説明

調芯機構

【課題】シャフトと挿入孔との軸心を合わせることでシャフトを確実に挿入孔へ挿入し、挿入後にシャフトと挿入孔内壁との間に余分な力が作用しないようにすることを目的とする。
【解決手段】本発明は、シャフトをシャフトに対応する挿入孔に挿入するとき、シャフトと挿入孔との軸心を合わせる調芯機構において、シャフト(2)を第1の支持点において支持する第1の支持手段(3)と、第1の支持点に対してシャフト(2)の軸方向に離隔して配置される第2の支持点においてシャフト(2)を支持する第2の支持手段(3)とを備え、第1の支持手段(3)は第1の支持点におけるシャフトの軸に垂直な方向へのシャフト(2)の移動に追従して第1の支持点を移動させ、第2の支持手段(3)は第2の支持点におけるシャフト(2)の軸に垂直な方向へのシャフト(2)の移動に追従して第2の支持点を移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャフトを挿入孔へ挿入する際にシャフトと挿入孔との軸心を合わせる調芯機構に関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象物に検査装置のシャフトを挿入し、このシャフトを回転駆動してトルク伝達特性を検査する検査装置が特許文献1に記載されている。
【特許文献1】実開平04−032055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来技術のような検査装置では、検査対象物を所望の検査位置で保持する際に検査対象物の位置や向きがずれることがあり、これにより検査対象物の挿入孔とシャフトとの軸心がずれ、シャフトの先端が挿入孔の内壁をこじることにより摩擦力が増大してトルク伝達特性の検査精度が低下する。さらに、軸心のずれが大きいとシャフトを挿入孔に確実に挿入できなくなる可能性がある。
【0004】
またここで、検査装置をスプリングで支持することで検査装置のシャフトを検査対象物の挿入孔に対して上下左右に揺動可能にし、シャフトの向きを随時変更しながらシャフト挿入孔に挿入することも考えられる。しかし、スプリングの伸縮によってシャフトに付勢力が作用するのでシャフトを挿入することができても、シャフトが挿入孔の内壁に付勢されることでトルク伝達特性の検査精度が低下する。
【0005】
本発明は、シャフトと挿入孔との軸心を合わせることでシャフトを確実に挿入孔へ挿入し、挿入後にシャフトと挿入孔内壁との間に余分な力が作用しないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、シャフトをシャフトに対応する挿入孔に挿入するとき、シャフトと挿入孔との軸心を合わせる調芯機構において、シャフトを第1の支持点において支持する第1の支持手段と、第1の支持点に対してシャフトの軸方向に離隔して配置される第2の支持点においてシャフトを支持する第2の支持手段とを備え、第1の支持手段は第1の支持点におけるシャフトの軸に垂直な方向へのシャフトの移動に追従して第1の支持点を移動させ、第2の支持手段は第2の支持点におけるシャフトの軸に垂直な方向へのシャフトの移動に追従して第2の支持点を移動させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シャフトを挿入孔に挿入するときシャフトが挿入孔の内壁に接触しても、第1の支持手段及び第2の支持手段によって支持される第1の支持点及び第2の支持点がそれぞれシャフトの軸に垂直な方向への移動に追従して移動するので、シャフトがずれてその向きが適宜変化することでシャフトと挿入孔との軸心を一致させることができる。また、シャフトの向きが変化するとき、第1の支持手段及び第2の支持手段はシャフトを移動後の状態で支持するので、シャフトと挿入孔内壁との間に余分な力が作用することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下では図面等を参照して本発明の実施の形態について詳しく説明する。
【0009】
(第1実施形態)
図1は本実施形態における調芯機構を有する検査装置を示す側面図である。図2は図1の検査装置を左側から見た正面図である。図3は図1の検査装置を上側から見た上面図である。検査装置1は検査対象物に挿入されるシャフト2と、シャフト2の軸方向に離隔して配置される2つの調芯機構3(第1の支持手段、第2の支持手段)と、シャフト2及び2つの調芯機構3を支持する本体部4とを備える。本実施形態では調芯機構3を分かりやすく説明するために調芯機構3を有する検査装置1として説明する。検査装置1はシャフト2を検査対象物に挿入した状態でシャフト2を回転駆動することで検査対象物の回転体を回転させ、このときの所要トルクを測定する装置である。
【0010】
