説明

貝殻粉末分散用分散剤および貝殻粉末分散液

【課題】貝殻を粉砕および焼成することにより得られる貝殻粉末を、均一に分散させることができる貝殻粉末分散用分散剤、および、その貝殻粉末分散用分散剤を用いて貝殻粉末を分散させた貝殻粉末分散液を提供すること。
【解決手段】貝殻を粉砕および焼成することにより得られる貝殻粉末を、下式のようなノニオン性の長鎖親水部と、貝殻粉末に吸着する吸着部とを含有する貝殻粉末分散用分散剤を用いて、水中に分散させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貝殻粉末分散用分散液および貝殻粉末分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、産業廃棄物として多量に発生する貝殻を、抗菌剤や除菌剤に利用することが検討されている。
【0003】
例えば、ホタテ貝殻を、乾燥し、粉砕した後、600〜700℃で焼成することにより得られるホタテ貝殻粉焼成物を、細菌抑制剤、ダイオキシン抑制剤、ホルムアルデヒド抑制剤として用いることが開示されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0004】
また、貝殻粉末を、金属成分存在下で、600〜800℃で焼成することにより得られる原生生物または有害物質抑制剤が開示されている(例えば、下記特許文献2参照。)。
【0005】
また、約1000℃で焼成した貝殻に、850℃以上の高温を保っている状態で水を散布し、ドロドロのゼリー状に溶解させることが開示されている(例えば、下記特許文献3参照。)。
【0006】
また、焼成した貝殻粉末を水中に分散させ、水熱処理することにより、炭酸カルシウム粉末を再析出させる方法が開示されている(例えば、下記特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−255714号公報
【特許文献2】国際公開公報WO2004/032630号
【特許文献3】特開2009−155139号公報
【特許文献4】特開2007−63080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかるに、上記した特許文献1では、粉末として得られるホタテ貝殻粉焼成物を、直接、塗料、洗剤などに混入して用いている。
【0009】
そのため、ホタテ貝殻粉焼成物を塗料、洗剤などに添加するときに、ホタテ貝殻粉焼成物を均一に分散させることが困難な場合がある。
【0010】
また、上記した特許文献2では、得られた原生生物または有害物質抑制剤に磁化水を加えて加圧した後、上澄水を、液状の原生生物または有害物質抑制剤として、化粧品、医薬品などに用いている。
【0011】
つまり、粉末状の原生生物または有害物質抑制剤を、化粧品、医薬品などに用いることは困難である。
【0012】
また、特許文献3では、貝殻をドロドロのゼリー状に溶解している。そして、ゼリー状の製品に、高級アルコール型洗剤と、重炭酸ナトリウムと、蛍光剤とを添加し、洗剤を調製している。
【0013】
製品がゼリー状であるため、高級アルコール型洗剤と、重炭酸ナトリウムと、蛍光剤とを添加するときに、それらを均一に配合することが困難な場合がある。
【0014】
また、特許文献4では、貝殻粉末を水中に分散させ、水熱処理した後、濾過、乾燥することにより、0.4〜0.6μmの粒径範囲の粉末が得られる。
【0015】
そのため、上記した特許文献1〜3と同様に、例えば、塗料などに添加することが困難である場合がある。
【0016】
そこで、本発明の目的は、貝殻を粉砕および焼成することにより得られる貝殻粉末を、均一に分散させることができる貝殻粉末分散用分散剤、および、その貝殻粉末分散用分散剤を用いて貝殻粉末を分散させた貝殻粉末分散液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記した目的を達成するため、本発明の貝殻粉末分散用分散剤は、貝殻を粉砕および焼成することにより得られる貝殻粉末を分散するために用いられ、ノニオン性の長鎖親水部と、前記貝殻粉末に吸着する吸着部とを含有することを特徴としている。
【0018】
また、本発明の貝殻粉末分散用分散剤では、前記長鎖親水部は、ポリオキシアルキレン基であることが好適である。
【0019】
また、本発明の貝殻粉末分散用分散剤では、前記吸着部は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基および/または脂環族炭化水素基を含有していることが好適である。
【0020】
また、本発明の貝殻粉末分散用分散剤では、前記吸着部は、酸基を含有していることが好適である。
【0021】
また、本発明の貝殻粉末分散用分散剤では、前記酸基は、カルボキシル基であることが好適である。
【0022】
また、本発明の貝殻粉末分散用分散剤は、下記一般式(1)で示される構造を有することが好適である。
一般式(1):
【0023】
【化1】

