説明

調光材料及び調光フィルム

【課題】熱に対する光透過率の低下を抑えた調光フィルム、及び該調光フィルムを形成可能な調光材料の提供。
【解決手段】エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂と、前記エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂中に分散した光調整懸濁液と、を含み、前記エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂中の未反応物及び副生成物の総含有量が、0〜1質量%である調光材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光材料及び調光フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
光調整懸濁液を含む調光硝子は、エドウィン・ランド(Edwin.Land)により最初に発明されたもので、その形態は、狭い間隔を有する2枚の透明導電性基材の間に、液体状態の光調整懸濁液を注入した構造になっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
エドウィン・ランドの発明によると、2枚の透明導電性基材の間に注入されている液状の光調整懸濁液は、電界を印加していない状態では懸濁液中に分散されている光調整粒子のブラウン運動により、入射光の大部分が光調整粒子により反射、散乱又は吸収され、ごく一部分だけが透過することになる。また該調光ガラスに電界を印加すると、透明導電性基板を通じて光調整懸濁液に電場が形成され、光調整機能を表す光調整粒子が分極を起こし、電場に対して平行に配列され、光調整粒子と光調整粒子の間を光が透過し、最終的に調光硝子は透明になる。
即ち、光調整懸濁液に分散されている光調整粒子の形状、性質、濃度及び照射される光エネルギーの量により、透過、反射、散乱又は吸収の程度が決められる。
【0004】
しかし、このような初期の調光装置は、実用上、光調整懸濁液内での光調整粒子の凝集、自重による沈降、熱による色相変化、光学密度の変化、紫外線照射による劣化、基材の間隔維持及びその間隔内への光調整懸濁液の注入が困難等であるために、実用化が難しかった。
【0005】
ロバート・エル・サックス(Robert.L.Saxe)、エフ・シー・ローウェル(F.C.Lowell)、又はアール・アイ・トンプソン(R.I.Thompson)は、調光窓の初期問題点、即ち、光調整粒子の凝集及び沈降、光学密度の変化等を補完した調光硝子を用いた調光窓を開示している(例えば、特許文献2参照)。これらの特許等では、針状の光調整粒子、光調整粒子分散用の懸濁剤、分散調整剤及び安定剤等からなる液体状態の光調整懸濁液によって、光調整粒子と懸濁剤の密度を殆ど同様に合わせて光調整粒子の沈降を防止しながら、分散調整剤を添加して光調整粒子の分散性を高めることにより光調整粒子の凝集を防止し、初期の問題点を解決している。
【0006】
しかし、これらの調光硝子もやはり従来の調光硝子のように、2枚の透明導電性基材の間隔内に液状の光調整懸濁液を封入した構造になっているため、調光硝子を大型化して製品を製造する場合、2枚の透明導電性基材の間隔内への均一な懸濁液の封入が困難で、製品上下間の水圧差による下部の膨張現象が起こりやすくなる。また、外部環境、例えば、風圧によって基材の間隔が変化することにより、その結果、光学密度が変化して色相が不均質になり、又は透明導電性基材の間に液体を溜めるための周辺の密封材が破壊され、光調整材料が漏れる問題がある。また、紫外線による劣化、透明導電性基材の周辺部と中央部間の電圧降下により、応答時間にむらが発生する。
【0007】
これを改善する方法として、液状の光調整懸濁液を硬化性の高分子樹脂の溶液と混合し、重合による相分離法、溶媒揮発による相分離法、又は温度による相分離法等を利用して調光フィルムを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第1,955,923号明細書
【特許文献2】米国特許第3,756,700号明細書
【特許文献3】特開2002−189123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
調光フィルムのマトリックス樹脂として、エネルギー線を照射することにより硬化するエチレン性不飽和基を有するシロキサン樹脂が好ましく用いられる。しかしながら、従来のシロキサン樹脂を用いた調光フィルムは、高温環境に曝された後において電界印加時の光透過率が低下するという課題があった。そこで、本発明は、熱に対する光透過率の低下を抑えた調光フィルム、及び該調光フィルムを形成可能な調光材料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、熱に対する調光フィルムにおける電界印加時の光透過率の低下が、シロキサン樹脂中に含まれる未反応物質又は副生成物であるモノマー又はオリゴマーに起因していることを突き止めた。前記課題を改善するための更なる鋭意検討により、シロキサン樹脂中の未反応物質又は副生成物の除去法と許容範囲を見出した。
【0011】
すなわち本発明は、エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂と、前記エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂中に分散した光調整懸濁液と、を含み、前記エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂中の未反応物及び副生成物の総含有量が、0〜1質量%である調光材料に関する。
【0012】
前記エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂中に含まれる未反応物及び副生成物は、エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂を合成した後に、アルコール精製処理や蒸留処理を行なうことで取り除くことができる。この調光材料は、調光フィルムにおける調光層の形成に好適に用いられる。
【0013】
前記エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂は、繰り返し単位として、ジメチルシロキサン、ジフェニルシロキサン及び3−アクリロキシプロピルメチルシロキサンの3種類を含むことが好ましい。
【0014】
前記エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂を合成するのに用いる原料としてのエチレン性不飽和基含有シラン化合物の量は、原料シロキサン及びシラン化合物の総量の2.0〜8.0質量%であることが好ましい。
【0015】
前記エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂中、エチレン性不飽和基を含有する繰り返し単位数は、繰り返し単位数全体の1.3〜5.0モル%であることが好ましい。
【0016】
前記エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂の重量平均分子量は、35,000〜60,000であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、熱に対する電界印加時の光透過率の低下が抑制された調光フィルムを形成可能な調光材料、及び調光フィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明にかかる調光フィルムの一態様を示す概略断面図である。
【図2】図2(a)は、図1の調光フィルムの電界が印加されていない場合の作動を説明するための概略断面図であり、図2(b)は、電界が印加されていないときの液状の光調整懸濁液の液滴3の様子を示す図である。
【図3】図3(a)は、図1の調光フィルムの電界が印加されている場合の作動を説明するための概略断面図であり、図3(b)は、電界が印加されているときの液状の光調整懸濁液の液滴3の様子を示す図である。
【図4】本発明にかかる調光フィルムの端部の状態の一例を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
また本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
更に本明細書において、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも一方を意味し、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方を意味し、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも一方を意味する。
【0020】
本発明の調光材料は、エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂と、前記エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂中に分散した光調整懸濁液と、を含み、前記エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂中の未反応物及び副生成物の総含有量が、0〜1質量%である。前記エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂における未反応物及び副生成物は、蒸留法やアルコール精製などにより除去され、その含有量が0質量%〜1質量%にまで低減される。この調光材料を用いて作製された調光層を有する調光フィルムは、熱に対する電界印加時の光透過率の低下が抑制される。
【0021】
