説明

誘電体ペースト、プラズマディスプレイパネルおよびその製造方法

【課題】本発明は、生産効率を維持しつつ、高信頼性を確保した誘電体ペースト、プラズマディスプレイパネルおよびプラズマディスプレイパネルの製造方法を実現する。
【解決手段】本発明の誘電体ペーストは、プラズマディスプレイパネルの誘電体層を形成する誘電体ペーストであって、誘電体ガラス材料、溶剤およびバインダ成分を含み、前記バインダ成分は粘度20cps以上200cps以下となる分子量であって、前記ペースト中前記バインダ成分の体積分率で表記した含有量が4%以上10%以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、誘電体ペースト、それを用いたプラズマディスプレイパネルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPとする)は従来のNTSC方式に比べて走査線数が2倍以上のハイディフィニションテレビへの適用が進んでいる。
【0003】
このようなハイビジョン化によって、走査線数が増加して表示電極の数が増加し、さらに前面板の表示電極間隔が小さくなる。そのため、表示電極を被覆する誘電体層も小さくなった表示電極間隔に空隙やひび割れなどなく形成される必要がある。空隙やひび割れなどが存在した場合、誘電体層に求められる絶縁耐圧特性が低下してしまう。そこで従来ではそうした誘電体層の形成にはスクリーン印刷法やダイコート法を用いて複数回の誘電体形成を行って誘電体層を形成していた。例えば、特許文献1にはスクリーン印刷法とダイコート法の複数の形成でもって、前記空隙を低減させる例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−25433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、PDPは従来のように低消費電力化やコストダウンだけではなく、デザイン性も意識した開発が重視されてきている。
【0006】
デザイン性の自由度を上げる1つの手段として、表示領域以外の周辺領域を狭くする狭額縁化がある。このような狭額縁化によって、基板ガラス上の誘電体材料の形成領域に対する未形成領域の確保が難しくなる。
【0007】
例えば上記のダイコート法でペーストを塗布する場合、塗布終端部で塗布進行方向に長さ数mm程度のペーストの糸引きが見られる場合がある。このような糸引きが発生した場合、狭額縁化により塗布終端部から基板ガラス端までの距離が短いため、糸引きの長さによっては、前面板と背面板とを封着する封着領域に及ぶ可能性がある。この誘電体ペーストの糸引き部を挟み込んだ状態で前面板と背面板とを封着した場合、糸引き部が経路となりPDP放電空間へのリーク現象が生じ、品質不良を引き起こす可能性がある。
【0008】
さらに、この誘電体ペーストの糸引きが表示電極の端子部上にまで及んだ場合、表示電極端子に接続するフレキシブル端子の圧着不良を引き起こす可能性もある。
【0009】
このような糸引きを低減するためには、設備精度を向上させたり、塗布後に糸引き部のペーストを拭き取ることなどが考えられるが、設備改造費や新規の生産設備が必要になるだけでなく、製造時エネルギー消費の増大などコストアップにつながり、安価で高性能なPDPを提供することが困難になる。
【0010】
本発明は、このような課題を解決して、生産効率を維持しつつ、高信頼性を確保したPDPを実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的に対して、本発明の誘電体ペーストはPDPの誘電体層を形成する誘電体ペーストであって、誘電体ガラス材料、溶剤およびバインダ成分を含み、バインダ成分は粘度20cps以上200cps以下となる分子量であって、ペースト中前記バインダ成分の体積分率で表記した含有量が4%以上10%以下であることを特徴とする。ここで、バインダの樹脂がエチルセルロースであることが望ましい。さらに、せん断速度4/sの粘度に対するせん断速度0.4/sの粘度の比が1.3以上であることが望ましい。
【0012】
