誘導加熱調理器用調理容器
【課題】使用者が誤使用しても、土鍋の発熱層を損傷させることがなく、信頼性を高くすること。
【解決手段】セラミックスにより形成された調理容器本体101と、調理容器本体101の外壁底面に設けられ、誘導加熱調理器の発生させる高周波磁界により発熱させることができる発熱体層1とを備え、発熱体層1は前記外壁底面の内側と、前記内側を取り囲む外側とに形成され、前記内側と前記外側の間に高周波磁界による渦電流の集中を阻害し、導電率が所定の値より低い絶縁部2を設けたこと。
【解決手段】セラミックスにより形成された調理容器本体101と、調理容器本体101の外壁底面に設けられ、誘導加熱調理器の発生させる高周波磁界により発熱させることができる発熱体層1とを備え、発熱体層1は前記外壁底面の内側と、前記内側を取り囲む外側とに形成され、前記内側と前記外側の間に高周波磁界による渦電流の集中を阻害し、導電率が所定の値より低い絶縁部2を設けたこと。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭の台所や業務用の厨房等で使用される、誘導加熱調理器用調理容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の誘導加熱調理器用調理容器における発熱体層の概略構成は、前記調理容器の外壁底面に発熱体層を転写するものが一般的である(例えば、特許文献1参照)。図13、図14参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−130311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、使用者が誤使用の範囲内で、前記調理容器を誘導加熱調理器本体下方にある加熱コイル中心からずらして置いた場合に、前記加熱コイルによる高周波磁界により発熱体層に誘起される渦電流が、前記調理容器が置かれていない加熱コイル側に該当する前記調理容器の発熱体層の最外周表面に集中して流れ、その際の調理容器本体と発熱体層の熱伝導率の違いにより、発熱体層に集中して流れた部分が異常高温状態となり、発熱した熱のほとんどが発熱体層で消費される。このことにより、発熱体層を損傷・破壊に至らしめ、最終的に前記誘導加熱調理器用調理容器として、誘導加熱されなくなるという課題があった。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、使用者が誤使用の範囲内で、載置する位置を誤っても、前記調理容器の発熱体層を損傷・破壊させることが無く、信頼性の高い誘導加熱調理器用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の誘導加熱調理記用容器は、セラミックスにより形成された調理容器本体と、前記調理容器本体の外壁底面に設けられ、誘導加熱調理の発生させる高周波磁界により発熱する発熱体層とを備え、前記発熱体層は前記外壁底面に同心円状に複数設けられ、前記発熱体層はそれぞれ絶縁部で絶縁されていることを特徴としている。
【0007】
これによって、使用者が誘導加熱調理記用容器を加熱コイル中心からずらして置いた場合においても、加熱コイルから誘起される渦電流の流れは、内側と外側の発熱体層の同心円状で分散し、最外周に集中して流れることがなく、各発熱体層を異常高温状態になることを防ぐことができる。このことにより、発熱層の損傷・破壊を防ぐことができ、誘導加熱調理器用調理容器としての安全性を一層高めることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の誘導加熱調理器用調理容器によれば、調理容器本来の特性を損なうことなく、使用者が誤使用した場合においても、信頼性の高い誘導加熱調理器用調理容器を実現できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】発明の実施の形態1における誘導加熱調理器用調理容器の底面図
【図2】発明の実施の形態1における誘導加熱調理器用調理容器の断面図
【図3】発明の実施の形態1における誘導加熱調理器の本体図
【図4】発明の実施の形態1における誘導加熱調理器の詳細図
【図5】発明の実施の形態1における誘導加熱調理器用調理容器の(再掲)底面図
【図6】発明の実施の形態1における誘導加熱調理器用調理容器底面渦電流の流れを示す図
【図7】発明の実施の形態2における誘導加熱調理器用調理容器(厚みの変化あり)の底面図
【図8】発明の実施の形態2における誘導加熱調理器用調理容器(厚みの変化あり)の温度分布図
【図9】発明の実施の形態3における誘導加熱調理器用調理容器(溝・突起あり)の底面図
【図10】発明の実施の形態3における誘導加熱調理器用調理容器(溝・突起あり)の温度分布図
