説明

認知負荷評価装置、認知負荷評価方法、及びプログラム

【課題】ユーザから直接データを取得することなく、ユーザが認知できる聴覚情報に基づいてユーザの認知負荷を評価し得る、認知負荷評価装置、認知負荷評価方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】ヒューマン・マシン・インターフェースを操作するユーザの認知負荷を評価するため、認知負荷評価装置10は、ヒューマン・マシン・インターフェースが表示された画面のイメージを含む画面情報、及び画面を使用してタスクを遂行するための操作情報を解析して、タスクに関連する聴覚オブジェクトを抽出する、情報解析部100と、聴覚オブジェクトが含む要素毎に、各要素がユーザに与える負荷を算出し、算出した各負荷に基づいて、聴覚オブジェクトに対するユーザの聴覚負荷を求める、聴覚負荷評価部300とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒューマン・マシン・インターフェース(以下「HMI:Human Machine Interface」という。)を操作するユーザの認知負荷を評価する、認知負荷評価装置、認知負荷方法、及びこれらを実現するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、優れたHMIを提供するため、種々の分野において、HMIを操作するユーザの認知負荷を評価する試みがなされている。例えば、特許文献1は、認知負荷評価装置の一例を開示している。特許文献1に開示された認知負荷評価装置は、特に、車両を運転するユーザの認知負荷(ワークロード)を評価する。
【0003】
特許文献1に開示された認知負荷評価装置は、データ取得部と、ワークロード推定部とを備えている。データ取得部は、ワークロード毎に、各種センサから、車両運転中のユーザの寄与行動に関するデータを取得する。ワークロード推定部は、データ取得部が取得したデータに基づいて、ワークロード毎に、車両運転中のユーザのワークロード値を推定する。なお、ここでいう、ワークロードとしては、運転ワークロード、機器操作ワークロード、聴覚的ワークロード、視覚的ワークロード、内因的ワークロードなどが挙げられる。
【0004】
このように、特許文献1に開示された認知負荷評価装置は、車両を運転中のユーザのワークロード値を推定できる。従って、特許文献1に開示された認知負荷評価装置によれば、当該車両のHMIに対する適切な評価を得ることができ、結果、HMIの研究開発が促進される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−33549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された認知負荷評価装置は、以下に示す第1の問題点及び第2の問題点を内在している。以下に説明する。
【0007】
第1の問題点は、特許文献1に開示された認知負荷評価装置では、ユーザが運転など何らかの作業中でなければ、ユーザの認知負荷を評価できない点である。これは、特許文献1に開示された認知負荷評価装置においては、認知負荷を評価するにあたり、各種センサを用いて作業中のユーザの行動に関するデータを取得する必要があるからである。
【0008】
第2の問題点は、特許文献1に開示された認知負荷評価装置では、HMIの操作に音が関わっていた場合に、音量、発話スピードなど、ユーザが聴覚情報として認知できる情報に基づいて、認知負荷を評価できない点である。これは、特許文献1に開示された認知負荷評価装置は、音楽コンテンツがクラシック及びロックのうちのいずれであるか、また、音声コンテンツがニュース及び天気予報のうちのいずれであるかなど、コンテンツの形態に基づいた評価しか行わないからである。
【0009】
[発明の目的]
本発明の目的の一例は、上記問題を解消し、ユーザから直接データを取得することなく、ユーザが認知できる聴覚情報に基づいてユーザの認知負荷を評価し得る、認知負荷評価装置、認知負荷評価方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一側面における認知負荷評価装置は、ヒューマン・マシン・インターフェースを操作するユーザの認知負荷を評価するための認知負荷評価装置であって、
ヒューマン・マシン・インターフェースが表示された画面のイメージを含む画面情報、及び前記画面を使用してタスクを遂行するための操作情報を解析して、前記タスクに関連する聴覚オブジェクトを抽出する、情報解析部と、
前記聴覚オブジェクトが含む要素毎に、各要素が前記ユーザに与える負荷を算出し、算出した各負荷に基づいて、前記聴覚オブジェクトに対する前記ユーザの聴覚負荷を求める、聴覚負荷評価部と、
を備えている、ことを特徴とする。
【0011】
また、上記目的を達成するため、本発明の一側面における認知負荷評価方法は、ヒューマン・マシン・インターフェースを操作するユーザの認知負荷を評価するための方法であって、
(a)ヒューマン・マシン・インターフェースが表示された画面のイメージを含む画面情報、及び前記画面を使用してタスクを遂行するための操作情報を解析して、前記タスクに関連する聴覚オブジェクトを抽出する、ステップと、
(b)前記聴覚オブジェクトが含む要素毎に、各要素が前記ユーザに与える負荷を算出し、算出した各負荷に基づいて、前記聴覚オブジェクトに対する前記ユーザの聴覚負荷を求める、ステップと、
を有している、ことを特徴とする。
【0012】
更に、上記目的を達成するため、本発明の一側面におけるプログラムは、コンピュータによって、ヒューマン・マシン・インターフェースを操作するユーザの認知負荷を評価するためのプログラムであって、
前記コンピュータに、
(a)ヒューマン・マシン・インターフェースが表示された画面のイメージを含む画面情報、及び前記画面を使用してタスクを遂行するための操作情報を解析して、前記タスクに関連する聴覚オブジェクトを抽出する、ステップと、
(b)前記聴覚オブジェクトが含む要素毎に、各要素が前記ユーザに与える負荷を算出し、算出した各負荷に基づいて、前記聴覚オブジェクトに対する前記ユーザの聴覚負荷を求める、ステップと、
を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明における、認知負荷評価装置、認知負荷評価方法、及びプログラムによれば、ユーザから直接データを取得することなく、ユーザが認知できる聴覚情報に基づいてユーザの認知負荷を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施の形態における認知負荷評価装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態における認知負荷評価装置の動作を示す流れ図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態において処理の対象となるHMI画面情報の一例を示す図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態において処理の対象となるHMI画面情報の一例を示す図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態において処理の対象となるHMI画面情報の一例を示す図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態において処理の対象となる操作情報の一例を示す図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態において用いられる参考情報の一例を示す図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態における認知負荷評価装置による出力結果の一例を示す図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態における認知負荷評価装置を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態における、認知負荷評価装置、認知負荷評価方法、及びプログラムについて、図1〜図9を参照しながら説明する。
【0016】
[装置構成]
最初に、本実施の形態における認知負荷評価装置の構成について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態における認知負荷評価装置の構成を示すブロック図である。図1に示す、本実施の形態における認知負荷評価装置10は、HMIを操作するユーザの認知負荷を評価するための装置である。図1に示すように、本実施の形態における認知負荷評価装置10は、主に、情報解析部100と、聴覚負荷評価部300とを備えている。