シャフト2は、小径部2aと大径部2bとから構成される円柱状の部材であり外周面にスプラインが形成される。小径部2aは検査対象物の挿入孔に挿入され、大径部2bは調芯機構3に支持される。シャフト2が検査対象物の挿入孔に挿入されると、シャフト2と検査対象物とはスプライン結合し、シャフト2が回転駆動されることで検査対象物の回転部材が回転する。
【0011】
調芯機構3は、図2に示すようにシャフト2の側面であって調芯機構3に対応する位置に延設される突出部5(第1の支持点、第2の支持点)を挟持する。2つの調芯機構3は図3に示すようにシャフト2の軸方向に離隔して配置されるので、各調芯機構3がそれぞれ独立に上下動することでシャフト2の上下方向の位置及び向きを変化させることができる。調芯機構3の詳細な構造については後述する。
【0012】
本体部4は、シャフト2及び2つの調芯機構3を保持し、第1の台座6に取り付けられる。第1の台座6は第1のガイド部材7を介して下方の第2の台座8に取り付けられる。第2の台座8は第2のガイド部材9を介して下方の検査装置取り付け台10に取り付けられる。
【0013】
第1のガイド部材7は第1の台座6を図2中左右方向に移動可能にガイドする。図2に示すように、第2の台座8の左右端には第1の台座6の左右方向の移動を所定の位置で制止する第1の制止部材11が設けられる。第1の制止部材11と本体部4との間にはそれぞれスプリング12が介装され、検査装置1が左右方向に移動して第1の制止部材11に衝突するのを防止する。
【0014】
図2に示すように本体部4の一部4aはシャフト2を囲むように設けられ、検査装置1の電源オフにより調芯機構3がシャフト2を支持しなくなったとき、シャフト2を上下方向に支持する。上記本体部4の一部4aと本体部4との間には、シャフト2を上下方向に支持する本体部4の一部4aの上下方向の移動を所定の位置で制止する第2の制止部材13が設けられる。第2の制止部材13と上記本体部4の一部4aとの間には衝撃を吸収するスプリング14が設けられる。
【0015】
また、第2のガイド部材9は第2の台座8を図1中左右方向に移動可能にガイドする。第2の台座8より上方の部分はアクチュエータによって押されることで左方向に移動し、シャフト2が検査対象物の挿入孔へと挿入される。
【0016】
次に調芯機構3について図4を用いて詳細に説明する。図4は調芯機構の構造を示す概略構成図である。調芯機構3は円筒状のシリンダ20と、シリンダ20内で摺動可能なピストン21と、ピストン21両端部に設けられる2つの圧力室22、23とを備える。
【0017】
シリンダ20は両端部が封止される円筒状部材であり、側面の一部に開口部24を有する。シリンダ20の両端部には圧力供給路25が接続され、圧力源から所定の圧力が供給される。
【0018】
ピストン21はシリンダ内径とほぼ同径の円柱状部材であり、側面のシリンダ20の開口部24に対応する位置に切り欠き部26が設けられる。切り欠き部26の大きさはシリンダ20の開口部24より小さく設定される。ピストン21内部には切り欠き部26からピストン21両側までを軸方向に貫通するピストン流路27(連通孔)が設けられる。
【0019】
2つの圧力室22、23は、ピストン21の一端とシリンダ20とによって画成される第1の圧力室22及びピストン21の他端とシリンダ20とによって画成される第2の圧力室23であり、それぞれシリンダ20の両端部の圧力供給路25から圧力が供給される。ピストン21は第1の圧力室22と第2の圧力室23との圧力差に応じて図4中左右方向に摺動する。
【0020】
シリンダ20の両端部の圧力供給路25は一部で径が小さくなっている小径部分25aを有し、小径部分25aの圧力室側開口部はスプリング28で付勢されるチェック弁29によって閉塞される。これにより、外部の圧力供給源から第1の圧力室22及び第2の圧力室23へ圧力が導入されるとき、導入される圧力によってチェック弁29がスプリング28を収縮させるので常に圧力源の圧力に応じた所定の圧力が第1の圧力室22及び第2の圧力室23に導入されるとともに、第1の圧力室22及び第2の圧力室23から外部の圧力供給源へ圧力が漏出することを防止する。
【0021】
ピストン流路27は一部で径が小さくなっている小径部分27aを有し、小径部分27aの圧力室側開口部はスプリング30(封止部材付勢手段、差圧発生手段)で付勢される封止部材31(差圧発生手段)によって閉塞される。小径部分27aには小径部分27aよりさらに小さな径を有するピン32、33(差圧発生手段)が貫設され、2つのピン32、33が切り欠き部26の軸方向幅の中間付近で、シャフト2の突出部5を挟むように突出部5と所定の間隔をもって対向する。また、シャフト2の突出部5とピストン21との間には内部にピン32、33を貫通させるようにピン32、33と同心状にスプリング34、35(連結機構)が介装される。シャフト2の突出部5は2つのスプリング34、35からの付勢力が釣り合う位置で支持される。これにより、シャフト2の突出部5の移動によってピン32、33が移動すると、ピン32、33がスプリング34、35の付勢力に対抗して封止部材31を押し込むことで隙間が生じ、第1の圧力室22及び第2の圧力室23の圧力がピストン流路27を介して切り欠き部26側へ漏出する。
