説明

調湿作用を有する畳

【課題】現在の住環境にも充分対処できる調湿作用が有り、畳の縁無し辺を補強し、内装炭片の微粉末による上記縁無し辺付近の汚れを防止する。
【解決手段】下層から上層に向けて順次に防湿性裏打ちシート1、防湿性プラスチック段ボール2、独立発泡気密性ポリスチレンフォーム板3、炭片4を収納した容器並列体5、多孔通気性硬質プラスチック薄板6、通気性厚手不織布7、通気性畳表8を重合した後、内装炭片の微粉末を通さない縁下紙10Aと畳縁10とを重合してその中間部を前記各部材と共に畳縁縫合辺9に沿った内側に垂直堅固に縫合し、この縫合部10Bから畳縁10を折り返して畳床の裏面付近まで縫合する一方、畳の縁無し辺11には、前記容器並列体5の切断開口辺5Aを覆い塞いで前記フォーム板3と同材の補強材12を内装した状態で、前記畳表8を縁無し辺11の側面に巻き込み畳床の裏面に縫合した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、畳床内の上層部に木炭や竹炭を収納した中空ハニカム構造による多数容器の並列体(以下容器並列体という)を通気性良く内装することで、調湿作用と若干の消臭作用とを呈する人工畳に関し、特に本発明は、畳縁を縫合しない畳床の対向辺(以下、縁無し辺という)を補強材で補強すると共に、この補強材で上記容器並列体内装炭片の微粉末の漏出による上記縁無し辺の黒ずみ汚れを防止できた人工畳に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の人工畳としては、本出願人が先に提案した実用新案登録第3055211号公報(特許文献1)記載のように、自然素材で作った調湿作用を有する畳として、多層構造の畳床を作るに当たり、その中間層に配置した前記容器並列体における多数の中空セル部内に木炭や竹炭ペレットを収納することで、調湿作用を得た畳が周知である。
【0003】
上記従来例は、木材繊維や細片を板状に圧縮固化した上下二段のインシュレーションボード間に炭片を収納した厚紙製の容器並列体をサンドイッチ式に介在させた畳床を用いた畳を構成するに当たり、下層から上層に向けて順次に、通気性裏打ちシート、下部インシュレーションボード、紙シート、炭片を収納した前記容器並列体、上部インシュレーションボード、炭粉介在シート、通気性畳表を備えた調湿作用を有する畳である。
【0004】
この従来例は、木材繊維や細片を板状に圧縮固化した通気性に乏しい上下二段のインシュレーションボード間に吸湿作用と放湿作用を有する炭片を収納した容器並列体をサンドイッチ式に挟み込んだ畳だから、前記多数の炭片に充分な吸湿作用と放湿作用が有るにも拘わらず、容器並列体の上下に気密圧接している通気性に乏しい上記各インシュレーションボードのために、多数の炭片が有する折角の吸湿作用と放湿作用を大きく阻害しているという根源的で切実な問題点が有る。
【0005】
昨今、住宅の高気密化が進み、梅雨時などには、畳の床面に近い部分は、一端湿気を帯びると、この湿気放散は困難を極め、カビの発生原因となり極めて不衛生であるし、上記各インシュレーションボードは、もともと独特の臭いは有るが、上記のように湿気を帯びるとカビが発生したり、多少ではあるが悪臭の原因にもなり、顧客クレームも多くなる場合も有るという切実な問題点が有る。
【0006】
さらに、前記従来例は、畳縁を堅固に縫合している畳床対向辺(以下、畳縁縫合辺という)付近は、内装炭片の微粉末を通さない縁下紙と畳縁が有るため、圧迫強度と内装炭片の微粉末の漏出による畳汚れという問題は無いが、前記縁無し辺付近の畳辺は、圧迫強度が弱く使用途中で凹み易いので、隣接した畳の畳縁縫合辺との間に僅かな段差部分が生じ、この段差部分に足指が引っ掛かり易い等、生活上の不具合が生じたり、内装炭片の微粉末の漏出で畳が汚れ易いという切実な問題点が有る。
【0007】
