説明

詰り防止付きノズル、注入弁、サイホン阻止システム

【課題】注入液を原液に注入する場合に、放出する方向をできるだけ増加させることで注入液がノズルで結晶化して詰ることを防ぐことができる詰り防止付きノズル、注入弁、サイホン阻止システムを提供する。
【解決手段】原液管に挿入して注入液を原液内に供給するノズルであって、前記ノズルは一端が閉塞する閉塞端と、この閉塞端近傍のノズル側面に穿設される注入液開口部と、前記注入液開口部を隣接して被覆する2つ以上の弾性Oリングとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原液に注入液を注入する詰り防止付きノズル、注入弁、サイホン阻止システムに係り、特に注入液がノズルで結晶化して詰ることを防ぐことができる詰り防止付きノズル、注入弁、サイホン阻止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示すように、従来のサイホン阻止システムは、原液管1に注入液タンク2に蓄積されている注入液を配管4よりポンプ6に供給し、ポンプ6が配管8を介して注入弁10に接続されることで、原液管1に注入液を供給する。このシステムにおいて、注入弁10が目詰まりを起こして定められた量の注入液が原液管1に注入されない現象がある。
【0003】
より詳細に、注入弁10について、断面図である図2を用いて説明すると、ポンプ6と接続される配管8(図1参照)は、注入弁10の下部に設けられるユニオンナットカラー14(以下図2)とユニオンナット16によりホースジョイント18に固定される。ホースジョイント18は、その上部にOリング20を備えており、本体21の下部と連結される。ホースジョイント18と本体21に連通する供給流路23が設けられている。本体21の上部は、キャップ22と連結され、キャップ22の内側にはスプリング28が設けられ、このスプリング28はスプリングシート26の内部に収められ、このスプリングシート26の下側にダイヤフラム24が設けられる。ダイヤフラム24はスプリングシート26に押圧されて本体内部に設けられる供給流路23と注入流路27との間を封止する。この注入流路27の他端はボールバルブ40で封止されており、このボールバルブ40は、ノズル46側に設けられる円錐コイルばね42に押圧されている。この円錐コイルばね42他端は、本体開口部43に設けられるばね座45によって支持される。この本体開口部43にはさらに、従来のノズル46がねじ止め固定される。ノズル46の他端は、開口されるノズル開口部48となっている。このノズル開口部48は原液管1の内部に挿入されて、原液に対して開口している。
【0004】
この従来のサイホン阻止システムにおいて、供給流路23から規定圧力以上の注入液が注入されると、ダイヤフラム24がスプリング28のばね圧に抗してダイヤフラム24が押し上げられて開通し、注入液は注入流路27に流入する。注入液は、さらに、円錐コイルばね42の圧力に勝っている場合にのみ、ボールバルブ40を押圧してノズル46へ流入する。ノズル46へ流入した注入液は、ノズル開口部48より原液へ流入する。
【0005】
一方、ノズル46へ原液が逆流した場合は、ボールバルブ40が解放されないため、一切、注入流路27へは逆流しない。また、注入液が、スプリング28の押圧力以下の圧力である場合は、注入液は注入流路27に流入しない。
【0006】
この従来のサイホン阻止システムにおいて、原液が水であり、注入液が次亜塩素酸ナトリウムである場合について適用した例について検討する。通常は、従来のシステムを使用することで、原液である水の中に注入液である次亜塩素酸ナトリウムが適切な量が送り込まれ、原液に適切な量の注入液が注入される。
【0007】
しかし、実際の原液である水の中にはミネラルであるカルシウムやマグネシウムが存在し、これらと次亜塩素酸ナトリウムが結合して、水酸化カルシウムや水酸化マグネシウムとしてスラリーとなり結晶化して、沈殿・付着することとなる。この結晶が、ノズル開口部48に付着すると、やがて、1カ月程度でノズル開口部を覆う程の量となり、付着した結晶を除去しなければ、注入液である次亜塩素酸ナトリウムが、原液である水の中に注入できない状態となるのである。この場合、ポンプ6にも過負荷がかかることになり危険でもある。
【0008】
そこで、ノズルの先端で結晶化することを防ぐために、いくつか提案がなされている。図3にその断面図を示し、ノズル52の先端が閉塞端であり、ノズル側面に1対の開口部54が設けられている。この開口部54が封止される程度の幅を有する円筒状のゴムチューブ56がノズルの周囲を被覆する。この場合、注入液が、ゴムチューブ56の被覆する弾性力を上回る際に、ゴムチューブ56とノズル52の隙間から注入液を放出することとなる。
【0009】
