説明

試験シート、物体診断装置および方法並びにプログラム

【課題】手軽かつ正確に肌等の物体の状態を知ることができるようにする。
【解決手段】物体に貼付されて使用される試験シートであって、片面に粘着層3を有する基材フィルム2と、基材フィルム2の粘着層3側の面に設けられた、肌等の物体表面から蒸散する物質量に応じて色が変化する試薬が設けられた試薬層4と、基材フィルム2の粘着層3側の面とは反対側の面に設けられた、試験シートを貼付した物体を撮影することにより取得された画像の色を校正するための第1の校正用チャート5および画像の明るさを校正するための第2の校正用チャート6により試験シート1を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間の肌等の物体の状態を計測するのに適した試験シート、この試験シートを用いた物体診断装置および方法並びに物体診断方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧品販売店やエステティックサロンには、顧客の肌の状態を計測するための装置が設置されており、このような装置により顧客の顔を撮影することにより取得した画像を用いて、顔のシミ、シワ、毛穴および肌の色等の情報を取得し、その情報を用いて適切な化粧品の販売や施術を行っている。このような顔の状態を計測するための装置としては、例えば特許文献1に記載されたものが提案されている。
【0003】
また、肌の水分量を計測するためのセンサも提案されている(特許文献2参照)。このようなセンサは肌に接触させる部分を有し、肌の抵抗を測定することにより肌の水分量を推定するものである。
【0004】
また、肌に貼付することにより肌の表面から蒸散される水分量を計測するための試験シートが提案されている。このような試験シートには、塩化コバルトのように水分量により色が変化する試薬が設けられており、試薬の色の変化により肌の水分量をチェックすることができるものである。また、皮脂や肌のphを計測する試薬を用いた試験シートも提案されている(特許文献3,4参照)。
【特許文献1】特開2004−302424号公報
【特許文献2】特開2003−169788号公報
【特許文献3】特開2004−236794号公報
【特許文献4】特開2005−179314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、顔の状態を計測するための装置は非常に大がかりで高価なものであるため、個人で所有することが難しく、顔の状態を計測するためには装置が設置してある販売店やエステティックサロンに出かける必要がある。また、外光の影響をできるだけ少なくする必要があることから、無理な体勢をとって顔の周囲を遮蔽して撮影を行う必要がある。さらに、水分量等を測定するためには、特許文献2に記載の装置を別途用意する必要がある。
【0006】
また、水分量を計測する装置も高価であるため個人で所有することが難しく、水分量を測定するためにはそのような装置を有している販売店やエステティックサロンに出かける必要がある。さらに、上述した試験シートは顔に貼付することにより手軽に水分量等を計測できるが、色の変化を見るのみであるため、水分量等を正確に測定することができない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、手軽かつ正確に肌等の物体の状態を知ることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による試験シートは、物体に貼付されて使用される試験シートであって、
片面に粘着層を有する基材フィルムと、
前記基材フィルムの前記粘着層側の面に設けられた、前記物体表面から蒸散する物質量に応じて色が変化する試薬が設けられた試薬層と、
前記基材フィルムの前記粘着層側の面とは反対側の面に設けられた、前記試験シートを貼付した前記物体を撮影することにより取得された画像の色を校正するための第1の校正用チャートと、
前記画像の明るさを校正するための第2の校正用チャートとを備えてなることを特徴とするものである。
【0009】
試薬としては、水分量を測定するための塩化コバルト、phを測定するためのBCP(ブロムクレゾールパープル)、MR(メチルレッド)、CRP(クロールフェノールレッド)、PP(フェノールパープル)等を用いることができる。
【0010】