【0024】
(式中、lは、0または1〜40の整数であり、mは、3〜20の整数であり、nは、1〜50の整数であり、oは、0または1〜50の整数であり、pは、0または1〜50の整数であり、qは、0または1〜50の整数であり、Xは、1〜50の整数であり、Yは、1〜20の整数であり、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基またはアルアルキル基を表し、Rは、水素原子またはアルキル基を表し、Rは、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、または、カルボキシル基のアルキルエステルを表し、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは、水素原子またはアルキル基を表し、Rは、メチレン基またはカルボニル基を表す。)
また、本発明の貝殻粉末分散用分散剤は、下記一般式(2)で示される構造を有することが好適である。
一般式(2):
【0025】
【化2】

【0026】
(式中、lは、5〜20の整数であり、Xは、1〜50の整数であり、Rは、アルキル基を表す。)
また、本発明の貝殻粉末分散用分散剤は、下記一般式(3)で示される構造を有することが好適である。
一般式(3):
【0027】
【化3】

【0028】
(式中、lは、0または1〜40の整数であり、mは、3または4であり、nは、1〜50の整数であり、oは、1〜50の整数であり、Rは、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、または、カルボキシル基のアルキルエステルを表し、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
また、本発明の貝殻粉末分散用分散剤は、ロジン酸エステル系界面活性剤であることが好適である。
【0029】
また、本発明の貝殻粉末分散用分散剤では、前記ロジン酸エステル系界面活性剤が、下記一般式(4)で示されることが好適である。
一般式(4):
【0030】
【化4】

【0031】
(式中、lは、5〜40の整数である。)
また、本発明の貝殻粉末分散用分散剤では、前記ロジン酸エステル系界面活性剤が、下記一般式(5)で示されることが好適である。
一般式(5):
【0032】
【化5】

【0033】
(式中、lは、5〜40の整数である。)
また、本発明の貝殻粉末分散用分散剤では、前記ロジン酸エステル系界面活性剤が、下記一般式(6)で示されることが好適である。
一般式(6):
【0034】
【化6】

【0035】
(式中、lは、5〜40の整数である。)
また、本発明の貝殻粉末分散用分散剤では、前記ロジン酸エステル系界面活性剤が、下記一般式(7)で示されることが好適である。
一般式(7):
【0036】
【化7】

【0037】
(式中、lは、5〜40の整数である。)
また、本発明の貝殻粉末分散用分散剤では、前記ロジン酸エステル系界面活性剤が、下記一般式(8)で示されることが好適である。
一般式(8):
【0038】
【化8】

【0039】
(式中、lは、5〜40の整数である。)
また、本発明の貝殻粉末分散用分散剤では、前記ロジン酸エステル系界面活性剤が、下記一般式(9)で示されることが好適である。
一般式(9):
【0040】
【化9】

