説明

豆乳及び豆乳の製造方法

【課題】 オカラを廃棄することなく豆乳を製造可能な豆乳の製造方法であって、長期間に渡る保存安定性に優れ、飲料感に優れる豆乳の製造方法を提供する。
【解決手段】 大豆粉と溶媒とを混合した大豆混合液を、60MPa以上の圧力及び/又は130m/秒以上の流速で細管内を通過させることにより、前記大豆混合液中の大豆粉を微細化する。微細化工程を経た豆乳中の固形分の平均粒径は20μm以下であり、標準偏差は0.35以下であることが好ましく、細管の流路断面積が1mm以下であり、細管の長手方向寸法が3mm以上であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大豆を微細化することにより製造される豆乳及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大豆を原料として製造される豆乳は、良質のタンパク質や人体に有用な成分を多く含んだ栄養性に富む食品であり、豆腐や油揚げなどの種々の加工食品に用いられるほか、健康乳飲料としても提供されている。
【0003】
一般的に豆乳は、粉砕した大豆を加熱、磨砕することで可溶成分を抽出し、不溶成分であるオカラを除去することにより製造される。しかし、この製造方法では、大豆中の相当部分がオカラとして分離されるため、豆乳や豆腐としての歩留まりが大きく低下する。また、オカラの一部は食用、飼料、肥料用等として利用が可能であるが、保存性等の問題からその多くの部分が廃棄処分されており、環境問題となっている。
【0004】
このため、大豆を水中にて微細化し、オカラを分離、廃棄することなく豆乳を製造する方法が提案されている(特許文献1〜3)。
【0005】
具体的には、特許文献1では、大豆を乾式破砕機により粒径が100μm以下となるように破砕した後に加水溶解し、バルブ式のホモゲナイザー又は液同士を衝突させるナノマイザーなどの均質機を使用して均質化させる豆乳の製造方法が開示されおり、この方法により製造された豆乳は、オカラを除去する伝統的な製法により製造された豆乳と風味、品質において遜色のないものであると述べられている。
【0006】
特許文献2では、丸大豆、脱皮大豆又は脱脂大豆を乾式で20μm以下になるまで粉砕し、加水した後に加熱殺菌し、最後に高圧ホモジナイザー等で均質化することにより全粒豆乳を製造する方法が開示されており、この方法により製造された豆乳は、食用時にザラザラとした違和感がなく飲みやすく、また、豆腐製造用の豆乳として使用した場合には、なめらかな豆腐を製造できると述べられている。
【0007】
特許文献3では、外皮を含む全粒大豆を300〜500μm以下の粒径に予備粉砕した後に加水することで大豆粉懸濁液を調整し、湿式ジェットミルを用いて圧力100MPa以上及び/又は流速200m/sec以上で相互に及び/又は壁面に大豆粉懸濁液を衝突させて固形分を10μm程度以下、より好ましくは5μm以下に超微細化することで豆乳を製造する方法が開示されており、この方法により製造された豆乳は、豆乳として飲用する場合、或いは、豆腐の製造に使用した場合のざらつき感を解消できることが述べられている。
【特許文献1】特開2004−016120号公報
【特許文献2】特開昭60−141247号公報
【特許文献3】特開2000−102357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、本願出願時点における技術水準では、加水した大豆(丸大豆、脱皮大豆又は脱脂大豆)を微細化することにより、豆乳の状態で飲用し、豆腐として食したときのざらつき感を解消することが可能であるが、そのためには、固形分の粒径を20μm以下とすることが少なくとも必要であり、ざらつき感をより完全に解消するには、固形分の粒径を10μm乃至5μm以下にまで超微細化することが必要であることが知られていた。
【0009】
しかし、本発明者らの研究によれば、従来公知の方法により平均粒径がある程度以下(例えば10μm以下)となるように大豆を微細化した豆乳であっても、微細化処理の条件によっては、長時間(例えば、10〜60日)に渡って冷蔵保存するうちに、豆乳が2層に分離するなど保存安定性に欠ける問題を有することが明らかとなった。