【図11】発明の実施の形態4における誘導加熱調理器用調理容器の底面図
【図12】発明の実施の形態4における誘導加熱調理器用調理容器の温度分布図
【図13】従来の誘導加熱調理器用調理容器の底面図
【図14】従来の誘導加熱調理器用調理容器底面渦電流の流れを示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の発明は、セラミックスにより形成された調理容器本体と、前記調理容器本体の外壁底面に設けられ、誘導加熱調理器の発生させる高周波磁界により発熱する発熱体層とを備え、前記発熱体層は前記外壁底面に同心円状に複数設けられ、前記発熱体層はそれぞれ絶縁部で絶縁されていることにより、使用者が誘導加熱調理記用容器を加熱コイル中心からずらして置いた場合においても、加熱コイルから誘起される渦電流の流れは、内側と外側の発熱体層の同心円状で分散する。そのことにより、最外周に集中して流れることがなく、各発熱体層を異常高温状態になることを防ぐことができる。このことにより、発熱層の損傷・破壊を防ぐことができ、誘導加熱調理器用調理容器としての信頼性を一層高めることができるのである。
【0011】
第2の発明は、特に、第1の発明において、調理容器本体の外壁底面中心部分の発熱体層が円状であることにより、中心部分の発熱分布を良くする効果を有する。そのことにより、温度分布が均一でないことにより起こりうる調理物の焦げ付きを防ぐことができる効果を有し、製品としての利点が大きくなる。
【0012】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、外壁底面外周部の発熱体層の厚みを外壁底面内周部の前記発熱体層の厚みよりも分厚くすることにより、本来は温度が上昇しにくい外周部の温度上昇効果をもたらし、調理容器底面全体の温度分布を良くする効果を有する。そのため、単一の厚みよりも全体として温度分布が良くなり、温度分布が均一でないことにより起こりうる調理物の焦げ付きを防ぐことができる効果を有し、より一層製品としての利点が大きくなる。
【0013】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明において、同心円状に複数設けられた一方の発熱体層と隣り合う他の発熱体層の間に絶縁部である溝部を設けたことにより、一方の発熱体層と隣り合う他の発熱体層の間での電気絶縁の効果を高める。このことにより、隣り合う発熱層の損傷・破壊をより一層防ぐことができ、誘導加熱調理器用調理容器としての信頼性を一層高めることができる。
【0014】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明において、同心円状に複数設けら
れた一方の発熱体層と隣り合う他の発熱体層の間に絶縁部である突起を設けたことにより、第一の発熱体層と第二の発熱体層の間での電気絶縁の効果を高める。このことにより、隣り合う発熱層の損傷・破壊をより一層防ぐことができ、誘導加熱調理器用調理容器としての信頼性を一層高めることができる。
【0015】
第6の発明は、特に第1〜5のいずれか1つの発明において、外壁底面中心部分の発熱体層の外周に同心円状に複数設けられた外壁底面内周部の前記発熱体層の幅を外壁底面外周部の前記発熱体層の幅よりも小さくしたことにより、外周部の発熱体層に流れる渦電流を大きくし、結果として外側の発熱体層の温度上昇を促進する。このことにより、単一の幅である場合に比べて、調理容器底面の温度分布を改善し、温度分布が均一でないことにより起こりうる調理物の焦げ付きを防ぐことができる効果を有するのである。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。尚、実施の形態の説明順序は上記に記載の発明の順序とは異なる場合がある。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における誘導加熱調理器用調理容器の外壁底面を示すものである。以下、図面を用いて説明する。図2は、図1のA−Bにおける断面図であり、外壁底面には同心円状の発熱体層1と、同心円状の絶縁部2とが備えられている。
【0018】
図3に示す据置型誘導加熱調理器の外郭3の天面には、鍋等の被加熱調理器具(図示していない)を載置する天板4が配されている。天板4は高耐熱のガラス等の、電磁誘導によって加熱されない材質で構成されている。トップフレーム5は、天板4の外周を囲み、本体の天面の一部もしくは殆ど全部を構成しており、天板4を介して伝わる、被加熱物からの熱に十分耐え、且つ外観部品として見栄えのよく、腐食にも強いステンレスやホーロー処理鋼板等の金属から成っている。トップフレーム5に形成された天面操作部6の内部には、操作部ユニット等が配設されている。本発明の被加熱調理器具である誘導加熱調理器用調理容器は、天板4の上に載置され、家庭などで使用されるものである。
