誘導装置およびその製造方法
ボビン巻回技術または巻回された磁性パターン部材を用いて、トロイダル誘導装置が効率よく製造される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
−関連出願−
本願は2006年1月18日に出願された「Electrical Core Coils and Transformers and Processes For Making Same(電気コアコイルおよび変圧器、並びにその製造方法)と題された米国仮出願60/759,577号、2006年1月18日に出願された「Inductive Device and Process for Making Same(誘導装置およびその製造方法)」と題された米国仮出願60/759,567号、および2006年1月18日に出願された「Inductive Device and Process for Making Same(誘導装置およびその製造方法)」と題された米国仮出願60/759,566号の利益を主張するものであり、それらのすべてを茲に引用によって援用する。
【0002】
本発明は概括的には電気的装置に関するものであり、詳細には誘導装置およびその製造方法に関わる。
【背景技術】
【0003】
コイルや変圧器などの従来の誘導装置は100年に渡って広く用いられてきた。誘導装置は電力配給、モータ、発電機、電源を含む多くの技術用途を有している。電力配給においては、電力を発電源から電力使用者に効率的に届けるために、配給システム内の多くのポイントにおいて変圧を行っており、これは誘導装置によってなされる。電力配給のような低周波数用に構成された誘導装置は一般に固体磁性材料を用いている。誘導装置に用いられる磁性材料の改良がなされてきたが、そうした改良は一般的に増加的なものである。
【0004】
従来の変圧器は概して3つのタイプのうちの1つに分類できる、即ち積層コア、巻きコア、そしてトロイダルである。積層コア変圧器はおそらく最も広く用いられているものであって、磁性材料の積層シートを有し、そのまわりに電気コイルが巻かれている。積層コア変圧器には、例えば、いわゆる「E」および「I」コア積層装置がある。巻コア装置は積層シート(sheet stock)から構成される磁性コアを含む。巻コア変圧器は電力配給用途に用いられることが多い。トロイダル変圧器は公共電力配給で一般的に必要とされる大きさの範囲よりも下のサイズの用途において最もよく利用されてきた。
【0005】
トロイダル変圧器および誘導器は多くの好ましい動作特性を有しているが、上記の他の2つのタイプよりも製造コストがかかる傾向がある。また、トロイダル装置は大きな突入電流に関連する固有の問題があり、これが誘導装置またはそれに関連する回路の損傷や故障を引き起こすことがある。突入電流の問題の主因は従来のトロイダル装置において磁気ギャップの制御が行われていないことである。
【0006】
従来の誘導装置の製作工程には手作業が多く含まれ、磁性材料の取り扱いと磁性材料の導電コイルへの取り付けにおいては特にそうであった。別の一般的な制限事項として、装置の動作中に生ずる磁界を乱しゆがめる形態を用いていること関連するものがある。
【0007】
積層変圧器および巻コア変圧器は製造時に多くの手作業を必要とすることが多い。従来のトロイダル装置もまた手作業による製造工程を含んでおり、そのため複雑な機械による補助を用いてもなお、製造業者にとって割高なものとなっている。従来の装置には電気巻線が環境に露出しているものもあり、そのような装置は電磁的干渉や従来のユニットから周囲環境への磁束の漏洩を許容することになり、また装置が外部の電磁的干渉を受けうることにもなる。更に、従来の装置設計では、導体がそのまわりに不均一に配置された磁性要素を有することにより磁束パターンの異常が生ずる。磁性材料の不均一な配置はリラクタンスに影響を及ぼしかつ磁束経路を乱し、それにより基本周波数にも影響を与えて好ましくない高調波の発生を助長することになる。
【発明の開示】
【0008】
本発明は以上に説明した背景に鑑みてなされた誘導装置およびそれに関連する製造方法に関するものである。
【0009】
概括的に言えば、誘導装置およびその製造方法を開示する。例えば、本発明は概してトロイダル形状に形成された電気巻線を有し、電気巻線要素が装置の物理的なコアを構成するような、コイル、チョークコイルおよび/または変圧器に適用することができる。磁性要素(magnetic components)のワイヤまたは細いストリップ状の材料を電気コアの周囲に巻くことができる。このような磁性要素のワイヤまたは細いストリップ(あるいはその組み合わせ)を巻いて、電気コアの周囲に複数の筒形または拡開筒形(即ち扇形形状の要素)を形成し、磁性要素への障害が最小化されるようにして電気要素のリードを、装置から引き出すようにする。
【0010】
本発明の別の態様によれば、電気コイルを細長い形状に巻いて筒状扇形コイル(cylindrical sector shaped coil)を形成する。複数のこうした電気コイルを組み合わせて略筒状として、磁性ワイヤ等と共に結合することのできる内側「コア」構造を形成する。得られた構造は例えば変圧器や電気モータのステータに利用可能である。
【0011】
本発明の別の態様では、誘導装置の磁性要素をマンドレル上に巻かれた蛇行(曲折)パターンその他のワイヤパターンによって形成してもよく、トロイダル型の電気コアを同一のマンドレル状に巻いてもよい。これによりトロイダル誘導装置を単純な製造装置上で容易に組み立てることができる。
【0012】
以下は本発明のいくつかの具体的な態様の例である。
【0013】
A. 略トロイダル形状の電気巻線と該電気巻線のまわりに配置されたボビンとを設けることと、ボビンに磁性材料を取り付けることと、ボビンを電気巻線のまわりで回転させ、ボビンに磁性材料を巻き付け、それによって磁性材料を電気巻線のまわりに巻き付けることと、からなる誘導装置の製作方法。
【0014】
B.概ね細長いトロイダル形状に形成された電気コイルと、電気コイルのまわりに長手方向に沿って配置され電気コイルの電気巻線方向に交差して巻かれ、電気コイルの内側開口を通過しない磁性要素と、を有する誘導装置。
【0015】
C.略トロイダル形状の電気巻線と、それぞれ電気巻線のまわりに周方向に互いに位置をずらして配置された複数のボビンと、それぞれ複数のボビンの対応する1つの上に巻かれた複数の磁性要素とを有し、複数の磁性要素のうちの少なくとも1つは複数の分離した磁性サブ要素を含む誘導装置。
【0016】
D.略トロイダル形状の電気巻線と、電気巻線のまわりに配置された少なくとも1つの筒状磁性要素と、電気巻線のまわりに配置された少なくとも1つの扇形磁性要素とを有する誘導装置。
【0017】
E.概ねトロイダル形状に形成された電気要素であって、第1の一次巻線と、第2の一次巻線と、第1の二次巻線と、第2の二次巻線とを有し、第1および第2の二次巻線は互いに隣接して配置されており、かつ第1の一次巻線はトロイダル形状の内周部に配置されており、また第2の一次巻線はトロイダル形状の外周部に配置されている電気要素と、電気要素を少なくとも部分的に包囲している磁性要素と、を備える誘導装置。
【0018】
F.それぞれ略筒状扇形形状の複数の第1の細長い電気要素と、それぞれ略筒状扇形形状の複数の第2の細長い電気要素とを有し、複数の第1の細長い電気要素と複数の第2の細長い電気要素とは略筒形を形成するように配置されている、誘導装置。
【0019】
G.誘導装置の製作方法であって、(a)連続的な細長い磁性材料からなる磁性パターン部材を型の上に巻き付ける工程であって、細長い磁性材料はパターン部材の型上での巻き付け方向と交差する互い違いの向きに延在しているものである工程と、(b)型の上に、電気要素を前記互い違いの方向と交差する巻き方向に巻き付ける工程と、を含む方法。
【0020】
H.項目Gに記載した方法によって製作された誘導装置。
【0021】
本発明の以上およびその他の態様は、他の様々な特徴や利点と共に、添付図面に関連してなされる以下の詳細な説明によってより容易に理解できるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に説明する実施形態は本発明の例示であって、限定するものではない。いくつかの例において、特定の実施形態の明瞭な理解に資するために、特徴を誇張して、即ち拡大して描いているものもある。
【0023】
図1乃至3は本発明によるトロイダル誘導装置の製造方法を説明するための図である。詳細には、誘導装置の製造方法はトロイダル型の電気コア12を含みうる。トロイダル電気コア12は電気リード線14を含んでよい。この誘導装置は誘導器(インダクタ)、チョーク、変圧器等に用いるよう構成しうる。電気コア12は例えば電気ワイヤ(線材)または電気ストリップ(帯材)で形成することができる。好適には電気コア12を形成する導体材料を電気的絶縁材料でコーティングする。トロイダル形状の電気コア12は、そのまわりに1以上の磁性要素を配置し、電気コアが少なくとも部分的に磁性要素で取り巻かれるようにすることのできる形状をしている。
【0024】
電気リード線14を用いて誘導装置を他の電気装置、システムまたは回路に接続することができる。電気コアから延在するリード線の本数は、電気コアの要素をなす個々の巻線即ちコイルの数および/または個々の巻線が電気コアの要素内でどのように接続されているか等のいくつかのファクタに依存しうる。また、リード線の配置も特定の用途における要請に応じて、所望されるように選択することができる。
【0025】
図2に示すように、誘導装置の製造方法は電気コイルのまわりに配置したボビン16を設けて行う。ボビン16が電気要素12の周りで容易に回転して電気コア12の周りに磁性要素を巻き付けることができるように、ボビン16は電気コア12の周りに緩く取り付ける。ボビン16と電気コア12の間の摩擦を低減し、それによって回転による両電気要素の摩擦損傷を低減又は防止する為に、潤滑剤、即ち例えばテフロン(登録商標)、シリコンその他の適切な潤滑剤を電気コア12の外側表面および/またはボビン16の内側表面に塗布してもよい。この潤滑剤は電気的絶縁体であってもよい。
【0026】
ボビン16はプラスチック、繊維強化されたプラスチック等の適当な材料とすることができる。ボビン16は後に取り外しおよび/または再利用可能としてもよく、あるいは誘導装置の恒久的な部品としてもよい。ボビン16は肩部のない筒形か、または図示のように肩部を有する筒形とすることができる。もしボビン上に巻かれた磁性材料が破損したならば、磁性材料を単にボビンに対して再度取り付け巻き付けを継続することができる。また、ボビン16上に複数の磁性サブ要素(サブコンポネント)を巻き付けてもよい。磁性材料は単芯ワイヤ(single strand wire)、多芯ワイヤ(multi-strand wire)、単一ストリップ、複数ストリップまたはこれらの組み合わせとすることができる。
【0027】
図3は磁性材料20のワイヤまたはストリップの供給リール18を有する単芯のワイヤの巻き付け構成を示す。供給リール18はボビン16上に巻き付けるための磁性材料20を供給する。ボビン16上への磁性材料20の巻き付けは手作業により行ってもよいし、自動的に行ってもよく、またはこれらを組み合わせてもよい。
【0028】
実地では、磁性材料20の端部をボビン16に取り付けることができる。そしてボビン16を電気コア12のまわりで回転させる。ボビン16が電気コア12のまわりで回転すると、磁性材料20は供給リール18からボビン16上へと供給され、それにより電気コア12のまわりに巻かれた磁性要素が形成される。
【0029】
図3は例えば電気コア12上に巻いた第1の磁性要素部としてのボビン16上への単芯ワイヤの巻き始めを示す。1つの供給リール18が1本の磁性ワイヤ20を担持しているものを図示しているが、供給リールは複数のワイヤまたはストリップを担持してもよいことを理解すべきである。磁性要素の密度を高めるために、磁性ワイヤは異なる形状および/または異なるサイズのワイヤを含んでもよい。例えば、磁性ワイヤは例えば周長比が5:1と6:1の間の2つの異なるサイズの丸ワイヤとしてもよい。磁性ワイヤは異なる断面形状、サイズおよび/または断面積のワイヤを含んでもよい。上記の方法によって誘導装置を製造する際に、複数のワイヤあるいは複数芯を用いてもよい。これらを用いればボビン16の必要な回転数が少なくなるので、製造工程の効率化に役立つ。
