説明

調律装置

【課題】調律機能を低下させることなく、かつ、装置の耐久性を向上することができる調律装置を提供する。
【解決手段】楽器の調律状態を演算する電気回路を備えた調律装置本体15と、調律装置本体を楽器に装着する一対の板材を有するクリップ部11と、調律装置本体とクリップ部とを連結する連結部材17,19と、楽器から発せられる音を検知する振動センサ13と、を備え、連結部材が、連結部材の延在方向の周りにクリップ部を回動自在とする第一回動部と、延在方向に交差する方向の周りに調律装置本体を回動自在とする第二回動部と、を有する調律装置10において、振動センサが、連結部材に内蔵され、調律装置本体と一体的に延在方向の周りに回転可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調律装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、任意の音を入力してその音高情報を基準として調律を行うようにした調律装置が知られている。図11に従来の調律装置400の構成を示す。マイクロフォン401および振動センサ405は楽器から発せられる音を採取し、これを電気信号に変換する。増幅器402はマイクロフォン401および/又は振動センサ405の出力信号を取り込み、これを所望のレベルの電気信号に増幅する。CPU403は、増幅器402の出力信号を取り込み、この信号からマイクロフォン401および/又は振動センサ405で採取した音の基本周期を抽出するピッチ抽出手段を有する。また、CPU403は基準音設定手段を有し、使用者は基準音を予め設定する。さらに、CPU403はピッチ誤差検出手段を有し、ピッチ抽出手段の出力と、基準音設定手段の出力を取り込み、両者のピッチ誤差を算出し、その結果を表示手段404に出力する。表示手段404は、基準音と調律対象となる楽器の音のピッチの差を視覚的に表示することになる。以上の構成により、楽器の調律時の指標を示すのが調律装置の調律機能である。
【0003】
なお、振動センサ405としては、圧電素子などの小型部品が使用される。ピッチ抽出手段は「入力された信号の中で最も周期が長い基本波成分の周期を計測する」というような命令がCPU403のメモリに記憶されている。また、ピッチ誤差検出手段は「入力された周波数の差を計算する」という命令がCPU403のメモリに記憶されている。増幅器402やメモリなどが回路基板に実装され、調律装置本体内部に収納される。基準音設定手段はスイッチなどで構成されている。表示手段404はメーター、LCDの他、複数のLEDの組み合わせなどで構成されている。図12は、一般的な調律装置の外観図である。
【0004】
従来の調律装置は、調律対象である楽器から発せられる音を効率良く感知する場所を探りながら設置する必要があった。調律対象が金管楽器の場合、ベル付近の発音側が最も効率の良い採音ができる位置であるが、この位置に調律装置を設置すると、表示面がベルに隠れてしまうという問題があった。このような問題を解消するために、楽器の発音部近傍を挟持するクリップ部と、調律した結果を表示する表示面との間に回動可能な継手を設け、表示面が演奏者から視認し易い位置に配置可能な調律装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−255932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の調律装置は、クリップ部に取り付けられた振動センサと、表示部内に配された回路基板との間を配線で接続しているが、表示部を回動させると継手内に配されている配線も一緒に回動されるため、配線が捩れてしまう。したがって、配線が短期間で破断するという問題があった。そのため、振動センサをクリップ部に設けず、表示部側に設けたものが提案されているが、このように構成すると、振動センサで音を感知しにくくなるため、調律装置としての性能が低下してしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、調律機能を低下させることなく、かつ、装置の耐久性を向上することができる調律装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明に係る調律装置は、楽器の調律状態を演算する電気回路を備えた調律装置本体と、該調律装置本体を前記楽器に装着する一対の板材を有するクリップ部と、前記調律装置本体と前記クリップ部とを連結する連結部材と、前記楽器から発せられる音を検知する振動センサと、を備え、前記連結部材が、該連結部材の延在方向の周りに前記クリップ部を回動自在とする第一回動部と、前記延在方向に交差する方向の周りに前記調律装置本体を回動自在とする第二回動部と、を有する調律装置において、前記振動センサが、前記連結部材に内蔵され、前記調律装置本体と一体的に前記延在方向の周りに回転可能に構成されていることを特徴としている。