【0041】
(式中、lは、5〜40の整数である。)
また、本発明の貝殻粉末分散液は、貝殻を粉砕および焼成することにより得られる貝殻粉末と、上記した貝殻粉末分散用分散剤と、水とを含有していることを特徴としている。
【0042】
また、本発明の貝殻粉末分散液では、分散された前記貝殻粉末の、体積基準におけるメジアン径(d50)は、300nm以下であることが好適である。
【0043】
また、本発明の貝殻粉末分散液では、前記貝殻は、帆立貝および/または牡蠣の貝殻であることが好適である。
【0044】
また、本発明の貝殻粉末分散液では、pHが12〜13であることが好適である。
【発明の効果】
【0045】
本発明の貝殻粉末分散用分散剤によれば、貝殻粉末が均一に分散された貝殻粉末分散液を調製することができる。
【0046】
また、本発明の貝殻粉末分散液によれば、貝殻粉末が均一に分散されているので、低粘度であり、容易に対象に添加することができる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明の貝殻粉末分散用分散剤は、貝殻を粉砕および焼成することにより得られる貝殻粉末を分散するために用いられる。
【0048】
貝殻としては、特に限定されず、例えば、帆立貝、牡蠣、ホッキ貝、アワビ、ムラサキイガイ、アサリ、ハマグリなどの貝殻が挙げられ、好ましくは、帆立貝、牡蠣が挙げられる。
【0049】
貝殻を粉砕する方法としては、特に限定されず、例えば、公知の粉砕機を用いて粉砕する。
【0050】
粉砕された貝殻粉末の平均粒子径は、例えば、1〜20μm、好ましくは、1〜15μmである。
【0051】
未焼成の貝殻粉末は、市販品として入手可能であり、例えば、ホタテ末(エヌ・シー・コーポレーション製)、シェルファインエフェクト3(日本シェルテック製)などが挙げられる。
【0052】
また、貝殻を焼成する方法としては、所定の焼成温度で加熱できれば特に限定されず、その焼成温度は、例えば、400〜1000℃、好ましくは、500〜900℃である。
【0053】
貝殻を上記した温度で焼成することにより、酸化カルシウムの含有割合を増加させることができ、抗菌性などの性能を向上させることができる。
【0054】
焼成された貝殻粉末は、市販品として入手可能であり、例えば、オホーツクカルシウムF015(日本天然素材製)、シェルフィル015(日本天然素材製)、シェルライムHTC(北海道石灰化工製)、シェルライムHPC(北海道石灰化工製)、シェルライムHT(北海道石灰化工製)、シェルファインスーパー(日本シェルテック製)、シェルファイン(日本シェルテック製)、シェルファインエフェクト1(日本シェルテック製)、シェルファインエフェクト2(日本シェルテック製)、サーフクラムカルシウム(水元製)、貝殻焼成カルシウム(エヌ・シー・コーポレーション製)などが挙げられる。
【0055】
焼成された貝殻粉末には、主成分として、少なくとも、酸化カルシウムが含有され、場合により、炭酸カルシウムが含有されている。詳しくは、貝殻粉末には、酸化カルシウムが、例えば、0.1〜100質量%、好ましくは、10〜100質量%、炭酸カルシウムが、例えば、0〜99.9質量%、好ましくは、0〜90質量%含有されている。酸化カルシウムの含有割合が上記範囲内であると、抗菌性などの性能を向上させることができる。
【0056】
貝殻粉末分散用分散剤は、ノニオン性の長鎖親水部と、貝殻粉末に吸着する吸着部とを含有している。
【0057】
長鎖親水部としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンのランダムまたはブロックコポリマー、ポリオキシブチレンなどのポリオキシアルキレン基が挙げられ、好ましくは、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンのランダムまたはブロックコポリマーが挙げられる。
【0058】
長鎖親水部の数平均分子量(Mn)は、例えば、44〜2320、好ましくは、220〜1992である。
【0059】
吸着部は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基および/または脂環族炭化水素基を含有している。
【0060】
なお、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基および脂環族炭化水素基は、一価または二価の置換基であって、吸着部の一部分に含まれていればよい。
【0061】
脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、iso−ペンチル、sec−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、イソデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシルなどの炭素数1〜18の直鎖状または分岐状のアルキル基、例えば、メチレン、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、n−ブチレン、イソブチレン、sec−ブチレン、tert−ブチレン、ペンチレン、iso−ペンチレン、sec−ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、n−オクチレン、イソオクチレン、2−エチルヘキシレン、ノニレン、デシレン、イソデシレン、ドデシレン、テトラデシレン、ヘキサデシレン、オクタデシレンなどの炭素数1〜18の直鎖状または分岐状のアルキレン基が挙げられる。
【0062】
芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル、トリル、キシリル、ビフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、アズレニルなどの炭素数6〜14のアリール基、例えば、フェニレンなどのアリーレン基などが挙げられる。
【0063】
脂環族炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシル、シクロオクチルなどのシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシレンなどのシクロアルキレン基、例えば、ヒドロナフチル、ヒドロフェナントリルなどの水素化された上記芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0064】
また、吸着部は、例えば、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基などの酸基、それら酸基の塩などを含有している。
【0065】
酸基の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などの金属塩、アンモニウム塩などの有機塩などが挙げられる。
【0066】
吸着部は、好ましくは、カルボキシル基を含有している。なお、吸着部は、隣接した一対の酸基を有する場合には、それら一対の酸基が脱水されることにより、酸無水物を形成してもよい。
【0067】
貝殻粉末分散用分散剤は、具体的には、例えば、(メタ)アリル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、スチレン系単量体、不飽和カルボン酸系単量体などの単量体を共重合することにより、得ることができる。
【0068】
(メタ)アリル系単量体としては、例えば、ポリオキシエチレンモノ(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレンモノ(メタ)アリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノ(メタ)アリルエーテルなどのポリオキシアルキレンモノ(メタ)アリルエーテルなどが挙げられる。
【0069】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸n−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸イソブチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ドデシルエステルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えば、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸ポリオキシプロピレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールエステルなどの(メタ)アクリル酸ポリオキシアルキレングリコールエステルなどが挙げられる。
【0070】
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、モノクロロスチレンなどが挙げられる。
【0071】
不飽和カルボン酸系単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、無水イタコン酸、無水マレイン酸などが挙げられる。
【0072】
これら単量体は、1種または2種以上併用することができる。
【0073】
貝殻粉末分散用分散剤として、より具体的には、例えば、下記一般式(1)で示される構造を有する貝殻粉末分散用分散剤が挙げられる。なお、貝殻粉末分散用分散剤の末端には、重合開始剤に由来する有機基(例えば、重合開始剤として過硫酸カリウムを使用した場合には、−O−SOK)が結合している。
一般式(1):
【0074】
【化10】