また、本発明のPDPは前面板と背面板とを備え、前面板と背面板とが対向配置されるとともに周囲が封着され、前面板は、表示電極と表示電極を覆う誘電体層とを有し、誘電体は上記の誘電体ペーストによって形成されることを特徴とする。そして本発明のPDPの製造方法は、前面板に表示電極を形成する工程と、前面板上に表示電極を覆うように、上記の誘電体ペーストを塗布する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記の構成によれば、生産効率を維持しつつ、高信頼性を確保した誘電体ペースト、PDPおよびPDPの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態におけるPDPの構造を示す斜視図
【図2】同前面板の構造を示す概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施の形態)
[1.PDP1の構成]
本実施の形態のPDP1は、交流面放電型PDPである。図1に示すように、PDP1は前面ガラス基板3などよりなる前面板2と、背面ガラス基板11などよりなる背面板10とが対向して配置される。前面板2と背面板10の外周部がガラスフリットなどからなる封着材によって気密封着されている。封着されたPDP1内部の放電空間16には、NeおよびXeなどの放電ガスが55kPa〜80kPaの圧力で封入される。
【0016】
前面ガラス基板3上には、走査電極4および維持電極5よりなる一対の帯状の表示電極6とブラックストライプ(遮光層)7が互いに平行にそれぞれ複数列配置される。前面ガラス基板3上には、表示電極6と遮光層7とを覆うようにコンデンサとしての働きをする誘電体層8が形成される。さらに、誘電体層8の表面に酸化マグネシウム(MgO)などからなる保護層9が形成される。
【0017】
また、背面ガラス基板11上には、前面板2の表示電極6と直交する方向に、複数の帯状のアドレス電極12が互いに平行に配置される。さらに、アドレス電極12を覆うように下地誘電体層13が形成される。さらに、アドレス電極12の間に形成された下地誘電体層13上には放電空間16を区切る所定の高さの隔壁14が形成される。隔壁14の間には、紫外線によって赤色に発光する蛍光体層15と、青色に発光する蛍光体層15および緑色に発光する蛍光体層15が順番に形成される。
【0018】
表示電極6とアドレス電極12とが交差する位置に放電セルが形成される。赤色に発光する蛍光体層15を有する放電セルと、青色に発光する蛍光体層15を有する放電セルと、緑色に発光する蛍光体層15を有する放電セルとによりカラー表示をする画素が形成される。
【0019】
[2.PDP1の製造方法]
[2−1.前面板2の製造方法]
図2に示すように、前面ガラス基板3上に、走査電極4および維持電極5と遮光層7とが形成される。表示電極6は、走査電極4および維持電極5を有する。走査電極4および維持電極5は、導電性を確保するための銀(Ag)を含む白色電極4b、5bを有する。また、走査電極4および維持電極5は、画像表示面のコントラストを向上するため黒色顔料を含む黒色電極4a、5aを有する。白色電極4bは、黒色電極4aに積層される。白色電極5bは、黒色電極5aに積層される。
【0020】
具体的には、黒色顔料を含む黒色ペーストが、スクリーン印刷法などによって前面ガラス基板3に塗布されることにより、黒色ペースト層(図示せず)が形成される。次に、黒色ペースト層(図示せず)が、フォトリソグラフィ法によりパターニングされる。次に、銀(Ag)を含む白色ペーストが、スクリーン印刷法などによって、黒色ペースト層(図示せず)上に塗布されることにより、白色ペースト層(図示せず)が形成される。次に、白色ペースト層(図示せず)と黒色ペースト層(図示せず)が、フォトリソグラフィ法によりパターニングされる。その後、現像ステップを経て、表示電極6である白色電極4b、5b、黒色電極4a、5a、および遮光層7の前駆体となる形状が形成される。本実施の形態においては、これら表示電極6等の焼成をここでは行わない。
【0021】
次に、走査電極4、維持電極5および遮光層7を覆うように前面ガラス基板3上に誘電体ペーストがダイコート法などにより塗布されることにより、誘電体ペースト層(図示せず)が形成される。その後、所定の時間が経過すると、誘電体ペースト層(図示せず)の表面がレベリングし、平坦になる。その後、表示電極6である白色電極4b、5b、黒色電極4a、5a、および遮光層7の前駆体と、誘電体ペースト層が同一の工程で焼成されることにより、走査電極4、維持電極5および遮光層7および、それらを覆う誘電体層8が形成される。
