説明

試験用のクランク角センサの固定装置

【課題】エンジンブロックを基体として支持するセンサ支持装置の、エンジンの振動による破損を抑制する。
【解決手段】エンジンブロック40にクランプ装置1を固定し、クランク角センサ3を連結固定した支持アーム2をクランプ装置1のクランプ13で固定する。クランプ装置1においてクランプ13は、左右方向を回転軸とする回転方向について可撓性あるクランプ保持板12で支持されている。また、支持アーム2には、クランプ13によってクランプされる位置と、クランク角センサ3を取り付ける位置との間に、左右方向と垂直な方向を回転軸とする回転方向について、可撓性を備えた可撓部26が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験用のクランク角センサを、エンジンブロックを支持基体として支持するセンサ支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クランク角センサとしては、クランクシャフト端部に連結され、当該クランクシャフト端部の回転角度を検出するクランク角センサが知られている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-281312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、試験用のクランク角センサを、後付により脱着可能にクランクシャフトに取り付けるために、クランク角センサをエンジンブロックを支持基体として支持するセンサ支持装置を用いる場合、エンジンの振動によるセンサ支持装置の破損が生じることがある。
そこで、本発明は、試験用のクランク角センサを、エンジンブロックを基体として支持するセンサ支持装置の、エンジンの振動による破損を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題達成のために、本発明は、クランクシャフトの端部に連結されたクランク角センサを、エンジンブロックを支持基体として支持するクランク角センサの支持装置に、前記クランク角センサが一端に固定される支持アームと、前記エンジンブロックに固定されるクランプ装置とを備えたものである。ここで、前記支持アームは、円筒形状のポール部と、前記クランク角センサが固定されるセンサ取付部と、前記ポール部と前記センサ取付部とを連結する連結部とを有するものであり、前記支持アームの前記連結部には、前記ポール部と前記センサ取付部との間の少なくとも一部の区間が、前記ポール部の軸方向と垂直な前記ポール部に対して固定的に定まる方向を回転軸の方向とする回転方向についての可撓性を備えるように、可撓性ある金属板を用いて形成された可撓部が設けられている。前記クランプ装置は、前記エンジンブロックに固定される基部と、可撓性ある金属板で形成された、前記基部に一端が固定された保持板と、前記保持板の他端に固定された、前記支持アームの前記ポール部を、当該クランプ装置に対する当該ポール部の軸方向を所定の方向、当該所定方向を回転軸の方向とする当該ポール部の回転角度を任意の回転角度として握持するクランプとを有するものであり、前記保持板は、前記所定の方向と垂直な前記基部に対して固定的に定まる方向を回転軸の方向とする回転方向についての可撓性を備えている。
【0006】
このようなクランク角センサの支持装置によれば、支持アームの前記ポール部の軸方向を回転軸の方向とする回転角度を任意の回転角度として、前記支持アームをクランプ装置に固定することができることより、支持アームの可撓部の可撓性の方向とクランプ装置の保持板の可撓性の方向との組み合わせは、前記ポール部の軸方向と垂直な異なる2方向を各々回転軸の方向とする2つの回転方向の組み合わせとすることができる。よって、支持アームの可撓部の可撓性と、クランプ装置の保持板の可撓性との組み合わせによる弾性によって、エンジンの振動によるセンサ支持装置に対する様々な方向の衝撃を緩和することができ、したがって、エンジンブロックを基体として支持するセンサ支持装置の、エンジンの振動による破損を抑制することができる。
【0007】
ここで、このようなクランク角センサの支持装置においては、前記ポール部に対して固定的に定まる方向から見て三角形の2辺を形成するように組み合わせた可撓性ある金属板によって、前記支持アームの前記可撓部を構成するようにしてもよい。
このようにすることにより、強度と可撓性とを兼ね備えた可撓部を形成することができる。
また、このようなクランク角センサの支持装置を、前記支持アームを、前記ポール部と連なるフレームと、前記フレームに、前記ポール部が連なる側と逆側に一部が前記フレームより突出するように固定された金属板とを用い、前記金属板の前記ポール部が連なる側と逆側に前記フレームより突出している部分の端側部分で、前記センサ取付部を構成し、前記フレームと、前記金属板の前記センサ取付部を構成しない部分とで、前記連結部を構成し、前記金属板の前記ポール部が連なる側と逆側に前記フレームより突出している部分のうちの、前記金属板の前記センサ取付部を構成しない部分で前記可撓部を構成する場合には、前記フレームと金属板の間に合成樹脂を注入し、前記可撓部や前記センサ取付部の共振を抑制することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、試験用のクランク角センサを、エンジンブロックを基体として支持するセンサ支持装置の、エンジンの振動による破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係るセンサ支持装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るセンサ支持装置の構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係るセンサ支持装置の支持アームの構成を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係るセンサ支持装置のクランプ装置の構成を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係るセンサ支持装置が備える可撓性の方向を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係るセンサ支持装置の四面図を、図2aに本実施形態に係るセンサ支持装置の斜視図を、図2bに本実施形態に係るセンサ支持装置の組立図を示す。