すなわち、この従来例は、前記容器並列体の切断開口辺を通気性の畳表だけで塞いでいるから、内装炭片の微粉末が使用中に通気性畳表の隙間を潜り抜けて表面に漏れ出すことが多く、畳の縁無し辺付近の表面部分が使用途中に黒ずんで汚れ易くなり、この汚れは、濡れ布巾で洗剤と共に拭いた程度では落ち辛く、折角汚れ落としをしても、畳の汚れは再度頻繁に生じるので、客間等では畳表の張り替えや、汚れ畳の新品交換を頻繁に実行する必要があり、面倒かつ、厄介で不経済であるという根源的で切実な問題点が有る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実用新案登録第3055211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように従来の調湿作用を有する畳は、炭片を収納した容器並列体を通気性に乏しい上下二段のインシュレーションボード間に気密的に挟み込んだから、炭片が有する折角の吸湿・放湿の各作用を大きく阻害していたし、畳の縁無し辺付近に内装炭片の微粉末の漏出による黒ずみ汚れが頻繁に生じていたが、本発明では、炭片を収納した容器並列体を畳表から約3〜5mm程度の中間上層部分に通気性良く配設することで、住宅の高気密化が進んだ現在の住環境にも充分対処可能な調湿作用を有する畳を構成できた。
【0010】
すなわち、本発明は、畳の湿気対策として、畳の下層部分を畳として適度の弾性と圧迫強度を有する独立発泡気密性のポリスチレン素材とし、前記炭片微粉末の吸湿・放湿効果を最大限に発揮させるために、炭片を収納した容器並列体を通気性畳表から約3mm程度の中間層部分に通気性良く配設することで、住宅の高気密化が進んだ現在の住環境にも充分対処できる畳を提供することと、前記畳の縁無し辺をポリスチレン補強材で補強すると共に、この補強材で内装炭片の微粉末の漏出を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記本発明の目的は、畳の断層構造として、下層から上層に向けて順次に、防湿性裏打ちシート、防湿性プラスチック段ボール、畳として適度の弾性と圧迫強度を有する独立発泡気密性ポリスチレンフォーム板(以下、フォーム板という)、炭片を収納した多数容器の並列体、多孔通気性硬質プラスチック薄板、通気性厚手不織布、通気性畳表を順次に重合し、これら各部材を畳として縫合するに当たり、内装炭片の微粉末を通さない縁下紙と畳縁とを重合してその中間部を前記各部材と共に畳縁縫合辺に沿った内側に垂直堅固に縫合し、この縫合部から縁下紙と畳縁を折り返すと共に、この折り返した縁下紙と畳縁で前記容器並列体の切断開口辺を覆い塞ぎ畳床の裏面付近まで縫合する一方、畳の縁無し辺の内側には、前記容器並列体の切断開口辺に前記フォーム板と同一材の幅が20〜40mm程度の四角い棒状補強材を密着内装した状態で、前記畳表を縁無し辺の側面に巻き込み裏面に縫合したことで達成できた。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、炭片を収納した前記容器並列体を通気性畳表から通気性厚手不織布、多孔通気性硬質プラスチック薄板を経た約3〜5mm程度の中間上層部分に通気性よく配設し、畳の中間下層部分を気密性素材としたので、上記大量の炭片微粉末の吸湿・放湿効果を無駄無く最大限に発揮でき、住宅の高気密化が進んだ現在の住環境にも充分対処できる畳を提供できるという優れた効果を奏し得た。
【0013】
また、この発明によれば、前記各部材を畳として縫合するに当たり、例えば畳床の長辺等の畳縁縫合辺に沿った内側に内装炭片の微粉末を通さない縁下紙と畳縁の中間部を前記各部材と共に垂直堅固に縫合し、この縫合部から畳縁を折り返すと共に、この折り返した縁下紙と畳縁で前記容器並列体の切断開口辺を覆い塞ぎ畳床の裏面付近まで縫合する一方、縁無し辺の内側には、前記容器並列体の切断開口辺に前記フォーム板と同一材で幅が20〜40mm程度の四角い棒状補強材を密着内装することで、上記開口辺を塞いだ状態で、上記縁無し辺の側面に前記畳表を巻き込み畳床の裏面に縫合したので、上記補強材で畳の縁無し辺を補強できると共に、内装炭片の微粉末の漏出による畳の黒ずみ汚れを防止できるという優れた効果も有る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明による畳の縁無し辺付近の断層構造を示す断面図