【0017】
情報解析部100は、HMIが表示された画面(以下「HMI画面」という。)のイメージを含む画面情報(以下「HMI画面情報」)、及びHMI画面を使用してタスクを遂行するための操作情報を解析して、タスクに関連する聴覚オブジェクトを抽出する。聴覚負荷評価部300は、抽出された聴覚オブジェクトが含む要素毎に、各要素がユーザに与える負荷を算出する。また、聴覚負荷評価部300は、算出した各負荷に基づいて、聴覚オブジェクトに対するユーザの聴覚負荷を求める。
【0018】
このように、認知負荷評価装置10では、ユーザに取り付けられたセンサではなく、HMI画面を使用するタスクに関連する各聴覚オブジェクトに基づいて、ユーザにおける聴覚負荷が取得されている。このため、認知負荷評価装置10によれば、ユーザから直接データを取得することなく、ユーザが認知できる聴覚情報に基づいてユーザの認知負荷を評価することができる。
【0019】
ここで、本実施の形態における認知負荷評価装置10の構成について更に具体的に説明する。図1に示すように、認知負荷評価装置10は、情報解析部100及び聴覚負荷評価部300に加えて、視覚負荷評価部200と、操作負荷評価部400と、周辺状況負荷評価部500とを備えている。
【0020】
また、認知負荷評価装置10は、後述するように、コンピュータに、本実施の形態におけるプログラムをインプリメントすることによって構築できる。更に、認知負荷評価装置10には、入力装置20と、出力装置30とが接続される。ここで、入力装置20としては、マウス及びキーボードといった入力デバイス、ネットワークを介して接続された端末装置などが挙げられる。また、出力装置30としては、液晶表示装置といった表示装置、プリンタなどが挙げられる。
【0021】
[情報解析部]
情報解析部100は、本実施の形態では、HMI画面情報と操作情報との解析によって、上述した聴覚オブジェクトに加えて、視覚オブジェクト、操作オブジェクト、周辺状況を抽出する。これらは認知負荷要因である。ここで、視覚オブジェクトとしては、HMI画面に表示されている、ボタン、メニュー、画像、及びテキストなどが挙げられる。また、聴覚オブジェクトとしては、タスクを遂行するためにHMI画面を操作したときに出力される、アラーム、音声メッセージなどが挙げられる。
【0022】
また、操作オブジェクトは、視覚オブジェクト及び聴覚オブジェクトのうち、タスクを遂行するための操作対象となるオブジェクトである。周辺状況としては、タスク遂行時のHMI画面周辺の照度といった視覚環境、HMI画面周辺の雑音の音圧といった聴覚環境、操作デバイスが配置されている位置といった操作環境、タスクの遂行開始から完遂までに許容される制約時間、並行処理が求められるタスクの数などが挙げられる。
【0023】
[視覚負荷評価部]
視覚負荷評価部200は、視覚オブジェクトに対するユーザの視覚負荷をさまざまな要素に基づいて求める。視覚負荷評価部200は、形式負荷演算部210と、配色負荷演算部220と、形状負荷演算部230と、密度負荷演算部240と、配置負荷演算部250と、視野負荷演算部260とを備える。
【0024】
形式負荷演算部210は、視覚オブジェクトの形式がユーザに与える負荷(以下「形式負荷」という。)を算出する。ここで「形式」とは、動画、アニメーション、静止画(写真、図)、記号、テキスト(文字、数字)など、視覚オブジェクトの表示形態を指す。例えば、形式負荷演算部210は、形式負荷VWLmを、以下の数1を用いて算出することができる。
【0025】
(数1)
VWLm =αvm×vm1 +βvm×vm2 +γvm×vm3 +δvm×vm4 +εvm×vm5 +ζvm×vm6 +ηvm×vm7
【0026】
上記数1において、vm1、vm2、vm3、vm4、vm5、vm6、及びvm7は、それぞれ、動画、アニメーション、写真、図、記号、文字、数字に対応し、HMI画面内に、対応するオブジェクトが存在するときに「1」、存在しないときに「0」の値をとる関数である。また、αvm、βvm、γvm、δvm、εvm、ζvmは、それぞれ、動画、アニメーション、写真、図、記号、文字、数字に対応する重みである。
【0027】
上記数1によれば、形式負荷は、HMI画面内に異なる形式の視覚オブジェクトが多く存在するほど負荷が大きくなるように算出される。例えば、HMI画面内に図、記号、文字、数字が存在し、重みがγ=ε=ζ=η=1の場合、形式負荷は4となる。また、vm1〜vm7の関数として、視覚オブジェクトの面積又は数に応じて変化する関数を用いてもよい。
【0028】
配色負荷演算部220は、視覚オブジェクトの配色がユーザに与える負荷(以下「配色負荷」という。)を算出する。配色負荷の算出は、類似画像検索技術で一般的に用いられている算出方法、例えば、色に関する特徴量の抽出結果を用いる算出方法などによって行うことができる。配色負荷は、画面全体の彩度、明度、又は両方が極端に低かったり、彩度差、明度差、又は両方が少なかったり、色相差が少なかったり、するほど負荷が大きくなるように算出されるのが良い。例えば、配色負荷演算部220は、配色負荷VWLcを、以下の数2を用いて算出することができる。
【0029】
(数2)
VWLc = vc1(W)
【0030】
上記数2において、vc1は、HMI画面Wの配色負荷を算出するための関数である。vc1は、画面全体の彩度又は明度が極端に低かったり、彩度差明度差が少なかったり、色相差が少なかったりするほど、大きな値を出力するように構成されている。
【0031】
形状負荷演算部230は、視覚オブジェクトの形状がユーザに与える負荷(以下「形状負荷」という。)を算出する。形状負荷は、視覚オブジェクトの形状が複雑なほど負荷が大きくなるように算出される。例えば、形状負荷演算部230は、形状負荷VWLsを、以下の数3を用いて算出することができる。
【0032】
(数3)
VWLs = Kvs × Σ(l^2/S) / n
【0033】
上記数3において、lは視覚オブジェクトの周囲長であり、Sは視覚オブジェクトの面積であり、l×l/Sは図形の複雑さを表す尺度である。nは視覚オブジェクトの総数である。また、Kvsは定数である。、上記数3から分かるように、形状負荷VWLsは、HMI画面に表示されている視覚オブジェクト全部の複雑度の平均値となっている。また、形状負荷の算出式としては、面積が小さいほど負荷が大きいとみなすのであれば、複雑度の代わりに、単純に面積の逆数が用いられていても良い。
【0034】
密度負荷演算部240は、視覚オブジェクトの密度がユーザに与える負荷(以下「密度負荷」という。)を算出する。密度負荷は、視覚オブジェクトの密度が高いほど負荷が大きくなるように算出される。例えば、密度負荷演算部240は、密度負荷VWLdを、以下の数4を用いて算出することができる。
【0035】
(数4)
VWLd = Kvd × (n / Ssum)
【0036】
上記数4において、nは視覚オブジェクトの総数、Ssumは視覚オブジェクトの抽出元のHMI画面全体の面積である。また、Kvdは定数である。
【0037】
配置負荷演算部250は、視覚オブジェクトの配置の状態がユーザに与える負荷(以下「配置負荷」という。)を算出する。配置負荷は、オブジェクトの配置がバラバラであるほど負荷が大きくなるように算出される。例えば、配置負荷演算部250は、配置負荷VWLpを、以下の数5を用いて算出することができる。
【0038】
(数5)
VWLp = Kvp × {Σ(x-X)^2 + Σ(y-Y)^2} / n
【0039】
上記数5において、x、yはそれぞれ、ある視覚オブジェクトのx座標値、y座標値である。X、Yはそれぞれすべての視覚オブジェクトのx座標値の平均値、y座標値の平均値である。nは視覚オブジェクトの総数である。また、Kvpは定数である。つまり、上記数5によれば、オブジェクトのx座標値の分散と、オブジェクトのy座標値の分散とを合わせた値が得られる。
【0040】
視野負荷演算部260は、視覚オブジェクトのHMI画面における位置、即ち、ユーザの視野に対する視覚オブジェクトの位置が、ユーザに与える負荷(以下「視野負荷」という。)を算出する。視野負荷は、視覚オブジェクトの位置がHMI画面の中心部から離れるほど負荷が大きくなるように算出される。例えば、視野負荷演算部260は、視野負荷WVLfを、以下の数6を用いて算出することができる。
【0041】
(数6)
WVLf = Kvf × Σ{1/fn(d)} / n
【0042】
上記数6において、fnは正規分布の確率密度関数、dはHMI画面の中心部からの距離、nは視覚オブジェクトの総数である。また、Kvfは定数である。つまり、上記数6では、視野負荷は、HMI画面に表示されている視覚オブジェクト全部の負荷の平均値となっている。また、ここでいう「負荷」は、正規分布に従って視覚オブジェクトがHMI画面の中心部から離れるほど値が大きくなる負荷を意味する。