【0030】
図4はボビンに係合し磁性媒体を電気コイルに巻き付ける駆動力源を有する実施例の模式図である。詳細には、図4では上に説明した要素に加えてボビン回転機22が描かれている。ボビン回転機22は駆動機24(例えば速度制御された電気モータ)および駆動機24の被駆動回転軸に取り付けられたボビン駆動ホイール26を有している。図示の形態ではボビン駆動ホイール26はボビン16の端部フランジに摩擦係合し、ボビン16を電気コア12のまわりで回転させる。かくしてボビン16がボビン駆動ホイール26によって回転されるにつれて、回転前にボビン16に取り付けられた磁性材料20はボビン16上に巻かれ、それにより電気コア12のまわりに巻かれる。磁性材料20は接着剤、接着テープ、ファスナー等の適当な手段によりボビン16に取り付けることができる。磁性材料20がボビン16上に巻かれるにつれて、磁性材料20は供給リール18から巻き出される。供給リールは磁性材料20の巻き出しに応じて自由に回転してもよいし、動力により回転してもよい。ボビンの端部フランジへの係合を容易にするために、ボビン駆動ホイールはボビンのフランジに弾性的に係合する弾性(例えばゴム)の外表面を備えてもよい。
【0031】
図5は電気コイル上への第2の磁性要素の巻き付けを示す図である。詳細には、上に述べた要素に加えて第2のボビン28を図示している。図5は製造工程の続きを示しており、第1のボビン16上に巻き終わった1つの磁性要素と、第2のボビン28上に巻かれようとしている第2の磁性要素とがある。第2の磁性要素は上記と同様にして巻くことができる。
【0032】
各ボビンに磁性要素が所望のように巻かれた後、ボビンを磁性要素供給機から分離し、巻かれた磁性要素とボビンとの組を接着剤、接着テープまたは絶縁被覆材料などの適当な手段により電気コア上の適位置に保持してよい。ボビンを所望の高さまで巻き、次いで次のボビンに磁性材料を巻く、という製作工程は電気コアが別のボビンを入れる隙間が殆どあるいは全くなくなって埋めつくされるまで(即ち電気コアが実質的にボビン/磁性巻回要素によって被覆即ち包囲されるまで)続けることができ、あるいはまた意図した動作特性に対して十分な磁性材料が配置されるまで続けることができる。
【0033】
図6は複数の長さの磁性材料を電気コアに同時に巻き付ける2種類の巻き付け手段を示しており、複数の供給リールまたは1つの共通な供給リールから引き出している。詳細には、ボビン(ひいては電気コア)に巻き付ける複数のワイヤまたはストリップを供給する第1の手段は、それぞれ単一のワイヤまたはストリップを供給する複数のスプール30、32、34を含んでよい。ボビン(即ち電気コア)に巻き付ける複数のワイヤまたはストリップを供給する第2の手段は、ボビン(即ち電気コア)に巻き付ける複数のワイヤまたはストリップを供給する単一の供給リール36を含んでよい。
【0034】
図7A乃至7Cは完成した磁性要素を環状の電気コアに固定するためのいくつかの手法を例示的に示している。詳細には、図7Aはまわりにボビン16が配置された電気コア12(断面で図示されている)および電気コア12の外側面とボビン16の内側面との間に配置されたスペーサ38を示す概略図である。複数のこのようなスペーサを好適には緊密にボビン16と電気コア12との間に嵌着し、ボビンを適位置に保持し、電気コアのまわりで適位置に保つことができる。
【0035】
図7Bはまわりにボビン16が配置された電気コア12および電気コア12の外側面とボビン16の内側面との間に配置された別の磁性材料40の巻線を示す概略図である。この磁性材料40の別の巻線はワイヤ、ストリップ、シート材等としてよい。また、磁性材料40はボビン16に巻かれた磁性材料と同一であっても異なるものであってもよい。磁性材料40はボビン16を電気コア12のまわりで適位置に保つためのくさび即ち「詰め木(shim)」として機能することができる。例えば、磁性材料40を電気コア12に巻き付け、その後ボビン16を電気コアに沿って滑らせて磁性材料40に乗り上げさせることができる。
【0036】
図7Cはまわりにボビン16が配置された電気コア12および電気コア12の外側面とボビン16の内側面との間に配置された接着剤42を示す概略図である。接着剤42を用いてボビン16を電気コア12のまわりの適所に保持することができる。接着剤42は非磁性接着剤でもよいし、磁性粉や磁性粒子などの磁性材料を接着材料に浸漬して構成する磁性接着剤でもよい。
【0037】
図8Aは拡開磁性要素44を有する実施形態を示す図である。拡開磁性要素44は電気コア12の外径側の周囲面46に向かって外側に広がっている。磁性要素44は巻き付け時に拡開要素の形状としてもよいし(ボビンに対して磁性材料を案内することにより)、あるいは巻き付け後に拡開要素の形状としてもよい。広げる操作は手作業により、または自動的に、またはこれらを組み合わせて行ってよい。
【0038】
図8Aに示すように、磁性要素を概ね扇形に広げることによりトロイダル型の電気コアの外側をより広範囲に覆うことができ、それにより磁気効率が高められ、磁気遮蔽が向上する。
【0039】
図8Bは取り外し可能なボビンの例を示す概略図である。詳細には、取り外し可能なボビン48は第1の部分50および第2の部分52を有しており、これらはジョイント接合する内側端部54で互いから分離可能である。第1の部分50と第2の部分52とはスナップ結合式連結部材によって、または接着剤を塗布することによって、またはファスナーを用いて、あるいは前記の接合部を形成するその他の適当な手段を用いて接合することができる。また、第1の部分50および第2の部分52のそれぞれは第1の部分50および第2の部分52の各々がそれぞれの半体に分離する長手接合部56を有している。ボビンの電気コア上への取り付けは、各部50および52それぞれの2つの半体をコアのまわりで組立て、次いでこれらの部分50および52を部分54において接合することにより行う。この手順を逆に行うことによりボビンを取り外すことができる。
【0040】
図9はそれぞれ電気コア12を取り巻く5つの拡開扇形磁性要素を備え、かつリード線14を有するトロイダル型の電気コア12を示す図である。第1磁性要素44および1つ以上の第2磁性要素58(図示は1つのみ)が電気コア12のまわりに、周方向に互いに位置をずらして配置されている。磁性要素44および58は同様に形成されてもよいし、異なっていてもよい。例えば国際特許出願公報WO2005/086186(引用によって援用する)に記載されているように、磁性要素44は磁性材料をボビン上に巻き付けて形成しかつそれを上記のように広げてよく、かつ、磁性要素58はジグ上で扇形に成形しその後ジグから切り離し、メリディオナル平面内でギャップを持つように電気コアのまわりに配置してもよい。
【0041】
図10は拡開磁性要素と非拡開磁性要素とを有する実施形態を示す図である。詳細には、図10の誘導装置は5つの拡開磁性要素60と2つの非拡開即ち筒状磁性要素62とを有し、これらはすべて上記の方法により巻かれている。拡開磁性要素は概ね扇形の形状である。非拡開磁性要素62は拡開磁性要素60を巻いた後に電気コア12上に容易に巻き付けることができ、これにより扇形要素60が形成された後に電気コア上にある空きスペースを低減する。
【0042】
図11は拡開された磁性扇形要素およびその間に配置された非拡開磁性扇形要素を有する実施形態を示す図である。詳しくは、図11は拡開磁性要素扇形60と非拡開磁性要素62との交互の配列を示している。環形状まわりでの拡開および/または非拡開磁性要素の間の隙間は、所望の特性に応じて非常に小さくすることもでき、あるいはまたある程度大きくすることもできる。例えば、磁性要素および電気コアの冷却を促進するために隙間を大きくすることもできる。
【0043】
図12は直線部64を有する電気コアを示す図である。直線部64はその直線部64まわりに配置されたボビンが電気コア12のまわりで容易に回転することを許容する十分な長さを有し、それにより磁性材料の巻き付けを容易にする。磁性材料が一旦巻き付けられると、それを電気コアの長さ方向に沿って直線部64から滑らせて離し、別の磁性要素を直線部にて巻き付けるスペースをつくることができる。
【0044】
直線部64は電気コア12を巻く際に形成してもよいし、あるいは電気コア12を巻いた後に形成してもよく、また直線部は恒久的なものであってもよいし一時的なものであってもよい。直線部が一時的なものである場合、直線部上で磁性材料を巻き終わった後に、直線部を円形状に戻してよい。
【0045】
図13はトロイダル型の電気コア上にトロイダル形状の磁性要素を巻き付けた実施形態を示す図である。詳細には、図13の誘導装置は電気コア12、電気コアに接続されたリード線14、および図示のように電気コア12のまわりに巻かれた磁性要素66を有している。電気コイルの内側の穴は磁性要素66によってほぼ満たされている。
【0046】
図14はトロイダル型の電気コア上にそれぞれトロイダル形状の2つの磁性要素66を図示のように巻き付けた実施形態を示す図である。図14の誘導装置は電気コア12(不図示のリード線を有する)およびそれぞれ電気コア12のまわりに巻かれた2つの磁性要素を有している。2つの磁性要素66は電気コア12の概ね対向する側部のまわりに配置されている。
【0047】
図15はトロイダル型の電気コア上にそれぞれトロイダル形状の複数の磁性要素66を前述のように巻き付けた実施形態を示す図である。図15の誘導装置は電気コア12(不図示のリード線を有する)と、電気コア12のまわりに巻かれた複数の(3個以上、ここでは7個)磁性要素66とを有している。それぞれの磁性要素66は電気要素12のまわりに配置し、周方向で互いに位置をずらしている。
【0048】
図16は電気コア12のまわりに複数の磁性要素66を配置した実施形態を示す図である。複数の磁性要素は周方向で互いに位置をずらしており、前述のようにボビンを用いて電気コア12上に巻くことにより形成している。巻線が円形ではない経路に従うのに対して磁束が円形であるため、巻線の連続する巻き(turns)が円形の磁束経路を横切るときに磁束が巻線の連続する巻きの間を「ジャンプ」しなければならないことにより、巻き付けられた磁性要素は、効果的な磁気ギャップ(即ち分配されたギャップ)を提供する。
【0049】
図17は概ね細長いトロイダル形状に形成された電気コイル76と、電気コイルに接続されたリード線70とを有する例示としての誘導装置68を示す側面図である。電気コイル76は矢印72で示す延長方向に長くなっている。誘導装置68はまた電気コイル76のまわりに巻かれた磁性要素73を有しており、その巻き方向は電気コイル76の電気巻線方向と交差する方向であって、かつ、電気コイル76の内部開口74を通過しない。任意選択で、内部開口74内に追加の磁性要素、例えばワイヤ、ストリップ、パウダー、磁性接着剤などを配置してもよい。
【0050】
図18は本質的に筒状の扇形形状(cylindrical sector form)を有する細長い電気コイルを示す。詳細には筒状扇形78電気要素は扇形の端部82と細長い側部84とを有する電気巻線80を備えている。電気巻線80は電気的リード線86を介して接続される。筒状扇形78はジグ上に電気的ワイヤを巻くことにより形成することができる。筒状扇形78の形成途中または形成後に接着材料を用いて電気ワイヤを結合して所望の形状を保ってもよい。また、筒状扇形78を巻かれた形状に保持するために、テープその他の結合材料を用いてもよい。
【0051】
ワイヤ、ストリップ、パウダー材料などの形態の磁性材料を電気コイル78のループ内に形成される内部領域に、連続要素としてまたは分割して配置してもよいことを理解されたい。
【0052】
