説明

誘電率異方性が負である液晶組成物、及び該液晶組成物を用いた液晶表示素子

【課題】Δεの絶対値、Δn、Tni、及びηの少なくとも1つが残る3つが悪化せずに改善された誘電率異方性が負である液晶組成物、及び該液晶組成物を用いた液晶表示素子を提供する。
【解決手段】少なくとも1種類の一般式(I)で表される化合物及び少なくとも1種類の一般式(II)で表される化合物を含有し、一般式(III)で表される化合物を含有していない誘電率異方性が負である液晶組成物(式中、R11、R12、R21、及びR22炭素数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、炭素数2〜8のアルケニル基又はアルケニルオキシ基を、R31及びR32は炭素数1〜8のアルキル基又はアルコキシ基を、a11は0又は1を、A11、A12及びA21は特定の2価の6員環を有する基を、Z21は単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−又は−CHCH−を表す。)。
[化1]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学的液晶表示材料として有用な誘電率異方性(Δε)が負である液晶組成物、及び該液晶組成物を用いた液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
負の誘電率異方性(負のΔε)を有する液晶組成物を使用した垂直配向型のVA−LCDは、漆黒な黒を表現することができるため表示品位に優れ、高コントラストな液晶表示装置として、液晶テレビを中心とした市場に広く浸透している。また、最近では液晶テレビなどに代表されるアクティブマトリックス駆動方式の他、車載や家電用途の表示器として使用されているパッシブマトリックス駆動方式でもVA−LCDの採用が増えている。液晶テレビ用途では、滑らかな動画表示性能を実現するためにガラス基板間のギャップが狭くなる傾向にあり、液晶材料の複屈折率(Δn)は大きくなる傾向にある。一方、車載用表示器においては、表示容量の大きな高時分割駆動でも良好なコントラストを得るために、負のΔεを有する液晶組成物としては従来にない大きなΔnが求められるとともに、低電圧化にも対応するためΔεの絶対値も大きなものが要求されるようになってきた。
【0003】
VA−LCD用の液晶材料として多くの液晶化合物および液晶組成物が提案されている。ここで、Δnを増大させるためには、液晶組成物中におけるΔnの大きな液晶化合物の含有量を上昇させる必要があり、Δεの絶対値を増大させるためには、液晶組成物中におけるΔεの絶対値の大きな液晶化合物の含有量を上昇させる必要がある。しかし、これらの化合物の含有量を上昇させた場合には、粘性(η)が悪化し、応答速度が悪化してしまう。
【0004】
これまでにも、Δεが負の値を示し、かつΔnの値が大きな液晶組成物が開示されている(例えば、特許文献1〜6参照。)。また、Δεは正の比較的大きな値であり、かつηの低い液晶組成物も開示されている(例えば、特許文献7参照。)
【0005】
一方で、幅広い温度範囲において機能する表示素子を製造するためには、ネマティック相−等方性液体相転移温度(Tni)(ネマティック相上限温度)は高いほうが好ましい。
これらを総合するに、Δεの絶対値及びΔnが十分に大きく、Tniが高く、かつηが小さい液晶組成物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−096058号公報
【特許文献2】特開2001−354967号公報
【特許文献3】特開平11−140447号公報
【特許文献4】特開平11−228966号公報
【特許文献5】特開平8−104869号公報
【特許文献6】特開2002−069449号公報
【特許文献7】特開平6−501517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、Δεの絶対値、Δn、Tni、及びηのうちの少なくとも1つが、残る3つを悪化させることなく改善された、誘電率異方性が負である液晶組成物、及び該液晶組成物を用いた液晶表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、少なくとも2種類の特定の構造を有する化合物を含有し、かつ特定の構造の化合物を含有していない液晶組成物であれば、上記の課題を解決できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、第一成分として一般式(I)で表される化合物
【化1】

(式中、R11及びR12は互いに独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表し、a11は0又は1を表し、A11及びA12は互いに独立して
【化2】

のいずれかを表す。A11が1,4−フェニレン基である場合、ベンゼン環上に存在する1個又は2個以上の水素原子はハロゲンで置換されていてもよい。A12が1,4−フェニレン基である場合、ベンゼン環上に存在する1個又は2個以上の水素原子はハロゲンで置換されていてもよい。)から選ばれる少なくとも1種類の化合物を含有し、
第二成分として一般式(II)で表される化合物
【化3】

(式中、R21及びR22は互いに独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表し、Z21は単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−又は−CHCH−を表し、A21
【化4】

のいずれかを表す。A21が1,4−フェニレン基である場合、ベンゼン環上に存在する1個又は2個以上の水素原子はハロゲンで置換されていてもよい。)から選ばれる少なくとも1種類の化合物を含有し、
かつ、一般式(III)で表される化合物
【化5】