第1の校正用チャートとしては、試薬の色の変化を段階的に表したカラーチャートを用いることができる。また、第1の校正用チャートにおける試薬の色の変化に対応して、実際の物質量をあらかじめ測定して保存しておくことが好ましい。
【0011】
第2の校正用チャートとしては、明るさを段階的に変化させたグレーのチャートを用いることができる。
【0012】
なお、本発明による試験シートにおいては、前記基材フイルムの屈折率が前記物体表面と略等しい材料からなるものとしてもよい。
【0013】
「屈折率が物体表面と略等しい材料」としては、例えば物体を人物の肌とした場合、TAC(トリアセチルセルロース)等を用いることができる。
【0014】
また、本発明による試験シートにおいては、前記基材フイルムが前記物体の表面特性と略等しい表面特性を有するものとしてもよい。
【0015】
「物体の表面特性と略等しい表面特性を有する」ものとするためには、例えば物体が肌である場合、肌の肌理と同じピッチおよび深さを有するように、基材フイルムの表面を加工すればよい。具体的には、物体の型を取り、その型を基材フイルムの材料に押し当てることにより、基材フイルムの表面特性を肌の表面特性と略等しいものとすることができる。
【0016】
本発明による物体診断装置は、本発明による試験シートがその一部分に貼付された物体の画像を取得する画像取得手段と、
前記画像に含まれる前記第1および前記第2の校正用チャートに基づいて、前記画像の色および明るさを校正して処理済み画像を得る画像処理手段と、
前記処理済み画像に含まれる前記試薬の色から前記物体表面から蒸散する物質量を測定する物質量測定手段と、
前記処理済み画像から前記物体表面の情報を取得する表面情報取得手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0017】
なお、本発明による物体診断装置においては、前記物質量および前記物体表面の情報をデータベースに保存する保存手段をさらに備えるものとしてもよい。
【0018】
「物体表面の情報」としては、物体の表面のみならず、可視光が届く範囲までにおいて得られる情報を物体表面から得られる情報も含む。
【0019】
本発明による物体診断方法は、本発明による試験シートがその一部分に貼付された物体の画像を取得し、
前記画像に含まれる前記第1および前記第2の校正用チャートに基づいて、前記画像の色および明るさを校正して処理済み画像を得、
前記処理済み画像に含まれる前記試薬の色から前記物体表面から蒸散する物質量を測定し、
前記処理済み画像から前記物体表面の情報を取得することを特徴とするものである。
【0020】
なお、本発明による物体診断方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして提供してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の試験シートは、物体表面から蒸散する物質量に応じて色が変化する試薬が設けられた試薬層と、試験シートを貼付した物体を撮影することにより取得された画像の色を校正するための第1の校正用チャートと、この画像の明るさを校正するための第2の校正用チャートとを備えてなるため、試験シートを物体表面に貼付し、それを撮影して取得した画像において、画像の色を第1の校正用チャートを用いて校正することができる。また、画像の明るさを第2の校正用チャートを用いて校正することができる。このため、試薬の色および物体の明るさを撮影時における外光に影響されないものとすることができ、その結果、物体表面から蒸散する物質量および物体表面の情報を同時にかつ正確に取得することができる。
【0022】
この際、第1の校正用チャートにおける試薬の色の変化に対応させて実際の物質量をあらかじめ測定して保存しておくことにより、定量的な物質量を知ることができる。
【0023】
また、本発明の物体診断装置および方法によれば、本発明の試験シートを物体の一部分に貼付して物体を撮影することにより得られた画像を取得し、第1および第2の校正用チャートに基づいて画像の色および明るさが校正される。そして、処理済み画像に含まれる試薬の色から物体表面から蒸散する物質量が測定され、処理済み画像における物体の部分から物体表面の情報が取得される。このため、試薬の色および物体の明るさを撮影時における外光に影響されないものとすることができ、その結果、物体表面から蒸散する物質量および物体表面の情報を同時にかつ正確に取得することができる。
