説明

警報表示方法

【課題】電気設備の構造に則した感電災害の危険範囲を分り易く表示する警報表示方法を提供する。
【解決手段】感電災害の危険がある高電圧充電部51がある電気設備52を有し、前記電気設備52の構造を三次元的に表示しその高電圧充電部51の周囲に電界強度分布を感電災害の危険度合いに応じて段階的色分け表示した三次元電界強度分布図57を設け、前記三次元電界強度分布図57を電気設備52の周囲部に掲示して、感電災害の危険範囲を表示するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気設備に対して、感電災害の危険範囲を分かり易く表示する警報表示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、配電盤等の電気設備の点検作業においては、作業前に死活線確認のための検電を行ってから作業を開始する。死活線確認作業は、作業者が検電器又は電圧警報器を活線に接触又は近づけて、通電状態か停電状態かを確認している。しかしながら、作業者による検電忘れがあった場合や停電であるとの思い込み等があった場合、あるいは電気設備の予期しない状態変化があった場合には、感電災害を引き起こす恐れがある。
このような、検電忘れを防止するための従来の技術として、例えば、手首装着式充電検出器が提案されている。これは、検出回路と警報回路とを収容した検出器本体と検知電極(検出アンテナ)とからなり、手首に装着可能に構成され、高電圧充電部に接近したときに、その高電圧充電部と検知電極との間に形成される静電容量、及び人体との間に形成される静電容量により、高電圧充電部側から人体へ流れる微小な静電誘導電流を検出回路で検出し、その検出信号に基づいて警報回路で警報を発するようにしたものである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−220151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、感電災害の危険がある高電圧充電部がある電気設備に対しては、感電災害の危険範囲が一切分らず、又、電圧警報器が実際的にどの範囲やどの距離で動作するのか、一切分からなかった。電気設備の構造などを表す図は、概ね平面図的であり、解りにくく、構造を理解するには、時間が必要であった。又、電気設備において、感電災害の危険範囲と安全範囲との区別が解らなかった。さらに、電気設備を点検する時、感電災害の危険範囲と安全範囲について、作業指示者の作業者への安全に関する作業指示が正確さに欠けていた。
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、感電災害の危険がある高電圧充電部がある電気設備を有し、三次元電界強度分布図を電気設備の周囲部に掲示して、電気設備の構造に則した感電災害の危険範囲を分り易く表示する警報表示方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係わる警報表示方法は、感電災害の危険がある高電圧充電部がある電気設備を有し、前記電気設備の構造を三次元的に表示しその高電圧充電部の周囲に電界強度分布を感電災害の危険度合いに応じて段階的色分け表示した三次元電界強度分布図を設け、前記三次元電界強度分布図を前記電気設備の周囲部に掲示して、感電災害の危険範囲を表示するようにしたものである。
【発明の効果】
【0006】
この発明の警報表示方法によれば、感電災害の危険がある高電圧充電部がある電気設備を有し、前記電気設備の構造を三次元的に表示し、その高電圧充電部の周囲に電界強度分布を感電災害の危険度合いに応じて段階的色分け表示した三次元電界強度分布図を設け、前記三次元電界強度分布図を前記電気設備の周囲部に掲示して、感電災害の危険範囲を表示するようにしたので、電気設備の構造に則した感電災害の危険範囲を分り易く表示できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】この発明の実施の形態1の警報表示方法における電気設備の三次元構造図の作成を説明する図である。
【図2】実施の形態1の警報表示方法における三次元電界強度分布図を示す図である。
【図3】実施の形態1の警報表示方法における三次元電界強度分布図を電気設備の周囲部に掲示した態様を示す図である。