上述の通り、本発明の調光材料は、光調整懸濁液と、前記エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂と、を含む。前記光調整懸濁液は、光調整粒子が流動可能な状態で分散媒中に分散されてなる。前記光調整粒子は、棒状又は針状であることが好ましい。
【0022】
前記エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂は、エネルギー線を照射することにより硬化し、樹脂マトリックスを形成する。つまり、本発明の調光材料を用いて形成された調光層では、液状の光調整懸濁液が、エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂が硬化した固体状の樹脂マトリックス内に液滴の形態で分散されている。したがって、光調整懸濁液中の分散媒は、エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂及びその硬化物と相分離しうるものであることが好ましい。
【0023】
ここで、図1に、本発明の調光フィルムの一態様を構造概略図として示す。図1に示す調光フィルムでは、透明導電膜5aがコーティングされた透明樹脂基材5bからなる透明導電性樹脂基材4の2枚の間に、調光層1が挟持されている。調光層1と透明導電性樹脂基材4の間にはプライマー層6が設けられている。
【0024】
調光層1は、エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂を硬化させたフィルム状の樹脂マトリックス2と、樹脂マトリックス2内に液滴3の形態で分散されている液状の光調整懸濁液と、を含む。光調整懸濁液の液滴3には、光調整粒子10が分散媒9の中に分散されている(図2(b)参照)。
【0025】
調光フィルムは、スイッチ8の切り換えにより、電源7と2枚の透明導電膜5aの接続、非接続を行う。
【0026】
図2(a)は、図1に示した調光フィルムの作動を説明するための概略断面図であり、スイッチ8が切られ、電界が印加されていない状態を示す。この状態では、液滴3中に分散している光調整粒子10は、図2(b)に示すようにブラウン運動により、それぞれランダムな方向を向いている。そのため、入射光11は光調整粒子10に吸収、散乱又は反射され、透過する光量は少ない。
【0027】
一方、図3(a)は、図1の調光フィルムの電界が印加されている状態の作動を説明するための概略断面図である。図3(a)に示すように、スイッチ8を接続して電界を印加すると、電気的双極子モーメントをもつ光調整粒子10が、印加された電界によって形成される電場と平行に配列する。そのため入射光11は配列した光調整粒子10間を通過するようになる。このようにして、液滴3が入射光に対して透明な状態に転換され、視野角度による散乱、又は透明性低下が殆どない状態で入射光を透過させる。
【0028】
以下、本発明の調光材料について詳細に説明し、この調光材料を用いて形成された調光層を有する調光フィルムについて説明を行う。
【0029】
<調光材料>
本発明の調光材料は、エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂と、前記エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂中に分散した光調整懸濁液と、を含み、前記エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂中の未反応物及び副生成物の総含有量が、0〜1質量%である。更に、本発明の調光材料は、光重合開始剤を含んでもよい。
【0030】
(エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂)
本発明におけるエチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂(以下「シロキサン樹脂」と略称する場合がある)は、エネルギー線を照射することにより硬化し、樹脂マトリックスを形成する。
【0031】
前記シロキサン樹脂は、置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を有することが、調光性能、耐久性等の点から好ましい。
【0032】
前記シロキサン樹脂の具体例としては、例えば、特公昭53−36515号公報、特公昭57−52371号公報、特公昭58−53656号公報、特公昭61−17863号公報等に記載の樹脂を挙げることができる。
【0033】
前記シロキサン樹脂におけるエチレン性不飽和基は、アクリロキシ基又はメタクリロキシ基であることが好ましく、紫外線と光重合開始剤によりラジカル重合が進みやすいという観点から、アクリロキシ基であることがより好ましい。
【0034】
前記シロキサン樹脂は、エチレン性不飽和基を有する繰り返し単位以外の繰り返し単位を含んでもよく、該繰り返し単位として、例えば、ジメチルシロキサン、ジフェニルシロキサン、又はメチルフェニルシロキサン等を含むことが好ましく、ジメチルシロキサン、又はジフェニルシロキサンを含むことがより好ましい。
【0035】
前記シロキサン樹脂は、繰り返し単位として、ジメチルシロキサン、ジフェニルシロキサン、及びメチルフェニルシロキサンのうちの少なくとも1種と、3−アクリロキシプロピルメチルシロキサンとを含むことが好ましく、ジメチルシロキサン、ジフェニルシロキサン、及び3−アクリロキシプロピルメチルシロキサンの3種類を含むことがより好ましい。シロキサンのジメチル体とジフェニル体の割合により屈折率を制御することできる。
【0036】
前記シロキサン樹脂中のエチレン性不飽和基を含有する繰り返し単位数は、繰り返し単位数全体の1.3〜5.0モル%であることが好ましく、1.5〜4.5モル%であることが更に好ましい。エチレン性不飽和基を含有する繰り返し単位数が上記範囲内にある場合には、熱に対する光透過性保持率により優れる傾向にある。
【0037】
前記シロキサン樹脂の重量平均分子量は、35,000〜60,000であることが好ましく、40,000〜55,000であることが更に好ましい。分子量が35,000以上の場合には熱に対する光透過性保持率がより向上する傾向にあり,60,000以下の場合にはハンドリング性に優れる。
【0038】
前記シロキサン樹脂中に含まれる未反応物及び副生成物の総量は、熱に対する光透過性保持率の観点から、シロキサン樹脂中0〜1質量%であり、0〜0.8質量%であることが好ましく、0〜0.6質量%であることがより好ましく、0〜0.5質量%であることが更に好ましい。なお、未反応物及び副生成物の総量が0質量%とは、未反応物及び副生成物を含まないことを意味する。
【0039】
本発明において、前記シロキサン樹脂中に含まれる未反応物及び副生成物の総量は、後述の実施例における測定方法により算出される値を意味する。
【0040】
(シロキサン樹脂の合成方法)
前記エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂の合成は、繰り返し単位に対応するジメチルジアルコキシシラン、ジフェニルジアルコキシシラン等のアルコキシ基を加水分解してシラノール基とした後、脱水縮合反応によってシロキサン結合を形成してもよい。又は予めシロキサン結合が形成されており、両末端がシラノール基となっているジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサンコポリマー、両末端がシラノール基となっているポリジメチルシロキサン、両末端がシラノール基となっているポリジフェニルシロキサン、トリメチルエトキシシラン等のトリアルキルアルコキシシラン、及び(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン等のエチレン性不飽和基含有シラン化合物等を、脱水縮合触媒存在下で脱水素縮合反応及び脱アルコール反応させて合成してもよい。なお、エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂を合成する際に溶剤を用いた場合には、合成反応後に脱溶工程を行うことによって溶剤を除去することが好ましい。
【0041】
エチレン性不飽和基含有のアルコキシシランは、脱水縮合によってシロキサン樹脂を形成し得るものであればよく、例えば、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−メタクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−メタクリロキシプロピル)メチルジエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
エチレン性不飽和基含有のアルコキシシランの市販品としては、KBM−5102、KBM−502、KBE−502(以上、信越化学工業(株)製)、Z−6033(東レ・ダウコーニング(株)製)が挙げられる。
【0043】
なお、シロキサン樹脂の製造時の各種原料の仕込み配合において、(3−アクリロキシプロピル)メチルジフェニルシラン等のエチレン性不飽和基含有シラン化合物の量は、熱に対する電界印加時の光透過性保持率をより向上させるといった点から、原料シロキサン及びシラン化合物の総量の2.0〜8.0質量%とすることが好ましく、2.0〜7.5質量%とすることがより好ましい。
【0044】
(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン等のエチレン性不飽和基含有アルコキシシランは、アルコキシ基の脱水縮合の反応性が低いため、シロキサン樹脂中に所望の量を導入できない場合が多い。そこで、アルコキシシランを酸等でシラノール化合物に変換した後に脱水縮合する樹脂製造法が好ましく適用される。
【0045】