【0008】
このように構成することで、クリップ部の一対の板材を楽器に挟み込んで配置し、調律装置本体を連結部材(第一回動部および第二回動部)とともに回動させることにより調律装置本体の表示面を演奏者が視認できる位置に配置することができる。また、連結部材に振動センサを内蔵することにより、振動センサをクリップ部に近接して配置することができる。したがって、調律機能を低下させることがない。
また、振動センサを連結部材に内蔵することにより、連結部材の延在方向の周りに回動させて調律装置本体を回転させる際に、振動センサも一体的に回転するため、振動センサと調律装置本体の内部に配される電気回路との間を接続する配線が捩れるのを防ぐことができる。したがって、配線が短期間で破断することを防ぐことができるため、調律装置の耐久性を向上することができる。
【0009】
また、前記連結部材が前記クリップ部の一方の板材を貫通して配置され、前記板材における前記楽器との当接面側に前記振動センサが配置されていることを特徴としている。
このように構成することで、振動センサを楽器の直近に配置することができるため、振動センサで音を感知しやすくなる。
【0010】
また、前記振動センサと前記調律装置本体の内部に配された電気回路との間を接続する配線が、前記連結部材の内部に架設されていることを特徴としている。
このように構成することで、配線が露出されないため、接触などの外的要因により破断してしまうのを防止することができ、装置の耐久性を向上することができる。また、配線が視認できないため、見栄えを向上することができる。なお、第二回動部における調律装置本体の回動範囲は限られるため、第二回動部において配線が捩れることはない。
【0011】
また、前記第二回動部の回動軸は導電材で構成され、前記振動センサと前記調律装置本体の内部に配された電気回路とが、前記回動軸を介して電気的に接続されていることを特徴としている。
このように構成することで、第二回動部において配線が屈曲変形を繰り返すことがないため、装置の耐久性をさらに向上することができる。
【0012】
さらに、前記連結部材は内面または外面にメッキ配線を備え、前記振動センサと前記電気回路とが、前記メッキ配線を介して電気的に接続されていることを特徴としている。
このように構成することで、第一回動部と第二回動部との間で、配線を廃止することができる。つまり、連結部材を配線の一部として機能させることができる。したがって、配線が第二回動部と調律装置本体内に配置された電気回路との間を接続する部分にのみ配されるため、配線が破断されるのを確実に抑制することができ、装置の耐久性をさらに向上することができる。
【0013】
そして、前記連結部材は導電材で構成され、前記振動センサと前記電気回路とが、前記連結部材を介して電気的に接続されていることを特徴としている。
このように構成することで、第一回動部と第二回動部との間で、配線の少なくとも一方を廃止することが可能となる。つまり、連結部材を配線の一部として機能させることができる。したがって、配線が第二回動部と調律装置本体内に配置された電気回路との間を接続する部分にのみ配されるため、配線が破断されるのを確実に抑制することができ、装置の耐久性をさらに向上することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る調律装置によれば、クリップ部の一対の板材を楽器に挟み込んで配置し、調律装置本体を連結部材(第一回動部および第二回動部)とともに回動させることにより調律装置本体の表示面を演奏者が視認できる位置に配置することができる。また、連結部材に振動センサを内蔵することにより、振動センサをクリップ部に近接して配置することができる。したがって、調律機能を低下させることがない。
また、振動センサを連結部材に内蔵することにより、連結部材の延在方向の周りに回動させて調律装置本体を回転させる際に、振動センサも一体的に回転するため、振動センサと調律装置本体の内部に配される電気回路との間を接続する配線が捩れるのを防ぐことができる。したがって、配線が短期間で破断することを防ぐことができるため、調律装置の耐久性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第一実施形態)
次に、本発明に係る調律装置の第一実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。
図1に示すように、調律装置10は、互いに係合する一対の板材21,22を有するクリップ部11と、楽器から発せられる音の振動状態を検出する振動センサ13と、振動センサ13から伝達された電気信号を処理する電子回路(不図示)および電子回路を駆動する電池(不図示)を実装し、その判別結果を表示可能に構成された表示部15と、クリップ部11と表示部15との間を連結する第一回動部17および第二回動部19とを備えている。
