説明

誘導システム

【課題】誘導対象者の嗅覚を利用して、迷うことなく迅速に誘導対象者(特に視覚障害者)を目的地まで誘導することが可能な誘導システムを提供することである。
【解決手段】視覚障害者誘導システム10は、誘導地点102から上りエスカレータ乗場101まで視覚障害者を誘導するシステムであって、誘導用の匂いである誘導香αを発生させる匂い発生装置11と、視覚障害者を検出する視覚障害者検出装置12と、目的地である上りエスカレータ乗場101に応じた誘導香αの種類を音声により案内する音声案内装置13と、視覚障害者検出装置12の検出信号に基づいて、匂い発生装置11及び音声案内装置13の動作を制御する制御装置30と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導対象者を目的地に誘導する誘導システムに関し、特に、視覚障害者をエスカレータやエレベータの乗場等に誘導する誘導システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータやエレベータは、各種商業施設(デパート等)や駅、空港など様々な施設に設置されている。一般的に、エスカレータ乗場等の位置は、表示案内板や施設平面図等により確認することができる。なお、視覚障害者が、エスカレータ乗場等の位置を確認することができるように、施設平面図には、点字銘板が設置されていることが多く、また、エスカレータ乗場等の周辺には、視覚障害者誘導用ブロック(以下、誘導ブロックとする)が設置されていることもある。
【0003】
しかしながら、視覚障害者にとって、施設平面図を見つけること自体が容易ではなく、また、誘導ブロックでは、誘導先が分からないという不便が想定される。本発明に関連する技術として、エスカレータに関する誘導方法が提案されている。例えば、特許文献1には、エスカレータの利用者に乗車のタイミングや下車のタイミングを音や音声で案内する方法であって、当該音や音声は、エスカレータのステップの動きに同期あるいは連動させて発する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004‐250228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された方法は、エスカレータの乗降口にいる利用者について、エスカレータの乗降のタイミングを補助する方法として効果が期待できる。しかしながら、特許文献1の方法では、ある誘導地点からエスカレータ乗場まで視覚障害者を迅速に誘導することはできない。以上のように、従来技術では、視覚障害者をある誘導地点から目的地(例えば、エスカレータ乗場)まで迅速に誘導することは困難であった。
【0006】
本発明の目的は、誘導対象者の嗅覚を利用して、迷うことなく迅速に誘導対象者(特に視覚障害者)を目的地まで誘導することが可能な誘導システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る誘導システムは、誘導対象者を目的地に誘導する誘導システムにおいて、誘導対象者を誘導するための匂いであって目的地に応じて定められた匂いを発生させる匂い発生装置を備えることを特徴とする。なお、本発明に係る誘導システムは、様々な施設に設置可能なシステムであって、当該施設の利用者(施設利用者)、特に視覚障害者を、施設入口等の誘導地点からエスカレータ乗場やエレベータ乗場等の目的地まで誘導する施設利用者誘導システム(例えば、視覚障害者誘導システム、エスカレータ利用者誘導システム)である。
【0008】
上記構成によれば、誘導対象者は、匂い発生装置から発生する誘導用の匂いを感知することにより、当該匂いに対応する目的地まで迷うことなく迅速に移動することが可能になる。即ち、上記構成は、誘導対象者の嗅覚を利用して誘導対象者に目的地を認識させるので、特に視覚障害者の誘導に有効である。なお、匂い発生装置から発生する匂いの種類は、目的地に応じて予め定められているので、誘導対象者は、感知した匂いに対応する目的地を認識することができる。
【0009】
また、本発明に係る誘導システムは、誘導地点に存在する誘導対象者を検出する検出装置と、検出装置により誘導地点に存在する誘導対象者が検出されたときに、匂い発生装置を作動させて誘導用の匂いを発生(放出)させる制御装置と、を備えることができる。
【0010】