アルコキシシランのシラノールへの変換率は、赤外分光測定における水酸基由来のピーク(3435cm−1付近)の強度(A)とアルコキシ基由来のピーク(2835cm−1付近)の強度(B)から変換率(%)=A/(A+B)×100により求められる。本発明に係るエチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂の合成には、エチレン性不飽和基含有アルコキシシランを変換率40〜70%でシラノールに変換したものが好ましく用いられ、45〜65%のものが更に好ましく用いられる。
【0046】
両末端がシラノール基となっているポリジメチルシロキサンの市販品としては、X−21−3114(信越化学工業(株)製)、DMS−S12、DMS−S14(以上、Gelest社製)、両末端がシラノール基となっているポリジフェニルシロキサンの市販品としては、PDS−9931(Gelest社製)、両末端がシラノール基となっているジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサンコポリマーの市販品としては、X−21−3193B(信越化学工業(株)製)、PDS−1615(Gelest社製)等が挙げられる。
【0047】
シラノールの脱水縮合に用いる触媒としては、一般的な脱水触媒を用いることができる。その具体例としては、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、硫酸等のスルホン酸類;ピリジニウム p−トルエンスルホネート等のスルホン酸塩類;ポリリン酸等が挙げられる。
【0048】
シラノールの脱水縮合に用いる触媒としては、上記触媒の他に有機錫化合物、金属錯体、塩基性化合物、有機燐化合物等が挙げられる。
有機錫化合物の具体例としては、以下の例には限定されないが、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫フタレート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸第1錫、ジブチル錫メトキシド、ジブチル錫ジアセチルアセテート、ジブチル錫ジバーサテート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫モノキレート、ビス(2−エチルヘキサン酸)錫、ジブチル錫オキサイドとフタル酸ジエステルとの反応物、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクタンサン第1錫、酢酸第1錫、ジブチル錫マレイン酸塩ポリマー、ジメチル錫メルカプトプロピオン酸塩ポリマー等のカルボン酸金属塩ポリマー等が挙げられる。
【0049】
金属錯体の具体例としては、以下の例には限定されないが、ナフテン酸鉛、オクチル酸鉛、ナフテン酸コバルト、2−エチルヘキセン酸鉄、ナフテン酸ニッケル、オクチル酸ビスマス、ビスマスバーサテート等のカルボン酸金属塩、テトラブチルチタネート、テトラノニルチタネート、テトライソプロピルチタネート、トリエタノールアミンチタネート等のチタネート化合物類、又はビス(アセチルアセトニル)ジープロピルチタネート等のチタン酸エステルキレート類、アルミニウムアセチルアセトナート錯体、バナジウムアセチルアセトナート錯体等の金属アセチルアセトナート錯体等が挙げられる。
【0050】
塩基性化合物としては、以下の例には限定されないが、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン類;テトラメチルアンモニウムクロライド、ベンザルコニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類;三共エアプロダクツ社製の「DABCO(登録商標)」シリーズ、同社製の「DABCO BL」シリーズ;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン等の複数の窒素を含む直鎖あるいは環状の第3アミン及び第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0051】
有機燐化合物としては、以下の例には限定されないが、例えば、モノメチル燐酸、ジ−n−ブチル燐酸、燐酸トリフェニル等が挙げられる。
【0052】
これらのシラノールの脱水縮合触媒のうち、本発明においては有機錫化合物が好ましく用いられる。
【0053】
脱水縮合は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で分子量測定を行いながら還流条件で行い、重量平均分子量が35,000〜55,000になった時点で温度を下げて反応を停止することが好ましい。
【0054】
脱水縮合の後、シラノール基末端をエンドキャップする目的で、トリメチルメトキシシラン等のトリアルキルアルコキシシラン等を反応停止剤として加えることも好ましい。
【0055】
シロキサン樹脂合成後、反応溶媒を除去する工程を行う。エンドキャップによる反応停止を行っても反応停止が充分に進行しない場合があり、脱溶工程で更にシロキサン樹脂の分子量が増大してしまうことがある。この分子量の増大を抑制するため、脱水縮合触媒の失活処理を行うのが好ましく、失活処理に酸性リン酸エステル、ホスホン酸エステル、又はアルキルホスホン酸が用いられることがより好ましく、酸性リン酸エステルが用いられることが更に好ましい。
【0056】
酸性リン酸エステルの具体例としては、以下の例には限定されないが、リン酸モノメチル、リン酸ジメチル、リン酸モノエチル、リン酸ジエチル、リン酸モノプロピル、リン酸ジプロピル、リン酸モノイソプロピル、リン酸ジイソプロピル、リン酸モノブチル、リン酸ジブチル、リン酸モノペンチル、リン酸ジペンチル、リン酸モノヘキシル、リン酸ジヘキシル、リン酸モノオクチル、リン酸ジオクチル、リン酸モノ2−エチルヘキシル、リン酸ジ2−エチルヘキシル、リン酸モノデシル、リン酸ジデシル、リン酸モノイソデシル、リン酸ジイソデシル、リン酸モノウンデシル、リン酸ジウンデシル、リン酸モノドデシル、リン酸ジドデシル、リン酸モノテトラデシル、リン酸ジテトラデシル、リン酸モノヘキサデシル、リン酸ジヘキサデシル、リン酸モノオクタデシル、リン酸ジオクタデシル、リン酸モノフェニル、リン酸ジフェニル、リン酸モノベンジル、リン酸ジベンジルなどが挙げられる。
【0057】
ホスホン酸エステルとしては、ホスホン酸モノメチル、ホスホン酸モノエチル、ホスホン酸モノプロピル、ホスホン酸モノイソプロピル、ホスホン酸モノブチル、ホスホン酸モノペンチル、ホスホン酸モノヘキシル、ホスホン酸モノオクチル、ホスホン酸モノエチルヘキシル、ホスホン酸モノデシル、ホスホン酸モノイソデシル、ホスホン酸モノウンデシル、ホスホン酸モノドデシル、ホスホン酸モノテトラデシル、ホスホン酸モノヘキサデシル、ホスホン酸モノオクタデシル、ホスホン酸モノフェニル、ホスホン酸モノベンジルなどが挙げられる。
【0058】
アルキルホスホン酸としては、モノメチルホスホン酸、ジメチルホスホン酸、モノエチルホスホン酸、ジエチルホスホン酸、モノプロピルホスホン酸、ジプロピルホスホン酸、モノイソプロピルホスホン酸、ジイソプロピルホスホン酸、モノブチルホスホン酸、ジブチルホスホン酸、モノペンチルホスホン酸、ジペンチルホスホン酸、モノヘキシルホスホン酸、ジヘキシルホスホン酸、イソオクチルホスホン酸、ジオクチルホスホン酸、モノエチルヘキシルホスホン酸、ジエチルヘキシルホスホン酸、モノデシルホスホン酸、ジデシルホスホン酸、モノイソデシルホスホン酸、ジイソデシルホスホン酸、モノウンデシルホスホン酸、ジウンデシルホスホン酸、モノドデシルホスホン酸、ジドデシルホスホン酸、モノテトラデシルホスホン酸、ジテトラデシルホスホン酸、モノヘキサデシルホスホン酸、ジヘキサデシルホスホン酸、モノオクタデシルホスホン酸、ジオクタデシルホスホン酸などや、モノフェニルホスホン酸、ジフェニルホスホン酸、モノベンジルホスホン酸、ジベンジルホスホン酸などが挙げられる。
【0059】
失活処理に用いる酸性リン酸エステル、ホスホン酸エステル、又はアルキルホスホン酸の添加量は、重合触媒に対して25〜150質量%であることが好ましく、50〜100質量%であることが更に好ましい。酸性リン酸エステル、ホスホン酸エステル、又はアルキルホスホン酸の添加量が上記範囲内にあれば、失活能力は十分である。
【0060】
脱水縮合触媒を失活処理した後、反応物をメタノール/エタノール混合溶媒で精製することが好ましい。この時、混合比は質量比でメタノール/エタノール=67/33〜75/25が好ましい。メタノールの割合が67質量%以上の場合には、シロキサン樹脂の収量に優れ、75質量%以下の場合には精製効果に優れる。
【0061】
合成時の溶媒を除去するために脱溶工程を行うが、この脱溶工程の温度は、溶媒を除去するために110℃以上である必要があり、かつ140℃以下が好ましく、120℃以下が更に好ましい。温度が140℃以下の場合には、分子量の増大によって粘度が上昇することが抑えられる。
【0062】
シロキサン樹脂の屈折率は、1.4700〜1.4780であることが好ましく、1.4740〜1.4760であることが更に好ましい。
【0063】
(未反応物及び副生成物の除去)
合成したシロキサン樹脂は、アルコールによる精製、又は蒸留することで、残存溶剤、未反応物、及び副生成物を取り除くことができる。
【0064】
−アルコールによる精製−
アルコールによる洗浄法では、メタノール及びエタノールの少なくとも一方を用いることが好ましい。炭素数2以下のアルコールを洗浄に使用すると、シロキサン樹脂の溶解が抑えられて、分離性が低下することによる洗浄能の低下が抑えられる。メタノール及びエタノールは、各々を単独で使用してもよいし、エタノールとメタノールとの混合溶媒を使用してもよい。より好ましくは、エタノールとメタノールとの混合溶媒を使用する場合である。混合溶媒とすると、シロキサン樹脂と溶媒との相溶性に優れ、粘度の上昇が抑制されるため、ハンドリング性に優れる。またシロキサン樹脂の溶媒への溶解性の増大による収量の低下が抑えられる。混合溶媒の質量比としては、メタノール/エタノール=5/95〜50/50が好ましく、5/95〜15/85が更に好ましい。