【0010】
また、微細化の程度を高く(固形分の粒径を小さく)していくためには、目標とする粒径に応じて微細化のための装置や処理条件を変更することが必要であり、一般的には、微細化の程度が高くなるほど、技術難度が高くなり、また、時間当たりに製造できる豆乳量が少なくなる傾向にある。
【0011】
従って、平均粒径を10μm以下或いは5μm以下のように小さくすれば、ざらつきのない飲料感に優れた豆乳を製造できることは確かであるが、そのような粒径をもって大量の豆乳製造を行うことは困難であり、或いは、豆乳製造のコストが増大する問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決したものであり、大豆粉と溶媒とを混合した大豆混合液を、60MPa以上の圧力及び/又は130m/秒以上の流速で細管内を通過させることにより、前記大豆混合液中の大豆粉を微細化する微細化工程とを有することを特徴とする豆乳の製造方法(請求項1)又は大豆粉と溶媒とを混合した大豆混合液を60MPa以上の圧力及び/又は130m/秒以上の流速で細管内を通過させることにより生成される豆乳(請求項8)である。
【0013】
本発明者らが上記問題を解決するための研究を行ううちに、微細化工程を経た豆乳の固形分の平均粒径やその標準偏差が同程度であっても、微細化の手法乃至は微細化に使用する装置の種類によって、製造される豆乳の飲料感等や長期間に渡る保存安定性に相違があることが明らかとなった。
【0014】
そして、種々の微細化手法乃至装置による豆乳製法を検討することにより、大豆粉と溶媒を混合させた大豆混合液を60MPa以上の圧力及び/又は130m/秒以上の流速で細管内を通過させることにより大豆粉を微細化する処理を行った場合には、豆乳を長期保管した場合の安定性が著しく向上することが確認された。本発明において上記細管を通過する大豆混合液のより好ましい圧力範囲は、75MPa以上であり、特に好ましい圧力範囲は100MPa以上である。本発明において上記細管を通過する大豆混合液のより好ましい流速範囲は150m/m以上であり、更に好ましい流速範囲は200m/秒以上であり、特に好ましい流速範囲は250m/秒以上である。
【0015】
また、上記手法により製造された豆乳では、粒径をさほど小さくしなくとも、例えば、平均粒径が15〜20μm程度であっても、ざらつきがなく飲料感に優れた高品質の豆乳を得ることが可能である。従って、本発明では、高品質の豆乳を大量に、及び/又は、低コストで製造することが可能となる。
【0016】
微細化の手法等によって豆乳の品質に大きな差を生じることとなる理由は現状において必ずしも明確とはされていないが、上記手法により微細化された大豆粉に特有の形状や性状等が保存安定性等の向上に寄与しているものと推測される。
【0017】
本明細書における「豆乳」の語は、大豆を溶媒中で微細化することにより得られる乳状の液体を意味するものであり、必ずしもJAS規格などにより規定される豆乳には限定されない。
【0018】
本発明の大豆には任意の品種、産地の大豆を使用することが可能であり、本発明の大豆粉は、外皮及び/又は胚芽を除去した大豆、或いは、外皮及び/又は胚芽を除去しない大豆を粉砕したものとすることが可能である。
【0019】
本発明の豆乳は、そのまま乳飲料として飲用に供することが可能であり、或いは、砂糖、果汁、乳化剤、香料やその他の成分(例えば米粉、小麦粉)を添加して飲用に供することが可能であり、或いは、豆腐などの二次製品の原料として使用することも可能である。
【0020】
本発明における「粒径」は、JIS Z8825−1:2001(粒子径解析−レーザー回折法/ISO9276−1:1998に対応)に従って屈折率:1.70−0.20i(iは虚数単位)の条件で測定されたデータ(散乱光強度)をWingSALDを用いて変換することにより得られる粒径値を意味する。
【0021】
本発明における「溶媒」には水(還元水、蒸留水、水道水など)を使用することが可能であり、製品である豆乳の用途によっては、果汁、アルコール等の水以外の溶媒を使用することも可能である。また、本発明における「大豆混合液」は、大豆粉と溶媒のみを含んでも良く、大豆粉及び溶媒に加えて、乳化剤、香料、防腐剤などの他の成分を含んでも構わない。