【0016】
クリップ部11は、一対の板材21,22の間に設けられたバネ性物質の反発力により、楽器の発音箇所近傍に挟持することができるようになっている。バネ性物質としては、例えば板バネ、コイルバネなどが用いられる。クリップ部11は、管楽器のベルや管の一部、ギターのネックなど、一対の板材21,22の間に形成される開口広さ以下の厚さの箇所を挟み込むことができるようになっている。
【0017】
振動センサ13は、例えば圧電素子が用いられるが、調律装置10としての基準音を発生する機能を有している点で圧電素子が好適である。圧電素子は、振動により素子に生じた機械的ひずみを電気信号に変換するものである。この性質を利用して、楽器から音を発生させたときの振動を電気信号として捉えることができる。また、圧電素子に電圧を印加すると、印加した電圧値の変化に応じたひずみが圧電素子に生じるという性質を利用して、この圧電素子に可聴範囲の振動を誘起して発音体を構成することができる。
本実施形態では、振動センサ13として外形略円形形状の圧電素子を使用し、この圧電素子が同時に基準音を発生する発音体としての役割も兼ねている。このように構成することで、調律機能と基準音発生機能を一つの圧電素子で兼用することができるため、省スペース化および部品点数の削減を図ることができ、調律装置10を小型軽量かつ安価に構成することができる。
【0018】
表示部15は、表面15aに調律状態を表示する表示画面を備え、内部には電気回路や電池を実装している。表示画面としては、メーター、複数のLEDを並べたものやLCD表示器などが使用される。本実施形態では、LCDにより表示画面を構成している。振動センサ13からの電気信号は増幅回路により所望のレベルの電気信号に増幅される。増幅された信号はピッチ抽出手段に入力される。ピッチ抽出手段では、例えば「入力された信号の中で最も周期が長い基本波成分の周期を計測する」というような命令が記憶されているメモリとマイクロコンピュータで実現される。ここで計測されたピッチと予め設定されている基準ピッチがピッチ誤差検出手段に入力される。ピッチ誤差検出手段は「入力された周波数の差を計算する」という命令が記憶されているメモリとマイクロコンピュータによって実現される。ここで、計算された周波数偏差の値に応じて、LCD表示器に結果を表示させる。
【0019】
図2に示すように、第一回動部17は、例えば樹脂で形成された略円筒状の部材である。第一回動部17は、クリップ部11の一方の板材(例えば、板材21)における楽器との当接面21aに対して鉛直方向に立設されるとともに、軸Mを中心に360度回転可能に構成された軸部25と、軸部25における板材21側の端部において直径が軸部25より大きく形成された収納部27と、を備えている。また、本実施形態では、軸部25が板材21を貫通しており、収納部27が板材21の内側(板材22との対向面側)に配されている。軸部25および収納部27は、ともに内部が空洞になっており、収納部27の内部には振動センサ13が収納されている。振動センサ13は、その周縁部13aが第一回動部17の内面17aに接着剤などにより接着固定されている。
【0020】
このように構成することで、振動センサ13は楽器から発せられる音に対してひずみを生じる。また、振動センサ13と表示部15内に配された電気回路との間を接続する配線29が第一回動部17内に沿って配されている。また、収納部27における端面にはパッド31が設けられている。このように構成することにより、第一回動部17を軸Mを中心に回転させると、表示部15が回転するとともに、振動センサ13およびパッド31が一体となって回転するように構成されている。
【0021】
図3に示すように、第二回動部19は、第一回動部17と表示部15との間を連結した箇所に形成されており、軸Mに対して垂直面内方向に形成された回動軸35を備えている。回動軸35を中心に表示部15を回動させることにより、第一回動部17に対して表示部15を略180度回動させることができるようになっている。第二回動部19は、内部が空洞になっており、振動センサ13と表示部15内に配された電気回路との間を接続する配線29が第二回動部19内に沿って配されている。
【0022】
(作用)
次に、調律装置10の作用について説明する。
図4に示すように、楽器Gの調律を行う際に、まず調律装置10を楽器Gに取り付ける。楽器Gの発音箇所近傍の適切な箇所にクリップ部11の一対の板材21,22を挟み込むようにして取り付ける。
【0023】
次に、演奏者から表示部15の表面15aが視認できるように第一回動部17および第二回動部19を回動させる。
表示部15の表面15aが視認できる位置にセットされたら、表示部15に設けられたスイッチ(不図示)をONにした後、楽器Gから発音することで調律を行う。