【0065】
メタノールとエタノールとの混合溶媒の使用量としては、該混合溶媒/シロキサン樹脂が、0.5/1.0〜2.0/1.0であることが好ましく、0.8/1.0〜1.2/1.0であることがより好ましい。混合溶媒/シロキサン樹脂が、0.5/1.0以上の場合には洗浄効果に優れる。また、2.0/1.0を超えても洗浄効果に大差は無いため、メタノールとエタノールとの混合溶媒の使用量を抑える観点から、シロキサン樹脂1.0に対して2.0以下であることが好ましい。
【0066】
前述のアルコールとシロキサン樹脂とを混合攪拌し、その後、静置することで、シロキサン樹脂相とアルコール相に分離される。シロキサン樹脂相には、アルコールが混入するため、シロキサン樹脂相を分離して抜き出した後、もう一度、溶媒除去を行なう。
【0067】
−蒸留−
蒸留の方法としては、一般的な減圧分子蒸留装置が使用できる。具体的には、短行程蒸留装置や遠心式分子減圧蒸留設備が挙げられる。
【0068】
蒸留温度は80℃〜110℃とすることが好ましく、90℃〜105℃が更に好ましい。温度が80℃以上の場合には、残存溶剤、副生成物の除去効率に優れ、110℃以下の場合にはシロキサン樹脂が重合するのを抑えることができる。
【0069】
減圧度は、0.27〜20Paが好ましく、0.27〜6.7paが更に好ましい。減圧度が20Pa以上の場合には、残存溶剤、副生成物の除去効率に優れる。
【0070】
短行程蒸留装置を用いる場合、ワイパー速度は50〜150rpmであることが好ましく、80〜120rpmであることがより好ましい。ワイパー速度が50rpm以上の場合には、蒸留の際にシロキサン樹脂の薄膜が形成されやすく蒸留能に優れ、150rpm以下の場合には、シロキサン樹脂の蒸留の際のゲル化が抑制されやすい。
【0071】
また、滴下速度は1.0〜4.0mL/minであることが好ましく、2.0〜3.0mL/minであることがより好ましい。滴下速度が1.0mL/min以上の場合には、シロキサン樹脂の蒸留の際のゲル化が抑制されやすく,4.0mL/min以下の場合には、蒸留の際に薄膜が形成されやすく蒸留能に優れる。
【0072】
(光重合開始剤)
本発明の調光材料は、光重合開始剤を含んでもよい。光重合開始剤としては、光照射により分解してラジカルを発生して重合性化合物の重合を開始し得るものであればよく、例えばアセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
光重合開始剤の市販品としては、イルガキュア651、イルガキュア184、イルガキュア500、イルガキュア2959、イルガキュア127、イルガキュア754、イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア379EG、イルガキュア1300、イルガキュア819、イルガキュア819DW、イルガキュア1800、イルガキュア1870、イルガキュア784、イルガキュアOXE01、イルガキュアOXE02、イルガキュア250、イルガキュアPAG103、イルガキュアPAG108、イルガキュアPAG121、イルガキュアPAG203、ダロキュア1173、ダロキュアMBF、ダロキュアTPO、ダロキュア4265、ダロキュアEDB、ダロキュアEHA(以上、BASFジャパン株式会社製)、C0014、B1225、D1640、D2375、D2963、M1245、B0103、C1105、C0292、E0063、P0211、I0678、P1410、P1377、M1209、F0362、B0139、B1275、B0481、D1621、B1267、B1164、C0136、C1485、I0591、F0021、A0061、B0050、B0221、B0079、B0222、B1019、B1015、B0942、B0869、B0083、B2380、B2381、D1801、D3358、D2248、D2238、D2253、B1231、M0792、A1028、B0486、T0157、T2041、T2042、T1188、T1608(以上、東京化成工業(株)製)が挙げられる。
【0074】
光重合開始剤の使用量は、エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましく、0.2〜10質量部であることがより好ましい。
【0075】
(光調整懸濁液)
本発明に係る光調整懸濁液は、分散媒9中に光調整粒子10が流動可能に分散されてなる。
【0076】
−分散媒−
本発明において、光調整懸濁液中の分散媒としては、前記エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂及びその硬化物である樹脂マトリックスと相分離するものが用いられる。好ましくは、光調整粒子を流動可能な状態で分散させる役割を果たし、また、光調整粒子に選択的に付着被覆し、シロキサン樹脂との相分離の際に光調整粒子が相分離された液滴相に移動するように作用する分散媒が好ましい。また、電気導電性がなく、シロキサン樹脂とは親和性がなく、調光フィルムとした際にシロキサン樹脂から形成される樹脂マトリックスとの屈折率が近似した分散媒が好ましい。このような性質を有する分散媒として、液状共重合体を使用することが好ましい。
【0077】
分散媒としては、例えば、フルオロ基及び/又は水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーが好ましく、フルオロ基及び水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーがより好ましい。このような共重合体を使用すると、フルオロ基、水酸基のどちらか1つを有するモノマー単位は光調整粒子に親和性があり、残りのモノマー単位はシロキサン樹脂中で光調整懸濁液が液滴として安定に維持するために働くことから、光調整懸濁液内に光調整粒子が分散しやすく、相分離の際に光調整粒子が相分離される液滴内に誘導されやすい。
【0078】
このようなフルオロ基及び/又は水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーとしては、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、アクリル酸3,5,5−トリメチルヘキシル/アクリル酸2−ヒドロキシプロピル/フマール酸共重合体、アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、アクリル酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、アクリル酸1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、アクリル酸1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸ブチル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸ヘキシル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸オクチル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸デシル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸ウンデシル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸ドデシル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸トリデシル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸テトラデシル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸ヘキサデシル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、及びメタクリル酸オクタデシル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体等が挙げられる。
【0079】
これらの(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーは、GPCで測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が、1,000〜20,000であることが好ましく、2,000〜10,000であることがより好ましい。
【0080】
これらの(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーの原料となるフルオロ基含有モノマーの使用量は、原料であるモノマー総量の6〜12モル%であることが好ましく、より効果的には7〜8モル%である。フルオロ基含有モノマーの使用量が12モル%以下の場合には、屈折率の上昇が抑えられ、光透過率に優れる傾向がある。
【0081】
また、これらの(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーの原料となる、水酸基含有モノマーの使用量は0.5〜22.0モル%であることが好ましく、より効果的には1〜8モル%である。水酸基含有モノマーの使用量が22.0モル%以下の場合には、屈折率の上昇が抑えられ、光透過率に優れる傾向がある。
【0082】
分散媒の屈折率は、前記エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂から形成される樹脂マトリックスの屈折率と近似していることが好ましく、具体的には、1.4700〜1.4740であることが好ましく、1.4710〜1.4730であることが更に好ましい。
