0044】
特に5kV以下の低加速電圧又は1kV以下の超低加速電圧による電子線照射装置2を設け、外乱影響を比較的受けやすい場合であれば、特に効果的である。
【0045】
また、位置決め構造5を、凹部24B4と鏡筒本体24A下端部とから構成し、鏡筒本体24Aの下端部を凹部24B4に嵌め合わせて埋め込むことにより連続一体化するので、一体化と位置決めとを同時に行うことができ、位置決めの手間を省くことができる。
【0046】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0047】
例えば、対物レンズ225の少なくとも一部をミラー面23におけるエネルギ線EBの入射側端部よりも試料側に設けることに関して言うと、例えば図4に示すように、集光ミラー部24Bのエネルギ線通路24B1の内壁(内周)に対物レンズ225を設けることにより、対物レンズ225の少なくとも一部を、ミラー面23におけるエネルギ線EBの入射側端部よりも試料側に設けるようにしてもよい。このとき、集光ミラー部をセラミックス等で形成し、粒界を可及的に抑えて処理し、金属を蒸着するなどしてミラー面を形成するとともに、エネルギ線通路34B1の内壁にセラミックメタライズ処理を施すことにより電極2251、2252、2253を作成して静電型レンズ225を設ける。
【0048】
その他にも、図5に示すように、鏡筒本体24Aの円筒部24A2の下端に、その内壁に対物レンズ225が形成された筒状凸部24A3を設け、集光ミラー部24Aの上面24B3に設けた凹部24B4にその筒状凸部24A3を埋め込むことによって、対物レンズ225の少なくとも一部を、ミラー面23におけるエネルギ線EBの入射側端部よりも試料側に設けるようにしてもよい。
【0049】
また、前記実施形態では位置決め機構5が、集光ミラー部24Bの上面24B3に設けた凹部24B4と鏡筒本体24Aの円筒部24A2の下端部の外周面とから構成されるものであったが、その他にも、図4に示すように、集光ミラー部上面24B3に形成され、内周面で前記エネルギ線通路24B1を規定した筒状凸部24B5と、その筒状凸部24B5の外周面と略同一に形成された鏡筒本体24Aの円筒部24A2の内周面と、から構成するようにしても良い。
【0050】
さらに、前記実施形態では位置決め構造を鏡筒本体の円筒部の下端部及び凹部から構成したが、これに限られることはなく、集光ミラー部を直接的又は間接的に鏡筒部に支持させればよい。その一法として、鏡筒部及び集光ミラー部以外に連結部材を設け、この連結部材を用いて鏡筒部及び集光ミラー部を連結するようにしても良い。
【0051】
さらに、前記実施形態ではミラー面23として、楕円面鏡を用いたがこれに限られず、例えば放物面鏡を用いても良い。この場合、放物面鏡の特性により試料Wからの光Lを反射すると平行光となるので、図6に示すように、この平行光を光ファイバ321の光入射部321Aに集光させるために凸レンズ314を集光ミラー部24Bと光ファイバ321との間に設けている。
【0052】
加えて、前記実施形態の集光ミラー部は、アルミニウムを用いて成形したものであったが、その他にも、パーマロイ、鉄、珪素鋼板などの電磁シールド材料を用いることができる。このようなものであれば、エネルギ線通路を含めた集光ミラー部は試料直前に至るまで電磁シールドが可能となる。
【0053】
その上、前記実施形態の集光ミラー部に設けたエネルギ線通路を差動排気用アパーチャとしても良い。つまり、生態試料を測定する場合などは、鏡筒部内を高真空に排気しつつ、集光ミラー部及び試料台を設けたチャンバー内は低真空に排気する必要があり、この両室の差圧を保ちながら排気するためのアパーチャとしても機能させるようにしても良い。
【0054】
さらに加えて、カソードルミネッセンス(CL)測定とラマン分光又はフォトルミネッセンス(PL)測定とを行う複合装置の場合、集光ミラー部のミラー面をレーザ光照射用として使用しても良い。
【0055】
また、カソードルミネッセンス(CL)での測定も応力測定に限られず、特定又は複数の波長でのCLによる光に基づいて、単一波長帯の強度像又は波長分布像などを取得し、半導体組成又は結晶成長等の欠陥検査等を行うこともできる。
【0056】
検出装置に関していうと、前記実施形態では分光部及びセンシング部を備えたものであったが、その他にも分光部によって分光せずとも光学フィルタ等により単一の波長域の光のみをセンシング部(検出器)へと導出するようにしても良い。
【0057】