【図4】実施の形態2の警報表示方法における電圧警報器のブロック図である。
【図5】実施の形態2の警報表示方法における電圧警報器の電圧警報器本体部の外観図である。
【図6】実施の形態2における電圧警報器のアンテナ部と電圧警報器本体部とを示す外観図である。
【図7】図6の電圧警報器を手首に装着した状態の使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1の警報表示方法における電気設備の三次元構造図の作成を説明する図である。図において、感電災害の危険がある高電圧充電部51を有する電気設備52の正面図53と上面図54を基に、立体的な3次元構造図55を作成する。複雑な作業対象電気設備を表す複数の平面図による情報を、3次元構造図化して直感的に分り易くしている。56は電気設備の構築や点検補修をする作業者の作業領域である。
【0009】
図2は実施の形態1の警報表示方法における三次元電界強度分布図を示す図である。図2の三次元電界強度分布図57の電気設備52において、感電災害の危険がある高電圧充電部51には、その高電圧充電部51により生じる電界強度分布を感電災害の危険度合いに応じて段階的色分け表示をしている。高電圧充電部51に近い側から遠ざかる方向に、感電災害に対する危険範囲A58(最も危険な範囲)、危険範囲B59(最も危険な範囲に準ずる危険な範囲)、危険範囲C60(注意すべき危険な範囲)の順に危険範囲A58は赤色、危険範囲B59は黄色、危険範囲C60は青色として表示している。なお、感電災害に対する危険範囲A58、危険範囲B59、危険範囲C60を総称して、感電災害に対する危険範囲という。
【0010】
そして、作業領域56の外周からそれぞれの危険範囲の外周までの離隔距離を表示するようにした。作業領域56から高電圧充電部51の中心部までの距離はX,作業領域56から危険範囲A58までの距離はX,作業領域56から危険範囲B59までの距離はX,作業領域56から危険範囲C60までの距離はXである。これらの離隔距離により作業時の安全対策の具体的有効範囲を明示することができる。即ち、作業領域56から危険範囲C60まで(距離X)が安全範囲である。又、作業領域56以外の所定位置(例えば、電気設備の外扉)からそれぞれの危険範囲の外周までの離隔距離を表示するようにしても良い。さらに、高電圧充電部51の中心部から危険範囲A58、危険範囲B59、危険範囲C60の外周までの距離を表示するようにしてもよい。
【0011】
図3は実施の形態1の警報表示方法における三次元電界強度分布図57を電気設備の周囲に掲示した態様を示す図である。この場合は、作業領域56の近傍に掲示している。つまり、作業者の目に付き易い位置に掲示して注意を喚起している。61は防護ネットで、三次元電界強度分布図57の電界強度分布を使用して安全対策の配置を決定している。
【0012】
このように、実施の形態1では、感電災害の危険がある高電圧充電部51がある電気設備52を有し、前記電気設備52の構造を三次元的に表示し、その高電圧充電部51の周囲に電界強度分布を感電災害の危険度合いに応じて段階的色分け表示した三次元電界強度分布図57を設け、三次元電界強度分布図57を電気設備52の周囲部に掲示して、感電災害の危険範囲を表示するようにしたものである。そのため、電気設備が、立体的三次元的に表されて、直感的にその設備の構造や中身を理解でき、電気設備の作業者は、入組んだ設備構造を容易に理解できる。作業者は、三次元電界強度分布図により、感電災害の危険度合いに応じた段階的色分け表示で、感電の危険性がある範囲を容易に理解することができる。
【0013】
作業指示者は、作業者に対し、電気設備の構造の説明、及び感電災害に対する危険性の教育等を三次元電界強度分布図を用いて容易に行うことができる。三次元電界強度分布図を、点検作業時には、電気設備の周囲部、特に、作業領域の近傍に掲示することにより、作業者の感電災害の防止に関わる意識レベルを高めることができる。三次元電界強度分布図により、電気設備における感電災害に対する危険範囲と、作業領域から感電災害の危険範囲までの隔離距離により示す安全範囲を区別して表示できる。つまり、三次元電界強度分布図で、感電災害に対する危険範囲が解り、感電災害の危険を回避するために、作業領域から感電災害に対する危険範囲までの離隔距離について、具体的数値や情報を視覚的に得ることができる。
【0014】
実施の形態2.
