説明

試験ガス生成装置

【課題】試験ガス中の液体の濃度を任意の設定濃度に瞬時に切り替えることができ、設定濃度毎に液体の濃度を一定に維持できると共に、ミスト状態の液体を含む試験ガスを生成することができる試験ガス生成装置を提供する。
【解決手段】液体及びキャリアガスの供給を受け、液体が混合されたキャリアガスを放出する混合部3、4と、混合部を冷却する冷却部10と、混合部から液体が混合されたキャリアガスの供給を受けると共に、希釈ガスの供給を受け、試験ガスを生成する試験ガス生成チャンバ9と、試験ガス生成チャンバを加熱する加熱部16と、液体、キャリアガス及び希釈ガスの供給量、及び加熱部の動作を制御する制御部19と、を備える。試験ガス生成チャンバにおいて、前記液体を気化して、または前記液体をミスト状態で、または前記液体の一部を気化し、残りの部分はミスト状態で希釈ガスと混合することによって、試験ガスを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化触媒の性能を評価する装置等において使用される試験ガスを生成する試験ガス生成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の排出ガスによる大気汚染を軽減するため、日米欧を中心に自動車排出ガス規制が行われており、この規制は段階的に強化される傾向にある。自動車排出ガス規制は、自動車の内燃機関から排出される、窒素酸化物(NO)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、非メタン炭化水素(NMHC)、粒子状物質(PM)等の大気汚染物質の上限量を定めた規制である。
【0003】
自動車排出ガス規制においては、試験モードが定められており、例えば、日本のJC08CモードおよびJC08Hモードや、米国のLA4モード等の試験モードが良く知られている。排出ガスの測定試験は、車両をシャシ・ダイナモメータ上にセットして、規定の試験モードで走行させ、その試験期間中の排出ガス中の大気汚染物質の量を定められた測定法に基づいて測定することによって実行される。
【0004】
また、自動車排出ガス規定をクリアすべく、自動車の内燃機関の排気系には排ガス浄化触媒を備えた排ガス浄化装置が搭載されている。そして、年々強化される自動車排出ガス規制に対応するには、排ガス浄化触媒の性能の向上が不可欠であり、そのため、排ガス浄化触媒の研究・開発がこれまでに行われてきている。
【0005】
排ガス浄化触媒の研究・開発には、排ガス浄化触媒性能評価装置が用いられる。排ガス浄化触媒性能評価装置においては、通常、内燃機関からの排出ガスと同様の成分を含む試験ガスが使用される。試験ガスの生成は、通常、試験ガス生成装置を用いて、CO、CO、NO、NO、HC、N等をそれぞれ独立に流量制御しながら混合して生成した希釈ガスに、水および液体HC等の液体を加熱して気化させたガスを混合することによってなされる。
【0006】
従来の試験ガスの生成装置として、例えば、液体が注入される液体注入孔および液体の気化ガスを希釈するための希釈ガスが注入される希釈ガス注入孔と、液体注入孔から注入された液体が加熱されて気化ガスになる前置室と、前置室を加熱する前置室加熱手段と、気化ガスと希釈ガスを混合して噴射する噴射ノズルと、噴射ノズルを格納するとともに、気化ガスと希釈ガスとが拡散しつつ加熱されて互いに混合し混合ガス(試験ガス)を生成する混合室と、混合室を加熱する混合室加熱手段と、混合室で生成された混合ガス(試験ガス)を供給する混合ガス(試験ガス)供給口と、を有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
この試験ガス生成装置においては、前置室内で液体が加熱されて気化され、気化ガスが噴射ノズルに一定の質量流量で供給される。そして、気化ガスと希釈ガスが噴射ノズルから共に気相で混合室内に噴射され、拡散するうちに一定の混合比で混合される。この場合、混合室は加熱されているので、気化ガスが再冷却されて凝結することはない。したがって、液体および希釈ガスがそれぞれ液体注入孔および希釈ガス注入孔から一定の質量流量で注入されていれば、混合ガス供給口から一定の濃度の混合ガス(試験ガス)が一定の質量流量で供給される。
【0008】