【0043】
また、本実施の形態では、視覚負荷評価部200は、上記の各演算部以外の演算部を備えていても良い。視覚負荷評価部200は、HMI画面における表示の変化量がユーザに与える負荷、例えば、視覚オブジェクトのブリンク(点滅)、アニメーションの表示の激しさ等、これまで述べた負荷要素以外の要素がユーザに与える負荷を算出する演算部を備えていても良い。
【0044】
更に、本実施の形態では、視覚負荷評価部200は、上記の各演算部が算出した負荷を組み合わせて、視覚負荷を算出する。例えば、視覚負荷評価部200は、以下の数7を用いて、視覚負荷VWLを算出することができる。なお、下記数7において、α、β、γ、δ、ε、及びζは、それぞれ各負荷要素の重みである。
【0045】
(数7)
VWL = α×VWLm + β×VWLc + γ×VWLs + δ×VWLd + ε×VWLp + ζ×WVLf
【0046】
[聴覚負荷評価部]
聴覚負荷評価部300は、聴覚オブジェクトに対するユーザの聴覚負荷をさまざまな要素に基づいて求める。聴覚負荷評価部300は、音声負荷演算部310と、音圧負荷演算部320と、音高負荷演算部330とを備える。
【0047】
音声負荷演算部310は、音声メッセージの内容がユーザに与える負荷(以下「音声負荷」という。)を算出する。ここで「内容」とは、音声メッセージの「聞き取りやすさ」又は「理解のしやすさ」を意味する。一例として、話速度を用いて評価を行う場合を説明する。この場合、音声負荷演算部310は、音声メッセージの話速度が、一般的に聞き取りやすい平均的な話速度4.95[mora/sec]から離れるほど値が大きくなるように、音声負荷を算出する。例えば、音声負荷演算部310は、音声負荷AWLmを、以下の数8を用いて算出することができる。
【0048】
(数8)
AWLm = Kam × 1 / fn(s-4.95)
【0049】
上記数8において、sは音声メッセージの話速度、fnは正規分布の確率密度関数である。またKamは定数である。つまり、上記数8では、音声負荷AWLmは、正規分布に従って、音声メッセージの話速度が4.95[mora/sec]より離れるほど、値が大きくなるように算出される。
【0050】
音圧負荷演算部320は、聴覚オブジェクトの音圧がユーザに与える負荷(以下「音圧負荷」という。)を算出する。ここで「音圧」は、一般的に音量を表す「音圧レベル[dB]」で表される。音圧負荷は、音圧レベルが大きいほど値が大きくなるように算出される。例えば、音圧負荷演算部320は、音圧負荷AWLpを、以下の数9を用いて算出することができる。
【0051】
(数9)
AWLp = Kap × ap1(M)
【0052】
下記数9において、ap1(M)は音声メッセージMの音圧レベルである。また、Kapは定数である。
【0053】
音高負荷演算部330は、聴覚オブジェクトの音高がユーザに与える負荷(以下「音高負荷」という。)を算出する。ここで「音高」は、一般的に周波数で表され、高音が高い(周波数の高い音)ほど耳につくと言われている。音高負荷は、聴覚オブジェクトの周波数が、基準の周波数から離れるほど、値が大きくなるように算出される。例えば、音高負荷演算部30は、基準の周波数を440Hzとして、音高負荷AWLfを、以下の数10を用いて算出することができる。
【0054】
(数10)
AWLf = Kaf × 1 / fn(f-440)
【0055】
上記数10において、fnは正規分布の確率密度関数、fは聴覚オブジェクトの周波数である。また、Kafは定数である。つまり、上記の式では、正規分布に従って、聴覚オブジェクトの周波数が440Hzより離れるほど負荷が大きくなるように算出される。
【0056】
また、本実施の形態では、聴覚負荷評価部300は、上記の各演算部が算出した負荷を組み合わせて、聴覚負荷を算出する。例えば、聴覚負荷評価部300は、以下の数11を用いて、聴覚負荷AWLを算出することができる。
【0057】
(数11)
AWL = θ×AWLm + ι×AWLp + κ×AWLf
【0058】
上記数11において、θ、ι、及びκは、それぞれ各負荷要素の重みである。
【0059】
[操作負荷評価部]
操作負荷評価部400は、操作オブジェクトに対するユーザの操作負荷をさまざまな要素に基づいて求める。操作負荷評価部400は、動作負荷演算部410と、選択肢負荷演算部420とを備える。
【0060】
動作負荷演算部410は、ユーザのHMI操作に伴う動作がユーザ自身に与える負荷(以下「動作負荷」という。)を算出する。ここで「動作」とは、操作デバイスがキーボードの場合には「打鍵数」、マウスの場合には「ポインタ移動距離」及び「クリック操作」、タッチパネルの場合には、タップ、ピンチイン、ピンチアウトなどの「指動作」、及び「指移動距離」を意味する。「動作」は、操作デバイスによって異なる。
【0061】
ここで、一例として、キーボード操作とマウス操作とが用いられる場合の動作負荷について説明する。キーボード操作とマウス操作とに関しては、操作時間の予測手法としてそれぞれキーストロークレベルモデル、Fittsの法則が知られている。
【0062】
キーストロークレベルモデルは、キー入力に要する時間を予測するモデルであり、詳しくはキーボードからマウスへ手を移動させる時間、反対のマウスからキーボードへ手を移動させる時間、次の段階に進むための心理的準備時間などを含む。但し、本実施の形態では、簡単のため、キーボード上のキーを入力する時間のみを考えることとする。このとき、1つのキー入力に要する時間を200[ms]とすると、k個のキー入力に要する時間は、200×k[ms]となる。
【0063】
また、Fittsの法則は、ユーザがカーソルを現在位置から目標ターゲットに移動するまでの操作時間T[ms]を予測するものであり、操作時間Tは一般に下記の数12で表される。
【0064】
(数12)
T = a + b × log2(A/Ws + 1)
【0065】
上記数12において、aは操作効率、同じくbも操作効率、Aはカーソル現在位置とターゲットとの距離、Wsはターゲットとなる操作オブジェクトの大きさである。一般的には、a=50、b=150程度である。
【0066】
そして、キーストロークレベルモデル及びFittsの法則は操作時間を算出するものであるが、認知負荷を算出する場合に利用できる。つまり、操作時間が大きいほど動作負荷は大きくなると考えられるので、この考えに基づいて動作負荷を算出すれば良い。
【0067】
例えば、クリック操作については、1回のマウスクリックに要する時間を150[ms]とすると、s回のクリックに要する時間は150×s[ms]となる。従って、動作負荷演算部410は、キーボードとマウスとを用いる場合の動作負荷OWLmを、以下の数13を用いて算出することができる。
【0068】
(数13)
OWLm = αom × (200×k) + βom × {50 + 150 × log(A/W + 1) + 150 × s}
【0069】
上記数13において、αom、βomは、それぞれキーボード操作およびマウス操作に対応する重みである。
【0070】
選択肢負荷演算部420は、HMI操作時の選択肢の数がユーザに与える負荷(以下「選択肢負荷」という。)を算出する。具体的には、選択肢負荷は、HMI画面上の複数のボタン及びメニューなどから、ユーザが1つのオブジェクトを選択する場合に、ユーザにかかる負荷であり、選択肢が多いほど値は大きくなる。一般的に、n個の選択肢から1つを選ぶ場合の困難度は「Hickの法則」として知られており、すべての選択肢が均等に選択されると仮定すると、その困難度Hは、以下の数14によって算出される。
【0071】
(数14)
H = log2(n+1)
【0072】
上記数14は、「すべての選択肢が等確率で選択される場合、その選択の困難度は選択肢の数の対数に比例する」ことを意味している。選択肢負荷がHickの法則に従うとすると、選択肢負荷演算部420は、選択肢負荷OWLsを、以下の数15を用いて算出することができる。
【0073】
(数15)
OWLs = Kos × log(n+1)
【0074】
上記数15において、nは選択肢の数である。また、Kosは定数である。
【0075】
また、本実施の形態では、操作負荷評価部400は、上記の各演算部が算出した負荷を組み合わせて、操作負荷を算出する。例えば、操作負荷評価部400は、以下の数16を用いて、操作負荷OWLを算出することができる。
【0076】
(数16)
OWL = λ×OWLm + μ×OWLs
【0077】
上記数16において、λ、μはそれぞれ各負荷要素の重みである。
