説明

豆類の脱皮装置

【課題】従来よりも簡素で安価、小型化に適し、 効率の脱皮装置を提供する。
【解決手段】脱皮装置1は、内外二重筒構造をなす挽砕部2と、その下方に風選部6とを備える。挽砕部2は、横軸回転する内筒3とそれを包囲する外筒4とを有し、内筒3と外筒4との間には原料豆9よりも狭小の隙間21が設けられ、内筒3の外周面には溝条32が形成され、外筒4の下半部42には原料豆9よりも小径の篩孔43が形成される。内筒3と外筒4との間に投入された原料豆9は皮片91と子葉片92との混合物に挽砕され、外筒4の篩孔43を通じて風選部6内に落下する。風選部6は側方に送風機61を備え、落下口53よりも風下側には登り傾斜の仕切羽根板64が、上下に間隔を設けて複数枚、取り付けられる。混合物中の皮片91は横風を受けて仕切羽根板64を乗り越え、風下側の皮片回収部65に集積され、子葉片92は仕切羽根板64よりも風上側を落下する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大豆その他の豆類の皮を剥いて、皮と身(子葉部)とに分離する脱皮装置に関し、特に、原料の豆類を乾燥状態のままで脱皮加工しうる脱皮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、特許文献1において、オカラの発生をなくした豆腐の製造方法を提案している。該製造方法は、予め大豆から皮及び胚軸を取り除いて子葉部のみからなる豆腐原料を生成しておき、この豆腐原料を粉砕して豆腐原料粉となし、その豆腐原料粉を所定時間、水に浸漬して豆腐原料粉を膨張・軟化させ、それを浸漬液ごと煮鍋で煮沸して呉汁を生成し、その呉汁を冷ましたら凝固剤を加えて攪拌し、成形容器に入れて成形する、というものである。この製造方法によれば、オカラのもとになる皮を除去してから豆腐を製造するので、豆腐の食感が滑らかになるとともに、オカラの廃棄処分に要する手間や費用を削減することができる。
【0003】
前記の方法で豆腐を製造するには、大豆の皮を剥いて皮と子葉部とに分離する脱皮装置が必要となる。大豆は、豆腐以外にも食品原料として幅広く利用され、その用途に応じて有用部分の加工態様も異なることから、大豆の脱皮装置についても従来、様々のものが提案されている。特に機械的作用を利用する大豆の脱皮装置としては、予め原料の大豆を水に浸漬し、或いは加熱してから脱皮加工するものと、原料の大豆を乾燥状態のままで脱皮加工するものとに大別できる。また、皮を剥いた子葉部を、なるべく砕いたり削ったりせずに丸ごと、或いは半割体の状態で回収するものと、子葉部を挽砕したり粉末状に加工するものとがある。
【0004】
脱皮加工に際して浸漬や加熱処理を伴うものは、装置自体が大がかりで高価なものになりがちであり、また、廃棄される皮その他の部分に水分が残留して廃棄処理が面倒になる。したがって、豆腐用の大豆ならば、乾燥状態で脱皮加工できるほうが望ましい。また、前記した豆腐の製造方法では、脱皮加工した後の豆腐原料を粉砕して浸漬、煮沸するので、脱皮段階で子葉部が挽砕されていても差し支えない。
【0005】
かかる条件に適合する公知の脱皮装置としては、ドラム内に皮付き大豆を投入し、表面に突起を設けた羽根車をドラム内で回転させるもの(例えば特許文献2)、互いに反対方向に回転する2個のローラーの間隙に皮付き大豆を通過させるもの(例えば特許文献3、4)、対向面に凹凸条を形成した内筒と外筒とからなる回転体の隙間に皮付き大豆を通過させるもの(例えば特許文献5)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−253198号公報
【特許文献2】特開平11−225726号公報
【特許文献3】特開2002−355003号公報
【特許文献4】特開2004−73088号公報
【特許文献5】特開平11−266818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記公知の脱皮装置に比して構造がより簡素で、安価で製造することができ、かつ、装置全体の小型化にも適し、しかも効率よく、大豆その他の豆類の皮を剥いて、皮と子葉部に分離することのできる脱皮装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するため、本発明の豆類の脱皮装置は、乾燥状態の原料豆を挽砕して皮片と子葉片との混合物を生成する挽砕部と、該挽砕部の下方に設けられて前記混合物を皮片と子葉片とに分別する風選部と、からなる豆類の脱皮装置において、