そして、試験ガスが、試験モードで走行する間の車両の排ガス浄化装置に供給される排出ガスと同様の温度および濃度にされて、試験ガス生成装置から、触媒が収容されたガスセル内に導入されるとともに、触媒前後のガス濃度が計測されることによって触媒の性能が評価される。
【0009】
この場合、性能評価の精度を上げるためには、ガスセル内における触媒直前の試験ガスの濃度を、試験モードで走行中の車両の排ガス浄化装置内の触媒直前の排出ガスの濃度変化が正確に再現されるように、変化させることが重要である。ところで、走行中の車両においては、内燃機関の回転数や負荷等の変動に伴い、排ガス浄化装置内の触媒直前の排出ガス濃度は常に著しく変化している。そのため、排ガス浄化触媒の性能評価においては、ガスセル内の触媒直前の試験ガスの濃度を瞬時に任意の濃度に切り替え、かつ設定濃度毎に濃度を一定にすることが必要とされる。
【0010】
しかしながら、上記従来の試験ガス生成装置においては、液体が液体供給源から液体供給管を通じて液体注入孔に注入されるが、前置室の加熱に伴い、熱伝導によって液体供給管がまた加熱される。また、この試験ガス生成装置においては、液体の供給量を変化させると、それに伴って、液体供給管内を流れる液体の流量および流速が変化する。そのため、液体が液体供給管内を流れる間に場所的および時間的にランダムに気化してしまい、液体注入孔に液体を一定の質量流量で注入することができなかった。この液体のランダムな気化は、特に、気化ガスの設定濃度が低く、よって液体供給量が少なく、少量の液体が液体供給管内を低速で流れる場合に著しかった。
その結果、試験ガス中の気化ガス濃度を設定濃度に維持できず、さらには、気化ガス濃度を任意の設定濃度に瞬時に切り替えることができないという問題があった。
【0011】
また、試験モードによっては、車両をコールドスタートさせる場合があるが、コールドスタート時には、排ガス浄化装置内の排ガス浄化触媒に供給される排気ガス中には、水分や未燃HCが含まれている。
【0012】
また、NO吸蔵還元触媒は、流入する排ガスの空燃比がリーンのときにNOを捕捉(吸蔵)する一方、流入する排ガスの空燃比がストイキまたはリッチのときに捕捉(吸蔵)したNOを還元する。そして、NO吸蔵還元触媒を備えた内燃機関の中には、リーンで運転を行い、触媒の排ガス浄化性能が低下した場合に、触媒の上流に設けた噴射ノズルから液体還元剤を噴射して触媒からNOを放出させて、還元浄化を行うものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0013】
また、NO吸蔵還元触媒を備えた内燃機関の中には、触媒の上流に設けた噴射ノズルから尿素水を噴射し、排出ガスと尿素水から生成されたアンモニアを混合して触媒に供給することによって、排出ガスの浄化効率を高めるようにしたものがある(例えば、特許文献3参照)。
【0014】
しかしながら、従来の試験ガス生成装置では、ミスト状態の液体を含んだ試験ガスを生成することができず、そのため、内燃機関のコールドスタート時の排出ガスの状態を正確に再現すること、および、触媒に液体還元剤を噴射するタイプの排ガス浄化装置に供給される排出ガスの状態を正確に再現することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平10−318888号公報
【特許文献2】特開2000−240429号公報
【特許文献3】特開2006−29233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、試験ガス中の液体の濃度を任意の設定濃度に瞬時に切り替えることができ、設定濃度毎に、液体の濃度を一定に維持できるとともに、ミスト状態の液体を含む試験ガスを生成することができる試験ガス生成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この課題を解決すべく、本発明によれば、液体の供給源と、キャリアガスの供給源と、前記液体および前記キャリアガスの供給を受け、前記液体が混合された前記キャリアガスを放出する混合部と、前記液体の供給源から前記液体を前記混合部に供給する第1の導管と、前記第1の導管に設けられた第1の流量制御バルブと、前記キャリアガスの供給源から前記キャリアガスを前記混合部に供給する第2の導管と、前記第2の導管に設けられた第2の流量制御バルブと、前記混合部を冷却する冷却部