【0078】
[周辺状況負荷評価部]
周辺状況負荷評価部500は、周辺状況に対するユーザの負荷をさまざまな要素に基づいて評価する。周辺状況負荷評価部500は、視覚環境負荷演算部510と、聴覚環境負荷演算部520と、操作環境負荷演算部530と、制約時間負荷演算部540と、並行タスク負荷演算部550とを備える。
【0079】
視覚環境負荷演算部510は、HMI画面周辺の照度など、ユーザがHMIを操作してタスクを遂行する際の視覚環境がユーザに与える負荷(以下「視覚環境負荷」という。)を算出する。例えば、「VDT(Visual Display Terminals)作業における労働衛生管理のためのガイドライン」では、「ディスプレイ画面上における照度は500ルクス以下、書類上及びキーボード上における照度は300ルクス以上とすること」と記されている。これに従うとすると、視覚環境負荷演算部510は、視覚環境負荷EWLvを、以下の数17を用いて算出することができる。
【0080】
(数17)
EWLv = Kev × 1 / fd(lx-400)
【0081】
上記数17において、fdは標準正規分布の確率密度関数、lxはユーザがHMI操作を行う環境の照度[ルクス]である。また、Kevは定数である。上記数17によれば、視覚環境負荷EWLvは、ユーザがHMI操作を行う環境の照度が、400ルクスから離れるほど値が大きくなるように算出される。
【0082】
聴覚環境負荷演算部520は、HMI画面周辺の雑音の音圧など、ユーザがHMIを操作してタスクを遂行する際の聴覚環境がユーザに与える負荷(以下「聴覚環境負荷」という。)を算出する。例えば、雑音の音圧負荷を考えると、聴覚環境負荷演算部520は、聴覚環境負荷EWLaを、以下の数18を用いて算出することができる。
【0083】
(数18)
EWLa = Kea × ea1(N)
【0084】
上記数18において、ea1(N)は雑音Nの音圧レベルである。また、Keaは定数である。
【0085】
操作環境負荷演算部530は、操作デバイスの操作環境がユーザに与える負荷(以下「操作環境負荷」)を算出する。操作デバイスの操作環境としては、例えば、ユーザに対する操作デバイスの位置、ユーザの操作姿勢などが挙げられる。例えば、ユーザと操作デバイスとの距離を操作環境とした場合、操作環境負荷演算部530は、操作環境負荷EWLoを、上述のFittsの法則に従って、以下の数19を用いて算出することができる。
【0086】
(数19)
EWLo = Keo × {a + b × log(A/Ws + 1)}
【0087】
上記数19において、Keoは定数である。また、上記数19において、aは操作効率、同じくbも操作効率、Aはユーザの席と操作デバイスとの距離、Wsは操作デバイスの大きさである。
【0088】
但し、上述の数12の場合と異なり、上記数19では、操作時間(= a + b × log2(A/Ws + 1))は、マウスカーソルの移動にかかる時間ではなく、ユーザがその腕を操作デバイスまで移動するのにかかる時間である。よって、上記数19においては、特にbの値が大きくなる。例えば、b=500とすると、操作環境負荷演算部530は、操作環境負荷EWLoを、更に以下の数20を用いて算出する。
【0089】
(数20)
EWLo = Keo × {50 + 500 × log(A/W + 1)}
【0090】
制約時間負荷演算部540は、タスク遂行開始から完遂までに許容される制約時間がユーザに与える負荷(以下「制約時間負荷」という。)を算出する。一般的に、制約時間負荷は、作業時間に余裕があるときは小さくなり、作業時間に余裕がないときは大きくなる。制約時間tを横軸としたときに、制約時間負荷が正規分布に従うとすると、制約時間負荷演算部540は、制約時間負荷EWLtを、以下の数21を用いて算出することができる。
【0091】
(数21)
EWLt = Ket × fd(t)
【0092】
上記数21において、fdは、正規分布の確率密度関数である。tは、あるタスクの遂行開始から完遂までにかかる時間(制約時間)である。また、Ketは定数である。
【0093】
並行タスク負荷演算部550は、現在操作対象としているタスク以外に並行して遂行することが求められるタスクの数(即ち、並行処理が求められるタスクの数)が、ユーザに与える負荷(以下「並行タスク負荷という。」)を算出する。並行タスク負荷は、一般的に、並行して遂行することが求められるタスクの数が多いほど、値が大きくなる。例えば、並行処理が求められるタスクの数pに対して、並行タスク負荷が指数関数的に大きくなるとすると、並行タスク負荷演算部550は、並行タスク負荷EWLpを、以下の数22を用いて算出することができる。なお、以下の数22において、Kepは定数である。
【0094】
(数22)
EWLp = Kep × exp(p)
【0095】
また、本実施の形態では、周辺状況負荷評価部500は、上記の各演算部が算出した負荷を組み合わせて、周辺状況負荷を算出する。例えば、周辺状況負荷評価部500は、以下の数23を用いて、周辺状況負荷EWLを算出することができる。
【0096】
(数23)
EWL = ν×EWLv + ξ×EWLa + ο×EWLo + π×EWLt + ρ×EWLp
【0097】
ここで、上記数23において、ν、ξ、ο、π、ρは、それぞれ各負荷要素の重みである。
【0098】
統合負荷評価部600は、視覚負荷評価部200、聴覚負荷評価部300、操作負荷評価部400、及び周辺状況負荷評価部500、それぞれが算出した負荷を統合して、ユーザの認知負荷を算出する。
【0099】
ここで、負荷の統合は、各評価部が算出した負荷を組み合わせることによって行われても良いし、各評価部が備える全部又は一部の演算部が算出した負荷を組み合わせることによって行われても良い。例えば、総合負荷評価部600は、以下の数24を用い、各評価部が算出した負荷を組み合わせて、認知負荷WLを算出することができる。
【0100】
(数24)
WL = σ×VWL + τ×AWL + υ×OWL + φ×EWL
【0101】
上記数24において、σ、τ、υ、φは、各負荷の重みである。
【0102】
本実施の形態では、統合負荷評価部600は、HMI画面毎又はタスクのステップ毎の認知負荷、各評価部が算出した負荷、各演算部が算出した負荷を算出しても良い。更に、総合負荷評価部600は、タスクにおけるステップ単位の認知負荷の平均値/分散値、各評価部が算出した負荷の平均値/分散値、各演算部が算出した負荷の平均値/分散値を算出しても良い。
【0103】
また、総合負荷評価部600は、タスクにおける全ステップの認知負荷の総和、各評価部が算出した負荷の総和、各演算部が算出した負荷の総和を算出しても良い。更に、総合負荷評価部600は、ステップ間の認知負荷の変化量、各評価部が算出した負荷の変化量、各演算部が算出した負荷の変化量を算出しても良い。
【0104】
[装置動作]
次に、本発明の実施の形態における認知負荷評価装置10の動作について図2〜図8を用いて説明する。図2は、本発明の実施の形態における認知負荷評価装置の動作を示す流れ図である。以下の説明においては、適宜図1を参酌する。また、本実施の形態では、認知負荷評価装置10を動作させることによって、認知負荷評価方法が実施される。よって、本実施の形態における認知負荷評価方法の説明は、以下の認知負荷評価装置10の動作説明に代える。
【0105】
[ステップA1]
最初に、図2に示すように、情報解析部100が、入力装置20からのHMI情報の入力を受け付ける(ステップA1)。HMI情報は、HMI画面情報、操作情報、負荷の算出に必要なその他の参考情報を含む。
【0106】
ここで、入力されるHMI画面情報の例を図3、図4、図5に示す。図3〜図5は、それぞれ、本発明の実施の形態において処理の対象となるHMI画面情報の一例を示す図である。具体的には、図3は、操作対象となるHMIのメイン画面を示し、図4は、図3のメイン画面上で「ファイル」メニューを選択したときの画面を示し、図5は、図4の画面上で「開く」を選択したときに表示されるダイアログを示す。
【0107】
また、操作情報の例を図6に示す。図6は、本発明の実施の形態において処理の対象となる操作情報の一例を示す図である。図6に示す操作情報は、6つのステップS1〜S6を含み、タスク「ファイル名"xxx.txt"のファイルを開く」を実行する際の操作情報を表している。また、参考情報の例を図7に示す。図7は、本発明の実施の形態において用いられる参考情報の一例を示す図である。
【0108】
[ステップA2]