【0024】
また、物質量および物体表面の情報を保存することにより、様々な物体についての物質量および物体表面の情報を得ることができる。また、同一の物体についての物質量および物体表面の情報を関連づけて保存することにより、同一の物体についての物質量および物体表面の情報の経時変化を知ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の実施形態による試験シートの構成を示す平面図、図2は図1におけるI−I線断面図である。図1および図2に示すように、本発明の実施形態による試験シート1は、透明の基材フィルム2の下面に肌に貼付するための粘着層3が設けられており、粘着層3の下面には、肌表面から蒸散する水分量に応じて色が変化する塩化コバルトを試薬として含有させた塩化コバルト紙からなる試薬層4が設けられている。また、基材フィルム2の上面には、後述するように取得された画像の色を校正するための第1の校正用チャート5と、画像の明るさを校正するための第2の校正用チャート6とが設けられている。なお、試薬層4の下面には疎水性の不織布7が積層されている。
【0026】
基材フィルム2は、肌の表面と略等しい屈折率を有するトリアセチルセルロースからなるものであるが、ポリオレフィン、ポリプロピレンおよびポリエステル等の他の樹脂であってもよい。
【0027】
塩化コバルト紙は、吸収した水分量に応じてその色が変色する。具体的には、吸収する水分量が多くなるにつれて青から淡赤色に変化する。このため、肌に貼付した塩化コバルト紙の色を第1の校正用チャート5と比較することにより、肌表面から蒸散する水分量を測定することができる。
【0028】
なお、試薬層4に用いる試薬として塩化コバルトを用いることにより肌の水分量を測定できるが、試薬を変更することにより、肌のphや皮脂量を測定することも可能である。
【0029】
第1の校正用チャート5は、例えば塩化コバルト紙の色の変化に対応した、青、薄い肌色および淡赤色の3色の色領域5A〜5Cが配列されたカラーチャートである。具体的には、色領域5Aは塩化コバルトの無水塩に近い青色、色領域5Bは塩化コバルトが若干吸湿したときの薄い肌色、色領域5Cは塩化コバルトが完全に吸湿したときの淡赤色となっている。
【0030】
第2の校正用チャート6は、肌の明るさの変化に応じて、3段階に明るさが異なるグレー領域6A〜6Cが配列されたグレーのチャートである。
【0031】
また、試験シート1の表面にはバーコード8が設けられており、このバーコード8を読み取ることにより、試験シート1に使用されている試薬の種類を特定することができる。
【0032】
ここで、本実施形態においては、基材フィルム2の表面を、図3に示すように、肌と同様の肌理を有するように形成してもよい。具体的には、肌の型を取り、トリアセチルセルロースをシート状に成形する際にその型を押し当てることにより、基材フィルム2の表面を肌と同様の肌理を有するように形成することができる。
【0033】
本実施形態による試験シート1は、図4に示すように、顔の水分量を測定しようとするユーザの顔に貼付されて使用される。なお、図4においては額および頬に試験シート1を貼付した状態を示している。そして、試験シート1を顔に貼付した後、ユーザはデジタルカメラを用いて自分の顔を撮影する。
【0034】
ここで、図5(a)に示すように、デジタルカメラ10の撮影レンズが設けられている側に、撮影枠11が付与された自分撮り用のミラー12を設けることが好ましい。これにより、ユーザはミラー12を見ながらミラー12の撮影枠11に自分の顔が収まるように撮影を行うことができ、その結果、顔の全体が含まれた所望とするサイズを有する顔の画像を得ることができる。
【0035】
また、図5(b)に示すように、撮影枠14が付与された自分撮り用の光透過型のミラー15を有するスタンド16を用意し、スタンド16にデジタルカメラ10をセットし、ミラー15の撮影枠14に自分の顔が収まるように撮影を行うようにしてもよい。これにより、顔の全体が含まれた所望とするサイズを有する顔の画像を得ることができる。
【0036】
