説明

調速ステー装置

【課題】開閉扉に対する操作抵抗に開方向と閉方向とで差を持たせることができ、しかも開方向又は閉方向の操作抵抗を調整可能となした調速ステー装置を提供する。
【解決手段】キャビネット本体2に回転自在に取付けた枢支部材11と、途中部を枢支部材11に挿通させたステー本体12と、枢支部材11内においてステー本体12に沿ってスライド自在に設けたスライド部材13と、スライド部材13と枢支部材11間においてスライド部材13のスライド方向に転動自在に設けた押圧ローラ14と、スライド部材13の開方向への最前進位置を調整する調整ネジ15と、スライド部材13及び押圧ローラ14の閉方向への最前進位置を規制するストッパー部材17とを備え、スライド部材13の押圧面13aと枢支部材11の受圧面11aのうちの一方を開方向へ行くにしたがって、ステー本体12に接近する傾斜面で構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具等における開閉体の開閉速度を調整可能な調速ステー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家具等の箱状部材に対する開閉扉の開閉支持構造として、開閉扉を箱状部材に開閉自在に枢支するヒンジ部材と、箱状部材と開閉扉とにわたって設けられ、開閉扉の開閉速度を調整可能なステー装置とを備えたものが広く実施されている。
【0003】
前記ステー装置として、例えば、開閉扉に取り付けた棒状部材からなるステー本体と、ステー本体が挿通する挿通溝を有する圧縮変形可能なブッシュと、ブッシュを保持するブッシュ保持溝を有する本体部材とを備え、ステー本体の変位速度をそのステー本体に対するブッシュの押圧力で抑制するように構成したものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3011135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記特許文献1記載のステー装置では、開閉扉の開方向と閉方向とで同じ大きさの操作抵抗がステー本体に対して付与されるので、例えば箱状部材の上部に対して回動自在に開閉扉を設けた場合において、開閉扉がその自重により緩やかに開方向へ回動するように操作抵抗を設定すると、開閉扉を手動により閉操作するときに、大きな操作力が必要となり、開閉扉の操作性が低下するという問題が発生する。また反対に手動による開閉扉の閉方向への操作性を高めるため、ステー本体に対する操作抵抗を小さくすると、開閉扉がその自重で開くときに、開閉扉が勢い良く開方向に回動してしまい、全開になったときに大きな衝撃が発生するという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、開閉扉に対する操作抵抗に開方向と閉方向とで差を持たせることができ、しかも開方向又は閉方向の操作抵抗を調整可能となした調速ステー装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る調速ステー装置は、本体部材とそれに開閉自在に取付けた開閉扉とにわたって設けられ、該開閉扉の開方向と閉方向のうちの一方の重操作方向への操作抵抗を調整して、該重操作方向への操作抵抗を他方の軽操作方向への操作抵抗よりも大きく設定可能となした調速ステー装置であって、前記本体部材の壁部に回転自在に取付けた枢支部材と、前端部を前記開閉扉に対して回転自在に取り付け、途中部を前記枢支部材にスライド自在に挿通させた細長い棒状のステー本体と、前記枢支部材内において前記ステー本体に沿ってスライド自在に設けたスライド部材と、前記スライド部材と枢支部材間においてスライド部材のスライド方向に転動自在に設けた押圧ローラと、前記押圧ローラにより押圧されるスライド部材に設けた押圧面と前記押圧ローラを受け止める枢支部材に設けた受圧面であって、前記押圧面と受圧面のうちの少なくとも一方を重操作方向へ行くにしたがって、前記ステー本体に接近する傾斜面で構成した押圧面及び受圧面と、前記押圧ローラからの押し操作力でステー本体に圧接されるスライド部材に設けた摺接面と、前記スライド部材の重操作方向への最前進位置を調整する調整ネジと、前記スライド部材に対する押圧ローラの重操作方向への最前進位置を規制するスライド部材に設けた係止部と、前記スライド部材及び押圧ローラの軽操作方向への最前進位置を規制する位置規制手段とを備えたものである。なお、本明細書では、ステー本体のスライド方向のうちの、操作抵抗を大きくした方向を重操作方向と定義し、操作抵抗を小さくした方向を軽操作方向と定義して以下説明する。