次に、情報解析部100が、ステップA1で受け付けたHMI情報を解析し、図3〜図5に示すHMI画面情報から、ボタン、メニュー、及びテキストなどの視覚オブジェクトを抽出する(ステップA2)。また、ステップA2では、情報解析部100は、図6に示す操作情報を解析し、音声メッセージなどの聴覚オブジェクト、タスクを遂行するための操作対象となる操作オブジェクトも抽出する。さらに、情報解析部100は、図7に示す参考情報から、負荷の算出に必要な情報を抽出する。
【0109】
具体的には、情報解析部100は、図3に示したHMI画面情報から、ウインドウタイトルの文字列「ABCアプリ」、4つのメニュー「ファイル」、「編集」、「検索」、「ヘルプ」を抽出する。さらに、情報解析部100は、図4に示したHMI画面情報からは、「ファイル」メニューの5つのアイテム、「新規作成 Ctrl+N」、「開く... Ctrl+O」、「閉じる」、「保存する... Ctrl+S」、「印刷する... Ctrl+P」を抽出する。
【0110】
また、情報解析部100は、図5に示したHMI画面情報からは、ウインドウタイトルの文字列「ファイルを開く」、文字列「開くファイルを指定してください。」、ファイル名入力用のテキストフィールド、3つのボタン「参照...」、「OK」、「キャンセル」を抽出する。更に、情報解析部100は、図6に示した操作情報からは、6つのステップからなる操作内容を抽出し、図7に示した参考情報からは、各項目の情報とそれに対応する値とを抽出する。
【0111】
[ステップA3]
次に、視覚負荷評価部200が、HMI情報で表されるタスクについて視覚負荷を求める(ステップA3)。ステップA3では、視覚評価部200は、図6に示したステップS1〜S6それぞれ毎に、視覚負荷を求める。
【0112】
ステップA3において、視覚負荷評価部200は、先ず、図6に示した操作情報のステップS1について視覚負荷を算出する。具体的には、形式負荷演算部210は、「ABCアプリ」ウインドウに表示されている、テキスト文字列「ABCアプリ」、「ファイル」、「編集」、「検索」、「ヘルプ」について形式負荷を算出する。このとき、形式負荷として算出された値をVWLm(S1)とする。
【0113】
配色負荷演算部220は、「ABCアプリ」ウインドウの配色負荷を算出する。このとき、配色負荷として算出された値をVWLc(S1)とする。
【0114】
形状負荷演算部230は、ウインドウタイトルの文字列「ABCアプリ」、4つのメニュー「ファイル」、「編集」、「検索」、「ヘルプ」の形状負荷を算出する。このとき、形状負荷として算出された値をVWLs(S1)とする。
【0115】
密度負荷演算部240は、「ABCアプリ」ウインドウ上に5つの視覚オブジェクトがあるとして密度負荷を算出する。このとき、密度負荷として算出された値をVWLd(S1)とする。
【0116】
配置負荷演算部250は、「ABCアプリ」ウインドウに対する5つの視覚オブジェクトの相対座標を用いて配置負荷を算出する。このとき、配置負荷として算出された値をVWLp(S1)とする。
【0117】
視野負荷演算部260は、「ABCアプリ」ウインドウの中心座標から5つの視覚オブジェクトまでの距離を用いて視野負荷を算出する。このとき、視野負荷として算出された値をVWLf(S1)とする。
【0118】
その後、視覚負荷評価部200は、上記の算出された各負荷を合算する。そして、視覚負荷評価部200は、図6に示した操作情報のステップS1における視覚負荷VWL(S1)を、下記の数25を用いて算出する。
【0119】
(数25)
VWL(S1) = VWLm(S1)+VWLc(S1)+VWLs(S1)+VWLd(S1)+VWLp(S1)+VWLf(S1)
【0120】
同様にして、視覚負荷評価部200は、図6に示した操作情報のステップS2についても視覚負荷を算出する。具体的には、視覚負荷評価部200は、図4に示した「ABCアプリ」ウインドウの「ファイル」メニューを選択した状態の画面を用いて視覚負荷を算出する。いま、図6に示した操作情報のステップS2における視覚負荷として算出された値をVWL(S2)とする。
【0121】
更に、視覚負荷評価部200は、図6に示した操作情報のステップS3については、図5に示した「ファイルを開く」ダイアログ画面を用いて視覚負荷を算出する。いま、ステップS3における視覚負荷として算出された値をVWL(S3)とする。
【0122】
また、視覚負荷評価部200は、図6に示した操作情報のステップS4については、視覚負荷がないのでステップS4における視覚負荷はVWL(S4) = 0とする。更に、視覚負荷評価部200は、図6に示した操作情報のステップS5およびステップS6については、HMI画面がステップS3の場合と変わらないのでVWL(S5) = VWL(S6) = VWL(S3)とする。
【0123】
なお、ステップS3、ステップS5、ステップS6については、「ABCアプリ」ウインドウと、「ファイルを開く」ダイアログとが、同時にHMI画面として表示されている。従って、視覚負荷評価部200は、これら2つの画面の視覚負荷を合算して得られた値を視覚負荷として用いることもできる。
【0124】
[ステップA4]
次に、聴覚負荷評価部300が、HMI情報で表されるタスクについて聴覚負荷を算出する(ステップA4)。但し、図6に示した操作情報では、ステップS4を除き、各ステップにおいて、聴覚オブジェクトは存在していない。従って、これらステップの聴覚負荷は0となるので、聴覚負荷評価部300は、AWL(S1)=AWL(S2)=AWL(S3)=AWL(S5)=AWL(S6)=0と評価する。
【0125】
一方、図6に示した操作情報のステップS4に対しては、音声負荷演算部310は、聴覚オブジェクトとして抽出された音声メッセージ「開くファイルを指定してください」を用いて音声負荷を算出する。具体的には、音声負荷演算部310は、図7に示した参考情報の「音声メッセージの話速度」の値4.95[mora/sec]を用いて、音声負荷を算出する。いま、音声負荷として算出された値をAWLm(S4)とする。
【0126】
音圧負荷演算部320は、聴覚オブジェクトとして抽出された音声メッセージの音圧負荷を算出する。具体的には、音高負荷演算部330は、図7に示した参考情報の「音声メッセージの音圧」の値50[dB]を用いて、音圧負荷を算出する。いま、音圧負荷として算出された値をAWLp(S4)とする。
【0127】
音高負荷演算部330は、聴覚オブジェクトとして抽出された音声メッセージの音高負荷を算出する。具体的には、音高負荷演算部330は、図7に示した参考情報の「音声メッセージの周波数」の値440[Hz]を用いて、音高負荷を算出する。いま、音高負荷として算出された値をAWLf(S4)とする。
【0128】
その後、ステップA4において、聴覚負荷評価部300は、上記の各負荷を足しあわせ、ステップS4における聴覚負荷を、VWL(S4) = AWLm(S4)+AWLp(S4)+AWLf(S4)として算出する。
【0129】
[ステップA5]
次に、操作負荷評価部400が、HMI情報で表されるタスクについて操作負荷を算出する(ステップA5)。ステップA5では、操作負荷評価部400は、図6に示したステップS1〜S6それぞれ毎に、操作負荷を求める。
【0130】
操作負荷評価部400は、先ず、図6に示した操作情報のステップS1について操作負荷を算出する。具体的には、ステップA5において、動作負荷演算部410は、「ABCアプリ」ウインドウの中心座標から「ファイル」メニューまでの距離、「ファイル」メニューの面積、さらに1回のマウスクリックから、動作負荷を算出する。いま、動作負荷として算出された値をOWLm(S1)とする。
【0131】
選択肢負荷演算部420は、「ファイル」、「編集」、「検索」、「ヘルプ」の4つのメニューから「ファイル」メニューを選択することについて、選択肢負荷を算出する。いま、選択肢負荷として算出された値をOWLs(S1)とする。
【0132】
その後、ステップA5において、操作負荷評価部400は、上記の算出された各負荷を足しあわせ、図6に示した操作情報のステップS1における操作負荷を、OWL(S1) = OWLm(S1)+OWLs(S1)として算出する。
【0133】
同様にして、操作負荷評価部400は、図6に示した操作情報のステップS2についても操作負荷を算出する。具体的には、動作負荷演算部410は、図4に示した「ABCアプリ」ウインドウの「ファイル」メニューから「開く...」メニューまでの距離、「開く...」メニューの面積、1回のマウスクリックにかかる動作負荷を算出する。また、選択肢負荷演算部420は、「新規作成」、「開く...」、「閉じる」、「保存する...」、「印刷する...」の5つのメニューから「開く...」メニューを選択することについての選択肢負荷を算出する。そして、操作負荷評価部400は、これらの算出した値を足しあわせて、操作負荷として算出する。いま、図6に示した操作情報のステップS2における操作負荷として算出された値をOWL(S2)とする。