【0024】
なお、本実施形態の調律装置10では、振動センサ13に圧電素子を用いており、基準音発生機能を有している。基準音発生機能を使用する際には、表示部15に設けられたスイッチで機能を基準音発生機能に切り換えることにより、圧電素子より基準音を発生させることができる。
【0025】
本実施形態によれば、クリップ部11を楽器Gに挟み込んで配置し、表示部15を第一回動部17および第二回動部19とともに回動させることにより表示部15の表示面15aを演奏者が視認できる位置に配置することができる。また、第一回動部17に振動センサ13を内蔵することにより、振動センサ13をクリップ部11に近接して配置することができる。したがって、調律機能を低下させることがない。
【0026】
また、振動センサ13を第一回動部17に内蔵することにより、第一回動部17を回動させて表示部15を回転させる際に、振動センサ13も一体的に回転するため、振動センサ13と表示部15の内部に配される電気回路との間を接続する配線29が捩れるのを防ぐことができる。したがって、配線29が短期間で破断することを防ぐことができ、耐久性を向上することができる。
【0027】
また、第一回動部17がクリップ部11の板材21を貫通して配置され、板材21における楽器Gとの当接面21a側に振動センサ13を配置したため、振動センサ13を楽器Gの直近に配置することができ、振動センサ13で音を感知しやすくなる。
【0028】
また、振動センサ13と表示部15の内部に配された電気回路との間を接続する配線29を第一回動部17および第二回動部19の内部に収容したため、配線29が接触などの外的要因により破断してしまうのを防止することができ、調律装置10の耐久性を向上することができる。また、配線29が視認できないため、見栄えを向上することができる。
【0029】
なお、本実施形態の変形例として、図5、図6のような調律装置を採用してもよい。
図5に示す調律装置10Aは、第一回動部17Aの軸部25が板材21を貫通し、収納部27が板材21の内側(板材22との対向面側)に配されている。また、板材21の内側には収納部27を配置可能な膨出部33が形成されている。膨出部33の端面にはパッド31が設けられている。このように構成することにより、第一回動部17Aを軸Mを中心に回転させると、振動センサ13が一体となって回転するように構成される。
【0030】
図6に示す調律装置10Bは、第一回動部17Bの軸部25が板材21を貫通せず、収納部27が板材21の外側(表示部15が配置される側)に配されている。収納部27は、板材21の外側に形成された収納凹部34内に配置されている。また、板材21の内側にはパッド31が設けられている。このように構成することにより、第一回動部17Bを軸Mを中心に回転させると、振動センサ13が一体となって回転するように構成される。
【0031】
調律装置10A,10Bにおいても、上述した実施形態と同様、表示部15を回動させても配線29が捩れることがなく、耐久性を向上することができる。
【0032】
(第二実施形態)
次に、本発明に係る調律装置の第二実施形態を図7〜図10に基づいて説明する。なお、本実施形態は第一実施形態と第一回動部および第二回動部の構成が異なるのみであり、その他の箇所は第一実施形態と略同一であるため、同一箇所には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0033】
図7に示すように、調律装置110の第一回動部117は、例えば樹脂で形成された略円筒状の部材である。第一回動部117は、軸Mを中心に360度回転可能に構成された軸部25と、軸部25における板材21側の端部は、直径が大きく形成された収納部27と、を備えている。収納部27の内部には振動センサ13が収納されている。振動センサ13は、その周縁部13aが第一回動部117の内面117aに接着剤により接着固定されている。また、振動センサ13と表示部15内に配された電気回路との間を接続する配線29が第一回動部117内に沿って配されている。
【0034】
第二回動部119は、第一回動部117と表示部15との間を連結した箇所に形成されており、軸Mに対して垂直面内方向に形成された回動軸35を備えている。回動軸35を中心に表示部15を回動させることにより、第一回動部117に対して表示部15を略180度回動させることができるようになっている。
【0035】
