説明

調湿タイルの張替方法

【課題】破損した場合、周囲のタイルを損傷させることなく張付け施工面から容易に剥し取ることができる張替作業性に優れた調湿タイルを提供する。
【解決手段】裏面にプライマーを塗布したタイルであって、接着剤により施工面に張付け施工される調湿タイルにおいて、該タイル裏面と接着剤との接着強度が3〜12kgf/cmとなるように濃度調整したプライマーを塗布した調湿タイル。或いは、該プライマー2をタイル裏面の面積の30〜90%の領域に塗布した調湿タイル1A〜1D。この調湿タイルを接着剤により施工面に張付け施工する調湿タイルの施工方法。調湿タイルが接着剤で張付け施工された施工面の調湿タイルを張り替える方法において、該調湿タイルの割れ目から、該タイルと施工面との間に接着剤の接着力を低下させる液体を浸透させる調湿タイルの張替方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調湿タイル並びにその施工方法及び張替方法に係り、特に、破損した場合の張り替え作業を容易に行える調湿タイルとこの調湿タイルの施工方法及び張替方法に関する。
【背景技術】
【0002】
調湿タイルは、タイル自体が吸放湿による調湿機能を有し、空調設備や動力などを必要とすることなく、室内の湿度調整による防露性を得ることができることから、近年、住宅用建材として広く利用されている。
【0003】
従来、このような調湿タイルは、その調湿機能を最大限に発揮させるために、目地を設けず、突き合わせ施工で、接着剤により施工面に張付け施工されている。なお、調湿タイルは吸湿性能及び放湿性能を有する特殊な材料で製造されたものであり、そのままでは通常のタイル用接着剤との付着性が悪いことから、接着剤に対する付着力を向上させるために、接着剤がタイルの裏面の全面に行き渡るようにするとともに、タイルの裏面にプライマーを塗布する裏面処理が施される。
【0004】
ところで、調湿タイルは、前述の如く、特殊な材料で製造され、その曲げ強度が小さく、耐衝撃性にも劣るために、施工後、物がぶつかるなどの衝撃を受けたときに破損し易い。タイルが破損した場合には、その破損したタイルのみを剥し取り、新しいタイルに張り替えることが必要となる。
【0005】
このタイルの張り替え作業の手順を図2(a)〜(h)を参照して説明する。
【0006】
(1) まず、タイル11の施工面からタガネ12等を用いて、破損したタイル11Aのみを少しずつはつり取る(図2(a),(b),(c))。
(2) 破損したタイル11Aをすべて取り除いた後(図2(d))、硬化した接着剤13をカッターナイフ14等できれいに取り除く(図2(e))。
(3) 新しいタイル11Bの裏面に接着剤15をくし目を立てて塗り付けた後(図2(f))、張り付ける(図2(g),(h))。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようにして破損したタイルを張り替える際、調湿タイルの張付け施工面は、目地を設けない突き合わせ施工であり、隣接するタイル間にほとんど隙間がない上に、前述の如く、調湿タイルは破損し易いことから、図2(a)〜(c)に示す如く破損したタイル11Aをタガネ12等ではつり取る際に、この破損したタイル11Aの周囲のタイル11をも傷つけてしまう場合がある。このため、タイル11Aの除去作業はかなりの注意力をもって慎重に行う必要があり、かなりの手間と時間を要し、しかも、このように慎重に作業を行っても周囲のタイル11を破損させることがある。
【0008】
本発明は上記従来の問題点を解決し、破損した場合の張り替え作業を容易に行うことができる調湿タイル及びこの調湿タイルの施工方法と、調湿タイルの張替方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、裏面にプライマーを塗布したタイルであって、接着剤により施工面に張付け施工される調湿タイルに関する。
【0010】
第1発明のタイルは、該タイル裏面と接着剤との接着強度が3〜12kgf/cmとなるように濃度調整したプライマーを塗布したものである。
【0011】
第2発明のタイルは、該プライマーをタイル裏面の面積の30〜90%の領域に塗布したものである。
【0012】
上記の如く、タイル裏面へのプライマーの塗布に当り、その濃度や塗布面積を調整することにより、施工面への付着強度を損なうことのない範囲において、張替作業時には、周囲のタイルを傷つけることなく容易に剥離することができるようになる。
【0013】
