説明

調節弁

【課題】弁の固着を抑制可能な調節弁を提供する。
【解決手段】弁体であるプラグヘッド2に連結されて一方向へ進退動可能な柱状のプラグガイド7が、取り扱い流体が流れる弁室4において環形状のガイドリング11の内側に摺動可能に保持された調節弁1であって、前記プラグガイド7の断面形状が多角形であり、前記ガイドリング11と接する前記多角形の角部25に、前記プラグガイド7の進退動方向と傾斜して溝部26が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トップガイド式のグローブ形単座調節弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、弁体を駆動する駆動部の動力源によって、空気圧式、油圧式、電動式または自力式等に大別される遠隔操作式の調節弁が用いられている。例えば特許文献1,2には、トップガイド式のグローブ型単座調節弁が記載されており、弁体であるプラグヘッドが柱状のプラグガイドの先端に固定され、プラグガイドがガイドリング内を摺動する構造となっている。すなわち、駆動部によって駆動されて進退動するプラグガイドがガイドリング内でガイドされつつ摺動し、プラグヘッドが、流路に設けられたシートリングに嵌合もしくは離脱することで、弁が開閉する構造となっている。
【特許文献1】特開昭60−125481号公報
【特許文献2】特開昭61−105375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、取り扱い流体がプラグガイドとガイドリングの隙間に入り込むと、これが摩擦熱で重合もしくは焼き付いて固着し、または低温下で結晶化して弁が動かなくなる虞がある。
【0004】
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたものであり、弁の固着を抑制可能な調節弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明に係る調節弁は、弁体であるプラグヘッドに連結されて一方向へ進退動可能な柱状のプラグガイドが、取り扱い流体が流れる弁室において環形状のガイドリングの内側に摺動可能に保持された調節弁であって、前記プラグガイドの断面形状が多角形であり、前記ガイドリングと接する前記多角形の角部に、前記プラグガイドの進退動方向と傾斜して溝部が形成される。
【発明の効果】
【0006】
上記のように構成した本発明に係る調節弁は、プラグガイドの断面形状が多角形であり、かつ角部に溝部が形成されるため、プラグガイドとガイドリングの摺動面が減少して摩擦熱の発生が低減するとともに、プラグガイドとガイドリングの隙間の滞留液量が低減する。このように、摩擦熱および滞留液量が減少することで、取り扱い流体のプラグガイドとガイドリングの隙間における重合や焼き付きが抑制され、または滞留液量が減少することで取り扱い流体の結晶化が抑制されて、弁の固着を抑制できる。また、溝部がプラグガイドの進退動方向と傾斜しているため、溝部から流体が排出され易く、プラグガイドとガイドリングの隙間の滞留液量をより低減でき、弁の固着がより効果的に抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0008】
図1は、本発明の実施形態に係る調節弁の平面図、図2は、同調節弁の拡大断面図、図3は、図2のIII−III線に沿う断面図である。
【0009】
本実施形態に係る調節弁1は、図1,2に示すように、弁体(プラグヘッド2)の上部1箇所をガイドするトップガイド式の調節弁1である。弁体は、一方向へ移動可能なグローブ形の単座弁である。
【0010】
本調節弁1は、取り扱い流体である易重合性流体が流通する流路6が形成された本体3と、流路6と連通して取り扱い流体が流れる弁室4内で可動するプラグヘッド2を備えている。本体3の弁室4には、プラグヘッド2が嵌合若しくは離脱する環状のシートリング5が設けられる。
【0011】
プラグヘッド2は、柱状のプラグガイド7の下端に固定されており、プラグガイド7は、上方に設けられる駆動部8に連結されて軸方向へ進退動可能なバルブステム9に連結されている。駆動部8には、本実施形態では空気圧式のダイアフラムが適用されているが、これに限定されず、他の空気圧式、油圧式、電動式または自力式等の動力源が適用されてもよい。
【0012】
プラグガイド7は、本体3の上部に形成された開口部10に嵌合して固定された環状のガイドリング11の内側に、摺動可能に保持されている。ガイドリング11は、弁室4において生じえるプラグガイド7の流体による揺れを抑制するための部材であり、断面形状が円形の内周面12を有している。
【0013】
本体3に形成される開口部10の上方には、ガイドリング11を覆うように蓋体13が設けられる。蓋体13は、ボルト14等により本体3に固定され、蓋体13と本体3の間に、ガイドリング11が挟持される。
【0014】
プラグガイド7に連結されたバルブステム9は、グランドパッキン18により密封されつつ摺動可能に、蓋体13の上部を貫通している。グランドパッキン18は、グランドブッシュ19により封止されており、グランドブッシュ19は、グランドボルト20により蓋体13の上部に固定されたグランドフランジ21によって固定されている。
【0015】
また、蓋体13の上部には、バルブステム9を内側に収容し、上方にて駆動部8を保持するヨーク22が、ヨークナット23によって固定されている。
【0016】