(式中、R31及びR32は互いに独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基を表す。)を含有していないことを特徴とする、誘電率異方性が負である液晶組成物を提供する。
さらに本発明は、前記液晶組成物を用いたことを特徴とする液晶表示素子を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液晶組成物は、誘電率異方性が負であって、Δεの絶対値、Δn、Tni、及びηのうちの少なくとも1つが、残る3つを悪化させることなく改善されているという特徴を有する。つまり、本発明の液晶組成物は、液晶性に優れ、広い温度範囲で安定な液晶相を示す。
このため、本発明の液晶組成物を用いることにより、表示品位に優れた液晶表示素子を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の誘電率異方性が負である液晶組成物(以下、本発明の液晶組成物)は、第一成分として下記一般式(I)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種類の化合物を含有し、第二成分として下記一般式(II)で表される化合物で表される化合物から選ばれる少なくとも1種類の化合物を含有し、かつ、一般式(III)で表される化合物を含有していないことを特徴とする。
以下、まず成分ごとに説明する。
【0012】
<一般式(I)で表される化合物>
本発明の液晶組成物は、下記一般式(I)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種類の化合物を含有する。本発明の液晶組成物は、一般式(I)で表される化合物を1種類のみ含有していてもよいが、2種類以上を含有していることが好ましい。
【0013】
【化6】

【0014】
一般式(I)中、R11及びR12は互いに独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表す。本発明においては、R11及びR12は互いに独立して、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアルケニル基又は炭素原子数2〜5のアルケニルオキシ基が好ましく、互いに独立して炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数1〜5のアルコキシ基がより好ましい。また、R11及びR12は、それぞれ分岐鎖状の基であってもよく、直鎖状の基であってもよいが、直鎖状の基であることが好ましい。
【0015】
一般式(I)中、a11は0又は1を表す。本発明の液晶組成物においては、応答速度をより速めることを重視する場合には、a11は0が好ましい。一方で、Tniをより高めることを重視する場合には、a11は1が好ましい。また、Δnを大きくすることを重視する場合にも、a11は1が好ましい。
【0016】
一般式(I)中、A11及びA12は互いに独立して、下記の4種の6員環を有する2価の基のいずれかを表す。なお、以下、これらの4種の6員環を有する2価の基をまとめて「2価の環状炭化水素基群A」ということがある。A11が1,4−フェニレン基である場合、ベンゼン環上に存在する1個又は2個以上の水素原子はハロゲンで置換されていてもよい。A12が1,4−フェニレン基である場合、ベンゼン環上に存在する1個又は2個以上の水素原子はハロゲンで置換されていてもよい。本発明の液晶組成物においては、A11及びA12は互いに独立して、1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基が好ましく、1,4−フェニレン基は1個又は2個以上のフッ素原子により置換されていてもよい。本発明の液晶組成物においては、粘性をより低下させることを重視する場合には、一般式(I)中、a11が1であり、かつA11が1,4−シクロヘキシレン基であることがより好ましい。また、屈折率異方性(Δn)をより大きくすることを重視する場合には、A12は1,4−フェニレン基がより好ましい。
【0017】
【化7】

【0018】
一般式(I)で表される化合物としては、R11及びR12が互いに独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基であり、a11が0であり、A12が無置換の1,4−フェニレン基、1個又は2個以上のフッ素原子が置換されている1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基である化合物、R11及びR12が互いに独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基であり、a11が1であり、A11及びA12が互いに独立してA12が無置換の1,4−フェニレン基、1個又は2個以上のフッ素原子が置換されている1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基である化合物であることが好ましい。中でも、R11及びR12が互いに独立して炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基であり、a11が0であり、A12が無置換の1,4−フェニレン基、1個又は2個以上のフッ素原子が置換されている1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基である化合物、R11及びR12が互いに独立して炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基であり、a11が1であり、A11及びA12が互いに独立してA12が無置換の1,4−フェニレン基、1個又は2個以上のフッ素原子が置換されている1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基である化合物であることがより好ましい。
【0019】
一般式(I)で表される化合物は、より具体的には、下記の一般式(I−1)〜(I−3)で表される化合物が好ましい。一般式(I−1)〜(I−3)中、R11は一般式(I)におけるR11と同じ意味を表し、R12は一般式(I)におけるR12と同じ意味を表す。本発明の液晶組成物は、第一成分として、一般式(I−1)〜(I−3)で表される化合物を少なくとも1種類含有していることが好ましく、一般式(I−1)〜(I−3)で表される化合物を1種類又は2種類以上含有していることがより好ましい。
【0020】
【化8】

【0021】
一般式(I−1)〜(I−3)で表される化合物としては、R11及びR12が互いに独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基である化合物が好ましい。中でも、R11が炭素原子数1〜8のアルキル基であり、R12が炭素原子数1〜8のアルコキシ基である化合物がより好ましい。
【0022】
本発明の液晶組成物中の第一成分の含有量(すなわち、一般式(I)で表される1種類又は2種類以上の化合物の総含有量)は、2質量%以上であることが好ましく、2〜50質量%がより好ましく、2〜40質量%がさらに好ましく、5〜30質量%がよりさらに好ましい。
【0023】
<一般式(II)で表される化合物>
本発明の液晶組成物は、下記一般式(II)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種類の化合物を含有する。本発明の液晶組成物は、一般式(II)で表される化合物を1種類のみ含有していてもよいが、2種類以上を含有していることが好ましい。
【0024】
【化9】