【0008】
この調速ステー装置では、ステー本体を重操作方向へ操作すると、スライド部材がステー本体とともに重操作方向へ移動し、押圧ローラがスライド部材に設けた押圧面と枢支部材に設けた受圧面間において重操作方向へ転動し、重操作方向へ行くにしたがって、ステー本体に接近する傾斜面で構成した押圧面と受圧面の少なくとも一方により、押圧ローラによる押圧面への押圧力が強くなるとともに、ステー本体に対するスライド部材への圧接力が強くなり、ステー本体の操作抵抗が大きくなる。そして、スライド部材が調整ネジに当接して、スライド部材が重操作方向への最前進位置に位置規制されると、押圧ローラの転動が停止し、押圧ローラの転動位置に応じた押圧力で、スライド部材の摺動面がステー本体に圧接されて、調整ネジの螺進位置に応じた操作抵抗がステー本体に付与されながら、ステー本体が重操作方向にスライドすることになる。
【0009】
一方、ステー本体を軽操作方向へ操作すると、スライド部材がステー本体とともに軽操作方向にスライドするとともに、押圧ローラが押圧面と受圧面間において軽操作方向、重操作方向へ行くにしたがって、ステー本体に接近する傾斜面で構成した押圧面と受圧面の少なくとも一方により、押圧ローラによる押圧面への押圧力が弱くなるとともに、スライド部材のステー本体に対する圧接力が弱くなり、ステー本体の操作抵抗が小さくなる。そして、スライド部材及び押圧ローラの軽操作方向への最前進位置が位置規制手段により位置規制されると、押圧ローラの転動が停止し、押圧ローラの転動位置に応じた押圧力で、スライド部材の摺動面がステー本体に圧接されて、ステー本体に重操作方向への操作力よりも小さな操作抵抗が付与されるか、或いは押圧ローラが押圧面から離間して、スライド部材によるステー本体への操作抵抗が無くなって、ステー本体が軽操作方向にスライドすることになる。
【0010】
このように、この調速ステー装置では、ステー本体のスライド方向が、重操作方向の場合には、ステー本体の操作抵抗が大きくなり、軽操作方向の場合には、ステー本体の操作抵抗が小さくなるので、例えば重力などによる開閉扉の自動操作方向を重操作方向に設定し、開閉扉の手動操作方向を軽操作方向に設定することで、重力などによって開閉扉が自動で開方向又は閉方向に回動するときには、高級感や安定感のある緩やかな作動を実現でき、開閉扉を手動で反対方向へ操作するときには、操作抵抗を小さくして、開閉扉の操作性を向上できる。
【0011】
この調速ステー装置は、本体部材の下部に開閉扉を開閉自在に支持した家具等や、本体部材の上部に開閉扉を開閉自在に支持した家具等や、本体部材の左部と右部の少なくとも一方に開閉扉を開閉自在に支持した家具等に対して適用することができる。
【0012】
本体部材の下部に開閉扉を開閉自在に支持した家具等においては、例えば開閉扉を手動により閉操作するときには、操作抵抗が小さくなるように設定して、開閉扉の手動による閉方向への操作が円滑になされるように構成し、開閉扉が自重により開方向へ回動するときには、操作抵抗が大きくなるように設定して、開閉扉が緩やかに開方向へ回動するように構成することができる。
【0013】
また、本体部材の上部に開閉扉を開閉自在に支持した家具等においては、例えば開閉扉を手動により開操作するときには、操作抵抗が小さくなるように設定して、開閉扉の手動による開方向への操作が円滑になされるように構成し、開閉扉が自重により閉方向へ回動するときには、操作抵抗が大きくなるように設定して、開閉扉が緩やかに閉方向へ回動するように構成することができる。
【0014】
更に、本体部材の左部と右部の少なくとも一方に開閉扉を開閉自在に支持した家具等においては、コイルバネ等の付勢手段で、開閉扉を開方向又は閉方向へ付勢し、例えば開閉扉を開方向へ付勢する場合には、開閉扉を手動により閉操作するときには、操作抵抗が小さくなるように設定して、開閉扉の手動による閉方向への操作が円滑になされるように構成し、開閉扉が付勢手段により開方向へ回動するときには、操作抵抗が大きくなるように設定して、開閉扉が緩やかに開方向へ回動するように構成することができる。また、開閉扉を閉方向へ付勢する場合には、開閉扉を手動により開操作するときには、操作抵抗が小さくなるように設定して、開閉扉の手動による開方向への操作が円滑になされるように構成し、開閉扉を付勢手段により閉方向へ回動させるときには、操作抵抗が大きくなるように設定して、開閉扉が緩やかに閉方向へ回動するように構成することができる。
【0015】