電気設備の構築や点検補修の作業者は、掲示された三次元電界強度分布図を見て、電気設備の構造に則した感電災害の危険範囲を認識して、作業に臨むが、作業に当たっては、電圧警報器を携帯している。実施の形態2の警報表示方法に適する電圧警報器を次に説明する。図4は実施の形態2の警報表示方法における電圧警報器のブロック図である。電圧警報器は、アンテナ部10と電圧警報器本体部20とで構成されている。電圧警報器本体部20は、商用周波帯増幅部21,動作感度調整部22,パルス雑音除去部23,フリッカ部24,及び警報部25で構成されている。
【0015】
実施の形態2による電圧警報器は、人体に装着して使用する。アンテナ部10は、電圧検知の対象である電気設備52の高電圧充電部51からの電界を検知する部分であり、可撓性を有する導電部材からなる帯状の検知電極11とアース電極12とが、間隙を空けて対向配置されている。各電極11,12は、電圧警報器本体部20との接続部となるリングスナップ10a,10bに接続されている。このアンテナ部10は、図のように円筒状に曲げられて、例えば、手首などに装着される。その状態で、外側が検知電極11、内側がアース電極12となる。検知電極11は、検知対象の高電圧充電部51との間で空間浮遊静電容量を形成し、この空間浮遊静電容量と、アース電極12−人体間の静電容量とにより、空間電位が分圧されて入力される。
【0016】
次に、電圧警報器本体部20を説明する。商用周波帯増幅部21は、リングスナップ20a,20bと、ローパスフィルタLPFと、電圧増幅器AMPと、バンドパスフィルタBPFとを有している。リングスナップ20a,20bは、アンテナ部10との電気的及び機械的接続部であり、アンテナ部10のリングスナップ10a,10bと着脱可能に接続できるようになっている。ローパスフィルタLPFは、アンテナ部10で受信した誘導電圧信号の中から商用周波数より高い周波数成分を除去し、後段の電圧増幅器AMPが飽和動作するのを防止する。
【0017】
電圧増幅器AMPは、ローパスフィルタLPFを通過した低周波信号を、次段の動作感度調整部22が作動可能な電圧レベルまで増幅する。アンテナ部10の両電極の幅が5cm、電極間隔が3mm程度の場合であれば、増幅率は100倍程度が適当である。バンドパスフィルタBPFは、商用周波数近傍のみを通過させ、ローパスフィルタLPFで除去できなかったノイズを除去する役目をする。これにより電子機器等が発する雑音による誤動作を防止することができる。日本で使用する場合は、中心周波数を55ヘルツに設定するのがよい。また、各フィルタの次数は2〜6次が適当である。
【0018】
動作感度調整部22は、電圧比較器CMP1及び電圧比較器CMP2と、第1の基準電圧設定器REF1と、第2の基準電圧設定器REF2とを有している。電圧比較器CMP1は、第1の基準電圧設定器REF1で設定した第1の基準電圧値と前段のバンドパスフィルタBPFからの出力電圧の大きさとを比較し、後者が大きい場合は論理値H(ハイ)を出力する。同様に、電圧比較器CMP2は第2の基準電圧設定器REF2で設定した第2の基準電圧値と前段のバンドパスフィルタBPFからの出力電圧の大きさとを比較し、後者が大きい場合は論理値Hを出力する。両基準電圧設定器REF1,REF2の設定値は、第2の基準電圧設定器REF2の値をより大きな値に設定することで、高電圧充電部51に近づくにつれ、まず電圧比較器CMP1が論理値Hを出力し、さらに近づくと電圧比較器CMP2も論理値Hを出力する。例えば、図2の危険範囲C60で電圧比較器CMP1が論理値Hを出力し、危険範囲B59で電圧比較器CMP2も論理値Hを出力する。
【0019】
パルス雑音除去部23は、オンディレイタイマを有するオンディレイ回路DL1,DL2およびテストスイッチSで構成されている。もし、アンテナ部10が衣類の摩擦などにより生じる数千ボルトの静電気を受信した場合、パルス性の高電圧が商用周波帯増幅部21に入力され、静電気による信号が除去されず動作感度調整部22に入力されることになる。この場合、電圧比較器CMP1,CMP2ともに論理値Hをパルス出力してしまう。
【0020】
そこで、オンディレイ回路DL1,DL2により、入力論理値Hが一定時間(設定値T)を継続した場合に論理値Hを出力し、入力論理値がL(ロー)になると直ちに出力論理値がLになるようにしている。すなわち、オンディレイ回路DL1,DL2の設定値Tは、静電気により電圧比較器CMP1,CMP2が出力する論理値Hのパルス幅よりも大きな値に設定して静電気によるパルス出力を除去している。なお、設定値Tが大きすぎると検知速度が遅くなるので、30〜60ミリ秒程度に設定するのが適当である。テストスイッチSは、自己試験用スイッチであり、テストスイッチSを押下することによりオンディレイ回路DL1およびDL2の入力論理値をHに強制設定し、以降の各電子回路が、正常に動作することを確認することができるようになっている。