【0022】
なお、誘電体ペーストは、ガラス粉末などの誘電体ガラス、バインダおよび溶剤を含む塗料である。
【0023】
次に、誘電体層8上に酸化マグネシウム(MgO)などからなる保護層9が真空蒸着法により形成される。
【0024】
以上の工程により前面ガラス基板3上に走査電極4、維持電極5、遮光層7、誘電体層8、保護層9が形成され、前面板2が完成する。
【0025】
[2−2.背面板10の製造方法]
図1に示すように、背面板10は、以下のように形成される。
【0026】
背面ガラス基板11上に、アドレス電極12が形成される。具体的には、銀(Ag)を含むペーストがスクリーン印刷法により、背面ガラス基板11上に塗布されることにより、アドレス電極ペースト層(図示せず)が形成される。次に、アドレス電極ペースト層(図示せず)が、フォトリソグラフィ法により、パターニングされることにより、アドレス電極12用の構成物となる材料層(図示せず)が形成される。その後、材料層(図示せず)が所定の温度で焼成されることにより、アドレス電極12が形成される。ここで、ペーストをスクリーン印刷する方法以外にも、スパッタ法、蒸着法などにより、金属膜を背面ガラス基板11上に形成する方法が採用される。
【0027】
次に、アドレス電極12が形成された背面ガラス基板11上にダイコート法などによりアドレス電極12を覆うように下地誘電体ペーストが塗布されることにより、下地誘電体ペースト層(図示せず)が形成される。その後、下地誘電体ペースト層(図示せず)が焼成されることにより、下地誘電体層13が形成される。なお、下地誘電体ペーストはガラス粉末などの下地誘電体材料とバインダおよび溶剤を含んだ塗料である。
【0028】
次に、下地誘電体層13上に隔壁材料を含む隔壁形成用ペーストが塗布されることにより、隔壁ペースト層(図示せず)が形成される。隔壁ペースト層(図示せず)がフォトリソグラフィ法により、パターニングされることにより、隔壁14の材料層となる構成物(図示せず)が形成される。次に、構成物(図示せず)が、焼成されることにより隔壁14が形成される。ここで、下地誘電体層13上に塗布された隔壁ペースト層をパターニングする方法としては、フォトリソグラフィ法の他に、サンドブラスト法などが採用される。
【0029】
次に、隣接する隔壁14間の下地誘電体層13上および隔壁14の側面に蛍光体材料を含む蛍光体ペーストが塗布される。次に、蛍光体ペーストが焼成されることにより蛍光体層15が形成される。
【0030】
以上の工程により、背面ガラス基板11上に所定の構成部材を有する背面板10が完成する。
【0031】
[2−3.前面板2と背面板10との組立方法]
まず、表示電極6とアドレス電極12とが直交するように、前面板2と背面板10とが対向配置される。次に、前面板2と背面板10の周囲がガラスフリットで封着される。次に、放電空間16にNe、Xeなどを含む放電ガスが封入されることによりPDP1が完成する。
【0032】
[3.誘電体層8の詳細]
次に、前面板2の誘電体層8について詳細に説明する。本発明の実施の形態においては、誘電体層を形成する方法として、誘電体ガラス成分(以下、誘電体ガラス材料とする)とバインダ樹脂、可塑剤、溶剤などの成分で構成されたペーストをダイコート法により、電極を形成した基板上に塗布し、乾燥後450℃から600℃程度で焼成している。
【0033】
ダイコート法を用いて低コストで誘電体層8を形成するためには、誘電体ペーストを用いた塗布工程で絶縁耐圧性の高い誘電体層8を形成することが必要となる。そして、ダイコート法で誘電体ペーストを用いて塗布した場合、さらに次のような課題が発生する。
【0034】
例えば上記のダイコート法でペーストを塗布する場合、塗布終端部で塗布進行方向に長さ数mm程度のペーストの糸引きが見られる場合がある。このような糸引きが発生した場合、狭額縁化により塗布終端部から基板ガラス端までの距離が短いため、糸引きの長さによっては、前面板と背面板とを封着する封着領域に及ぶ可能性がある。この誘電体ペーストの糸引き部を挟み込んだ状態で前面板と背面板とを封着した場合、糸引き部が経路となりPDP放電空間へのリーク現象が生じ、品質不良を引き起こす可能性がある。