【0083】
−光調整粒子−
光調整粒子としては、例えば、光調整粒子の前駆体であるピラジン−2,3−ジカルボン酸・2水和物、ピラジン−2,5−ジカルボン酸・2水和物、及びピリジン−2,5−ジカルボン酸・1水和物からなる群の中から選ばれた1つの物質とヨウ素とヨウ化物とを反応させて作ったポリヨウ化物の針状小結晶が好ましく用いられる。光調整粒子は、エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂等と親和力がなく、また光調整粒子の分散性を高めることができる高分子分散剤の存在下で調製される。使用しうる高分子分散剤としては、例えば、ニトロセルロース等が挙げられる。ヨウ化物としては、ヨウ化カルシウム等が挙げられる。
【0084】
このようにして得られるポリヨウ化物としては、例えば、下記一般式
CaI(C)・XHO (X:1〜2)
CaI(C・cHO (a:3〜7、b:1〜2、c:1〜3)
で表されるものが挙げられる。これらのポリヨウ化物は針状結晶であることが好ましい。
【0085】
また、調光フィルム用光調整懸濁液に用いる光調整粒子として、米国特許第2,041,138号明細書(E.H.Land)、米国特許第2,306,108号明細書(Landら)、米国特許第2,375,963号明細書(Thomas)、米国特許第4,270,841号明細書(R.L.Saxe)及び英国特許第433,455号明細書に開示されている光調整粒子も、使用することができる。これらの特許によって公知とされたポリヨウ化物の結晶は、ピラジンカルボン酸、又はピリジンカルボン酸の1つを選択して、ヨウ素、塩素又は臭素と反応させることにより、ポリヨウ化物、ポリ塩化物又はポリ臭化物等のポリハロゲン化物とすることによって作製されている。これらのポリハロゲン化物は、ハロゲン原子が無機質又は有機質と反応した錯化合物で、これらの詳しい製法は、例えば、サックスの米国特許第4,422,963号明細書に開示されている。
【0086】
サックスが開示しているように、光調整粒子を合成する過程において、均一な大きさの光調整粒子を形成させるため、及び、特定の懸濁媒体内での光調整粒子の分散性を向上させるため、上述したように高分子分散剤としてニトロセルロースのような高分子物質を使用することが好ましい。しかしながら、ニトロセルロースを用いると、ニトロセルロースで被覆された結晶が得られ、このような結晶を光調整粒子として用いる場合、光調整粒子は相分離の時に分離される液滴内に浮遊せず、樹脂マトリックス内に残存することがある。
【0087】
これを防ぐために、前記エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂を用いる。前記エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂を用いた場合には、フィルム製造の際に光調整粒子が相分離により形成された微細な液滴内へ容易に分散、浮遊し、その結果、より優れた可変能力を得ることができる。
【0088】
光調整粒子の粒子サイズは、調光フィルムとしたときの印加電圧に対する応答時間と、光調整懸濁液中の凝集及び沈殿との関係から、以下のサイズが好ましい。
【0089】
光調整粒子の平均長径は、150〜625nmが好ましく、200〜550nmがより好ましく、250〜500nmが更に好ましい。
【0090】
光調整粒子の短径に対する長径の比率、すなわちアスペクト比の平均値は3〜8が好ましく、3.3〜7がより好ましく、3.6〜6が更に好ましい。
【0091】
本発明における光調整粒子の長径と短径は、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡等の電子顕微鏡で光調整粒子を撮影し、撮影した画像より任意に50個の光調整粒子を抽出し、各光調整粒子の長径と短径を平均値として算出することができる。ここで、長径とは、上記撮影した画像により二次元視野内に投影された光調整粒子について、最も長い部分の長さとする。また、短径とは、上記長径に直交する最も長い部分の長さとする。
【0092】
また、本発明における光調整粒子の粒子径を評価する方法として、光子相関法や動的光散乱法の原理を用いた粒度分布計を用いることができる。この方法では直接粒子の大きさや形状を計測するのではなく、粒子を球状と仮定して相当径を評価することになり、SEM観察とは異なる値となる。特に、シスメックス株式会社製ゼータサイザーナノシリーズを用い、Z averageとして出力される相当径を粒子径とした場合に、光調整粒子の平均粒子径(以下、「粒度分布測定により求められる平均粒子径」ともいう)は120〜220nmが好ましく、130〜210nmがより好ましく、135〜205nmが更に好ましい。
【0093】
このZ average値は例えば光相関法や動的光散乱法に基づいた、違う粒度分布計の測定値、具体的には上述の透過型電子顕微鏡等の電子顕微鏡で測定される光調整粒子の長径、短径とよい相関を示すことが知られおり、粒子径を評価する指標として適当である。
【0094】
本発明における光調整粒子は、光調整懸濁液の全質量に対し、1〜15質量%含有することが好ましく、2〜10質量%含有することがより好ましい。1質量%以上の場合には、調光フィルムとした際の遮光効果が大きくなり好適である。また、15質量%以下の場合には、調光フィルム製造の際にエネルギー線によるシロキサン樹脂の硬化の阻害が抑えられる。
【0095】
また、本発明における分散媒は、光調整懸濁液の全質量に対し、30〜99質量%含有することが好ましく、50〜96質量%含有することがより好ましい。30質量%以上の場合には遮光効果が大きくなり、99質量%以下の場合には、シロキサン樹脂の硬化の阻害が抑制される。
【0096】
また、本発明の調光材料は、光調整懸濁液を、シロキサン樹脂100質量部に対して、1〜100質量部含有することが好ましく、4〜70質量部含有することがより好ましく、6〜60質量部含有することが更に好ましく、8〜50質量部含有することが特に好ましい。光調整懸濁液の含有量が1質量%以上の場合には、遮光効果に優れ、100質量%以下の場合にはシロキサン樹脂の硬化の阻害が抑えられる。
【0097】
本発明におけるシロキサン樹脂の屈折率と分散媒の屈折率は近似していることが好ましい。具体的には、本発明におけるシロキサン樹脂と分散媒との屈折率の差は、好ましくは0.005以下、より好ましくは0.003以下である。シロキサン樹脂と分散媒との屈折率の差が0.005以下の場合には、調光フィルムの濁度が低くなり、透明性に優れた調光フィルムとなる。
【0098】
<調光フィルム>
本発明の調光フィルムは、2つの透明導電性樹脂基材と、この2つの透明導電性樹脂基材に挟持される調光層とを備える。前記調光層は、本発明の調光材料を用いて形成することが可能である。具体的に、前記調光層は、前記エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂を硬化して形成された樹脂マトリックスと、樹脂マトリックス中に分散した光調整懸濁液とを含む。
【0099】
(透明導電性樹脂基材)
透明導電性樹脂基材としては、一般的に、透明樹脂基材に、光透過率が80%以上の透明導電膜(ITO、SnO、In、有機導電膜等の膜)がコーティングされている表面抵抗値が3〜3000Ωの透明導電性樹脂基材を使用することができる。なお、透明樹脂基材の光透過率はJIS K7105の全光線透過率の測定法に準拠して測定することができる。また、透明樹脂基材としては、例えば、高分子フィルム等を使用することができる。
【0100】
上記高分子フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルム、ポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルム、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂系のフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリカーボネートフィルム等の樹脂フィルムが挙げられるが、ポリエチレンテレフタレートフィルムが、透明性に優れ、成形性、接着性、加工性等に優れるので好ましい。
【0101】
透明樹脂基材にコーティングされる透明導電膜の厚みは、10〜5,000nmであることが好ましい。透明樹脂基材の厚みは特に制限はない。例えば、高分子フィルムの場合には10〜200μmが好ましい。
【0102】
透明樹脂基材の間隔が狭く、異物質の混入等により発生する短絡現象を防止するために、透明導電膜の上に数nm〜1μm程度の厚さの透明絶縁層が形成されている透明樹脂導電性基材を使用してもよい。また、本発明の調光フィルムを反射型の調光窓に利用する場合(例えば、自動車用リアビューミラー等)は、反射体であるアルミニウム、金、又は銀のような導電性金属の薄膜を電極として直接用いてもよい。
【0103】
本発明の調光フィルム、調光層との密着性を向上させるためのプライマー層を有する2枚の透明導電性樹脂基材に挟持されているか、あるいはプライマー層を有する透明導電性樹脂基材とプライマー層を有さない透明導電性樹脂基材の2枚の透明導電性樹脂基材に挟持されていてもよい。
【0104】
上記プライマー層は、ペンタエリスリトール骨格を含有するウレタンアクリレートを含有する材料、分子内に水酸基を有する(メタ)アクリレートを含有する材料、金属酸化物微粒子を有機バインダー樹脂に分散させた材料、分子内に1つ以上の重合性基を有するリン酸エステル、アミノ基を有するシランカップリング剤等からなる薄膜で形成されるのが好ましい。
【0105】