【0025】
一般式(II)中、R21及びR22は互いに独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表す。本発明においては、R21及びR22は互いに独立して、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアルケニル基又は炭素原子数2〜5のアルケニルオキシ基が好ましく、互いに独立して炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数1〜5のアルコキシ基がより好ましい。また、R21及びR22は、それぞれ分岐鎖状の基であってもよく、直鎖状の基であってもよいが、直鎖状の基であることが好ましい。
【0026】
一般式(II)中、Z21は単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−又は−CHCH−を表す。本発明においては、Z21は単結合、−CHO−、−OCH−又は−CHCH−が好ましく、単結合がより好ましい。
【0027】
一般式(II)中、A21は前記2価の環状炭化水素基群A中のいずれかの基を表す。A21が1,4−フェニレン基である場合、ベンゼン環上に存在する1個又は2個以上の水素原子はハロゲンで置換されていてもよい。本発明においては、A21は無置換の1,4−フェニレン基、1個又は2個以上のフッ素原子が置換されている1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基が好ましく、無置換の1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基がより好ましい。本発明の液晶組成物において、粘性をより低下させることを重視する場合には、一般式(II)中、A21は1,4−シクロヘキシレン基がより好ましい。
【0028】
一般式(II)で表される化合物としては、R21及びR22が互いに独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基であり、Z21が単結合、−CHO−、−OCH−又は−CHCH−であり、A21が無置換の1,4−フェニレン基、1個又は2個以上のフッ素原子が置換されている1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基である化合物が好ましく、R21及びR22が互いに独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基であり、Z21が単結合であり、A21が無置換の1,4−フェニレン基、1個又は2個以上のフッ素原子が置換されている1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基である化合物がより好ましい。
【0029】
一般式(II)で表される化合物は、より具体的には、下記の一般式(II−1)〜(II−2)で表される化合物が好ましい。一般式(II−1)〜(II−2)中、R21は一般式(II)におけるR21と同じ意味を表し、R22は一般式(II)におけるR22と同じ意味を表す。本発明の液晶組成物は、第二成分として、一般式(II−1)〜(II−2)で表される化合物を少なくとも1種類含有していることが好ましく、一般式(II−1)〜(II−2)で表される化合物を1種類又は2種類以上含有していることがより好ましく、一般式(II−1)で表される化合物を1種類又は2種類以上含有していることがさらに好ましい。
【0030】
【化10】

【0031】
一般式(II−1)〜(II−2)で表される化合物としては、R21及びR22が互いに独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基である化合物が好ましい。中でも、R21が炭素原子数1〜8のアルキル基であり、R22が炭素原子数1〜8のアルコキシ基である化合物がより好ましい。
【0032】
本発明の液晶組成物中の第二成分の含有量(すなわち、一般式(II)で表される1種類又は2種類以上の化合物の総含有量)は、5質量%以上であることが好ましく、5〜70質量%がより好ましく、5〜40質量%がさらに好ましく、10〜30質量%がよりさらに好ましい。
【0033】
本発明の液晶組成物中の第一成分の含有量及び第二成分の含有量の総量は、10質量%以上であることが好ましく、10〜80質量%であることがより好ましく、20〜60質量%であることがさらに好ましく、20〜40質量%であることがよりさらに好ましい。
【0034】
<一般式(III)で表される化合物>
本発明の液晶組成物は、下記一般式(III)で表される化合物を含有していない。本発明の液晶組成物は、一般式(I)で表される化合物及び一般式(II)で表される化合物を組み合わせて含有していることにより、より高い液晶組成物が得られるという効果を奏するが、さらに一般式(III)で表される化合物を含有させることにより、Tniが低下する傾向がある。
【0035】
【化11】

【0036】
一般式(III)中、R31及びR32は互いに独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基を表す。
【0037】
<一般式(III’)で表される化合物>
本発明の液晶組成物は、下記一般式(III’)で表される化合物を含有していないことが好ましい。但し、一般式(III’)で表される化合物には、上記一般式(III)で表される化合物は含まれていない。
【0038】
【化12】

【0039】
一般式(III’)中、R31’及びR32’は互いに独立して、水素原子、炭素原子数1〜18のアルキル基、又は炭素原子数2〜18のアルケニル基を表す。R31’又はR32’ がアルキル基又はアルケニル基である場合、当該基中に存在する1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−は、−O−、−S−及び−C≡C−からなる群から選択される基により置き換えられていてもよい。
【0040】
<一般式(IV)で表される化合物>
本発明の液晶組成物は、一般式(I)で表される化合物及び一般式(II)で表される化合物に加えて、さらに下記一般式(IV)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種類の化合物を含有していてもよい。一般式(IV)で表される化合物をさらに含有することにより、本発明の液晶組成物を、粘度を過剰に高くすることなく、Tniをより高め、かつΔεの絶対値及びΔnをいずれも大きくすることができる。
【0041】
【化13】