前記挽砕部は、横向きに設置された回転軸を中心にして回転駆動される内筒と、該内筒の外周面との間に原料豆の平均的短径寸法よりも狭小な隙間を隔てて内筒を包囲する外筒とを具備し、内筒の外周面には内筒の軸方向に延びる複数本の溝条が形成されるとともに、外筒の少なくとも下半部には原料豆の平均的短径寸法よりも小径の篩孔が多数個、形成され、上部に設けた投入口から投入される原料豆が前記内筒と外筒との間に噛み込まれて皮片と子葉片との混合物に挽砕され、該混合物が外筒の篩孔を通過して外筒の下方に設けた落下口から落下するように構成されてなり、
前記風選部は、前記落下口から落下する混合物に対して横風を吹き付ける送風機を側方に具備するとともに、落下口の下方よりも風下側には風向きに沿って登り傾斜を有する仕切羽根板が、上下方向に間隔を設けて複数枚、取り付けられ、前記混合物中の皮片が横風を受けて浮遊し、前記仕切羽根板を乗り越えて、仕切羽根板の風下側に設けられた皮片回収部に集積される一方、前記混合物中の子葉片は、前記仕切羽根板の風上側を落下して、落下口の下方に集積されるように構成されてなることを特徴とする。
【0009】
前記の構成に係る豆類の脱皮装置において、内筒の外周面に形成される溝条は、内筒の回転方向における前方側が、内筒の径方向に沿って欠き込まれた段差部となされ、内筒の回転方向における後方側が、内筒の外周面から前記段差部の底部に向かって下り傾斜する斜面部となされるのが好ましい。
【0010】
また、落下口及び仕切羽根板は、内筒の回転軸方向に沿って延びるように設けることができる。
【発明の効果】
【0011】
上述のように構成される本発明の豆類の脱皮装置は、内外二重の筒構造をなす挽砕部が、内筒の回転軸を横向きにして設置されることによって、特に特許文献5に係る従来例と対比したとき、以下のような優位点を有する。
【0012】
(1)本発明では、回転軸を駆動するための電動機等を、挽砕部の側方等に配置することができ、装置全体の構造設計における自由度が高い。すなわち、特許文献5に係る従来例では、内筒の回転軸が縦向きに配置されて、その軸部下方に挽砕された混合物が集まるので、混合物の落下口と軸受け部材等が近接することになり、軸受け周りの構造等が複雑にならざるを得ないのに対し、本発明であれば軸受けにそのような問題は発生しないから、電動機の駆動機構を配置しやすいし、落下口周りの構造や回転軸の軸受け周りの構造も簡素化しやすい。
【0013】
(2)本発明では、落下口や、その下方で混合物を分別する仕切羽根板を、内筒の回転軸方向に沿って延設することができる。すなわち、特許文献5に係る従来例では、回転軸が縦向きに配置されて、その軸部下方にしか混合物の落下口を設けることができないので、処理効率を上げるのには限界があるのに対し、本発明であれば、挽砕部の軸長を延ばし、それに合わせて落下口や仕切羽根板を細長く延ばすことによって、挽砕部の径をさほど大きくせずとも、処理効率を上げるのが容易である。
【0014】
(3)本発明では、内筒及び外筒の構造を簡素化でき、安価で製造することができる。すなわち、特許文献5に係る従来例では、回転軸が縦向きに配置されて、その上方から原料豆を投入するから、原料豆を噛み込みやすいように内筒又は外筒のいずれかにテーパ面を形成し、その表面にスパイラル状の凹凸条を形成しているので、内筒及び外筒の製造にコストが嵩むのに対し、本発明では、内筒及び外筒のいすれにもテーパ加工を要さない。また、特許文献5に係る従来例では、内筒の表面に合成樹脂やゴム等からなる弾性リングを嵌装しているのに対し、本発明では、その種の弾性リングを要さず、ステンレス鋼板等のみで簡素に内筒を形成することができる。
【0015】
また、上述のように構成される本発明の豆類の脱皮装置は、風選部に、風向きに沿って登り傾斜を有する仕切羽根板を、上下方向に間隔を設けて複数枚、取り付けているので、落下口からの落下距離を適度に確保して、仕切羽根板の枚数を増やせば、皮片と子葉片との分別精度も容易に向上させることができる。
【0016】
そして、これらの優位点により、装置全体を簡素化、コンパクト化して所望の処理効率を確保するのが容易になり、装置の廉価化によって普及も促進しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る豆類の脱皮装置の基本概念を示す縦方向断面模式図である。
