説明

読取装置及び画像形成装置

【課題】正反射光の正確な読み取りが透明部材により阻害されるのを抑制する。
【解決手段】本発明に係る読取装置は、原稿Dからの拡散反射光を読み取るための光源131と、原稿Dからの正反射光を読み取るための光源133とを備える。光源131は、原稿Dの法線方向に対して45°の入射角度で光を照射し、光源133は、原稿Dの法線方向に対して5°の入射角度で光を照射する。ミラー134は、原稿Dからの反射光のうち法線方向に対して0°で反射するものを図示せぬセンサに導く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラテンガラス等の透明部材に置かれた原稿からの正反射光(鏡面反射光)を読み取るための光源と、当該原稿からの拡散反射光を読み取るための光源とを備える読取装置が知られている。特許文献1には、入射角と反射角が対称になるように構成された光源からの正反射光を読み取る読取装置が記載されている。
【特許文献1】特開2004−274299号公報(段落0021等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、正反射光の正確な読み取りが透明部材により阻害されるのを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の請求項1に係る読取装置は、原稿を支持する透明の板状部材と、前記板状部材に支持された原稿からの拡散反射光を読み取るために前記板状部材側から光を照射する第1の照射手段と、前記第1の照射手段により照射された光の拡散反射光を決められた位置に導く導光手段と、前記決められた位置において受ける光に応じた信号を生成する生成手段と、前記板状部材に支持された原稿からの正反射光成分の一部を読み取るために前記板状部材側から光を照射する第2の照射手段であって、当該正反射光成分の一部が前記導光手段により導かれ、前記決められた位置において前記生成手段により信号が生成されるように光を照射する第2の照射手段とを備え、前記第2の照射手段により照射される光の前記原稿への入射角度が、前記導光手段に導かれる正反射光の主光線の反射角度に対して0度でない傾きを有する構成を有する。
【0005】
本発明の請求項2に係る読取装置は、請求項1に記載の構成において、前記第2の照射手段が、光を照射する光源と、前記光源により照射された光を前記入射角度で前記原稿に向かうように反射させる反射部材とを備える。
本発明の請求項3に係る読取装置は、請求項1又は2に記載の構成において、前記第2の照射手段により照射される光のうちの前記入射角度と異なる角度で前記原稿に入射する光の入射を制限する制限手段を備える。
【0006】
本発明の請求項4に係る画像形成装置は、請求項1ないし3のいずれかに記載の読取装置と、前記生成手段により生成された信号に応じた画像を形成する画像形成手段とを備える構成を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1又は4に記載の構成によれば、本構成を有しない場合に比べ、原稿の正反射光成分の正確な読み取りが透明部材の界面反射により阻害されるのを抑制することができる。
本発明の請求項2に記載の構成によれば、第2の照射手段の光源の構造によらずに入射角度を設定することができる。
本発明の請求項3に記載の構成によれば、本構成を有さない場合に比べて、前記入射角度よりも前記反射角度に近い角度の光が原稿に照射されるのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[実施形態]
図1は、本発明の一実施形態である読取装置の構成を示す図である。読取装置100は、原稿Dを光学的に読み取り、その読取結果を表す画像信号を生成するものである。読取装置100が生成する画像信号には、拡散反射光に基づく画像情報と正反射光に基づく光沢情報とが含まれる。読取装置100は、プラテンガラス110と、プラテンカバー120と、キャリッジ130及び140と、結像レンズ150と、センサ160と、出力部170とを備える。
【0009】
なお、読取装置100は、図示する各部の構成を紙面に垂直な方向について決められた幅で有する。この方向は、読取装置100の主走査方向である。一方、図中の矢印Aが示す方向は、読取装置100の副走査方向である。
【0010】
プラテンガラス110は、読取対象である原稿Dを支持する透明のガラス板である。プラテンガラス110は、本発明における板状部材の一例である。なお、本発明における板状部材は、ガラス板に限らず、例えばアクリル板などであってもよい。プラテンカバー120は、外光を遮断するようにプラテンガラス110を覆い、原稿Dを挟み込む。つまり、原稿Dは、プラテンガラス110とプラテンカバー120とによって動かないように支持される。