【0035】
さらに、この誘電体ペーストの糸引きが表示電極の端子部上にまで及んだ場合、表示電極端子に接続するフレキシブル端子の圧着不良を引き起こす可能性もある。
【0036】
これに対し本発明の実施の形態では、誘電体層8を形成する工程において誘電体ペーストを用いてダイコート法による塗布工程であって、誘電体ペーストに含まれるバインダ樹脂を、粘度が20cps以上200cps以下としている。
【0037】
ここで、上記粘度について説明する。体積比率にてトルエン80%とエタノール20%の混合溶液に、当該バインダ樹脂を5%溶解させたときに発現する粘度を測定する。一般的には、例えば10cpsの測定粘度の場合は10cpsのグレード品番とされる。ただし、粘度規格には幅があり、例えば10cpsグレードの場合は9〜11cpsの測定粘度で代表され、粘度数値が大きいほど粘度幅も大きい。
【0038】
そして、この粘度範囲とするために、本発明ではエチルセルロース系樹脂を使用している。一般的にエチルセルロース系は天然高分子セルロースであるため、粘度が高く、少量の樹脂量であってもペースト全体として粘度を維持することが可能である。
【0039】
また本発明の実施の形態においては、当該エチルセルロース系樹脂の重量平均分子量を100000以上200000以下として、上記粘度範囲としている。ここで重量平均分子量とは当該樹脂材料の分子量分布における重量重心値に相当する。
【0040】
本発明においてこのような範囲としたのは、発明者等の検討の結果、次のような現象が明らかになったからである。
【0041】
つまり、誘電体ペーストに含まれるバインダ樹脂の粘度が20cpsよりも小さい場合、塗布時の塗布終端部でのペースト切れ性が不十分であることが明らかとなった。これはペースト粘度のせん断速度依存性が小さいために、塗布の際のせん断速度域におけるペースト粘度が高く、ペーストが液切れし難いためと考えられる。
【0042】
また、バインダ樹脂の粘度が200cpsよりも大きい場合、ペースト切れ性は良好であるものの、ペースト粘度が高くなりすぎるため含有量を低減する必要がある。バインダ樹脂の含有量が少ないとペースト中でのガラス粒子の分散状態が不十分となり、焼成後に均一で緻密な膜質が得られず絶縁不良などを引き起こす恐れがある。
【0043】
さらに本発明の実施の形態では、ペースト中の樹脂の体積分率で表記した含有量が4%以上10%以下としている。
【0044】
バインダ樹脂の体積分率で表記した含有量が10%より大きくなると、せん断速度依存性は大きくなるが、ペースト粘度の絶対値が大きくなるため、やはりペーストの切れ性が不十分となる。一般的にバインダ樹脂は、誘電体ガラス粉末をペースト中にしっかりと分散させて、誘電体層焼成後に均一な膜質を得るために含有させる。このため、少なすぎるとガラス粉末の分散が不均一となり均一な膜質が得られない。このため、ペーストに含有するバインダ樹脂は体積分率で表記した含有量が4%以上であることが好ましい。
【0045】
なお、ペースト粘度のせん断速度依存性は一般的にTI値と呼ばれる値で表される。TI値は任意の2つのせん断速度におけるペースト粘度の比を表したもので、せん断速度γ1におけるペースト粘度η1とせん断速度γ2におけるペースト粘度η2の比(η1/η2、ただしγ1<γ2)である。
【0046】
TI値が大きいということは、ペースト粘度のせん断速度依存性が大きいということであり、高せん断速度でのペースト粘度が低下するためペースト切れ性が良化する。ペースト切れ性を良化させ、塗布時における塗布膜終端部の糸引きを低減するためには、せん断速度0.4(/s)とせん断速度4(/s)のTI値が1.3以上であることが好ましく、さらにはTI値が1.5以上であることがより好ましい。
【0047】
ただし、TI値が大きいと低せん断速度時の粘度(静置粘度)が高くなるため、例えばペースト供給時間が長くなる等、生産性に不具合を生じる恐れがある。このためTI値は2.0以下であることが好ましい。
【0048】
また、ペーストに含有する誘電体ガラス粉末の含有量でもTI値は変化し、含有量が多いほどTI値は大きくなる傾向がある。粘度特性や塗布性に影響を与えない範囲で誘電体ガラス粉末の含有量を多くする方が好ましく、本発明ではペーストに含有する誘電体ガラス粉末は体積分率で表記した含有量が20%以上、さらに望ましくは25%以上としている。