図19は図18に示すコイルの上面および端面図である。詳細には、筒状扇形78電気要素は扇形形状の端部82と細長い側部84とを有する電気巻線80を含んでいる。電気巻線80は電気的リード線86を介して接続される。電気要素78の扇形形状の構成により、複数の筒状扇形電気要素を配列して、全体として筒形構造を形成することが可能となる。
【0053】
図20は概ね筒形の構造をなして配置された筒状扇形要素を備える実施形態の端面図である。図20において、誘導装置88は複数の細長い電気要素78を有し、該要素はそれぞれ略筒状扇形の形体である。複数の細長い電気要素78は略筒形の構造をなすように配置されている。隣接する要素間の隙間を絶縁性接着剤またはポッティング材によって充填して組み立てられた要素の構造上の一体性を確保してもよい。要素は互いに離間しているように図示しているが、要素の隣接する側面が電気的に接触していなければ、このような隙間は厳密に必要とされるわけではない。このために、適当な絶縁材料を要素間に配してもよいし、または巻線を絶縁体でコーティングしてもよい。また、ワイヤ、細いストリップ、パウダー材料等の形態の磁性材料を、筒状扇形(即ちくさび形)が中央で収斂する部分に画成される装置中央領域内に配設することもできる。
【0054】
図21は互いに隣接して配置された、電気的接続リード線86を有する同様の筒状扇形の細長い巻線部分78の実施形態を示す端面図である。
【0055】
実際には、電気要素78を様々な仕方で接続することができる。即ち、個別に、または直列に、または並列に、またはグループ分けして、など実施形態の想定用途に適した仕方で接続してよい。図22は電気要素78を直列に接続した構成を示す。図23は一次側と二次側を有する変圧器構成を示す端面図であり、一次側、二次側のそれぞれは直列構成で接続された一群の筒状扇形電気巻線要素から成る。詳細には変圧器94は一次側を構成する直列接続された細長い電気要素99の群に接続された入力リード線96と、二次側を構成する直列接続された細長い電気要素97の群に接続された出力リード線98とを有する。第1および第2の細長い電気要素97、99のそれぞれは略筒状扇形の形体であり、これら細長い電気要素が集合的に配列されて略筒形を形成している。
【0056】
動作時には、一次リード線96に供給された電気的エネルギが一次電気コイル99と二次電気コイル97との間の誘導結合によって変圧され、リード線98を介して出力される。
【0057】
図24は一次側と二次側を有する変圧器構成を示す端面図であり、一次側、二次側のそれぞれは直列構成で接続された一群の筒状扇形電気巻線要素から成る。詳細には、変圧器100は一次側を構成する並列接続された細長い電気要素103の群に接続された入力リード線102と、二次側を構成する並列接続された細長い電気要素105の群に接続された出力リード線104とを有する。第1および第2の細長い電気要素103、105のそれぞれは略筒状扇形の形体であり、これら細長い電気要素が集合的に配列されて略筒形を形成している。
【0058】
図25は筒状扇形コイル110と細長いトロイダルコイル112とを組み合わせた別の変圧器構成を示す端面図である。コイル110および112はそれぞれ図18および図17に示した電気コイルに類似している。
【0059】
図26は外側を磁性材料で包んだ電気コイル要素の筒形配置(図20乃至図25のいずれかに例示したもの)を有する実施形態を示す図である。磁性要素120は磁性ワイヤ、磁性ストリップあるいはその他の適当な磁性材料としてよい。磁性ワイヤまたはストリップ材料は好適には筒状コア118の電気巻線と交差するように巻かれる。筒状コアは電気的リード線124(図ではそのうちの2つのみを示している)を介して回路に接続することができる。リード線の本数は実施形体の想定する用途、および装置内の電気巻線の数などその他の要素によって異なりうることを理解されたい。
【0060】
磁性要素120は筒状コア118内に発生された磁束を通し、該磁束を筒状コア118まわりの経路に沿って方向付けする。外側の磁性要素と筒状コア118の内側の空気(または所望により磁性材料)が筒状コアの個々のコイル間の誘導結合をもたらす。
【0061】
図27は電気コイル要素を有し、組み立てられたコイル要素の中心に、電気コイルの集合体に取り囲まれるように配置されたロータを有する実施形態を示す図である。詳細には電気モータ126はステータコイル128とロータ130とを有する。ステータコイル128は誘導装置68または筒状扇形78またはこれらの組み合わせを含んでよい。ロータは長さ方向に沿って形成された溝を有するシャフトの形態、またはその他のロータを回転させるためのステータとの電磁的な相互作用をもたらす適当な形態とすることができる。もちろん、当業者には容易に理解されるように、発電機としての動作も行うことができる。他の実施形態では直線運動させることもできる。
【0062】
組み立てられたステータコイル128の外側をワイヤまたはストリップ材の磁性材料で包んでもよい。また、ポッティング材またはクランプまたはセラミックやその他の適当な非金属材料からなるチューブ等を用いてステータコイル128を合わせて保持してもよい。
【0063】
図28は蛇行(曲折)形状に形成した磁性ワイヤからなる磁性パターン部材132の概略図である。このようなパターン部材と1つ以上のトロイダル電気要素を同方向に共通の形で巻くことができ、これにより装置の磁性要素としての磁性パターン部材を有するトロイダル誘導装置の製造が容易となる。磁性パターン部材132は、連続的な細長い磁性材料136の隣接する長さ部分134がパターン部材の長手方向138と交差して互い違いの向きに延在するように形成される。連続的材料は磁性ワイヤ、磁性ストリップ材料等のその他の細長い磁性材料から構成することができ、これを接着材により、例えばパターン部材が実質的に長さ部分134を有するストリップ状の材料となり該長さ部分134が「ストリップ」の長手方向と交差する方向に伸びるような形に保持してもよい。
【0064】
図29〜30は磁性ワイヤからパターン部材を形成する別の技術を示す。詳細には磁性ワイヤの螺旋コイル140を始めに形成方向142に沿って形成する。次にコイル140を平らにし、任意選択で長手方向に圧縮して磁性材料144の実質的に平らな部材を形成し、材料の隣接する部分が形成方向142と実質的に交差して延在するようになす。部材132と同様に、接着剤またはその他の適当な手段により部材144の形を保ってもよい。
【0065】
図31は例示としての誘導装置巻き装置149を示す概略図である。装置149はマンドレル150と、磁性材料成形装置(矢印151により概略的に示す)と、モータ154およびシャフト156を有する巻き装置152と、供給レール158と供給リールから供給される磁性材料160とを備える。磁性材料160は図28〜30に示すように形成された磁性パターン部材からなる。
【0066】
磁性要素を形成するにあたり、磁性材料160をマンドレル150取り付け、巻き装置152を動作させてマンドレル150を回転させて磁性材料160をマンドレル上に巻き付ける。磁性ストリップをマンドレル150上に巻き付けながら長手方向に前進させ、その隣接部分134等が巻き方向に交差して延在する。図示のように、マンドレル150の表面は完成したトロイダル誘導装置の所望のトロイダル形状の内面に対応する凹んだ形状とすることができる。
【0067】
所望の長さの磁性材料160をマンドレル150上に巻いた後に、電気ワイヤの1つ以上のコイルをマンドレル上にある磁性材料の上に巻き付けトロイダル電気コアを形成してもよい。最後に電気巻線上に1層以上の磁性材料160を巻き付けることができる。更なる磁性材料をマンドレル150に巻く際に、磁性材料成形装置151は磁性材料を成形して磁性材料がその下にあるマンドレル上の材料を取り囲み、その形に適合するように形成することができる。成形装置151はマンドレル上の下層材料の外表面に適合するように、前進する磁性材料を押しつけるように構成された簡単な手工具であってもよいし、またはコンピュータ制御された成形ローラ装置などの自動制御成形具であってもよい。成形具は電気コアを巻く前の第1の磁性材料巻き工程においても用いることができることを理解されたい。図32は概ねトロイダル形状の電気コイルに適合するようにアーチ状に成形された磁性パターン部材162を示す概略図である。
【0068】
別の手法では、磁性パターン部材を、それがワイヤスプールからマンドレル150に供給される際に「空中で(on the fly)」形成することもできる。
【0069】
図33は図31に関連して説明した手法により形成されたトロイダル変圧器165を示す概略的な断面図である。変圧器165は上記のように、マンドレル上に巻かれ同じくマンドレル上に巻かれた中間の電気コアに適合するように成形された内側および外側磁性パターン部材からなる磁性要素166を有している。リード線170および172が電気コア168の巻線に接続されている。図34は横から見た変圧器の図である。図35はこれに対応する平面図である。
【0070】
図36は細長い電気コア166の外側交差方向寸法において該コアのまわりに磁性材料を巻くために該コアのまわりに配設されたボビン164の使用を示している。電気コア166は長手方向168において細長くなっており、1つ以上の電気巻線を含むことができる。磁性材料(例えばワイヤ)170はコアの長手方向168に交差する巻き方向172(即ち、ボビン内側の電気コアワイヤの長手方向に交差する方向)でボビン164上に巻き付けられる。細長い電気コア166の内側面により領域174が画成される。図36に示すように、コア166の全外側交差方向寸法がボビン164内に受容され(ボビン164は内側のコア開口領域174を通ってはいない)、これにより形成される巻き構造は図17に示したものに類似している。ボビンは完成した装置の部品として残してもよいし、取り去ってもよいことは前の実施形態で説明した通りである。
【0071】
図37および38は中央の大電流要素と両側の高圧要素とを有する誘導装置例を示す2つの図である。詳細には、トロイダル形状を有する誘導装置176は第1の一次巻線180と、第2の一次巻線182と、第1の二次巻線184と、第2の二次巻線186と、リード線188とを備えている。
【0072】
第1および第2の二次巻線(184および186)は互いに隣接してトーラスの中央に配置されている。第1の一次巻線180はトロイダル形状の内周部に配置されており、第2の一次巻線182はトロイダル形状の外周部に配置されている。誘導装置176は一次および二次巻線からなる複合コアを包む磁性要素187を有してもよい。あるいは、図1〜12に関連して説明したような方法でボビンを用いて磁性要素を電気コア上に巻いてもよい。
【0073】
本発明をいくつかの実施形態に関連して説明したが、本発明の原理および思想を逸脱することなく、多くの代替、変更および変形を行いうることは当業者には明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明のトロイダル誘導装置を製作する方法を説明する図である。
【図2】本発明のトロイダル誘導装置を製作する方法を説明する図である。
【図3】本発明のトロイダル誘導装置を製作する方法を説明する図である。
【図4】本発明の方法を実施する装置を図式的に示す図である。
【図5】本発明の方法の変形例を説明する図である。
【図6】本発明の別の変形例を説明する図である。
【図7A】完成した磁性要素を電気コアに固定する手段の例を示す図である。
【図7B】完成した磁性要素を電気コアに固定する手段の例を示す図である。
【図7C】完成した磁性要素を電気コアに固定する手段の例を示す図である。
【図8A】拡開された外側面を有する磁性要素を有する実施形態を示す図である。
【図8B】取り外し可能なボビンの例を図式的に示す図である。
【図9】拡開された磁性要素を有する実施形態を示す図である。
【図10】拡開された磁性要素と拡開されていない磁性要素とを有する実施形態を示す図である。
【図11】交互に配置された拡開された磁性要素と拡開されていない磁性要素とを有する実施形態を示す図である。
【図12】磁性要素の巻き付けを容易にする直線部を有する電気コアを示す図である。