本発明の調湿タイルの施工方法は、このような調湿タイルを接着剤により施工面に張付け施工することを特徴とするものであり、張替作業を容易に行える。
【0014】
本発明の調湿タイルの張替方法は、調湿タイルが接着剤で張付け施工された施工面の調湿タイルを張り替える方法において、該調湿タイルの割れ目から、該タイルと施工面との間に接着剤の接着力を低下させる液体を浸透させることを特徴とする。
【0015】
この張替方法であれば、接着剤の接着力を低下させる液体の効果でタイルを容易に剥すことができるようになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、調湿タイルの張替作業を容易に行うことができ、作業性の改善、作業時間の短縮を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
本発明の調湿タイルは、前述の如く、接着剤により施工面に張付け施工される調湿タイルにおいて、接着剤との付着性の改善のために裏面にプライマーを塗布したものである。
【0019】
第1発明の調湿タイルの場合、タイル裏面と接着剤との接着強度が3kgf/cm未満であると施工面への接着強度が十分でなくなり、タイルの張り替えを要しないときにもタイルが脱落するおそれがある。逆にタイルと接着剤との接着強度が12kgf/cmを超えると、張替作業時に容易に剥し取ることができない。特に、プライマーは、タイル裏面と接着剤との接着強度が4〜7kgf/cmとなるように濃度調整するのが好ましい。なお、この第1発明の調湿タイルの場合、プライマーはタイル裏面の全面に塗布するのが好ましいが、部分的に塗布しても良い。
【0020】
このような接着強度が得られるようなプライマーの濃度調整は、用いるプライマーの種類に応じて適宜決定されることから、予め接着強度試験を行って、プライマーの濃度調整を行えば良い。
【0021】
第2発明の調湿タイルの場合、プライマーの塗布面積がタイル裏面の面積の30%未満であると施工面への接着強度が十分でなくなり、タイルが脱落するおそれがある。逆に、この塗布面積割合が90%を超えると張替作業時に容易に剥し取ることができない。特に好ましい塗布面積割合は30〜50%である。
【0022】
なお、この第2発明の調湿タイルにおいても、タイル裏面と接着剤との接着強度は3〜12kgf/cm、特に4〜7kgf/cmとなるようにプライマーの濃度と塗布面積割合とを調整するのが好ましく、従って、市販のプライマーを用いる場合には、予め接着強度試験を行って、その塗布面積割合に応じて、このような接着強度が得られるように適宜希釈して用いるのが好ましい。
【0023】
このような塗布面積割合となるようにプライマーを塗布する方法には特に制限はなく、例えば、図1(a),(b)に示すようにプライマー2を散点状に塗布したタイル1A,1B、図1(c)に示すようにプライマー2を中央部分に帯状に塗布したタイル1Cや、図1(d)に示す如く、プライマー2を中央部に同心相似形状に塗布したタイル1Dとすることができる。
【0024】
特に、タイルの張替作業時に、タガネの先端をタイルの周縁からタイル裏面と施工面との間に挿入してタイルを剥し取る際のタガネの押し込み易さを考慮した場合には、タイルの周縁部分がプライマーの非塗布面となるようにするのが好ましい。
【0025】
なお、図1(a)〜(d)に示すタイル1A〜1Dのうち、プライマーを帯状に塗布したタイル1Cでは、タイル製造時の搬送工程において、ローラーにより容易にプライマーを塗布できるという利点がある。
【0026】
本発明の調湿タイルの施工方法は、このような調湿タイルを接着剤により施工面に張付け施工するものであり、その施工方法自体は常法に従って行うことができる。
【0027】
本発明の調湿タイルの張替方法は、図2(a)〜(c)に示す如く、調湿タイルが接着剤で張付け施工された施工面の調湿タイルを張り替えるに当り、剥し取る調湿タイルの割れ目から、タイルと施工面との間に接着剤の接着力を低下させる液体(以下「剥離液」と称す。)を浸透させることにより、大きな力を要することなく、タイルを短時間で容易に剥し取るものである。
【0028】
なお、この張替方法を、タイルとして上記本発明の調湿タイルが張付け施工された施工面に適用しても良いことは言うまでもない。
【0029】
本発明において、用いるプライマーや接着剤には特に制限はなく、従来調湿タイルの張付け施工に用いられているものを用いることができる。
【0030】
