説明

豆のパウダーを用いたペースト状食品及びその製法

【課題】生の豆原料からペースト状食品を加工する過程は非常に煩雑で手間と時間ならびに加工設備を要するため、ペースト状食品の製造は困難である。豆のパウダーを用いて簡便に食感や風味の良い豆利用ペースト状食品の製造することができれば、多種多様な豆類をパウダー原料として保持することで製造工程を変えることなく使用する豆の種類も多種多様に対応することができるが、豆のパウダーはそのパウダー化工程で加熱・乾燥工程を経て生産されるために、豆本来の香りが弱いことが一般的である。豆のパウダーを用いた、豆本来の風味の有し簡便に十分な延展性及び保湿性を備えたペースト状食品と製造方法を本発明の課題とする。
【解決手段】豆のパウダーに重量比100〜300%の水飴又は油脂と混合する。これに対し、脱気して密封された状態で加熱を行ってペースト生地を作製し、調味材料及びゲル化剤・トレハロース・ヒアルロン酸などの物性改良材を添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豆のパウダーを原料として使用し製造する、豆本来の香りを有し延展性や保湿性に優れたペースト状食品及びその簡便な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
えんどう豆、白いんげん、きんとき豆、黒豆、小豆等の豆類は、蛋白質や食物繊維を豊富に含む健康食品として注目されている。しかし、豆類を使用した食品の多くが日本食に適したものであり、洋食型化しつつある食生活においては摂取機会をなかなか増やせずにいるという実態がある。
【0003】
洋食型の食生活にも対応できる新たな豆類の食品形態として、パンや野菜サラダ等に塗布するペースト状食品が挙げられる。従来の豆類のペースト状食品とその製法は、大豆を主原料としたペースト状食品(特許文献1)や大豆ジャム(特許文献2及び3)がある。
【特許文献1】特開昭60−262562号公報
【特許文献2】特開昭57−5655号公報
【特許文献3】特開2003−135008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献記載のように、生の豆原料からペースト状食品を加工する過程は非常に煩雑で手間と時間ならびに加工設備を要するため、ペースト状食品の製造は困難である。豆のパウダーを用いて簡便に食感や風味の良いペースト状食品の製造をすることができれば、多種多様な豆類をパウダー原料とすることで製造工程を変えることなく、使用する豆の種類を多種多様に対応することができる。しかしながら、豆のパウダーはそのパウダー化工程で加熱・乾燥工程を経て生産されるために、豆本来の香りが弱いことが一般的である。このような状況下で本発明は、豆のパウダーを用いた、豆本来の風味を有し十分な延展性及び保湿性を備えたペースト状食品の提供と製造方法を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の(1)から(3)の、豆のパウダーを用いたペースト状食品及びその製法に関する。
(1)豆のパウダーに重量比100〜300%の水飴又は油脂と混合し、脱気して密封された状態で加熱を行って作製したペースト生地に対し、調味材料を加えることを特徴とするペースト状食品の製造方法。
(2)豆とはえんどう豆、白いんげん、きんとき豆、黒豆、小豆であることを特徴とする(1)に記載のペースト状食品。
(3)(1)に記載の製造方法において調味材料を加えたペースト生地に対し、ゲル化剤・トレハロース・ヒアルロン酸などの物性改良材をさらに添加することを特徴とする(1)及び(2)に記載のペースト状食品の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
多種多様な豆のパウダーを用いて食感や風味の良い豆を利用したペースト状の食品を提供することにより、蛋白質や食物繊維を豊富に含む健康食品の摂取機会を、洋食型の食生活においても増やすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明でいう豆のパウダーとは、加熱軟化したえんどう豆、白いんげん、きんとき豆、黒豆、小豆等の豆類を摩砕処理で細粒化したのち、乾燥して常温保存できる程度まで水分率を低下した粉体原料のことである。
【0008】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0009】
(実施例1)
えんどう豆の豆のパウダー200gに混合用バインダーとしてスイートOL180gを徐々に加え均一に混合した後、混合物を加熱せずに練乳150g、メープルシロップ50g、トレハロース18gを加えて混合攪拌し、ペースト状食品試料とした。
(実施例2)
えんどう豆の豆のパウダー200gに混合用バインダーとしてスイートOL180gを徐々に加え均一に混合した後、混合物を真空包装装置で脱気・密封し、マイクロ波により70℃から80℃に加熱して常温に冷却後、練乳150g、メープルシロップ50g、トレハロース18gを加えて混合攪拌し、ペースト状食品試料とした。
(実施例3)
えんどう豆の豆のパウダー200gに混合用バインダーとしてスイートOL200gを徐々に加え均一に混合した後、混合物を加熱せずに練乳150g、メープルシロップ50g、トレハロース18gを加えて混合攪拌し、ペースト状食品試料とした。
(実施例4)
えんどう豆の豆のパウダー200gに混合用バインダーとしてスイートOL200gを徐々に加え均一に混合した後、混合物を真空包装装置で脱気・密封し、マイクロ波により70℃から80℃に加熱して常温に冷却後、練乳150g、メープルシロップ50g、トレハロース18gを加えて混合攪拌し、ペースト状食品試料とした。