上記構成によれば、誘導を開始すべき誘導地点に誘導対象者が検出されたときにのみ匂い発生装置から誘導用の匂いを発生させることができので、例えば、ランニングコストを低減することが可能になる。
【0011】
また、本発明に係る誘導システムにおいて、匂い発生装置から発生する匂いの種類と、当該匂いに対応する目的地と、を音声により報知する音声案内装置を備えることが好ましい。なお、ある誘導地点において誘導すべき目的地が複数存在する場合には、目的地に応じて異なった匂いを発生させる匂い発生装置を備えることができ、音声案内装置は、全ての目的地について対応する匂いの種類を案内することが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、誘導対象者は、音声案内(館内放送)を通じて、感知した匂いに対応する目的地を容易に認識することが可能になる。
【0013】
また、誘導地点から目的地までの誘導経路が設定され、匂い発生装置は、当該誘導経路に沿って匂いが放出されるように構成されることが好ましい。なお、当該構成としては、誘導経路に沿って複数の匂い発生装置を配置した構成、或いは匂いの放出口を複数含んだ匂い発生装置を備え、誘導経路に沿って複数の放出口を配置した構成等を挙げることができる。
【0014】
上記構成によれば、誘導対象者は、誘導地点から目的地まで誘導用の匂いを連続的に感知することができるので、誘導経路からそれることなく迅速に目的地まで移動することが可能になる。
【0015】
また、匂い発生装置は、誘導経路に沿って吹出口が配置された空調装置に取り付けられ、当該空調装置の吹出口から匂いを放出する構成とすることができる。より具体的には、匂い発生装置を、空調装置のダクトに接続したバイパスに取り付けて、空調装置の気流の方向をバイパスと空調装置のダクトとの間で切り換える手段を設けた構成とすることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、例えば、既設の空調装置を利用することができ、システム導入コストを低減することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る誘導システムによれば、誘導対象者の嗅覚を利用して誘導対象者に目的地の位置を認識させることができるので、誘導対象者、特に視覚障害者を迅速に目的地まで誘導することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る第1の実施形態である視覚障害者誘導システムの概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す視覚障害者誘導システムにおいて、その変形例を示す図である。
【図3】図1に示す視覚障害者誘導システムにおいて、誘導地点の視覚障害者をエスカレータ乗場まで誘導するための制御手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明に係る第2の実施形態である利用者誘導システムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を用いて、本発明に係る誘導システムの実施形態につき、以下詳細に説明する。図1〜図3は、第1の実施形態である視覚障害者誘導システム10を示す図であり、図4は、第2の実施形態である利用者誘導システム10xを示す図である。なお、いずれの実施形態も、エスカレータ100の利用者を想定し、上りエスカレータ乗場101を目的地とする誘導システムとして説明するが、本発明に係る誘導システムは、下りエスカレータ乗場やエレベータ乗場、案内受付やトイレなど任意の目的地を設定することができる。
【0020】
図1〜図3を用いて、視覚障害者誘導システム10について説明する。視覚障害者誘導システム10は、ある施設に設置されたシステムであって、施設利用者である視覚障害者を施設内の目的地に誘導する誘導システムである。
【0021】
図1に示すように、視覚障害者誘導システム10は、上りエスカレータ乗場101を目的地とする視覚障害者専用の誘導システムである。視覚障害者誘導システム10は、誘導地点102に存在する視覚障害者を検出すると、当該視覚障害者を上りエスカレータ乗場101まで誘導するように作動する。ここで、誘導地点102は、誘導を開始すべき地点であって、例えば、施設の入口や通路の交差点などに設定することができる。