【図2】挽砕部を構成する内筒及び外筒の要部形状を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0019】
図1は本発明の基本概念を示す。脱皮装置1は、原料豆9を挽砕して皮片91と子葉片92との混合物を生成する挽砕部2と、該挽砕部2の下方に設けられて前記混合物を皮片91と子葉片92とに分別する風選部6とを具備し、それらが図示しない適宜の架台や箱状体に組み込まれるなどして構成される。
【0020】
挽砕部2は、内外二重の筒構造を有する部位であって、内筒3が、横向きに設置された回転軸31を中心にして、外筒4の内側で回転駆動される。内筒3を回転駆動させるための電動機等(図示せず)は、回転軸31の延長先に配置されている。
【0021】
図2に示すように、内筒3は、例えばステンレス鋼板等を巻き回すなどして形成された、適当な軸長を有する略一様断面の筒体である。内筒3の外周面には、内筒3の軸方向に延びる複数本の溝条32が形成されている。例示形態に係る溝条32は、内筒3の回転方向(図1においては時計回り)における前方側が、内筒3の径方向に沿って欠き込まれた段差部33となされ、内筒3の回転方向における後方側が、内筒3の外周面から前記段差部33の底部に向かって下り傾斜する斜面部34となるように形成されている。
【0022】
外筒4は、内筒3の外周面との間に所定の隙間21を隔てて、内筒3を包囲するように固定される筒体である。隙間21の大きさは、原料豆9の平均的短径寸法よりも僅かに狭くなるように設定される。原料豆9の平均的短径寸法は、詳細には農林水産省の農産物検査規格等に準じるが、目安としては大粒大豆で約7.5mm、中粒大豆で約6.5mm、小粒大豆で約5.5mmである。
【0023】
例示形態に係る外筒4は、半割状の上半部41と下半部42とを抱き合わせて構成されている。上半部41の上部には、原料豆9の投入口22に通じるホッパ23が設けられている。上半部41において、投入口22以外の部分には特に開口部は設けられない。
【0024】
外筒4の下半部42は、図2に示すような多孔体であって、例えばステンレス鋼製のパンチングメタルを湾曲加工するなどして形成されている。個々の孔部は、その径が原料豆9の平均的短径寸法(上述に同じ)よりも僅かに小径の篩孔43となされている。
【0025】
上述のように構成された内筒3と外筒4との隙間21に、上部の投入口22から、予め粗い夾雑物等を除去した乾燥状態の原料豆9が投入される。投入された原料豆9は回転する内筒3に沿って隙間21に巻き込まれ、内筒3に形成した溝条32の稜角縁や篩孔43の周縁などに接触して表面に亀裂を生じ、さらに、原料豆9の平均的短径寸法よりも狭小な隙間21の中で挽砕されながら皮を剥き取られ、皮片91と子葉片92との混合物になる。子葉片92の挽砕後の大きさは、概ね原料豆9の数分の1程度である。なお、内筒3に形成された溝条32の底部と外筒4との間隔については、これを原料豆9の最大径程度の寸法に設定するのが好ましく、これによって原料豆9の噛み込みを適度に分散させ、内筒3を円滑に回転させやすくなる。
【0026】
皮片91と子葉片92との混合物は、外筒4の下半部42に形成された篩孔43を通過する。外筒4の下方には、側部カバー51やスロープ52等によって囲まれたシュートが設けられており、その底部には落下口53が下向きに開口して、風選部6へと連通している。落下口53は、内筒3の軸方向に沿って、内筒3の軸長と同程度の開口長さを有するように細長く延設されるのが処理効率の面では好ましい。
【0027】
風選部6は、落下口53の下方に適宜の高さの空間を確保した箱状体であって、その側方に送風機61を備えている。送風機61は、風選部6の側部に開口したフィルター付きの給気口62から外気を取り込んで、風選部6内へと横風を送る。送風機61よりも内側には、風選部6内での気流を均一化させるための整流格子63が取り付けられている。
【0028】
落下口53の直下よりも風下側(図1においては右側)には、風向きに沿って登り傾斜を有する仕切羽根板64が、上下方向に間隔を設けて複数枚、取り付けられている。例示形態にあっては、5枚の仕切羽根板64が、それぞれ約45°の傾斜で、上段の仕切羽根板64の下縁と下段の仕切羽根板64の上縁とを同程度の高さに揃えるような位置関係で取り付けられている。この仕切羽根板64も、内筒3の軸方向に沿う落下口53の開口長さと同程度以上の長さにわたって設けられるのが好ましい。