ここで、前記押圧面及び受圧面を重操作方向へ行くにしたがって前記ステー本体に接近する傾斜面でそれぞれ構成することが好ましい実施の形態である。この場合には、ステー本体を重操作方向へ操作したときに、ステー本体とともに重操作方向へ移動するスライド部材の押圧面により、押圧ローラに対して重操作方向への操作力を作用させることができるので、押圧ローラと押圧面間の滑りを防止して、押圧面と受圧面間において押圧ローラを重操作方向へ確実に転動させることができる。
【0016】
前記位置規制手段として、前記押圧ローラの軽操作方向への最前進位置を規制するストッパー部材を設けることができる。この場合には、ストッパー部材を設けるという簡単な構成で、前記押圧ローラの軽操作方向への最前進位置を規制するとともに、押圧ローラにスライド部材の係止部が係合することで、スライド部材の軽操作方向への最前進位置をも規制することができる。
【0017】
前記ステー本体を細長い板状部材で構成し、前記ステー本体に対するスライド部材の押圧方向におけるステー本体の厚さをステー本体の重操作方向の後端部側へ行くにしたがって大きく設定することも好ましい実施の形態である。このように構成すると、ステー本体の重操作方向への操作抵抗を、ステー本体を重操作方向に操作するにしたがって順次大きく設定することができ、例えば開閉扉の開閉速度を全開に近づくにしたがって緩やかになるように設定したり、全閉に近づくにしたがって緩やかになるように設定したりすることができる。
【0018】
前記スライド部材の摺接面をスライド部材のスライド方向に相互に間隔をあけて1対設けることが好ましい実施の形態である。このように構成すると、スライド部材をステー本体に対して安定性良く摺動させることができる。また、スライド部材とステー本体との摺動面積のバラツキを少なくできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る調速ステー装置によれば、ステー本体のスライド方向が、重操作方向の場合には、ステー本体の操作抵抗が大きくなり、軽操作方向の場合には、ステー本体の操作抵抗が小さくなるので、例えば重力などによる開閉扉の自動操作方向を重操作方向に設定し、開閉扉の手動操作方向を軽操作方向に設定することで、重力などによって開閉扉が自動で開方向又は閉方向に回動するときには、高級感や安定感のある緩やかな作動を実現でき、開閉扉を手動で反対方向へ操作するときには、操作抵抗を小さくして、開閉扉の操作性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】調速ステー装置及び家具の斜視図
【図2】図1のII−II線断面図
【図3】調速ステー装置の分解斜視図
【図4】調速ステー装置の一部を切り欠いた分解斜視図
【図5】開閉扉を閉鎖した状態での図2のV-V線断面図
【図6】図5のVI-VI線断面図
【図7】(a)(b)は図5のVII-VII線断面での調速ステー装置の作動説明図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1、図2に示すように、調速ステー装置10は、液晶テレビや音響機器などを設置するためのキャビネット1において、前面を開放した箱状のキャビネット本体2(これが本体部材に相当する)と、キャビネット本体2に開閉自在に取付けた開閉扉3とにわたって設けられ、開閉扉3の重操作方向(図1、図2に示すキャビネット1では開閉扉3の開方向)への操作抵抗を調整することで、開方向への操作抵抗を軽操作方向(図1、図2に示すキャビネット1では開閉扉3の閉方向)への操作抵抗よりも大きく設定可能となし、自重による開方向への操作時には、操作抵抗を大きくして緩やかに開閉扉3が開放されるように構成し、手動操作による閉方向への操作時には、操作抵抗を小さくして容易に開閉扉3を閉操作できるように構成したものである。
【0022】
開閉扉3は、左右1対のヒンジ部材4を介してキャビネット本体2の下壁部2Dの前縁部に、図2に実線で図示の開放位置と、図2に仮想線で図示の閉鎖位置とにわたって回動自在に取り付けられている。キャビネット本体2の上壁部2Uの下面前縁部の左右方向の中央部には永久磁石を組み込んだマグネットキャッチ5が設けられ、開閉扉3の遊端部の左右方向の中央部には磁性体からなる受け金具6が固定され、開閉扉3を閉じた状態で、マグネットキャッチ5が受け金具6を吸着保持して、開閉扉3が閉鎖位置に保持されるように構成されている。
【0023】