と、希釈ガスの供給源と、前記混合部から前記液体が混合された前記キャリアガスの供給を受けるとともに、前記希釈ガスの供給を受け、試験ガスを生成する試験ガス生成チャンバと、前記希釈ガスの供給源から前記希釈ガスを前記試験ガス生成チャンバに供給する第3の導管と、前記第3の導管に設けられた第3の流量制御バルブと、前記試験ガス生成チャンバを加熱する加熱部と、前記第1の流量制御バルブ、前記第2の流量制御バルブ、前記第3の流量制御バルブおよび前記加熱部の動作を制御する制御部と、を備えたことにより、前記試験ガス生成チャンバにおいて、前記キャリアガス中の前記液体を気化して、または前記液体をミスト状態で、または前記液体の一部を気化し、残りの部分はミスト状態で前記希釈ガスと混合することによって、前記試験ガスを生成するものであることを特徴とする試験ガス生成装置が提供される。
【0018】
本発明の好ましい実施例によれば、前記混合部は、前記液体の供給を受ける第1の入口と、前記キャリアガスの供給を受ける第2の入口と、前記液体が混合された前記キャリアガスを排出する出口と、を有する混合チャンバと、一端が前記混合チャンバの前記出口に接続され、他端が前記試験ガス生成チャンバの壁を貫通して前記試験ガス生成チャンバ内に突出する混合管と、を備え、前記混合チャンバの前記第1の入口に前記第1の導管が接続され、前記第2の入口に前記第2の導管が接続され、それによって、前記液体が混合された前記キャリアガスが前記混合管の前記他端から前記試験ガス生成チャンバ内に放出される。
【0019】
本発明のさらに別の好ましい実施例によれば、前記混合部は、二流体ノズルと、一端が前記二流体ノズルの噴射口に接続され、他端が前記試験ガス生成チャンバの壁を貫通して前記試験ガス生成チャンバ内に突出する混合管と、を備え、前記二流体ノズルの液体導入口に前記第1の導管が接続される一方、前記二流体ノズルの気体導入口に前記第2の導管が接続され、それによって、前記液体が混合された前記キャリアガスが前記混合管の前記他端から前記試験ガス生成チャンバ内に放出される。
【0020】
本発明のさらに別の好ましい実施例によれば、前記混合部は、一端の開口が閉じられ、他端が先窄まりになり、前記他端の開口が二流体ノズルの形態を有する二重管と、一端が前記二重管の前記他端の開口に接続され、他端が前記試験ガス生成チャンバの壁を貫通して前記試験ガス生成チャンバ内に突出する混合管と、を備え、前記二重管の内管に前記第1の導管が接続される一方、前記二重管の外管には前記第2の導管が接続され、それによって、前記液体が混合された前記キャリアガスが前記混合管の前記他端から前記試験ガス生成チャンバ内に放出される。
【0021】
本発明の別の好ましい実施例によれば、前記混合部は、一端が二叉に分岐した混合管からなっており、前記混合管の他端が前記試験ガス生成チャンバの壁を貫通して前記試験ガス生成チャンバ内に突出し、前記混合管の前記一端の一方の分岐路に前記第1の導管が接続され、前記混合管の前記一端の他方の分岐路に前記第2の導管が接続され、それによって、前記液体が混合された前記キャリアガスが前記混合管の前記他端から前記試験ガス生成チャンバ内に放出される。
【0022】
本発明のさらに別の好ましい実施例によれば、前記第3の導管は、前記試験ガス生成チャンバの壁に形成された希釈ガス供給口に接続されており、前記混合管の中心軸が前記希釈ガス供給口の中心軸と鋭角または90°をなすとともに、前記混合管の他端が、前記希釈ガス供給口よりも前記試験ガス生成チャンバの内部にのびている。
【0023】
本発明のさらに別の好ましい実施例によれば、前記混合部は、前記試験ガス生成チャンバの内壁面に取付けられた二流体ノズルからなり、前記二流体ノズルの液体導入口に前記第1の導管が接続される一方、前記二流体ノズルの気体導入口に前記第2の導管が接続され、それによって、前記液体が混合された前記キャリアガスが前記二流体ノズルの噴射口から前記試験ガス生成チャンバ内に放出される。
【0024】
本発明のさらに別の好ましい実施例によれば、前記試験ガス生成チャンバが、排ガス浄化触媒性能評価装置のガスセルを形成し、前記試験ガス生成チャンバ内における、前記液体が混合された前記キャリアガスの放出口および前記希釈ガスの放出口から下流側に間隔をあけた位置に、排ガス浄化触媒が収容され、前記試験ガス生成チャンバの壁の前記排ガス浄化触媒よりも下流側の領域に、試験ガス排出口が設けられている。