例えば、プライマーとしては、シラン系化合物(信越化学工業(株)製「KC−551」)、EVA系エマルション(日本化成(株)製「NSハイフレックスHF−1000」、昭和電工(株)製「ハイモル(登録商標)エマルジョン」)等を用いることができる。
【0031】
これらのプライマーを濃度調整するには、市販のプライマーを水、有機溶剤等で適宜希釈すれば良い。
【0032】
接着剤としては、通常のタイル用の接着剤を用いることができ、例えば、アクリルエマルション系((株)イナックス製「イナメントA−51N」)、(タイルメント製「GL−20」)等を用いることができる。
【0033】
また、剥離液としては、界面活性剤系又は有機溶剤系のものを用いることができ、具体的にはアサヒペン社製「塗料ハクリ剤」、ロックペイント社製「塗膜はがし剤」、紺商社製「ハクリエース」、コニシボンド社製「接着剤はがし ボンドリムーバー」等を用いることができる。
【実施例】
【0034】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0035】
実施例1〜3、比較例1,2
(株)イナックス製調湿タイル「エコカラット」(5.5mm厚さ)を10cm×10cmに切断したものを試料タイルとし、このタイルの裏面にプライマーとして信越化学工業(株)製「KC−551」を表1に示す倍率で水により希釈したものを全面塗布し(ただし、比較例1ではプライマー塗布せず)、接着剤として(株)イナックス製「イナメントA−51N」を用いて張り付けた。なお、タイル裏面と接着剤との接着強度(JIS A 5548)は表1に示す通りであった。張付け施工後、7日間放置した後、図2に示す方法で張り替えた。タイルの張付け安定性及び張替作業性を下記基準で評価し結果を表1に示した。
【0036】
[張付け安定性]
○: 十分な接着強度で、安定に張り付けられている。
△: 若干接着強度が不足し、張付け安定性に欠ける。
×: 接着強度が弱く、タイルの脱落がある。
[張替作業性]
○: 比較的小さな力で容易にはつり取ることができ、さほど慎重に作業を行
わなくても周囲のタイルを傷付けることはなかった。
△: はつり取る際に若干力を要し、周囲のタイルを傷付ける場合があった。
×: はつり作業にかなりの力と時間を要し、十分な注意力を持ってしても周
囲のタイルを傷付けてしまった。
【0037】
【表1】

【0038】
実施例4〜7、比較例3
プライマーを10倍に希釈して用いた比較例2において、表2に示す塗布形態及び塗布面積割合で塗布したこと以外は比較例2と同様にして試験を行い、結果を比較例2の結果と共に表2に示した。
【0039】
【表2】

【0040】
実施例8,9、比較例4
実施例1において、プライマーとして日本化成(株)製「HF−1000」を表3に示す希釈倍率となるように水で希釈して用いたこと以外は全く同様にして試験を行い、結果を比較例1の結果と共に表3に示した。
【0041】
【表3】

【0042】
実施例10〜13、比較例5
プライマーを10倍希釈して用いた比較例4において、表4に示す塗布形態及び塗布面積割合で塗布したこと以外は比較例4と同様にして試験を行い、結果を比較例4の結果と共に表4に示した。
【0043】
【表4】

【0044】
実施例14〜17
比較例1において、タイルの張り替えに当り、図2(b)に示す状態となったときに、タイルの割れ目から表5に示す剥離液を浸透させたこと以外は同様にして試験を行い、同様に張替作業性を評価して比較例1の結果と共に結果を表5に示した。
【0045】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の調湿タイルの実施の形態を示すタイル裏面の正面図である。
【図2】タイルの張替作業手順の説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1A,1B,1C,1D 調湿タイル
2 プライマー
11 タイル
11A 破損したタイル
11B 新しいタイル
12 タガネ
14 カッターナイフ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調湿タイル張替方法に係り、特に、破損した場合の張り替え作業を容易に行える調湿タイル張替方法に関する。
【背景技術】
【0002】
調湿タイルは、タイル自体が吸放湿による調湿機能を有し、空調設備や動力などを必要とすることなく、室内の湿度調整による防露性を得ることができることから、近年、住宅用建材として広く利用されている。
【0003】