【0021】
次のフリッカ部24は、発振器OSC1および発振器OSC2と選択器SELにより構成されている。発振器OSC1は入力論理値がHの場合、例えば、数百ヘルツの矩形波電圧を数百ミリ秒出力し、数百ミリ秒休止するという動作を繰り返す。発振器OSC2も同様な動作をするが、作動周波数と断続時間を発振器OSC1とは異なる値、例えば、発振器OSC1より、より高い作動周波数とより短い周期の断続時間に設定している。選択器SELは、比較器CMP2の論理出力がHのとき発振器OSC2の出力を通過させ、それ以外の場合は発振器OSC1の出力を通過させる。
【0022】
最後の警報部25は、LED表示器26とブザー27とを備えている。LED表示器26は発振器OSC1又は発振器OSC2の出力信号に基づいて、それぞれの断続時間に合わせて点滅動作する。ブザー27についても同様に出力信号に基づいてそれぞれの作動周波数と断続時間に合わせて断続音が発せられる。点滅及び断続動作とすることで、警報部25の動作を2段階に区別して作業者に気づき易くする。以上の各電子回路は電圧警報器本体部20に内蔵されているボタン電池28により駆動されるようになっている。
【0023】
上記のように構成された電圧警報器の動作について説明する。作業者の人体に装着されたアンテナ部10が、電圧検知対象となる高電圧充電部51に近づいたときに、アンテナ部10の検知電極11は、商用周波数の高電圧充電部51により作られる電界により帯電する。検知電極11を後段のローパスフィルタLPFから切り離した状態では、検知電極11の表面の平均電界強度をEとすれば、検知電極11−アース電極12間の電位差Vは、Eに両電極11,12間の距離dを乗じた値(V=E・d)となる。距離dを一定の寸法に保つことで、安定した出力を得ることができる。
【0024】
また、検知電極11とアース電極12とを2重円筒構造とすることにより、電気力線がこれらの表面に垂直に集まる性質から、指向性をなくすことができる。すなわち、どの方向から高電圧充電部51に接近してもほぼ同じ感度が得られる。このように、アンテナ部10を、2重円筒構造とし、所定の間隔を空けて広い面積で対向配置させることにより、アンテナゲインを高くして高感度を実現した。
【0025】
アンテナ部10で検出した電圧を電圧警報器本体部20に入力し、商用周波帯増幅部21で商用周波数近傍のみを増幅し、動作感度調整部22で動作感度を調整設定して高電圧充電部51に対して所定の警報動作距離内に近づいたときに(感電災害に対する危険範囲で)動作信号を出力し、パルス回路除去部23で静電気などの高電圧パルスによるノイズを除去し、フリッカ部24で警報信号に変換し、警報部25において警報信号によりLED表示器26を点滅させると共にブザー27で断続音を発生させて、作業者に充電部への接近を知らせるようになっている。また、動作感度調整部22で複数の基準電圧値と比較することで、複数の感度を設定し、高電圧充電部51からの距離(危険範囲C60,B59,A58)により警報部25の点滅光の点滅間隔と断続音の断続間隔を変えて、危険の度合いを段階的に知らせることができるようになっている。
【0026】
次に、電圧警報器の具体的な構造を、図5〜図7に基づいて説明する。先に、電圧警報器本体部20から説明する。図5は、電圧警報器本体部20の外観図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は下面図である。(a)に示すように、電圧警報器本体部20は、上記で説明した商用周波帯増幅部21,動作感度調整部22,パルス雑音除去部23,フリッカ部24,警報部25,及びボタン電池28が、樹脂製の容器29に収容されており、上面には、基準電圧設定器REF1,REF2にそれぞれ対応した電圧設定器調整ボリューム30a,30bと、テストスイッチSに対応した押しボタン31とLED表示器26とブザー27とが配置されている。
【0027】
また、(c)に示すように、電圧警報器本体部20の下面には、リングスナップ20a,20bとボタン電池28用の電池収納蓋32とが配置されている。リングスナップ20a,20bは、アンテナ部10に設けたリングスナップ10a,10bと組み合わされ、アンテナ部10の検知電極11及びアース電極12と電気的に接続されると共に機械的にもアンテナ部10に固定される。なお、リングスナップは、凹部と凸部とが嵌合されて組み合わされるので、接続時に、検知電極11側とアース電極12側とを間違わないように、(b)に示すように、一方を凸部側、他方を凹部側としている。
【0028】