【0022】
本発明の微細化工程を経た豆乳中の固形分は、平均粒径が20μm以下であり、粒径の標準偏差が0.35以下であること(請求項2)が好ましく、これにより、飲料感や保存安定性を一層高めることが可能である。
【0023】
なお、本明細書における「平均粒径」及び「標準偏差」は、以下により求められる平均粒径及び標準偏差を意味する。
【0024】
すなわち、測定対象となる粒子径範囲(最大粒子径:x,最小粒子径:xn+1)を対数スケール上でn分割し、それぞれの粒子径区間を、[x、xj+1](j=1,2,・・・n)とすると、対数スケールに基いてそれぞれの粒子径区間での代表粒子径は下式(1)で表される。
【数1】

【0025】
更に、qj(j=1,2,・・・n)を、粒子径区間[x、xj+1]に対応する相対粒子量(差分%/体積基準)とし、全区間の合計を100%とすると、対数スケール乗での平均値μは下式(2)で表され、対数スケール上での標準偏差は下式(3)で表される。
【数2】

【数3】

【0026】
そして、x=500μm、xn+1=1μm、n=50としたときの10μ(10のμ乗)が本明細書の「平均粒径」であり、σが本発明の標準偏差(対数スケール上での標準偏差)である。
【0027】
また、本発明における細管は、流路断面積が1mm以下であり、その長手方向寸法が3mm以上であることが好ましく(請求項3)、これにより、飲料感や保存安定性に優れる豆乳をより安定に製造することが可能である。なお、本明細書における「流路断面積」は、細管中における大豆混合液の流れの方向に垂直な平面で切断したときの流路(細管内の開口)の断面積を意味する。
【0028】
本発明では、微細化工程の前に大豆粉を加熱殺菌する加熱殺菌工程を更に有すること(請求項4)が好ましい。
【0029】
かかる発明では、大豆粉の加熱殺菌が微細化工程の前に行われるため、微細化工程後に加熱殺菌を実施した場合に生じ得る豆乳中の固形分の再凝集によって豆乳の飲料感が低下する等の不都合を防止することが可能である。
【0030】
本発明では、微細化工程を経る前の大豆粉の平均粒径が30μm以下であること(請求項5)、或いは、本発明の微細化工程において、細管を通過する大豆混合液の圧力が60MPa以上で、かつ、±10%の範囲に連続的に維持されること(請求項6)が好ましく、これにより、飲料感や保存安定性に優れる豆乳をより安定に製造することが可能となる。
【0031】
本発明では、微細化工程の前に大豆混合液の温度を20℃以下に調整する温度調整工程を更に有するものとし(請求項7)、或いは、微細化工程において細管を通過する大豆混合液の温度を60℃以下に保持すること(請求項8)が好ましく、これにより、微細化工程中の温度上昇により、豆乳中の固形分が再凝集し、或いは、変質する等の不都合を防止することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1は、本発明の1実施形態に係る豆乳の製造方法に使用される豆乳製造装置1を示す説明図であり、図中2は不図示の破砕機により破砕された大豆粉と溶媒とを混合することにより得られる大豆混合液を供給する供給タンクであり、3は、供給タンク2の大豆混合液を微細化装置6に導く配管であり、当該配管3の途中には、恒温槽4において熱交換を行うことにより、大豆混合液の温度調整を行う熱交換器5が設けられている。
【0033】
微細化装置6は、所定の容積を有する加圧室7と、配管3から加圧室7に導かれる大豆混合液に60MPa以上の安定な圧力を印加することが可能な圧力ポンプ8と、先細りとなった加圧室7の先端において加圧室7と連通する少なくともその内壁が超鋼合金等の硬質材料で形成された細管9と、細管9を通過することにより微細化された豆乳を受ける製品室10とを備えており、製品室10の豆乳は、配管11により導かれ、製品タンク12において貯蔵される。
【0034】
上記豆乳製造装置1においては、加圧室7内の圧力が60MPa以上及び/又は細管9内における大豆混合液の流速が130m/秒以上の条件下で大豆混合液を微細化した場合には、細管9を通過する大豆混合液と管内壁の間に生じるキャビテーションや管内壁からの距離による大豆混合液の流速差によって生じる剪断力などにより、大豆混合液中の固形分が微細に、かつ、シャープな粒度分布をもって粉砕され、飲料感や保存安定性に優れる豆乳を得ることができるものである。