【図13】トロイダル形状の磁性要素が巻かれたトロイダル電気コアを有する実施形態を示す図である。
【図14】それぞれがトロイダル形状である2つの磁性要素が巻かれたトロイダル電気コアを有する実施形態を示す図である。
【図15】それぞれがトロイダル形状である複数の磁性要素が巻かれたトロイダル電気コアを有する実施形態を示す図である。
【図16】複数の磁性要素が巻かれて扇形に成形された、電気コアを有する実施形態を示す図である。
【図17】細長い形状の電気コアの例を示す断面図である。
【図18】実質的に筒状扇形形状の細長い電気コイルを示す斜視図である。
【図19】図18に示すコイルの上面および端面図である。
【図20】概ね筒形の構造を形成するように配置された筒状扇形セグメントを有する実施形態の端面図である。
【図21】互いに隣接する位置に配置された筒状扇形の細長い巻きセグメントと接続リード線を有する実施形態の端面図である。
【図22】直列接続された電気コイルを示す端面図である。
【図23】複数の直列接続された一次巻線と複数の直列接続された二次巻線とを有する変圧器の実施形態を示す端面図である。
【図24】複数の並列接続された一次巻線と複数の並列接続された二次巻線とを有する変圧器を示す端面図である。
【図25】細長い電気コイルと筒状扇形の細長い電気コイルとを有する変圧器の実施形態を示す端面図である。
【図26】一緒に配置され、外側を磁性材料で包囲した複数の細長い電気コイルを有する実施形態を示す図である。
【図27】ロータと共に適所に配置された電気コイルセグメントを有し、該ロータは該電気コイルアセンブリの中央に配置されて電気コイルの集合体に包囲されている実施形態を示す図である。
【図28】本発明の別の方法で用いるための、蛇行(曲折)形状に形成されたワイヤ材料の例を図式的に示す図である。
【図29】本発明で用いることのできるワイヤ材料の別の形態を示す図である。
【図30】本発明で用いることのできるワイヤ材料の別の形態を示す図である。
【図31】巻き付け装置の例を図式的に示す図である。
【図32】概ねトロイダル形状の電気コイルに適合する好適な円弧状に成形された磁性材料要素を示す側面図である。
【図33】本発明による、装置に出入りするリード線を有する完成した変圧器の例を示す断面図であり、その環状形体の内側および外側に示す磁性巻線部分を有している。
【図34】図33に示す装置の外観図である。
【図35】図33に示す装置の別の外観図である。
【図36】ボビンに包囲された細長い電気コアを有する実施形態を示す図であり、ボビンは電気コイルコアの内側開口を通過していないものである。
【図37】複数の一次および二次巻線を有する実施形態を示す横断面図である。
【図38】図37に示す装置の上断面図である。
【技術分野】
【0001】
−関連出願−
本願は2006年1月18日に出願された「Electrical Core Coils and Transformers and Processes For Making Same(電気コアコイルおよび変圧器、並びにその製造方法)と題された米国仮出願60/759,577号、2006年1月18日に出願された「Inductive Device and Process for Making Same(誘導装置およびその製造方法)」と題された米国仮出願60/759,567号、および2006年1月18日に出願された「Inductive Device and Process for Making Same(誘導装置およびその製造方法)」と題された米国仮出願60/759,566号の利益を主張するものであり、それらのすべてを茲に引用によって援用する。
【0002】
本発明は概括的には電気的装置に関するものであり、詳細には誘導装置およびその製造方法に関わる。
【背景技術】
【0003】
コイルや変圧器などの従来の誘導装置は100年に渡って広く用いられてきた。誘導装置は電力配給、モータ、発電機、電源を含む多くの技術用途を有している。電力配給においては、電力を発電源から電力使用者に効率的に届けるために、配給システム内の多くのポイントにおいて変圧を行っており、これは誘導装置によってなされる。電力配給のような低周波数用に構成された誘導装置は一般に固体磁性材料を用いている。誘導装置に用いられる磁性材料の改良がなされてきたが、そうした改良は一般的に増加的なものである。
【0004】
従来の変圧器は概して3つのタイプのうちの1つに分類できる、即ち積層コア、巻きコア、そしてトロイダルである。積層コア変圧器はおそらく最も広く用いられているものであって、磁性材料の積層シートを有し、そのまわりに電気コイルが巻かれている。積層コア変圧器には、例えば、いわゆる「E」および「I」コア積層装置がある。巻コア装置は積層シート(sheet stock)から構成される磁性コアを含む。巻コア変圧器は電力配給用途に用いられることが多い。トロイダル変圧器は公共電力配給で一般的に必要とされる大きさの範囲よりも下のサイズの用途において最もよく利用されてきた。
【0005】
トロイダル変圧器および誘導器は多くの好ましい動作特性を有しているが、上記の他の2つのタイプよりも製造コストがかかる傾向がある。また、トロイダル装置は大きな突入電流に関連する固有の問題があり、これが誘導装置またはそれに関連する回路の損傷や故障を引き起こすことがある。突入電流の問題の主因は従来のトロイダル装置において磁気ギャップの制御が行われていないことである。
【0006】
従来の誘導装置の製作工程には手作業が多く含まれ、磁性材料の取り扱いと磁性材料の導電コイルへの取り付けにおいては特にそうであった。別の一般的な制限事項として、装置の動作中に生ずる磁界を乱しゆがめる形態を用いていること関連するものがある。
【0007】
積層変圧器および巻コア変圧器は製造時に多くの手作業を必要とすることが多い。従来のトロイダル装置もまた手作業による製造工程を含んでおり、そのため複雑な機械による補助を用いてもなお、製造業者にとって割高なものとなっている。従来の装置には電気巻線が環境に露出しているものもあり、そのような装置は電磁的干渉や従来のユニットから周囲環境への磁束の漏洩を許容することになり、また装置が外部の電磁的干渉を受けうることにもなる。更に、従来の装置設計では、導体がそのまわりに不均一に配置された磁性要素を有することにより磁束パターンの異常が生ずる。磁性材料の不均一な配置はリラクタンスに影響を及ぼしかつ磁束経路を乱し、それにより基本周波数にも影響を与えて好ましくない高調波の発生を助長することになる。
【発明の開示】
【0008】
本発明は以上に説明した背景に鑑みてなされた誘導装置およびそれに関連する製造方法に関するものである。
【0009】
概括的に言えば、誘導装置およびその製造方法を開示する。例えば、本発明は概してトロイダル形状に形成された電気巻線を有し、電気巻線要素が装置の物理的なコアを構成するような、コイル、チョークコイルおよび/または変圧器に適用することができる。磁性要素(magnetic components)のワイヤまたは細いストリップ状の材料を電気コアの周囲に巻くことができる。このような磁性要素のワイヤまたは細いストリップ(あるいはその組み合わせ)を巻いて、電気コアの周囲に複数の筒形または拡開筒形(即ち扇形形状の要素)を形成し、磁性要素への障害が最小化されるようにして電気要素のリードを、装置から引き出すようにする。
【0010】
本発明の別の態様によれば、電気コイルを細長い形状に巻いて筒状扇形コイル(cylindrical sector shaped coil)を形成する。複数のこうした電気コイルを組み合わせて略筒状として、磁性ワイヤ等と共に結合することのできる内側「コア」構造を形成する。得られた構造は例えば変圧器や電気モータのステータに利用可能である。
【0011】
本発明の別の態様では、誘導装置の磁性要素をマンドレル上に巻かれた蛇行(曲折)パターンその他のワイヤパターンによって形成してもよく、トロイダル型の電気コアを同一のマンドレル状に巻いてもよい。これによりトロイダル誘導装置を単純な製造装置上で容易に組み立てることができる。
【0012】
以下は本発明のいくつかの具体的な態様の例である。
【0013】
A. 略トロイダル形状の電気巻線と該電気巻線のまわりに配置されたボビンとを設けることと、ボビンに磁性材料を取り付けることと、ボビンを電気巻線のまわりで回転させ、ボビンに磁性材料を巻き付け、それによって磁性材料を電気巻線のまわりに巻き付けることと、からなる誘導装置の製作方法。
【0014】
B.概ね細長いトロイダル形状に形成された電気コイルと、電気コイルのまわりに長手方向に沿って配置され電気コイルの電気巻線方向に交差して巻かれ、電気コイルの内側開口を通過しない磁性要素と、を有する誘導装置。
【0015】
C.略トロイダル形状の電気巻線と、それぞれ電気巻線のまわりに周方向に互いに位置をずらして配置された複数のボビンと、それぞれ複数のボビンの対応する1つの上に巻かれた複数の磁性要素とを有し、複数の磁性要素のうちの少なくとも1つは複数の分離した磁性サブ要素を含む誘導装置。
【0016】
D.略トロイダル形状の電気巻線と、電気巻線のまわりに配置された少なくとも1つの筒状磁性要素と、電気巻線のまわりに配置された少なくとも1つの扇形磁性要素とを有する誘導装置。
【0017】
E.概ねトロイダル形状に形成された電気要素であって、第1の一次巻線と、第2の一次巻線と、第1の二次巻線と、第2の二次巻線とを有し、第1および第2の二次巻線は互いに隣接して配置されており、かつ第1の一次巻線はトロイダル形状の内周部に配置されており、また第2の一次巻線はトロイダル形状の外周部に配置されている電気要素と、電気要素を少なくとも部分的に包囲している磁性要素と、を備える誘導装置。
【0018】
F.それぞれ略筒状扇形形状の複数の第1の細長い電気要素と、それぞれ略筒状扇形形状の複数の第2の細長い電気要素とを有し、複数の第1の細長い電気要素と複数の第2の細長い電気要素とは略筒形を形成するように配置されている、誘導装置。
【0019】
G.誘導装置の製作方法であって、(a)連続的な細長い磁性材料からなる磁性パターン部材を型の上に巻き付ける工程であって、細長い磁性材料はパターン部材の型上での巻き付け方向と交差する互い違いの向きに延在しているものである工程と、(b)型の上に、電気要素を前記互い違いの方向と交差する巻き方向に巻き付ける工程と、を含む方法。
【0020】
H.項目Gに記載した方法によって製作された誘導装置。
【0021】
本発明の以上およびその他の態様は、他の様々な特徴や利点と共に、添付図面に関連してなされる以下の詳細な説明によってより容易に理解できるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に説明する実施形態は本発明の例示であって、限定するものではない。いくつかの例において、特定の実施形態の明瞭な理解に資するために、特徴を誇張して、即ち拡大して描いているものもある。
【0023】
図1乃至3は本発明によるトロイダル誘導装置の製造方法を説明するための図である。詳細には、誘導装置の製造方法はトロイダル型の電気コア12を含みうる。トロイダル電気コア12は電気リード線14を含んでよい。この誘導装置は誘導器(インダクタ)、チョーク、変圧器等に用いるよう構成しうる。電気コア12は例えば電気ワイヤ(線材)または電気ストリップ(帯材)で形成することができる。好適には電気コア12を形成する導体材料を電気的絶縁材料でコーティングする。トロイダル形状の電気コア12は、そのまわりに1以上の磁性要素を配置し、電気コアが少なくとも部分的に磁性要素で取り巻かれるようにすることのできる形状をしている。
【0024】
電気リード線14を用いて誘導装置を他の電気装置、システムまたは回路に接続することができる。電気コアから延在するリード線の本数は、電気コアの要素をなす個々の巻線即ちコイルの数および/または個々の巻線が電気コアの要素内でどのように接続されているか等のいくつかのファクタに依存しうる。また、リード線の配置も特定の用途における要請に応じて、所望されるように選択することができる。
【0025】