本発明における透明導電性樹脂基材のプライマー処理(プライマー層の形成)は、例えば、プライマー層を形成する材料を、バーコーター法、マイヤーバーコーター法、アプリケーター法、ドクターブレード法、ロールコーター法、ダイコーター法、コンマコーター法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法等を単独又は組み合わせて用いて、透明導電性樹脂基材に塗布することにより行うことができる。
【0106】
なお、塗布する際は必要に応じて適当な溶剤で希釈し、プライマー層を形成する材料の溶液を用いてもよい。溶剤を用いた場合には、透明導電性樹脂基材上に塗布した後乾燥を要する。尚、プライマー層となる塗膜は必要に応じて透明導電性樹脂基材の片面のみ(透明導電膜側)に形成してもよいし、含浸法やディップコート法によって両面に形成してもよい。
【0107】
プライマー層形成に用いる溶剤としては、プライマー層を形成する材料を溶解あるいは分散し、プライマー層形成後に乾燥等により除去できるものであればよく、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエタノール、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、アニソール、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチルジグリコール、ジメチルジグリコール、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル等を用いることができ、これらの混合溶媒でもよい。
【0108】
(調光層)
本発明における調光層は、樹脂マトリックスと該樹脂マトリックス中に分散した光調整懸濁液とを含む。なお、樹脂マトリックスは、エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂を硬化したものである。エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂及び分散媒(光調整懸濁液中の分散媒)としては、エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂及びその硬化物と分散媒とが、少なくともフィルム化したときに互いに相分離しうるものを用いる。互いに非相溶又は部分相溶性のエチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂と分散媒とを組み合わせて用いることが好ましい。
【0109】
調光フィルムを得るためには、まず、液状の光調整懸濁液を、シロキサン樹脂と均質に混合し、光調整懸濁液がシロキサン樹脂中に液滴状態で分散した混合液からなる調光材料を得る。
【0110】
具体的には、以下の通りである。光調整粒子を溶媒に分散した液と光調整懸濁液の分散媒とを混合し、ロータリーエバポレーター等で溶媒を留去し、光調整懸濁液を作製する。
次いで、光調整懸濁液及びシロキサン樹脂を混合し、光調整懸濁液がシロキサン樹脂中に液滴状態で分散した混合液(調光材料)とする。
【0111】
この調光材料を、透明導電性樹脂基材上に一定な厚さで塗布し、必要に応じて溶剤を乾燥除去した後、高圧水銀灯等を用いて紫外線を照射しシロキサン樹脂を硬化させる。その結果、硬化したシロキサン樹脂からなる樹脂マトリックス中に、光調整懸濁液が液滴状に分散されている調光層が形成される。シロキサン樹脂と光調整懸濁液との混合比率を様々に変えることにより、調光層の光透過率を調節することができる。
【0112】
このようにして形成された調光層の上にもう一方の透明導電性樹脂基材を密着させることにより、調光フィルムが得られる。あるいは、この調光材料を、透明導電性樹脂基材上に一定な厚さで塗布し、必要に応じて溶剤を乾燥除去した後、もう一方の透明導電性樹脂基材でラミネートした後に紫外線を照射し、シロキサン樹脂を硬化させてもよい。2枚の透明導電性樹脂基材の両方の上に調光層を形成し、それを調光層同士が密着するようにして積層してもよい。調光層の厚みは、5〜1,000μmが好ましく、20〜100μmがより好ましい。
【0113】
樹脂マトリックス中に分散されている光調整懸濁液の液滴の大きさ(平均液滴径)は、通常0.5〜100μm、好ましくは0.5〜20μm、より好ましいくは1〜5μmである。液滴の大きさは、光調整懸濁液を構成している各成分の濃度、光調整懸濁液及びシロキサン樹脂の粘度、光調整懸濁液中の分散媒のシロキサン樹脂に対する相溶性等により決められる。
【0114】
平均液滴径は、例えば、SEMを用いて、調光フィルムの一方の面方向から写真等の画像を撮影し、任意に選択した複数の液滴直径を測定し、その平均値として算出することができる。また、調光フィルムの光学顕微鏡での視野画像をデジタルデータとしてコンピュータに取り込み、画像処理インテグレーションソフトウェアを使用し算出することも可能である。
【0115】
調光層となる調光材料の塗布には、例えば、バーコーター、アプリケーター、ドクターブレード、ロールコーター、ダイコーター、コンマコーター等の公知の塗工手段を用いることができる。調光材料を、透明導電性樹脂基材上に設けたプライマー層面に塗布し、あるいは、一方にプライマー層を有さない透明導電性樹脂基材を用いる場合には、透明導電性樹脂基材に直接塗布することもできる。なお、塗布する際は、必要に応じて、適当な溶剤で希釈してもよい。溶剤を用いた場合には、透明導電性樹脂基材上に塗布した後に乾燥を要する。
【0116】
調光材料の塗布に用いる溶剤としては、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルアセテート、エタノール、メタノール、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル等を用いることができる。液状の光調整懸濁液が、固体の樹脂マトリックス中に微細な液滴形態で分散されているフィルムを形成するためには、調光材料をホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等で混合してシロキサン樹脂中に光調整懸濁液を微細に分散させる方法、シロキサン樹脂中の樹脂成分の重合による相分離法、溶媒揮発による相分離法、又は温度による相分離法等を利用することができる。
【0117】
上記の方法によれば、電場の形成により任意に光透過率が調節できる調光フィルムが提供される。この調光フィルムは、電場が形成されていない場合には、光の散乱のない鮮明な着色状態を維持し、電場が形成されると透明な状態に転換される。この能力は、20万回以上の可逆的反復特性を示す。
【0118】
透明な状態においての光透過率増進と、着色された状態における鮮明度の増進のためには、液状の光調整懸濁液の屈折率と、樹脂マトリックスの屈折率を一致させることが好ましい。
【0119】
調光フィルムを作動させるための使用電源は交流で、10〜100ボルト(実効値)、30Hz〜500kHzの周波数範囲とすることができる。本発明の調光フィルムは、電界に対する応答時間を、消色時には1〜50秒以内、着色時には1〜100秒以内とすることができる。また、紫外線耐久性は、750W紫外線等を利用した紫外線照射試験の結果、250時間が経過した後にも安定な可変特性を示し、−50℃〜90℃で長時間放置した場合にも、初期の可変特性を維持することが可能である。
【0120】
従来技術である液晶を使用した調光フィルムの製造における、水を用いたエマルションによる方法を使用すると、液晶が水分と反応して光調整特性を失うことが多く、同一の特性のフィルムを製造しにくいという問題がある。
しかし本発明においては、液晶ではなく、光調整粒子が光調整懸濁液内に分散されている液状の光調整懸濁液を使用するため、液晶を利用した調光フィルムとは異なり、電界が印加されていない場合にも光が散乱せず、鮮明度が優れて視野角の制限のない着色状態を表す。そして、光調整粒子の含量、液滴形態や膜厚を調節したり、又は電界強度を調節したりすることにより、光可変度を任意に調節できる。また、本発明の調光フィルムは、液晶を用いないことから、紫外線露光による色調変化及び可変能力の低下、大型製品特有の透明導電性樹脂基材の周辺部と中央部間に生ずる電圧降下に伴う応答時間差も解消される。
【0121】
本発明の調光フィルムは、図2に示すように電界が印加されていないときには、光調整懸濁液内の光調整粒子のブラウン運動のため、光調整粒子の光吸収、2色性効果による鮮明な着色状態を示す。しかし、図3に示すように、電界が印加されると、液滴又は液滴連結体の中の光調整粒子が電場に平行に配列され、透明な状態に転換される。
また、本発明の調光フィルムはフィルム状態であるので、液状の光調整懸濁液をそのまま使用する従来技術による調光硝子の問題点が解消される。即ち、2枚の透明導電性樹脂基材の間への液状の懸濁液の注入の困難性、製品の上下間の水圧差による下部の膨張現象、風圧等の外部環境による基材間隔の変化による局部的な色相変化、透明導電性樹脂基材の間の密封材の破壊による調光材料の漏洩が解決される。
【0122】
また、紫外線露光による色調変化及び可変能力の低下、大型製品特有の透明導電性樹脂基材の周辺部と中央部間に生ずる電圧降下に伴う応答時間差も解消される。
また、液晶を利用した従来技術による調光窓の場合には、液晶が紫外線に容易に劣化し、またネマチック液晶の熱的特性によりその使用温度の範囲も狭い。更に、光学特性面においても、電界が印加されていない場合には光散乱による乳白色の半透明な状態を示し、電界が印加される場合にも、完全には鮮明化せず、乳濁状態が残存する問題点がある。従って、このような調光窓では、既存の液晶表示素子で動作原理として利用されている光の遮断及び透過による表示機能が不可能である。しかし、本発明による調光フィルムを使用すれば、このような問題点が解決できる。
【0123】