従来、このような調湿タイルは、その調湿機能を最大限に発揮させるために、目地を設けず、突き合わせ施工で、接着剤により施工面に張付け施工されている。なお、調湿タイルは吸湿性能及び放湿性能を有する特殊な材料で製造されたものであり、そのままでは通常のタイル用接着剤との付着性が悪いことから、接着剤に対する付着力を向上させるために、接着剤がタイルの裏面の全面に行き渡るようにするとともに、タイルの裏面にプライマーを塗布する裏面処理が施される。
【0004】
ところで、調湿タイルは、前述の如く、特殊な材料で製造され、その曲げ強度が小さく、耐衝撃性にも劣るために、施工後、物がぶつかるなどの衝撃を受けたときに破損し易い。タイルが破損した場合には、その破損したタイルのみを剥し取り、新しいタイルに張り替えることが必要となる。
【0005】
このタイルの張り替え作業の手順を図2(a)〜(h)を参照して説明する。
【0006】
(1) まず、タイル11の施工面からタガネ12等を用いて、破損したタイル11Aのみを少しずつはつり取る(図2(a),(b),(c))。
(2) 破損したタイル11Aをすべて取り除いた後(図2(d))、硬化した接着剤13をカッターナイフ14等できれいに取り除く(図2(e))。
(3) 新しいタイル11Bの裏面に接着剤15をくし目を立てて塗り付けた後(図2(f))、張り付ける(図2(g),(h))。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようにして破損したタイルを張り替える際、調湿タイルの張付け施工面は、目地を設けない突き合わせ施工であり、隣接するタイル間にほとんど隙間がない上に、前述の如く、調湿タイルは破損し易いことから、図2(a)〜(c)に示す如く破損したタイル11Aをタガネ12等ではつり取る際に、この破損したタイル11Aの周囲のタイル11をも傷つけてしまう場合がある。このため、タイル11Aの除去作業はかなりの注意力をもって慎重に行う必要があり、かなりの手間と時間を要し、しかも、このように慎重に作業を行っても周囲のタイル11を破損させることがある。
【0008】
本発明は上記従来の問題点を解決し、破損した場合の張り替え作業を容易に行うことができる調湿タイルの張替方法を提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の調湿タイルの張替方法は、調湿タイルが接着剤で張付け施工された施工面の調湿タイルを張り替える方法において、該調湿タイルの割れ目から、該タイルと施工面との間に接着剤の接着力を低下させる液体を浸透させることを特徴とする。
【0010】
この張替方法であれば、接着剤の接着力を低下させる液体の効果でタイルを容易に剥すことができるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、調湿タイルの張替作業を容易に行うことができ、作業性の改善、作業時間の短縮を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
本発明の調湿タイルの張替方法は、前述の如く、接着剤により施工面に張付け施工され調湿タイルの張替方法である。この実施の形態では、該調湿タイルと接着剤との付着性の改善のために、該調湿タイルの裏面にプライマー塗布されている。
【0014】
第1態様の場合、タイル裏面と接着剤との接着強度が3kgf/cm未満であると施工面への接着強度が十分でなくなり、タイルの張り替えを要しないときにもタイルが脱落するおそれがある。逆にタイルと接着剤との接着強度が12kgf/cmを超えると、張替作業時に容易に剥し取ることができない。特に、プライマーは、タイル裏面と接着剤との接着強度が4〜7kgf/cmとなるように濃度調整するのが好ましい。なお、この第1態様の場合、プライマーはタイル裏面の全面に塗布するのが好ましいが、部分的に塗布しても良い。
【0015】
このような接着強度が得られるようなプライマーの濃度調整は、用いるプライマーの種類に応じて適宜決定されることから、予め接着強度試験を行って、プライマーの濃度調整を行えば良い。
【0016】
第2態様の場合、プライマーの塗布面積がタイル裏面の面積の30%未満であると施工面への接着強度が十分でなくなり、タイルが脱落するおそれがある。逆に、この塗布面積割合が90%を超えると張替作業時に容易に剥し取ることができない。特に好ましい塗布面積割合は30〜50%である。
【0017】