調速ステー装置10は、キャビネット本体2の左側壁部2Lと、開閉扉3の左部間に設けられている。ただし、キャビネット本体2の右側壁部2Rと、開閉扉3の右部間に設けることもできるし、キャビネット本体2の左右の側壁部2L、2Rと開閉扉3の左部及び右部間にそれぞれ設けることもできる。ただし、キャビネット本体2の右側に設ける調速ステー装置は、左側に設ける調速ステー装置10とは左右対称に構成することになる。
【0024】
調速ステー装置10は、図1〜図7に示すように、キャビネット本体2の左側壁部2Lに回転自在に取付けた枢支部材11と、前端部を開閉扉3に対して回転自在に取り付け、途中部を枢支部材11にスライド自在に挿通させたステー本体12と、枢支部材11内においてステー本体12に沿ってスライド自在に設けたスライド部材13と、スライド部材13と枢支部材11間においてスライド部材13のスライド方向に転動自在に設けた押圧ローラ14と、スライド部材13の開方向への最前進位置を調整する調整ネジ15と、スライド部材13及び押圧ローラ14の閉方向への最前進位置を規制する位置規制手段としてのストッパー部材17とを備え、押圧ローラ14が圧接される押圧面13aと、ステー本体12に圧接される摺動面13bと、押圧ローラ14の開方向への最前進位置を規制する係止部13cとをスライド部材13に設け、枢支部材11に押圧ローラ14を受け止める受圧面11aを設け、押圧面13aと受圧面11aのうちの少なくとも一方を重操作方向へ行くにしたがって、ステー本体12に接近する傾斜面で構成したものである。
【0025】
枢支部材11は略円柱状の部材で構成され、枢支部材11の左端部には環状のフランジ部11bが外方へ突出状に形成され、枢支部材11の左端部には平板環状の固定リング16が外嵌状に設けられている。固定リング16の左面側には枢支部材11のフランジ部11bを回転自在に保持可能な保持溝16aが形成され、枢支部材11は、図5に示すように、フランジ部11bを固定リング16の保持溝16aに装填して、固定リング16を枢支部材11の左部に外嵌させた状態で、固定リング16をキャビネット本体2の左側壁部2Lに固定することで、キャビネット本体2の左側壁部2Lの内面の前縁部の中段部に左右方向の軸心回りに回転自在に支持されている。
【0026】
枢支部材11内には後面を開放した前後方向に延びる略直方体状の収容空間18が形成され、枢支部材11の前側上部には収容空間18に連通する角孔状の挿通孔19が形成されている。ステー本体12は、縦断面長方形状の細長い金属製の板状部材で構成され、縦断面の長手方向を上下方向にして挿通孔19及び収容空間18に挿通されて、枢支部材11に前後方向にスライド自在に支持されている。ステー本体12の幅は一様に設定することも可能であるが、開閉扉3が開放位置側へ回動するにしたがって、回動速度が緩やかになるように設定したり、開閉扉3の開放位置側への回動速度が一様になるように設定したりするため、ステー本体12の後部側(重操作方向の後端部側)へ行くにしたがって大きくなるように構成されている。
【0027】
図1、図2に示すように、開放位置における開閉扉3の左部の前後方向の途中部にはブラケット部材7が上方へ突出状に固定され、ステー本体12の前端部はブラケット部材7の上端部に左右方向の枢支ピン8を介して回転自在に連結されている。ステー本体12の後端部には抜止部12aがステー本体12を折り曲げて形成され、この抜止部12aが枢支部材11に当接することで、開閉扉3が開放位置に保持されるように構成されている。
【0028】
図3〜図7に示すように、収容空間18の上部内にはステー本体12の上部を前後方向に案内する案内溝11cが形成され、枢支部材11の右部には収容空間18の高さ方向の途中部内に突出する前後方向に細長いガイド突部11dが形成されている。
【0029】
スライド部材13は、収容空間18の上部内に、ステー本体12のスライド方向に移動自在に組み付けられ、押圧ローラ14は、スライド部材13の下側の収容空間18の下部内に、ステー本体12のスライド方向に転動自在に設けられている。
【0030】
スライド部材13の左部にはステー本体12の下部に沿って前後方向に移動自在に嵌合する嵌合溝13dを有する断面略U字状のガイド部13eが形成され、ガイド部13eの嵌合溝13dの底面にはステー本体12の下面に摺接する1対の摺動部13fが前後に間隔をあけて形成されている。
【0031】