【0022】
調芯機構3は以上のように構成され、シャフト2がシリンダ20の軸方向に外力を受けるとシャフト2が外力の作用方向に移動するとともに、第1の圧力室22と第2の圧力室23との圧力が釣り合うまでピストン21が摺動する。ここで、突出部5が図4中A方向に外力を受けた場合について説明する。
【0023】
シャフト2が外力によってA方向に移動すると突出部5がピン33をA方向に押し込む。ピン33はピン33のA方向端部に当接する封止部材31を、スプリング30の付勢力に抗してA方向に移動させる。封止部材31の移動によって第2の圧力室23の圧力がピストン流路27を介して切り欠き部26側へ漏出し、第2の圧力室23の圧力は低下する。
【0024】
第2の圧力室23の圧力は第1の圧力室22の圧力より低くなるので、ピストン21がA方向に摺動する。これにより、第1の圧力室22はピストン21の摺動によって体積が増加するが、圧力源から圧力供給路25を介して圧力が供給されるので圧力供給源から供給される圧力に保たれる。第2の圧力室23はピストン流路27を介して圧力が漏出しながら、圧力源から圧力供給路25を介して圧力が供給され、かつ第2の圧力室23の体積が減少する。
【0025】
シャフト2への外力の作用がなくなりA方向への移動が止まると、シャフト2の突出部5とピン33とが離れることで封止部材31はスプリング30の付勢力によってピン33側へ押されピストン流路27を閉塞する。これにより、第2の圧力室23からの圧力の漏出が止まり、第1の圧力室22と第2の圧力室23との圧力が釣り合ってピストン21は停止する。
【0026】
このように、シャフト2の移動に伴ってピストン21が移動し、シャフト2とピストン21の移動量が同一であるので、シャフト2は移動前と同様にピストン21及び2つのスプリング34、35によって支持され、シャフト2には移動前の位置に戻ろうとする力は作用しない。すなわち、シャフト2の移動によって生じたピストン21とシャフト2との相対変位は、ピストン21の移動によって変位前の状態に戻るのでシャフト2は移動後の状態で支持される。なお、シャフト2の突出部5がA方向と逆方向に外力を受ける場合も同様である。
【0027】
本実施形態における調芯機構3を有する検査装置1は以上のように構成され、第2の台座8が図1中B方向に移動するとシャフト2が検査対象物の挿入孔に挿入される。このとき、シャフト2と挿入孔との軸心がずれているとシャフト2が挿入孔の内壁に接触し、内壁からシャフト2側へ力を受ける。これにより、シャフト2は調芯機構3によって内壁から離れる方向に移動し、シャフト2全体がずれてその向きが適宜変化することでシャフト2と挿入孔との軸心を一致させることができる。(請求項1、2、3に対応)
また、シャフト2は2つの調芯機構3によって上下方向に位置が調節されるので、シャフト2の向きに加えて高さも調節されることとなり、シャフト2と挿入孔との軸心を確実に揃えることができる。(請求項1、2、3に対応)
さらに、シャフト2とピストン21の移動量は同一であり、シャフト2の移動後もシャフト2はピストン21及び2つのスプリング34、35によって支持されるので、シャフト2と挿入孔内壁との間に余分な力が作用することを防止できる。(請求項1、2、3に対応)
さらに、2つのピンがシャフト2の突出部5と所定の間隔をもって対向し、シャフト2の突出部5の両端であってピストン21との間には内部にピン32、33を貫通させるようにピン32、33と同心状にスプリング34、35が介装されるので、シャフト2の微少な振動がスプリング34、35によって吸収され、さらにピン32、33とシャフト2との間に所定の間隔があることでシャフト2の移動に対するピストン21の動きが敏感になり過ぎることを防止して装置の操作性を向上させることができる。(請求項4に対応)
圧力供給路25はスプリング28で付勢されるチェック弁29が圧力室側開口部を塞いでいるので、ピストン21にだけ外力が作用しても第1の圧力室22及び第2の圧力室23から圧力が漏出することはなく、ピストン21の移動を防止することができ、意図しないシャフト2の移動を防止できる。(請求項5に対応)
以上説明した実施形態に限定されることなく、その技術的思想の範囲内において種々の変形や変更が可能である。
【0028】
例えば、本実施形態では調芯機構3を有する検査装置としてトルク測定装置の説明をしたが、トルク測定以外の方法で対象物を検査する装置に調芯機構3が設けられても同様の作用効果を得ることができる。また、検査装置に限定されることなくシャフト組み付け装置などに用いてもよい。