なお、この第2態様においても、タイル裏面と接着剤との接着強度は3〜12kgf/cm、特に4〜7kgf/cmとなるようにプライマーの濃度と塗布面積割合とを調整するのが好ましく、従って、市販のプライマーを用いる場合には、予め接着強度試験を行って、その塗布面積割合に応じて、このような接着強度が得られるように適宜希釈して用いるのが好ましい。
【0018】
このような塗布面積割合となるようにプライマーを塗布する方法には特に制限はなく、例えば、図1(a),(b)に示すようにプライマー2を散点状に塗布したタイル1A,1B、図1(c)に示すようにプライマー2を中央部分に帯状に塗布したタイル1Cや、図1(d)に示す如く、プライマー2を中央部に同心相似形状に塗布したタイル1Dとすることができる。
【0019】
特に、タイルの張替作業時に、タガネの先端をタイルの周縁からタイル裏面と施工面との間に挿入してタイルを剥し取る際のタガネの押し込み易さを考慮した場合には、タイルの周縁部分がプライマーの非塗布面となるようにするのが好ましい。
【0020】
なお、図1(a)〜(d)に示すタイル1A〜1Dのうち、プライマーを帯状に塗布したタイル1Cでは、タイル製造時の搬送工程において、ローラーにより容易にプライマーを塗布できるという利点がある。
【0021】
本発明は、このような調湿タイルを接着剤により施工面に張付け施工方法自体は常法に従って行うことができる。
【0022】
本発明の調湿タイルの張替方法は、図2(a)〜(c)に示す如く、調湿タイルが接着剤で張付け施工された施工面の調湿タイルを張り替えるに当り、剥し取る調湿タイルの割れ目から、タイルと施工面との間に接着剤の接着力を低下させる液体(以下「剥離液」と称す。)を浸透させることにより、大きな力を要することなく、タイルを短時間で容易に剥し取るものである。
【0023】
なお、この張替方法を、上記の第1及び第2態様のように調湿タイルが張付け施工された施工面に適用しても良いことは言うまでもない。
【0024】
本発明において、用いるプライマーや接着剤には特に制限はなく、従来調湿タイルの張付け施工に用いられているものを用いることができる。
【0025】
例えば、プライマーとしては、シラン系化合物(信越化学工業(株)製「KC−551」)、EVA系エマルション(日本化成(株)製「NSハイフレックスHF−1000」、昭和電工(株)製「ハイモル(登録商標)エマルジョン」)等を用いることができる。
【0026】
これらのプライマーを濃度調整するには、市販のプライマーを水、有機溶剤等で適宜希釈すれば良い。
【0027】
接着剤としては、通常のタイル用の接着剤を用いることができ、例えば、アクリルエマルション系((株)イナックス製「イナメントA−51N」)、(タイルメント製「GL−20」)等を用いることができる。
【0028】
また、剥離液としては、界面活性剤系又は有機溶剤系のものを用いることができ、具体的にはアサヒペン社製「塗料ハクリ剤」、ロックペイント社製「塗膜はがし剤」、紺商社製「ハクリエース」、コニシボンド社製「接着剤はがし ボンドリムーバー」等を用いることができる。
【実施例】
【0029】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0030】
実施例1〜3、比較例1,2
(株)イナックス製調湿タイル「エコカラット」(5.5mm厚さ)を10cm×10cmに切断したものを試料タイルとし、このタイルの裏面にプライマーとして信越化学工業(株)製「KC−551」を表1に示す倍率で水により希釈したものを全面塗布し(ただし、比較例1ではプライマー塗布せず)、接着剤として(株)イナックス製「イナメントA−51N」を用いて張り付けた。なお、タイル裏面と接着剤との接着強度(JIS A 5548)は表1に示す通りであった。張付け施工後、7日間放置した後、図2に示す方法で張り替えた。タイルの張付け安定性及び張替作業性を下記基準で評価し結果を表1に示した。
【0031】
[張付け安定性]
○: 十分な接着強度で、安定に張り付けられている。
△: 若干接着強度が不足し、張付け安定性に欠ける。
×: 接着強度が弱く、タイルの脱落がある。
[張替作業性]
○: 比較的小さな力で容易にはつり取ることができ、さほど慎重に作業を行
わなくても周囲のタイルを傷付けることはなかった。
△: はつり取る際に若干力を要し、周囲のタイルを傷付ける場合があった。
×: はつり作業にかなりの力と時間を要し、十分な注意力を持ってしても周
囲のタイルを傷付けてしまった。
【0032】
【表1】

【0033】
実施例4〜7、比較例3
