説明

豆腐類及びその製造法

【課題】常温程度以下の品温で喫食しても食感の良好で、冷凍保存が可能な豆腐類を提供する。
【解決手段】豆乳に対して微細おから及び澱粉を加え、凝固剤を添加し、凝固を行った後、必要に応じて殺菌、冷凍する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温以下の温度で食しても食感が良好である澱粉含有豆腐類及びその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
豆腐は冷凍すると、冷凍変性し、解凍すると組織がポーラスなものとなり、凍り豆腐の状態になることは周知の通りである。従来より、この冷凍変性を防止するべき試みが種々なされてきた。その代表的な添加物は澱粉であるが、ほかにも糖類やゼラチン等(特許文献1から3)を併用することなどが知られている。
【0003】
しかし、これら澱粉含有豆腐類は、湯豆腐や関東煮など、熱い状態で喫食する場合は食感が良好でも、室温や冷蔵庫の温度で喫食する場合は、澱粉に由来するねっとりした食感で好まれず、澱粉を含まない、元来の豆腐の滑らかで口どけのよい食感を得がたかった。このため澱粉入りの豆腐類は、用途が限定され、室温以下でそのまま食される豆腐類としての利用が少なく、或いはテイクアウト食品製造業者にとって、例えば惣菜に使う原料豆腐として使いづらく、冷凍保存の利益を享受しがたかった。
【特許文献1】特開平6-217729号公報
【特許文献2】特開平6-269257号公報
【特許文献3】特開平9-313125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、常温程度より低い温度で喫食しても、滑らかで口溶けの良い食感の澱粉入り豆腐を得ること、及びそれによって冷凍保存の利益が享受できる豆腐を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明の一つは、澱粉及び微細おからを含有する豆腐類である。
微細おからは平均粒径が15〜40μmであるのが好ましく、豆腐類中に、微細おからを固形分として0.5〜3.5%より好ましくは1.3〜2%、澱粉を固形分として0.5〜2%含有するのが好ましい。
本発明の他の一つは、豆乳に微細おからおよび澱粉を加え、凝固剤により凝固させることを特徴とする豆腐類の製造法である。この製造法において、微細おからの平均粒径が15〜40μmであるのが好ましく、豆腐類中に、微細おからを固形分として1.3〜2%、澱粉が固形分として0.5〜2%含有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明は豆腐類中に澱粉及び微細おからを含有することにより、低温で喫食しても滑らかで口溶けの良い食感の豆腐を得ることができ、またそれによって冷凍保存の利益が享受できる豆腐類を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明において、豆腐類は、豆腐及び乾燥豆腐、並びに表面以外はほとんど豆腐の組織をそのまま残す厚揚げなどである。
【0008】
澱粉は、豆腐類の冷凍耐性を有する公知のどのようなものでも使用でき、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、ワキシーコンスターチ、コーンスターチなどが例示できる。生澱粉であるよりは化工澱粉が通常効果が大きい。澱粉の使用量は、豆腐中、通常0.5〜2.0重量部が好ましく、より好ましくは0.8〜1.5重量部が良い。澱粉の量が少なすぎると冷凍変性が生じ、多すぎると、食感がぼそついたものとなる。
澱粉と併用することにより冷凍耐性を増すことが知られている他の糖類やゼラチンもこの発明で使用することができる。糖類は甘味度の低いオリゴ糖、糖アルコール、トレハロースなどが好ましく、また使用する場合の好ましい範囲は、豆腐中0.5〜3.0重量部、より好ましくは0.8〜2.0重量部が適している。0.5重量部より少ないと冷凍耐性を増大させるのが困難で、多すぎると甘味が出てしまう。
【0009】
微細おからは、乾燥品、湿潤品、或いは豆乳と分離されていない呉の状態のいずれでもよいが、食感上は非乾燥品が好ましい。粒径を15〜40μmとする方法は特に問わないが、風味上、水で膨潤させた大豆を回転刃型剪断力を作用させて一旦100μm以下に微細化した後、摩擦剪断力を作用させて平均粒子径を15〜40μmに微細化したものがよい。おからの粒子は小さくしすぎても効果の増大に乏しく、多すぎると、豆腐類の食感を害する。尚、本発明において粒子径の測定はコールターカウンター法によった。また微細おからの湿潤市販品も入手できる。
【0010】
微細おからの添加量は豆腐全量中に対するおから固形分重量として、0.5〜3.5%より好ましくは1.3〜2%がよい。乾燥していない湿潤状態のおからでは含まれる水分量により多少相違するが水分が87%程度のものであると5〜25重量部、好ましくは10〜15重量部程度が好ましい。微細オカラの量が少ないと常温以下で喫食する際の食感改良効果が少なく、多すぎると、豆腐のゲルが弱くなり、べちゃついた食感となる。
【0011】
上記の澱粉、糖類、おからは、豆腐類製造工程中の、凝固前の豆乳に含ませるのが適当である。
【0012】
本発明で使用する豆乳は、いずれのものでも良い。さらに、この豆乳を調温した後、微細おから及び化工澱粉、糖を加え、凝固剤を添加し、加熱・殺菌を行なう。
【0013】
豆乳は、通常は豆乳固形分が10重量部〜16重量部になるように調製するのが良く、必要なら真空濃縮を行い上記豆乳固形分とする。
【0014】
豆乳を凝固させるには、凝固剤の存在下加熱して行う。
凝固温度は通常60℃から90℃の範囲にあり、好ましくは60℃以上80℃以下、より好ましくは65℃以上75℃以下の温度で行う。凝固温度が低すぎると、豆腐凝固反応が遅く、豆腐組織が不均一なものとなり、豆腐の出来具合が悪くなる。凝固温度が高すぎても、豆腐凝固反応が早すぎて、豆腐がうまく固まらない。上記凝固の後に或いはさらなる凝固促進を兼ねて、殺菌処理の目的で、90℃以上に昇温して加熱してもよい。
【0015】
豆腐は、通常冷凍するが、目的に応じて若干の水切りをしてフライし厚揚げにしてもよく、或いは即席食品用に乾燥してもよい。
【0016】
以下に本発明の実施例によって更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
70℃に調温した濃縮豆乳に対して硫酸カルシウム(赤穂化成社製)0.4重量部とワキシーコーンスターチ(日澱化学社製)を2.5重量部、トレハロース(林原商事社製)を2重量部、そして湿潤微細おから(平均粒径30μm、水分86.7%の湿潤おからで成分組成は、炭水化物5.7%、蛋白質4.3%、油脂2.8%、灰分0.5%であった。以下同様)を10重量部加えることで、豆腐を合わせたときの最終凝固温度が63℃になるように混合し凝固させた。凝固後、90℃で40分間蒸し加熱を行なった。これを、20℃以下に冷却後、約−35℃の雰囲気下で急速冷凍した。
【実施例2】
【0018】
湿潤微細おからを20重量部になるように混合し凝固させた以外は、実施例1と同様に処理し、冷凍豆腐を調製した。
【0019】
<比較例1>
湿潤微細おからを3重量部になるように混合し凝固させた以外は、実施例1と同様に処理して冷凍豆腐を調製した。
【0020】
<比較例2>
湿潤微細おからを30重量部になるように混合し凝固させた以外は、実施例1と同様に処理して冷凍豆腐を調製した。
【0021】
<比較例3>
湿潤微細おからの代わりにおから粉末(粒子径100μm以上、水分6%。以下同様)を豆乳に対し5重量部加えた以外の条件は実施例1と同様に処理して豆腐を調製した。
【0022】
<比較例4>
湿潤微細おからの代わりにおから粉末を豆乳に対し2.5重量部加えた以外の条件は実施例1と同様に処理して豆腐を調製した。
【0023】
<比較例5>
微細おからを添加せず、それ以外の条件は実施例1と同様に処理して豆腐を調製した。