【0075】
(式中、lは、0または1〜40の整数であり、mは、3〜20の整数であり、nは、1〜50の整数であり、oは、0または1〜50の整数であり、pは、0または1〜50の整数であり、qは、0または1〜50の整数であり、Xは、1〜50の整数であり、Yは、1〜20の整数であり、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基またはアルアルキル基を表し、Rは、水素原子またはアルキル基を表し、Rは、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、または、カルボキシル基のアルキルエステルを表し、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは、水素原子またはアルキル基を表し、Rは、メチレン基またはカルボニル基を表す。)
で表されるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、iso−ペンチル、sec−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、イソデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシルなどの炭素数1〜18の直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられる。好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどの炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられる。
【0076】
で表されるアリール基としては、例えば、フェニル、トリル、キシリル、ビフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、アズレニルなどのアリール基が挙げられる。
【0077】
で表されるアルアルキル基としては、例えば、ベンジル、フェニルエチル、メチルベンジル、ナフチルメチルなどのアルアルキル基が挙げられる。
【0078】
で表されるアルキル基としては、例えば、上記したRで表されるアルキル基と同様のアルキル基が挙げられる。好ましくは、上記したRと同様に、炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられる。
【0079】
で表されるカルボキシル基の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などの金属塩、アンモニウム塩などの有機塩などが挙げられる。
【0080】
で表されるカルボキシル基のアルキルエステルとしては、例えば、メチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル、イソブチルエステル、sec−ブチルエステル、tert−ブチルエステル、ペンチルエステル、iso−ペンチルエステル、sec−ペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、n−オクチルエステル、イソオクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ドデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステルなどの炭素数1〜18の直鎖状または分岐状のアルキルエステルが挙げられる。好ましくは、メチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル、イソブチルエステル、sec−ブチルエステル、tert−ブチルエステルなどの炭素数1〜18の直鎖状または分岐状のアルキルエステルが挙げられる。
【0081】
で表される炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどの炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられる。好ましくは、メチル基が挙げられる。
【0082】
で表されるアルキル基としては、例えば、上記したRで表されるアルキル基と同様のアルキル基が挙げられる。好ましくは、上記したRと同様に、炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられる。
【0083】
また、本発明の貝殻粉末分散用分散剤は、下記一般式(2)で示される構造を有することも好適である。なお、貝殻粉末分散用分散剤の末端には、上記一般式(1)と同様に、重合開始剤に由来する有機基が結合している。
一般式(2):
【0084】
【化11】