【0019】
図4は、本発明の実施形態における誘導加熱調理器の主要構成部品を示すものである。但し、実施の形態の説明に不要な構成部分については主要構成であっても省略している。
【0020】
図4において、天板4の下方には誘導加熱コイル8が近接して設けられている。誘導加熱コイル8はコイルケース9に収納され、外郭3内の所定の位置に保持されている。誘導加熱コイル8にはインバータ回路を含む電源回路10によって高周波電力が供給される。その高周波電力により加熱コイル8は高周波磁界を生み出し、高周波磁界は、天板4に載置された誘導加熱調理器用容器の底面の発熱体層1に渦電流を誘導し、アルミニウムあるいは銀の薄膜により形成された発熱体層1を発熱させ、その熱を用いてセラミックスにより形成された調理容器本体101に熱を伝導する役割を担っている。
【0021】
その際、誘導加熱調理器用容器を誘導加熱コイル8の直上に載置されている場合では、誘導加熱調理器用容器底の発熱体層1に対して流れる渦電流は磁束が強いところには多く、磁束が弱いところには少なく流れる。これは誘導加熱コイル8の形状で決定されることは言うまでもない。
【0022】
しかし、従来の調理容器の構成である図13、図14に示す発熱体層1であると、調理容器が誘導加熱コイル8の直上外に載置された場合、鍋が載置されていない加熱コイル部分と鍋が載置されている加熱コイル部分から発生する高周波磁界は、中心に置いた場合と比べて、載置されていない誘導加熱コイル8側の高周波磁界が載置されていない誘導加熱
コイル8側の調理容器底面の発熱体層1に集中することになる。このことにより、従来の発熱体層1であると、載置されていない誘導加熱コイル8側の発熱体層1への渦電流の集中が避けられず、発熱が集中する部分11ができてしまう。その結果、異常高温状態となり、結果として発熱体層1の損傷に至るという課題があった。
【0023】
本発明の誘導加熱調理器用調理容器によると、図5に示すように発熱体層1が絶縁部2により分離しているために、最外周の発熱体層にはリング状に渦電流が流れ、渦電流が分散することになるのである。図6に本発明による発熱体層の渦電流の流れ示す。結果として、載置されていない誘導加熱コイル8側の発熱体層1への渦電流の集中が避けることができる。よって、使用者の誤使用の範囲内であっても、発熱体層1への損傷を避けることができ、信頼性の高い誘導加熱調理器用調理容器を提供できるのである。また、絶縁部2を複数個設けることにより、渦電流がより分散し、各発熱体層1を異常高温状態になることを防ぐことができる。このことにより、発熱層1の損傷・破壊を防ぐことができ、誘導加熱調理器用調理容器としての安全性を一層高めることができる。
【0024】
本発明の実施の形態では、誘導加熱調理器での据置型による説明を行っているが、誘導加熱コイル8を有するビルトイン型、卓上型でも同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0025】
(実施の形態2)
本発明の第2の実施の形態における誘導加熱調理器用調理容器は、発熱体層1の薄膜の厚さは、数ミクロン〜数百ミクロンに形成されますが、発熱体層1最外周の厚みを分厚くすることにより、調理容器本体101底の温度分布をより均一に近づけ、調理中の焦げ付き、焼きムラなどを少なくすることができる。図7にその発熱体層1を示す。最外周部の厚みを分厚く、例えば、2倍の厚さに、することにより、図8の調理容器本体101底面の改善後の温度分布13に示すように最外周部の発熱量が大きくなり、外側の発熱体層1の温度が上昇することになる。そのため、単一の厚み、調理容器本体101底面の改善前の温度分布14、よりも全体として温度分布がよくなり、温度分布が均一でないことにより起こりうる調理物の焦げ付きを防ぐことができる効果を有するのである。これにより、誘導加熱調理器用調理容器としての調理性能を向上することができるのである。
【0026】
(実施の形態3)
本発明の第3の実施形態における誘導加熱調理器用調理容器は、図9、10に示すように、絶縁部2に突起部16あるいは溝部15を設けることにより内側の発熱体層1と外側の発熱体層1の間での熱伝導を緩和し、各発熱体層1の温度上昇を分離する効果を有し、各発熱体層1を異常高温状態になることを防ぐことができる。このことにより、発熱層1の損傷・破壊を防ぐことができ、誘導加熱調理器用調理容器としての安全性を一層高めることができる。
【0027】
(実施の形態4)