その他、前述した実施形態や変形実施形態の一部又は全部を適宜組み合わせてよいし、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態に係る試料測定装置(光学測定装置)を示す模式的構成図。
【図2】同実施形態における鏡筒本体及び集光ミラー部を主として示す拡大断面図。
【図3】同実施形態における鏡筒本体及び集光ミラー部の部分拡大断面斜視図。
【図4】その他の実施形態における鏡筒本体、集光ミラー部及び対物レンズを示す部分拡大断面図。
【図5】さらに異なる実施形態における鏡筒本体、集光ミラー部及び対物レンズを示す部分拡大断面図。
【図6】本発明のその他の実施形態に係る光学測定装置を示す模式的構成図。
【符号の説明】
【0059】
EB ・・・エネルギ線(電子線)
W ・・・試料
21 ・・・エネルギ線発生部(電子銃)
225 ・・・対物レンズ
23 ・・・ミラー面
24 ・・・鏡筒部
24B ・・・集光ミラー部
24B1・・・エネルギ線通路
24A ・・・鏡筒本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギ線を試料に照射することにより生じる光を測定する試料測定装置であって、
エネルギ線を発生させるエネルギ線発生部と、
前記エネルギ線発生部から発生したエネルギ線を収束して前記試料に照射する対物レンズと、
前記エネルギ線が照射された前記試料から生じる光を集光するミラー面と、を備え、
前記対物レンズの少なくとも一部を、前記ミラー面における前記エネルギ線入射側端部よりも前記試料側に設けていることを特徴とする試料測定装置。
【請求項2】
前記対物レンズ及び前記ミラー面を有する鏡筒部を備え、
前記鏡筒部が、鏡筒本体と、その鏡筒本体に支持される集光ミラー部とを有し、
前記鏡筒本体が、前記対物レンズを備え、前記集光ミラー部が、前記対物レンズによって収束されるエネルギ線を通過させ、そのエネルギ線を前記試料に照射するためのエネルギ線通路と、その通路の軸線上に焦点が設定された前記ミラー面と、前記鏡筒本体の試料側端部が嵌め込まれる凹部とを備え、
前記鏡筒本体の試料側端部を前記凹部に嵌め込むことによって、前記対物レンズの少なくとも一部を、前記ミラー面における前記エネルギ線入射側端部よりも前記試料側に設けていることを特徴とする請求項1記載の試料測定装置。
【請求項3】
前記対物レンズ及び前記ミラー面を有する鏡筒部を備え、
前記鏡筒部が、鏡筒本体と、その鏡筒本体に支持される集光ミラー部とを有し、
前記集光ミラー部に、前記対物レンズを構成する少なくとも1つの電極が形成されていることを特徴とする請求項1記載の試料測定装置。
【請求項4】
前記集光ミラー部が、前記エネルギ線発生部から発生したエネルギ線を通過させ、そのエネルギ線を前記試料に照射するためのエネルギ線通路を有し、そのエネルギ線通路の内壁に前記対物レンズを構成する少なくとも1つの電極が形成されていることを特徴とする請求項3記載の試料測定装置。
【請求項5】
前記集光ミラー部がアルミニウムから成形されており、前記対物レンズのうち接地された電極として機能することを特徴とする請求項2、3又は4記載の試料測定装置。
【請求項6】
エネルギ線を試料に照射することにより生じる光を測定する試料測定装置であって、
エネルギ線発生部からのエネルギ線を収束して前記試料に照射する対物レンズ及び前記試料から生じる光を集光するミラー面を有する鏡筒部を備え、
前記鏡筒部の試料側先端部が、対物レンズを構成する電極と、エネルギ線が照射された試料から生じる光を集光するミラー面とを有することを特徴とする試料測定装置。
【請求項7】
前記鏡筒部が、鏡筒本体と、その鏡筒本体に支持される集光ミラー部とを有し、
前記集光ミラー部に、前記対物レンズを構成する少なくとも1つの電極が形成されていることを特徴とする請求項6記載の試料測定装置。
【請求項8】
前記集光ミラー部が、前記エネルギ線発生部から発生したエネルギ線を通過させ、そのエネルギ線を前記試料に照射するためのエネルギ線通路を有し、そのエネルギ線通路の内壁に前記対物レンズを構成する少なくとも1つの電極が形成されていることを特徴とする請求項7記載の試料測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−322189(P2007−322189A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−150952(P2006−150952)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】