説明

調剤用錠剤収納ケースの調剤情報表示部材

【課題】 病院の薬局や調剤薬局において使用されている、シート状にブリスターパックされた錠剤(ブリスターパック錠剤)を種類毎に収納し、調剤台1の棚に並べられる調剤用錠剤収納ケース2からブリスターパック錠剤Tを支障なく取出すことができる調剤情報表示部材11を提供する。
【解決手段】 調剤用錠剤収納ケース12の前板12aに着脱自在に装着される取付けベース14と、この取付けベース14の上端に回転ヒンジ16を介して、調剤用錠剤収納ケース12のシート取出し口13を閉じる方向と、シート取出し口13を開く方向とに回転可能に設けられる調剤情報表示板15とによって、調剤情報表示部材11を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、病院の薬局や調剤薬局において使用されている、シート状にブリスターパックされた錠剤(ブリスターパック錠剤)を種類毎に収納し、調剤台の棚に並べられる調剤用錠剤収納ケースに、収納錠剤の薬品情報や調剤注意事項等の調剤情報を表示する部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、病院の薬局や調剤薬局においては、図12及び図13に示すように、ブリスターパック錠剤Tを、調剤台1の棚に並べられる調剤用錠剤収納ケース2に薬剤毎に多数枚収納しておき、患者の処方箋を見ながら薬剤師が、調剤用錠剤収納ケース2からブリスターパック錠剤Tのシートを必要枚数取り出し、端数を1シートから切り取って患者に提供している。
【0003】
そして、1シートから切り取った端数の残りのブリスターパック錠剤Tは、次の処方の際に使用するために、調剤用錠剤収納ケース2の端数収納部3に保管している。
【0004】
ところで、病院の薬局や調剤薬局において使用されるブリスターパック錠剤Tの種類は、何百とあり、ベテランの薬剤師でも、それぞれの錠剤の用法、粉砕可否、上限投与量等の薬品情報や調剤注意事項等の調剤情報をすべて覚えることは困難であるため、調剤中に気になったときには、その錠剤の説明書等で確認する必要が生じる。
【0005】
この確認作業を容易に行うために、従来、調剤用錠剤収納ケース2に、薬品情報や調剤注意事項等を表示した調剤情報表示部材4を設置したものが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2006−158587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
調剤情報表示部材4を備える従来の調剤用錠剤収納ケース1は、図13に示すように、ブリスターパック錠剤シートTの収納部5と前方のシート取出し口6とを仕切るように、板状の調剤情報表示部材4を、上端の揺動軸7により、暖簾式に揺動可能に設けている。また、錠剤名表示カード9は、調剤用錠剤収納ケース1の前板10の収納ポケット10aに収容されている。
【0008】
そして、ブリスターパック錠剤Tのシートを取出す際には、錠剤名表示カード9によって錠剤名を確認した後、板状の調剤情報表示部材4を後方へ揺動させて、シート取出し口6から収納部5に手を入れてブリスターパック錠剤Tのシートを引き出すようにしている。
【0009】
ところが、調剤用錠剤収納ケース1に収納されているブリスターパック錠剤Tのシートの量が多い場合には、板状の調剤情報表示部材4が、図13に鎖線で示すように、積み重ねられたブリスターパック錠剤Tに引っ掛かって、板状の調剤情報表示部材4がうまく回転せず、ブリスターパック錠剤Tのシートの取り出しに手間がかかるという問題があった。
【0010】
また、病院の薬局や調剤薬局において使用されるブリスターパック錠剤Tには、インフルエンザ治療薬のように、季節によって使用量が大きく異なるものがある。
【0011】
このようなブリスターパック錠剤Tの場合、使用量の多い時期には、側板を高くして収納量を多くした収納部5の大きい調剤用錠剤収納ケース1に収納し、使用量の少ない時期になると、収納部5の小さい調剤用錠剤収納ケース1に収納して使用されている。
【0012】
このように、使用する調剤用錠剤収納ケース1を変更した場合、調剤情報表示部材4も取り換えなければならないが、従来の調剤情報表示部材4は、調剤用錠剤収納ケース1に対して着脱できない構造であるため、調剤情報表示部材4に貼り付けたシート8等を剥がして、貼り変えるなど、表示変更に手間がかかるという問題があった。
【0013】