この場合、ゴムチューブ56に対して注入弁10側と閉塞端側の2方向に放出する隙間を有することになる。さらに、開口部54が一組あることからその近傍のゴムチューブ56端から注入液が吹きだすこととなる。これらの2方向に注入液が放出されることで、結晶の成長を未然に防ぐものである。
【0010】
また、ノズル先端の結晶化を防ぐ例を図4で示す。この提案では、ノズル62の端部は開口部63が開口する開放端で構成されている。その開口部63に、端部に逆止開口部66の切り込みのある逆止キャップ64が装着されている。逆止開口部66は、一定値以上の注入液の圧力が逆止開口部66に付加されて、逆止キャップ64の弾性力に勝る際にのみ開口する。この為、原液が注入液に逆流することはない。この場合、逆止開口部66の方向にのみ開口している。これの1方向に注入液が放出されることで、結晶の成長を未然に防ぐものである。
【0011】
一方、注入液を原液に注入する技術としては、すでに特許文献1に記載される技術も提案されている。特許文献1では、ノズル22の薬液吐出口21が開口する位置に、各薬液吐出口21を包含するよう円周状の溝を設け、その溝に嵌め込むように弾性Oリング24を取り付けることが開示され、その技術によって、原水がノズル22に侵入することを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−131565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ノズルの先端での結晶化を防ぐ方法において、放出する注入液が一方向にのみ偏る場合は、結晶化を防ぐことが十分にできてはいなかった。例えば、図3のゴムチューブ56を用いる場合も、注入液の放出方向は、チューブの両端であり、2方向に限定されてしまい、必ずしも十分に結晶化を防ぐものではなかった。この点について、図4に示される逆止開口部66に至っては、一方向に注入しており、十分かつ適切な結晶化の防止策が必ずしも徹底されていなかった。
【0014】
一方、特許文献1では、弾性Oリングは、単独の配置であり、ゴムチューブ56と同一の方向にしか放出できない点で十分な結晶化阻止の効果は表れていなかった。
【0015】
そこで、本発明はこのような課題の解決を図るためになされたもので、注入液を原液に注入する場合に、放出する方向をできるだけ増加させることで注入液がノズルで結晶化して詰ることを防ぐことができる詰り防止付きノズル、注入弁、サイホン阻止システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る詰り防止付きノズルは、原液管に挿入して注入液を原液内に供給するノズルであって、前記ノズルは一端が閉塞する閉塞端と、この閉塞端近傍のノズル側面に穿設される注入液開口部と、前記注入液開口部を隣接して被覆する2つ以上の弾性Oリングとを備える。
【0017】
前記弾性Oリングは、前記閉塞端を形成する閉塞キャップの端部とノズルに嵌合される嵌合リングとの間に嵌め込まれてもよい。
【0018】
本発明に係る注入弁は、弁の開口先に原液管に挿入して注入液を原液内に供給するノズルであって、前記ノズルは一端が閉塞する閉塞端と、この閉塞端近傍のノズル側面に穿設される注入液開口部と、前記注入液開口部を隣接して被覆する2つ以上の弾性Oリングとを備える詰り防止付きノズルが設けられる。
【0019】
本発明に係るサイホン阻止システムは、注入液を供給する供給ポンプに接続される配管と、前記配管の先に注入弁が設けられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明を実施することにより、注入液を原液に注入する場合に、放出する方向をできるだけ増加させることで注入液がノズルで結晶化して詰ることを防ぐことができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来のサイホン阻止システムの構成図である。
【図2】従来の注入弁とノズルの縦断面図である。
【図3】従来の注入弁とノズルの縦断面図である。
【図4】従来の注入弁とノズルの縦断面図である。
【図5】本発明係る注入弁とノズルの縦断面図である。
【図6】本発明係る注入弁とノズルの縦断面の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、この発明の実施形態例を、図5、6を用いて説明する。
【0023】
原液管1に挿入して注入液を原液内に供給するであって、前記ノズル70は一端が閉塞する閉塞端と、この閉塞端近傍のノズル側面に穿設される注入液開口部74と、前記注入液開口部74を隣接して被覆する2つ以上の弾性Oリング88,90,92とを備える。
【0024】
前記ノズル70は、前記注入液開口部74の長手方向閉塞端側とポンプ側の両側に浅い溝部80、84が刻設される。閉塞端部側の溝部80には、底部と側面部を備える閉塞キャップ76における側面部端部が側面部に比較して厚みを有する係止部78が溝部80に係止される。一方、ポンプ側の溝部84に嵌合リング82が溝部84に係止される。さらに、閉塞キャップ76と嵌合リング82との間に3本の弾性Oリング88,90,92が互いに隣接して注入液開口部74の上から装着される。