【0025】
本発明のさらに別の好ましい実施例によれば、前記加熱部が赤外線炉からなっている。
本発明のさらに別の好ましい実施例によれば、前記キャリアガスの供給源は前記希釈ガスの供給源からなり、前記第2の導管が前記第3の導管に分岐接続されている。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、試験ガス中の気化した液体の設定濃度の変更によって、試験ガス生成チャンバへの液体の供給量が変化しても、液体をキャリアガスとともに常に一定の速度で試験ガス生成チャンバまで輸送することができる。そして、液体の供給量の多少にかかわらず、液体を、輸送中に気化させることなく、試験ガス生成チャンバに供給することができる。それによって、試験ガス中の液体の濃度を任意の設定濃度に任意のタイミングで瞬時に切り替えることができ、また、設定濃度毎に液体の濃度を一定に維持することができる。さらには、試験ガス生成チャンバ内の温度を制御することによって、試験ガス生成チャンバ内において、液体を気化させ、または液体をミスト状態で、または液体の一部を気化させ、残りの部分はミスト状態で希釈ガスと混合し、試験ガスを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の1実施例による試験ガス生成装置の概略構成を示す縦断面図である。
【図2】図1に示された試験ガス生成装置の混合部の変形例を示す縦断面図である。
【図3】図1に示された試験ガス生成装置の混合部の変形例を示す縦断面図である。
【図4】図1に示された試験ガス生成装置の混合部の変形例を示す縦断面図である。
【図5】図1に示された試験ガス生成装置の混合部の変形例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施例について説明する。図1は、本発明の1実施例による試験ガス生成装置の概略構成を示す縦断面図である。
図1を参照して、本発明による試験ガス生成装置は、液体の供給源1と、キャリアガスの供給源2と、液体およびキャリアガスの供給を受け、液体が混合されたキャリアガスを放出する混合部を備えている。キャリアガスとしては、窒素を使用することが好ましいが、後述の希釈ガス、あるいは希釈ガスの1つの成分ガスを使用してもよい。
【0029】
混合部は、この実施例では、液体の供給を受ける第1の入口3aと、キャリアガスの供給を受ける第2の入口3bと、液体が混合されたキャリアガスを排出する出口3cとを有する混合チャンバ3を備えている。そして、混合チャンバ3の第1の入口3aは、第1の導管5を通じて液体の供給源1に接続され、第2の入口3bは、第2の導管6を通じてキャリアガスの供給源2に接続されている。第1の導管5および第2の導管6には、それぞれ、第1の流量制御バルブ7および第2の流量制御バルブ8が配置されている。
混合部は、さらに、一端4aが混合チャンバの出口3cに接続された混合管4を備えている。
【0030】
本発明による試験ガス生成装置は、また、希釈ガスの供給源11と、混合部から液体が混合されたキャリアガスの供給を受けるとともに、希釈ガスの供給を受け、試験ガスを生成する試験ガス生成チャンバ9と、を備えている。
試験ガス生成チャンバ9には希釈ガス供給口14が形成され、希釈ガス供給口14は、第3の導管12を通じて希釈ガスの供給源11に接続されている。第3の導管12には第3の流量制御バルブ13が配置されている。
【0031】
第3の導管12には、必要に応じて、攪拌器15が備えられる。攪拌器15としては、管内が螺旋状に形成されたミキシング管や、内部に旋回流発生用フィンを備えた管が使用され得る。それによって、希釈ガスと気化した液体との混合を早め、濃度分布の安定した試験ガスを迅速に形成することが可能になる。
【0032】
図示の実施例では、キャリアガスの供給源2および希釈ガスの供給源11は独立に設けられているが、キャリアガスとして希釈ガスを使用する場合には、希釈ガスの供給源11をキャリアガスの供給源としても使用し、第2の導管6を第3の導管12に分岐接続する構成も可能である。
【0033】
また、混合部の混合管4の他端は、試験ガス生成チャンバ9の壁を貫通し、試験ガス生成チャンバ9内に突出している。この場合、図1に示されるように、混合管4の中心軸が試験ガス生成チャンバ9の希釈ガス供給口14の中心軸と鋭角または90°をなすとともに、混合管4の他端4bが、希釈ガス供給口14よりも試験ガス生成チャンバ9の内部にのびていることが好ましい。