【0011】
キャリッジ130は、原稿Dを読み取るときに、決められた速度で副走査方向に移動するように構成されている。キャリッジ130は、光源131と、反射板132と、光源133と、ミラー134とを内部に備える。光源131は、原稿Dからの拡散反射光を読み取るための光を照射する。光源131は、本発明における第1の照射手段の一例である。反射板132は、光源131により照射された光の一部を原稿Dに反射させる。光源133は、原稿Dからの正反射光成分の一部を読み取るための光を照射する。光源133は、本発明における第2の照射手段の一例である。ミラー134は、原稿Dからの拡散反射光及び正反射光成分の一部をキャリッジ140に反射させる部材である。
【0012】
キャリッジ140は、原稿Dを読み取るときに、キャリッジ130の移動速度の半分の速度で副走査方向に移動するように構成されている。キャリッジ140は、ミラー141及び142を内部に備える。ミラー141及び142は、ミラー134は、原稿Dからの拡散反射光及び正反射光成分の一部を反射させ、センサ160がある決められた位置に導く。ミラー134、141及び142は、原稿Dからの拡散反射光及び正反射光成分の一部の経路を変更させる手段であり、本発明における導光手段の一例である。
【0013】
結像レンズ150は、ミラー142からの拡散反射光及び正反射光成分の一部を決められた位置に結像させる。センサ160は、結像レンズ150により決められた位置に結像された拡散反射光及び正反射光成分の一部を受け、受けた光に応じた画像信号を生成する。センサ160は、CCD(Charge Coupled Device)等の受光素子を備え、受光した光をその強弱を表す信号に変換する。センサ160は、本発明における生成手段の一例である。なお、センサ160は、カラーフィルタ等を備え、原稿Dの色を表す画像信号を生成してもよい。出力部170は、画像信号に周知の信号処理(例えば、シェーディング補正)を実行し、これを外部装置に出力する。
【0014】
図2は、キャリッジ130の構成を詳細に示す図である。同図において、反射光の主光線LRは、原稿D(及びプラテンガラス110)の法線方向に一致するようになされている。ここにおいて、主光線とは、照射ないし反射した光線束のうちの主たるもの(典型的には、中心)をいう。ミラー134は、この反射光の進行方向を90°変えるように(すなわち、ミラー134の法線方向に対して45°で入射するように)設けられている。光源131からの光の主光線L1は、原稿Dの法線方向に対して45°の角度をなすようになされている。以下においては、この状態のことを、光源131が照射する光の入射角度が45°である、という。
【0015】
つまり、本実施形態の読取装置100は、試料面たる原稿Dの法線方向に対して主光線が45°の角度をなすように光線束を照射し、当該法線方向(すなわち、法線方向に対して0°の角度)に反射した反射光を読み取るように構成されたものである。この構成は、JIS Z8722等に規定されている「照明及び受光の幾何学的条件」に則したものであり、画像信号の繰返し性及び反復性を保証するためになされた構成である。なお、同様の規定は、ISO(International Organization for Standardization)規格等にも存在する。
【0016】
光源133は、反射光の主光線LRを遮ることなく、かつ、その照射する光の主光線L2が反射板132に重ならないような位置に設けられる。光源133が照射する光の入射角度は、本実施形態においては5°である。光源133が照射する光の入射角度は、5°〜10°程度であるが、光源133自体が主光線LRを遮らない範囲において、0°に近いほど望ましい。したがって、光源133は、管径が小さいほど好ましい。なお、光源133により照射された光の反射光は、主光線LRを進行するものが読み取られる。
【0017】
また、光源133は、照射する光の角度がなるべく小さい(狭い)ことが望ましい。光源133が照射する光の角度が比較的大きい場合には、図2に示すカバー133aのように、光源133が照射する光の角度を制限する制限手段を設けるとよい。
さらに、光源133は、光沢情報を読み取るためのものであるため、光源131に比べ、主走査方向についての輝度がなるべく一様かつ連続であると望ましい。なぜならば、光沢情報は、入射光の主走査方向の輝度差の影響を受けやすいからである。
【0018】
以上の光源133の要件を満たすものとして好適なものは、例えば、蛍光ランプであり、より詳細には、希ガス蛍光ランプ(キセノン蛍光ランプ等)である。また、光源133は、開口部を形成しやすい外部電極タイプのものであるとよい。なお、光源133は、白色のLED(Light Emitting Diode)を主走査方向に複数配列したものであってもよい。この場合、LEDは、主走査方向についての輝度分布がなるべく不均等にならないように、密に設けたり、あるいは光を主走査方向に拡散させる拡散板を設けたりしてもよい。