【0049】
以上のように、本発明の実施の形態におけるPDP1の誘電体層8は、上記の構成とすることで、低コストで誘電体層8を形成しつつ、高信頼性を保持し表示品質の優れたPDPを実現している。
【0050】
次に本発明の実施の形態における誘電体層8の製造方法について説明する。誘電体層8に含まれる誘電体ガラス材料は、鉛(Pb)系成分以外を主成分とし、さらに酸化銅(CuO)やR2O(RはLi、Na、K、RbおよびCsから選ばれる少なくとも1種)を含有する材料組成により構成されている。
【0051】
これらの組成成分からなる誘電体材料を、湿式ジェットミルやボールミルで平均粒径が0.5μm〜3.0μmとなるように粉砕して誘電体材料粉末を作製する。次にこの誘電体ガラス材料の粉末を誘電体ペーストに対して体積分率の表記で20%〜50%と、バインダ樹脂成分を誘電体ガラス材料に対して体積分率の表記で4%〜10%とを三本ロールでよく混練してダイコート用あるいは印刷用の誘電体層用ペーストを作製する。なお、混練する装置は三本ロールのほかにもジェットミルやビーズミルなど種々の装置を適宜選択できる。
【0052】
バインダ樹脂成分はエチルセルロースあるいはアクリル樹脂であるが、ブチラール樹脂やカルボキシメチルセルロース、ニトロセルロースなどを用いても構わない。
【0053】
上記成分以外の成分としてはターピネオールあるいはブチルカルビトールアセテートといった溶剤であるが、α−、β−、γ−テルピネオールなどのテルペン類、エチレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールジアルキルエーテル類、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、エチレングリコールジアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールジアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールジアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールジアルキルエーテルアセテート類、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジプロピレングリコールジアルキルエーテルアセテート類、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、トリプロピレングリコールジアルキルエーテル類、トリプロピレングリコールトリアルキルエーテル類、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、トリプロピレングリコールジアルキルエーテルアセテート類、トリプロピレングリコールトリアルキルエーテルアセテート類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノールなどのアルコール類等も適宜選択できる。
【0054】
また、ペースト中には、必要に応じて可塑剤としてフタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリブチルを添加し、分散剤としてグリセロールモノオレート、ソルビタンセスキオレヘート、ホモゲノール(Kaoコーポレーション社製品名)、アルキルアリル基のリン酸エステルなどを添加して印刷性を向上させてもよい。
【0055】
次に、この誘電体層用ペーストを用い、表示電極6を覆うように前面ガラス基板3に、スクリーン印刷法または、スプレー法または、ブレードコータ法または、ダイコート法にて塗布し、乾燥させ、その後、誘電体材料の軟化点より少し高い温度の450℃〜600℃で焼成する。
【0056】
なお、誘電体層8の膜厚が小さいほどパネル輝度の向上と放電電圧を低減するという効果は顕著になるので、絶縁耐圧が低下しない範囲内であればできるだけ膜厚を小さく設定するのが望ましい。このような条件と可視光透過率の観点から、本発明の実施の形態では、誘電体層8の膜厚を41μm以下に設定している。
【0057】
なお、鉛成分について「実質的に含有しない」というのは、不純物等で鉛成分を含んだ誘電体層についても本発明に相当すると考える。