【0034】
本発明による試験ガス生成装置は、また、混合部を冷却する冷却部10と、試験ガス生成チャンバ9を加熱する加熱部16と、を備えている。
冷却部10は、試験ガス生成チャンバ9の外部であって、混合部の試験ガス生成チャンバ9との接続部の近傍領域を冷却することが好ましく、この実施例では、試験ガス生成チャンバ9に近接する混合管4部分を包囲するように配置されている。
冷却部10の冷却作用により、試験ガス生成チャンバ9からの熱伝導よって混合部が加熱されることが防止され、それによって、液体が混合部において気化することが防止される。
また、試験ガス生成チャンバ9からの熱伝導を抑制すべく、試験ガス生成チャンバ9内に突出する混合管4部分の、試験ガス生成チャンバ9の内部空間との接触面積が小さい方が好ましく、よって、小径の混合管4を用いることが好ましい。
【0035】
加熱部16は、赤外線炉からなっていることが好ましい。それによって、試験ガス生成チャンバ9内の温度を高速で制御することができる。
本発明による試験ガス生成装置は、また、第1の流量制御バルブ7、第2の流量制御バルブ8、第3の流量制御バルブ13、および加熱部16の動作を制御する制御部19を備えている。なお、冷却部10は、制御部19によって制御されるようになっていてもよいし、制御部19とは独立に動作するようになっていてもよい。
【0036】
試験ガス生成チャンバ9は、この実施例では、排ガス浄化触媒性能評価装置のガスセルを形成している。そして、試験ガス生成チャンバ9内における、希釈ガス供給口14および混合管4の他端4bから下流側に間隔をあけた位置に、性能評価すべき排ガス浄化触媒17が配置される。この場合、排ガス浄化触媒17は、予め外部でホルダー18に取付けられた後、ホルダー18に保持された状態で、試験ガス生成チャンバ9内に挿入されている。
また、試験ガス生成チャンバ9の壁の排ガス浄化触媒17よりも下流側の領域に、試験ガス排出口9aが設けられている。
【0037】
上記の構成において、液体の供給源1から液体が第1の導管5を通じて混合チャンバ3に供給され、また、キャリアガスの供給源2からキャリアガスが第2の導管6を通じて混合チャンバ3に供給される。そして、第1の流量制御バルブ7および第2の流量制御バルブ8が制御部19によって制御され、試験ガス中の液体の濃度が設定濃度になるように、第1の流量制御バルブ7によって液体の供給量が調節されると共に、液体が混合されたキャリアガスが混合管4中を常に一定の速度で流れるように、第2の流量制御バルブ8によって、キャリアガスの供給量が調節される。また、冷却部10が作動して、混合管4を冷却する。
【0038】
さらに、加熱部16が作動して、試験ガス生成チャンバ9を加熱し、また、希釈ガスの供給源11から希釈ガスが第3の導管12を通じて試験ガス生成チャンバ9内に供給される。そして、第3の流量制御バルブ13が制御部19によって制御され、試験ガス中の希釈ガスの濃度が設定濃度になるように、第3の流量制御バルブ13によって希釈ガスの供給量が調節される。
こうして、液体が混合されたキャリアガスが、混合管4を通じて試験ガス生成チャンバ9に、混合管4内で気化することなく供給される。そして、制御部19によって試験ガス生成チャンバ9内の温度が制御されることにより、試験ガス生成チャンバ9内の温度に応じて、試験ガス生成チャンバ9内において、液体が気化されて希釈ガスと混合されて試験ガスが生成され、あるいは、液体がミスト状態で希釈ガスと混合されて試験ガスが生成され、あるいは、液体の一部が気化され、残りの部分がミスト状態で希釈ガスと混合されて試験ガスが生成される。
【0039】
本発明の試験ガス生成装置によれば、液体の供給量の多少にかかわらず、液体を、キャリアガスと共に常に一定の速度で、気化させることなく試験ガス生成チャンバまで輸送し、試験ガス生成チャンバに供給することができる。それによって、試験ガス中の液体の濃度を任意の設定濃度に任意のタイミングで瞬時に切り替えることができ、また、設定濃度毎に液体の濃度を一定に維持することができる。さらには、試験ガス生成チャンバ内の温度を制御することによって、試験ガス生成チャンバ内において、液体を気化させ、または液体をミスト状態で、または液体の一部を気化させ、残りの部分はミスト状態で希釈ガスと混合し、試験ガスを生成することができる。