【0019】
本実施形態の読取装置100の構成は、以上のとおりである。この構成のもと、読取装置100は、使用者の操作に応じて原稿Dの読み取りを行い、原稿Dの表面状態を表す画像信号を生成する。ここにおいて、原稿Dの表面状態には、原稿Dの表面の色(反射物体色)と、原稿Dの表面の光沢とを含む。前者の表面状態は、光源131を照射することで得られる画像情報が表し、後者の表面状態は、光源133を照射することで得られる光沢情報が表す。そのため、読取装置100は、画像情報を得るための走査(スキャン)と、光沢情報を得るための走査とを1回ずつ、2回に分けて行う。
【0020】
本実施形態の読取装置100は、光源133が照射する光の入射角度が5°であり、その反射光の反射角度が0°である。すなわち、読取装置100により読み取られる正反射光は、いわゆる正反射と異なり、入射角度と反射角度が等しくなく、入射角度に対して反射角度が傾きを有している。センサ160においては、入射角度に対して反射角度が傾けられることにより、プラテンガラス110からの正反射光成分が低減された反射光が受光される。
【0021】
図3は、本発明の作用を説明するための図であり、プラテンガラス110からの反射光と原稿Dからの反射光の角度分布を例示した図である。同図において、横軸の角度は、正反射角(法線方向に対して入射角と対称な反射角)からのずれ(以下「ずれ角」という。)を表しており、「0°」で正反射角の反射光を表す。また、同図の縦軸は、反射光の強度を表す。
【0022】
一般に、プラテンガラス110からの反射光は、ずれ角近傍の比較的狭い角度範囲に集中する。これは、プラテンガラス110における反射の大部分が正反射であり、拡散反射をほとんど生じないからである。一方、原稿Dからの反射光は、原稿Dの表面の光沢にも依存するが、多くの場合、プラテンガラス110よりも正反射の割合が低くなり、拡散反射の割合が高くなる。よって、原稿Dからの反射光が表す分布の曲線C2は、プラテンガラス110の曲線C1に比べ、ピークが低く、傾きがなだらかな(分散が大きい)曲線となる。
【0023】
そうすると、ずれ角が「0°」である反射光を受光すると、その反射光は、プラテンガラス110からの反射光成分が非常に多く、原稿Dからの反射光成分が比較的少ないものとなり、原稿Dの表面の光沢を正確に表した光とはいえなくなる。一方、ずれ角を同図のd程度にすると、その反射光は、原稿Dからの反射光成分が比較的多く、プラテンガラス110からの反射光成分が無視し得るほど少ないものとなり、ずれ角が「0°」である場合に比べ、原稿Dの表面の光沢をより正確に表した光といえるものになる。よって、光源133の入射角度は、その反射角度(本実施形態においては、法線方向であるため0°である。)に対して図中の角度d程度の傾きを有するのが望ましい。
【0024】
[変形例]
上述した実施形態は、本発明の一例である。本発明は、例えば、以下の変形例を適用可能である。なお、上述した実施形態及び以下の変形例は、必要に応じて、これらを組み合わせて適用してもよい。
【0025】
(1)変形例1
図4及び図5は、本発明の第2の照射手段の変形例を示す図である。なお、これらの図において、上述した実施形態と同様の構成には、上述した実施形態と同一の符号を付している。図4において、第2の照射手段210は、光源211と、ミラー212とにより構成される。光源211は、光源133と異なり、原稿Dに向けて光を照射しない。すなわち、光源211は、原稿Dに対する入射角度(法線方向に対して5°)と異なる角度で光を照射する。ミラー212は、光源211から照射された光を受け、これを当該入射角度で原稿Dに向かうように反射させる。このような構成とした場合、入射角度が光源211の構造(大きさ等)に制限されないため、入射角度をより小さくし(すなわち、法線方向に近づけ)たり、あるいは、より管径が大きい蛍光ランプを用いたりすることができる。
【0026】
また、図5に示す第2の照射手段220は、光源221と、ミラー222とを備える。ミラー222は、図4のミラー212とミラー134を一体に構成し、部品数を少なくしたものである。ミラー222は、光源221により照射された光を原稿Dに向けて反射させる第1の反射面と、原稿Dからの反射光を反射させる第2の反射面とを有する。
【0027】
なお、本発明の第2の照射手段は、ミラー、すなわち反射部材を複数設けることにより、光源の位置を図4及び図5に示す位置と異なる位置にしてもよい。
【0028】
(2)変形例2