そこで、この発明は、ブリスターパック錠剤Tのシートの取出しに、支障がなく、しかも、調剤用錠剤収納ケース1を取り替えた際に、調剤情報表示部材も簡単に取り替えることができる、調剤用錠剤収納ケース1の調剤情報表示部材を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の課題を解決するために、この発明は、矩形の底板と、この底板の両側に設けられる側板と、底板の後端に設けられる後板と、底板の前端に設けられる前板とを有し、前板の高さを後板よりも低くして、前面にシート取出し口を設けた調剤用錠剤収納ケースに設置される調剤情報表示部材を次のように構成したのである。
【0015】
即ち、この発明の調剤用錠剤収納ケースの調剤情報表示部材は、前板に着脱自在に装着される取付けベースと、この取付けベースの上端に回転ヒンジを介して、上記シート取出し口を閉じる方向と、前板の前面側に回転して上記シート取出し口を開く方向とに回転可能に設けられる調剤情報表示板とからなる。
【0016】
上記シート取出し口を閉じる方向に回転させた位置は、前板に対して後方に傾斜する位置にすることができる。
【0017】
上記取付けベースは、前板の前面の周囲を囲む額縁形状に形成され、透明な前板の裏面に収納した錠剤名表示カードを前方から視認可能にすることができる。
【0018】
上記取付けベースは、前板の下面裏面に引っ掛かる下方引っ掛け爪と、前板の上面裏面に引っ掛かる上方引っ掛け爪とが設けられ、上記前板に対し着脱可能に装着することができる。
【0019】
上記調剤情報表示板の表面には、調剤情報表示カードの装着部を設けることができる。
【0020】
上記調剤情報表示板の表面に設けた調剤情報表示カードの装着部は、調剤情報表示カードを嵌め入れる凹部と、凹部に嵌め入れた調剤情報表示カードの抜け落ちを防止する、調剤情報表示カードの周縁部の少なくとも一部を係止する係止爪によって構成することができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明の調剤用錠剤収納ケースの調剤情報表示部材は、調剤用錠剤収納ケースの前板に着脱自在に装着される取付けベースの上端に回転ヒンジを介して、上記シート取出し口を閉じる方向と、前板の前面側に回転してシート取出し口を開く方向とに回転可能に設けられる薬剤情報表示板とからなるので、薬剤師は、調剤用錠剤収納ケースからブリスターパック錠剤のシートを取出す際に、シート取出し口に位置する調剤情報表示板によって、取出す錠剤の調剤情報を確認することができ、確認後、調剤情報表示板を、前板の前面側に回転してシート取出し口を開くことにより、ブリスターパック錠剤シートの収納量に拘わらず、支障なくブリスターパック錠剤のシートを取り出すことができる。
【0022】
また、この発明の調剤用錠剤収納ケースの調剤情報表示部材は、前板に対して取付けベースが着脱自在に装着されているので、調剤用錠剤収納ケースを変更した際に、調剤情報表示部材を古い調剤用錠剤収納ケースから取外し、新しい調剤用錠剤収納ケースに装着することによって、調剤情報表示カードの貼り替えや書き換え等の面倒な作業を行う必要がなくなり、調剤作業の省力化が行える。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明に係る調剤情報表示部材と調剤用錠剤収納ケースを分離した状態で示す斜視図である。
【図2】この発明に係る調剤情報表示部材の調剤情報表示板に、調剤情報表示カードを撓ませて挿入する状態を示す一部縦断拡大図である。
【図3】この発明に係る調剤情報表示部材を調剤用錠剤収納ケースに装着した状態を示す部分拡大図である。
【図4】この発明に係る調剤情報表示部材の斜視図である。
【図5】この発明に係る調剤情報表示部材を構成する取付けベースと調剤情報表示板とを分離させた状態で示した斜視図である。
【図6】この発明に係る調剤情報表示部材を調剤用錠剤収納ケースに装着した状態を示す斜視図である。
【図7】図6の調剤情報表示部材と調剤用錠剤収納ケースに、調剤情報表示カードと錠剤名表示カードを装着した状態を示す斜視図である。
【図8】調剤情報表示板を前方に回転させて調剤用錠剤収納ケースのシート取出し口を開いた状態を示す斜視図である。
【図9】調剤情報表示板を閉じた状態の調剤用錠剤収納ケースの使用状態を示す断面図である。
【図10】調剤情報表示板を開いた状態の調剤用錠剤収納ケースの使用状態を示す断面図である。
【図11】この発明に係る調剤情報表示部材を装着した調剤用錠剤収納ケースを調剤台の棚に並べた状態を示す斜視図である。