【0029】
落下口53から風選部6内へと落下する混合物に対して適度な風速・風量の横風が吹き付けられると、混合物中の皮片91は横風に乗って浮遊し、仕切羽根板64の傾斜面を乗り越えて、仕切羽根板64の風下側に設けられた皮片回収部65へと運ばれる。一方、皮片91よりも比重の大きい子葉片92は、仕切羽根板64の傾斜面を乗り越えられず、仕切羽根板64よりも風上側に落下する。このように、落下方向に沿って多段配置した複数枚の仕切羽根板64による風力選別作用により、皮片91と子葉片92とを好適に分別することができる。もちろん、仕切羽根板64の間を通過させる風速・風量については、装置規模や原料豆9の挽砕状態等に応じ、送風機61の回転速度を変えるなどして適宜、調整されるのが望ましい。また、仕切羽根板64の傾斜角が変えられるようになっていてもよい。
【0030】
挽砕部2の底部には、仕切羽根板64よりも風上側に落下した子葉片92を回収する子葉片取出口66が、ほぼ落下口53の下方に位置して設けられている。また、皮片回収部65の底部には、皮片取出口67が設けられている。皮片91を皮片回収部65まで運んだ風は、皮片回収部65の上部に設けた排風口68から排出される。排風口には、皮片91が装置外に飛散するのを防ぐためのフィルタが取り付けられている。このような構成により、従来よりも簡素にして安価であり、小型化にも適し、効率よく脱皮加工を行える脱皮装置1を得ることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 脱皮装置
2 挽砕部
21 隙間
22 投入口
3 内筒
31 回転軸
32 溝条
33 段差部
34 斜面部
4 外筒
43 篩孔
53 落下口
6 風選部
61 送風機
64 仕切羽根板
65 皮片回収部
9 原料豆
91 皮片
92 子葉片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥状態の原料豆を挽砕して皮片と子葉片との混合物を生成する挽砕部と、該挽砕部の下方に設けられて前記混合物を皮片と子葉片とに分別する風選部と、からなる豆類の脱皮装置において、
前記挽砕部は、横向きに設置された回転軸を中心にして回転駆動される内筒と、該内筒の外周面との間に原料豆の平均的短径寸法よりも狭小な隙間を隔てて内筒を包囲する外筒とを具備し、内筒の外周面には内筒の軸方向に延びる複数本の溝条が形成されるとともに、外筒の少なくとも下半部には原料豆の平均的短径寸法よりも小径の篩孔が多数個、形成され、上部に設けた投入口から投入される原料豆が前記内筒と外筒との間に噛み込まれて皮片と子葉片との混合物に挽砕され、該混合物が外筒の篩孔を通過して外筒の下方に設けた落下口から落下するように構成されてなり、
前記風選部は、前記落下口から落下する混合物に対して横風を吹き付ける送風機を側方に具備するとともに、落下口の下方よりも風下側には風向きに沿って登り傾斜を有する仕切羽根板が、上下方向に間隔を設けて複数枚、取り付けられ、前記混合物中の皮片が横風を受けて浮遊し、前記仕切羽根板を乗り越えて、仕切羽根板の風下側に設けられた皮片回収部に集積される一方、前記混合物中の子葉片は、前記仕切羽根板の風上側を落下して、落下口の下方に集積されるように構成されてなることを特徴とする豆類の脱皮装置。
【請求項2】
請求項1に記載の豆類の脱皮装置において、
内筒の外周面に形成される溝条は、内筒の回転方向における前方側が、内筒の径方向に沿って欠き込まれた段差部となされ、内筒の回転方向における後方側が、内筒の外周面から前記段差部の底部に向かって下り傾斜する斜面部となされたことを特徴とする豆類の脱皮装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の豆類の脱皮装置において、
落下口及び仕切羽根板は、内筒の回転軸方向に沿って延びるように設けられたことを特徴とする豆類の脱皮装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−259365(P2010−259365A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112575(P2009−112575)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(391039128)
【Fターム(参考)】