本発明の第4の実施形態における誘導加熱調理器用調理容器は、図11、12に示すように、内側の発熱体層1の幅をより外側の発熱体層1の幅よりも小さくしたことにより、より外側の発熱体層1に流れる渦電流を大きくし、結果として外側の発熱体層1の温度上昇を促進する。このことにより、単一の幅である場合、調理容器本体101底面の改善前の温度分布14、に比べて、調理容器本体101底面の改善後の温度分布13で示すように改善し、温度分布が均一でないことにより起こりうる調理物の焦げ付きを防ぐことができる効果を有するのである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように、本発明にかかる誘導加熱調理器用調理容器は、土鍋本来の特性を損なう
ことなく、使用者が誤使用した場合においても、信頼性の高い誘導加熱調理器用土鍋を実現できるので、家庭用あるいは業務用の誘導加熱調理器に使用する用途に適用できる。
【符号の説明】
【0029】
1 発熱体層
2 絶縁部
3 外郭
4 天板
5 トップフレーム
6 天面操作部
7 前面操作部
8 誘導加熱コイル
9 コイルケース
10 電源回路
15 溝部
16 突起部
101 調理容器本体
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭の台所や業務用の厨房等で使用される、誘導加熱調理器用調理容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の誘導加熱調理器用調理容器における発熱体層の概略構成は、前記調理容器の外壁底面に発熱体層を転写するものが一般的である(例えば、特許文献1参照)。図13、図14参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−130311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、使用者が誤使用の範囲内で、前記調理容器を誘導加熱調理器本体下方にある加熱コイル中心からずらして置いた場合に、前記加熱コイルによる高周波磁界により発熱体層に誘起される渦電流が、前記調理容器が置かれていない加熱コイル側に該当する前記調理容器の発熱体層の最外周表面に集中して流れ、その際の調理容器本体と発熱体層の熱伝導率の違いにより、発熱体層に集中して流れた部分が異常高温状態となり、発熱した熱のほとんどが発熱体層で消費される。このことにより、発熱体層を損傷・破壊に至らしめ、最終的に前記誘導加熱調理器用調理容器として、誘導加熱されなくなるという課題があった。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、使用者が誤使用の範囲内で、載置する位置を誤っても、前記調理容器の発熱体層を損傷・破壊させることが無く、信頼性の高い誘導加熱調理器用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の誘導加熱調理記用容器は、セラミックスにより形成された調理容器本体と、前記調理容器本体の外壁底面に設けられ、誘導加熱調理の発生させる高周波磁界により発熱する発熱体層とを備え、前記発熱体層は前記外壁底面に同心円状に複数設けられ、前記発熱体層はそれぞれ絶縁部で絶縁されていることを特徴としている。
【0007】
これによって、使用者が誘導加熱調理記用容器を加熱コイル中心からずらして置いた場合においても、加熱コイルから誘起される渦電流の流れは、内側と外側の発熱体層の同心円状で分散し、最外周に集中して流れることがなく、各発熱体層を異常高温状態になることを防ぐことができる。このことにより、発熱層の損傷・破壊を防ぐことができ、誘導加熱調理器用調理容器としての安全性を一層高めることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の誘導加熱調理器用調理容器によれば、調理容器本来の特性を損なうことなく、使用者が誤使用した場合においても、信頼性の高い誘導加熱調理器用調理容器を実現できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】発明の実施の形態1における誘導加熱調理器用調理容器の底面図
【図2】発明の実施の形態1における誘導加熱調理器用調理容器の断面図
【図3】発明の実施の形態1における誘導加熱調理器の本体図
【図4】発明の実施の形態1における誘導加熱調理器の詳細図
【図5】発明の実施の形態1における誘導加熱調理器用調理容器の(再掲)底面図
【図6】発明の実施の形態1における誘導加熱調理器用調理容器底面渦電流の流れを示す図
【図7】発明の実施の形態2における誘導加熱調理器用調理容器(厚みの変化あり)の底面図
【図8】発明の実施の形態2における誘導加熱調理器用調理容器(厚みの変化あり)の温度分布図
【図9】発明の実施の形態3における誘導加熱調理器用調理容器(溝・突起あり)の底面図