【図2】この発明による畳の畳縁縫合辺付近の断層構造を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、この発明の具体例を図面と共に説明するが、以下の説明は、畳のサイズとして、幅が88cm程度・長さが176cm程度・厚さが50〜60mm程度の現用一般サイズの畳に適用した実施形態について説明すると、畳の断層構造として、図1・図2のように下層から上層に向けて順次に、防湿性裏打ちシート1、防湿性プラスチック段ボールシート2、畳として適度の弾性と圧迫強度を有する独立発泡気密性ポリスチレンフォーム板3、備長炭等の木炭や竹炭などの炭片4を収納した容器並列体5、多孔通気性硬質プラスチック薄板6、通気性厚手不織布7、通気性畳表8をそれぞれ重合した構成とする。
【0016】
次いで、前記各部材を畳として縫合するに当たり、内装炭片の微粉末を通さない縁下紙10Aと畳縁10とを重合してその中間部を図2のように前記各部材と共に畳縁縫合辺9に沿った内側に垂直堅固に縫合し、この縫合部10Bから畳縁10と縁下紙10Aとを図2の矢示方向に折り返すと共に、畳縁10を外側にしてその内側の縁下紙10Aで前記容器並列体5の切断開口辺5Aを密に覆い塞ぎ、畳縁10と縁下紙10Aとを畳床の裏面付近まで延ばし、周知手段で畳縁縫合辺9に斜め堅固に縫合する。ただし、図2に示す例では、畳縁10と縁下紙10Aとの折り返し部で畳縁縫合辺9を巻き込んで畳床裏面に堅固に縫合した例を示してある。
【0017】
一方、畳縁10を縫合しない前記縁無し辺11の内側には、前記容器並列体5の切断開口辺5Aに前記フォーム板3と同一材で作った幅が20〜40mm程度の四角い棒状補強材12を図1のように密接させて内装することで、上記開口辺5Aを補強材12で密に覆い塞いだ状態で、その外側から畳表8を縁無し辺11の側面に巻き込み畳床の裏面に周知手段で縫合したことで、本発明による畳を構成できた。
【0018】
ただし、前記各部材の縦・横の各寸法や面積等は、炭片4を除き、前記現用一般サイズの畳に対応した寸法・面積の部材を用いるが、各部材の材質や厚さとしては、防湿性裏打ちシート1として、厚さ0.5mm程度の現用厚手気密性ポリプロピレンラミネート紙をい、防湿性プラスチック段ボール2としては、厚さ1mm〜2mm程度の現用一般の気密性のものを用い、さらに独立発泡気密性ポリスチレンフォーム板3としては、厚さが約35mm程度で、体重65kg程度の人が、体重を片足の踵にかけて踏み込んでも凹まない程度に圧迫強度が大きく、しかも畳として適度の弾力を有する独立発泡ポリスチレンフォーム板を用いた。
【0019】
炭片4としては、長さが10〜20mm程度、幅が10mm程度、厚さが1〜5mm程度の竹炭または備長炭を用い、前記容器並列体5は、高さが10〜20mm程度、厚さが0.5〜1.5mm程度の長尺テープ状厚紙を台紙上に蜂の巣状に形どって貼着し、上記厚紙の接合辺同士を接着することで、一辺が10〜20mm程度の連続した6角形セルの多数を蜂の巣状に配列固定した周知の中空ハニカム構造体による多数容器の並列体5を用い、多孔通気性硬質プラスチック薄板6としては、厚さ3mm程度のものを用いる。
【0020】
さらに、通気性厚手不織布7は、厚さ1.5mm〜2mm程度の通気性不織布を緩衝材として用い、通気性畳表8には、現用一般のイグサのものを用い、畳縁10および縁下紙10Aとしては、それぞれ幅が75mm程度、厚さが0.3mm程度、長さが195cm程度とし、畳縁10としては、現用一般の織布を用い、縁下紙10Aとしては、前記炭片4の微細粉末を通さないハトロン紙製等の周知一般のを用い、補強材12としては、上記フォーム板3と同材を前記容器並列体5と同高で、幅が約30mm程度の四角い棒状に形成した補強材12を用いた。
【0021】
本発明による調湿作用を有する畳は、以上のような構造となしたので、この畳を家屋の床面に整然と敷設して使用すると、前記容器並列体5の内装炭片4の微粉末は、並列体5の切断開口辺5Aから漏れ出ようとするが、前記畳の縁無し辺11の内側における容器並列体5の切断開口辺5Aは、前記補強材12で密に覆い塞いであるから、上記内装炭片4の微粉末の切断開口辺5Aからの漏れ出しを上記補強材12で阻止でき、炭片4の微粉末の漏出による畳の縁無し辺付近の黒ずみ汚れを防止できると共に、上記補強材12で畳の縁無し辺11付近を補強できる。
