説明

誘導システム及び誘導方法

【課題】目標物が低熱源小目標であっても、精度よく飛しょう体を誘導する誘導システム及び誘導方法を提供する。
【解決手段】各索敵指令車1iを離れた距離に移動、展開させ(S11)、その展開後、索敵準備が完了したかを確認し(S12)、準備完了の確認後、各索敵指令車1iにおいて自己の位置を計測し(S13)、計測結果を各索敵指令車1iにて互いに配信する(S14)。各索敵指令車1iにおいて、互いの計測結果の受信完了を確認した場合には(S15)、それぞれの位置情報から相互の測角及び測距を計測し、その計測値を相互に補正する(S16)。そして、三角測量を用いて、より精密な目標物Oの位置を索敵する。この際、三角測量において、特に2点の測角は最も精度を必要とするため、さらに相互の測角を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、移動する目標物に飛しょう体を誘導する誘導システム及び誘導方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、移動する目標物に向かって飛しょう体を誘導する誘導システムにあっては、例えば、目標物の発する赤外線やレーダー波を捕捉し追随することでその目標物に飛しょう体を誘導する技術、目標物に向かってレーザを照射し測距することにより自己位置から目標物までの位置を検出して、そのレーザに沿って飛しょう体を誘導する技術、目視又は赤外線索敵システムからの情報により飛しょう体を目標物へ指向させ、目標物捕捉後、目標物に向かって飛しょう体を誘導する技術等がある。
【0003】
しかしながら、目標物の熱源が小さい場合、目標物の発する赤外線が小さくなるため、赤外線による目標物の捕捉精度が低くなる。また、目標物そのものが小さい場合、レーザによる測距精度が低くなり、飛しょう体を目標物へ誘導する精度も低くなるため、飛しょう体による目標物への対処が難しくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−276289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、従来の誘導システムでは、移動する目標物の熱源が小さい場合、目標物の発する赤外線が小さくなるため、赤外線による目標物の捕捉精度が低くなる。また、目標物そのものが小さい場合、レーザによる測距精度が低くなり、飛しょう体を目標物へ誘導する精度も低くなるため、飛しょう体による目標物への対処が難しくなる。
【0006】
そこで、本実施形態は、上記を鑑みてなされたもので、目標物が低熱源小目標であっても、精度よく飛しょう体を誘導することのできる誘導システム及び誘導方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本実施形態に係る誘導システムは、任意の位置に配置され、飛しょう体を発射する発射装置及び前記発射装置を制御する指令装置の組を一組以上用意し、前記指令装置からの発射指令に基づいて前記発射装置から発射される飛しょう体を目標物へ誘導する誘導システムであって、前記指令装置同士で通信するための第1の通信手段と、前記組となっている発射装置及び指令装置間で通信するための第2の通信手段と、前記指令装置及び発射装置それぞれで少なくとも前記目標物の位置を把握し、測角及び測距を行う索敵手段とを具備し、前記指令装置は、自己位置、方位及び傾斜角を検出する検出手段と、前記索敵手段及び前記検出手段でそれぞれ得られる情報から三角測量によって前記目標物の位置を計算し、前記計算された目標物の位置に基づいて前記測角及び測距を補正し、要求に応じて前記飛しょう体の発射指令を出す指令手段とを備える態様とする。
【0008】
また、本実施形態に係る誘導方法は、任意の位置に配置され、飛しょう体を発射する発射装置及び前記発射装置を制御する指令装置の組を一組以上用意し、前記指令装置からの発射指令に基づいて前記発射装置から発射される飛しょう体を目標物へ誘導する誘導方法であって、前記指令装置同士を相互に通信し、前記組となっている発射装置及び指令装置間で通信を行い、前記指令装置及び発射装置それぞれで少なくとも前記目標物の位置を把握し、測角及び測距を行って索敵し、前記指令装置にて自己位置、方位及び傾斜角を検出し、前記索敵及び前記検出でそれぞれ得られる情報から三角測量によって前記目標物の位置を計算し、前記計算された目標物の位置に基づいて前記測角及び測距を補正し、要求に応じて前記飛しょう体の発射指令を出す態様とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る誘導システムの概要を示す図である。