【図10】発明の実施の形態3における誘導加熱調理器用調理容器(溝・突起あり)の温度分布図
【図11】発明の実施の形態4における誘導加熱調理器用調理容器の底面図
【図12】発明の実施の形態4における誘導加熱調理器用調理容器の温度分布図
【図13】従来の誘導加熱調理器用調理容器の底面図
【図14】従来の誘導加熱調理器用調理容器底面渦電流の流れを示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の発明は、セラミックスにより形成された調理容器本体と、前記調理容器本体の外壁底面に設けられ、誘導加熱調理器の発生させる高周波磁界により発熱する発熱体層とを備え、前記発熱体層は前記外壁底面に同心円状に複数設けられ、前記発熱体層はそれぞれ絶縁部で絶縁されていることにより、使用者が誘導加熱調理記用容器を加熱コイル中心からずらして置いた場合においても、加熱コイルから誘起される渦電流の流れは、内側と外側の発熱体層の同心円状で分散する。そのことにより、最外周に集中して流れることがなく、各発熱体層を異常高温状態になることを防ぐことができる。このことにより、発熱層の損傷・破壊を防ぐことができ、誘導加熱調理器用調理容器としての信頼性を一層高めることができるのである。
【0011】
第2の発明は、特に、第1の発明において、調理容器本体の外壁底面中心部分の発熱体層が円状であることにより、中心部分の発熱分布を良くする効果を有する。そのことにより、温度分布が均一でないことにより起こりうる調理物の焦げ付きを防ぐことができる効果を有し、製品としての利点が大きくなる。
【0012】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、外壁底面外周部の発熱体層の厚みを外壁底面内周部の前記発熱体層の厚みよりも分厚くすることにより、本来は温度が上昇しにくい外周部の温度上昇効果をもたらし、調理容器底面全体の温度分布を良くする効果を有する。そのため、単一の厚みよりも全体として温度分布が良くなり、温度分布が均一でないことにより起こりうる調理物の焦げ付きを防ぐことができる効果を有し、より一層製品としての利点が大きくなる。
【0013】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明において、同心円状に複数設けられた一方の発熱体層と隣り合う他の発熱体層の間に絶縁部である溝部を設けたことにより、一方の発熱体層と隣り合う他の発熱体層の間での電気絶縁の効果を高める。このことにより、隣り合う発熱層の損傷・破壊をより一層防ぐことができ、誘導加熱調理器用調理容器としての信頼性を一層高めることができる。
【0014】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明において、同心円状に複数設けら
れた一方の発熱体層と隣り合う他の発熱体層の間に絶縁部である突起を設けたことにより、第一の発熱体層と第二の発熱体層の間での電気絶縁の効果を高める。このことにより、隣り合う発熱層の損傷・破壊をより一層防ぐことができ、誘導加熱調理器用調理容器としての信頼性を一層高めることができる。
【0015】
第6の発明は、特に第1〜5のいずれか1つの発明において、外壁底面中心部分の発熱体層の外周に同心円状に複数設けられた外壁底面内周部の前記発熱体層の幅を外壁底面外周部の前記発熱体層の幅よりも小さくしたことにより、外周部の発熱体層に流れる渦電流を大きくし、結果として外側の発熱体層の温度上昇を促進する。このことにより、単一の幅である場合に比べて、調理容器底面の温度分布を改善し、温度分布が均一でないことにより起こりうる調理物の焦げ付きを防ぐことができる効果を有するのである。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。尚、実施の形態の説明順序は上記に記載の発明の順序とは異なる場合がある。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における誘導加熱調理器用調理容器の外壁底面を示すものである。以下、図面を用いて説明する。図2は、図1のA−Bにおける断面図であり、外壁底面には同心円状の発熱体層1と、同心円状の絶縁部2とが備えられている。
【0018】
図3に示す据置型誘導加熱調理器の外郭3の天面には、鍋等の被加熱調理器具(図示していない)を載置する天板4が配されている。天板4は高耐熱のガラス等の、電磁誘導によって加熱されない材質で構成されている。トップフレーム5は、天板4の外周を囲み、本体の天面の一部もしくは殆ど全部を構成しており、天板4を介して伝わる、被加熱物からの熱に十分耐え、且つ外観部品として見栄えのよく、腐食にも強いステンレスやホーロー処理鋼板等の金属から成っている。トップフレーム5に形成された天面操作部6の内部には、操作部ユニット等が配設されている。本発明の被加熱調理器具である誘導加熱調理器用調理容器は、天板4の上に載置され、家庭などで使用されるものである。