【0022】
視覚障害者誘導システム10は、匂いを発生させる匂い発生装置11と、視覚障害者を検出する視覚障害者検出装置12と、音声案内を行なう音声案内装置13と、を備える。また、視覚障害者誘導システム10は、視覚障害者検出装置12による視覚障害者の検出情報(検出信号)に基づいて、匂い発生装置11及び音声案内装置13の動作を制御する制御装置30を備えている。
【0023】
匂い発生装置11は、視覚障害者を誘導するための匂いであって、目的地に応じて予め定められた誘導用の匂いである「誘導香α」を発生させる機能を有する。なお、視覚障害者誘導システム10は、目的地が上りエスカレータ乗場101だけであるものとして説明するが、誘導地点102から誘導すべき複数の目的地が存在する場合には、視覚障害者が目的地を識別できるように、目的地の数に対応する数の異なった匂いを発生させることができる匂い発生装置(又は目的地の数に対応する複数の匂い発生装置)が要求される。ここで、誘導香αとは、視覚障害者誘導システム10の唯一の目的地である上りエスカレータ乗場101に対応する誘導用の匂い(香り)である。
【0024】
また、匂い発生装置11は、誘導経路103に沿って誘導香αが放出されるように構成される。具体的には、複数の匂い発生装置11を誘導経路103に沿って設置することができ、例えば、誘導経路103の床に等間隔で埋設することができる。なお、上りエスカレータ乗場101に近づくにつれて誘導香αの発生量が多くなるように、設置間隔を変更する、或いは制御装置30により個々の匂い発生装置11における発生量を制御することができる。ここで、誘導経路103とは、誘導地点102から目的地である上りエスカレータ乗場101までの経路であって、エスカレータ100を利用する視覚障害者を誘導するために設定される経路である。
【0025】
上記匂い発生装置11としては、誘導香αを発生させることができ、誘導経路103の床に埋設可能なものであれば、種々の装置を適用することができ、例えば、市販の香り発生器や芳香器、空気清浄芳香器などを利用することができる。匂い発生装置11は、例えば、誘導香αの発生源である香料を貯留した香料ボトルや香料カートリッジを備え、香料ボトル等を開閉する開閉弁(電動弁、電磁弁)や香りを拡散させるためのファン又は加熱装置などが設置された構成である。ここで、香料としては、種々の天然香料や合成香料を用いることができ、また、匂い発生装置11内で2種以上の香料を混合して多彩な誘導香を発生させることもできる。
【0026】
ここで、別の匂い発生装置11を備えた視覚障害者誘導システム10を図2に示す。図2に示すように、匂い発生装置11は、誘導香αの発生源を含む装置本体16と、誘導香αの送流路であるダクト17と、誘導経路103の床面に埋設された複数の放出口18と、を備える。装置本体16には、誘導香αの発生源である香料を貯留する香料タンク19、香料タンク19の開閉弁である主止弁20、及び誘導香αを送流するためのファン21が設けられている。
【0027】
装置本体16は、上りエスカレータ乗場101の床下に形成される下部機械室104に設置することができる。匂い発生装置11は、目的地の床下にある下部機械室104の装置本体16から誘導経路103の床下に沿ってダクト17を伸ばし、ダクト17から分岐した複数の放出口18を備えた構成である。故に、誘導経路103に沿って誘導香αを放出させることができる。なお、放出口18に風量調整弁を設けたり、ダクト17の径を変化させる等して、誘導経路103に沿って誘導香αの濃度を変化させることができる。
【0028】
視覚障害者検出装置12は、誘導地点102に存在する視覚障害者を検出する機能を有する。具体的に、視覚障害者検出装置12は、誘導地点102の床に埋設されるRF‐ID(Radio Frequency Identification)リーダとすることができる。RF‐IDリーダとしては、公知のものを用いることができ、近接するICタグを読み取り可能なリーダを用いることができる。RF‐IDリーダにより読み取られるICタグは、例えば、視覚障害者が保有する白杖14に設けられたICタグ15とすることができる。したがって、ICタグ15を含む白杖14を保有する視覚障害者が誘導地点102を通ったときには、RF‐IDリーダである視覚障害者検出装置12により、当該ICタグ15が読み取られて、視覚障害者の存在が検出される。