図2に示すように、誘導装置の製造方法は電気コイルのまわりに配置したボビン16を設けて行う。ボビン16が電気要素12の周りで容易に回転して電気コア12の周りに磁性要素を巻き付けることができるように、ボビン16は電気コア12の周りに緩く取り付ける。ボビン16と電気コア12の間の摩擦を低減し、それによって回転による両電気要素の摩擦損傷を低減又は防止する為に、潤滑剤、即ち例えばテフロン(登録商標)、シリコンその他の適切な潤滑剤を電気コア12の外側表面および/またはボビン16の内側表面に塗布してもよい。この潤滑剤は電気的絶縁体であってもよい。
【0026】
ボビン16はプラスチック、繊維強化されたプラスチック等の適当な材料とすることができる。ボビン16は後に取り外しおよび/または再利用可能としてもよく、あるいは誘導装置の恒久的な部品としてもよい。ボビン16は肩部のない筒形か、または図示のように肩部を有する筒形とすることができる。もしボビン上に巻かれた磁性材料が破損したならば、磁性材料を単にボビンに対して再度取り付け巻き付けを継続することができる。また、ボビン16上に複数の磁性サブ要素(サブコンポネント)を巻き付けてもよい。磁性材料は単芯ワイヤ(single strand wire)、多芯ワイヤ(multi-strand wire)、単一ストリップ、複数ストリップまたはこれらの組み合わせとすることができる。
【0027】
図3は磁性材料20のワイヤまたはストリップの供給リール18を有する単芯のワイヤの巻き付け構成を示す。供給リール18はボビン16上に巻き付けるための磁性材料20を供給する。ボビン16上への磁性材料20の巻き付けは手作業により行ってもよいし、自動的に行ってもよく、またはこれらを組み合わせてもよい。
【0028】
実地では、磁性材料20の端部をボビン16に取り付けることができる。そしてボビン16を電気コア12のまわりで回転させる。ボビン16が電気コア12のまわりで回転すると、磁性材料20は供給リール18からボビン16上へと供給され、それにより電気コア12のまわりに巻かれた磁性要素が形成される。
【0029】
図3は例えば電気コア12上に巻いた第1の磁性要素部としてのボビン16上への単芯ワイヤの巻き始めを示す。1つの供給リール18が1本の磁性ワイヤ20を担持しているものを図示しているが、供給リールは複数のワイヤまたはストリップを担持してもよいことを理解すべきである。磁性要素の密度を高めるために、磁性ワイヤは異なる形状および/または異なるサイズのワイヤを含んでもよい。例えば、磁性ワイヤは例えば周長比が5:1と6:1の間の2つの異なるサイズの丸ワイヤとしてもよい。磁性ワイヤは異なる断面形状、サイズおよび/または断面積のワイヤを含んでもよい。上記の方法によって誘導装置を製造する際に、複数のワイヤあるいは複数芯を用いてもよい。これらを用いればボビン16の必要な回転数が少なくなるので、製造工程の効率化に役立つ。
【0030】
図4はボビンに係合し磁性媒体を電気コイルに巻き付ける駆動力源を有する実施例の模式図である。詳細には、図4では上に説明した要素に加えてボビン回転機22が描かれている。ボビン回転機22は駆動機24(例えば速度制御された電気モータ)および駆動機24の被駆動回転軸に取り付けられたボビン駆動ホイール26を有している。図示の形態ではボビン駆動ホイール26はボビン16の端部フランジに摩擦係合し、ボビン16を電気コア12のまわりで回転させる。かくしてボビン16がボビン駆動ホイール26によって回転されるにつれて、回転前にボビン16に取り付けられた磁性材料20はボビン16上に巻かれ、それにより電気コア12のまわりに巻かれる。磁性材料20は接着剤、接着テープ、ファスナー等の適当な手段によりボビン16に取り付けることができる。磁性材料20がボビン16上に巻かれるにつれて、磁性材料20は供給リール18から巻き出される。供給リールは磁性材料20の巻き出しに応じて自由に回転してもよいし、動力により回転してもよい。ボビンの端部フランジへの係合を容易にするために、ボビン駆動ホイールはボビンのフランジに弾性的に係合する弾性(例えばゴム)の外表面を備えてもよい。
【0031】
図5は電気コイル上への第2の磁性要素の巻き付けを示す図である。詳細には、上に述べた要素に加えて第2のボビン28を図示している。図5は製造工程の続きを示しており、第1のボビン16上に巻き終わった1つの磁性要素と、第2のボビン28上に巻かれようとしている第2の磁性要素とがある。第2の磁性要素は上記と同様にして巻くことができる。
【0032】
各ボビンに磁性要素が所望のように巻かれた後、ボビンを磁性要素供給機から分離し、巻かれた磁性要素とボビンとの組を接着剤、接着テープまたは絶縁被覆材料などの適当な手段により電気コア上の適位置に保持してよい。ボビンを所望の高さまで巻き、次いで次のボビンに磁性材料を巻く、という製作工程は電気コアが別のボビンを入れる隙間が殆どあるいは全くなくなって埋めつくされるまで(即ち電気コアが実質的にボビン/磁性巻回要素によって被覆即ち包囲されるまで)続けることができ、あるいはまた意図した動作特性に対して十分な磁性材料が配置されるまで続けることができる。
【0033】
図6は複数の長さの磁性材料を電気コアに同時に巻き付ける2種類の巻き付け手段を示しており、複数の供給リールまたは1つの共通な供給リールから引き出している。詳細には、ボビン(ひいては電気コア)に巻き付ける複数のワイヤまたはストリップを供給する第1の手段は、それぞれ単一のワイヤまたはストリップを供給する複数のスプール30、32、34を含んでよい。ボビン(即ち電気コア)に巻き付ける複数のワイヤまたはストリップを供給する第2の手段は、ボビン(即ち電気コア)に巻き付ける複数のワイヤまたはストリップを供給する単一の供給リール36を含んでよい。
【0034】
図7A乃至7Cは完成した磁性要素を環状の電気コアに固定するためのいくつかの手法を例示的に示している。詳細には、図7Aはまわりにボビン16が配置された電気コア12(断面で図示されている)および電気コア12の外側面とボビン16の内側面との間に配置されたスペーサ38を示す概略図である。複数のこのようなスペーサを好適には緊密にボビン16と電気コア12との間に嵌着し、ボビンを適位置に保持し、電気コアのまわりで適位置に保つことができる。
【0035】
図7Bはまわりにボビン16が配置された電気コア12および電気コア12の外側面とボビン16の内側面との間に配置された別の磁性材料40の巻線を示す概略図である。この磁性材料40の別の巻線はワイヤ、ストリップ、シート材等としてよい。また、磁性材料40はボビン16に巻かれた磁性材料と同一であっても異なるものであってもよい。磁性材料40はボビン16を電気コア12のまわりで適位置に保つためのくさび即ち「詰め木(shim)」として機能することができる。例えば、磁性材料40を電気コア12に巻き付け、その後ボビン16を電気コアに沿って滑らせて磁性材料40に乗り上げさせることができる。
【0036】
図7Cはまわりにボビン16が配置された電気コア12および電気コア12の外側面とボビン16の内側面との間に配置された接着剤42を示す概略図である。接着剤42を用いてボビン16を電気コア12のまわりの適所に保持することができる。接着剤42は非磁性接着剤でもよいし、磁性粉や磁性粒子などの磁性材料を接着材料に浸漬して構成する磁性接着剤でもよい。
【0037】
図8Aは拡開磁性要素44を有する実施形態を示す図である。拡開磁性要素44は電気コア12の外径側の周囲面46に向かって外側に広がっている。磁性要素44は巻き付け時に拡開要素の形状としてもよいし(ボビンに対して磁性材料を案内することにより)、あるいは巻き付け後に拡開要素の形状としてもよい。広げる操作は手作業により、または自動的に、またはこれらを組み合わせて行ってよい。
【0038】
図8Aに示すように、磁性要素を概ね扇形に広げることによりトロイダル型の電気コアの外側をより広範囲に覆うことができ、それにより磁気効率が高められ、磁気遮蔽が向上する。
【0039】
図8Bは取り外し可能なボビンの例を示す概略図である。詳細には、取り外し可能なボビン48は第1の部分50および第2の部分52を有しており、これらはジョイント接合する内側端部54で互いから分離可能である。第1の部分50と第2の部分52とはスナップ結合式連結部材によって、または接着剤を塗布することによって、またはファスナーを用いて、あるいは前記の接合部を形成するその他の適当な手段を用いて接合することができる。また、第1の部分50および第2の部分52のそれぞれは第1の部分50および第2の部分52の各々がそれぞれの半体に分離する長手接合部56を有している。ボビンの電気コア上への取り付けは、各部50および52それぞれの2つの半体をコアのまわりで組立て、次いでこれらの部分50および52を部分54において接合することにより行う。この手順を逆に行うことによりボビンを取り外すことができる。
【0040】
図9はそれぞれ電気コア12を取り巻く5つの拡開扇形磁性要素を備え、かつリード線14を有するトロイダル型の電気コア12を示す図である。第1磁性要素44および1つ以上の第2磁性要素58(図示は1つのみ)が電気コア12のまわりに、周方向に互いに位置をずらして配置されている。磁性要素44および58は同様に形成されてもよいし、異なっていてもよい。例えば国際特許出願公報WO2005/086186(引用によって援用する)に記載されているように、磁性要素44は磁性材料をボビン上に巻き付けて形成しかつそれを上記のように広げてよく、かつ、磁性要素58はジグ上で扇形に成形しその後ジグから切り離し、メリディオナル平面内でギャップを持つように電気コアのまわりに配置してもよい。
【0041】
図10は拡開磁性要素と非拡開磁性要素とを有する実施形態を示す図である。詳細には、図10の誘導装置は5つの拡開磁性要素60と2つの非拡開即ち筒状磁性要素62とを有し、これらはすべて上記の方法により巻かれている。拡開磁性要素は概ね扇形の形状である。非拡開磁性要素62は拡開磁性要素60を巻いた後に電気コア12上に容易に巻き付けることができ、これにより扇形要素60が形成された後に電気コア上にある空きスペースを低減する。
【0042】
図11は拡開された磁性扇形要素およびその間に配置された非拡開磁性扇形要素を有する実施形態を示す図である。詳しくは、図11は拡開磁性要素扇形60と非拡開磁性要素62との交互の配列を示している。環形状まわりでの拡開および/または非拡開磁性要素の間の隙間は、所望の特性に応じて非常に小さくすることもでき、あるいはまたある程度大きくすることもできる。例えば、磁性要素および電気コアの冷却を促進するために隙間を大きくすることもできる。
【0043】
図12は直線部64を有する電気コアを示す図である。直線部64はその直線部64まわりに配置されたボビンが電気コア12のまわりで容易に回転することを許容する十分な長さを有し、それにより磁性材料の巻き付けを容易にする。磁性材料が一旦巻き付けられると、それを電気コアの長さ方向に沿って直線部64から滑らせて離し、別の磁性要素を直線部にて巻き付けるスペースをつくることができる。
【0044】
直線部64は電気コア12を巻く際に形成してもよいし、あるいは電気コア12を巻いた後に形成してもよく、また直線部は恒久的なものであってもよいし一時的なものであってもよい。直線部が一時的なものである場合、直線部上で磁性材料を巻き終わった後に、直線部を円形状に戻してよい。
【0045】
図13はトロイダル型の電気コア上にトロイダル形状の磁性要素を巻き付けた実施形態を示す図である。詳細には、図13の誘導装置は電気コア12、電気コアに接続されたリード線14、および図示のように電気コア12のまわりに巻かれた磁性要素66を有している。電気コイルの内側の穴は磁性要素66によってほぼ満たされている。
【0046】
図14はトロイダル型の電気コア上にそれぞれトロイダル形状の2つの磁性要素66を図示のように巻き付けた実施形態を示す図である。図14の誘導装置は電気コア12(不図示のリード線を有する)およびそれぞれ電気コア12のまわりに巻かれた2つの磁性要素を有している。2つの磁性要素66は電気コア12の概ね対向する側部のまわりに配置されている。
【0047】