ここで、第二回動部119は、導電材により形成されている。第一回動部117と第二回動部119とは、導電材で形成されたボルト141、ナット142、ワッシャ143を用いて連結されている。そして、配線29の端部が、ワッシャ143にはんだ付けなどにより電気的に接続されている。また、第二回動部119における表示部15側の端部119aは、表示部15内の空洞部に位置しており、端部119aには配線129の一方端部が電気的に接続されており、配線129の他方端部(不図示)が電気回路に接続されている。このように構成することで、表示部15が視認できるように表示部15を第一回動部117および第二回動部119を回動させても、配線29,129が捩れることがなくなるため、配線29,129の耐久性を向上することができる。
【0036】
本実施形態によれば、第二回動部119を配線の一部として機能させることができるため、配線長を短くすることができる。また、第二回動部119において配線29,129が屈曲変形を繰り返すことがないため、調律装置110の耐久性を向上することができる。また、配線が露出されないため、見栄えを向上することができる。
【0037】
なお、本実施形態の変形例として、図8〜図10のような調律装置を採用してもよい。
図8の調律装置110Aは、第一回動部117Aが、例えば樹脂で形成された略円筒状の部材である。第一回動部117Aは、内部が空洞になっており、収納部27の内部には振動センサ13が収納されている。振動センサ13は、その周縁部13aが第一回動部117Aの内面117aに接着剤により接着固定されている。また、第二回動部119Aは、導電材により形成されている。
【0038】
ここで、第一回動部117Aの内面117aにはメッキ配線151が形成されており、メッキ配線151の一方端部151aは、振動センサ13と電気的に接続されており、メッキ配線151の他方端部151bは、ワッシャ143に電気的に接続されている。このように構成することにより、第一回動部117Aおよび第二回動部119Aを配線の一部として機能させることができる。したがって、第二回動部119Aと表示部15内に配置された電気回路との間を接続する部分にのみ配線129が配されるため、配線129が破断されるのを確実に抑制することができ、調律装置110Aの耐久性を向上することができる。
【0039】
図9の調律装置110Bは、第一回動部117Bおよび第二回動部119Bが、ともに導電材で形成されている。収納部27の内部には振動センサ13が収納されている。つまり、振動センサ13と第一回動部117Bとは電気的に接続されている。
【0040】
ここで、本変形例では、振動センサ13と表示部15内の電気回路との間を接続する2本の配線のうち、第一回動部117B内の1本を導電材で形成された第一回動部117Bを利用している。つまり、振動センサ13からの電気信号は、第一回動部117B、一方のワッシャ143(図9の左側のワッシャ)、ボルト141を介して第二回動部119Bに伝達され、第二回動部119Bに接続された配線129を経由して表示部15内の電気回路に接続されている。
【0041】
なお、第一回動部117B内に配される配線29Bは、振動センサ13と他方のワッシャ143(図9の右側のワッシャ)との間に設けられている。また、振動センサ13の電気信号が短絡することなく表示部15の電気回路へ伝わるように、配線29Bが接続されている側の回動軸135と第一回動部117B、第二回動部119Bとの連結箇所に絶縁材155が設けられ、配線29Bからの電気信号の経路が確保されている。このように構成することにより、第一回動部117Bおよび第二回動部119Bを配線の一部として機能させることができる。したがって、配線が第一回動部117B内、および第二回動部119Bと表示部15内に配置された電気回路との間を接続する部分にのみ配されるため、配線が破断されるのを確実に抑制することができ、調律装置110Bの耐久性を向上することができる。
【0042】
図10の調律装置110Cは、第一回動部117Cが、樹脂で形成されている。第一回動部117Cは、内部が空洞になっており、収納部27の内部には振動センサ13が収納されている。振動センサ13は、その周縁部13aが第一回動部117Cの内面117aに接着剤により接着固定されている。
【0043】
ここで、振動センサ13の周縁部13aと接合している内面117aから外面117bにかけてメッキ配線(不図示)が形成されている。また、第一回動部117Cの外面117bには、非メッキ部165を境界として、その両側にメッキ161が施されているつまり、第一回動部117Cが2本の配線としての機能を有している。メッキ161は、導電材からなる第二回動部119Cにそれぞれ電気的に接続されている。このように構成することにより、第一回動部117Cおよび第二回動部119Cを配線の一部として機能させることができる。したがって、第二回動部119Cと表示部15内に配置された電気回路との間を接続する部分にのみ配線129が配されるため、配線が破断されるのを確実に抑制することができ、調律装置110Cの耐久性を向上することができる。
【0044】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