【0035】
図1に示した豆乳製造装置1では、直線状の細管9が使用される例を示したが、細管9を湾曲させ、或いは、屈曲させることも可能であり、その場合には、大豆混合粉の進行方向の変化や管内壁への衝突などを生じることで、豆乳製造装置1と同等又はこれよりもよりシャープな粒度分布又はより小さい粒径をもって大豆混合液中の固形分を微細化することが可能である。また、細管9の開口の断面形状は、円形、楕円、矩形等の任意の形状とすることが可能であり、更には、加圧室7と製品室10を複数本の細管9により連通させることも可能である。
【0036】
豆乳製造装置1における細管9は、流路断面積Sが1mm以下であり、細管9の長手方向寸法Lが3mm以上であることが好ましく、このように流路断面積が小さく、アスペクト比R(長手方向寸法を流路断面積で除した値)が大きい細管9を使用することにより、保存安定性等を向上させる上で好ましい形状乃至性状が大豆粉に与えられるものと考えられる。なお、流路断面積Sのより好ましい範囲は0.8mm以下であり、特に好ましい範囲は0.5mm以下である。長手方向寸法Lのより好ましい範囲は5mm以上であり、更に好ましい範囲は10mm以上であり、特に好ましい範囲は20mm以上である。アスペクト比Rの好ましい範囲は5以上であり、より好ましい範囲は15以上であり、特に好ましい範囲は30以上である。
【0037】
なお、細管9は必ずしもその全長に渡って流路断面積Sが一定である必要はないが、その場合には、流路断面積Sが1mm以下の部分の総延長が3mm以上であることが好ましく、また、加圧室7と製品室10を複数本数の細管9により連通させる場合には、少なくとも1つの細管9は、流路断面積Sが1mm以下の部分の総延長が3mm以上であることが好ましい。
【0038】
豆乳製造装置1における微細化装置6又は細管9の特に好ましい形態として、特開2004−249289号公報に開示される構成を例示することができる。
【0039】
図2は、特開2004−249289号公報に開示される微細化装置6における細管9′の周辺の構成を示す説明図である。
【0040】
図2(a)に示されるように、この微細化装置6では、第1流路素子91、2枚の第2流路素子92、93及び第3流路素子94により細管9′が形成されている。
【0041】
第1〜第3流路素子91〜94は、いずれも直径が12〜16mmで厚さが1〜1.5mmであり、平面形状が略正方形状の焼結ダイヤモンド製基板95と、その外周に一体に嵌着された金属製リング部材96で構成されている。
【0042】
第1流路素子91の基板95は、相互に所定距離D1=3〜10mm離間した位置に半径r=0.1〜1mmの2つの貫通孔91a、91bを有し、第2流路素子92、93の基板95は、幅寸法wがr1と同程度で長さD2がD1と同程度の長孔92a、93aを有し、第3流路素子94の基板95は、D1と同程度の距離だけ離間した位置にrの3倍程度の半径の貫通孔94a、94bを有しており、第1〜第3流路素子91〜93の金属製リング部材96には4個のピン挿入孔96aが周方向に等間隔に形成されている。
【0043】
図2(b)は、微細化装置6に取り付けられた状態の第1〜第3流路素子91〜94を断面視で示しており、第1〜第3流路素子91〜94は、貫通孔91a、91bが長孔92aの両端にそれぞれ連通し、長孔92aと長孔93aは相互の交差位置で連通し、長孔93aの両端が貫通孔94a、94bにそれぞれ連通するように、ピン挿入孔96に挿入されたピンで相互に位置決めされた状態で積層されている。
【0044】
従って、この微細化装置6では、4本の細孔9′、即ち、(1)加圧室7から貫通孔91aに入り、長孔92a及び93aを経て貫通孔94aから製品質10に抜けるルートの細孔9′、(2)加圧室7から貫通孔91aに入り、長孔92a及び93aを経て貫通孔94bから製品質10に抜けるルートの細孔9′、(3)加圧室7から貫通孔91bに入り、長孔92a及び93aを経て貫通孔94aから製品質10に抜けるルートの細孔9′、及び、(4)加圧室7から貫通孔91bに入り、長孔92a及び93aを経て貫通孔94bから製品質10に抜けるルートの細孔9′が形成されていることになる。