【図12】従来の調剤用錠剤収納ケースを調剤台の棚に並べた状態を示す斜視図である。
【図13】従来の調剤用錠剤収納ケースの使用状態を示す断面図である。
【図14】従来の調剤用錠剤収納ケースの使用状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
この発明に係る調剤情報表示部材11は、図1に示すように、調剤用錠剤収納ケース12に着脱可能に装着される。
【0025】
調剤用錠剤収納ケース12は、矩形の底板12aと、この底板12aの両側に設けられる側板12bと、底板12aの後端に設けられる後板12cと、底板12aの前端に設けられる前板12dとを有し、前板12dの高さを後板12cよりも低くして、前面にシート取出し口13を設けている。
【0026】
調剤情報表示部材11は、前板12aに着脱自在に装着される取付けベース14と、この取付けベース14の上端に回転ヒンジ16を介して、上記シート取出し口13を閉じる方向と、前板12dの前面側に回転して上記シート取出し口13を開く方向とに回転可能に設けられる調剤情報表示板15とからなる。
【0027】
上記調剤用錠剤収納ケース12の側板12bの前方辺は、斜め後方に傾斜する傾斜辺12eになっており、調剤情報表示板15のシート取出し口13を閉じる位置において、調剤情報表示板15は傾斜辺12eに当接して傾斜する。
【0028】
上記調剤情報表示板15の表面には、調剤情報表示カード17を嵌め入れる凹部15aが設けられ、この凹部15aの上下辺の中央部分と、その4隅には、凹部15aに嵌め入れた調剤情報表示カード17の抜け落ちを防止する係止爪15bを設けている。
【0029】
この調剤情報表示板15の凹部15aに調剤情報表示カード17を嵌め入れるには、図2の拡大断面図に示すように、調剤情報表示カード17を撓ませながら、係止爪15bの下に、調剤情報表示カード17を潜り込ませるようにする。
【0030】
また、調剤情報表示板15の凹部15aに嵌め入れた調剤情報表示カード17の取外しを容易にするために、凹部15aの中央部には、調剤情報表示カード17を背面から指で押すことができるように、貫通孔15cを設けている。
【0031】
次に、上記取付けベース14は、調剤用錠剤収納ケース12の前板12dの前面の周囲を囲む額縁形状に形成されている。
【0032】
調剤用錠剤収納ケース12は、透明な樹脂によって形成され、前板12dには、錠剤名表示カード18を収納する収納ポケット12fが設けられている。
【0033】
この収納ポケット12fに収容された錠剤名表示カード18は、額縁形状の取付けベース14の開口部14aから視認可能になっている。
【0034】
調剤情報表示カード17及び錠剤名表示カード18は、紙製、樹脂製等、種々の材質のものを使用することができ、錠剤の名称を印刷したものや、錠剤が収容されていた箱(薬剤箱)を切り取ったもの等も使用可能である。通常、薬剤箱の表面には、流通過程で目立つように複数色で薬剤の名称や注意書き等が印刷されている。したがって、薬剤の名称や注意書き等が最もわかりやすい部分を切り取って使用すればよい。
【0035】
上記取付けベース14の下辺と上片の裏面には、図3の拡大図に示すように、調剤用錠剤収納ケース12の前板12dの下面に引っ掛かる下方引っ掛け爪14bと、前板12dの上面に引っ掛かる上方引っ掛け爪14cとが設けられ、下方引っ掛け爪14bと上方引っ掛け爪14cとにより、取付けベース14が、調剤用錠剤収納ケース12の前板に対し着脱可能に装着することができる。
【0036】
上記取付けベース14と調剤情報表示板15とは、図4及び図5に示すように、回転ヒンジ16を介して互いに回転可能で、着脱可能に取付けられている。
【0037】
回転ヒンジ16は、図5に示すように、取付けベース14の上辺の両端に設けた回転軸16aと、調剤情報表示板15の下面に設けた受け爪16bとによって構成し、取付けベース14と調剤情報表示板15とを分離可能にしている。
【0038】
回転ヒンジ16の構成としては、上記回転軸16aと受け爪16bからなるもの以外でもよく、例えば、取付けベース14と調剤情報表示板15とを一体成形し、取付けベース14と調剤情報表示板15とを薄肉の樹脂ヒンジを介して連結するようにしてもよい。
【0039】
図6は、この発明に係る調剤情報表示部材11を、調剤用錠剤収納ケース12に装着した状態を示し、図7は、調剤情報表示板15に調剤情報表示カード17を嵌め入れ、調剤用錠剤収納ケース12の前板12dの収納ポケット12fに、錠剤名表示カード18を挿し入れた状態を示している。
【0040】