【図2】図1に示す誘導システムの構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す誘導システムにおいて、複数の索敵指令車及び索敵発射装置を設置するまでの流れを示すフローチャートである。
【図4】図1に示す各索敵指令車の測角補正方法及び測距補正方法を示す図である。
【図5】図1に示す複数の索敵指令車及び索敵発射装置による誘導処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】1つの索敵指令車及び索敵発射装置での誘導システムの概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る誘導システムの概要を示す図である。この誘導システムは、索敵指令車1i(iは1〜3)及び索敵発射装置2iの対を複数組備える。図1では、索敵指令車1i及び索敵発射装置2iを3組用いた場合の構成を示している。索敵指令車1iは互いに無線で接続可能であり、さらに無線ネットワーク通信網3を通じて外部から対空情報を得られるようになされている。
【0012】
図2は、図1に示す誘導システムの具体的な構成を示すブロック図である。尚、索敵指令車1i及び索敵発射装置2iはいずれも同一構成であるので、図2では索敵指令車11及び索敵発射装置21について説明する。
【0013】
図2において、索敵指令車11は、目標物O、他の組の索敵指令車12,13及び索敵発射装置22,23の位置を把握する索敵部4、自己の位置、方位及び傾斜角を検出する検出部6、索敵部4で得られる情報及び検出部6で得られる情報から目標物Oの位置を計算し、計算された目標物Oの位置に基づいて索敵部4の測角及び測距を補正し、飛しょう体の発射指令を出す計算指令部7、無線ネットワーク通信網3との無線接続を行うと共に、索敵発射装置21との有線(無線でもよい)接続を行う第1の接続部8、場所の移動、展開ための移動部M、索敵発射装置21へ電力を供給する電力供給部Eを備える。
【0014】
上記索敵部4は、目標物Oの画像を撮像する撮像部41、撮像部41により取得した画像から目標物Oを捜索し、位置を検出する画像捜索検出部42、他の索敵指令車12,13及び索敵発射装置22,23に測角及び測距情報を提供する情報提供部45、画像捜索検出部42により得た目標物Oの位置方向に撮像部41及びレーザ測距部46を指向させる指向部43、指向部43で検出される目標物Oまでの指向角を検出する指向角検出部44、レーザ測距により目標物Oとの距離を算出するレーザ測距部46を備える。
【0015】
上記計算指令部7は、全ての索敵指令車1i及び索敵発射装置2iにより得られる目標物Oの指向角、自己位置、方位及び傾斜角の情報に基づいて目標物Oの位置を算出し、要撃計算を行う計算部71、計算部71により計算される目標物Oの位置に基づいて自己の測角及び測距を校正する校正部72、目標物Oに向けて飛しょう体発射の指令を出す指令部73を備える。
【0016】
一方、上記索敵発射装置22は、索敵指令車目標物O、他の索敵指令車12,13及び索敵発射装置22,23の位置を把握する索敵部5、発射指令に応じて飛しょう体を発射する発射部9、索敵指令車11の第1の接続部8と接続して位置、方向、距離、プログラム飛しょう情報及び発射指令を受け取る第2の接続部10、索敵指令車11の牽引を受けるための牽引部T、電力を供給する電源部Sを具備する。上記電源部Sは、有線接続時に索敵指令車11の電力供給部Eより供給される電力を入力して索敵発射装置22に供給する。また、上記電源部Sはバッテリーを備え、無線接続時でもバッテリーに蓄積した電力を供給可能となされている。上記索敵部5は、基本的に索敵指令車11の索敵部4と同一構成であるため、ここではその説明を省略する。
【0017】
上記のように構成される誘導システムの処理の流れについて、図3を参照して説明する。
【0018】
図3は、図1に示す複数の索敵指令車1i及び索敵発射装置2iをそれぞれ配置するまでの流れを示すフローチャートである。まず、各索敵指令車1iを数百m以上離れた距離に移動、展開させる(ステップS11)。展開後、索敵準備が完了したかを確認し(ステップS12)、準備完了の確認後、各索敵指令車1iにおいて自己の位置を計測し(ステップS13)、計測結果を各索敵指令車1iにて互いに配信する(ステップS14)。各索敵指令車1iにおいて、互いの計測結果の受信完了を確認した場合には(ステップS15)、それぞれの位置情報から相互の測角及び測距を計測し、その計測値を相互に補正する(ステップS16)。
【0019】