【0019】
図4は、本発明の実施形態における誘導加熱調理器の主要構成部品を示すものである。但し、実施の形態の説明に不要な構成部分については主要構成であっても省略している。
【0020】
図4において、天板4の下方には誘導加熱コイル8が近接して設けられている。誘導加熱コイル8はコイルケース9に収納され、外郭3内の所定の位置に保持されている。誘導加熱コイル8にはインバータ回路を含む電源回路10によって高周波電力が供給される。その高周波電力により加熱コイル8は高周波磁界を生み出し、高周波磁界は、天板4に載置された誘導加熱調理器用容器の底面の発熱体層1に渦電流を誘導し、アルミニウムあるいは銀の薄膜により形成された発熱体層1を発熱させ、その熱を用いてセラミックスにより形成された調理容器本体101に熱を伝導する役割を担っている。
【0021】
その際、誘導加熱調理器用容器を誘導加熱コイル8の直上に載置されている場合では、誘導加熱調理器用容器底の発熱体層1に対して流れる渦電流は磁束が強いところには多く、磁束が弱いところには少なく流れる。これは誘導加熱コイル8の形状で決定されることは言うまでもない。
【0022】
しかし、従来の調理容器の構成である図13、図14に示す発熱体層1であると、調理容器が誘導加熱コイル8の直上外に載置された場合、鍋が載置されていない加熱コイル部分と鍋が載置されている加熱コイル部分から発生する高周波磁界は、中心に置いた場合と比べて、載置されていない誘導加熱コイル8側の高周波磁界が載置されていない誘導加熱
コイル8側の調理容器底面の発熱体層1に集中することになる。このことにより、従来の発熱体層1であると、載置されていない誘導加熱コイル8側の発熱体層1への渦電流の集中が避けられず、発熱が集中する部分11ができてしまう。その結果、異常高温状態となり、結果として発熱体層1の損傷に至るという課題があった。
【0023】
本発明の誘導加熱調理器用調理容器によると、図5に示すように発熱体層1が絶縁部2により分離しているために、最外周の発熱体層にはリング状に渦電流が流れ、渦電流が分散することになるのである。図6に本発明による発熱体層の渦電流の流れ示す。結果として、載置されていない誘導加熱コイル8側の発熱体層1への渦電流の集中が避けることができる。よって、使用者の誤使用の範囲内であっても、発熱体層1への損傷を避けることができ、信頼性の高い誘導加熱調理器用調理容器を提供できるのである。また、絶縁部2を複数個設けることにより、渦電流がより分散し、各発熱体層1を異常高温状態になることを防ぐことができる。このことにより、発熱層1の損傷・破壊を防ぐことができ、誘導加熱調理器用調理容器としての安全性を一層高めることができる。
【0024】
本発明の実施の形態では、誘導加熱調理器での据置型による説明を行っているが、誘導加熱コイル8を有するビルトイン型、卓上型でも同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0025】
(実施の形態2)
本発明の第2の実施の形態における誘導加熱調理器用調理容器は、発熱体層1の薄膜の厚さは、数ミクロン〜数百ミクロンに形成されますが、発熱体層1最外周の厚みを分厚くすることにより、調理容器本体101底の温度分布をより均一に近づけ、調理中の焦げ付き、焼きムラなどを少なくすることができる。図7にその発熱体層1を示す。最外周部の厚みを分厚く、例えば、2倍の厚さに、することにより、図8の調理容器本体101底面の改善後の温度分布13に示すように最外周部の発熱量が大きくなり、外側の発熱体層1の温度が上昇することになる。そのため、単一の厚み、調理容器本体101底面の改善前の温度分布14、よりも全体として温度分布がよくなり、温度分布が均一でないことにより起こりうる調理物の焦げ付きを防ぐことができる効果を有するのである。これにより、誘導加熱調理器用調理容器としての調理性能を向上することができるのである。
【0026】
(実施の形態3)
本発明の第3の実施形態における誘導加熱調理器用調理容器は、図9、10に示すように、絶縁部2に突起部16あるいは溝部15を設けることにより内側の発熱体層1と外側の発熱体層1の間での熱伝導を緩和し、各発熱体層1の温度上昇を分離する効果を有し、各発熱体層1を異常高温状態になることを防ぐことができる。このことにより、発熱層1の損傷・破壊を防ぐことができ、誘導加熱調理器用調理容器としての安全性を一層高めることができる。
【0027】
(実施の形態4)