【0045】
なお、図2に示される細管9′では、上記4つのルートのいずれかにおいて、流路断面積Sが1mm以下の部分の総延長が3mm以上であることが好ましい。
【0046】
上記豆乳製造装置1において、図2に示した微細化装置6を使用して豆乳を製造し、その品質評価を行った。なお、この微細化装置6では、細管9′の4本のルート全てについて、流路断面積Sはそれぞれのルートの全長に渡って0.0314mm(内径0.2mmφ)であり、上記4つのルートのいずれについても長手方向寸法(総延長)Lは3.8mmであった。
【0047】
原料には丸大豆(品名:大豆粉(ビントン)、産地:アメリカ合衆国)を平均粒径約10μmに破砕した大豆粉と飲料水(コカコーラナショナルビバレッジ株式会社製「ナチュラルミネラルウォーター森の水だより」)を1092g対5208gで混合し、これを高速ミキサーで攪拌し、更に、120℃の加圧蒸気殺菌処理を加えた大豆混合液を使用した。加圧室7の圧力条件は50MPa、100MPa、200MPaの3条件とした(以下では、圧力条件50MPa、100MPa、200MPaで製造した豆乳をそれぞれ豆乳1〜3と表記する)。
【0048】
上記各圧力条件について、豆乳製造に要した時間、製造された豆乳量、及び、細管9の流路断面積から算出される細管9内の大豆混合液の流速は下表1の通りである。
【0049】
【表1】

【0050】
<飲料感の評価>
各豆乳1〜3を試飲したところ、いずれも、ざらつき感の全くない滑らかな口当たりであることが確認された。
【0051】
<平均粒径及び標準偏差>
豆乳1〜3及び市販の豆乳(大塚チルド食品製豆乳「スゴイダイズ」)の固形分の平均粒径及び標準偏差を株式会社島津製作所製レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−7000型により測定した結果を下表2に示す。
【0052】
【表2】

【0053】
<保存安定性評価>
豆乳1〜3及び大塚チルド食品製豆乳「スゴイダイズ」をそれぞれ20mLずつ遠沈管に採取して密封し、4℃に保たれた恒温槽に静置して保管した。
【0054】
保管開始後、10、20、30、40日後に遠沈管の目盛りで15mL(上層)及び5mL(下層)の位置でそれぞれ1mLずつサンプルを回収し、株式会社島津製作所製レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−7000型を用いて粒径分布測定を行った。
【0055】
図3、4は、上記保存安定性評価の結果であり、図3には、初期状態(保管開始日)における豆乳1〜3及び「スゴイダイズ」の粒径分布の測定結果が示されており、図4には、保管開始から所定期間(豆乳1については10日、豆乳2、3及び「スゴイダイズ」については40日)経過後の各遠沈管から回収した上層及び下層のサンプルの粒径分布の測定結果が示されている。
【0056】
表2及び図3から判るように、加圧室7の圧力を100MPa、200MPaとした豆乳2、3では、豆乳1及び「スゴイダイズ」に比較して、粒径の標準偏差が小さく粒子径分布がシャープであることが判る。
【0057】
そして、図4に示されるように、大豆1及び「スゴイダイズ」では、それぞれ保存開始後10日及び40日の時点で、粒径の大きい粒子が下層に沈殿することにより上層と下層の粒径分布に大幅な解離を生じているのに対して、本発明に従って製造された豆乳2、3では、保存開始後40日が経過しても、粒径分布の解離が全く生じていないことが判る。
【0058】
更に、保管開始後40日の豆乳2、3のサンプルを試飲したところ、ざらつき感の全くない滑らかな口当たりが維持されており、飲料感や味に変化は生じていなかった。
【0059】
以上のように、本発明に従って製造された豆乳は、極めて高い保存安定性を有していることが確認された。
【0060】
図5は、本発明に係る豆乳の製造方法をインラインで実施可能な豆乳製造装置20の構成を示すブロックダイアグラムである。
【0061】