【0042】
一般式(IV)中、R41及びR42は互いに独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表す。本発明においては、R41及びR42は互いに独立して、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアルケニル基又は炭素原子数2〜5のアルケニルオキシ基が好ましく、互いに独立して炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数1〜5のアルコキシ基がより好ましい。また、R41及びR42は、それぞれ分岐鎖状の基であってもよく、直鎖状の基であってもよいが、直鎖状の基であることが好ましい。
【0043】
一般式(IV)中、A41は前記2価の環状炭化水素基群A中のいずれかの基を表す。A41が1,4−フェニレン基である場合、ベンゼン環上に存在する1個又は2個以上の水素原子はハロゲンで置換されていてもよい。本発明においては、A41は無置換の1,4−フェニレン基、1個又は2個以上のフッ素原子が置換されている1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基が好ましい。本発明の液晶組成物において、粘性をより低下させることを重視する場合には、一般式(IV)中、A41は1,4−シクロヘキシレン基がより好ましい。
【0044】
一般式(IV)で表される化合物は、より具体的には、下記の一般式(IV−1)〜(IV−3)で表される化合物が好ましい。一般式(IV−1)〜(IV−3)中、R41は一般式(IV)におけるR41と同じ意味を表し、R42は一般式(IV)におけるR42と同じ意味を表す。一般式(IV)で表される化合物を含有する場合には、本発明の液晶組成物は、一般式(IV−1)〜(IV−3)で表される化合物を少なくとも1種類含有していることが好ましく、一般式(IV−1)〜(IV−3)で表される化合物を1種類又は2種類以上含有していることがより好ましく、一般式(IV−1)で表される化合物を1種類又は2種類以上含有していることがさらに好ましい。
【0045】
【化14】

【0046】
一般式(IV−1)〜(IV−3)で表される化合物としては、R41及びR42が互いに独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基である化合物が好ましい。中でも、R41が炭素原子数1〜8のアルキル基であり、R42が炭素原子数1〜8のアルコキシ基である化合物がより好ましい。
【0047】
一般式(IV)で表される化合物を含有している場合、本発明の液晶組成物中の一般式(IV)で表される化合物の含有量は、3〜40質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。
【0048】
<一般式(V)で表される化合物>
本発明の液晶組成物は、一般式(I)で表される化合物及び一般式(II)で表される化合物に加えて、さらに下記一般式(V)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種類の化合物を含有していてもよい。
【0049】
【化15】

【0050】
一般式(V)中、R51及びR52は互いに独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表す。本発明においては、R51及びR52は互いに独立して、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアルケニル基又は炭素原子数2〜5のアルケニルオキシ基が好ましく、互いに独立して炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数1〜5のアルコキシ基がより好ましい。また、R51及びR52は、それぞれ分岐鎖状の基であってもよく、直鎖状の基であってもよいが、直鎖状の基であることが好ましい。
【0051】
一般式(V)中、Z51は単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−又は−CHCH−を表す。本発明においては、Z51は単結合、−CHO−、−OCH−又は−CHCH−が好ましく、単結合がより好ましい。
【0052】
一般式(V)中、Z52は−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−又は−CHCH−を表す。本発明においては、Z52は−CHO−、−OCH−又は−CHCH−が好ましく、−CHO−、−OCH−又は−CHCH−がより好ましい。
【0053】
一般式(V)中、A51及びA52は互いに独立して前記2価の環状炭化水素基群A中のいずれかの基を表す。A51が1,4−フェニレン基である場合、ベンゼン環上に存在する1個又は2個以上の水素原子はハロゲンで置換されていてもよい。A52が1,4−フェニレン基である場合、ベンゼン環上に存在する1個又は2個以上の水素原子はハロゲンで置換されていてもよい。本発明の液晶組成物においては、A51及びA52は互いに独立して、1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基が好ましく、1,4−フェニレン基は1個又は2個以上のフッ素原子により置換されていてもよい。
【0054】
一般式(V)で表される化合物としては、R51及びR52が互いに独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基であり、Z51が単結合、−CHO−、−OCH−又は−CHCH−であり、Z52が−CHO−、−OCH−又は−CHCH−であり、A51及びA52が互いに独立して無置換の1,4−フェニレン基、1個又は2個以上のフッ素原子が置換されている1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基である化合物が好ましい。より具体的には、下記の一般式(V−1)〜(V−8)で表される化合物が好ましい。一般式(V−1)〜(V−8)中、R51は一般式(V)におけるR51と同じ意味を表し、R52は一般式(V)におけるR52と同じ意味を表す。一般式(V)で表される化合物を含有する場合には、本発明の液晶組成物は、一般式(V−1)〜(V−8)で表される化合物を少なくとも1種類含有していることが好ましく、一般式(V−1)又は(V−2)で表される化合物を少なくとも1種類含有していることがより好ましい。
【0055】
【化16】