【0134】
また、図6に示した操作情報のステップS3およびステップS4においては、操作は行われないので、操作負荷評価部400は、操作負荷を0とする。
【0135】
更に、図6に示した操作情報のステップS5については、自動的にフォーカスがテキストフィールドに移っているものとすると、マウス操作に関する負荷は0となる。よって、操作負荷評価部400は、文字列「xxx.txt」を入力するための7回の打鍵のみについて、操作負荷を算出する。いま、図6に示した操作情報のステップS5における操作負荷として算出された値をOWL(S5)とする。
【0136】
また、図6に示した操作情報のステップS6については、動作負荷演算部410は、「ファイルを開く」ダイアログの中心座標から「OK」ボタンまでの距離、「OK」ボタンの面積、1回のマウスクリックにかかる動作負荷を算出する。また、選択肢負荷演算部420は、「参照」、「OK」、「キャンセル」の3つのボタンから1つの「OK」ボタンを選ぶことについての選択肢負荷も算出する。そして、操作負荷評価部400は、これらの算出した値を足しあわせて、操作負荷を算出する。いま、図6に示した操作情報のステップS6における操作負荷として算出された値をOWL(S6)とする。
【0137】
[ステップA6]
次に、周辺状況負荷評価部500が、HMI情報で表されるタスクについて周辺状況負荷を算出する(ステップA6)。具体的には、ステップA6において、視覚環境負荷演算部510は、図7に示した参考情報の「照度」の値「400[lx]」を用いて、視覚環境に関する負荷を算出する。いま、視覚環境に関する負荷として算出された値をEWLv(S)とする。
【0138】
聴覚環境負荷演算部520は、図7に示した参考情報の「周囲の雑音の音圧」の値20[dB]を用いて、聴覚環境に関する負荷を算出する。いま、聴覚環境に関する負荷として算出された値をEWLa(S)とする。
【0139】
操作環境負荷演算部530は、図7に示した参考情報の「ユーザの席とキーボードとの距離」の値400[mm]、「キーボードの面積」の値250[mm]×500[mm]、「ユーザの席とマウスとの距離」の値500[mm]、「マウスの面積」の値100[mm]×70[mm]を用いて、操作環境に関する負荷を算出する。いま、キーボード操作環境に関する負荷として算出された値をEWLo(Sk)、マウス操作環境に関する負荷として算出された値をEWLo(Sm)とする。
【0140】
制約時間負荷演算部540は、図7に示した参考情報の「タスク遂行の制約時間」の値を用いて、制約時間に関する負荷を算出する。但し、図7に示した参考情報では、タスク遂行の制約時間は「なし」となっているので、制約時間に関する負荷は0となる。
【0141】
並行タスク負荷演算部550は、図7に示した参考情報の「並行タスク数」の値を用いて並行タスク数に関する負荷を算出する。但し、図7に示した参考情報では、並行タスク数は0であるので、並行タスク数に関する負荷も0となる。
【0142】
そして、図6に示した操作情報のステップS1、S2、及びS6における周辺状況負荷(EWL(S1)、EWL(S2)、EWL(S6))は、視覚環境負荷、聴覚環境負荷、及びマウス操作環境負荷を足しあわせることによって、即ち、下記の数26を用いて算出される。
【0143】
(数26)
EWL(S1) = EWL(S2) = EWL(S6) = EWLv(S) + EWLa(S) + EWLo(Sm)
【0144】
また、図6に示した操作情報のステップS3及びS4においては、操作が行われていないので、周辺状況負荷は、視覚環境負荷と聴覚環境負荷とを足しあわせることによって、即ち、下記の数27を用いて算出される。
【0145】
(数27)
EWL(S3)=EWL(S4)=EWLv(S) + EWLa(S)
【0146】
更に、図6に示した操作情報のステップS5における周辺状況負荷は、視覚環境負荷、聴覚環境負荷、およびキーボード操作環境負荷を足しあわせることによって、即ち、下記の数28を用いて算出される。
【0147】
(数28)
EWL(S5)=EWLv(S) + EWLa(S) + EWLo(Sk)
【0148】
また、図6に示した操作情報のステップS1、S2、S5およびS6においては、ユーザが各ステップを実行する際に、視覚を必要とする。従って、ステップS1、S2、S5及びS6については、視覚環境負荷の重みを大きくしても良い。一方、聴覚を必要とするステップS4については、聴覚環境負荷の重みを大きくしても良い。
【0149】
また、本実施の形態において、ステップA3〜A6の実行順序は、上述した順序に限定されるものではない。ステップA3〜A6は、並行に実行されていても良いし、任意の順序で実行されていても良い。
【0150】
[ステップA7]
次に、統合評価部600が、ステップA3〜ステップA6で得られた結果に基づいて、即ち、各評価部又は各演算部がそれぞれ算出した負荷を統合して、認知負荷を算出する(ステップA7)。
【0151】
例えば、各評価部が、上記数24を用いて、算出した値を足しあわせたものを認知負荷として算出すると、ステップS1における認知負荷は、下記の数29の通りとなる。同様にして、ステップS2における認知負荷は下記の数30の通り、ステップS3における認知負荷は下記の数31の通り、ステップS4における認知負荷は下記の数32の通り、ステップS5における認知負荷は下記の数33の通り、ステップS6における認知負荷は下記の数34の通りとなる。なお、下記数29〜数34においては、簡単のために、各負荷の重みσ、τ、υ、φ(上記数24参照)の値は、すべて1に設定されている。
【0152】
(数29)
WL(S1)=VWL(S1)+OWL(S1)+EWL(S1)
【0153】
(数30)
WL(S2)=VWL(S2)+OWL(S2)+EWL(S2)
【0154】
(数31)
WL(S3)=VWL(S3)+OWL(S3)+EWL(S3)
【0155】
(数32)
WL(S4)=VWL(S4)+AWL(S4)+OWL(S4)+EWL(S4)
【0156】
(数33)
WL(S5)=VWL(S5)+OWL(S5)+EWL(S5)
【0157】
(数34)
WL(S6)=VWL(S6)+OWL(S6)+EWL(S6)
【0158】
[ステップA8]
最後に、統合評価部600が、算出した認知負荷を表示装置30に出力し、図8に示すように、結果を表示装置の表示画面に表示させる(ステップA8)。図8は、本発明の実施の形態における認知負荷評価装置による出力結果の一例を示す図である。図8の例では、図6に示したステップS1からS6の各ステップの認知負荷は、棒グラフで表されている。またステップS1からS6までの認知負荷の平均値、さらに各ステップの視覚負荷、聴覚負荷、操作負荷、周辺状況負荷が折れ線グラフで表されている。
【0159】
ユーザが図8に示した表示結果を見ることで、例えば、「ステップS3の認知負荷が最も高い」、「ステップS2とS3との間で急激に認知負荷が上昇している」、「ステップS4とS5との間で操作負荷の上昇が大きい」など、認知負荷の観点からのHMIの特徴や問題点などが容易に把握でき、HMIの改良・改善などに活用することができる。
【0160】
[実施の形態における効果]
次に、本実施の形態の効果について説明する。本実施の形態では、設計段階でのHMI画面イメージなどのHMI情報を解析することによって、認知負荷を推定することができる。従って、HMIの開発段階などにおいて、ユーザが作業する前に、即ち、作業中のユーザから各種センサを用いてデータを取得しなくても、認知負荷を推定できる。
【0161】
また、本実施の形態では、さらに、HMI情報から抽出した聴覚オブジェクトがユーザに与える負荷を評価できるため、ユーザが聴覚情報として認知するコンテンツの情報量及び複雑さに基づいて、ユーザの認知負荷を推定できる。
【0162】
更に、本実施の形態では、聴覚オブジェクトに対する負荷だけでなく、雑音、スピーカとユーザとの距離など周辺状況の負荷も統合して、認知負荷を評価することもできる。このため、本実施の形態によれば、ユーザが聴覚情報としてコンテンツを認知する際の周辺状況に応じた負荷を推定することもできる。
【0163】
[プログラム]
本発明の実施の形態におけるプログラムは、コンピュータに、図2に示すステップA1〜A8を実行させるプログラムであれば良い。このプログラムをコンピュータにインストールし、実行することによって、本実施の形態における認知負荷評価装置10と認知負荷評価方法とを実現することができる。この場合、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)は、情報解析部100、視覚負荷評価部200、聴覚負荷評価部300、操作負荷評価部400、及び周辺状況負荷評価部500として機能し、処理を行なう。