図示のように、豆乳製造装置20は、乾燥大豆を所定粒径以下に粉砕する乾式粉砕器21と、乾式粉砕器21にて粉砕された大豆粉に加水し混合することにより大豆混合液を生成する高速ミキサー22と、所定サイズ以上の大豆粉や異物等を除去するためのフィルター装置23と、ボイラー24において発生させた高熱の蒸気との熱交換により大豆混合液を加熱して殺菌処理を行う加熱殺菌処理部25と、脱気・脱臭を行うデアレータ26と、冷水との熱交換等により大豆混合液を冷却する冷却器27と、図1に示す微細化装置6と実質的に同一の構成を有する微細化装置28と、微細化装置28において生成される豆乳を冷水との熱交換等により冷却する冷却器29と、豆乳を所定容量の容器にパッキングする充填装置30とを備えており、高速ミキサー22から充填装置30は配管31により接続されて豆乳の連続製造が可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態に係る豆乳の製造方法を実施可能な豆乳製造装置
【図2】本発明の豆乳製造装置に使用される例示的な微細化装置の構成を示す説明図
【図3】初期状態における豆乳の粒径分布の測定結果
【図4】保存開始から所定期間経過後の豆乳の粒径分布の測定結果
【図5】本発明の一実施形態に係る豆乳の製造方法を実施可能な豆乳製造装置
【符号の説明】
【0063】
1・・・豆乳製造装置、2・・・供給タンク、3・・・配管、4・・・恒温槽、5・・・熱交換器、6・・・微細化装置、7・・・加圧室、8・・・圧力ポンプ、9・・・細管、10・・・製品室、11・・・配管、12・・・製品タンク、20・・・豆乳製造装置、21・・・乾式粉砕器、22・・・高速ミキサー、23・・・フィルター装置、24・・・ボイラー、25・・・加熱殺菌処理部、26・・・デアレータ、27・・・冷却器、28・・・微細化装置、29・・・冷却器、30・・・充填装置、31・・・配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆粉と溶媒とを混合した大豆混合液を、60MPa以上の圧力及び/又は130m/秒以上の流速で細管内を通過させることにより、前記大豆混合液中の大豆粉を微細化する微細化工程とを有することを特徴とする豆乳の製造方法。
【請求項2】
前記微細化工程を経た豆乳中の固形分の平均粒径が20μm以下であり、標準偏差が0.35以下であることを特徴とする請求項1に記載の豆乳の製造方法。
【請求項3】
前記細管の流路断面積が1mm以下であり、前記細管の長手方向寸法が3mm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の豆乳の製造方法。
【請求項4】
前記微細化工程の前に大豆粉を加熱殺菌する加熱殺菌工程を更に有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の豆乳の製造方法。
【請求項5】
前記微細化工程を経る前の大豆粉の平均粒径が30μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の豆乳の製造方法。
【請求項6】
前記微細化工程において、前記細管を通過する前記大豆混合液の圧力が60MPa以上で、かつ、±10%の範囲に連続的に維持されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の豆乳の製造方法。
【請求項7】
前記微細化工程の前に前記大豆混合液の温度を20℃以下に調整する温度調整工程を更に有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の豆乳の製造方法。
【請求項8】
前記微細化工程において前記細管を通過する前記大豆混合液の温度が60℃以下に保たれることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の豆乳の製造方法。
【請求項9】
大豆粉と溶媒とを混合した大豆混合液を60MPa以上の圧力及び/又は130m/秒以上の流速で細管内を通過させることにより生成される豆乳。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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