【0085】
(式中、lは、5〜20の整数であり、Xは、1〜50の整数であり、Rは、アルキル基を表す。)
で表されるアルキル基としては、例えば、上記した一般式(1)のRで表されるアルキル基と同様のアルキル基が挙げられる。好ましくは、上記した一般式(1)のRと同様に、炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられる。
【0086】
また、本発明の貝殻粉末分散用分散剤は、下記一般式(3)で示される構造を有することも好適である。なお、貝殻粉末分散用分散剤の末端には、上記一般式(1)と同様に、重合開始剤に由来する有機基が結合している。
一般式(3):
【0087】
【化12】

【0088】
(式中、lは、0または1〜40の整数であり、mは、3または4であり、nは、1〜50の整数であり、oは、1〜50の整数であり、Rは、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、または、カルボキシル基のアルキルエステルを表し、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
で表されるカルボキシル基の塩としては、例えば、上記した一般式(1)のRで表されるカルボキシル基の塩と同様のカルボキシル基の塩が挙げられる。
【0089】
で表されるカルボキシル基のアルキルエステルとしては、例えば、上記した一般式(1)のRで表されるカルボキシル基のアルキルエステルと同様のカルボキシル基のアルキルエステルが挙げられる。好ましくは、上記した一般式(1)のRと同様に、炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられる。
【0090】
で表される炭素数1〜4のアルキル基としては、上記した一般式(1)のRで表されるアルキル基と同様のアルキル基が挙げられる。好ましくは、メチル基が挙げられる。
【0091】
また、本発明の貝殻粉末分散用分散剤は、ロジン酸エステル系界面活性剤であることも好適である。
【0092】
ロジン酸エステル系界面活性剤は、ロジン酸とポリアルキレングリコールとのモノエステルである。
【0093】
ロジン酸は、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、デヒドロアビエチン酸、および、それらの誘導体、あるいは、それらの化合物が挙げられる。
【0094】
ロジン酸エステル系界面活性剤としては、好ましくは、下記一般式(4)〜(9)のいずれかで示される。
一般式(4):
【0095】
【化13】