プライマーを10倍に希釈して用いた比較例2において、表2に示す塗布形態及び塗布面積割合で塗布したこと以外は比較例2と同様にして試験を行い、結果を比較例2の結果と共に表2に示した。
【0034】
【表2】

【0035】
実施例8,9、比較例4
実施例1において、プライマーとして日本化成(株)製「HF−1000」を表3に示す希釈倍率となるように水で希釈して用いたこと以外は全く同様にして試験を行い、結果を比較例1の結果と共に表3に示した。
【0036】
【表3】

【0037】
実施例10〜13、比較例5
プライマーを10倍希釈して用いた比較例4において、表4に示す塗布形態及び塗布面積割合で塗布したこと以外は比較例4と同様にして試験を行い、結果を比較例4の結果と共に表4に示した。
【0038】
【表4】

【0039】
実施例14〜17
比較例1において、タイルの張り替えに当り、図2(b)に示す状態となったときに、タイルの割れ目から表5に示す剥離液を浸透させたこと以外は同様にして試験を行い、同様に張替作業性を評価して比較例1の結果と共に結果を表5に示した。
【0040】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の調湿タイルの張替方法により張り替えられる調湿タイル裏面の接着剤塗布形態の例を示す正面図である。
【図2】タイルの張替作業手順の説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1A,1B,1C,1D 調湿タイル
2 プライマー
11 タイル
11A 破損したタイル
11B 新しいタイル
12 タガネ
14 カッターナイフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面にプライマーを塗布したタイルであって、接着剤により施工面に張付け施工される調湿タイルにおいて、
該タイル裏面と接着剤との接着強度が3〜12kgf/cmとなるように濃度調整したプライマーを塗布したことを特徴とする調湿タイル。
【請求項2】
裏面にプライマーを塗布したタイルであって、接着剤により施工面に張付け施工される調湿タイルにおいて、
該プライマーをタイル裏面の面積の30〜90%の領域に塗布したことを特徴とする調湿タイル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された調湿タイルを接着剤により施工面に張付け施工することを特徴とする調湿タイルの施工方法。
【請求項4】
調湿タイルが接着剤で張付け施工された施工面の調湿タイルを張り替える方法において、該調湿タイルの割れ目から該タイルと施工面との間に、該接着剤の接着力を低下させる液体を浸透させることを特徴とする調湿タイルの張替方法。
【請求項5】
請求項4の方法において、調湿タイルが請求項1又は2に記載された調湿タイルであることを特徴とする調湿タイルの張替方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調湿タイルが接着剤で張付け施工された施工面の調湿タイルを張り替える方法において、該調湿タイルの割れ目から該タイルと施工面との間に、該接着剤の接着力を低下させる液体を浸透させることを特徴とする調湿タイルの張替方法。
【請求項2】
請求項において、調湿タイルは、裏面にプライマーが塗布されて接着剤により施工面に張付け施工されており、
該プライマーは、該タイル裏面と接着剤との接着強度が3〜12kgf/cmとなるように濃度調整されていることを特徴とする調湿タイルの張替方法。
【請求項3】
請求項1において、該調湿タイルは、裏面にプライマーが塗布されて接着剤により施工面に張付け施工されており、
該プライマーは、タイル裏面の面積の30〜90%の領域に塗布されていることを特徴とする調湿タイルの張替方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−336462(P2006−336462A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257359(P2006−257359)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【分割の表示】特願平10−331116の分割
【原出願日】平成10年11月20日(1998.11.20)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】