【0056】
一般式(V−1)〜(V−8)で表される化合物としては、R51及びR52が互いに独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基である化合物が好ましい。中でも、R51が炭素原子数1〜8のアルキル基であり、R52が炭素原子数1〜8のアルコキシ基である化合物がより好ましい。
【0057】
一般式(V)で表される化合物を含有している場合、本発明の液晶組成物中の一般式(V)で表される化合物の含有量は、5質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。
【0058】
<一般式(VI)で表される化合物>
本発明の液晶組成物は、一般式(I)で表される化合物及び一般式(II)で表される化合物に加えて、さらに下記一般式(VI)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種類の化合物を含有していてもよい。一般式(VI)で表される化合物は、Δεがゼロ付近の化合物である。また、当該化合物は分子内に電子吸引性基を有していても良いが、2個以下が好ましく、1個以下がより好ましく、全く含まないものが更に好ましい。
【0059】
【化17】

【0060】
一般式(VI)中、R61及びR62は互いに独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表す。本発明においては、R61及びR62は互いに独立して、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアルケニル基又は炭素原子数2〜5のアルケニルオキシ基が好ましい。また、R61及びR62は、それぞれ分岐鎖状の基であってもよく、直鎖状の基であってもよいが、直鎖状の基であることが好ましい。
【0061】
一般式(VI)で表される化合物を含有する場合、本発明の液晶組成物中に含まれている少なくとも1種類の一般式(VI)で表される化合物において、R61及びR62のうちの少なくとも一方は、アルケニル基又はアルケニルオキシ基であることが好ましい。
【0062】
一般式(VI)中、A61、A62及びA63は互いに独立して下記の17種の環状構造を有する2価の基のいずれかを表す。なお、以下、これら17種の環状構造を有する2価の基をまとめて「2価の環構造含有基群A’」ということがある。本発明においては、A61、A62及びA63は互いに独立して、2価の環構造含有基群A’中の無置換の1,4−フェニレン基、1個又は2個以上のフッ素原子が置換されている1,4−フェニレン基、1個のメチル基が置換されている1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基が好ましく、無置換の1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基がより好ましい。
【0063】
【化18】

【0064】
一般式(VI)中、Z61及びZ62は互いに独立して、単結合、−CHCH−、−C≡C−、−C=N−N=C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CFO−、−OCF−、−COO−又は−OCO−を表す。本発明においては、Z61及びZ62は互いに独立して、単結合、−CHCH−、−C≡C−、−COO−又は−OCO−が好ましく、単結合又は−C≡C−がより好ましい。
【0065】
一般式(VI)中、a61は0、1又は2を表す。本発明においては、a61は0又は1が好ましい。a61が2であり、A62が複数存在する場合は、それらは同一でもよく異なっていてもよい。同様に、Z62が複数存在する場合は、それらは同一でもよく異なっていてもよい。
【0066】
一般式(VI)で表される化合物としては、R61及びR62は互いに独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基であり、A61、A62及びA63が互いに独立して2価の環構造含有基群A’中の無置換の1,4−フェニレン基、1個又は2個以上のフッ素原子が置換されている1,4−フェニレン基、1個のメチル基が置換されている1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基であり、Z61及びZ62が互いに独立して単結合又は−C≡C−であり、a61が0又は1である化合物が好ましい。より具体的には、下記の一般式(VI−1)〜(VI−14)で表される化合物が好ましい。一般式(VI−1)〜(VI−14)中、R61は一般式(VI)におけるR61と同じ意味を表し、R62は一般式(VI)におけるR62と同じ意味を表す。
【0067】
【化19】

【0068】
一般式(VI)で表される化合物を含有する場合には、本発明の液晶組成物は、一般式(VI)で表される化合物を1〜10種類含有することが好ましく、2〜8種類含有することがより好ましい。また、一般式(VI−1)〜(VI−14)で表される化合物を少なくとも1種類含有していることが好ましい。本発明の液晶組成物中の一般式(VI)で表される化合物の含有量は、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。また、該化合物の含有量は、80質量%以下が好ましく、70質量%以下が更に好ましく、60質量%以下が更に好ましい。
【0069】
<一般式(VII)で表される化合物>
本発明の液晶組成物は、一般式(I)で表される化合物及び一般式(II)で表される化合物に加えて、さらに下記一般式(VII)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種類の化合物を含有していてもよい。一般式(VII)で表される化合物は、Δεが負の化合物である。
【0070】
【化20】