【0096】
(式中、lは、5〜40の整数である。)
一般式(5):
【0097】
【化14】

【0098】
(式中、lは、5〜40の整数である。)
一般式(6):
【0099】
【化15】

【0100】
(式中、lは、5〜40の整数である。)
一般式(7):
【0101】
【化16】

【0102】
(式中、lは、5〜40の整数である。)
一般式(8):
【0103】
【化17】

【0104】
(式中、lは、5〜40の整数である。)
一般式(9):
【0105】
【化18】

【0106】
(式中、lは、5〜40の整数である。)
また、これらの貝殻粉末分散用分散剤は、市販品として入手することができ、例えば、マリアリムAAB−0851(上記一般式(2)において、Rがn-ブチル基であり、l=13である構造、日油製)、マリアリムAFB−1521(上記一般式(2)において、Rがエチル基であり、l=28である構造、日油製)、マリアリムAKM−0531(上記一般式(2)において、Rがメチル基であり、l=11である構造、日油製)、Disperbyk−190(ビックケミー・ジャパン製)、TEGO DISPERS755W(Evonik Tego Chemie製)、Dispersogen PCE(Clariant製)、Dispersogen PSL−100(Clariant製)、EDAPLAN470(Munzing Chemie製)、EDAPLAN472(Munzing Chemie製)、EDAPLAN480(Munzing Chemie製)、EDAPLAN482(Munzing Chemie製)、EFKA4550(Ciba Specialty Chemicals製)、EFKA LP−4010(Ciba Specialty Chemicals製)、EFKA LP−4050(Ciba Specialty Chemicals製)、EFKA LP−4055(Ciba Specialty Chemicals製)などが挙げられる。
【0107】
そして、本発明の貝殻粉末分散液は、貝殻粉末と貝殻粉末分散用分散剤と水とを含有している。
【0108】
貝殻粉末分散液100質量部中には、貝殻粉末が、例えば、1〜70質量部、好ましくは、10〜50質量部、貝殻粉末分散用分散剤が、例えば、0.05〜35質量部、好ましくは、0.5〜25質量部、水が、残部として、例えば、1〜98.95質量部、好ましくは、25〜98.5質量部の配合割合で配合されている。
【0109】
また、貝殻粉末分散用分散剤は、貝殻粉末100質量部に対して、例えば、5〜50質量部、好ましくは、10〜30質量部の配合割合で配合されている。貝殻粉末分散用分散剤の配合割合が、貝殻粉末100質量部に対して、5質量部未満であると、貝殻粉末を分散させることが困難になる場合があり、貝殻粉末分散用分散剤の配合割合が、貝殻粉末100質量部に対して、50質量部を超過すると、抗菌性などの性能が低下する場合がある。
【0110】
貝殻粉末分散液を調製するには、上記した配合割合で、貝殻粉末と貝殻粉末分散用分散剤と水とを配合し、公知の分散機を用いて、分散させる。
【0111】
分散剤としては、例えば、マイクロメディア、Kシリーズ(ビュラー製)、ナノゲッター、スターミルLMZ、ソフファインビスコミル、マックスビスコミル、ウルトラビスコミル、ニュービスコミル、アルファーミル(アイミックス製)、ダイノミル、ダイノミルECM、ダイノミルNMP、ダイノミルRL(WAB製)、スーパーアペックスミル、ウルトラアペックスミル(寿工業)、OBミル(ターボ工業)など、ビーズミルやボールミルなどが挙げられる。
【0112】
なお、分散機としてビーズミルやボールミルを用いる場合には、ジルコニアビーズなどの公知のメディアを用いることができ、その充填率は、例えば、50〜90体積%、好ましくは、70〜80体積%である。また、分散時間は、貝殻粉末分散液1kgあたり、例えば、5〜180分間、好ましくは、10〜120分間である。分散時間が5分未満であると、貝殻粉末を分散させることが困難になる場合があり、分散時間が180分を超過すると、貝殻粉末分散液が増粘する場合がある。