本発明の調光フィルムは、例えば、室内外の仕切り(パーティッション)、建築物用の窓硝子/天窓、電子産業及び映像機器に使用される各種平面表示素子、各種計器板と既存の液晶表示素子の代替品、光シャッター、各種室内外広告及び案内標示板、航空機/鉄道車両/船舶用の窓硝子、自動車用の窓硝子/バックミラー/サンルーフ、眼鏡、サングラス、サンバイザー等の用途に好適に使用することができる。
【0124】
適用法としては、本発明の調光フィルムを直接使用することも可能であるが、用途によっては、例えば、本発明の調光フィルムを2枚の基材に挟持させて使用したり、基材の片面に貼り付けて使用したりしてもよい。前記基材としては、例えば、ガラスや、上記透明樹脂基材と同様の高分子フィルム等を使用することができる。
【実施例】
【0125】
以下、本発明の実施例及びその比較例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0126】
(光調整粒子の製造例)
ヨウ素(JIS試薬特級、和光純薬工業(株)製)と酢酸イソペンチル(試薬特級、和光純薬工業(株)製)から8.5質量%ヨウ素の酢酸イソペンチル溶液(以下「ヨウ素溶液」と称する)を調製した。またニトロセルロース1/4LIG(商品名:ベルジュラックNC社製)と酢酸イソペンチルから20.0質量%硝酸セルロースの酢酸イソペンチル溶液(以下「硝酸セルロース溶液」と称する)を調製した。更に、ヨウ化カルシウム水和物(化学用、和光純薬工業(株)製)を加熱乾燥して無水化した後、酢酸イソペンチルに溶解させ、20.9質量%ヨウ化カルシウム溶液を調整した。
【0127】
300mlの四口フラスコに撹拌機と冷却管を備え、前記ヨウ素溶液の65.6g、前記硝酸セルロース溶液の82.93gを加え、水浴温度を35〜40℃としてフラスコを加熱した。フラスコ内容物の温度が35〜40℃となった後、脱水メタノール(試薬特級、和光純薬工業(株)製)を7.41g、精製水(和光純薬工業(株)製)を0.525g加えて撹拌した。そこに、前記ヨウ化カルシウム溶液を15.6g、次いでピラジン−2,5−ジカルボン酸(日化テクノサービス(株)製)を3.70g加えた。水浴温度を42〜44℃として4時間撹拌した後、放冷し、光調整粒子を含む合成液を得た。
【0128】
硝酸セルロース溶液中の水分比(%)を、平沼産業(株)製、平沼水分測定装置AQ−7(発生液:ハイドラナールアクアライトRS、対極液:アクアライトCN)を用いて測定したところ、0.84%であり、加えた溶液質量から硝酸セルロース溶液中の水分量は0.697gであった。
また、合成液内に存在する水分量は、硝酸セルロースに含まれるものと加えた精製水とに由来するものとして換算すると、0.972gだった。なお、本実施例において、ヨウ化カルシウムについては加熱乾燥して無水化した後、吸湿性が強いため、乾燥後0〜1質量%の水分を含むが、正確な測定が困難なため水分量は考慮していない。
【0129】
メタノール量は、ヨウ素、ヨウ化カルシウム及びピラジン−2,5−ジカルボン酸の合計質量12.53gを100質量部とすると59.2質量部、水分量は7.77質量部であった。
【0130】
得られた光調整粒子は、粒度分布測定(サブミクロン粒子アナライザ(製品名:N4MD、ベックマン・コールタ社製)で測定)で求められる平均粒子径が139nm、SEM観察による平均長径は259nm、平均アスペクト比は4.1であった。なお、SEMによる観察では、約100個の光調整粒子から、長径及びアスペクト比の平均値を求めた。
【0131】
また、得られた合成液を9260Gで5時間遠心分離後、傾斜して上澄み液を除き、底部に残存した沈殿にこの沈殿の質量の5倍の酢酸イソペンチルを加え、超音波で沈殿を分散し、液全体の質量を測定した。この分散した液を1g金属プレートに秤量し、120℃1時間で乾燥後、再び質量を測定し、不揮発分比%を求めた。この不揮発分比と液全体の質量から全不揮発分量、すなわち沈殿収量4.15gを求めた。
【0132】
(光調整懸濁液の製造例)
前記の「光調整粒子の製造例」で得た光調整粒子45.5gを、光調整懸濁液の分散媒としてのアクリル酸ブチル(和光特級、和光純薬工業(株)製)/メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(工業用、共栄社化学工業(株)製)/アクリル酸2−ヒドロキシエチル(和光1級、和光純薬工業(株)製)の共重合体(モノマーモル比:18/1.5/0.5、重量平均分子量:2,000、屈折率1.4719)50gに加え、撹拌機により30分間混合した。次いで酢酸イソアミルを、ロータリーエバポレーターを用いて133Paの真空で80℃、3時間減圧除去し、光調整粒子の沈降及び凝集現象のない安定な液状の光調整懸濁液を製造した。
【0133】
[比較例1]
(シロキサン樹脂の製造例)
ディーンスタークトラップ、冷却管、撹拌機、加熱装置を備えた四つ口フラスコに、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン(商品名:KBM−5102、信越化学工業(株)製)15.0g、蒸留水1.9g、酢酸(和光純薬工業(株)製)37.5g、質量比でエタノール/メタノール=9/1の混合溶媒8.9gを仕込み、65℃に昇温して5時間反応させた。反応溶液を40℃以下まで冷却した後、8000Pa以下に減圧して70℃まで昇温して2時間、脱溶工程を行った。その後、室温まで冷却してアルコキシシランの一部をシラノールへ変換した化合物14.0gを得た。また、シラノールへの変換率は54.5%であった。
【0134】
アルコキシシランのシラノールへの変換率は、赤外分光測定における水酸基由来のピーク(3435cm−1付近)の強度(A)とアルコキシ基由来のピーク(2835cm−1付近)の強度(B)から変換率=A/(A+B)×100により求められる。ジメトキシシランをシラノールに変換後の赤外分光測定より、(A)がAbs=0.250、(B)がAbs=0.211であったことから、変換率は54.5%と算出した。
【0135】
ディーンスタークトラップ、冷却管、撹拌機、加熱装置を備えた四つ口フラスコに、両末端シラノールポリジメチルシロキサン(商品名:X−21−3114、信越化学工業(株)製)44.0g、両末端シラノールポリジメチルジフェニルシロキサン(商品名:X−21−3193B、信越化学工業(株)製)156.0g、前記KBM−5102のメトキシ基をシラノールに変換したもの22.0g、ビス(2−エチルヘキサン酸)錫(商品名:KCS−405T、城北化学工業(株)製)0.01gを仕込み、ヘプタン中100℃で5時間還流し、反応を行った。温度を50℃まで冷却し、トリメチルメトキシシラン(商品名:KBM−31、信越化学工業(株)製)168.0gを添加し、再び85℃において2時間還流してエンドキャップ反応させた。
【0136】
次いで温度を75℃に冷却してリン酸ジエチル(別名:エチルアシッドホスフェート)(商品名:JP−502、城北化学工業(株)製)0.01g(脱水縮合触媒ビス(2−エチルヘキサン酸)錫と同質量)を添加し20分攪拌した後、30℃まで冷却した。次いでメタノールを210g、エタノールを90g添加し20分攪拌した。12時間静置した後アルコール相を除去し、8000Paに減圧して115℃に昇温し5時間、脱溶を行い、重量平均分子量49,000、屈折率1.4750のシロキサン樹脂188.3gを得た。
【0137】
NMRの水素積分比から、このシロキサン樹脂の3−アクリロキシプロピルメチルシロキサン繰り返し単位数は、3.5モル%であった。
【0138】
(未反応物及び副生成物の残存量の測定)
合成したシロキサン樹脂に含まれる未反応物及び副生物の残存量を、下記方法により測定したところ、1.5質量%であった。
【0139】
金属シャーレ(直径60mm、深さ10mm)に、合成したシロキサン樹脂を1.0g精秤し、120℃のオーブンで1時間加熱した後の質量を精秤した。次式により不揮発分濃度を計算した。不揮発分濃度を未反応物及び副生成物の残存量とした。
【0140】
【数1】

【0141】
W1:シャーレの質量(g)
W2:加熱前の質量(シャーレを含む)(g)
W3:加熱後、室温に戻してからの質量(シャーレを含む)(g)
【0142】
(調光材料の製造例)
上記「シロキサン樹脂の製造例」で得たシロキサン樹脂7.0g、光重合開始剤としてのビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(商品名:イルガキュア819、BASFジャパン(株)製)0.2g、前記「光調整懸濁液の製造例」で得た光調整懸濁液3.0gを添加し、1分間機械的に混合し、調光材料を製造した。
【0143】
(調光フィルムの製造例)
ITO(インジウム錫の酸化物)の透明導電膜(厚み300Å)がコーティングされているPETフィルム(300R、東洋紡績(株)製、厚み125μm、表面電気抵抗値200〜700Ω)からなる透明導電性樹脂基材を2枚準備した。一方の透明導電性樹脂基材の上には、プライマー層を形成して、基材−1を作製した。プライマー層は、以下の方法により形成した。
【0144】
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(商品名:ライトアクリレート1,6HX−A、共栄社化学(株)製)を2.0質量%、1−メトキシ−2−プロパノール/イソプロピルアルコール=7/3の混合溶媒を98質量%で混合した溶液を調整した。この溶液に、光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)をライトアクリレート1,6HX−Aに対して4質量%になるように添加し、プライマー層形成用塗布液を調製した。
【0145】
前記ITO付き透明導電膜の透明導電膜上に、前記プライマー層形成用塗布液を、マイクログラビア法(メッシュ#150)を用いて、全面塗布して、50℃/30秒、60℃/30秒、70℃/1分乾燥した後、UV照射4000mJ/cm(メタルハライドランプ)で光硬化してプライマー層を形成した。得られたプライマー層の厚みは、80nmであった。プライマー層の厚みは、瞬間分光光度計F−20(フィルメトリクス(株)製)を用いて測定した。