次いで、このように撮影を行うことにより取得した画像を用いて肌の診断を行う肌診断装置の実施形態について説明する。図6は本発明の実施形態による肌診断装置の構成を示す概略ブロック図である。図6に示すように本実施形態による肌診断装置20は、試験シート1を顔に貼付した状態での顔の撮影により取得した画像を装置20に取り込むための画像取込部21と、取り込んだ画像に対して所定の画像処理を施して処理済み画像を取得する画像処理部22と、処理済み画像に基づいて肌表面から蒸散する水分量を測定する水分量測定部23と、処理済み画像に基づいて肌表面の情報を取得する表面情報取得部24と、各種情報を記憶するメモリ25と、装置20への各種情報の入出力を行うネットワークと接続された入出力部26とを備え、これらがバス27により接続されている。なお、本実施形態においては取得された処理済み画像の各画素はRGB各色の信号値を有する。ここで、色信号値は反射濃度を表す信号値(すなわちRGBがそれぞれ最大値のときに黒となる)であるものとする。
【0037】
画像取込部21は、デジタルカメラ10のメモリカードに記録された画像を読み出すための公知のインターフェースからなる。
【0038】
画像処理部22は、画像取込部21が取り込んだ画像に対して、まずデジタルカメラ10の特性を補償するための処理を施す。これはデジタルカメラの機種に応じて、色再現特性が異なることから、取得された画像のデジタルカメラの機種間における色再現特性の差異をなくすための処理である。
【0039】
ここで、試験シート1における第1の校正用チャート5の色領域5A〜5Cの色はあらかじめ分かっており、本実施形態においては各色領域5A〜5CのRGB各色の値がメモリ25に記憶されている。画像処理部22は、画像に含まれる各色領域5A〜5Cの色がメモリ25に記憶された各色領域5A〜5Cの本来の色と一致するように、画像に対して色変換処理を施すことにより、画像の色を校正する。
【0040】
また、試験シート1における第2の校正用チャート6のグレー領域6A〜6Cの明るさはあらかじめ分かっており、本実施形態においては各グレー域6A〜6CのRGB各色の値がメモリ25に記憶されている。画像処理部22は、画像に含まれる各グレー領域6A〜6Cの明るさがメモリ25に記憶された各グレー領域6A〜6Cの本来の明るさと一致するように、画像に対して明るさ変換処理を施すことにより、画像の明るさを校正する。
【0041】
以上の処理により、画像処理部22は処理済み画像を取得する。
【0042】
水分量測定部23は、処理済み画像における試薬層4に対応する領域(以下試薬領域とする)の色に基づいて、肌から蒸散した水分量を測定する。ここで、本実施形態においては、メモリ25に第1の校正用チャート5の色領域5A〜5Cの各色に対応する水分量が記憶されている。具体的には、青が0.1、薄い肌色が0.2、淡赤色が0.4(mg/cm)というように水分量が記憶されている。水分量測定部23は、RGB色空間上において、試薬領域の色と、青、薄い肌色および淡赤色との間の距離を算出し、距離が最も小さい色に対応する水分量を、その画像を測定したユーザの肌の水分量として計測する。
【0043】
例えば、距離が青に最も近ければ0.1、薄い肌色に最も近ければ0.2、淡赤色に最も近ければ0.4(mg/cm)というように水分量を計測する。なお、色空間上における試薬領域の色と、青、薄い肌色および淡赤色との間の距離に応じた補間演算を行って、水分量を計測してもよい。
【0044】
表面情報取得部24は、処理済み画像における試験シート1に対応する領域以外の領域に基づいて、肌の表面のシミの情報およびシワの情報を表面情報として取得する。まず、シミの情報の取得について説明する。シミの情報の取得に際し、表面情報取得部24は、処理済み画像の各画素の色をRGB色空間上にプロットする。ここで、通常の肌とシミとは明らかに色が異なるため、RGB色空間上においては、図7に示すように肌色の空間A1とシミの色の空間A2とを分離することができる。したがって、表面情報取得部24は、空間A2にプロットされた画素をシミと判定し、その色および処理済み画像上における位置をシミの情報として取得する。なお、シミの位置としては、処理済み画像の左上隅を原点とするXY座標系を設定した場合における座標位置を用いる。
【0045】
なお、シミの情報の取得は上記手法に限定されるものではなく、シミの形状を有するフィルタによりシミの形状を有する領域を抽出し、その領域の色が所定値よりも大きい場合にその領域をシミとして検出し、検出した領域の位置および色をシミの情報として取得するようにしてもよい。
【0046】