図6(a)は、アンテナ部10と電圧警報器本体部20とを組み合わせた状態を示す電圧警報器の外観図であり、図6の例では、アンテナ部10を、例えば、手首に巻いて使用するリストバンド型とした場合を示している。アンテナ部10は、導電布製の検知電極11と、同じく導電布製のアース電極12との間に、所定の間隔を設けるために、3mm程度の絶縁スペーサを挟み込んだサンドイッチ構造になっており、表面側には電圧警報器本体部20を収納し保持するためのポケット16を設けている。また、長さ方向の端部側には面ファスナー17を設けている。図6(b)は、電圧警報器本体部20を外した状態のアンテナ部10を示す図であり、電圧警報器本体部20側のリングスナップ20a,20bと接続するためのアンテナ部10側のリングスナップ10a,10bがポケット16の内側に設けられている。
【0029】
図7は、図6の電圧警報器を手首に装着した状態の使用例を示す図である。手首に巻き付けて面ファスナー17を接着することで装着できる。装着状態では、アンテナ部10が円筒状になっており、外側の検知電極11と内側のアース電極12とが絶縁スペーサを介して対向配置された形となる。
【0030】
以上のように構成した電圧警報器の使用方法を説明する。作業者は、電気設備の点検等の作業に当たって、図7に示すように、電圧警報器を手首に巻き付けて、警報部が見えるように装着する。電圧設定器調整ボリューム30a,30bは、作業する電気設備の環境に合わせて、後述するように、あらかじめ設定しておく。作業者は、必要に応じ、作業前に押しボタン31を押下することによりテストスイッチSを作動させ、電圧警報器の動作チェックを事前に容易に行うことができる。
【0031】
作業者が電気設備52の高電圧充電部51に所定の距離以内に近づいた場合は、先ず、フリッカ部の発振器OSC1が作動し、LED表示器26が点滅すると共にブザー27が断続音を発することで、作業者が危険を知ることができる。更に作業者が高電圧充電部51に近づいた場合は、発振器OSC2が作動するが、OSC1とは点滅及び断続周期を変えているので、作業者は危険の度合いが大きくなったことを知ることができる。なお、ブザー27は、音量(又は音程)を変えるようにしておいてもよい。
【0032】
なお、上記の説明では、アンテナ部10を、リストバンド型として使用する場合について説明したが、アンテナ部の長さを変えることにより、腕章型にして腕に装着してもよく、また、鉢巻き型にして頭に巻いて使用するようにしてもよい。
【0033】
以上のように、実施の形態2における電圧警報器によれば、検知電極とアース電極とを有し作業者の人体に装着して使用されるアンテナ部と、電気設備の高電圧充電部からの電界により両電極間に発生する誘導電圧信号を検出し、検出した誘導電圧信号に基づいて作業者に注意喚起を行う警報を発する電圧警報器本体部とを有する電圧警報器において、電圧警報器本体部は、誘導電圧信号を検出する感度を調整する動作感度調整部と、アンテナ部で検出した誘導電圧信号から商用周波数近傍の周波数成分を通過させるバンドパスフィルタと、高電圧パルスを除去するオンディレイ回路とを備えたので、商用周波数近傍以外の周波数信号を遮断すると共に、静電気などノイズを除去できるので、高いアンプゲインを実現でき、必要時以外の警報動作を抑制して、電圧警報器の高感度化を実現することができる。
【0034】
また、アンテナ部の検知電極とアース電極とは、導電性を有する帯状の布からなり、可撓性を有する絶縁スペーサを介して対向配置され、円筒状に曲げられて人体に装着可能に構成されている。また、電圧警報器本体部は、アンテナ部の表面に設けたポケットに収納されているので、電圧警報器本体部が、作業時に突起物等に引っ掛かる等で脱落するのを防止できる。また、アンテナ部は、作業者の人体の一部に巻き付けて装着可能なバンド形に形成したので、作業時に、手首,腕,頭部等に容易に装着して使用することができる。更にまた、警報は点滅光と断続音とし、高電圧充電部とアンテナ部との距離によって点滅周期及び断続周期が変化するように構成したので、高電圧充電部への接近による危険の度合いを段階的に作業者に知らせることができる。
【0035】
実施の形態2では、電圧設定器調整ボリューム30a,30bを調整する。電圧設定器調整ボリューム30aでは、感電災害に対する危険範囲C60で、動作感度調整部22の電圧比較器CMP1が動作する(論理レベルがHとなる)ように、高い感度に調整する。例えば、感度設定を電界強度が40V/mで動作するように設定する。電圧設定器調整ボリューム30bでは、感電災害に対する危険範囲B59で、動作感度調整部22の電圧比較器CMP2が動作する(論理レベルがHとなる)ように、低い感度に調整する。例えば、感度設定を電界強度が60V/mで動作するように設定する。このように、三次元電界強度分布図57の感電災害に対する危険範囲と、電圧警報器の動作感度を一致させる。つまり、感電災害の危険度合いに応じた段階的色分け表示と関連させて電圧警報器の設定感度を調整する。又、三次元電界強度分布図には、感電災害の危険度合いに応じた段階的色分け表示と関連させて電圧警報器の警報動作範囲を表示するようにしても良い。