【0164】
ここで、実施の形態におけるプログラムを実行することによって、認知負荷評価装置10を実現するコンピュータについて図9を用いて説明する。図9は、本発明の実施の形態における認知負荷評価装置10を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
【0165】
図9に示すように、コンピュータ110は、CPU111と、メインメモリ112と、記憶装置113と、入力インターフェイス114と、表示コントローラ115と、データリーダ/ライタ116と、通信インターフェイス117とを備える。これらの各部は、バス121を介して、互いにデータ通信可能に接続される。
【0166】
CPU111は、記憶装置113に格納された、本実施の形態におけるプログラム(コード)をメインメモリ112に展開し、これらを所定順序で実行することにより、各種の演算を実施する。メインメモリ112は、典型的には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性の記憶装置である。また、本実施の形態におけるプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体120に格納された状態で提供される。なお、本実施の形態におけるプログラムは、通信インターフェイス117を介して接続されたインターネット上で流通するものであっても良い。
【0167】
また、記憶装置113の具体例としては、ハードディスクの他、フラッシュメモリ等の半導体記憶装置が挙げられる。入力インターフェイス114は、CPU111と、キーボード及びマウスといった入力機器118との間のデータ伝送を仲介する。表示コントローラ115は、ディスプレイ装置119と接続され、ディスプレイ装置119での表示を制御する。データリーダ/ライタ116は、CPU111と記録媒体120との間のデータ伝送を仲介し、記録媒体120からのプログラムの読み出し、及びコンピュータ110における処理結果の記録媒体120への書き込みを実行する。通信インターフェイス117は、CPU111と、他のコンピュータとの間のデータ伝送を仲介する。
【0168】
また、記録媒体120の具体例としては、CF(Compact Flash)及びSD(Secure Digital)等の汎用的な半導体記憶デバイス、フレキシブルディスク(Flexible Disk)等の磁気記憶媒体、又はCD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)などの光学記憶媒体が挙げられる。
【0169】
上述した実施の形態の一部又は全部は、以下に記載する(付記1)〜(付記24)によって表現することができるが、以下の記載に限定されるものではない。
【0170】
(付記1)
ヒューマン・マシン・インターフェースを操作するユーザの認知負荷を評価するための認知負荷評価装置であって、
ヒューマン・マシン・インターフェースが表示された画面のイメージを含む画面情報、及び前記画面を使用してタスクを遂行するための操作情報を解析して、前記タスクに関連する聴覚オブジェクトを抽出する、情報解析部と、
前記聴覚オブジェクトが含む要素毎に、各要素が前記ユーザに与える負荷を算出し、算出した各負荷に基づいて、前記聴覚オブジェクトに対する前記ユーザの聴覚負荷を求める、聴覚負荷評価部と、
を備えている、ことを特徴とする認知負荷評価装置。
【0171】
(付記2)
前記ユーザがタスクを遂行する際の周辺状況が含む要素毎に、各要素が前記ユーザに与える負荷を算出し、算出した各負荷に基づいて、前記周辺状況に対する前記ユーザの周辺状況負荷を求める、周辺状況負荷評価部と、
前記聴覚負荷評価部によって算出された前記負荷又は求められた前記聴覚負荷と、前記周辺状況負荷評価部によって算出された前記負荷又は求められた前記周辺状況負荷とを統合し、統合結果に基づいて、前記ユーザの認知負荷を評価する、統合評価部と、
を更に備えている、付記1に記載の認知負荷評価装置。
【0172】
(付記3)
前記聴覚オブジェクトが音声メッセージである場合に、
前記聴覚負荷評価部が、前記聴覚オブジェクトが含む要素として、前記音声メッセージの内容を用い、前記音声メッセージの内容が前記ユーザに与える負荷を算出する、付記1または2に記載の認知負荷評価装置。
【0173】
(付記4)
前記聴覚負荷評価部が、前記聴覚オブジェクトが含む要素として、前記聴覚オブジェクトの音圧を用い、前記聴覚オブジェクトの音圧が前記ユーザに与える負荷を算出する、付記1〜3のいずれかに記載の認知負荷評価装置。
【0174】
(付記5)
前記聴覚負荷評価部が、前記聴覚オブジェクトが含む要素として、前記聴覚オブジェクトの音高を用い、前記聴覚オブジェクトの音高が前記ユーザに与える負荷を算出する、付記1〜4のいずれかに記載の認知負荷評価装置。
【0175】
(付記6)
前記周辺状況負荷評価部が、前記ユーザがタスクを遂行する際の周辺状況が含む要素として、視覚環境、聴覚環境、及び操作環境を用い、それぞれ毎に、それぞれが前記ユーザに与える負荷を算出する、付記2に記載の認知負荷評価装置。
【0176】
(付記7)
前記周辺状況負荷評価部が、前記ユーザがタスクを遂行する際の周辺状況が含む要素として、前記タスクの遂行開始から完遂までに許容される制約時間を用い、前記タスクの遂行開始から完遂までに許容される制約時間が前記ユーザに与える負荷を算出する、付記2または6に記載の認知負荷評価装置。
【0177】
(付記8)
前記周辺状況負荷評価部が、前記ユーザがタスクを遂行する際の周辺状況が含む要素として、並行処理が求められる前記タスクの数を用い、並行処理が求められる前記タスクの数が前記ユーザに与える負荷を算出する、付記2、6、または7に記載の認知負荷評価装置。
【0178】
(付記9)
ヒューマン・マシン・インターフェースを操作するユーザの認知負荷を評価するための方法であって、
(a)ヒューマン・マシン・インターフェースが表示された画面のイメージを含む画面情報、及び前記画面を使用してタスクを遂行するための操作情報を解析して、前記タスクに関連する聴覚オブジェクトを抽出する、ステップと、
(b)前記聴覚オブジェクトが含む要素毎に、各要素が前記ユーザに与える負荷を算出し、算出した各負荷に基づいて、前記聴覚オブジェクトに対する前記ユーザの聴覚負荷を求める、ステップと、
を有している、ことを特徴とする認知負荷評価方法。
【0179】
(付記10)
(c)前記ユーザがタスクを遂行する際の周辺状況が含む要素毎に、各要素が前記ユーザに与える負荷を算出し、算出した各負荷に基づいて、前記周辺状況に対する前記ユーザの周辺状況負荷を求める、ステップと、
(d)前記(b)のステップによって算出された前記負荷又は求められた前記聴覚負荷と、前記(c)のステップによって算出された前記負荷又は求められた前記周辺状況負荷とを統合し、統合結果に基づいて、前記ユーザの認知負荷を評価する、ステップと、
を更に有している、付記9に記載の認知負荷評価方法。
【0180】
(付記11)
前記聴覚オブジェクトが音声メッセージである場合に、
前記(b)のステップで、前記聴覚オブジェクトが含む要素として、前記音声メッセージの内容を用い、前記音声メッセージの内容が前記ユーザに与える負荷を算出する、付記9または10に記載の認知負荷評価方法。
【0181】
(付記12)
前記(b)のステップで、前記聴覚オブジェクトが含む要素として、前記聴覚オブジェクトの音圧を用い、前記聴覚オブジェクトの音圧が前記ユーザに与える負荷を算出する、付記9〜11のいずれかに記載の認知負荷評価方法。
【0182】
(付記13)
前記(b)のステップで、前記聴覚オブジェクトが含む要素として、前記聴覚オブジェクトの音高を用い、前記聴覚オブジェクトの音高が前記ユーザに与える負荷を算出する、付記9〜12のいずれかに記載の認知負荷評価方法。
【0183】
(付記14)
前記(c)のステップで、前記ユーザがタスクを遂行する際の周辺状況が含む要素として、視覚環境、聴覚環境、及び操作環境を用い、それぞれ毎に、それぞれが前記ユーザに与える負荷を算出する、付記10に記載の認知負荷評価方法。
【0184】
(付記15)
前記(c)のステップで、前記ユーザがタスクを遂行する際の周辺状況が含む要素として、前記タスクの遂行開始から完遂までに許容される制約時間を用い、前記タスクの遂行開始から完遂までに許容される制約時間が前記ユーザに与える負荷を算出する、付記10または14に記載の認知負荷評価方法。
【0185】
(付記16)
前記(c)のステップで、前記ユーザがタスクを遂行する際の周辺状況が含む要素として、並行処理が求められる前記タスクの数を用い、並行処理が求められる前記タスクの数が前記ユーザに与える負荷を算出する、付記10、14、または15に記載の認知負荷評価方法。