【0071】
一般式(VII)中、R71及びR72は互いに独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表す。本発明においては、R71及びR72は互いに独立して、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアルケニル基又は炭素原子数2〜5のアルケニルオキシ基が好ましい。また、R71及びR72は、それぞれ分岐鎖状の基であってもよく、直鎖状の基であってもよいが、直鎖状の基であることが好ましい。
【0072】
一般式(VII)で表される化合物を含有する場合、本発明の液晶組成物中に含まれている少なくとも1種類の一般式(VII)で表される化合物において、R71及びR72のうちの少なくとも一方は、アルケニル基又はアルケニルオキシ基であることが好ましい。
【0073】
一般式(VII)中、A71及びA72は互いに独立して前記2価の環状炭化水素基群A中のいずれかの基を表す。本発明の液晶組成物においては、A71及びA72は互いに独立して、1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基が好ましい。
【0074】
一般式(VII)中、Z71及びZ72は互いに独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−COO−又は−OCO−を表す。本発明においては、Z71及びZ72は互いに独立して、単結合、−CHCH−、−CHO−又は−OCH−が好ましい。
【0075】
一般式(VII)中、a71は0又は1を表す。
但し、一般式(VII)で表される化合物には、一般式(III)で表される化合物は含まれない。すなわち、Z71が単結合であり、かつa71が0の場合、A71は1,4−シクロへキシレン基ではない。
【0076】
一般式(VII)で表される化合物としては、R71及びR72が互いに独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基であり、a71が0又は1であり、Z71及びZ72が互いに独立して単結合、−CHCH−、−CHO−又は−OCH−であり、A71及びA72が互いに独立して1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基である化合物が好ましい。より具体的には、下記の一般式(VII−1)〜(VII−17)で表される化合物が好ましい。一般式(VII−1)〜(VII−17)中、R71は一般式(VII)におけるR71と同じ意味を表し、R72は一般式(VII)におけるR72と同じ意味を表す。
【0077】
【化21】

【0078】
【化22】

【0079】
一般式(VII−1)〜(VII−17)で表される化合物としては、R71及びR72のうちの少なくとも一方が、アルケニル基又はアルケニルオキシ基である化合物が好ましい。
一般式(IV)で表される化合物を含有する場合には、本発明の液晶組成物は、一般式(VII−1)〜(VII−5)で表される化合物を少なくとも1種類含有していることが好ましい。
また、一般式(VII)で表される化合物を含有している場合、本発明の液晶組成物中の一般式(VII)で表される化合物の含有量は、5質量%以上であることが好ましい。
【0080】
本発明の液晶組成物は、本願発明の効果が損われない限度において、上述の化合物以外に、通常のネマティック液晶、スメクチック液晶、コレステリック液晶、酸化防止剤、紫外線吸収剤、重合性モノマー等を含有することができる。但し、本発明の液晶組成物は、−O−O−、−O−S−及び−S−S−等のヘテロ原子同士が直接結合する部分構造を有する液晶化合物は含有しないことが好ましい。
【0081】
本発明の液晶組成物が含有し得る重合性モノマーは、光重合性モノマーが好ましい。光重合性モノマーを含有している場合、本発明の液晶組成物の光重合性モノマーの含有量は、500〜5000ppmが好ましい。該光重合性モノマーとしては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の重合性不飽和二重結合を有するモノマー等が挙げられる。
【0082】
本発明の液晶組成物をアクティブマトリックス駆動液晶表示素子に用いる場合は、本発明の液晶組成物のTniは60〜120℃であることが好ましく、下限値としては65℃がより好ましく、70℃が特に好ましい。上限値としては90℃がより好ましく、80℃が特に好ましい。25℃におけるΔεが−2.0〜−6.0であることが好ましく、−2.5〜−5.0であることがより好ましく、−2.5〜−3.5であることが特に好ましい。25℃におけるΔnは、0.08〜0.13であることが好ましく、0.09〜0.12であることがより好ましい。更に詳述すると、25℃におけるΔnは、薄いセルギャップに対応する場合は0.10〜0.12であることが好ましく、厚いセルギャップに対応する場合は0.08〜0.10であることが好ましい。20℃における粘度(η)は、10〜30mPa・sであることが好ましく、10〜25mPa・sであることがより好ましく、10〜20mPa・sであることが特に好ましい。
【0083】
本発明の液晶組成物をパッシブマトリクス駆動液晶表示素子に用いる場合は、本発明の液晶組成物のTniは、民生用途では60〜120℃であることが好ましく、下限値としては65℃がより好ましく、70℃が特に好ましい。上限値としては90℃がより好ましく、80℃が特に好ましい。車載用途などでは、下限値としては90℃がより好ましく、100℃が特に好ましい。上限値としては115℃がより好ましく、105℃が特に好ましい。25℃におけるΔnは、低duty駆動用では0.08〜0.13であることが好ましく、0.08〜0.11であることが特に好ましい。また、高duty駆動用では0.13〜0.20であることが好ましく、0.15〜0.18であることが特に好ましい。25℃におけるΔεは、低duty駆動では−2.0〜−7.0であることが好ましく、−2.5〜−5.5であることが特に好ましい。20℃におけるηは、10〜40 mPa・sであることが好ましく、10〜30 mPa・sであることがより好ましく、10〜25 mPa・sであることが特に好ましい。
【0084】
本発明の液晶組成物のTni、Δε、及びΔnは、それぞれ、第一成分及び第二成分をはじめとする各種化合物の組成比を調整することにより、該液晶組成物の使用用途等に適した範囲に適宜調整することができる。本発明の液晶組成物としては、Tniが70℃〜120℃であり、25℃、589nmにおけるΔεが−1.5〜−8.0であり、25℃、1kHzにおけるΔnが0.080〜0.250であることが好ましい。Tni、Δε、及びΔnがこれらの範囲内にあることにより、様々な用途に好適に用いることができる。
【0085】
また、本発明の液晶組成物を用いることにより、垂直配向能を有する液晶表示素子を製造することができる。例えば、本発明の液晶組成物を用いることにより、プレチルト角が80°ないし90°である液晶表示素子を製造することができる。
【実施例】
【0086】
以下、実施例等を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。
【0087】
実施例中の用語を以下に説明する。
ni : ネマティック−アイソトロピック転移温度[℃]
Δn : 屈折率異方性(589nm, 25℃)
Δε : 誘電率異方性(1kHz, 25℃)
η : バルクフロー粘度[mPa・s](20℃)
応答速度 : 液晶組成物をギャップ3.5μm、プレチルト角89°の垂直配向セルに注入し、5V、100Hz矩形波にて測定
【0088】
実施例中の化合物記載に下記略号を使用する。
側鎖略号を以下に示す。
-n(数字) : -CnH2n+1(アルキル側鎖は数字、代表するときはRとする。)
-On : -OCnH2n+1
-ndm : -(CnH2n+1-C=C-(CH2)m-1)
ndm- : CnH2n+1-C=C-(CH2)m-1-
-nOm : -(CH2)nOCmH2m+1
nOm- : CnH2n+1O(CH2)m-
-Od(m)n:-O(CnH2n+1-C=C-(CH2)m-2)
d(m)nO- : CnH2n+1-C=C-(CH2)m-2O-
【0089】
連結基略号を以下に示す。
-T- : -C≡C-
-2- : -CH2CH2-
-1O- : -CH2-O-
-O1- : -O-CH2-
環略号を以下に示す。
【0090】
【化23】