枢支部材11における収容空間18の底面には押圧ローラ14を下側から受け止める受圧面11aが形成され、ガイド部13eの下面には押圧ローラ14により上方へ押圧される押圧面13aが形成されている。受圧面11a及び押圧面13aは、開閉扉3の開方向(重操作方向)へ行くにしたがってステー本体12の下面に接近する傾斜面で構成され、図6に示すように、ステー本体12の長さ方向に対する受圧面11aの傾斜角度θ1は、ステー本体12の長さ方向に対する押圧面13aの傾斜角度θ2よりもやや小さな傾斜角度に設定されている。ただし、受圧面11aと押圧面13aとは、その一方のみを重操作方向へ行くにしたがって、ステー本体12の下面に接近する傾斜面で構成することもできる。
【0032】
押圧ローラ14は、押圧面13aと受圧面11a間に配置されるローラ本体14aと、ガイド突部11dの下側に配置される軸部14bとから構成されている。ただし、軸部14bを省略して、全体を円柱状に構成することも可能である。また、押圧ローラ14の外周面にシリコングリス等を塗布して、押圧ローラ14の転動が円滑になされるように構成することもできる。
【0033】
枢支部材11の後部には押圧ローラ14に当接可能なピン部材からなるストッパー部材17が収容空間18を横断するように左右方向に設けられ、スライド部材13のガイド部13eの前部には係止部13cが下方へ突出状に形成されている。スライド部材13の右後部にはガイド突部11dの上側に配置される直方体状のブロック部13gが形成され、ブロック部13gの前面には前方下がりの傾斜状の当接面13hが形成され、枢支部材11の前側上部には当接面13hに当接可能な調整ネジ15が螺合されている。そして、押圧ローラ14は、図7(a)に示すように、押圧ローラ14がストッパー部材17に当接することで、その後方への移動が規制されて、軽操作方向の最前進位置に保持され、スライド部材13は、押圧ローラ14の後方への移動がストッパー部材17で規制されることで、係止部13cを介して後方への移動が規制され、軽操作方向の最前進位置に保持される。また、ストッパー部材17は、図7(b)に示すように、調整ネジ15の先端部に当接面13hが当接することで、前方への移動が規制されて、重操作方向への最前進位置に保持され、押圧ローラ14は、スライド部材13の係止部13cに当接してその前方への移動が規制されることで、重操作方向への最前進位置に保持される。また、調整ネジ15の螺進量を調整することで、スライド部材13及び押圧ローラ14の重操作方向への最前進位置を調整することができる。
【0034】
この調速ステー装置10では、閉鎖位置の開閉扉3を開放するため、開閉扉3を前側へ手で操作して、受け金具6をマグネットキャッチ5ャから切り離すと、その後は、開閉扉3がその自重により自動的に開放位置まで回動することになる。このとき、図7(b)に示すように、ステー本体12が前方(重操作方向)へ移動するとともに、スライド部材13がステー本体12とともに前方(重操作方向)へ移動し、押圧ローラ14がスライド部材13に設けた押圧面13aと枢支部材11に設けた受圧面11a間において前方に転動し、押圧ローラ14による押圧面13aへの押圧力が強くなるとともに、スライド部材13からのステー本体12への圧接力が強くなり、ステー本体12の操作抵抗が大きくなる。そして、スライド部材13が調整ネジ15に当接して、スライド部材13が最前進位置に位置規制されると、押圧ローラ14の転動が停止し、押圧ローラ14の転動位置に応じた押圧力で、スライド部材13の摺動面13bがステー本体12に圧接されて、調整ネジ15の螺進位置に応じた操作抵抗がステー本体12に付与されながら、ステー本体12が前方へスライドして、開閉扉3が緩やかに開放位置まで回動することになる。
【0035】
一方、開放位置の開閉扉3を閉鎖するときには、開閉扉3を閉鎖方向へ手動で回動操作して、受け金具6をマグネットキャッチ5ャに吸着保持させて、開閉扉3を閉鎖位置に保持させることになる。このとき、図7(a)に示すように、ステー本体12が後方(軽操作方向)へ移動するとともに、スライド部材13がステー本体12とともに後方(軽操作方向)にスライドし、押圧ローラ14が押圧面13aと受圧面11a間において後方に転動し、押圧ローラ14による押圧面13aへの押圧力が弱くなるとともに、スライド部材13のステー本体12に対する圧接力が弱くなり、ステー本体12の操作抵抗が小さくなる。そして、押圧ローラ14がストッパー部材17に当接して、スライド部材13及び押圧ローラ14の最後退位置が位置規制されると、押圧ローラ14の転動が停止し、押圧ローラ14の転動位置に応じた押圧力で、スライド部材13の摺動面13bがステー本体12に圧接されるか、或いは押圧ローラ14がスライド部材13の押圧面14から離間して、ステー本体12に前方への操作抵抗よりも小さな操作抵抗が付与されながら、ステー本体12が後方にスライドして、開閉扉3を閉鎖位置まで容易に回動操作できることになる。