【0022】
一方、前記畳縁縫合辺9の内側における前記容器並列体5の切断開口辺5Aからも内装炭片4の微粉末が漏れ出ようとするが、畳縁縫合辺9の内側には、内装炭片の微粉末を通さない縁下紙10Aと畳縁10とを重合してその中間部を前記各部材と共に畳縁縫合辺9に沿った内側に垂直堅固に縫合したので、畳縁縫合辺9の内側における容器並列体内装炭片4の微粉末の上記切断開口辺5Aからの漏れ出しは、内装炭片4の微粉末を通さない縁下紙10Aで阻止できる。
【0023】
本発明による調湿作用を有する畳は、前記のように整然と敷設して使用すると、通気性畳表8、通気性厚手不織布7、多孔通気性硬質プラスチック薄板6を順次に経た畳の上層中間部に通気性よく存在する極めて多数の容器並列体に収納した大量の炭片4の微細多孔構造による強い吸湿作用で、梅雨時のような高湿時でも湿気が上記通気性畳表などを経て大量の炭片4の微細多孔の縁辺に吸着する結果、本発明による畳は、「ジメジメ」した感じにならず、また冬場の乾燥時にあっては、吸湿済の炭片4からの湿気が徐々に通気性畳表8を経て放散するため、畳表8のイグサが「ササクレ」立つことも無く、年間を通して快適な住環境を提供できた。
【0024】
なお、本発明による畳における炭片4の吸湿作用は、通気性畳表8、通気性厚手不織布7、多孔通気性硬質プラスチック薄板6をそれぞれ順次に経て緩徐に進行する一方、吸湿済の炭片4の放湿作用は、多孔通気性硬質プラスチック薄板6、通気性厚手不織布7、通気性畳表8をそれぞれ順次に経て緩徐に進行する。
【産業上の利用可能性】
【0025】
前記容器並列体5の各セル内に炭片4を収納後、これら各セルの上面に通気性を有する薄手紙やメッシュの細かい網状体を貼着することで、容器並列体5からの炭片4のこぼれ出しを阻止でき、上記容器並列体自体を運搬したり、並列体5を畳に内装したり、畳の縫合作業等が便利となる。
【符号の説明】
【0026】
1 防湿性裏打ちシート
2 防湿性プラスチック段ボール
3 独立発泡気密性ポリスチレンフォーム板
4 炭片
5 中空ハニカム構造による多数容器の並列体
5A 容器並列体の切断開口辺
6 多孔通気性硬質プラスチック薄板
7 通気性厚手不織布
8 通気性畳表
9 畳縁縫合辺
10 畳縁
10A 縁下紙
10B 畳縁縫合部
11 畳の縁無し辺
12 補強材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭片を収納した中空ハニカム構造による容器並列体を内装した畳において、畳の断層構造として、下層から上層に向けて順次に、防湿性裏打ちシート1、防湿性プラスチック段ボール2、独立発泡気密性ポリスチレンフォーム板3、炭片4を収納した中空ハニカム構造による多数容器の並列体5、多孔通気性硬質プラスチック薄板6、通気性厚手不織布7、通気性畳表8をそれぞれ順次に重合し、これら各部材を畳として縫合するに当たり、内装炭片の微粉末を通さない縁下紙10Aと畳縁10とを重合してその中間部を前記各部材と共に畳縁縫合辺9に沿った内側に垂直堅固に縫合し、この縫合部10Bから畳縁10と縁下紙10Aとを折り返すと共に、この折り返した縁下紙10Aと畳縁10で前記容器並列体5の切断開口辺5Aを覆い塞ぎ畳床の裏面付近まで縫合する一方、畳縁10を縫合しない畳の縁無し辺11には、前記容器並列体5の切断開口辺5Aに前記フォーム板3と同一材の補強材12を密着内装した状態で、前記畳表8を縁無し辺11の側面に巻き込み畳床の裏面に縫合したことを特徴とする調湿作用を有する畳。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−122298(P2012−122298A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275506(P2010−275506)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(398040963)株式会社岡田本店 (1)
【Fターム(参考)】