【0186】
(付記17)
コンピュータによって、ヒューマン・マシン・インターフェースを操作するユーザの認知負荷を評価するためのプログラムであって、
前記コンピュータに、
(a)ヒューマン・マシン・インターフェースが表示された画面のイメージを含む画面情報、及び前記画面を使用してタスクを遂行するための操作情報を解析して、前記タスクに関連する聴覚オブジェクトを抽出する、ステップと、
(b)前記聴覚オブジェクトが含む要素毎に、各要素が前記ユーザに与える負荷を算出し、算出した各負荷に基づいて、前記聴覚オブジェクトに対する前記ユーザの聴覚負荷を求める、ステップと、
を実行させる、プログラム。
【0187】
(付記18)
(c)前記ユーザがタスクを遂行する際の周辺状況が含む要素毎に、各要素が前記ユーザに与える負荷を算出し、算出した各負荷に基づいて、前記周辺状況に対する前記ユーザの周辺状況負荷を求める、ステップと、
(d)前記(b)のステップによって算出された前記負荷又は求められた前記聴覚負荷と、前記(c)のステップによって算出された前記負荷又は求められた前記周辺状況負荷とを統合し、統合結果に基づいて、前記ユーザの認知負荷を評価する、ステップと、
を更に前記コンピュータに実行させる、付記17に記載のプログラム。
【0188】
(付記19)
前記聴覚オブジェクトが音声メッセージである場合に、
前記(b)のステップで、前記聴覚オブジェクトが含む要素として、前記音声メッセージの内容を用い、前記音声メッセージの内容が前記ユーザに与える負荷を算出する、付記17または18に記載のプログラム。
【0189】
(付記20)
前記(b)のステップで、前記聴覚オブジェクトが含む要素として、前記聴覚オブジェクトの音圧を用い、前記聴覚オブジェクトの音圧が前記ユーザに与える負荷を算出する、付記17〜19のいずれかに記載のプログラム。
【0190】
(付記21)
前記(b)のステップで、前記聴覚オブジェクトが含む要素として、前記聴覚オブジェクトの音高を用い、前記聴覚オブジェクトの音高が前記ユーザに与える負荷を算出する、付記17〜20のいずれかに記載のプログラム。
【0191】
(付記22)
前記(c)のステップで、前記ユーザがタスクを遂行する際の周辺状況が含む要素として、視覚環境、聴覚環境、及び操作環境を用い、それぞれ毎に、それぞれが前記ユーザに与える負荷を算出する、付記18に記載のプログラム。
【0192】
(付記23)
前記(c)のステップで、前記ユーザがタスクを遂行する際の周辺状況が含む要素として、前記タスクの遂行開始から完遂までに許容される制約時間を用い、前記タスクの遂行開始から完遂までに許容される制約時間が前記ユーザに与える負荷を算出する、付記18または22に記載のプログラム。
【0193】
(付記24)
前記(c)のステップで、前記ユーザがタスクを遂行する際の周辺状況が含む要素として、並行処理が求められる前記タスクの数を用い、並行処理が求められる前記タスクの数が前記ユーザに与える負荷を算出する、付記18、22、または23に記載のプログラム。
【産業上の利用可能性】
【0194】
以上のように、本発明によれば、ユーザから直接データを取得することなく、ユーザが認知できる聴覚情報に基づいてユーザの認知負荷を評価することができる。本発明は、HMI設計段階での認知負荷評価による設計支援といった用途に有用である。また、開発済みのHMIについての、認知負荷の観点からの比較評価といった用途にも有用である。
【符号の説明】
【0195】
10 認知負荷評価装置
20 入力装置
30 表示装置
100 情報解析部
200 視覚負荷評価部
210 形式負荷演算部
220 配色負荷演算部
230 形式負荷演算部
240 密度負荷演算部
250 配置負荷演算部
260 視野負荷演算部
300 聴覚負荷評価部
310 音声負荷演算部
320 音圧負荷演算部
330 音高負荷演算部
400 操作負荷評価部
410 動作負荷演算部
420 選択肢負荷演算部
500 周辺状況負荷評価部
510 視覚環境負荷演算部
520 聴覚環境負荷演算部
530 操作環境負荷演算部
540 制約時間負荷演算部
550 並行タスク負荷演算部
600 統合評価部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒューマン・マシン・インターフェースを操作するユーザの認知負荷を評価するための認知負荷評価装置であって、
ヒューマン・マシン・インターフェースが表示された画面のイメージを含む画面情報、及び前記画面を使用してタスクを遂行するための操作情報を解析して、前記タスクに関連する聴覚オブジェクトを抽出する、情報解析部と、
前記聴覚オブジェクトが含む要素毎に、各要素が前記ユーザに与える負荷を算出し、算出した各負荷に基づいて、前記聴覚オブジェクトに対する前記ユーザの聴覚負荷を求める、聴覚負荷評価部と、
を備えている、ことを特徴とする認知負荷評価装置。
【請求項2】
前記ユーザがタスクを遂行する際の周辺状況が含む要素毎に、各要素が前記ユーザに与える負荷を算出し、算出した各負荷に基づいて、前記周辺状況に対する前記ユーザの周辺状況負荷を求める、周辺状況負荷評価部と、
前記聴覚負荷評価部によって算出された前記負荷又は求められた前記聴覚負荷と、前記周辺状況負荷評価部によって算出された前記負荷又は求められた前記周辺状況負荷とを統合し、統合結果に基づいて、前記ユーザの認知負荷を評価する、統合評価部と、
を更に備えている、請求項1に記載の認知負荷評価装置。
【請求項3】
前記聴覚オブジェクトが音声メッセージである場合に、
前記聴覚負荷評価部が、前記聴覚オブジェクトが含む要素として、前記音声メッセージの内容を用い、前記音声メッセージの内容が前記ユーザに与える負荷を算出する、請求項1または2に記載の認知負荷評価装置。
【請求項4】
前記聴覚負荷評価部が、前記聴覚オブジェクトが含む要素として、前記聴覚オブジェクトの音圧を用い、前記聴覚オブジェクトの音圧が前記ユーザに与える負荷を算出する、請求項1〜3のいずれかに記載の認知負荷評価装置。
【請求項5】
前記聴覚負荷評価部が、前記聴覚オブジェクトが含む要素として、前記聴覚オブジェクトの音高を用い、前記聴覚オブジェクトの音高が前記ユーザに与える負荷を算出する、請求項1〜4のいずれかに記載の認知負荷評価装置。
【請求項6】
前記周辺状況負荷評価部が、前記ユーザがタスクを遂行する際の周辺状況が含む要素として、視覚環境、聴覚環境、及び操作環境を用い、それぞれ毎に、それぞれが前記ユーザに与える負荷を算出する、請求項2に記載の認知負荷評価装置。
【請求項7】
前記周辺状況負荷評価部が、前記ユーザがタスクを遂行する際の周辺状況が含む要素として、前記タスクの遂行開始から完遂までに許容される制約時間を用い、前記タスクの遂行開始から完遂までに許容される制約時間が前記ユーザに与える負荷を算出する、請求項2または6に記載の認知負荷評価装置。
【請求項8】
前記周辺状況負荷評価部が、前記ユーザがタスクを遂行する際の周辺状況が含む要素として、並行処理が求められる前記タスクの数を用い、並行処理が求められる前記タスクの数が前記ユーザに与える負荷を算出する、請求項2、6、または7に記載の認知負荷評価装置。
【請求項9】
ヒューマン・マシン・インターフェースを操作するユーザの認知負荷を評価するための方法であって、
(a)ヒューマン・マシン・インターフェースが表示された画面のイメージを含む画面情報、及び前記画面を使用してタスクを遂行するための操作情報を解析して、前記タスクに関連する聴覚オブジェクトを抽出する、ステップと、
(b)前記聴覚オブジェクトが含む要素毎に、各要素が前記ユーザに与える負荷を算出し、算出した各負荷に基づいて、前記聴覚オブジェクトに対する前記ユーザの聴覚負荷を求める、ステップと、
を有している、ことを特徴とする認知負荷評価方法。
【請求項10】
コンピュータによって、ヒューマン・マシン・インターフェースを操作するユーザの認知負荷を評価するためのプログラムであって、
前記コンピュータに、
(a)ヒューマン・マシン・インターフェースが表示された画面のイメージを含む画面情報、及び前記画面を使用してタスクを遂行するための操作情報を解析して、前記タスクに関連する聴覚オブジェクトを抽出する、ステップと、
(b)前記聴覚オブジェクトが含む要素毎に、各要素が前記ユーザに与える負荷を算出し、算出した各負荷に基づいて、前記聴覚オブジェクトに対する前記ユーザの聴覚負荷を求める、ステップと、
を実行させる、プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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