【0025】
3本の弾性Oリング88,90,92が隣接することから、嵌合リング82と弾性Oリング88の間と、弾性Oリング88と弾性Oリング90の間と、弾性Oリング90と弾性Oリング92の間と、弾性Oリング92と閉塞キャップ76との間が弾性Oリング同士または嵌合リングまたは閉塞キャップの側面との接しており、それぞれ、注入孔94,96,98,100として機能する。
【0026】
注入液は、前記注入液開口部74から放出されると、これら弾性Oリング同士または嵌合リングまたは閉塞キャップの側面との接する点である注入孔94,96,98,100に流れる。この際に、注入液と原液側にいずれもが圧力Pであって、圧力差が無い場合は、注入液は、原液側に放出されない。しかし、注入液に対してはポンプ6で加圧するためΔPの差圧が発生する。この場合に、注入液は弾性Oリングの全周であって、さらに弾性Oリング同士または嵌合リングまたは閉塞キャップの側面との接する4つの注入孔94,96,98,100のいずれか最も弱い点から放出されることとなる。また、例え、原液側の配管内の圧力が仮に通常より高い場合であっても差圧で動作することから弾性Oリングが必要以上に弾性Oリングで形成される注入孔94,96,98,100を閉塞させることはない。
【0027】
すなわち、この4点の隙間のいずれもが、前記注入液開口部74から放出される注入液を放出可能となる。注入液をそれぞれ360度であって4点の注入孔94,96,98,100から注入液を分散して放出可能である。このため、複数の注入孔94,96,98,100があることにより、より注入液による結晶化を防ぐことが可能となる。従来であれば、結晶による詰りを除去するために、ノズルは1月に1度の交換が必要であった。しかし、本発明に係るノズルはほとんど結晶化が発生しないため、一度の交換で1年間使用することができた。実際には、複数ある隙間のうち最も弾性が弱い個所から放出されることになる。万が一その箇所が後に塞がれたとしても他の隙間に圧力がかかるため、詰る可能性は極めて低くなる。また、市販されるOリングを用いることで、低コストで詰りの問題を解決することができ、そのメンテナンスにもコストがかからない。
【0028】
一方、このOリングが、1本である場合には、弾性力の弱い個所の発生が1本のOリングに依存し適切に作用しない。もっぱら、3本であることが好ましく、5本以上では、本数の差による効果は認められなかった。
【0029】
この本発明に係るノズル70を、従来の注入弁10に設けることができることは明らかである。また、この本発明に係るノズル70を設けた注入弁10が、従来のサイホン阻止システムに適用できることも明らかである。
【符号の説明】
【0030】
1 原液管
2 注入液タンク
4 配管
6 ポンプ
8 配管
10 注入弁
14 ユニオンナットカラー
16 ユニオンナット
18 ホースジョイント
20 Oリング
21 本体
22 キャップ
23 供給流路
24 ダイヤフラム
26 スプリングシート
27 注入流路
28 スプリング
40 ボールバルブ
42 円錐コイルばね
43 本体開口部
45 ばね座
46 ノズル
48 ノズル開口部
52 ノズル
54 開口部
56 ゴムチューブ
62 ノズル
63 開口部
64 逆止キャップ
66 逆止開口部
70 前記ノズル
74 注入液開口部
76 閉塞キャップ
78 係止部
80、84 溝部
82 嵌合リング
88,90,92 弾性Oリング
94,96,98,100 注入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原液管に挿入して注入液を原液内に供給するノズルであって、前記ノズルは一端が閉塞する閉塞端と、この閉塞端近傍のノズル側面に穿設される注入液開口部と、前記注入液開口部を隣接して被覆する2つ以上の弾性Oリングとを備える詰り防止付きノズル。
【請求項2】
前記弾性Oリングは、前記閉塞端を形成する閉塞キャップの端部とノズルに嵌合される嵌合リングとの間に嵌め込まれることを特徴とする請求項1記載の詰り防止付きノズル。
【請求項3】
弁の開口先に原液管に挿入して注入液を原液内に供給するノズルであって、前記ノズルは一端が閉塞する閉塞端と、この閉塞端近傍のノズル側面に穿設される注入液開口部と、前記注入液開口部を隣接して被覆する2つ以上の弾性Oリングとを備える詰り防止付きノズルが設けられる注入弁。
【請求項4】
注入液を供給する供給ポンプに接続される配管と、前記配管の先に請求項3記載の注入弁が設けられるサイホン阻止システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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