例えば、本実施形態では、振動センサとして外形略円形の圧電素子を用いたが、外形正方形などの矩形状の圧電素子を用いてもよい。
また、本実施形態では、第一回動部および第二回動部の内部空間に配線を配設した場合の説明をしたが、例えば、第一回動部内に配設された配線を一旦外部に露出し、その後、第二回動部内を通過せずに直接表示部内に配線を延設させてもよい。
また、図11に示すように、調律装置400に基準音発音手段406を備え、これがCPU403の基準音設定手段により設定された基準音を発音することによって、使用者に合わせ込むべき基準音程を知らせる基準音発生機能を有することもできる。この場合、調律機能と基準音発生機能とはパラメータ設定手段407によって使用者が選択することができるようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第一実施形態における調律装置の側面図である。
【図2】図1のA部詳細断面図である。
【図3】図1のB矢視図である。
【図4】本発明の第一実施形態における調律装置を楽器に取り付けたときの説明図である。
【図5】本発明の第一実施形態における第一回動部の変形例を示す断面図である。
【図6】本発明の第一実施形態における第一回動部の別の変形例を示す断面図である。
【図7】本発明の第二実施形態における第一回動部および第二回動部の断面図(図1のB矢視図からの向きに対応)である。
【図8】本発明の第二実施形態における第一回動部および第二回動部の変形例を示す断面図(図1のB矢視図からの向きに対応)である。
【図9】本発明の第二実施形態における第一回動部および第二回動部の別の変形例を示す断面図(図1のB矢視図からの向きに対応)である。
【図10】本発明の第二実施形態における第一回動部および第二回動部のさらに別の変形例を示す断面図(図1のB矢視図からの向きに対応)である。
【図11】従来の調律装置の構成を示すブロック図である。
【図12】従来の調律装置を示す正面図である。
【符号の説明】
【0046】
10…調律装置 11…クリップ部 13…振動センサ 15…表示部(調律装置本体) 17…第一回動部(連結部材) 19…第二回動部(連結部材) 21…板材(一方の板材) 21a…当接面 22…板材(他方の板材) 29…配線 129…配線 151…メッキ配線 161…メッキ配線 G…楽器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽器の調律状態を演算する電気回路を備えた調律装置本体と、
該調律装置本体を前記楽器に装着する一対の板材を有するクリップ部と、
前記調律装置本体と前記クリップ部とを連結する連結部材と、
前記楽器から発せられる音を検知する振動センサと、を備え、
前記連結部材が、
該連結部材の延在方向の周りに前記クリップ部を回動自在とする第一回動部と、
前記延在方向に交差する方向の周りに前記調律装置本体を回動自在とする第二回動部と、を有する調律装置において、
前記振動センサが、前記連結部材に内蔵され、前記調律装置本体と一体的に前記延在方向の周りに回転可能に構成されていることを特徴とする調律装置。
【請求項2】
前記連結部材が前記クリップ部の一方の板材を貫通して配置され、
前記板材における前記楽器との当接面側に前記振動センサが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の調律装置。
【請求項3】
前記振動センサと前記調律装置本体の内部に配された電気回路との間を接続する配線が、前記連結部材の内部に架設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の調律装置。
【請求項4】
前記第二回動部の回動軸は導電材で構成され、
前記振動センサと前記調律装置本体の内部に配された電気回路とが、前記回動軸を介して電気的に接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の調律装置。
【請求項5】
前記連結部材は内面または外面にメッキ配線を備え、
前記振動センサと前記電気回路とが、前記メッキ配線を介して電気的に接続されていることを特徴とする請求項4に記載の調律装置。
【請求項6】
前記連結部材は導電材で構成され、
前記振動センサと前記電気回路とが、前記連結部材を介して電気的に接続されていることを特徴とする請求項4に記載の調律装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−48938(P2010−48938A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−211712(P2008−211712)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】