図15はトロイダル型の電気コア上にそれぞれトロイダル形状の複数の磁性要素66を前述のように巻き付けた実施形態を示す図である。図15の誘導装置は電気コア12(不図示のリード線を有する)と、電気コア12のまわりに巻かれた複数の(3個以上、ここでは7個)磁性要素66とを有している。それぞれの磁性要素66は電気要素12のまわりに配置し、周方向で互いに位置をずらしている。
【0048】
図16は電気コア12のまわりに複数の磁性要素66を配置した実施形態を示す図である。複数の磁性要素は周方向で互いに位置をずらしており、前述のようにボビンを用いて電気コア12上に巻くことにより形成している。巻線が円形ではない経路に従うのに対して磁束が円形であるため、巻線の連続する巻き(turns)が円形の磁束経路を横切るときに磁束が巻線の連続する巻きの間を「ジャンプ」しなければならないことにより、巻き付けられた磁性要素は、効果的な磁気ギャップ(即ち分配されたギャップ)を提供する。
【0049】
図17は概ね細長いトロイダル形状に形成された電気コイル76と、電気コイルに接続されたリード線70とを有する例示としての誘導装置68を示す側面図である。電気コイル76は矢印72で示す延長方向に長くなっている。誘導装置68はまた電気コイル76のまわりに巻かれた磁性要素73を有しており、その巻き方向は電気コイル76の電気巻線方向と交差する方向であって、かつ、電気コイル76の内部開口74を通過しない。任意選択で、内部開口74内に追加の磁性要素、例えばワイヤ、ストリップ、パウダー、磁性接着剤などを配置してもよい。
【0050】
図18は本質的に筒状の扇形形状(cylindrical sector form)を有する細長い電気コイルを示す。詳細には筒状扇形78電気要素は扇形の端部82と細長い側部84とを有する電気巻線80を備えている。電気巻線80は電気的リード線86を介して接続される。筒状扇形78はジグ上に電気的ワイヤを巻くことにより形成することができる。筒状扇形78の形成途中または形成後に接着材料を用いて電気ワイヤを結合して所望の形状を保ってもよい。また、筒状扇形78を巻かれた形状に保持するために、テープその他の結合材料を用いてもよい。
【0051】
ワイヤ、ストリップ、パウダー材料などの形態の磁性材料を電気コイル78のループ内に形成される内部領域に、連続要素としてまたは分割して配置してもよいことを理解されたい。
【0052】
図19は図18に示すコイルの上面および端面図である。詳細には、筒状扇形78電気要素は扇形形状の端部82と細長い側部84とを有する電気巻線80を含んでいる。電気巻線80は電気的リード線86を介して接続される。電気要素78の扇形形状の構成により、複数の筒状扇形電気要素を配列して、全体として筒形構造を形成することが可能となる。
【0053】
図20は概ね筒形の構造をなして配置された筒状扇形要素を備える実施形態の端面図である。図20において、誘導装置88は複数の細長い電気要素78を有し、該要素はそれぞれ略筒状扇形の形体である。複数の細長い電気要素78は略筒形の構造をなすように配置されている。隣接する要素間の隙間を絶縁性接着剤またはポッティング材によって充填して組み立てられた要素の構造上の一体性を確保してもよい。要素は互いに離間しているように図示しているが、要素の隣接する側面が電気的に接触していなければ、このような隙間は厳密に必要とされるわけではない。このために、適当な絶縁材料を要素間に配してもよいし、または巻線を絶縁体でコーティングしてもよい。また、ワイヤ、細いストリップ、パウダー材料等の形態の磁性材料を、筒状扇形(即ちくさび形)が中央で収斂する部分に画成される装置中央領域内に配設することもできる。
【0054】
図21は互いに隣接して配置された、電気的接続リード線86を有する同様の筒状扇形の細長い巻線部分78の実施形態を示す端面図である。
【0055】
実際には、電気要素78を様々な仕方で接続することができる。即ち、個別に、または直列に、または並列に、またはグループ分けして、など実施形態の想定用途に適した仕方で接続してよい。図22は電気要素78を直列に接続した構成を示す。図23は一次側と二次側を有する変圧器構成を示す端面図であり、一次側、二次側のそれぞれは直列構成で接続された一群の筒状扇形電気巻線要素から成る。詳細には変圧器94は一次側を構成する直列接続された細長い電気要素99の群に接続された入力リード線96と、二次側を構成する直列接続された細長い電気要素97の群に接続された出力リード線98とを有する。第1および第2の細長い電気要素97、99のそれぞれは略筒状扇形の形体であり、これら細長い電気要素が集合的に配列されて略筒形を形成している。
【0056】
動作時には、一次リード線96に供給された電気的エネルギが一次電気コイル99と二次電気コイル97との間の誘導結合によって変圧され、リード線98を介して出力される。
【0057】
図24は一次側と二次側を有する変圧器構成を示す端面図であり、一次側、二次側のそれぞれは直列構成で接続された一群の筒状扇形電気巻線要素から成る。詳細には、変圧器100は一次側を構成する並列接続された細長い電気要素103の群に接続された入力リード線102と、二次側を構成する並列接続された細長い電気要素105の群に接続された出力リード線104とを有する。第1および第2の細長い電気要素103、105のそれぞれは略筒状扇形の形体であり、これら細長い電気要素が集合的に配列されて略筒形を形成している。
【0058】
図25は筒状扇形コイル110と細長いトロイダルコイル112とを組み合わせた別の変圧器構成を示す端面図である。コイル110および112はそれぞれ図18および図17に示した電気コイルに類似している。
【0059】
図26は外側を磁性材料で包んだ電気コイル要素の筒形配置(図20乃至図25のいずれかに例示したもの)を有する実施形態を示す図である。磁性要素120は磁性ワイヤ、磁性ストリップあるいはその他の適当な磁性材料としてよい。磁性ワイヤまたはストリップ材料は好適には筒状コア118の電気巻線と交差するように巻かれる。筒状コアは電気的リード線124(図ではそのうちの2つのみを示している)を介して回路に接続することができる。リード線の本数は実施形体の想定する用途、および装置内の電気巻線の数などその他の要素によって異なりうることを理解されたい。
【0060】
磁性要素120は筒状コア118内に発生された磁束を通し、該磁束を筒状コア118まわりの経路に沿って方向付けする。外側の磁性要素と筒状コア118の内側の空気(または所望により磁性材料)が筒状コアの個々のコイル間の誘導結合をもたらす。
【0061】
図27は電気コイル要素を有し、組み立てられたコイル要素の中心に、電気コイルの集合体に取り囲まれるように配置されたロータを有する実施形態を示す図である。詳細には電気モータ126はステータコイル128とロータ130とを有する。ステータコイル128は誘導装置68または筒状扇形78またはこれらの組み合わせを含んでよい。ロータは長さ方向に沿って形成された溝を有するシャフトの形態、またはその他のロータを回転させるためのステータとの電磁的な相互作用をもたらす適当な形態とすることができる。もちろん、当業者には容易に理解されるように、発電機としての動作も行うことができる。他の実施形態では直線運動させることもできる。
【0062】
組み立てられたステータコイル128の外側をワイヤまたはストリップ材の磁性材料で包んでもよい。また、ポッティング材またはクランプまたはセラミックやその他の適当な非金属材料からなるチューブ等を用いてステータコイル128を合わせて保持してもよい。
【0063】
図28は蛇行(曲折)形状に形成した磁性ワイヤからなる磁性パターン部材132の概略図である。このようなパターン部材と1つ以上のトロイダル電気要素を同方向に共通の形で巻くことができ、これにより装置の磁性要素としての磁性パターン部材を有するトロイダル誘導装置の製造が容易となる。磁性パターン部材132は、連続的な細長い磁性材料136の隣接する長さ部分134がパターン部材の長手方向138と交差して互い違いの向きに延在するように形成される。連続的材料は磁性ワイヤ、磁性ストリップ材料等のその他の細長い磁性材料から構成することができ、これを接着材により、例えばパターン部材が実質的に長さ部分134を有するストリップ状の材料となり該長さ部分134が「ストリップ」の長手方向と交差する方向に伸びるような形に保持してもよい。
【0064】
図29〜30は磁性ワイヤからパターン部材を形成する別の技術を示す。詳細には磁性ワイヤの螺旋コイル140を始めに形成方向142に沿って形成する。次にコイル140を平らにし、任意選択で長手方向に圧縮して磁性材料144の実質的に平らな部材を形成し、材料の隣接する部分が形成方向142と実質的に交差して延在するようになす。部材132と同様に、接着剤またはその他の適当な手段により部材144の形を保ってもよい。
【0065】
図31は例示としての誘導装置巻き装置149を示す概略図である。装置149はマンドレル150と、磁性材料成形装置(矢印151により概略的に示す)と、モータ154およびシャフト156を有する巻き装置152と、供給レール158と供給リールから供給される磁性材料160とを備える。磁性材料160は図28〜30に示すように形成された磁性パターン部材からなる。
【0066】
磁性要素を形成するにあたり、磁性材料160をマンドレル150取り付け、巻き装置152を動作させてマンドレル150を回転させて磁性材料160をマンドレル上に巻き付ける。磁性ストリップをマンドレル150上に巻き付けながら長手方向に前進させ、その隣接部分134等が巻き方向に交差して延在する。図示のように、マンドレル150の表面は完成したトロイダル誘導装置の所望のトロイダル形状の内面に対応する凹んだ形状とすることができる。
【0067】
所望の長さの磁性材料160をマンドレル150上に巻いた後に、電気ワイヤの1つ以上のコイルをマンドレル上にある磁性材料の上に巻き付けトロイダル電気コアを形成してもよい。最後に電気巻線上に1層以上の磁性材料160を巻き付けることができる。更なる磁性材料をマンドレル150に巻く際に、磁性材料成形装置151は磁性材料を成形して磁性材料がその下にあるマンドレル上の材料を取り囲み、その形に適合するように形成することができる。成形装置151はマンドレル上の下層材料の外表面に適合するように、前進する磁性材料を押しつけるように構成された簡単な手工具であってもよいし、またはコンピュータ制御された成形ローラ装置などの自動制御成形具であってもよい。成形具は電気コアを巻く前の第1の磁性材料巻き工程においても用いることができることを理解されたい。図32は概ねトロイダル形状の電気コイルに適合するようにアーチ状に成形された磁性パターン部材162を示す概略図である。
【0068】
別の手法では、磁性パターン部材を、それがワイヤスプールからマンドレル150に供給される際に「空中で(on the fly)」形成することもできる。
【0069】
図33は図31に関連して説明した手法により形成されたトロイダル変圧器165を示す概略的な断面図である。変圧器165は上記のように、マンドレル上に巻かれ同じくマンドレル上に巻かれた中間の電気コアに適合するように成形された内側および外側磁性パターン部材からなる磁性要素166を有している。リード線170および172が電気コア168の巻線に接続されている。図34は横から見た変圧器の図である。図35はこれに対応する平面図である。
【0070】
図36は細長い電気コア166の外側交差方向寸法において該コアのまわりに磁性材料を巻くために該コアのまわりに配設されたボビン164の使用を示している。電気コア166は長手方向168において細長くなっており、1つ以上の電気巻線を含むことができる。磁性材料(例えばワイヤ)170はコアの長手方向168に交差する巻き方向172(即ち、ボビン内側の電気コアワイヤの長手方向に交差する方向)でボビン164上に巻き付けられる。細長い電気コア166の内側面により領域174が画成される。図36に示すように、コア166の全外側交差方向寸法がボビン164内に受容され(ボビン164は内側のコア開口領域174を通ってはいない)、これにより形成される巻き構造は図17に示したものに類似している。ボビンは完成した装置の部品として残してもよいし、取り去ってもよいことは前の実施形態で説明した通りである。