【0029】
また、本実施形態では調芯機構3をシリンダ20の軸が鉛直方向となるように配置しているが、水平方向や傾斜した方向など任意の方向で使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施形態における調芯機構を有する検査装置を示す側面図である。
【図2】図1の検査装置を左側から見た正面図である。
【図3】図1の検査装置を上側から見た上面図である。
【図4】調芯機構の構造を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0031】
1 検査装置
2 シャフト
3 調芯機構(第1の支持手段、第2の支持手段)
5 突出部(第1の支持点、第2の支持点)
20 シリンダ
21 ピストン
24 開口部
26 切り欠き部
27 ピストン流路(連通孔)
28 スプリング
29 チェック弁
30 スプリング(封止部材付勢手段)
31 封止部材
32 ピン
33 ピン
34 スプリング
35 スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトを前記シャフトに対応する挿入孔に挿入するとき、前記シャフトと前記挿入孔との軸心を合わせる調芯機構において、
前記シャフトを第1の支持点において支持する第1の支持手段と、
前記第1の支持点に対して前記シャフトの軸方向に離隔して配置される第2の支持点において前記シャフトを支持する第2の支持手段と、
を備え、
前記第1の支持手段は前記第1の支持点における前記シャフトの軸に垂直な方向への前記シャフトの移動に追従して前記第1の支持点を移動させ、前記第2の支持手段は前記第2の支持点における前記シャフトの軸に垂直な方向への前記シャフトの移動に追従して前記第2の支持点を移動させることを特徴とする調芯機構。
【請求項2】
前記第1の支持手段及び前記第2の支持手段はそれぞれ、
前記シャフトの軸と垂直方向に設けられるシリンダと、
前記シリンダの内部を摺動して前記シリンダ内部を第1の圧力室と第2の圧力室とに隔絶するピストンと、
前記第1の圧力室及び前記第2の圧力室に圧力を供給する圧力源と、
前記ピストンと前記シャフトとを連結し、前記ピストンと前記シャフトとの相対変位を許容する連結機構と、
前記シャフトの移動によって生じた前記ピストンと前記シャフトとの相対変位を、前記ピストンを摺動させて変位前の状態に戻すように、前記第1の圧力室と前記第2の圧力室との圧力差を発生させる差圧発生手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の調芯機構。
【請求項3】
前記シリンダの側面に設けられる開口部と、
前記開口部に露出する前記ピストンの一部に設けられる切り欠き部と、
前記切り欠き部と前記第1の圧力室及び前記第2の圧力室とを連通する前記ピストン内部の連通孔と、
前記第1の支持点及び前記第2の支持点における前記シャフトの側面に延設される突出部と、
前記連通孔内に収装され、前記切り欠き部において前記突出部を挟んで対向する、前記連通孔より小径の一対のピンと、
前記連通孔を前記第1の圧力室及び前記第2の圧力室側から封止する封止部材と、
前記封止部材を前記第1の圧力室及び前記第2の圧力室における前記連通孔の開口部へ向けて付勢する封止部材付勢手段と、
をさらに備え、
前記差圧発生手段は、前記シャフトの移動によって前記突出部が一方の前記ピンを介して前記封止部材を前記付勢手段の付勢力に抗して移動させ、前記第1の圧力室又は前記第2の圧力室の圧力が前記連通孔から漏出することによって、前記第1の圧力室と前記第2の圧力室との圧力差を発生させることを特徴とする請求項2に記載の調芯機構。
【請求項4】
前記連結機構は、前記突出部と前記ピストンとの間に前記ピンと同心状に設けられるスプリングであり、
前記ピンは前記切り欠き部において前記突出部を挟むように所定の間隔をもって対向することを特徴とする請求項3に記載の調芯機構。
【請求項5】
前記圧力源から前記第1の圧力室及び前記第2の圧力室へ圧力を供給する圧力供給路に設けられ、前記第1の圧力室及び前記第2の圧力室から前記圧力源へと圧力が逆流するのを阻止するチェック弁をさらに備えることを特徴とする請求項2から4までのいずれか1項に記載の調芯機構。
【請求項6】
前記シャフトは、外周にスプラインが形成されることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の調芯機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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