【0058】
[4.実施例]
次に実施例について述べる。PDPとして、放電セルとして42インチクラスのハイビジョンテレビに適合するように、隔壁の高さを0.15mm、隔壁の間隔(セルピッチ)を0.15mm、表示電極の電極間距離を0.06mmとし、Xeの含有量が15体積%のNe−Xe系の混合ガスを封入圧60kPaに封入したPDPを作製してその性能を評価した。なおガラス基板の厚みは1.8mmのものを使用し、誘電体層の膜厚は24μmとした。
【0059】
表1に示す樹脂量を含む、誘電体ペーストを作製し、これらの誘電体ガラスから構成される誘電体層を含むPDPを作製した。これらを試料1−4として表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
表1に示されるバインダ樹脂組成から構成される誘電体ペーストを用いて作製したPDPの特性を比較するために、ダイコート法を用いて誘電体ペーストを塗布し、終端部に発生した糸引き長さの最大値を評価した。糸引き長さの測定はノギスを用い塗布形成エリアから、発生した糸引きのうち長さが最も長いものを計測した。この結果を同表に示す。
【0062】
試料2と試料4に示すように、含有バインダ樹脂の粘度が20cpsより小さい場合は最大糸引き長さ値が大きいことがわかる。また、試料3に示すように、含有バインダ樹脂の20cpsであってもTI値が低い場合は、やはり最大糸引き長さ値が大きいことがわかる。一方、試料1に示すように含有バインダ樹脂の粘度が20cps以上でTI値が1.5より大きい場合が最大糸引き長さ値が小さいことがわかる。
【0063】
以上のように、本発明の実施の形態では、生産効率を維持しつつ、高信頼性を確保した誘電体ペースト、PDPおよびPDPの製造方法を実現する。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、PDPの生産効率を維持しつつ、高信頼性を確保することができる点で産業上有用である。
【符号の説明】
【0065】
1 PDP
2 前面板
3 前面ガラス基板
4 走査電極
4a、5a 黒色電極
4b、5b 白色電極
5 維持電極
6 表示電極
7 ブラックストライプ(遮光層)
8 誘電体層
9 保護層
10 背面板
11 背面ガラス基板
12 アドレス電極
13 下地誘電体層
14 隔壁
15 蛍光体層
16 放電空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマディスプレイパネルの誘電体層を形成する誘電体ペーストであって、
誘電体ガラス材料、溶剤およびバインダ成分を含み、
前記バインダ成分は粘度20cps以上200cps以下となる分子量であって、
前記ペースト中前記バインダ成分の体積分率で表記した含有量が4%以上10%以下であることを特徴とする誘電体ペースト。
【請求項2】
前記バインダの樹脂がエチルセルロースであることを特徴とする請求項1に記載の誘電体ペースト。
【請求項3】
せん断速度4/sの粘度に対するせん断速度0.4/sの粘度の比が1.3以上であることを特徴とする請求項1に記載の誘電体ペースト。
【請求項4】
前面板と背面板とを備え、前記前面板と前記背面板とが対向配置されるとともに周囲が封着され、前記前面板は、表示電極と前記表示電極を覆う誘電体層とを有し、
前記誘電体は請求項1〜請求項3のいずれかに記載の誘電体ペーストによって形成されることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項5】
前面板に表示電極を形成する工程と、前記前面板上に前記表示電極を覆うように、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の誘電体ペーストを塗布する工程とを有するプラズマディスプレイパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−99329(P2012−99329A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245791(P2010−245791)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】