【0091】
(実施例1、2及び比較例1)
表1に記載の組成からなる液晶組成物を製造し、該液晶組成物のTni、Δε、Δn及びηを測定した。測定結果を表1に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
実施例1の液晶化合物は、Δnの値を変化させることなく、比較例1の液晶化合物中の一般式(IV)で表される化合物を一般式(I)で表される化合物に置き換えたものである。この結果、実施例1の液晶化合物のΔεの絶対値は、比較例1の液晶化合物の1.2倍以上であり、明らかに大きくなっていた。また、実施例1の液晶化合物のTniとηは、比較例1の液晶化合物とほぼ同程度であり、その増大幅は比較例1の液晶組成物の5%程度であり、ほぼ同等であると言えた。
実施例2の液晶化合物は、Δn及びΔεの絶対値を同程度に維持しつつ、比較例1の液晶化合物中の一般式(IV)で表される化合物を一般式(I)で表される化合物に置き換えたものである。この結果、実施例2の液晶化合物のTniは比較例1とほぼ同等であったが、ηは比較例1の液晶化合物の0.8倍程度であり、大幅に低下していた。
これらの結果から、液晶組成物に、一般式(I)で表される化合物及び一般式(II)で表される化合物を含有させ、かつ一般式(III)で表される化合物を含有させないことにより、Δεの絶対値、Δn、Tni、及びηのうちの少なくとも1つを、残る3つを悪化させることなく(例えば、−15%以下にまで悪化させることなく)、改善できることが明らかである。
【0094】
特に実施例1は、比較例1の液晶組成物中の一般式(IV)で表される化合物のうち、一般式(I)中の2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン基が1,4−フェニレン基に置換された無極性化合物の代わりに、一般式(I)で表される化合物を含有させた液晶組成物である。よってこの結果から、無極性の化合物に代えて一般式(I)で表される化合物を含有させることにより、Δnを維持しつつ、Δεの絶対値が大きな液晶組成物が得られることがわかった。
【0095】
(実施例3及び比較例2)
表2に記載の組成からなる液晶組成物を製造し、該液晶組成物のTni、Δε、Δn及びηを測定した。測定結果を表2に示す。
【0096】
【表2】

【0097】
比較例2は、実施例3の液晶組成物中の一般式(II)で表される化合物の含有量を低下させ、一般式(III)で表される化合物を含有させた液晶組成物である。比較例2の液晶組成物のTniは、実施例3の85%以下でしかなく、実施例3の液晶組成物に比べて非常に低かった。この結果から、式(I)で表される化合物及び一般式(II)で表される化合物を含有する液晶組成物に、さらに一般式(III)で表される化合物を含有させると、Tniが低下してしまうことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の液晶組成物は、液晶表示素子に有用であり、アクティブマトリクス駆動用液晶表示素子及びパッシブマトリクス駆動用液晶表示素子に有用であり、特にパッシブマトリクス駆動用液晶表示素子に有用である。またVAモード、PSVAモード、IPSモード又はECBモード用液晶表示素子に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一成分として一般式(I)で表される化合物
【化1】