【0113】
得られた貝殻粉末分散液の固形分は、例えば、1〜70質量%、好ましくは、20〜50質量%である。貝殻粉末分散液の固形分が1質量%未満であると、抗菌性などの性能が低下する場合があり、貝殻粉末分散液の固形分が70質量%を超過すると、貝殻粉末を分散させることが困難になる場合がある。
【0114】
また、得られた貝殻粉末分散液のpHは、例えば、9〜13、好ましくは、12〜13である。貝殻粉末分散液のpHが9未満であると、抗菌性などの性能が低下する場合があり、13を超過すると、抗菌性などの性能を長期にわたって維持することが困難となる場合がある。
【0115】
得られた貝殻粉末分散液中に分散さている貝殻粉末の、体積基準におけるメジアン径(d50)は、例えば、1μm以下、好ましくは、300nm以下、より好ましくは、100nm以下である。メジアン径(d50)が上記範囲内であれば、貝殻粉末分散液の径時安定性を向上させることができる。
【0116】
この貝殻粉末分散用分散剤によれば、貝殻粉末が均一に分散された貝殻粉末分散液を調製することができる。
【0117】
また、この貝殻粉末分散液によれば、貝殻粉末が均一に分散されているので、低粘度であり、容易に対象に添加することができる。
【0118】
また、この貝殻粉末分散液によれば、貝殻粉末分散用分散剤が貝殻粉末の表面に吸着するので、貝殻粉末に含有される有効成分を少しずつ放出することができ、貝殻粉末による抗菌性などの性能を、長期にわたって維持することができる。
【実施例】
【0119】
以下に、実施例、および、比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(成分)
A.貝殻粉末
1)オホーツクカルシウムF015(日本天然素材製)
2)シェルフィル015(日本天然素材製)
3)ホタテ末(エヌ・シー・コーポレーション製)を800℃で焼成したもの
4)未焼成のホタテ末(エヌ・シー・コーポレーション製)
B.貝殻粉末分散用分散剤
1)上記一般式(2)で示す貝殻粉末分散用分散剤。
(式中、l、X、Rについては、表1および表2に示す。)
2)上記一般式(3)で示す貝殻粉末分散用分散剤。
(式中、l、m、n、o、R、Rについては、表1および表2に示す。)
3)上記一般式(4)で示す貝殻粉末分散用分散剤。
4)上記一般式(5)で示す貝殻粉末分散用分散剤。
5)上記一般式(6)で示す貝殻粉末分散用分散剤。
6)上記一般式(7)で示す貝殻粉末分散用分散剤。
7)上記一般式(8)で示す貝殻粉末分散用分散剤。
8)上記一般式(9)で示す貝殻粉末分散用分散剤。
(貝殻粉末分散液の調製)
ビーズミルに、表1および表2に示す配合量で、貝殻粉末、貝殻粉末分散用分散液および水と、ジルコニアビーズ(直径0.5mm)とを投入し、10時間分散して、各実施例および各比較例の貝殻粉末分散液を調製した。得られた貝殻粉末分散液のpHを表1および表2に示す。
(評価)
1.粒子径測定
光散乱法粒度分析計(マイクロトラックUPA150、日機装製)を用いて、各実施例および各比較例の体積基準の粒子径分布を測定した。
【0120】
希釈溶媒に純水を使用し、溶媒の屈折率は1.33に設定した。また、貝殻粉末または未焼成貝殻粉末の屈折率は、1.58に設定した。
【0121】
メジアン径(d50)の値を表1および表2に示す。
2.粘度測定
TVE−20L型粘度計(東機産業製)を用いて、各実施例および各比較例の25℃における粘度を測定した。
【0122】
標準ロータを使用し、粘度6mPa・s未満の場合は、100rpmで測定し、粘度12mPa・s未満の場合は、50rpmで測定した。結果を表1および表2に示す。
【0123】
【表1】