【0040】
そして、本発明の試験ガス生成装置の試験ガス生成チャンバを、排ガス浄化触媒性能評価装置のガスセルとした場合には、試験ガスの濃度を、コールドスタート時および走行中の車両の排ガス浄化装置内の触媒の直前における排出ガスの濃度変化が正確に再現されるように、変化させることができる。
【0041】
以上、本発明の構成を好ましい1実施例に基づいて説明したが、本発明の構成は上述の実施例に限定されず、本願の特許請求の範囲に記載の構成の範囲内で種々の変形例を創作することができる。
【0042】
図2Aおよび図2Bは、混合部の変形例を示した縦断面図である。なお、図2Aおよび図2B中、図1に示されたものと同じ構成要素には同一番号を付して、詳細な説明は省略する。
図2Aを参照して、この変形例では、混合部は、二流体ノズル20と、一端4aが二流体ノズルの噴射口20cに接続された混合管4と、を備えている。混合管4の他端4bは、図1の実施例と同様に、試験ガス生成チャンバ9の壁を貫通して試験ガス生成チャンバ9内に突出している。
【0043】
そして、二流体ノズル20の液体導入口20aに第1の導管5が接続される一方、二流体ノズル20の気体導入口20bに第2の導管6が接続される。それによって、液体が混合されたキャリアガスが混合管4の他端4bから試験ガス生成チャンバ9内に放出される。
【0044】
この変形例では、二流体ノズル20を用いて液体をキャリアガスに混合するので、液体の供給量が少ない場合であっても、ノズル20の液体供給管路の出口において、液体が表面張力によって液滴になることが防止され、それによって、試験ガス中における液体の濃度の制御を正確に行うことができる。
【0045】
図2Bに示された変形例は、図2Aに示された変形例と、二流体ノズルの構成が異なる。すなわち、図2Aに示された変形例では、液体と気体(キャリアガス)をノズルの外部で混合するタイプの二流体ノズルが用いられるのに対し、図2Bに示された変形例では、液体と気体(キャリアガス)をノズル内部で混合するタイプの二流体ノズルが用いられる。
【0046】
図2Bに示された変形例では、二流体ノズル20の噴射口20cにキャップ21が取付けられ、キャップ21の先端部には、噴射口21aが形成されている。そして、キャップ21の内部で液体とキャリアガスが混合され、キャップ21の噴出口21aから、液体が混合されたキャリアガスが混合管4内に放出される。
この変形例においても、図2Aに示された変形例と同様に、液体の供給量が少ない場合であっても、二流体ノズル20の液体供給管路の出口において、液体が表面張力によって液滴になることが防止され、それによって、試験ガス中における液体の濃度の制御を正確に行うことができる。
【0047】
図3は、混合部のさらに別の変形例を示した縦断面図である。なお、図3中、図1に示されたものと同じ構成要素には同一番号を付して、詳細な説明は省略する。
図3を参照して、この変形例では、混合部は、一端の開口が閉じられ、他端が先窄まりになり、他端の開口22cが二流体ノズルの形態を有する二重管22と、一端4aが二重管22の他端の開口22cに接続された混合管4、とを備えている。混合管4の他端4bは、図1に示された実施例と同様に、試験ガス生成チャンバ9の壁を貫通して試験ガス生成チャンバ9内に突出している。
【0048】
そして、二重管22の内管22aに第1の導管5が接続される一方、二重管22の外管22bには第2の導管6が接続される。それによって、液体が混合されたキャリアガスが混合管4の他端4bから試験ガス生成チャンバ9内に放出される。
この変形例においても、図2に示された変形例と同様に、二流体ノズルを用いて液体をキャリアガスに混合するので、液体の供給量が少ない場合であっても、二重管21の内管22aの出口において、液体が表面張力によって液滴になることが防止され、それによって、試験ガス中における液体の濃度の制御を正確に行うことができる。
【0049】
図4は、混合部のさらに別の変形例を示した縦断面図である。なお、図4中、図1に示されたものと同じ構成要素には同一番号を付して、詳細な説明は省略する。
図4を参照して、この変形例では、混合部は、一端4aが二叉に分岐した混合管4からなっている。混合管4の他端4bは、図1に示された実施例と同様に、試験ガス生成チャンバ9の壁を貫通して試験ガス生成チャンバ9内に突出している。