ただし、各図には、センサ支持装置によって支持するクランク角センサ3も、センサ支持装置と共に表している。
【0011】
次に、図2cは、センサ支持装置を用いて、クランク角センサ3のエンジンブロック40を支持基体としてクランク角センサ3を支持しているようすを示す図である。
ここで、センサ支持装置は、クランプ装置1と、クランプ装置1に固定されて支持される支持アーム2とより構成される。
そして、当該センサ支持装置は、図2cに示すように、エンジンブロック40の外部に露出するクランクシャフト41の端部にボルト等により連結されたクランク角センサ3を、エンジンブロック40を支持基体として支持するための装置である。
ここで、このようなセンサ支持装置を用いたクランク角センサ3の支持は、図2cに示すように、エンジンブロック40に直接または適当な治具を用いてクランプ装置1を固定し、クランク角センサ3を先端にボルトにより連結固定した支持アーム2を、クランプ装置1でクランプして固定することにより行われる。
【0012】
以下、センサ支持装置の、クランプ装置1と支持アーム2の詳細について説明する。
ここで、以下では、説明の便宜上、クランプ装置1の上下前後左右、支持アーム2の上下前後左右の方向を、図1、図2a、bに示した上下前後左右の方向として説明を行う。ただし、後述するように、支持アーム2のクランプ装置1に対する、前後方向を回転軸とする回転角は任意に設定することができるので、支持アーム2をクランプ装置1に固定したときの、支持アーム2の上下左右方向と、クランプ装置1の上下左右方向とは必ずしも一致しない。
【0013】
まず、支持アーム2について説明する。
図3aに支持アーム2の組み立て図を、図3bに支持アーム2の図2bの平面Aによる断片を示す。
図示するように、支持アーム2は、ベース21と、2枚の支持板22と、1枚の補助板23と、クランプ角度センサのケーブルをクランプするためのケーブルクランプ24とをボルトで一体化したものである。
また、図3aに示すように、ベース21は、後方部分が円筒形状のポール部211となっており、前方部分が左右方向から見ておよそ”H”形状のフレーム部212となっている。また、軽量化のため、ポール部211とフレーム部212のポール部211から前後方向に続く部分は中空となっている。
【0014】
次に、支持板22は、左右方向を厚み方向とする可撓性あるシート状の金属板であり、補助板23は、可撓性あるシート状の金属板を折り曲げて形成した部材である。
そして、2枚の支持板22は左右に重ねてベース21のフレーム部212の左側のポール部211よりも前方の位置に、補助板23はベース21のフレーム部212の右側のポール部211よりも前方の位置に、各々前方部分がベース21の前方に突出した形態で、ケーブルクランプ24共々、ベース21にボルト止めされて固定される。
【0015】
ここで、補助板23は、補助板23のベース21の前方に突出した部分の前方側端部が、補助板23のベース21の前方に突出していない部分よりも左側にオフセットして、支持板22と並行となり、かつ、当該前方側端部と、補助板23のベース21の前方に突出していない部分の前方側端との間が上下方向から見て、左方向に斜めに前方に向かって傾斜した形状となるように、金属板を折り曲げた形状を有している。
【0016】
また、補助板23の支持板22と並行な前方側端部と、左右に重ねた2枚の支持板22の前方側端部とは、左右方向に重なり合って固定されて、図2bに示すようにセンサ取付部25を構成している。そして、当該センサ取付部25には、支持アーム2を固定するためのボルト孔が設けられている。
【0017】
ここで、補助板23と左右に重ねた支持板22との、ベース21の前方に突出した部分のセンサ取付部25より後方の部分は、上下方向から見た形状が、直角三角形の直角を形成しない2辺を成す可撓部26を形成し、当該可撓部26は、上下方向を回転軸とする回転方向の可撓性を備えている。
【0018】
次に、図3bの支持アーム2の断面図に示すように、2枚の支持板22の間、右側の支持板22とフレーム部212との間、補助板23とフレーム部212との間には、支持板22や補助板23の共振を防ぐために、シリコンなどの合成樹脂27が注入されている。
次にクランプ装置1について説明する。
図4に、クランプ装置1の組み立て図を示す。
図示するように、前方から見た形状が、後述する案内部111を除き、おおよそ”「”形状の剛性ある基部11と、基部11の前面の上部に、上端が固定された可撓性あるシート状の金属板であるクランプ保持板12と、クランプ保持板12の下端部分に固定されたクランプ13とより構成される。
そして、クランプ保持板12は、左右方向を回転軸とする回転方向の可撓性を備えている。
また、次に、クランプ13には、クランプ孔が設けられており、図2bに示すようにボルトでクランプ孔を縮径することにより、支持アーム2のポール部211を、ポール部211の軸を前後方向として、ポール部211の軸まわりの回転角度を任意の回転角度として、ポール部211を任意の長さクランプ孔に前後方向に挿入した状態で固定することができるようになっている。