【0029】
音声案内装置13は、匂い発生装置11から発生される誘導香αの種類と、誘導香αに対応する目的地と、を音声により報知する機能を有する。即ち、視覚障害者誘導システム10において、目的地は上りエスカレータ乗場101であるから、音声案内装置13は、例えば、「上りエスカレータをご利用のお客様は、ラベンダーの香りに沿ってお進み下さい」との音声案内(館内放送)を行なうことができる。ここで、「ラベンダーの香り」が誘導香αであって、匂い発生装置11には、ラベンダーの香りの発生する香料が貯留されていることを意味する。
【0030】
なお、誘導地点102において誘導すべき目的地が複数存在する場合には、上記のように、目的地に応じて異なった匂いを発生させる匂い発生装置11を備えることができる。
故に、音声案内装置12は、「上りエスカレータをご利用のお客様は、ラベンダーの香りに沿って、下りエスカレータをご利用のお客様は、グレープフルーツの香りに沿って、それぞれお進み下さい。また、エレベータをご利用のお客様は、レモンの香りに沿ってお進み下さい」といった館内放送を行なって、全ての目的地について対応する匂い(誘導香)の種類を案内する。
【0031】
音声案内装置13としては、例えば、誘導地点102の天井に設置されるスピーカを備える。音声案内装置13は、上記のような音声案内の音声データを記憶する記憶部を有し、制御装置30の制御の下で、記憶部から音声データを読み出してスピーカから出力する。なお、音声案内装置13は、既存の設備を利用することもでき、通常の館内放送と同様にして上記のような音声案内を流すことができる。
【0032】
制御装置30は、上記のように、視覚障害者検出装置12の検出信号に基づいて、匂い発生装置11及び音声案内装置13の動作を制御する機能を有する。当該機能を実現するための手段(モジュール)として、制御装置30は、視覚障害者検出手段31と、誘導香発生手段32と、音声案内手段33と、を有する。各機能は、ソフトウェアを実行することで実現できる。なお、制御装置30は、CPUと、制御パラメータ等の入力部と、入力した制御パラメータ、制御プログラム、又は上記音声案内の音声データ等を記憶する記録部と、入出力ポートなどを備える装置であって、コンピュータによって構成することができる。
【0033】
制御装置30は、例えば、下部機械室104に設置することができる。他にも、誘導経路103の床下や天井、匂い発生装置11の装置本体16や音声案内装置13又はエスカレータ100の制御装置の一部など任意の場所に設置することができる。
【0034】
視覚障害者検出手段31は、視覚障害者検出装置12により視覚障害者の保有する白杖14のICタグ15が検出されたときに、当該検出による信号(検出信号)を取得する機能を有する。
【0035】
誘導香発生手段32は、誘導地点102に存在する視覚障害者が検出され、視覚障害者検出手段31が検出信号を取得したときに、匂い発生装置11を作動させて、誘導経路103に沿って誘導香αを放出させる機能を有する。また、誘導香発生手段32は、視覚障害者検出手段31により検出信号が取得されてから所定時間が経過したときには、匂い発生装置11を停止させて、誘導香αの放出を停止する機能も有する。ここで、所定時間としては、誘導地点102にいる視覚障害者が、誘導香αによる誘導で、上りエスカレータ乗場101まで移動するのに十分な時間に設定される。
【0036】
具体的に、誘導香発生手段32は、視覚障害者検出手段31により検出信号が取得されると、匂い発生装置11の主止弁20を開放し、ファン21を作動させて誘導香αを発生(放出)させる(図2参照)。即ち、香料タンク19から発生した誘導香αは、ファン21により発生する気流にのって放出口18から放出される。
【0037】
音声案内手段33は、視覚障害者検出手段31が検出信号を取得したときに、音声案内装置13を作動させて、誘導香αの種類及び誘導香αに対応する目的地の情報をスピーカから出力する機能を有する。上記のように、誘導香αは、ラベンダーの香りとすることができ、視覚障害者誘導システム10の目的地は、上りエスカレータ乗場101であるから、音声案内手段33は、「上りエスカレータは、ラベンダーの香りに沿った方向です」といった音声案内(館内放送)を実行することができる。なお、音声案内手段33は、上記のように、誘導地点102において誘導すべき目的地が複数存在する場合には、全ての目的地について対応する誘導香の種類を案内する。