【0146】
また、もう1枚の透明導電性樹脂基材の上に、上記で得られた調光材料を全面塗布し、塗布層を形成した。次いで、前記基材−1におけるプライマー層が、前記塗布層に対向するようにして積層して密着させた後、メタルハライドランプを用いて4000mJ/cmの紫外線を前記積層した透明導電性樹脂基材のPETフィルム側から照射した。これにより、紫外線硬化した樹脂マトリックス内に、光調整懸濁液が球形の液滴として分散形成された調光フィルムを得た。調光フィルムにおける調光層の厚みは95μmであり、調光フィルムの総厚は345μmであった。
【0147】
次いで、電圧印加用の通電をとるため、この調光フィルムの端部から調光層の一部を除去し、端部の透明導電膜を露出させた(図4参照)。
【0148】
(評価)
−光調整懸濁液の平均液滴径−
調光フィルム中の光調整懸濁液の平均液滴径を、光学顕微鏡により測定したところ、3μmであった。平均液滴径は約30個観察したときの平均値である。
【0149】
−調光フィルムの光透過率−
ヘイズメータTC-1800H(日本電色工業(株)製)を使用し、電界印加時と未印加時の調光フィルムの光透過率を測定した。
調光フィルムの光透過率は、交流電圧を印加しない場合(未印加時:Toff)は0.3%であった。また、50Hzの交流電圧100V(実効値)の印加時の調光フィルムの光透過率(Ton)は57%であった。電界印加時と電界未印加時の光透過率の差(ΔT=Ton−Toff)が56.7%であった。
【0150】
−光透過性保持率―
110℃で2時間保管した後の調光フィルムについて、上記光透過率の測定と同様の方法で光透過率を測定し、光透過性保持率(%)を次式から求めた。その結果、本調光フィルムの光透過性保持率はそれぞれ、90%を超えていた。
光透過性保持率=(耐熱試験後のΔT)/(耐熱試験前のΔT)×100
【0151】
また、保管温度を115℃又は120℃に変えた以外は同様の方法により光透過性保持率(%)を測定した。115℃及び120℃の光透過性保持率(%)は、それぞれ50%及び31%であった。
【0152】
[実施例1]
(未反応物及び副生成物の除去)
比較例1における「シロキサン樹脂の製造例」と同様の方法によりシロキサン樹脂を作製した後、そのシロキサン樹脂50gとエタノール/メタノール=90/10の混合液50gを上述設備と同じ四つ口フラスコに入れ、20分間攪拌混合した。その後、攪拌を停止し、室温で24時間静置すると2相に分離した。上層のアルコール相を取り除き、8000Paに減圧して70℃まで昇温して2時間、溶媒を除去し、精製シロキサン樹脂47gを得た。
【0153】
(未反応物及び副生成物の残存量の測定)
得られたシロキサン樹脂について、前述の方法により、未反応物及び副生成物の残存量を測定したところ、0.3%であった。
【0154】
(調光材料及び調光フィルムの製造)
上記で作製したシロキサン樹脂を用いて、比較例1と同様の方法で調光材料及び調光フィルムを作製した。
【0155】
(光透過性保持率の測定)
得られた調光フィルムについて、前述の方法により光透過性保持率を測定した。110℃、115℃及び120℃の光透過性保持率(%)は、それぞれ>90%、87%及び67%であった。
【0156】
[実施例2]
(未反応物及び副生成物の除去)
実施例1における「未反応物及び副生成物の除去」と同様の方法により、但し、メタノール/エタノール(15/85)混合溶媒に変えて、精製シロキサン樹脂47gを得た。
【0157】
(副生成物の残存量の測定)
得られたシロキサン樹脂について、前述の方法により、未反応物及び副生成物の残存量を測定したところ、0.4%であった。
【0158】
(調光材料及び調光フィルムの製造)
上記で作製したシロキサン樹脂を用いて、比較例1と同様の方法で調光材料及び調光フィルムを作製した。
【0159】
(光透過性保持率の測定)
得られた調光フィルムについて、前述の方法により光透過性保持率を測定した。110℃、115℃及び120℃の光透過性保持率(%)は、それぞれ>90%、87%及び65%であった。
【0160】
[実施例3]
(未反応物及び副生成物の除去)
比較例1における「シロキサン樹脂の製造例」と同様の方法によりシロキサン樹脂を作製した。このシロキサン樹脂50gを短行程蒸留装置(UIC社製、KD6型)を用い、オイル循環温度105℃、ワイパー速度100rpm、滴下速度2.5mL/min、2〜4Paの真空度で蒸留を行ない、230gを得た。
【0161】
(副生成物の残存量の測定)
得られたシロキサン樹脂について、前述の方法により、未反応物及び副生成物の残存量を測定したところ、0.6%であった。
【0162】
(調光材料及び調光フィルムの製造)
上記で作製したシロキサン樹脂を用いて、比較例1と同様の方法で調光材料及び調光フィルムを作製した。
【0163】
(光透過性保持率の測定)
得られた調光フィルムについて、前述の方法により光透過性保持率を測定した。110℃、115℃及び120℃の光透過性保持率(%)は、それぞれ>90%、87%及び68%であった。
【0164】
[実施例4]
(未反応物及び副生成物の除去)
実施例3における「未反応物及び副生成物の除去」と同様の方法により、但し、オイル循環温度105℃、ワイパー速度100rpm、滴下速度2.5mL/min、20Paの真空度に変えて、シロキサン樹脂250gを得た。
【0165】
(未反応物及び副生成物の残存量の測定)
得られたシロキサン樹脂について、前述の方法により、未反応物及び副生成物の残存量を測定したところ、0.8%であった。
【0166】
(調光材料及び調光フィルムの製造)
上記で作製したシロキサン樹脂を用いて、比較例1と同様の方法で調光材料及び調光フィルムを作製した。
【0167】
(光透過性保持率の測定)
得られた調光フィルムについて、前述の方法により光透過性保持率を測定した。110℃、115℃及び120℃の光透過性保持率(%)は、それぞれ>90%、75%及び52%であった。
【0168】
[実施例5]
(未反応物及び副生成物の除去)
実施例3における「未反応物及び副生成物の除去」と同様の方法により、但し、オイル循環温度100℃、ワイパー速度100rpm、滴下速度2.5mL/min、20Paの真空度に変えて、シロキサン樹脂250gを得た。
【0169】
(未反応物及び副生成物の残存量の測定)
得られたシロキサン樹脂について、前述の方法により、未反応物及び副生成物の残存量を測定したところ、1.0%であった。
【0170】
(調光材料及び調光フィルムの製造)
上記で作製したシロキサン樹脂を用いて、比較例1と同様の方法で調光材料及び調光フィルムを作製した。
【0171】
(光透過性保持率の測定)
得られた調光フィルムについて、前述の方法により光透過性保持率を測定した。110℃、115℃及び120℃の光透過性保持率(%)は、それぞれ>90%、64%及び47%であった。
【0172】
[比較例2]
(シロキサン樹脂の製造例)
比較例1と同様の方法で、但し、脱溶温度を100℃に変えてシロキサン樹脂を合成した。
【0173】
(未反応物及び副生成物の残存量の測定)
得られたシロキサン樹脂について、前述の方法により、未反応物及び副生成物の残存量を測定したところ、1.8質量%であった。
【0174】
(調光材料及び調光フィルムの製造)
上記で作製したシロキサン樹脂を用いて、比較例1と同様の方法で調光材料及び調光フィルムを作製した。
【0175】
(光透過性保持率の測定)
得られた調光フィルムについて、前述の方法により光透過性保持率を測定した。110℃、115℃及び120℃の光透過性保持率(%)は、それぞれ>90%、40%及び22%であった。
【0176】
【表1】

【0177】
比較例1の調光フィルムの光透過性保持率は、110℃、115℃及び120℃の保存において、それぞれ>90%、50%及び31%であった。また、比較例2の調光フィルムの光透過性保持率は、110℃、115℃及び120℃の保存において、それぞれ>90%、40%及び22%であった。よって、アルコール精製や蒸留処理を施した実施例1〜5の調光フィルムは、比較例1及び2の調光フィルムに比べて、光透過性保持率において著しく優れていた。
【符号の説明】
【0178】
1 調光層
2 樹脂マトリックス
3 液滴
4 透明導電性樹脂基材
5a 透明導電膜
5b 透明樹脂基材
6 プライマー層
7 電源
8 スイッチ
9 分散媒
10 光調整粒子
11 入射光
12 調光層を除去して露出した透明導電膜の表面
13 透明導電膜に電圧印加する導線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂と、前記エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂中に分散した光調整懸濁液と、を含み、
前記エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂中の未反応物及び副生成物の総含有量が、0〜1質量%である調光材料。
【請求項2】
前記エチレン性不飽和基含有シロキサン樹脂は、アルコールによる精製又は蒸留により未反応物及び副生成物の総含有量が0〜1質量%とされてなる請求項1に記載の調光材料。
【請求項3】
2つの透明導電性樹脂基材と、
前記2つの透明導電性樹脂基材に挟持され、請求項1又は請求項2に記載の調光材料の硬化物である調光層と、
を備える調光フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−159670(P2012−159670A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18899(P2011−18899)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】