すなわち、今回の誘導システムでは、三角測量を用いて、より精密な目標物の位置を索敵する。三角測量において、特に2点の測角は最も精度を必要とする。そのため、さらに相互の測角を補正する必要がある。そこで、補正の方法として図4を示す。
【0020】
図4は、図1に示す各索敵指令車1iの測角補正方法及び測距補正方法を示す図である。測角補正は、磁北を基準として、相互の方位角から求めることができる。また、GPS等による位置座標から相互の直線距離を求め、レーザによる測距距離により補正を行う。図4において、索敵指令車11は位置座標P1 を(x1, y1, h1)、磁北方向に対する測角をθ1 、索敵指令車12までのレーザ測距距離をL12とする。また、索敵指令車12は位置座標P2 =(x2, y2, h2)、磁北方向に対する測角をθ2 、索敵指令車12までのレーザ測距距離をL21であるとする。測定指令車11を基準とした場合、索敵指令車12との位置座標距離R12は、
【数1】

【0021】
と表すことができ、索敵指令車12の方位補正角は、
θ12 =θ2 −θ1 −180°
と表すことができる。
【0022】
このように、測角及び測距補正は、各索敵指令車1iで計測した測角及び測距のうち相互の計測精度が高い数値を基準として補正値を求めて、各索敵指令車1iの計測精度の低い測角及び測距を補正する。
【0023】
次に、目標物(ここでは飛しょう体とする)Oを索敵し、目標物Oへ飛しょう体を発射し誘導する処理の流れについて、図5を参照して説明する。
【0024】
図5は、図1に示す索敵指令車1i及び索敵発射装置2iによる誘導処理の流れを示すフローチャートである。まず、目標情報を受信する(ステップS21)。目標情報により要撃計算できるか判定する(ステップS22)。要撃計算できる場合、ステップS214へ進む。要撃計算できない場合、目標物Oを追随中か確認する(ステップS23)。追随中の場合、ステップS29へ進む。追随していない場合、目標方向情報の有無を確認する(ステップS24)。目標方向情報がある場合、目標方面を捜索する(ステップS261)。目標方向情報がない場合、さらに対空情報の有無を確認する(ステップS25)。対空情報がある場合、目標方面を捜索し(ステップS262)、対空情報がない場合、索敵指令車1iの全周を捜索する(ステップS263)。目標物Oを捕捉した場合、その目標物Oを追随する(ステップS27,S28)。同時に、捕捉した目標物Oの方位角情報を各索敵指令車1iに配信する(ステップS29)。目標物Oを捕捉できない場合、ステップS21へ戻る。ここで、目標情報により要撃計算できるか判定する(ステップS210)。要撃計算できる場合、ステップS214へ進む。要撃計算できない場合、レーザ測距を試みる(ステップS211)。ここで、レーザ測距の完了を確認する(ステップS212)。レーザ測距が完了しない場合、ステップS21へ戻る。レーザ測距が完了した場合、目標距離情報を各索敵指令車1iに配信する(ステップS213)。その後、複数の目標情報から補正した三角測量により目標物Oの位置及び方向を算出し、要撃計算を行う(ステップS214)。
【0025】
発射準備完了後、目標画像を表示しながら、発射許可を待つ(ステップS215,S216)。発射許可が出ない場合、ステップ21へ戻る。発射許可が出た場合、飛しょう体へ飛しょうプログラムを送り、発射指令を出し(ステップS217)、プログラム飛しょうにより目標物Oへ飛しょう体を発射する(ステップS218)。このとき、空中捕捉するための制限時間を設け(ステップS219)、もし、制限時間以内に目標物Oを空中捕捉できた場合、飛しょう体で追随、ホーミングし、目標物Oに飛しょう体を直撃させて一連の処理を終了させる(ステップS220,S221)。もし、制限時間以内に目標物Oを空中捕捉できなかった場合、飛しょう体を自爆させて一連の処理を終了させる(ステップS222)。
【0026】
以上のように、上記実施形態に係る誘導システムでは、複数組の索敵指令車1i及び索敵発射装置2iが相互に測定位置、測角、測距を行って三角測量で目標位置を算出する上で、互いの測定結果に基づいてそれぞれの測定結果の補正を行うようにしているので、個々の測定精度が向上することになり、その結果、目標物Oの熱源が小さい場合であっても、また、目標物Oそのものが小さい場合であっても、精度よく飛しょう体を捕捉し追尾して誘導することが可能となる。さらに、多数の索敵指令車1i及び索敵発射装置2iを展開すれば、よりいっそうの計測精度向上も期待することができる。さらに、自機で目標物Oを捕捉及びレーザ測距できない場合であっても、他の索敵指令車1iからの目標情報より要撃計算を行い、飛しょう体を発射することが可能となる。