【0038】
図3を用いて、上記構成を備える視覚障害者誘導システム10の作用、特に、制御装置30による誘導制御の手順について説明する。ここで、図3は、誘導地点102の視覚障害者を上りエスカレータ乗場101まで誘導するための制御手順を示すフローチャートである。
【0039】
まず初めに、視覚障害者検出装置12から検出信号を取得する(S10)。この手順は、視覚障害者検出手段31の機能によって実行される。なお、当該検出信号が取得されない場合には、S11以降の手順は実行されない。
【0040】
S10において、検出信号が取得されると、匂い発生装置11を作動させる(S11)。この手順は、誘導香発生手段32の機能によって実行される。上記のように、誘導香発生手段32は、匂い発生装置11の主止弁20を開放し、ファン21を作動させて、誘導香αを誘導経路103に沿った複数の放出口18から放出させる。
【0041】
S11において、誘導香αの放出が開始されると、音声案内装置13を作動させる(S12)。この手順は、音声案内手段33の機能によって実行される。上記のように、音声案内装置13は、誘導香α(ラベンダーの香り)に対応する目的地が上りエスカレータ乗場101であることを報知する音声案内をスピーカから出力する。
【0042】
そして、検出信号の取得から所定時間が経過したか否かを判定して(S13)、所定時間が経過したと判定されると、匂い発生装置11を停止させる(S14)。なお、所定時間が経過するまでは、音声案内装置13を繰り返し作動させてS12の音声案内を継続することができる。
【0043】
以上のように、視覚障害者誘導システム10は、誘導地点102から上りエスカレータ乗場101まで視覚障害者を誘導するシステムであって、誘導用の匂いである誘導香αを発生させる匂い発生装置11と、視覚障害者を検出する視覚障害者検出装置12と、目的地である上りエスカレータ乗場101に応じた誘導香αの種類を音声により案内する音声案内装置13と、視覚障害者検出装置12の検出信号に基づいて、匂い発生装置11及び音声案内装置13の動作を制御する制御装置30と、を備える。したがって、視覚障害者は、誘導香αを感知することにより、目的地である上りエスカレータ乗場101まで迷うことなく迅速に移動することが可能になる。
【0044】
図4を用いて、第2の実施形態である利用者誘導システム10xについて以下説明する。なお、利用者誘導システム10xにおいて、視覚障害者誘導システム10と同様の構成要素については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0045】
利用者誘導システム10xは、エスカレータ100を利用する可能性があると想定される施設利用者が検出されたときに、誘導香αを用いて、誘導地点102から上りエスカレータ乗場101までの誘導を行なうシステムである。即ち、誘導対象者は、視覚障害者に限定されず、利用者誘導システム10xは、誘導地点102に存在する歩行者を検出する歩行者検出装置12xを備えることを特徴とする。加えて、利用者誘導システム10xでは、匂い発生装置11xが空調装置の空調用ダクト51に取り付けられたことを特徴とする。なお、空調装置としては、既存の設備を利用することができる。
【0046】
ここで、空調装置は、例えば、1つの空調装置の室内機50(以下、室内機50とする)から複数の空調用ダクト51が伸びるセントラル空調装置として説明する。空調装置は、誘導経路103に沿った空調用ダクト51を備え、当該空調用ダクト51には、複数の空調用吹出口52が設けられている。
【0047】
匂い発生装置11xは、上記のように、空調用ダクト51に取り付けられる。例えば、匂い発生装置11xは、誘導香αの発生源である香料を貯留する香料タンクを含む装置本体22を、空調用ダクト51に接続したバイパス23中に設置すると共に、バイパス23を開閉するバイパス開閉弁24(装置本体22の上流側及び下流側に設置される)及び空調用ダクト51を開閉する空調用ダクト開閉弁25を備えた構成とすることができる。
【0048】
即ち、誘導香αを放出するときには、空調用ダクト開閉弁25を閉じて、バイパス開閉弁24を開放することで、空調装置の気流をバイパス23の方向に切り替える。当該気流の切り替え操作により、空調装置の気流にのって誘導香αが誘導経路103に沿って配置された空調用吹出口52から放出される。