次いで、シワの情報の取得について説明する。シワは画像上において明暗の情報として現れる。すなわち、シワの部分は周囲の肌の色よりも暗く、また、シワの部分には暗さのピークが出現する。このため、表面情報取得部24は、図8に示すように処理済み画像上にシワの検出領域R1を設定し、処理済み画像の左上隅を原点とするXY両方向について、検出領域R1内の1次元プロファイルを検出する。ここで、図9に示すように目尻のシワの位置に検出領域R1を設定した場合、図9の破線位置における信号値のプロファイルは、図10に示すようにシワの位置に対応したピークを有するものとなる。したがって、表面情報取得部24は、信号値のプロファイルにおいてしきい値Th0以上となる画素の処理済み画像上における位置および信号値をシワの情報として取得する。
【0047】
入出力部26は公知のネットワークインターフェースからなる。水分量測定部23が測定した水分量の情報および表面情報取得部24が取得した表面情報は、ユーザの肌情報として、入出力部26からユーザの肌情報を解析して肌の診断を行う診断サーバに送信される。なお、肌情報の送信時にはユーザを特定するためのユーザIDも送信される。
【0048】
次いで、本実施形態による肌診断装置20が行う処理について説明する。図11は本実施形態による肌診断装置20が行う処理を示すフローチャートである。画像取込部21が処理対象の画像を取り込み(ステップST1)、画像処理部22がデジタルカメラ10の特性を補償する処理を画像に施すとともに(ステップST2)、第1および第2の校正用チャート5,6により画像の色および明るさを校正して処理済み画像を取得する(ステップST3)。
【0049】
次いで、水分量測定部23が処理済み画像に基づいて肌の水分量を測定し(ステップST4)、表面情報取得部24が処理済み画像に基づいて肌の表面情報を取得する(ステップST5)。そして、水分量および表面情報からなるユーザの肌情報を入出力部26が診断サーバに送信し(ステップST6)、処理を終了する。
【0050】
図12は診断サーバの構成を示す概略ブロック図である。図12に示すように診断サーバ30は、多数のユーザについての肌情報を蓄積したデータベース31と、肌情報の受診および診断結果の送信を行うためのネットワークに接続された入出力部32と、データベース31を参照して肌情報から診断結果を生成する診断結果生成部33とを備え、これらがバス34により接続されている。
【0051】
データベース31にはユーザ単位で時系列順に肌情報が登録されている。
【0052】
診断結果生成部33は、取得したユーザIDに基づいて、そのユーザIDのユーザについての過去の肌情報をデータベース31から取得し、新たに取得した肌情報とともに肌の水分量、シミの総面積およびシワの本数についてのグラフを作成する。なお、肌の水分量は送信された肌情報に含まれる水分量をそのまま用いる。シミの総面積については、シミの位置の情報から画像上におけるシミの領域を特定し、特定したシミの領域の面積を加算することにより算出する。また、シワの本数については、シワの位置の情報から画像上におけるシワの位置を特定し、特定したシワの本数を計測することにより算出する。
【0053】
図13は肌の水分量、シミの総面積およびシワの本数のグラフである。このようなグラフを作成することにより、肌の水分量、シミの総面積およびシワの本数の経時による変化を知ることができる。
【0054】
そして、診断結果生成部33は、作成したグラフおよびデータベース31に登録されている情報を参照して、そのユーザについての診断結果を表す診断レポートを作成する。この診断レポートには、肌の状態の総合評価、肌の手入れへのアドバイス、ヒント、将来の肌の状態の予想等が含まれる。そして、作成した診断レポートをそのユーザに電子メール等により送信する。
【0055】
これにより、ユーザは自宅に居ながら、肌の診断結果を表す診断レポートを入手することができるため、自身の肌のケアを自宅に居ながら行うことができる。
【0056】
なお、上記実施形態においては、図1,2に示すように矩形の試験シート1を用いているが、顔の位置に応じて使用する試験シートの形状を変更してもよい。例えば、図14(a)、(b)に示すように、頬、目尻および目の下に貼付する試験シートについてはその形状を逆三角形状とし、鼻筋と額の水平線とが交差するいわゆるTゾーンに貼付する試験シートについてはその形状をT字状としてもよい。
【0057】