【0027】
図6は、他の実施形態として、一組の索敵指令車1及び索敵発射装置2で実現する場合の誘導システムの概要を示す図である。尚、図6において図1と同一部分には同一符号を付して示し、ここでは重複する説明を省略する。
【0028】
この実施形態における誘導システムでは、索敵指令車1と索敵発射装置2それぞれに設置した検出部6により相互の位置情報及び目標物Oの位置情報を取得する。この構成では、先の実施形態の場合と比較して目標捕捉精度が低下するものの、レーザ測距による捕捉精度が低い目標物Oについても、索敵指令車1、索敵発射装置2及び対空情報それぞれの位置情報、測角及び測距情報に基づいて三角測量で目標位置を算出して誘導するので、飛しょう体を高精度に誘導することが可能となる。
【0029】
以上、実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0030】
1i…索敵指令車、2i…索敵発射装置、3…無線ネットワーク通信網、4,5…索敵部、41…撮像部、42…画像捜索検出部、43…指向部、44…指向角検出部、45…情報提供部、46…レーザ測距部、6…検出部、7…計算指令部、71…計算部、72…校正部、73…指令部、8…第1の接続部、9…発射部、10…第2の接続部、M…移動部、T…牽引部、E…電力供給部、S…電源部、O…目標物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の位置に配置され、飛しょう体を発射する発射装置及び前記発射装置を制御する指令装置の組を一組以上用意し、前記指令装置からの発射指令に基づいて前記発射装置から発射される飛しょう体を目標物へ誘導する誘導システムであって、
前記指令装置同士で通信するための第1の通信手段と、
前記組となっている発射装置及び指令装置間で通信するための第2の通信手段と、
前記指令装置及び発射装置それぞれで少なくとも前記目標物の位置を把握し、測角及び測距を行う索敵手段と
を具備し、
前記指令装置は、自己位置、方位及び傾斜角を検出する検出手段と、前記索敵手段及び前記検出手段でそれぞれ得られる情報から三角測量によって前記目標物の位置を計算し、前記計算された目標物の位置に基づいて前記測角及び測距を補正し、要求に応じて前記飛しょう体の発射指令を出す指令手段とを備えることを特徴とする誘導システム。
【請求項2】
前記発射装置及び指令装置の組を複数備えるとき、前記発射装置及び指令装置の各組で得られる目標情報を互いに共有すると共に、各測定結果に基づいて互いに補正し合うことを特徴とする請求項1記載の誘導システム。
【請求項3】
前記索敵手段は、
目標物の画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により得られた画像から前記目標物を捜索する捜索手段と、
前記捜索手段により得られた目標物に前記撮像手段指向させる指向手段と、
前記指向手段で検出する目標物までの指向角を検出する指向角検出手段と
前記目標物との距離をレーザにより測距するレーザ測距手段と、
を具備することを特徴とする請求項1記載の誘導システム。
【請求項4】
前記目標物の位置計算は、前記指令装置及び発射装置に設置する索敵手段と前記検出手段より得られる目標物への指向角、前記指令装置の自己位置、方位及び傾斜角の情報に基づいて前記目標物の位置を算出し、その算出結果に基づいて要撃計算を行い、計算される目標物の位置に基づいて前記指令装置の測角及び測距を補正することを特徴とする請求項1記載の誘導システム。
【請求項5】
任意の位置に配置され、飛しょう体を発射する発射装置及び前記発射装置を制御する指令装置の組を一組以上用意し、前記指令装置からの発射指令に基づいて前記発射装置から発射される飛しょう体を目標物へ誘導する誘導方法であって、
前記指令装置同士を相互に通信し、
前記組となっている発射装置及び指令装置間で通信を行い、
前記指令装置及び発射装置それぞれで少なくとも前記目標物の位置を把握し、測角及び測距を行って索敵し、
前記指令装置にて自己位置、方位及び傾斜角を検出し、前記索敵及び前記検出でそれぞれ得られる情報から三角測量によって前記目標物の位置を計算し、前記計算された目標物の位置に基づいて前記測角及び測距を補正し、要求に応じて前記飛しょう体の発射指令を出すことを特徴とする誘導システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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