【0071】
図37および38は中央の大電流要素と両側の高圧要素とを有する誘導装置例を示す2つの図である。詳細には、トロイダル形状を有する誘導装置176は第1の一次巻線180と、第2の一次巻線182と、第1の二次巻線184と、第2の二次巻線186と、リード線188とを備えている。
【0072】
第1および第2の二次巻線(184および186)は互いに隣接してトーラスの中央に配置されている。第1の一次巻線180はトロイダル形状の内周部に配置されており、第2の一次巻線182はトロイダル形状の外周部に配置されている。誘導装置176は一次および二次巻線からなる複合コアを包む磁性要素187を有してもよい。あるいは、図1〜12に関連して説明したような方法でボビンを用いて磁性要素を電気コア上に巻いてもよい。
【0073】
本発明をいくつかの実施形態に関連して説明したが、本発明の原理および思想を逸脱することなく、多くの代替、変更および変形を行いうることは当業者には明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明のトロイダル誘導装置を製作する方法を説明する図である。
【図2】本発明のトロイダル誘導装置を製作する方法を説明する図である。
【図3】本発明のトロイダル誘導装置を製作する方法を説明する図である。
【図4】本発明の方法を実施する装置を図式的に示す図である。
【図5】本発明の方法の変形例を説明する図である。
【図6】本発明の別の変形例を説明する図である。
【図7A】完成した磁性要素を電気コアに固定する手段の例を示す図である。
【図7B】完成した磁性要素を電気コアに固定する手段の例を示す図である。
【図7C】完成した磁性要素を電気コアに固定する手段の例を示す図である。
【図8A】拡開された外側面を有する磁性要素を有する実施形態を示す図である。
【図8B】取り外し可能なボビンの例を図式的に示す図である。
【図9】拡開された磁性要素を有する実施形態を示す図である。
【図10】拡開された磁性要素と拡開されていない磁性要素とを有する実施形態を示す図である。
【図11】交互に配置された拡開された磁性要素と拡開されていない磁性要素とを有する実施形態を示す図である。
【図12】磁性要素の巻き付けを容易にする直線部を有する電気コアを示す図である。
【図13】トロイダル形状の磁性要素が巻かれたトロイダル電気コアを有する実施形態を示す図である。
【図14】それぞれがトロイダル形状である2つの磁性要素が巻かれたトロイダル電気コアを有する実施形態を示す図である。
【図15】それぞれがトロイダル形状である複数の磁性要素が巻かれたトロイダル電気コアを有する実施形態を示す図である。
【図16】複数の磁性要素が巻かれて扇形に成形された、電気コアを有する実施形態を示す図である。
【図17】細長い形状の電気コアの例を示す断面図である。
【図18】実質的に筒状扇形形状の細長い電気コイルを示す斜視図である。
【図19】図18に示すコイルの上面および端面図である。
【図20】概ね筒形の構造を形成するように配置された筒状扇形セグメントを有する実施形態の端面図である。
【図21】互いに隣接する位置に配置された筒状扇形の細長い巻きセグメントと接続リード線を有する実施形態の端面図である。
【図22】直列接続された電気コイルを示す端面図である。
【図23】複数の直列接続された一次巻線と複数の直列接続された二次巻線とを有する変圧器の実施形態を示す端面図である。
【図24】複数の並列接続された一次巻線と複数の並列接続された二次巻線とを有する変圧器を示す端面図である。
【図25】細長い電気コイルと筒状扇形の細長い電気コイルとを有する変圧器の実施形態を示す端面図である。
【図26】一緒に配置され、外側を磁性材料で包囲した複数の細長い電気コイルを有する実施形態を示す図である。
【図27】ロータと共に適所に配置された電気コイルセグメントを有し、該ロータは該電気コイルアセンブリの中央に配置されて電気コイルの集合体に包囲されている実施形態を示す図である。
【図28】本発明の別の方法で用いるための、蛇行(曲折)形状に形成されたワイヤ材料の例を図式的に示す図である。
【図29】本発明で用いることのできるワイヤ材料の別の形態を示す図である。
【図30】本発明で用いることのできるワイヤ材料の別の形態を示す図である。
【図31】巻き付け装置の例を図式的に示す図である。
【図32】概ねトロイダル形状の電気コイルに適合する好適な円弧状に成形された磁性材料要素を示す側面図である。
【図33】本発明による、装置に出入りするリード線を有する完成した変圧器の例を示す断面図であり、その環状形体の内側および外側に示す磁性巻線部分を有している。
【図34】図33に示す装置の外観図である。
【図35】図33に示す装置の別の外観図である。
【図36】ボビンに包囲された細長い電気コアを有する実施形態を示す図であり、ボビンは電気コイルコアの内側開口を通過していないものである。
【図37】複数の一次および二次巻線を有する実施形態を示す横断面図である。
【図38】図37に示す装置の上断面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導装置の製作方法であって、
略トロイダル形状の電気巻線と該電気巻線のまわりに配置されたボビンとを設けることと、
ボビンに磁性材料を取り付けることと、
ボビンを電気巻線のまわりで回転させることによって、ボビンに磁性材料を巻き付け、それによって磁性材料を電気巻線のまわりに巻き付けることと、からなる方法。
【請求項2】
ボビンは電気巻線の内側面によって画成される開口を通過する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ボビンは電気巻線の内側面によって画成される開口を通過しない、請求項1記載の方法。
【請求項4】
ボビン上に磁性材料を巻き付ける工程は、平面視において扇形の磁性要素を形成するように磁性材料を案内することを含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項5】
電気巻線に直線部分を設けることを更に含み、ボビンは電気巻線の直線部分のまわりで回転される、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
磁性材料はリールから供給される、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
磁性材料は複数のリールから供給される、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
磁性材料の巻き付けが完了したときに、ボビンは電気巻線まわりの適位置に残される、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
磁性材料の巻き付けが完了したときに、ボビンは電気巻線から取り外される、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ボビンを取り外した後、磁性材料は外側表面において拡開され、平面視において略扇形形状をなす、請求項9記載の方法。
【請求項11】
ボビンは分離したピースからなり、それが結合されて電気巻線の周囲のボビンを形成する、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
磁性材料は単芯ワイヤを含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
磁性材料は多芯ワイヤを含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
磁性材料は単一のストリップを含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
磁性材料は複数のストリップを含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
巻き付け工程は複数の分離した磁性サブ要素をボビンに巻き付けることを含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
誘導装置であって、
略トロイダル形状の電気巻線と、
それぞれ電気巻線のまわりに、周方向に互いに位置をずらして配置された複数のボビンと、
それぞれ複数のボビンのうちの対応する1つのボビン上に巻き付けられた複数の磁性要素とを有し、複数の磁性要素の少なくとも1つは複数の分離した磁性サブ要素を含む、誘導装置。
【請求項18】
磁性材料は単芯ワイヤを含む、請求項17記載の誘導装置。
【請求項19】
磁性材料は多芯ワイヤを含む、請求項17記載の誘導装置。
【請求項20】
磁性材料は単一のストリップを含む、請求項17記載の誘導装置。
【請求項21】
磁性材料は複数のストリップを含む、請求項17記載の誘導装置。
【請求項22】
誘導装置であって、
略トロイダル形状の電気巻線と、
電気巻線のまわりに配置された少なくとも1つの筒状磁性要素と、
電気巻線のまわりに配置された少なくとも1つの扇形磁性要素と、を有する誘導装置。
【請求項23】
該少なくとも1つの扇形磁性要素はメリディオナル平面内にギャップを有する、請求項22記載の誘導装置。
【請求項24】
該少なくとも1つの扇形磁性要素は複数の扇形磁性要素を含み、該少なくとも1つの筒状磁性要素は少なくとも1組の隣接する扇形磁性要素の間にそれぞれ配置された複数の筒状磁性要素を含む、請求項22記載の誘導装置。
【請求項25】
概ねトロイダル形状に形成された電気要素であって、第1の一次巻線と、第2の一次巻線と、第1の二次巻線と、第2の二次巻線とを有し、第1および第2の二次巻線は互いに隣接して配置されており、かつ第1の一次巻線はトロイダル形状の内周部に配置されており、また第2の一次巻線はトロイダル形状の外周部に配置されている電気要素と、
電気要素を少なくとも部分的に包囲している磁性要素と、
を備える誘導装置。
【請求項26】
第1の二次巻線と第2の二次巻線とはそれぞれストリップ材料から形成される、請求項25記載の誘導装置。
【請求項27】
ストリップ材料はアルミニウムを含む、請求項26記載の誘導装置。
【請求項28】
概ね細長いトロイダル形状に形成された電気コイルと、
電気コイルのまわりに、長手方向に沿ってかつ電気巻線の方向に交差して配置され、少なくとも部分的に電気コイルを包囲する磁性要素と、
を備える誘導装置。
【請求項29】
電気コイルの内側面によって画成される領域に配置された磁性材料を更に有する、請求項28記載の誘導装置。
【請求項30】
磁性要素は磁性ワイヤ材料または磁性ストリップ材料を含む、請求項28記載の誘導装置。
【請求項31】
それぞれ略筒状扇形形状の複数の第1の細長い電気要素と、
それぞれ略筒状扇形形状の複数の第2の細長い電気要素と、を備える誘導装置であって、複数の第1の細長い電気要素と複数の第2の細長い電気要素とは略筒形をなすように配置されている、誘導装置。
【請求項32】
複数の第1の細長い電気要素と複数の第2の細長い電気要素とは交互に配置されている、請求項31記載の誘導装置。
【請求項33】
該略筒形の周りに長手方向に沿って形成された磁性部材を更に含み、該磁性部材は第1および第2の細長い電気要素の巻き方向に交差する方向に形成されている、請求項31記載の誘導装置。
【請求項34】
複数の第1の細長い電気要素の各々は直列に接続されて一次電気部材を形成し、複数の第2の細長い電気要素の各々は直列に接続されて二次電気部材を形成する、請求項31記載の誘導装置。
【請求項35】
複数の第1の細長い電気要素の各々と複数の第2の細長い電気要素の各々とは直列に接続されて単一の電気部材を形成する、請求項31記載の誘導装置。
【請求項36】
複数の第1の細長い電機要素の各々と複数の第2の細長い電気要素の各々とは、各それぞれの電気コイルの内側面によって画成される領域内に磁性材料を有さない、請求項31記載の誘導装置。