【0019】
なお、基部11は、クランプ保持板12の後ろ側にクランプ保持板12と離間して配置された案内部111も有しており、この案内部111は、クランプ13によってクランプされた支持アーム2のポール部211の姿勢を案内する役割や、当該姿勢の変化する範囲を制限する役割などを担う。
【0020】
以上、センサ支持装置の、クランプ装置1と支持アーム2について説明した。
さて、このようなセンサ支持装置は次のようにして、エンジンブロック40とクランク角センサ3に取り付けられる。
すなわち、図2cに示すように、まず、クランプ装置1の基部11をエンジンブロック40またはエンジンブロック40に固定した治具にボルト止めして固定する。そして、支持アーム2のポール部211をクランプ孔に挿入した状態で、支持アーム2の位置や長さを調整しつつ、支持アーム2のセンサ取付部25のボルト孔を用いて、支持アーム2を、クランクシャフト41の端部に連結されたクランク角センサ3にボルト止めする。そして、クランプ装置1のクランプ13のクランプ孔をボルトで縮径して支持アーム2をクランプ装置1に固定する。
【0021】
以上のように、本実施形態に係るセンサ支持装置によれば、クランク角センサ3は、センサ支持装置によって、図5aに示すような、クランプ装置1のクランプ保持板12によるクランプ装置1の左右方向を回転軸とする回転方向の可撓性による可撓性と、図5bに示すような支持アーム2の可撓部26による支持アーム2の上下方向を回転軸とする回転方向の可撓性による可撓性とによる弾性を持って支持されることとなる。また、支持アーム2のクランプ装置1へのポール部211の軸まわりの取付角度は任意であるので、図5cに示すように、支持アーム2の可撓部26による可撓性の方向は、クランプ装置1のクランプ保持板12による可撓性の方向と異なる方向とすることができる。
【0022】
よって、これら可撓性による弾性によって、エンジンの振動によるセンサ支持装置に対する様々な方向の衝撃を緩和するようにすることができ、したがって、エンジンブロック40を基体として支持するセンサ支持装置の、エンジンの振動による破損が抑制される。
【符号の説明】
【0023】
1…クランプ装置、2…支持アーム、3…クランク角センサ、11…基部、12…クランプ保持板、13…クランプ、21…ベース、22…支持板、23…補助板、24…ケーブルクランプ、25…センサ取付部、26…可撓部、27…合成樹脂、40…エンジンブロック、41…クランクシャフト、111…案内部、211…ポール部、212…フレーム部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクシャフトの端部に連結されたクランク角センサを、エンジンブロックを支持基体として支持するクランク角センサの支持装置であって、
前記クランク角センサが一端に固定される支持アームと、
前記エンジンブロックに固定されるクランプ装置とを有し、
前記支持アームは、円筒形状のポール部と、前記クランク角センサが固定されるセンサ取付部と、前記ポール部と前記センサ取付部とを連結する連結部とを有し、
前記支持アームの前記連結部には、前記ポール部と前記センサ取付部との間の少なくとも一部の区間が、前記ポール部の軸方向と垂直な前記ポール部に対して固定的に定まる方向を回転軸の方向とする回転方向についての可撓性を備えるように、可撓性ある金属板を用いて形成された可撓部が設けられており、
前記クランプ装置は、前記エンジンブロックに固定される基部と、可撓性ある金属板で形成された、前記基部に一端が固定された保持板と、前記保持板の他端に固定された、前記支持アームの前記ポール部を、当該クランプ装置に対する当該ポール部の軸方向を所定の方向、当該所定方向を回転軸の方向とする当該ポール部の回転角度を任意の回転角度として握持するクランプとを有し、
前記保持板は、前記所定の方向と垂直な前記基部に対して固定的に定まる方向を回転軸の方向とする回転方向についての可撓性を備えていることを特徴とするクランク角センサの支持装置。
【請求項2】
請求項1記載のクランク角センサの支持装置であって、
前記ポール部に対して固定的に定まる方向から見て三角形の2辺を形成するように組み合わせた可撓性ある金属板によって、前記支持アームの前記可撓部は構成されていることを特徴とするクランク角センサの支持装置。
【請求項3】
請求項1記載のクランク角センサの支持装置であって、
前記支持アームは、
前記ポール部と連なるフレームと、
前記フレームに、前記ポール部が連なる側と逆側に一部が前記フレームより突出するように固定された金属板と、
前記フレームと金属板の間に注入された合成樹脂とを有し、
前記金属板の前記ポール部が連なる側と逆側に前記フレームより突出している部分の端側部分が、前記センサ取付部を構成しており、
前記フレームと、前記金属板の前記センサ取付部を構成しない部分とが、前記連結部を構成しており、
前記金属板の前記ポール部が連なる側と逆側に前記フレームより突出している部分のうちの、前記金属板の前記センサ取付部を構成しない部分が前記可撓部を構成していることを特徴とするクランク角センサの支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−242152(P2011−242152A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111893(P2010−111893)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000145806)株式会社小野測器 (230)
【Fターム(参考)】