また、顔の部位に応じて異なる試薬を使用した試験シートを貼付するようにしてもよい。例えば、頬、目尻および目の下については水分量が問題となることから水分量を測定する試薬を使用した試験シートを貼付し、Tゾーンについては皮脂量が問題となることから皮脂量を測定する試薬を使用した試験シートを貼付すればよい。
【0058】
また、上記実施形態においては、第1および第2の校正用チャート5,6をそれぞれ色領域5A〜5Cおよびグレー領域6A〜6Cからなるものとしているが、試験シート1にイラストを付与し、そのイラストを色領域5A〜5Cおよびグレー領域6A〜6Cに対応する色および明るさを有するものとしてもよい。例えば、図15に示すように試験シート1に6枚の花びらを有する花のイラストを付与し、6枚の花びら41A〜41Fのそれぞれを色領域5A〜5Cに対応する色およびグレー領域6A〜6Cに対応する明るさを有するものとしてもよい。
【0059】
また、試験シート1の試薬層4に設ける試薬の濃度を、段階的に変化させるようにしてもよい。例えば、図16に示すように、試薬層4の右側ほど試薬の濃度が高くなるように段階的に試薬の濃度を変更してもよい。ここで、試薬の濃度が高いと検出できる水分量は多いが、検出した水分量に対する色の変化が小さくなる。逆に試薬の濃度が低いと検出できる水分量が少ないが、検出した水分量に対する色の変化が大きくなる。このため、各段階における青から淡赤色に変化したときの水分量をあらかじめ求めておき、試験シート1の試薬層4のいずれの段階まで試薬の色が変化したかに応じて、より精度良く水分量を測定できることとなる。なお、試薬の濃度を均一とし、不織布7の水分の透過量を段階的に変更することによっても、試薬の濃度を段階的に変更した場合と同様に水分量を測定することができる。
【0060】
ところで、偏向した光を肌に照射した場合、肌の表面で反射される光は偏向した状態が維持されるが、肌の内部に到達した光は肌内において散乱するため偏向した状態が維持されなくなる。このため、デジタルカメラ10を用いて顔を撮影する際に、偏向した光を顔に照射し、その偏向の方向に直交する偏向フィルタを介して肌での反射光を検出すれば、その反射光は肌の内部において散乱された光のみからなるものとなる。ここで、シミは肌の内部に存在する。したがって、偏向フィルタを介して反射光を検出することにより、肌の表面における反射光を除去することができるため、肌の内部にあるシミの状態を精度良く検出して撮影することができる。
【0061】
なお、このように偏向した光の照射および撮影は、図5に示すスタンド16において、図17に示すようにデジタルカメラ10のフラッシュ10aに対応する部分に図17の矢印A方向に偏向する偏向フィルタ16を、撮影レンズ10bに対応する部分に矢印A方向に直交するB方向に偏向する偏向フィルタ17を配置しておくことにより行うことができる。なお、偏向フィルタ17に代えて、矢印A方向に偏向する偏向フィルタを設けることにより、肌の表面の反射光のみからなる画像を取得することができる。
【0062】
また、上記実施形態においては、肌の水分量等を検出するための試験シートを顔に貼付して撮影を行うことにより肌の診断を行っているが、果物等の物体に水分量等を検出するための試験シートを貼付して撮影を行うことにより、肌の場合と同様にその物体の水分量および表面状態を検出することができる。
【0063】
また、上記実施形態においては、肌診断装置20にデータベース31および診断結果生成部33を設け、図13に示す肌の水分量、シミの総面積およびシワの本数のグラフ、並びに診断レポートを肌診断装置20において作成するようにしてもよい。
【0064】
以上、本発明の実施形態による肌診断装置について説明したが、コンピュータを、上記の画像処理部22、水分量測定部23および表面情報取得部24に対応する手段として機能させ、図11に示すような処理を行わせるプログラムも、本発明の実施形態の1つである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施形態による試験シートの構成を示す平面図
【図2】図1におけるI−I線断面図
【図3】基材フィルムの他の例を示す断面図
【図4】試験シートをユーザの顔に貼付した状態を示す図
【図5】自分撮りを行っている状態を示す図
【図6】本発明の実施形態による肌診断装置の構成を示す概略ブロック図
【図7】肌色およびシミの色空間上における位置を示す図
【図8】シワの検出領域の設定を説明するための図