【0050】
そして、混合管4の一端4aの一方の分岐路4cに第1の導管5が接続され、混合管4の一端4aの他方の分岐路4dに第2の導管6が接続される。それによって、液体が混合されたキャリアガスが混合管4の他端4bから試験ガス生成チャンバ9内に放出される。
【0051】
図5は、混合部のさらに別の変形例を示した縦断面図である。なお、図5中、図1に示されたものと同じ構成要素には同一番号を付して、詳細な説明は省略する。
図5を参照して、この変形例では、混合部は、試験ガス生成チャンバ9の内壁面に取付けられた二流体ノズル23からなり、二流体ノズル23の液体導入口23aに第1の導管5が接続される一方、二流体ノズル22の気体導入口23bに第2の導管6が接続される。それによって、液体が混合されたキャリアガスが二流体ノズル23の噴射口23cから試験ガス生成チャンバ9内に放出される。
【0052】
この変形例においても、二流体ノズル23を用いて液体をキャリアガスに混合するので、液体の供給量が少ない場合であっても、ノズル23の液体供給管路の出口において、液体が表面張力によって液滴になることが防止され、それによって、試験ガス中における液体の濃度の制御を正確に行うことができる。
なお、この変形例では、ノズルの外部で液体と気体を混合するタイプの二流体ノズルが用いられているが、その代わりに、ノズルの内部で液体と気体を混合するタイプの二流体ノズルを用いることもできる。
【符号の説明】
【0053】
1 液体の供給源
2 キャリアガスの供給源
3 混合チャンバ
3a 第1の入口
3b 第2の入口
3c 出口
4 混合管
4a 一端
4b 他端
5 第1の導管
6 第2の導管
7 第1の流量制御バルブ
8 第2の流量制御バルブ
9 試験ガス生成チャンバ
9a 試験ガス排出口
10 冷却部
11 希釈ガスの供給源
12 第3の導管
13 第3の流量制御バルブ
14 希釈ガス供給口
15 攪拌器
16 加熱部
17 排ガス浄化触媒
18 ホルダー
19 制御部
20 二流体ノズル
20a 液体導入口
20b 気体導入口
20c 噴射口
21 キャップ
21a 噴射口
22 二重管
22a 内管
22b 外管
22c 他端開口
23 二流体ノズル
23a 液体導入口
23b 気体導入口
23c 噴射口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の供給源と、
キャリアガスの供給源と、
前記液体および前記キャリアガスの供給を受け、前記液体が混合された前記キャリアガスを放出する混合部と、
前記液体の供給源から前記液体を前記混合部に供給する第1の導管と、
前記第1の導管に設けられた第1の流量制御バルブと、
前記キャリアガスの供給源から前記キャリアガスを前記混合部に供給する第2の導管と、
前記第2の導管に設けられた第2の流量制御バルブと、
前記混合部を冷却する冷却部と、
希釈ガスの供給源と、
前記混合部から前記液体が混合された前記キャリアガスの供給を受けるとともに、前記希釈ガスの供給を受け、試験ガスを生成する試験ガス生成チャンバと、
前記希釈ガスの供給源から前記希釈ガスを前記試験ガス生成チャンバに供給する第3の導管と、
前記第3の導管に設けられた第3の流量制御バルブと、
前記試験ガス生成チャンバを加熱する加熱部と、
前記第1の流量制御バルブ、前記第2の流量制御バルブ、前記第3の流量制御バルブおよび前記加熱部の動作を制御する制御部と、を備えたことにより、前記試験ガス生成チャンバにおいて、前記液体を気化して、または前記液体をミスト状態で、または前記液体の一部を気化し、残りの部分はミスト状態で前記希釈ガスと混合することによって、前記試験ガスを生成するものであることを特徴とする試験ガス生成装置。
【請求項2】
前記混合部は、
前記液体の供給を受ける第1の入口と、前記キャリアガスの供給を受ける第2の入口と、前記液体が混合された前記キャリアガスを排出する出口と、を有する混合チャンバと、
一端が前記混合チャンバの前記出口に接続され、他端が前記試験ガス生成チャンバの壁を貫通して前記試験ガス生成チャンバ内に突出する混合管と、を備え、