(表)品質評価結果

【0024】
評価は、5人のパネラーで5点法で評価した。比較例5における評価を3点として、これより優れているものを高い点に、劣るものを低い点にした。
サンプルは、90℃の湯で5分間、ボイル解凍し、常温(20℃)まで放冷したものを試食した。
実施例1・2は、豆腐の食感が最も滑らかで口溶けがよかった。
比較例1・5ではゲルが硬く、食感に滑らかさがない。比較例2では、ゲルが過度に柔らかくなり、べちゃついた食感となった。比較例3・4では、食感のざらつき感が強く不良であった。
【0025】
広い品温域で喫食して良好な食感である冷凍豆腐の需要が高まることが期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉及び微細おからを含有する豆腐類。
【請求項2】
微細おからの平均粒径が15〜40μmである請求項1記載の豆腐類。
【請求項3】
豆腐類中に、微細おからを固形分として0.5〜3.5%、澱粉を固形分として0.5〜2%含有する請求項1記載の豆腐類。
【請求項4】
豆乳に微細おからおよび澱粉を加え、凝固剤により凝固させることを特徴とする豆腐類の製造法。
【請求項5】
微細おからの平均粒径が15〜40μmである請求項4記載の豆腐類の製造法。
【請求項6】
豆腐類中に、微細おからを固形分として1.3〜2%、澱粉を固形分として0.5〜2%含有する請求項5記載の豆腐類の製造法。