【図9】シワの検出を説明するための図
【図10】信号値の1次元プロファイルを示す図
【図11】本実施形態による肌診断装置が行う処理を示すフローチャート
【図12】診断サーバの構成を示す概略ブロック図
【図13】肌の水分量、シミの総面積およびシワの本数のグラフ
【図14】試験シートの他の例を示す図(その1)
【図15】試験シートの他の例を示す図(その2)
【図16】試験シートの他の例を示す図(その3)
【図17】シミの検出を説明するための図
【符号の説明】
【0066】
1 試験シート
2 基材フィルム
3 粘着層
4 試薬層
5 第1の校正用チャート
6 第2の校正用チャート
7 不織布
20 肌診断装置
21 画像取込部
22 画像処理部
23 水分量測定部
24 表面情報取得部
25 メモリ
26 入出力部
30 診断サーバ
31 データベース
32 入出力部
33 診断結果生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体に貼付されて使用される試験シートであって、
片面に粘着層を有する基材フィルムと、
前記基材フィルムの前記粘着層側の面に設けられた、前記物体表面から蒸散する物質量に応じて色が変化する試薬が設けられた試薬層と、
前記基材フィルムの前記粘着層側の面とは反対側の面に設けられた、前記試験シートを貼付した前記物体を撮影することにより取得された画像の色を校正するための第1の校正用チャートと、
前記画像の明るさを校正するための第2の校正用チャートとを備えてなることを特徴とする試験シート。
【請求項2】
前記基材フイルムの屈折率が前記物体表面と略等しい材料からなることを特徴とする請求項1記載の試験シート。
【請求項3】
前記基材フイルムが、前記物体の表面特性と略等しい表面特性を有することを特徴とする請求項1または2記載の試験シート。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載の試験シートがその一部分に貼付された物体の画像を取得する画像取得手段と、
前記画像に含まれる前記第1および前記第2の校正用チャートに基づいて、前記画像の色および明るさを校正して処理済み画像を得る画像処理手段と、
前記処理済み画像に含まれる前記試薬の色から前記物体表面から蒸散する物質量を測定する物質量測定手段と、
前記処理済み画像から前記物体表面の情報を取得する表面情報取得手段とを備えたことを特徴とする物体診断装置。
【請求項5】
前記物質量および前記物体表面の情報をデータベースに保存する保存手段をさらに備えたことを特徴とする請求項4記載の物体診断装置。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項記載の試験シートがその一部分に貼付された物体の画像を取得し、
前記画像に含まれる前記第1および前記第2の校正用チャートに基づいて、前記画像の色および明るさを校正して処理済み画像を得、
前記処理済み画像に含まれる前記試薬の色から前記物体表面から蒸散する物質量を測定し、
前記処理済み画像から前記物体表面の情報を取得することを特徴とする物体診断方法。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか1項記載の試験シートがその一部分に貼付された物体の画像を取得する手順と、
前記画像に含まれる前記第1および前記第2の校正用チャートに基づいて、前記画像の色および明るさを校正して処理済み画像を得る手順と、
前記処理済み画像に含まれる前記試薬の色から前記物体表面から蒸散する物質量を測定する手順と、
前記処理済み画像から前記物体表面の情報を取得する手順とを有することを特徴とする物体診断方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−167853(P2008−167853A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−2533(P2007−2533)
【出願日】平成19年1月10日(2007.1.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【復代理人】
【識別番号】100104189
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 勲将
【Fターム(参考)】