前記混合チャンバの前記第1の入口に前記第1の導管が接続され、前記第2の入口に前記第2の導管が接続され、それによって、前記液体が混合された前記キャリアガスが前記混合管の前記他端から前記試験ガス生成チャンバ内に放出されることを特徴とする請求項1に記載の試験ガス生成装置。
【請求項3】
前記混合部は、
二流体ノズルと、
一端が前記二流体ノズルの噴射口に接続され、他端が前記試験ガス生成チャンバの壁を貫通して前記試験ガス生成チャンバ内に突出する混合管と、を備え、
前記二流体ノズルの液体導入口に前記第1の導管が接続される一方、前記二流体ノズルの気体導入口に前記第2の導管が接続され、それによって、前記液体が混合された前記キャリアガスが前記混合管の前記他端から前記試験ガス生成チャンバ内に放出されることを特徴とする請求項1に記載の試験ガス生成装置。
【請求項4】
前記混合部は、
一端の開口が閉じられ、他端が先窄まりになり、前記他端の開口が二流体ノズルの形態を有する二重管と、
一端が前記二重管の前記他端の開口に接続され、他端が前記試験ガス生成チャンバの壁を貫通して前記試験ガス生成チャンバ内に突出する混合管と、を備え、
前記二重管の内管に前記第1の導管が接続される一方、前記二重管の外管には前記第2の導管が接続され、それによって、前記液体が混合された前記キャリアガスが前記混合管の前記他端から前記試験ガス生成チャンバ内に放出されることを特徴とする請求項1に記載の試験ガス生成装置。
【請求項5】
前記混合部は、一端が二叉に分岐した混合管からなっており、前記混合管の他端が前記試験ガス生成チャンバの壁を貫通して前記試験ガス生成チャンバ内に突出し、前記混合管の前記一端の一方の分岐路に前記第1の導管が接続され、前記混合管の前記一端の他方の分岐路に前記第2の導管が接続され、それによって、前記液体が混合された前記キャリアガスが前記混合管の前記他端から前記試験ガス生成チャンバ内に放出されることを特徴とする請求項1に記載の試験ガス生成装置。
【請求項6】
前記第3の導管は、前記試験ガス生成チャンバの壁に形成された希釈ガス供給口に接続されており、前記混合管の中心軸が前記希釈ガス供給口の中心軸と鋭角または90°をなすとともに、前記混合管の他端が、前記希釈ガス供給口よりも前記試験ガス生成チャンバの内部にのびていることを特徴とする請求項2〜請求項5のいずれかに記載の試験ガス生成装置。
【請求項7】
前記混合部は、前記試験ガス生成チャンバの内壁面に取付けられた二流体ノズルからなり、前記二流体ノズルの液体導入口に前記第1の導管が接続される一方、前記二流体ノズルの気体導入口に前記第2の導管が接続され、それによって、前記液体が混合された前記キャリアガスが前記二流体ノズルの噴射口から前記試験ガス生成チャンバ内に放出されることを特徴とする請求項1に記載の試験ガス生成装置。
【請求項8】
前記試験ガス生成チャンバが、排ガス浄化触媒性能評価装置のガスセルを形成し、前記試験ガス生成チャンバ内における、前記液体が混合された前記キャリアガスの放出口および前記希釈ガスの放出口から下流側に間隔をあけた位置に、排ガス浄化触媒が収容され、前記試験ガス生成チャンバの壁の前記排ガス浄化触媒よりも下流側の領域に、試験ガス排出口が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の試験ガス生成装置。
【請求項9】
前記加熱部が赤外線炉からなっていることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の試験ガス形成装置。
【請求項10】
前記キャリアガスの供給源は前記希釈ガスの供給源からなり、前記第2の導管が前記第3の導管に分岐接続されていることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載の試験ガス生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−88306(P2013−88306A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229727(P2011−229727)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【特許番号】特許第4925492号(P4925492)
【特許公報発行日】平成24年4月25日(2012.4.25)
【出願人】(594207610)株式会社ベスト測器 (13)
【Fターム(参考)】