(式中、R11及びR12は互いに独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表し、a11は0又は1を表し、A11及びA12は互いに独立して
【化2】

のいずれかを表す。A11が1,4−フェニレン基である場合、ベンゼン環上に存在する1個又は2個以上の水素原子はハロゲンで置換されていてもよい。A12が1,4−フェニレン基である場合、ベンゼン環上に存在する1個又は2個以上の水素原子はハロゲンで置換されていてもよい。)から選ばれる少なくとも1種類の化合物を含有し、
第二成分として一般式(II)で表される化合物
【化3】

(式中、R21及びR22は互いに独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表し、Z21は単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−又は−CHCH−を表し、A21
【化4】

のいずれかを表す。A21が1,4−フェニレン基である場合、ベンゼン環上に存在する1個又は2個以上の水素原子はハロゲンで置換されていてもよい。)から選ばれる少なくとも1種類の化合物を含有し、
かつ、一般式(III)で表される化合物
【化5】

(式中、R31及びR32は互いに独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基を表す。)を含有していないことを特徴とする、誘電率異方性が負である液晶組成物。
【請求項2】
さらに、一般式(IV)で表される化合物
【化6】

(式中、R41及びR42は互いに独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表し、A41
【化7】

のいずれかを表す。A41が1,4−フェニレン基である場合、ベンゼン環上に存在する1個又は2個以上の水素原子はハロゲンで置換されていてもよい。)から選ばれる少なくとも1種類の化合物を含有する請求項1に記載の誘電率異方性が負である液晶組成物。
【請求項3】
さらに、一般式(V)で表される化合物
【化8】

(式中、R51及びR52は互いに独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表し、Z51は単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−又は−CHCH−を表し、Z52は−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−又は−CHCH−を表し、A51及びA52は互いに独立して
【化9】

のいずれかを表す。A51が1,4−フェニレン基である場合、ベンゼン環上に存在する1個又は2個以上の水素原子はハロゲンで置換されていてもよい。A52が1,4−フェニレン基である場合、ベンゼン環上に存在する1個又は2個以上の水素原子はハロゲンで置換されていてもよい。)から選ばれる少なくとも1種類の化合物を含有する請求項1又は2に記載の誘電率異方性が負である液晶組成物。
【請求項4】
さらに、一般式(VI)で表される化合物
【化10】

(式中、R61及びR62は互いに独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表し、A61、A62及びA63は互いに独立して
【化11】

のいずれかを表し、Z61及びZ62は互いに独立して、単結合、−CHCH−、−C≡C−、−C=N−N=C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CFO−、−OCF−、−COO−又は−OCO−を表し、a61は0、1又は2を表し、A62が複数存在する場合は、それらは同一でもよく異なっていてもよく、Z62が複数存在する場合は、それらは同一でもよく異なっていてもよい。)から選ばれる少なくとも1種類の化合物を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の誘電率異方性が負である液晶組成物。
【請求項5】
前記第一成分の含有量が2質量%から80質量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の誘電率異方性が負である液晶組成物。
【請求項6】
前記第一成分として、前記一般式(I)で表される化合物から選ばれる2種類以上の化合物を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の誘電率異方性が負である液晶組成物。
【請求項7】
前記第二成分として、前記一般式(II)で表される化合物から選ばれる2種類以上の化合物を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の誘電率異方性が負である液晶組成物。
【請求項8】
前記第一成分及び第二成分の総量が10質量%から80質量%である請求項1〜7のいずれか1項に記載の誘電率異方性が負である液晶組成物。
【請求項9】
さらに、一般式(VII)で表される化合物
【化12】

(式中、R71及びR72は互いに独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表し、A71及びA72は互いに独立して
【化13】

のいずれかを表し、Z71及びZ72は互いに独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−COO−又は−OCO−を表し、a71は0又は1を表す。但し、Z71が単結合であり、かつa71が0の場合、A71は1,4−シクロへキシレン基ではない。)から選ばれる少なくとも1種類の化合物を含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の誘電率異方性が負である液晶組成物。
【請求項10】
ネマティック−アイソトロピック転移温度が70℃〜120℃、25℃、589nmにおける誘電率異方性が−1.5〜−8.0、25℃、1kHzにおける複屈折率が0.080〜0.250である請求項1〜9のいずれか1項に記載の誘電率異方性が負である液晶組成物。
【請求項11】
光重合性モノマーを500〜5000ppm含有する1〜10のいずれか1項に記載の誘電率異方性が負である液晶組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の誘電率異方性が負である液晶組成物を用いたことを特徴とする液晶表示素子。
【請求項13】
プレチルト角が80°ないし90°である請求項12に記載の液晶表示素子。
【請求項14】
アクティブマトリクス駆動型である請求項12又は13に記載の液晶表示素子。
【請求項15】
パッシブマトリクス駆動型である請求項12又は13に記載の液晶表示素子。

【公開番号】特開2013−6975(P2013−6975A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141113(P2011−141113)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】