調剤情報表示部材11を装着した調剤用錠剤収納ケース12からブリスターパック錠剤Tのシートを取出すには、図8に示すように、調剤情報表示板15を前方に回転させて、調剤用錠剤収納ケース12のシート取出し口13を開き、シート取出し口13からブリスターパック錠剤Tのシートを取出す。
【0041】
図9は、調剤用錠剤収納ケース12にブリスターパック錠剤Tを収容し、調剤情報表示板15を閉じた状態を示し、図10は、調剤情報表示板15を前方に回転させて、シート取出し口13を開き、シート取出し口13からブリスターパック錠剤Tのシートを取出す状態を示している。
【0042】
調剤用錠剤収納ケース12の底面には、ブリスターパック錠剤Tのシートを取出す際に、シートの先端が前板12dに引っ掛からないように、前板12dの略上方に向けたアール形状の突起12gを設けている。
【0043】
また、この突起12gと前板12dの間には、1シートから切り取った端数の残りのブリスターパック錠剤Tを保管しておく、端数収納部12hが設けられている。
【0044】
また、調剤用錠剤収納ケース12には、使用するブリスターパック錠剤Tの長さに応じて、奥行きを変更できるように、後板12cと平行に、仕切り板19が設けられている。仕切り板19は、側板12bの後方寄りに設けた3か所の仕切り溝20に挿入することができる。
【0045】
この発明に係る調剤情報表示部材11を装着した調剤用錠剤収納ケース12は、図11に示すように、調剤台1の棚に並べて使用される。
【符号の説明】
【0046】
1 調剤台
11 調剤情報表示部材
12 調剤用錠剤収納ケース
12a 底板
12b 側板
12c 後板
12d 前板
12e 傾斜辺
12f 収納ポケット
12g 突起
12h 端数収納部
13 シート取出し口
14 取付けベース
14a 開口部
14b 下方引っ掛け爪
14c 上方引っ掛け爪
15 調剤情報表示板
15a 凹部
15b 係止爪
15c 貫通孔
16 回転ヒンジ
16a 回転軸
16b 受け爪
17 調剤情報表示カード
18 錠剤名表示カード
T ブリスターパック錠剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の底板と、この底板の両側に設けられる側板と、底板の後端に設けられる後板と、底板の前端に設けられる前板とを有し、前板の高さを後板よりも低くして、前面にシート取出し口を設けた調剤用錠剤収納ケースに設置される、上記前板に着脱自在に装着される取付けベースと、この取付けベースの上端に回転ヒンジを介して、上記シート取出し口を閉じる方向と、上記シート取出し口を開く方向とに回転可能に設けられる調剤情報表示板とからなる調剤用錠剤収納ケースの調剤情報表示部材。
【請求項2】
上記シート取出し口を閉じた位置で、調剤情報表示板が前板に対して後方に傾斜する請求項1記載の調剤用錠剤収納ケースの調剤情報表示部材。
【請求項3】
上記取付けベースは、前板の前面の周囲を囲み、中央が開口する額縁形状に形成され、透明な前板の収納ポケットに収納した錠剤名表示カードを前方から視認可能にしたことを特徴とする請求項1又は2記載の調剤用錠剤収納ケースの調剤情報表示部材。
【請求項4】
上記取付けベースは、前板の下面に引っ掛かる下方引っ掛け爪と、前板の上面に引っ掛かる上方引っ掛け爪とにより、上記前板に対し着脱可能に装着される請求項1〜3のいずれかに記載の調剤用錠剤収納ケースの調剤情報表示部材。
【請求項5】
上記調剤情報表示板の表面に、調剤情報表示カードの装着部を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の調剤用錠剤収納ケースの調剤情報表示部材。
【請求項6】
上記調剤情報表示板の表面に設けた調剤情報表示カードの装着部が、調剤情報表示カードを嵌め入れる凹部と、凹部に嵌め入れた調剤情報表示カードの抜け落ちを防止する、調剤情報表示カードの周縁部の少なくとも一部を係止する係止爪とからなる請求項5に記載の調剤用錠剤収納ケースの調剤情報表示部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−29982(P2012−29982A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173760(P2010−173760)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(592246705)株式会社湯山製作所 (202)
【Fターム(参考)】