(実施例5)
えんどう豆の豆のパウダー200gに混合用バインダーとしてスイートOL600gを徐々に加え均一に混合した後、混合物を真空包装装置で脱気・密封し、マイクロ波により70℃から80℃に加熱して常温に冷却後、練乳300g、メープルシロップ100g、トレハロース36gを加えて混合攪拌し、ペースト状食品試料とした。
(実施例6)
えんどう豆の豆のパウダー200gに混合用バインダーとしてスイートOL600gを徐々に加え均一に混合した後、混合物を真空包装装置で脱気・密封し、マイクロ波により70℃から80℃に加熱して常温に冷却後、練乳300g、メープルシロップ100g、HMペクチン3.6gを加えて混合攪拌し、ペースト状食品試料とした。
(実施例7)
えんどう豆の豆のパウダー200gに混合用バインダーとしてスイートOL600gを徐々に加え均一に混合した後、混合物を真空包装装置で脱気・密封し、マイクロ波により70℃から80℃に加熱して常温に冷却後、練乳300g、メープルシロップ100g、ヒアルロン酸1.2gを加えて混合攪拌し、ペースト状食品試料とした。
(実施例8)
えんどう豆の豆のパウダー200gに混合用バインダーとしてマーガリン600gを徐々に加え均一に混合した後、混合物を真空包装装置で脱気・密封し、マイクロ波により70℃から80℃に加熱して常温に冷却後、練乳300g、メープルシロップ100g、トレハロース36gを加えて混合攪拌し、ペースト状食品試料とした。
(実施例9)
えんどう豆の豆のパウダー200gに混合用バインダーとしてマーガリン600gを徐々に加え均一に混合した後、混合物を真空包装装置で脱気・密封し、マイクロ波により70℃から80℃に加熱して常温に冷却後、練乳300g、メープルシロップ100g、HMペクチン3.6gを加えて混合攪拌し、ペースト状食品試料とした。
(実施例10)
えんどう豆の豆のパウダー200gに混合用バインダーとしてマーガリン600gを徐々に加え均一に混合した後、混合物を真空包装装置で脱気・密封し、マイクロ波により70℃から80℃に加熱して常温に冷却後、練乳300g、メープルシロップ100g、ヒアルロン酸1.2gを加えて混合攪拌し、ペースト状食品試料とした。
(実施例11)
えんどう豆の豆のパウダー200gに混合用バインダーとしてマーガリン700gを徐々に加え均一に混合した後、混合物を真空包装装置で脱気・密封し、マイクロ波により70℃から80℃に加熱して常温に冷却後、練乳300g、メープルシロップ100g、ヒアルロン酸1.2gを加えて混合攪拌し、ペースト状食品試料とした。
【0010】
実施例1から11について当社パネラー5名で試食し、評価を行いその結果を(表1)に示した。実施例1のように、豆のパウダー1に比し水飴0.9を配合した混合物を加熱無しで、練乳200g、メープルシロップ67g、改良剤を適量加えてペースト状食品試料を得たものは、豆の風味は弱く延展性もなく洋食に併せ食するには不適なパサパサしたものであった。実施例2のように、豆のパウダー1に比し水飴0.9を配合した混合物を真空包装装置で脱気・密封しマイクロ波で70℃から80℃に加熱して常温に冷却後、練乳、メープルシロップ、改良剤を加えてペースト状食品試料を得たものは、豆の風味は良いが延展性がなくパサパサした不適な評価であった。実施例3のように、豆のパウダー1に比し水飴1を配合した混合物を加熱無しで、練乳200g、メープルシロップ67g、改良剤を適量加えてペースト状食品試料を得たものは、豆の風味は弱く延展性はあるものの少しパサついた不適なものであった。実施例4のように、豆のパウダー1に比し水飴1を配合した混合物を真空包装装置で脱気・密封しマイクロ波で70℃から80℃に加熱して常温に冷却後、練乳、メープルシロップ、改良剤を加えペースト状食品試料を得たものは、豆の風味は良いが、延展性は弱くパサついてはいるが、ペースト食品として限界可な評価であった。実施例5〜10の条件で作製したペースト状食品試料は、豆の風味、延展性、保湿性とも適正な状態であり、滑らかで保存性においても常温で物性変化も少なく、洋食に併せ豆の摂取機会を増加できる食材であった。実施例11のように、豆のパウダー1に比し油脂3.5を配合した混合物を真空包装装置で脱気・密封し、マイクロ波で70℃から80℃に加熱して常温に冷却後、練乳、メープルシロップ、改良剤を加えペースト状食品試料を得たものは、豆の風味は良いが、液状でべったりとしておりペースト食品として不適な評価であった。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明を実施することで、栄養バランスの良い日本の伝統食である多種多様な豆を、簡便に食感や風味の良いペースト状の食品として提供することが可能となる。これにより、蛋白質や食物繊維を豊富に含む豆類を洋食型の食生活においても摂取機会を増やすことができ、食を通じての健康維持に貢献することができる。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
豆パウダーに重量比100〜300%の水飴又は油脂と混合し、脱気して密封された状態で加熱を行って作製したペースト生地に対し、調味材料を加えることを特徴とするペースト状食品の製造方法。
【請求項2】
豆とはえんどう豆、白いんげん、きんとき豆、黒豆、小豆であることを特徴とする請求項1に記載のペースト状食品。
【請求項3】
請求項1に記載の製造方法において調味材料を加えたペースト生地に対し、ゲル化剤・トレハロースなどの物性改良材をさらに添加することを特徴とする請求項1及び請求項2に記載のペースト状食品の製造方法。