【0036】
このように三次元電界強度分布図における感電災害の危険度合いに応じた段階的色分け表示と関連させて電圧警報器の設定感度を調整すれば、電圧警報器の警報が動作する危険範囲を電気設備の作業者に知らせることができる。又、三次元電界強度分布図に作業領域又は所定位置から感電災害に対する危険範囲までの離隔距離を明示しておけば、安全距離と安全範囲を把握することができると共に、誤って安全距離を越えた場合には、警報が動作して、安全範囲側に復帰し易い。
【符号の説明】
【0037】
10 アンテナ部 10a,10b リングスナップ
11 検知電極 12 アース電極
16 ポケット 17 面ファスナー
20 電圧警報器本体部 20a,20b リングスナップ
21 商用周波帯増幅部 22 動作感度調整部
23 パルス雑音除去部 24 フリッカ部
25 警報部 26 LED表示器
27 ブザー 28 ボタン電池
29 容器
【0038】
30a,30b 電圧設定器調整ボリューム
31 押しボタン 32 電池収納蓋
33 手袋本体
LPF ローパスフィルタ AMP 電圧増幅器
BPF バンドパスフィルタ CMP1,CMP2 電圧比較器
REF1 第1の基準電圧設定器 REF2 第2の基準電圧設定器
DL1,DL2 オンディレイ回路 S テストスイッチ
OSC1,OSC2 発振器 SEL 選択器。
【0039】
51 高電圧充電部 52 電気設備
53 正面図 54 上面図
55 3次元構造図 56 作業領域
57 三次元電界強度分布図 58 危険範囲A
59 危険範囲B 60 危険範囲C
61 防護ネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感電災害の危険がある高電圧充電部がある電気設備を有し、
前記電気設備の構造を三次元的に表示し、その高電圧充電部の周囲に電界強度分布を感電災害の危険度合いに応じて段階的色分け表示した三次元電界強度分布図を設け、
前記三次元電界強度分布図を前記電気設備の周囲部に掲示して、
感電災害の危険範囲を表示するようにした警報表示方法。
【請求項2】
前記三次元電界強度分布図には、作業領域又は所定位置から感電災害に対する危険範囲までの離隔距離を表示するようにした請求項1記載の警報表示方法。
【請求項3】
前記三次元電界強度分布図には、前記高電圧充電部から感電災害に対する危険範囲までの離隔距離を表示するようにした請求項1記載の警報表示方法。
【請求項4】
感電災害の危険度合いに応じた段階的色分け表示と関連させて電圧警報器の設定感度を調整するようにした請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の警報表示方法。
【請求項5】
前記三次元電界強度分布図には、感電災害の危険度合いに応じた段階的色分け表示と関連させて電圧警報器の警報動作範囲を表示するようにした請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の警報表示方法。
【請求項6】
前記電圧警報器は、検知電極とアース電極とを有し作業者の人体に装着して使用されるアンテナ部と、電気設備の高電圧充電部への接近により前記高電圧充電部と前記検知電極との間に発生する空間浮遊静電容量、及び前記人体と前記アース電極との間に発生する対地静電容量とにより前記両電極間に発生する誘導電圧信号を検出し、検出した前記誘導電圧信号に基づいて作業者に注意喚起を行う警報を発する電圧警報器本体部を備えると共に、前記電圧警報器本体部には、前記誘導電圧信号を検出する感度を調整する動作感度調整部と、前記アンテナ部で検出した前記誘導電圧信号から商用周波数近傍の周波数成分を通過させるバンドパスフィルタと、高電圧パルスを除去するオンディレイ回路とを具備させたものである請求項4又は請求項5記載の警報表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−206980(P2010−206980A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50890(P2009−50890)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(599041606)三菱電機プラントエンジニアリング株式会社 (21)
【出願人】(000230940)日本原子力発電株式会社 (130)
【出願人】(507284813)株式会社協立技術工業 (5)