【0049】
歩行者検出装置12xは、監視対象である誘導地点102に存在する歩行者(施設利用者)を検出できる装置であれば種々のセンサ等を用いることができ、例えば、画像センサや光学式センサ等を適用することができる。これらのセンサは、既存の設備を利用することもできる。なお、画像センサにより視覚障害者の保有する白杖14を検出して、視覚障害者を識別することも可能であり、視覚障害者が検出された場合には、誘導制御の方法を変更することもできる。
【0050】
制御装置30は、歩行者検出手段34、誘導香発生手段32、及び音声案内手段33を有する。歩行者検出手段34は、歩行者検出装置12xにより誘導地点102に存在する歩行者(施設利用者)が検出されたときに、当該検出信号を取得する機能を有する。また、誘導香発生手段32は、空調用ダクト開閉弁25及びバイパス開閉弁24を開閉させて、空調装置の気流を切り替え、誘導香αの放出を制御する。さらに、誘導香発生手段32は、空調用吹出口52に設置される風向調整板の動作を制御して、誘導香αを誘導地点102の方向に流すこともできる(図4参照)。
【0051】
なお、上記では、誘導地点102に存在する視覚障害者や歩行者の検出により匂い発生装置11(11x)及び音声案内装置13を作動させるものとして説明したが、連続的、断続的又は定期的に、匂い発生装置11(11x)等を作動させる構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0052】
10 視覚障害者誘導システム、10x 利用者誘導システム、11,11x 匂い発生装置、12 視覚障害者検出装置、12x 歩行者検出装置、13 音声案内装置、14 白杖、15 ICタグ、16 装置本体、17 ダクト、18 放出口、19 香料タンク、20 主止弁、21 ファン、22 装置本体、23 バイパス、24 バイパス開閉弁、25 空調用ダクト開閉弁、30 制御装置、31 視覚障害者検出手段、32 誘導香発生手段、33 音声案内手段、34 歩行者検出手段、50 空調装置の室内機、51 空調用ダクト、52 空調用吹出口、100 エスカレータ、101 エスカレータ乗場、102 誘導地点、103 誘導経路、104 下部機械室、α 誘導香。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導対象者を目的地に誘導する誘導システムにおいて、
誘導対象者を誘導するための匂いであって目的地に応じて定められた匂いを発生させる匂い発生装置を備えることを特徴とする誘導システム。
【請求項2】
請求項1に記載の誘導システムにおいて、
誘導地点に存在する誘導対象者を検出する検出装置と、
検出装置により誘導地点に存在する誘導対象者が検出されたときに、匂い発生装置を作動させる制御装置と、
を備えることを特徴とする誘導システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の誘導システムにおいて、
匂い発生装置から発生する匂いの種類と、当該匂いに対応する目的地と、を音声により報知する音声案内装置を備えることを特徴とする誘導システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1に記載の誘導システムにおいて、
誘導地点から目的地までの誘導経路が設定され、
匂い発生装置は、当該誘導経路に沿って匂いが放出されるように構成されることを特徴とする利用者誘導システム。
【請求項5】
請求項1に記載の誘導システムにおいて、
誘導地点から目的地までの誘導経路が設定され、
匂い発生装置は、誘導経路に沿って吹出口が配置された空調装置に取り付けられ、当該空調装置の吹出口から匂いを放出することを特徴とする誘導システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−121772(P2011−121772A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283026(P2009−283026)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】