本発明に係る読取装置は、原稿への入射光(又は原稿からの反射光)の強度を調整する調整手段を備えてもよい。かかる調整手段は、例えば、センサ(すなわち生成手段)の受光感度を超えるような強い反射光が生じる場合に、入射光(又は反射光)の強度を弱めるものである。調整手段は、具体的には、光の経路の途中にフィルタを介在させるものであってもよいし、いわゆる液晶シャッタのように、光の透過率を異ならせるものであってもよい。
【0029】
また、本発明に係る読取装置は、プラテンガラス110からの反射光成分を考慮して光沢情報を補正する補正手段を備えてもよい。かかる補正手段は、例えば、正反射光を生じないような基準の原稿をあらかじめ用意し、これを読み取って得られる光沢情報を基準の情報とし、実際に読み取るべき原稿を読み取って得られる光沢情報から基準の情報に相当する分を差し引き、相殺するものである。
【0030】
(3)変形例3
図6は、本発明に係る画像形成装置の構成を例示するブロック図である。同図に示す画像形成装置10は、上述した実施形態に示した読取装置100と、読取装置100から出力された画像信号に応じた画像を形成する画像形成部300とを備える。画像形成部300は、非光沢画像形成部310と光沢画像形成部320とを備える。非光沢画像形成部310は、画像情報に応じて、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの少なくともいずれかの記録材(トナー等)を用いて、用紙等の記録媒体に画像を形成する。光沢画像形成部320は、光沢情報に応じて、記録媒体の表面に光沢を付与する記録材(例えば、透明トナー)を用いて、記録媒体に画像を形成する。ここにおいて、光沢情報は、光沢の有無を表す二値の情報であってもよいし、光沢の程度を表す多値(3以上)の情報であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る読取装置の構成を示す図
【図2】キャリッジの構成を示す図
【図3】本発明の作用を説明するための図
【図4】第2の照射手段の変形例を示す図
【図5】第2の照射手段の変形例を示す図
【図6】本発明に係る画像形成装置の構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0032】
10…画像形成装置、100…読取装置、110…プラテンガラス、120…プラテンカバー、130、140…キャリッジ、131、133…光源、133a…カバー、132…反射板、134、141、142…ミラー、150…結像レンズ、160…センサ、170…出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を支持する透明の板状部材と、
前記板状部材に支持された原稿からの拡散反射光を読み取るために前記板状部材側から光を照射する第1の照射手段と、
前記第1の照射手段により照射された光の拡散反射光を決められた位置に導く導光手段と、
前記決められた位置において受ける光に応じた信号を生成する生成手段と、
前記板状部材に支持された原稿からの正反射光成分の一部を読み取るために前記板状部材側から光を照射する第2の照射手段であって、当該正反射光成分の一部が前記導光手段により導かれ、前記決められた位置において前記生成手段により信号が生成されるように光を照射する第2の照射手段とを備え、
前記第2の照射手段により照射される光の前記原稿への入射角度が、前記導光手段に導かれる正反射光の主光線の反射角度に対して0度でない傾きを有する
ことを特徴とする読取装置。
【請求項2】
前記第2の照射手段が、
光を照射する光源と、
前記光源により照射された光を前記入射角度で前記原稿に向かうように反射させる反射部材と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の読取装置。
【請求項3】
前記第2の照射手段により照射される光のうちの前記入射角度と異なる角度で前記原稿に入射する光の入射を制限する制限手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の読取装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の読取装置と、
前記生成手段により生成された信号に応じた画像を形成する画像形成手段と
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−130444(P2010−130444A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303957(P2008−303957)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】