本発明の第4の実施形態における誘導加熱調理器用調理容器は、図11、12に示すように、内側の発熱体層1の幅をより外側の発熱体層1の幅よりも小さくしたことにより、より外側の発熱体層1に流れる渦電流を大きくし、結果として外側の発熱体層1の温度上昇を促進する。このことにより、単一の幅である場合、調理容器本体101底面の改善前の温度分布14、に比べて、調理容器本体101底面の改善後の温度分布13で示すように改善し、温度分布が均一でないことにより起こりうる調理物の焦げ付きを防ぐことができる効果を有するのである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように、本発明にかかる誘導加熱調理器用調理容器は、土鍋本来の特性を損なう
ことなく、使用者が誤使用した場合においても、信頼性の高い誘導加熱調理器用土鍋を実現できるので、家庭用あるいは業務用の誘導加熱調理器に使用する用途に適用できる。
【符号の説明】
【0029】
1 発熱体層
2 絶縁部
3 外郭
4 天板
5 トップフレーム
6 天面操作部
7 前面操作部
8 誘導加熱コイル
9 コイルケース
10 電源回路
15 溝部
16 突起部
101 調理容器本体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックスにより形成された調理容器本体と、前記調理容器本体の外壁底面に設けられ、誘導加熱調理器の発生させる高周波磁界により発熱する発熱体層とを備え、前記発熱体層は前記外壁底面に同心円状に複数設けられ、前記発熱体層はそれぞれ絶縁部で絶縁されていることを特徴とする誘導加熱調理器用調理容器。
【請求項2】
調理容器本体の外壁底面中心部分の発熱体層が円状であることを特徴とする請求項1に記載の誘導加熱調理器用調理容器。
【請求項3】
外壁底面外周部の発熱体層の厚みを外壁底面内周部の前記発熱体層の厚みよりも分厚いことを特徴とする請求項1または2に記載の誘導加熱調理器用調理容器。
【請求項4】
同心円状に複数設けられた一方の発熱体層と隣り合う他の発熱体層との間に絶縁部である溝部を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器用調理容器。
【請求項5】
同心円状に複数設けられた一方の発熱体層と隣り合う他の発熱体層との間に絶縁部である突起部を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器用調理容器。
【請求項6】
外壁底面中心部分の発熱体層の外周に同心円状に複数設けられた外壁底面内周部の前記発熱体層の幅を外壁底面外周部の前記発熱体層の幅よりも小さくしたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器用調理容器。
【請求項1】
セラミックスにより形成された調理容器本体と、前記調理容器本体の外壁底面に設けられ、誘導加熱調理器の発生させる高周波磁界により発熱する発熱体層とを備え、前記発熱体層は前記外壁底面に同心円状に複数設けられ、前記発熱体層はそれぞれ絶縁部で絶縁されていることを特徴とする誘導加熱調理器用調理容器。
【請求項2】
調理容器本体の外壁底面中心部分の発熱体層が円状であることを特徴とする請求項1に記載の誘導加熱調理器用調理容器。
【請求項3】
外壁底面外周部の発熱体層の厚みを外壁底面内周部の前記発熱体層の厚みよりも分厚いことを特徴とする請求項1または2に記載の誘導加熱調理器用調理容器。
【請求項4】
同心円状に複数設けられた一方の発熱体層と隣り合う他の発熱体層との間に絶縁部である溝部を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器用調理容器。
【請求項5】
同心円状に複数設けられた一方の発熱体層と隣り合う他の発熱体層との間に絶縁部である突起部を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器用調理容器。
【請求項6】
外壁底面中心部分の発熱体層の外周に同心円状に複数設けられた外壁底面内周部の前記発熱体層の幅を外壁底面外周部の前記発熱体層の幅よりも小さくしたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器用調理容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−110636(P2012−110636A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264559(P2010−264559)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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