【請求項37】
複数の第1の細長い電気要素の少なくとも1つとまたは複数の第2の細長い電気要素の少なくとも1つは、それぞれの電気コイルの内側面によって画成される領域内に配置された磁性材料を有する、請求項31記載の誘導装置。
【請求項38】
誘導装置は電気モータを含み、該電気モータは、
ロータと、
ロータのまわりに配置され、複数の第1の細長い電気要素と複数の第2の細長い電気要素とによって形成されるステータであって、筒形の長手方向に沿って筒形を少なくとも部分的に包囲する磁性要素を有するステータと、を備える請求項31記載の誘導装置。
【請求項39】
電気モータは単相電気モータである、請求項38記載の誘導装置。
【請求項40】
電気モータは多相電気モータである、請求項38記載の誘導装置。
【請求項41】
磁性要素は磁性ワイヤ材料または磁性ストリップ材料を含む請求項38記載の誘導装置。
【請求項42】
誘導装置の製作方法であって、
(a)連続的な細長い磁性材料からなる磁性パターン部材を型の上に巻き付ける工程であって、細長い磁性材料はパターン部材の型上での巻き付け方向と交差する互い違いの向きに延在しているものである工程と、
(b)型の上に、電気要素を前記互い違いの方向と交差する巻き方向に巻き付ける工程と、を含む方法。
【請求項43】
磁性パターン部材は蛇行形状の磁性ワイヤを含む、請求項42記載の方法。
【請求項44】
磁性パターン部材は平らにした磁性ワイヤコイルを含む、請求項42記載の方法。
【請求項45】
工程(b)は工程(a)の後に行われ、更に
(c)第2の前記磁性パターン部材を型の上で電気要素の上に巻き付ける工程を含む、請求項42記載の方法。
【請求項46】
工程(b)は工程(a)の前に行われる、請求項42記載の方法。
【請求項47】
磁性パターン部材は工程(a)の前に形成される、請求項43または44記載の方法。
【請求項48】
磁性パターン部材は工程(a)中に形成される、請求項43または44記載の方法。
【請求項49】
請求項42乃至48のいずれかの方法により製作される誘導装置。
【請求項1】
誘導装置の製作方法であって、
略トロイダル形状の電気巻線と該電気巻線のまわりに配置されたボビンとを設けることと、
ボビンに磁性材料を取り付けることと、
ボビンを電気巻線のまわりで回転させることによって、ボビンに磁性材料を巻き付け、それによって磁性材料を電気巻線のまわりに巻き付けることと、からなる方法。
【請求項2】
ボビンは電気巻線の内側面によって画成される開口を通過する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ボビンは電気巻線の内側面によって画成される開口を通過しない、請求項1記載の方法。
【請求項4】
ボビン上に磁性材料を巻き付ける工程は、平面視において扇形の磁性要素を形成するように磁性材料を案内することを含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項5】
電気巻線に直線部分を設けることを更に含み、ボビンは電気巻線の直線部分のまわりで回転される、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
磁性材料はリールから供給される、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
磁性材料は複数のリールから供給される、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
磁性材料の巻き付けが完了したときに、ボビンは電気巻線まわりの適位置に残される、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
磁性材料の巻き付けが完了したときに、ボビンは電気巻線から取り外される、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ボビンを取り外した後、磁性材料は外側表面において拡開され、平面視において略扇形形状をなす、請求項9記載の方法。
【請求項11】
ボビンは分離したピースからなり、それが結合されて電気巻線の周囲のボビンを形成する、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
磁性材料は単芯ワイヤを含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
磁性材料は多芯ワイヤを含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
磁性材料は単一のストリップを含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
磁性材料は複数のストリップを含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
巻き付け工程は複数の分離した磁性サブ要素をボビンに巻き付けることを含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
誘導装置であって、
略トロイダル形状の電気巻線と、
それぞれ電気巻線のまわりに、周方向に互いに位置をずらして配置された複数のボビンと、
それぞれ複数のボビンのうちの対応する1つのボビン上に巻き付けられた複数の磁性要素とを有し、複数の磁性要素の少なくとも1つは複数の分離した磁性サブ要素を含む、誘導装置。
【請求項18】
磁性材料は単芯ワイヤを含む、請求項17記載の誘導装置。
【請求項19】
磁性材料は多芯ワイヤを含む、請求項17記載の誘導装置。
【請求項20】
磁性材料は単一のストリップを含む、請求項17記載の誘導装置。
【請求項21】
磁性材料は複数のストリップを含む、請求項17記載の誘導装置。
【請求項22】
誘導装置であって、
略トロイダル形状の電気巻線と、
電気巻線のまわりに配置された少なくとも1つの筒状磁性要素と、
電気巻線のまわりに配置された少なくとも1つの扇形磁性要素と、を有する誘導装置。
【請求項23】
該少なくとも1つの扇形磁性要素はメリディオナル平面内にギャップを有する、請求項22記載の誘導装置。
【請求項24】
該少なくとも1つの扇形磁性要素は複数の扇形磁性要素を含み、該少なくとも1つの筒状磁性要素は少なくとも1組の隣接する扇形磁性要素の間にそれぞれ配置された複数の筒状磁性要素を含む、請求項22記載の誘導装置。
【請求項25】
概ねトロイダル形状に形成された電気要素であって、第1の一次巻線と、第2の一次巻線と、第1の二次巻線と、第2の二次巻線とを有し、第1および第2の二次巻線は互いに隣接して配置されており、かつ第1の一次巻線はトロイダル形状の内周部に配置されており、また第2の一次巻線はトロイダル形状の外周部に配置されている電気要素と、
電気要素を少なくとも部分的に包囲している磁性要素と、
を備える誘導装置。
【請求項26】
第1の二次巻線と第2の二次巻線とはそれぞれストリップ材料から形成される、請求項25記載の誘導装置。
【請求項27】
ストリップ材料はアルミニウムを含む、請求項26記載の誘導装置。
【請求項28】
概ね細長いトロイダル形状に形成された電気コイルと、
電気コイルのまわりに、長手方向に沿ってかつ電気巻線の方向に交差して配置され、少なくとも部分的に電気コイルを包囲する磁性要素と、
を備える誘導装置。
【請求項29】
電気コイルの内側面によって画成される領域に配置された磁性材料を更に有する、請求項28記載の誘導装置。
【請求項30】
磁性要素は磁性ワイヤ材料または磁性ストリップ材料を含む、請求項28記載の誘導装置。
【請求項31】
それぞれ略筒状扇形形状の複数の第1の細長い電気要素と、
それぞれ略筒状扇形形状の複数の第2の細長い電気要素と、を備える誘導装置であって、複数の第1の細長い電気要素と複数の第2の細長い電気要素とは略筒形をなすように配置されている、誘導装置。
【請求項32】
複数の第1の細長い電気要素と複数の第2の細長い電気要素とは交互に配置されている、請求項31記載の誘導装置。
【請求項33】
該略筒形の周りに長手方向に沿って形成された磁性部材を更に含み、該磁性部材は第1および第2の細長い電気要素の巻き方向に交差する方向に形成されている、請求項31記載の誘導装置。
【請求項34】
複数の第1の細長い電気要素の各々は直列に接続されて一次電気部材を形成し、複数の第2の細長い電気要素の各々は直列に接続されて二次電気部材を形成する、請求項31記載の誘導装置。
【請求項35】
複数の第1の細長い電気要素の各々と複数の第2の細長い電気要素の各々とは直列に接続されて単一の電気部材を形成する、請求項31記載の誘導装置。
【請求項36】
複数の第1の細長い電機要素の各々と複数の第2の細長い電気要素の各々とは、各それぞれの電気コイルの内側面によって画成される領域内に磁性材料を有さない、請求項31記載の誘導装置。
【請求項37】
複数の第1の細長い電気要素の少なくとも1つとまたは複数の第2の細長い電気要素の少なくとも1つは、それぞれの電気コイルの内側面によって画成される領域内に配置された磁性材料を有する、請求項31記載の誘導装置。
【請求項38】
誘導装置は電気モータを含み、該電気モータは、
ロータと、
ロータのまわりに配置され、複数の第1の細長い電気要素と複数の第2の細長い電気要素とによって形成されるステータであって、筒形の長手方向に沿って筒形を少なくとも部分的に包囲する磁性要素を有するステータと、を備える請求項31記載の誘導装置。
【請求項39】
電気モータは単相電気モータである、請求項38記載の誘導装置。
【請求項40】
電気モータは多相電気モータである、請求項38記載の誘導装置。
【請求項41】
磁性要素は磁性ワイヤ材料または磁性ストリップ材料を含む請求項38記載の誘導装置。
【請求項42】
誘導装置の製作方法であって、
(a)連続的な細長い磁性材料からなる磁性パターン部材を型の上に巻き付ける工程であって、細長い磁性材料はパターン部材の型上での巻き付け方向と交差する互い違いの向きに延在しているものである工程と、
(b)型の上に、電気要素を前記互い違いの方向と交差する巻き方向に巻き付ける工程と、を含む方法。
【請求項43】
磁性パターン部材は蛇行形状の磁性ワイヤを含む、請求項42記載の方法。
【請求項44】
磁性パターン部材は平らにした磁性ワイヤコイルを含む、請求項42記載の方法。
【請求項45】
工程(b)は工程(a)の後に行われ、更に
(c)第2の前記磁性パターン部材を型の上で電気要素の上に巻き付ける工程を含む、請求項42記載の方法。
【請求項46】
工程(b)は工程(a)の前に行われる、請求項42記載の方法。
【請求項47】
磁性パターン部材は工程(a)の前に形成される、請求項43または44記載の方法。
【請求項48】
磁性パターン部材は工程(a)中に形成される、請求項43または44記載の方法。
【請求項49】
請求項42乃至48のいずれかの方法により製作される誘導装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【公表番号】特表2009−524255(P2009−524255A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551535(P2008−551535)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/060722
【国際公開番号】WO2007/084963
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(503261694)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/060722
【国際公開番号】WO2007/084963
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(503261694)
【Fターム(参考)】
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