【0124】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
貝殻を粉砕および焼成することにより得られる貝殻粉末を分散するために用いられ、ノニオン性の長鎖親水部と、前記貝殻粉末に吸着する吸着部とを含有することを特徴とする、貝殻粉末分散用分散剤。
【請求項2】
前記長鎖親水部は、ポリオキシアルキレン基であることを特徴とする、請求項1に記載の貝殻粉末分散用分散剤。
【請求項3】
前記吸着部は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基および/または脂環族炭化水素基を含有していることを特徴とする、請求項1または2に記載の貝殻粉末分散用分散剤。
【請求項4】
前記吸着部は、酸基を含有していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の貝殻粉末分散用分散剤。
【請求項5】
前記酸基は、カルボキシル基であることを特徴とする、請求項4に記載の貝殻粉末分散用分散剤。
【請求項6】
下記一般式(1)で示される構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の貝殻粉末分散用分散剤。
一般式(1):
【化19】

(式中、
lは、0または1〜40の整数であり、
mは、3〜20の整数であり、
nは、1〜50の整数であり、
oは、0または1〜50の整数であり、
pは、0または1〜50の整数であり、
qは、0または1〜50の整数であり、
Xは、1〜50の整数であり、
Yは、1〜20の整数であり、
は、水素原子、アルキル基、アリール基またはアルアルキル基を表し、
は、水素原子またはアルキル基を表し、
は、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、または、カルボキシル基のアルキルエステルを表し、
は、炭素数1〜4のアルキル基を表し、
は、水素原子またはアルキル基を表し、
は、メチレン基またはカルボニル基を表す。)
【請求項7】
下記一般式(2)で示される構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の貝殻粉末分散用分散剤。
一般式(2):
【化20】

(式中、lは、5〜20の整数であり、Xは、1〜50の整数であり、Rは、アルキル基を表す。)
【請求項8】
下記一般式(3)で示される構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の貝殻粉末分散用分散剤。
一般式(3):
【化21】

(式中、
lは、0または1〜40の整数であり、
mは、3または4であり、
nは、1〜50の整数であり、
oは、1〜50の整数であり、
は、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、または、カルボキシル基のアルキルエステルを表し、
は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【請求項9】
ロジン酸エステル系界面活性剤であることを特徴とする、請求項1に記載の貝殻粉末分散用分散剤
【請求項10】
前記ロジン酸エステル系界面活性剤は、下記一般式(4)で示されることを特徴とする、請求項9に記載の貝殻粉末分散用分散剤。
一般式(4):
【化22】

(式中、lは、5〜40の整数である。)
【請求項11】
前記ロジン酸エステル系界面活性剤は、下記一般式(5)で示されることを特徴とする、請求項9に記載の貝殻粉末分散用分散剤。
一般式(5):
【化23】

(式中、lは、5〜40の整数である。)
【請求項12】
前記ロジン酸エステル系界面活性剤は、下記一般式(6)で示されることを特徴とする、請求項9に記載の貝殻粉末分散用分散剤。
一般式(6):
【化24】

(式中、lは、5〜40の整数である。)
【請求項13】
前記ロジン酸エステル系界面活性剤は、下記一般式(7)で示されることを特徴とする、請求項9に記載の貝殻粉末分散用分散剤。
一般式(7):
【化25】

(式中、lは、5〜40の整数である。)
【請求項14】
前記ロジン酸エステル系界面活性剤は、下記一般式(8)で示されることを特徴とする、請求項9に記載の貝殻粉末分散用分散剤。
一般式(8):
【化26】

(式中、lは、5〜40の整数である。)
【請求項15】
前記ロジン酸エステル系界面活性剤は、下記一般式(9)で示されることを特徴とする、請求項9に記載の貝殻粉末分散用分散剤。
一般式(9):
【化27】

(式中、lは、5〜40の整数である。)
【請求項16】
貝殻を粉砕および焼成することにより得られる貝殻粉末と、請求項1〜15のいずれかに記載の分散剤と、水とを含有していることを特徴とする、貝殻粉末分散液。
【請求項17】
分散された前記貝殻粉末の、体積基準におけるメジアン径(d50)は、300nm以下であることを特徴とする、請求項16に記載の貝殻粉末分散液。
【請求項18】
前記貝殻は、帆立貝および/または牡蠣の貝殻であることを特徴とする、請求項16または17に記載の貝殻粉末分散液。
【請求項19】
pHが12〜13であることを特徴とする、請求項16〜18のいずれかに記載の貝殻粉末分散液。

【公開番号】特開2011−245399(P2011−245399A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119688(P2010−119688)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(591064508)御国色素株式会社 (28)
【Fターム(参考)】