【0036】
このように、この調速ステー装置10では、重力によって開閉扉3が自動で開方向に回動するときには、高級感や安定感のある緩やかな作動を実現でき、開閉扉3を手動で反対方向へ操作するときには、操作抵抗を小さくして、開閉扉3の操作性を向上できる。
【0037】
なお、本実施の形態では、キャビネット本体2の下部に開閉扉3を開閉自在に支持したキャビネット1に対して本発明の調速ステー装置10を適用したが、キャビネット本体2の上部に開閉扉3を開閉自在に支持したキャビネットや、キャビネット本体2の左側壁部2Lと右側壁部2Rの少なくとも一方に開閉扉3を開閉自在に支持したキャビネットなどに対しても本発明を同様に適用することができる。また、本発明は、キャビネット1以外の家具類に対しても、開閉扉3を有するものであれば同様に適用することができる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲においてその構成を変更し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0039】
1 キャビネット 2 キャビネット本体
2D 下壁部 2L 左側壁部
2R 右側壁部 2U 上壁部
3 開閉扉 4 ヒンジ部材
5 マグネットキャッチ 6 受け金具
7 ブラケット部材 8 枢支ピン
10 調速ステー装置 11 枢支部材
11a 受圧面 11b フランジ部
11c 案内溝 11d ガイド突部
12 ステー本体 12a 抜止部
13 スライド部材 13a 押圧面
13b 摺動面 13c 係止部
13d 嵌合溝 13e ガイド部
13f 摺動部 13g ブロック部
13h 当接面 14 押圧ローラ
14a ローラ本体 14b 軸部
15 調整ネジ 16 固定リング
16a 保持溝 17 ストッパー部材
18 収容空間 19 挿通孔



【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部材とそれに開閉自在に取付けた開閉扉とにわたって設けられ、該開閉扉の開方向と閉方向のうちの一方の重操作方向への操作抵抗を調整して、該重操作方向への操作抵抗を他方の軽操作方向への操作抵抗よりも大きく設定可能となした調速ステー装置であって、
前記本体部材の壁部に回転自在に取付けた枢支部材と、
前端部を前記開閉扉に対して回転自在に取り付け、途中部を前記枢支部材にスライド自在に挿通させた細長い棒状のステー本体と、
前記枢支部材内において前記ステー本体に沿ってスライド自在に設けたスライド部材と、
前記スライド部材と枢支部材間においてスライド部材のスライド方向に転動自在に設けた押圧ローラと、
前記押圧ローラにより押圧されるスライド部材に設けた押圧面と前記押圧ローラを受け止める枢支部材に設けた受圧面であって、前記押圧面と受圧面のうちの少なくとも一方を重操作方向へ行くにしたがって、前記ステー本体に接近する傾斜面で構成した押圧面及び受圧面と、
前記押圧ローラからの押し操作力でステー本体に圧接されるスライド部材に設けた摺接面と、
前記スライド部材の重操作方向への最前進位置を調整する調整ネジと、
前記スライド部材に対する押圧ローラの重操作方向への最前進位置を規制するスライド部材に設けた係止部と、
前記スライド部材及び押圧ローラの軽操作方向への最前進位置を規制する位置規制手段と、
を備えたことを特徴とする調速ステー装置。
【請求項2】
前記押圧面及び受圧面を重操作方向へ行くにしたがって前記ステー本体に接近する傾斜面でそれぞれ構成した請求項1記載の調速ステー装置。
【請求項3】
前記位置規制手段として、前記押圧ローラの軽操作方向への最前進位置を規制するストッパー部材を設けた請求項1又は2記載の調速ステー装置。
【請求項4】
前記ステー本体を細長い板状部材で構成し、前記ステー本体に対するスライド部材の押圧方向におけるステー本体の厚さをステー本体の重操作方向の後端部側へ行くにしたがって大きく設定した請求項1〜3のいずれか1項記載の調速ステー装置。
【請求項5】
前記スライド部材の摺接面をスライド部材のスライド方向に相互に間隔をあけて1対設けた請求項1〜4のいずれか1項記載の調速ステー装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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