プラグガイド7は、図2,3に示すように、断面形状が三角形の柱状に形成されており、三角形の角部25が、ガイドリング11の内周面12の形状に対応した曲面となるように、角を切り落として面取り加工されている。各々の角部25には、プラグガイド7の進退動方向と傾斜する溝部26が、当該進退動方向に複数並んで形成されている。プラグガイド7の角部25は、ガイドリング11の内周面12に接して摺動する。なお、プラグガイド7の角部25は、かならずしも曲面となるように面取り加工される必要はなく、平面となるように面取り加工されてもよい。また、本実施形態では、プラグガイド7の断面形状が三角形であるが、四角形等のより角数の多い多角形とすることもできる。
【0017】
次に、本実施形態に係る調節弁1の作用について説明する。
【0018】
弁の開閉のために駆動部8を作動させてプラグヘッド2をシートリング5に対して進退動させると、プラグガイド7が、ガイドリング11の内周面12に沿って摺動する。このとき、プラグガイド7の断面形状が三角形であるため、プラグガイド7とガイドリング11の間の摺動面は角部25に対応する部分のみであり、摺動面が小さい。さらに、角部25には溝部26が形成されているため、摺動面がより減少する。このように、摺動面が減少することで、プラグガイド7とガイドリング11の摺動による摩擦熱の発生が低減し、かつプラグガイド7とガイドリング11の隙間の滞留液量が減少する。したがって、摩擦熱および滞留液量の減少により、易重合性流体のプラグガイド7とガイドリング11の隙間における重合が抑制され、効果的に弁の固着を抑制できる。
【0019】
また、溝部26がプラグガイド7の進退動方向と傾斜して形成されているため、易重合性流体が排出され易い。これにより、プラグガイド7とガイドリング11の隙間の滞留液量がより低減されて、易重合性流体の重合による弁の固着がより効果的に抑制される。
【0020】
なお、プラグガイド7の断面形状は、多角形であれば、断面形状が円形の場合(プラグガイドの外周面の全面がガイドリングの内周面と摺動する場合)と比較して摺動面が減少するため、摩擦熱および滞留液量の低減化を図ることが可能であるが、最も角数の少ない三角形とすることで、最も摺動面積を低減できる。したがって、本実施形態のように、プラグガイド7の断面形状を三角形とすることが、摩擦熱および滞留液量の低減に最も好ましい。
【0021】
また、プラグガイド7の角部25が面取りされているため、角部25が摺動するガイドリング11の内周面12の損傷を抑制することができる。特に、角部25が、ガイドリング11の内周面12の形状に対応した曲面となるように面取り加工されているため、より効果的にガイドリング11の内周面12の損傷を抑制することができる。
【0022】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で種々改変することができる。例えば、本実施形態に係る調節弁1は、トップガイド式の調節弁であるが、弁体の上部および下部の2箇所をガイドするトップアンドボトムガイド式の調節弁にも、本発明を適用できる。また、弁体は、単座弁ではなく複座弁であってもよい。また、プラグガイド7の角部25を面取りしない構造とすることもできる。また、ガイドリング11と蓋体13が、同一部材として一体的に形成されてもよい。
【0023】
また、本発明は、取り扱い流体を易重合性流体に限らずとも、顕著な効果を奏する。例えば、上述の調節弁1により摩擦熱および滞留液量を減少させることで、取り扱い流体のプラグガイド7とガイドリング11の隙間における焼き付きをも抑制でき、効果的に弁の固着を抑制できる。また、例えば低温となることで結晶化する易結晶化流体を取り扱い流体とした場合においても、摺動面積の減少により滞留液量を減少させ、かつ傾斜した溝部26により流体を排出できるため、プラグガイド7とガイドリング11の隙間における結晶化が抑制され、効果的に弁の固着を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る調節弁の平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る調節弁の拡大断面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 調節弁、
2 プラグヘッド、
4 弁室、
5 シートリング、
6 流路、
7 プラグガイド、
11 ガイドリング、
12 内周面、
25 角部、
26 溝部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体であるプラグヘッドに連結されて一方向へ進退動可能な柱状のプラグガイドが、取り扱い流体が流れる弁室において環形状のガイドリングの内側に摺動可能に保持された調節弁であって、
前記プラグガイドの断面形状が多角形であり、前記ガイドリングと接する前記多角形の角部に、前記プラグガイドの進退動方向と傾斜して溝部が形成された調節弁。
【請求項2】
前記プラグガイドの断面形状が三角形である請求項1に記載の調節弁。
【請求項3】
前記角部が面取りされてなる請求項1または2に記載の調節弁。
【請求項4】
前記角部が、当該角部が接する前記ガイドリングの内周面に対応した曲面で面取りされてなる請求項3に記載の調節弁。
【請求項5】
前記取り扱い流体は、易重合性流体である請求項1〜4のいずれか1項に記載の調節弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−54019(P2010−54019A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222282(P2008−222282)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【出願人】(307009414)株式会社本山製作所 (5)
【Fターム(参考)】